スパーズのダニエル・リヴィ会長の補強戦略に関する記事。移籍市場の締切も近くて、賞味期限の短い記事になるかもだから取り上げるか迷ったけど、珍しいから勢いで。昨年はトランスファー・ウィンドウ締切直前に大幅な割引価格でラファエル・ファン・デル・ファールトを獲得し、サポーターがリヴィ会長に感謝するチャントまで作るなど、手腕が話題になるが、その「瀬戸際戦略」が落とし穴になるのでは?というのが「ガーディアン」紙の指摘。(※日曜にシティに1-5で敗れる前の記事)
++(以下、要訳)++
この夏もまた、トッテナム・ホットスパーの武闘派会長であるダニエル・リヴィが、瀬戸際戦略が大きなスリルをもたらす長く、大金のかかったポーカーでフットボール界を混乱させている。
スパーズのファンは、クラブの役員たちの戦いを、両面性をもって見ていることだろう。ルカ・モドリッチをホワイト・ハート・レーンにキープすべくチェルシーにジャブを繰り出している一方で、トッテナムの移籍市場に臨む戦略は、不必要に長引いていて、またエゴイスティックであり、クラブに不利益をもたらし得るものだ。
ひとつ確実に言えるのは、アーセナルのサポーターは、リヴィのような会長を望むだろう、ということだ。移籍市場において、アーセナルの動きは遅過ぎ、本気でメジャーなターゲットを狙ってはいない。最近でも、例えばボルトンのギャリー・ケーヒルを狙った低価格でのオファーは、移籍市場の初期ならともかく、このタイミングでは的外れだ。高給に怯えて動揺が走っているアーセナルと真逆なのが隣町のターミネーター、ダニエル・リヴィだ。他クラブに狙われるトッテナムの選手たちの値段を吊り上げ、売りたいクラブが提示する値段は大いに叩く。
金に男意気が伴えば当然活気は出てくるのだが、カウボーイ・ブーツを履いたポーカーの達人たちとラスベガスで延々競い合っているような会長を持つことにはリスクも伴う。そのひとつは確実性の無さだ。最後の最後まで交渉で粘り続ける傾向を持つならば、選手や監督・コーチングスタッフは、9月1日に夜が明けるまで、どんなスタメンになるのか、不安なまま過ごすことになる。
エマニュエル・アデバヨールでの獲得は、人々に示すことができる最低限の成果だ。それでも、これはローン移籍であり、アデバヨールの態度にもまだ疑念がある。彼がトッテナムを大陸のトップ5クラブへの移籍の手段として使うのであれば、トッテナムにとってもメリットとなるような輝きを放つ必要がある。この種の契約は、トップクラスのセンターフォワードを求めるハリー・レドナップにとっては一時的な解決策でしかない。他は今のところ、頑張ってブラジル人のレアンドロ・ダミアンに1,100万ポンドのオファーを出したと報じられているくらいだ。
モドリッチは必ず残ると固い意志を表明しているクラブにしては、その代役のリストアップは順調すぎるくらいだ。ジョー・コール、ラッサナ・ディアラ、スコット・パーカーはいずれもハリー・レドナップが熱望する選手たちで、ユヴェントスからは既にローンで若きアタッカーのファルケを獲得している。ここには、モドリッチの穴を新たな中盤の選手で埋めようというレドナップと、チェルシーに「クソッタレ」と言い続けるリヴィという構図がある。
背景には、スパーズのヨーロッパ・リーグへの参戦がある。昨年の素晴らしいチャンピオンズリーグでの冒険の後、スパーズはシティに打ち負かされ、ワンランク下の大会に降格することになった。スパーズの最終的な選手リストがまだ未確定である一方、セルヒオ・アグエロとサミ・ナスリを既に加えたシティの方が強いのは明らかだ。したがって、日曜日、ユナイテッドに敗れた6日後に対戦するシティとの一戦は、リヴィのサイのような交渉スタイルが成功するのか否か、良い判断材料になるはずだ。
ポジティブな要員も多々ある。最もダイナミックなギャレス・ベイルを残すことには成功しているし、若手選手の育成も強みとなっている。右サイドのカイル・ウォーカーは将来を嘱望され、ジェイク・リバモアはファビオ・カペッロの目にも留まった。先週半ばのハーツとの一戦では、ハリー・ケイン、トム・キャロル、ライアン・フレデリクス、ジェイク・ニコルソンといった計6人のアカデミー出身選手がプレーした。アンドロス・タウンセンドも未来ある選手の一人だ。
しかし、チームの一番表側では、チャンピオンズリーグ出場権奪回の必要があり、その意味ではキザな態度を取っている場合ではない。リヴィは、ラファエル・ファン・デル・ファールトは、移籍市場の最後の最後にやってきた、と指摘するかもしれないし、瀬戸際戦略は必ずしもカオスを意味するわけでもない。それでも、スパーズはトップクラブの中でも解決すべき問題が多いほうだ。
リバプールは、スチュワート・ダウニング、ジョーダン・ヘンダーソン、チャーリー・アダムの獲得に迅速に動いたし、シティはターゲットを定めては獲得した。ユナイテッドは余計な考えは無しにして、フィル・ジョーンズ、ダヴィド・デ・ヘア、アシュリー・ヤング等を補強してきた。チェルシーがモドリッチを追うのはトッテナムの誤りではないが、スパーズの夏は、ひとりのスター選手を確保し、万が一彼が移籍した場合の代替手段をあれこれ考える、非常に長い苦闘の夏となったようだ。
我々も知るように、レドナップは直感で動く。彼はかつて指導したコールやディアラを知っているし、いつでも良いタレントをチームに加えようとしている。しかし、生まれながらの才能発掘者の本能は、交渉から喜びを得る会長の強固なビジネス倫理とは衝突する。トッテナムの移転問題(オリンピック・スタジアムかノーサンバーランドか)でさえ、その衝突の場となった。
チームの選手のひとりの値段を提示されれば、リヴィは決まって「もっと値段を上げるべきだ」と言ってきた。リスクを取るべき世界において、それは何ら間違ってはいない。結果が下降線をたどらない限りは。
++++
リヴィ会長については、特にスタジアムの問題に対するスタンスを見ているとビジネスマンとして深いなーと感じるし、戦う会長って感じがする場面も多い。他クラブが割と現場のことは放任するのに対して、リヴィの移籍市場でのコミットぶりは見てて興味深い。ただ、クラブとして一枚岩であってほしい。
Tuesday, August 30, 2011
Monday, August 29, 2011
シェイ・ギヴンの静かなる安定感
この間のジョナサン・ウッドゲイトのコラムで僕の心を揺さぶってくれた「ニューヨーク・タイムズ」紙のコラムには、アメリカのメディアの割に、結構読み応えがあるものが多い。今回は、不遇を囲ったマンチェスター・シティからアストン・ヴィラに活躍の場を移した、アイルランド代表シェイ・ギヴンについて。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・ユナイテッドの引退するエドウィン・ファン・デル・サールの後継者探しは、ゴールキーパー・コーチのエリック・スティールがチーフ・スカウトとなり、何カ国ものリーグから幾多の候補者の名が挙がる中、1年以上かけられた。最終的に、20歳のダヴィド・デ・ヘアが選ばれ、ユナイテッドはアドレティコ・マドリーに1,800万ポンドを支払った。デ・ヘアは歴史上2番目に高価なゴールキーパーとなった。
しかし、新たなゴールキーパーを求めていたのは、ユナイテッドだけではなかった。アストン・ヴィラは、不動のスタメンだったアメリカ人のブラッド・フリーデルがトッテナムに移籍し、新たに監督に就任したアレックス・マクリーシュには代役を探す時間があまり無かった。しかし、マクリーシュ就任の1ヵ月後、シェイ・ギヴンが静かにヴィラ・パークにやってきた。
事実、ギヴィンが漂わせていたのは、控えめな態度だけだった。プレミアリーグで最も安定感があり信頼が置ける選手とみなされながら、ギヴンは真のワールドクラスへと正しい評価に近づくことを避け続ける、摩訶不思議な能力を発揮し続けてきた。
キャリアをスタートさせたのは、ケニー・ダルグリッシュが率い、プレミアを制したブラックバーン・ローバーズだったが、そこではティム・フラワーズからポジションを奪うことはできなかった。それでも、ダルグリッシュがニューカッスルの監督に就任すると、彼は再びギヴンと契約した。ギヴンのキャリアが花開いたのはここだった。このアイルランド人は、ダルグリッシュとその後任のルート・フリットのファースト・チョイスとなり、太腿の負傷でポジションを明け渡す時期があったにせよ、ニューカッスルで10年以上先発の座をキープした。
ギヴンは、ピーター・シュマイケルの引退後、ゴールキーパー問題に頭を悩ませていたマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソンに見落とされていた。チェルシーやリバプール、アーセナルもギヴンをバイパスし、海外の高価な代替品を選んでいた。しかし、2009年のミッドシーズンに700万ポンドでマンチェスター・シティに移籍すると、彼もついに大きな決断をしたように見えた。ギヴンはそれまでのキャリア通りのプレーを続け、シティ・オブ・マンチェスター・スタジアムで輝いた。「テレグラフ」紙の選ぶ、この10年のベスト・ゴールキーパーにも選ばれた。
しかし、ギヴンが額面通りの活躍をしていると、シティからバーミンガムにローンで出ていたジョー・ハートがリーグで最も素晴らしい若手ゴールキーパーという評価を受け、ファビオ・カペッロのイングランド代表にも名を連ねるようになった。そして、ハートがローンから戻ると、ギヴンがベンチに座ることになり、プレーの場はほぼカーリング・カップに限られてしまった。十分な金額のサラリーを受け取れるのであればベンチに座り続けても満足、というのはでたらめな話で、ギヴンの場合もまさにそうだった。シティで、週給8万ポンドを受け取っていたにも関わらず、35歳のギヴンは大幅な減給を受け入れてヴィラに加わった。この補強は、退団していったフリーデルですら賞賛していた。
ボビー・サモラの2つの決定機を止めたフルハム戦でヴィラでのデビューを飾ると、3-1でブラックバーンを下したゲームでホームでもデビューした。ここで見ることができたのは、静かにかつての「安定感と信頼を併せ持つ」キーパーに戻ったギヴンだった。ユナイテッドでは、デ・ヘアのプレーは今のところ冒険に等しく、ファーガソンはシュマイケルやファン・デル・サールのような経験ある選手と契約しなかったことを後悔していることだろう。その一方で、ヴィラではギヴンがこれまで何年もしてきたように、静かに好セーブを続けている。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・ユナイテッドの引退するエドウィン・ファン・デル・サールの後継者探しは、ゴールキーパー・コーチのエリック・スティールがチーフ・スカウトとなり、何カ国ものリーグから幾多の候補者の名が挙がる中、1年以上かけられた。最終的に、20歳のダヴィド・デ・ヘアが選ばれ、ユナイテッドはアドレティコ・マドリーに1,800万ポンドを支払った。デ・ヘアは歴史上2番目に高価なゴールキーパーとなった。
しかし、新たなゴールキーパーを求めていたのは、ユナイテッドだけではなかった。アストン・ヴィラは、不動のスタメンだったアメリカ人のブラッド・フリーデルがトッテナムに移籍し、新たに監督に就任したアレックス・マクリーシュには代役を探す時間があまり無かった。しかし、マクリーシュ就任の1ヵ月後、シェイ・ギヴンが静かにヴィラ・パークにやってきた。
事実、ギヴィンが漂わせていたのは、控えめな態度だけだった。プレミアリーグで最も安定感があり信頼が置ける選手とみなされながら、ギヴンは真のワールドクラスへと正しい評価に近づくことを避け続ける、摩訶不思議な能力を発揮し続けてきた。
キャリアをスタートさせたのは、ケニー・ダルグリッシュが率い、プレミアを制したブラックバーン・ローバーズだったが、そこではティム・フラワーズからポジションを奪うことはできなかった。それでも、ダルグリッシュがニューカッスルの監督に就任すると、彼は再びギヴンと契約した。ギヴンのキャリアが花開いたのはここだった。このアイルランド人は、ダルグリッシュとその後任のルート・フリットのファースト・チョイスとなり、太腿の負傷でポジションを明け渡す時期があったにせよ、ニューカッスルで10年以上先発の座をキープした。
ギヴンは、ピーター・シュマイケルの引退後、ゴールキーパー問題に頭を悩ませていたマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソンに見落とされていた。チェルシーやリバプール、アーセナルもギヴンをバイパスし、海外の高価な代替品を選んでいた。しかし、2009年のミッドシーズンに700万ポンドでマンチェスター・シティに移籍すると、彼もついに大きな決断をしたように見えた。ギヴンはそれまでのキャリア通りのプレーを続け、シティ・オブ・マンチェスター・スタジアムで輝いた。「テレグラフ」紙の選ぶ、この10年のベスト・ゴールキーパーにも選ばれた。
しかし、ギヴンが額面通りの活躍をしていると、シティからバーミンガムにローンで出ていたジョー・ハートがリーグで最も素晴らしい若手ゴールキーパーという評価を受け、ファビオ・カペッロのイングランド代表にも名を連ねるようになった。そして、ハートがローンから戻ると、ギヴンがベンチに座ることになり、プレーの場はほぼカーリング・カップに限られてしまった。十分な金額のサラリーを受け取れるのであればベンチに座り続けても満足、というのはでたらめな話で、ギヴンの場合もまさにそうだった。シティで、週給8万ポンドを受け取っていたにも関わらず、35歳のギヴンは大幅な減給を受け入れてヴィラに加わった。この補強は、退団していったフリーデルですら賞賛していた。
ボビー・サモラの2つの決定機を止めたフルハム戦でヴィラでのデビューを飾ると、3-1でブラックバーンを下したゲームでホームでもデビューした。ここで見ることができたのは、静かにかつての「安定感と信頼を併せ持つ」キーパーに戻ったギヴンだった。ユナイテッドでは、デ・ヘアのプレーは今のところ冒険に等しく、ファーガソンはシュマイケルやファン・デル・サールのような経験ある選手と契約しなかったことを後悔していることだろう。その一方で、ヴィラではギヴンがこれまで何年もしてきたように、静かに好セーブを続けている。
Friday, August 26, 2011
ファーガソンの第4世代
若手主体のチームで結果を出しつつあるマンチェスター・ユナイテッド。「インディペンデント」紙のグレン・ムーア記者は、これをファーガソンの「第4世代」と表現している。
++(以下、要訳)++
それは完全にカーリング・カップ向けのチームというわけではなかったが、月曜日に対戦したトッテナムのハリー・レドナップは、メンバーを見て「勝機あり」と踏んだだろう。
ウェイン・ルーニー、ナニ、そしてパトリス・エヴラはプレーしたが、昨シーズンの栄冠をもたらしたメンバーの多くはそこにはいなかった。ファーディナンド、ヴィディッチ、ギッグス、スコールズ、ファン・デル・サール、キャリック、フレッチャー、エルナンデス、ベルバトフの誰ひとりとしていなかった。ゴールマウスにはルーキー、ディフェンスは半分以上がリザーブ、中盤とアタッカーのひとりずつも控えだった。
90分後。アレックス・ファーガソンは、またしても素晴らしいチームを作り上げていることが分かった。過去と同じように、イングランド人によるコアは4人の若いライオンが固めた。フィル・ジョーンズ、ダニー・ウェルベック、クリス・スモーリングにトム・クレバリがチームの心臓だった。彼らの年齢はそれぞれ、19、20、21、22だ。そこに加わるのは、20歳のダヴィド・デ・ヘア、21歳の双子ファビオとラファエル、23歳のアンデルソン、24歳のナニだが、ある意味、アーセン・ヴェンゲルよりもヴェンゲルらしく新参者でハイクラスなチームを作り上げた。そしてウェイン・ルーニーもまだ25歳であり、アントニオ・ヴァレンシアとアシュリー・ヤングが26歳だ。サラリーやトロフィーの数においてたいていの選手の要求に応えられるとすれば、このチームこそが、何年にもわたってユナイテッドをトップに保つチームであろう。
この先には波もあるだろう。若い選手は下降線を描きがちだし、そのまま消えてしまう者もいるだろう。しかし、ファーガソンにはチームを成熟させてきた経験がある。以下は、これまでに彼が作り上げてきた歴史だ。
1988-93:雛鳥から王者へ
1986年にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任した時、チームには才能があったが、頭打ちになっていた。他の多くのクラブと同様に、チームにはアルコールが蔓延していた。それでも、彼はFAユースカップで2度ファイナルに進出していた若手選手たちを引き継いでいた。1989年の元旦、彼はあるカルテットをピッチに送り込んだ。まだ10代だったリー・シャープ、マーク・ロビンスと20歳のリー・マーティン、ラッセル・ビアーズモアだ。この4人を含むチームは、スリリングな試合でユナイテッドの3-1の勝利に貢献した。
それは夜明け前の微かな光だった。若きスターたちは、そこまで素晴らしくは無いか、マーティンのようにケガに苦しんだ。ファーガソンには、ブライアン・ロブソン、ブライアン・マクレアー、ジム・レイトン、スティーブ・ブルースといったプロを抱えてはいたものの、まだ標準レベルには達していなかったのだ。ユナイテッドは、11位、そして13位でシーズンを終える。
それでも、この雛鳥たちは現代のユナイテッドを作り上げるのに貢献したと言える。1990年の1月には、ロビンスは、FAカップの3回戦でノッティンガム・フォレスト相手に伝説的なゴールを決め、さらには残留争いに苦しむ中イースターの日にもゴールを決めた。マーティンはFAカップのファイナル、クリスタル・パレスとの再試合で勝利を決めるゴールを決めた。これらが、ファーガソンに必要だった時間を稼いだ。
若きスターたちはドロップアウトしていったが、選手獲得のための多額の投資がファーガソンに強力なチームを作ることを可能にした。1991年には、デニス・アーウィン、ギャリー・パリスター、ポール・インスがやってきて、ユナイテッドはカップ・ウィナーズ・カップで優勝した。
ファーガソンはこの道をさらに進んだ。彼はここにピーター・シュマイケル、ポール・パーカー、そしてアンドレイ・カンチェルスキスを加え、タイトルの獲得に手を伸ばした。この年は2位に終わったが、1年後、エリック・カントナを加えたチームは、遂に1967年以来となるリーグタイトルを獲得したのだ。
1995-2003:「ガキじゃ何も勝ち取れない」
当時そう言ったアラン・ハンセンが、後の冷やかしにウンザリしてしばしば口にするように、彼は完全に誤っていたわけではなかった。1995-96年にダブルを勝ち取った「ガキ」のチームは、単にプレミアリーグに送り出された子供のチームではなかった。このチームにはカントナ、パリスター、アーウィン、シュマイケルにブルース、そして若いが既にダイナミックだったロイ・キーンがいて骨格とノウハウがあり、若者が育つのを助けていた。
事実、ファーガソンはブラックバーンに次いで2位でフィニッシュし、FAカップではエヴァートンに敗れたた1994-95年のチームを解体しようとしていたわけではなかった。彼はキーンがリーダシップを学んだポール・インスを外そうとは思っていたが、契約の取り決め上、契約を解消することもできたマーク・ヒューズを失いたくはなかった。キース・ギレスピーはアンディ・コールを獲得するための取引の一部として放出しており、アンドレイ・カンチェルスキスもキープしたかったが、代理人は移籍を強行した。このためセントラルのミッドフィルダーに仕立て上げられていたデイヴィッド・ベッカムは右サイドでプレーし、そこでの出来が素晴らしかったため、以降のキャリアの大半もそのポジションで過ごすことになった。
ベッカムの早い出現が偶発的であったとしても、ファーガソンはライアン・ギッグスが既に輝きを放っていたチームに、ベッカム、ポール・スコールズ、ニッキー・バット、そしてギャリーとフィルのネヴィル兄弟を入れることを長く予期していた。これらの「ガキ」たちのチームは、ドワイト・ヨークやヤープ・スタムといった抜け目のない補強にも支えられ、1999年に三冠を達成する鉄壁のチームとなり、以降、5年間に4つのリーグ・タイトルを勝ち取った。
2004-2011:チェルシーの挑戦を受けて
ロマン・アブラモビッチによるチェルシー買収は、ゲームのルールを変えた。それまでは、ユナイテッドはどんなクラブよりも高い条件を提示することができた。2,900万ポンドでのリオ・ファーディナンド獲得は、ファーガソンによる6度目のイギリス記録更新だった。それ以降、彼が移籍金額の記録を更新することは無くなった。アーセナルの無配優勝の後、チェルシーが2004年から06年にかけて連覇をした時には、オールド・トラフォードには不支持の声が渦巻き、ファーガソンの将来も公に議論された。
ファーガソンは既に反攻の準備を整えており、ウェイン・ルーニーやクリスティアーノ・ロナウドなど、急成長中の才能を世界中から探していた。彼らをパトリス・エヴラやネマニャ・ヴィディッチといった経験ある即戦力と遅れてやってきたエドウィン・ファン・デルサールで補った。これに続くのは、4つの国内リーグタイトルと、ひとつのチャンピオンズリーグ制覇であった。
しかしながら、5月にウェンブリーで対戦したバルセロナの優位は明らかだった。これを受けてファーガソンはチームの再構築に着手し、これまでの枠組みに、経験を積んだ若手や海外か連れてきた才能を移植していった。これまでの実績を見て、彼が良いチームを作れないと賭けるものなどいるだろうか?
++(以下、要訳)++
それは完全にカーリング・カップ向けのチームというわけではなかったが、月曜日に対戦したトッテナムのハリー・レドナップは、メンバーを見て「勝機あり」と踏んだだろう。
ウェイン・ルーニー、ナニ、そしてパトリス・エヴラはプレーしたが、昨シーズンの栄冠をもたらしたメンバーの多くはそこにはいなかった。ファーディナンド、ヴィディッチ、ギッグス、スコールズ、ファン・デル・サール、キャリック、フレッチャー、エルナンデス、ベルバトフの誰ひとりとしていなかった。ゴールマウスにはルーキー、ディフェンスは半分以上がリザーブ、中盤とアタッカーのひとりずつも控えだった。
90分後。アレックス・ファーガソンは、またしても素晴らしいチームを作り上げていることが分かった。過去と同じように、イングランド人によるコアは4人の若いライオンが固めた。フィル・ジョーンズ、ダニー・ウェルベック、クリス・スモーリングにトム・クレバリがチームの心臓だった。彼らの年齢はそれぞれ、19、20、21、22だ。そこに加わるのは、20歳のダヴィド・デ・ヘア、21歳の双子ファビオとラファエル、23歳のアンデルソン、24歳のナニだが、ある意味、アーセン・ヴェンゲルよりもヴェンゲルらしく新参者でハイクラスなチームを作り上げた。そしてウェイン・ルーニーもまだ25歳であり、アントニオ・ヴァレンシアとアシュリー・ヤングが26歳だ。サラリーやトロフィーの数においてたいていの選手の要求に応えられるとすれば、このチームこそが、何年にもわたってユナイテッドをトップに保つチームであろう。
この先には波もあるだろう。若い選手は下降線を描きがちだし、そのまま消えてしまう者もいるだろう。しかし、ファーガソンにはチームを成熟させてきた経験がある。以下は、これまでに彼が作り上げてきた歴史だ。
1988-93:雛鳥から王者へ
1986年にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任した時、チームには才能があったが、頭打ちになっていた。他の多くのクラブと同様に、チームにはアルコールが蔓延していた。それでも、彼はFAユースカップで2度ファイナルに進出していた若手選手たちを引き継いでいた。1989年の元旦、彼はあるカルテットをピッチに送り込んだ。まだ10代だったリー・シャープ、マーク・ロビンスと20歳のリー・マーティン、ラッセル・ビアーズモアだ。この4人を含むチームは、スリリングな試合でユナイテッドの3-1の勝利に貢献した。
それは夜明け前の微かな光だった。若きスターたちは、そこまで素晴らしくは無いか、マーティンのようにケガに苦しんだ。ファーガソンには、ブライアン・ロブソン、ブライアン・マクレアー、ジム・レイトン、スティーブ・ブルースといったプロを抱えてはいたものの、まだ標準レベルには達していなかったのだ。ユナイテッドは、11位、そして13位でシーズンを終える。
それでも、この雛鳥たちは現代のユナイテッドを作り上げるのに貢献したと言える。1990年の1月には、ロビンスは、FAカップの3回戦でノッティンガム・フォレスト相手に伝説的なゴールを決め、さらには残留争いに苦しむ中イースターの日にもゴールを決めた。マーティンはFAカップのファイナル、クリスタル・パレスとの再試合で勝利を決めるゴールを決めた。これらが、ファーガソンに必要だった時間を稼いだ。
若きスターたちはドロップアウトしていったが、選手獲得のための多額の投資がファーガソンに強力なチームを作ることを可能にした。1991年には、デニス・アーウィン、ギャリー・パリスター、ポール・インスがやってきて、ユナイテッドはカップ・ウィナーズ・カップで優勝した。
ファーガソンはこの道をさらに進んだ。彼はここにピーター・シュマイケル、ポール・パーカー、そしてアンドレイ・カンチェルスキスを加え、タイトルの獲得に手を伸ばした。この年は2位に終わったが、1年後、エリック・カントナを加えたチームは、遂に1967年以来となるリーグタイトルを獲得したのだ。
1995-2003:「ガキじゃ何も勝ち取れない」
当時そう言ったアラン・ハンセンが、後の冷やかしにウンザリしてしばしば口にするように、彼は完全に誤っていたわけではなかった。1995-96年にダブルを勝ち取った「ガキ」のチームは、単にプレミアリーグに送り出された子供のチームではなかった。このチームにはカントナ、パリスター、アーウィン、シュマイケルにブルース、そして若いが既にダイナミックだったロイ・キーンがいて骨格とノウハウがあり、若者が育つのを助けていた。
事実、ファーガソンはブラックバーンに次いで2位でフィニッシュし、FAカップではエヴァートンに敗れたた1994-95年のチームを解体しようとしていたわけではなかった。彼はキーンがリーダシップを学んだポール・インスを外そうとは思っていたが、契約の取り決め上、契約を解消することもできたマーク・ヒューズを失いたくはなかった。キース・ギレスピーはアンディ・コールを獲得するための取引の一部として放出しており、アンドレイ・カンチェルスキスもキープしたかったが、代理人は移籍を強行した。このためセントラルのミッドフィルダーに仕立て上げられていたデイヴィッド・ベッカムは右サイドでプレーし、そこでの出来が素晴らしかったため、以降のキャリアの大半もそのポジションで過ごすことになった。
ベッカムの早い出現が偶発的であったとしても、ファーガソンはライアン・ギッグスが既に輝きを放っていたチームに、ベッカム、ポール・スコールズ、ニッキー・バット、そしてギャリーとフィルのネヴィル兄弟を入れることを長く予期していた。これらの「ガキ」たちのチームは、ドワイト・ヨークやヤープ・スタムといった抜け目のない補強にも支えられ、1999年に三冠を達成する鉄壁のチームとなり、以降、5年間に4つのリーグ・タイトルを勝ち取った。
2004-2011:チェルシーの挑戦を受けて
ロマン・アブラモビッチによるチェルシー買収は、ゲームのルールを変えた。それまでは、ユナイテッドはどんなクラブよりも高い条件を提示することができた。2,900万ポンドでのリオ・ファーディナンド獲得は、ファーガソンによる6度目のイギリス記録更新だった。それ以降、彼が移籍金額の記録を更新することは無くなった。アーセナルの無配優勝の後、チェルシーが2004年から06年にかけて連覇をした時には、オールド・トラフォードには不支持の声が渦巻き、ファーガソンの将来も公に議論された。
ファーガソンは既に反攻の準備を整えており、ウェイン・ルーニーやクリスティアーノ・ロナウドなど、急成長中の才能を世界中から探していた。彼らをパトリス・エヴラやネマニャ・ヴィディッチといった経験ある即戦力と遅れてやってきたエドウィン・ファン・デルサールで補った。これに続くのは、4つの国内リーグタイトルと、ひとつのチャンピオンズリーグ制覇であった。
しかしながら、5月にウェンブリーで対戦したバルセロナの優位は明らかだった。これを受けてファーガソンはチームの再構築に着手し、これまでの枠組みに、経験を積んだ若手や海外か連れてきた才能を移植していった。これまでの実績を見て、彼が良いチームを作れないと賭けるものなどいるだろうか?
Wednesday, August 24, 2011
尊重されるべきブラックバーンの遺産
日本の『Footballista』にも寄稿していることから、その名を知る人も多いであろう「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター記者。いくらかでもフットボールに理解のある者であれば、こんな形でこれまで適切な経営で好感をもたれてきたクラブがズタズタにされるのは見たくないであろう、と語る。
++(以下、要訳)++
ローヴァーズを買収したインド企業のヴェンキーズは、どんな宣伝もそれは良い宣伝だ、という信念でクラブを運営しているのだろう。選手たちをチキンのCMに起用したり、カカやロナウジーニョ、デイヴィッド・ベッカムへのオファーを公言したりしているが、フットボールリーグとプレミアリーグ、双方の創設メンバーでもあるこの古豪クラブは、もっと尊敬をもって扱われるべきだ。
ヴェンキーズは、いくつかの良い決断をしていて、ユニフォームに若者を支援する皇室の慈善団体「Prince's Trust」のロゴを入れたのはその一つだ。しかし、クラブを率いるデサイ氏が懸念を強めるローヴァーズのファンから受け入れられるには、フットボールのサイクルを考慮するのはもちろんのこと、サポーターともっとコミュニケーションを取り、ダウアウトの明らかな問題に取り組むことが必要で、非現実的なオファー話に関わるのでなく、1875年以来の歴史を誇るクラブの経営に相応しい人物であることを証明することが必要だ。デサイ氏には、イングランドの伝統とサポーターの感情に向き合う役割があるのだ。
それは、ブラックバーンの選手たちがヴェンキーズのチキンを喜んでむさぼり食う、あの派手な広告で見る者を困惑させることでは決してない。そして、深刻に警鐘を鳴らすのはダグアウトや幹部からの人材の流出だ。
サム・アラーダイスは、限られたリソースの中で良い仕事をしていた。フィル・ジョーンズのような若手を登用し、ローヴァーズが常に良く組織された競争力あるチームであるよう気にかけていた。彼は大きな当惑をもって追い出され、同様の驚きとともにスティーブ・キーンがその後を継いだ。
単にキーンがグラスゴーの出身だからといって、それがすなわちサー・アレックス・ファーガソンと同様の魔力を持つ一員であることは意味しない。イーウッド・パークでの暗雲への不安感に苛まれるポール・ロビンソンや、ミチェル・サルガド、ライアン・ネルセン、デイヴィッド・ダン、そしてジェイソン・ロバーツといったベテラン選手には、もっと良い処遇があって然るべきとの同情が集まるだろう。
確実に言えることは、彼らにはもっと経験のある監督が相応しいということだ。チームがキーンの下で今後もプレミアリーグで苦闘を続けるとしたら、デイヴィッド・ホイレットのような才能がフィル・ジョーンズを追うまでの時間はどれだけだろうか?
ヴェンキーズは、クラブでの戦略、特にキーンのサポートについて、サポーターに明らかにする必要がある。一部のサポーターは、この新たな経営陣への苛立ちからシーズンチケットを更新していない。この先悪い結果と失望が続けば、クラブへの不支持がより強烈になっていくだけだ。
ダグアウトでの一体感に問題が出始めた一方で、運営側でも人材を失った。ジョン・ウィリアムスは高い尊敬を受けてきた会長だったが、マンチェスター・シティに引き抜かれてしまい、ファンの支持を集めていた役員のトム・フィンも辞任した。監督のポジションに応募しながら、不合格通知を受け取った筋金入りのローヴァーズ好きたちは、その礼儀正しい手紙を誇りをもって保管している。フィンは、そうした筋金入りたちを人間として扱った。彼はローヴァーズのハートであり、魂だった。
ウィリアムスとフィンが去ると、地元紙「ランカシャー・イーブニング・テレグラフ」のウェブサイトには、これだけ献身的だった2人の辞任に対する怒りの投稿が渦巻いた。ブラックバーンの選手たち同様、このサポーターたちにももっと相応しい扱いがあるのだ。例えばウィリアムスであれば、ファンからのメールに返信をし、クラブの決断を説明し、シンプルにブラックバーンは良い状態にあることを伝えるはずだ。実際そうだった。
きのうひとりのサポーターがヴェンキーズにメールを送った。多くが共感する涙を伴う叫びで、彼が愛したローヴァーズは「鮮烈な空中分解に向かっている」と声を上げた。そして「ヴェンキーズはファンの前に出てきて、クラブを一番に想っている、ということを確信させるべきだ。キーンがやっていることは週を追うごとに理解不能になっている」と続けた。
オーナーたちは耳を傾けているだろうか?商業界でのデサイ氏の実績は、彼女がバカなどではなく、ビジネスをどう回していくか、理解しているように見える。しかし、フットボールクラブ、特にブラックバーンのようなクラブは単なるビジネスではない。人々の生活の試金石なのであり、サポーターを無視することは愚の骨頂だ。なぜ、ジャック・ウォーカー(元会長)のような人物がクラブの守護神的存在になっているのか、ヴェンキーズはローヴァーズの歴史をまず学ぶ必要がある。イーウッド・パークは、クラブを愛し、鉄鋼で財を成し、1995年にプレミアリーグのタイトルを獲った時に涙を浮かべ、トロフィーを初めて授かった子供のように抱いていたジャックによって再建されたホームだ。
ウォーカーにとっては、それは栄光であり、地元のクラブの誇りであり、都会のビッグクラブと相まみえてそれを打ち負かすことだった。ウォーカーがローヴァーズに誇りをもたらしたのだ。彼は際立った手腕を見せ、意義ある投資をした。マネジメントにケニー・ダルグリッシュ、選手にはアラン・シアラーを引き入れ、スタジアムも改修した。
イーウッド・パークは、ウォーカーから贈られた遺産で、それはブロックホール・ヴィレッジにあるトレーニング・センターとアカデミーも同様だ。ウォーカーの記憶をもって、ヴェンキーズを叩くのはたやすいことだが、ヴェンキーズはまずウォーカーの繊細な先導から学ぶ必要があるだろう。
++++
テレビでプレミアリーグを観るようになったのは、1994-95シーズンが最初だった。カントナのカンフーキックのシーズン。ワールドカップでクリンスマンが活躍し、彼が移籍したスパーズというクラブが気になり始めた頃、NHKの衛星放送で何試合かずつ放送があった。ケニー・ダルグリッシュが指揮し、後にスパーズに移籍するティム・シャーウッド(現コーチ)がキャプテンを務めるブラックバーンは、アラン・シアラーとクリス・サットンの2トップがゴールを量産して優勝した。僕はてっきり強いクラブ なんだと思ったが、以後はまた降格したり中位をさまよって現在に至っている。しかし、このCMは本当に酷い。確かにズタズタ。
++(以下、要訳)++
ローヴァーズを買収したインド企業のヴェンキーズは、どんな宣伝もそれは良い宣伝だ、という信念でクラブを運営しているのだろう。選手たちをチキンのCMに起用したり、カカやロナウジーニョ、デイヴィッド・ベッカムへのオファーを公言したりしているが、フットボールリーグとプレミアリーグ、双方の創設メンバーでもあるこの古豪クラブは、もっと尊敬をもって扱われるべきだ。
ヴェンキーズは、いくつかの良い決断をしていて、ユニフォームに若者を支援する皇室の慈善団体「Prince's Trust」のロゴを入れたのはその一つだ。しかし、クラブを率いるデサイ氏が懸念を強めるローヴァーズのファンから受け入れられるには、フットボールのサイクルを考慮するのはもちろんのこと、サポーターともっとコミュニケーションを取り、ダウアウトの明らかな問題に取り組むことが必要で、非現実的なオファー話に関わるのでなく、1875年以来の歴史を誇るクラブの経営に相応しい人物であることを証明することが必要だ。デサイ氏には、イングランドの伝統とサポーターの感情に向き合う役割があるのだ。
それは、ブラックバーンの選手たちがヴェンキーズのチキンを喜んでむさぼり食う、あの派手な広告で見る者を困惑させることでは決してない。そして、深刻に警鐘を鳴らすのはダグアウトや幹部からの人材の流出だ。
サム・アラーダイスは、限られたリソースの中で良い仕事をしていた。フィル・ジョーンズのような若手を登用し、ローヴァーズが常に良く組織された競争力あるチームであるよう気にかけていた。彼は大きな当惑をもって追い出され、同様の驚きとともにスティーブ・キーンがその後を継いだ。
単にキーンがグラスゴーの出身だからといって、それがすなわちサー・アレックス・ファーガソンと同様の魔力を持つ一員であることは意味しない。イーウッド・パークでの暗雲への不安感に苛まれるポール・ロビンソンや、ミチェル・サルガド、ライアン・ネルセン、デイヴィッド・ダン、そしてジェイソン・ロバーツといったベテラン選手には、もっと良い処遇があって然るべきとの同情が集まるだろう。
確実に言えることは、彼らにはもっと経験のある監督が相応しいということだ。チームがキーンの下で今後もプレミアリーグで苦闘を続けるとしたら、デイヴィッド・ホイレットのような才能がフィル・ジョーンズを追うまでの時間はどれだけだろうか?
ヴェンキーズは、クラブでの戦略、特にキーンのサポートについて、サポーターに明らかにする必要がある。一部のサポーターは、この新たな経営陣への苛立ちからシーズンチケットを更新していない。この先悪い結果と失望が続けば、クラブへの不支持がより強烈になっていくだけだ。
ダグアウトでの一体感に問題が出始めた一方で、運営側でも人材を失った。ジョン・ウィリアムスは高い尊敬を受けてきた会長だったが、マンチェスター・シティに引き抜かれてしまい、ファンの支持を集めていた役員のトム・フィンも辞任した。監督のポジションに応募しながら、不合格通知を受け取った筋金入りのローヴァーズ好きたちは、その礼儀正しい手紙を誇りをもって保管している。フィンは、そうした筋金入りたちを人間として扱った。彼はローヴァーズのハートであり、魂だった。
ウィリアムスとフィンが去ると、地元紙「ランカシャー・イーブニング・テレグラフ」のウェブサイトには、これだけ献身的だった2人の辞任に対する怒りの投稿が渦巻いた。ブラックバーンの選手たち同様、このサポーターたちにももっと相応しい扱いがあるのだ。例えばウィリアムスであれば、ファンからのメールに返信をし、クラブの決断を説明し、シンプルにブラックバーンは良い状態にあることを伝えるはずだ。実際そうだった。
きのうひとりのサポーターがヴェンキーズにメールを送った。多くが共感する涙を伴う叫びで、彼が愛したローヴァーズは「鮮烈な空中分解に向かっている」と声を上げた。そして「ヴェンキーズはファンの前に出てきて、クラブを一番に想っている、ということを確信させるべきだ。キーンがやっていることは週を追うごとに理解不能になっている」と続けた。
オーナーたちは耳を傾けているだろうか?商業界でのデサイ氏の実績は、彼女がバカなどではなく、ビジネスをどう回していくか、理解しているように見える。しかし、フットボールクラブ、特にブラックバーンのようなクラブは単なるビジネスではない。人々の生活の試金石なのであり、サポーターを無視することは愚の骨頂だ。なぜ、ジャック・ウォーカー(元会長)のような人物がクラブの守護神的存在になっているのか、ヴェンキーズはローヴァーズの歴史をまず学ぶ必要がある。イーウッド・パークは、クラブを愛し、鉄鋼で財を成し、1995年にプレミアリーグのタイトルを獲った時に涙を浮かべ、トロフィーを初めて授かった子供のように抱いていたジャックによって再建されたホームだ。
ウォーカーにとっては、それは栄光であり、地元のクラブの誇りであり、都会のビッグクラブと相まみえてそれを打ち負かすことだった。ウォーカーがローヴァーズに誇りをもたらしたのだ。彼は際立った手腕を見せ、意義ある投資をした。マネジメントにケニー・ダルグリッシュ、選手にはアラン・シアラーを引き入れ、スタジアムも改修した。
イーウッド・パークは、ウォーカーから贈られた遺産で、それはブロックホール・ヴィレッジにあるトレーニング・センターとアカデミーも同様だ。ウォーカーの記憶をもって、ヴェンキーズを叩くのはたやすいことだが、ヴェンキーズはまずウォーカーの繊細な先導から学ぶ必要があるだろう。
++++
テレビでプレミアリーグを観るようになったのは、1994-95シーズンが最初だった。カントナのカンフーキックのシーズン。ワールドカップでクリンスマンが活躍し、彼が移籍したスパーズというクラブが気になり始めた頃、NHKの衛星放送で何試合かずつ放送があった。ケニー・ダルグリッシュが指揮し、後にスパーズに移籍するティム・シャーウッド(現コーチ)がキャプテンを務めるブラックバーンは、アラン・シアラーとクリス・サットンの2トップがゴールを量産して優勝した。僕はてっきり強いクラブ なんだと思ったが、以後はまた降格したり中位をさまよって現在に至っている。しかし、このCMは本当に酷い。確かにズタズタ。
Monday, August 22, 2011
分岐点にあるトッテナムの鍵はモドリッチ
スパーズの今期についての記事が無いものかとずっとアンテナを張ってたものの、基本的にモドリッチの騒動にまつわるものが多くて、手が出なかったのだけど、この「テレグラフ」紙のダンカン・ホワイト記者のまとめ記事は、モドリッチの件にも触れつつ、比較的引いた目線で好感が持てた。
++(以下、要訳)++
2度目のチャンピオンズリーグ出場とオリンピック・スタジアムの使用権確保を逃し、クラブは前のめりになって他の大枚をはたくビッグクラブと競い合うのか、そもそも現在の位置にたどり着くのを助けた持続可能で慎ましいクラブ経営にこだわり続けるのか、板ばさみの状態になっているようだ。
この先、移籍市場が閉まるまでの間に起こることが、スパーズがチャンピオンズリーグに相応しいのかを決め、この先3ヶ月でスタジアム問題に起こることが、長期的にクラブがヨーロッパのエリートと競っていけるのか決めることになるだろう。昨シーズンのような活気はないかもしれないが、トッテナムの未来に向けては重要なシーズンなのだ。
新加入選手
使える資金が手元にあるのは確実だ。クラブの1月の動きは活発で、ディエゴ・フォルランやジュセッペ・ロッシ、アンディ・キャロル、フェルナンド・ジョレンテ、そしてセルヒオ・アグエロさえ獲得を狙っていた。ハリー・レドナップは、ダニエル・リヴィ会長は確かな選手には3,000万ポンドでも支払う気があった、と言っている。クラブはチャンピオンズリーグから2,700万ポンドの収入を得ており、ある程度の選手獲得が可能な状態なのだ。
1月の候補リストからも明らかなのは、優先順位が高いのが、4-5-1でワントップを務められるストライカーだ。ジャメイン・デフォーとピーター・クラウチはパートナーがいた方が活きるタイプで、一番適正があるロマン・パヴリュチェンコは安定感に欠ける。短期的な解決策はエマニュエル・アデバヨールのローンだろうが、長期的にはレアンドロ・ダミアンの獲得が望ましい。トッテナムは夏の初めにこの22歳のブラジル人ストライカーを獲得しようとしたが、3,000万ポンド以上を求める所属のインテルナシオナルと条件で合意できなかった。スパーズはすでにサンドロを獲得しているインテルナシオナルと良い関係を持っているが、バルセロナとインテル・ミラノも獲得に動いており、これを実現するのは困難な挑戦となるかもしれない。
レドナップは中盤とセンターバックも強化したいと考えており、スコット・パーカーはその候補だったが、現在はレアル・マドリードのラッサナ・ディアラとの契約が近づいている。ディフェンスでは、レドナップはマンチェスター・ユナイテッドに移籍したフィル・ジョーンズの獲得を狙って失敗したことを明かしたが、そのブラックバーンのクリス・サンバを好んでいる。
「我々は今もディアラやアデバヨールの話を進めているが、どんな進捗があるのかは分からない。それに獲得したとしても、彼らがどの程度プレーする準備ができているかは、今の所属クラブでのトレーニング次第だからね」とレドナップは語った。
モドリッチの状況
仮にモドリッチが売られれば、すべてが変わるはずだ。レドナップはこの夏初めて、クラブの鋼の抵抗に壁にはヒビが入っていることを示した。先週「ルカについては2つのオプションがあり、素晴らしい選手を確保するか、資金を得て4人補強し、良いチームを作るということもできる」とレドナップは述べた。
これは会長のリヴィに対する、事態を先延ばしにするなという明瞭なメッセージだ。レドナップはチームには使える選手が足りないと見ていて、彼が必要と考える選手を獲得するためにはモドリッチを犠牲にすることもできるのだ。チェルシーはまだ金額を上げたオファーを出しておらず、リヴィは依然売却を拒否する姿勢を示し、モドリッチの残留に自分の信用を懸けている。3,500万~4,000万ポンドともなればリヴィも態度を軟化させこともあるかもしれないが、オファーが殺到でもしない限り、モドリッチ放出は自爆に等しい。
レドナップは、「会長がモドリッチは売らないと言った以上、それが決断だ」と述べている。
過剰な人員
モドリッチを売って3、4人の選手を獲得したとして、それはトッテナムのもうひとつの問題を増大させるだけだ。過剰な選手数だ。トッテナムはこの夏、選手の売却に苦しんできており、登録できる以上の人員を抱えることになりかねない。トッテナムは良い給料を支払っており、それが移籍先を見つけるのを難しくしている。
ジョナサン・ウッドゲイトはリリースされ、ジェイミー・オハラは500万ポンドでウルヴズ、ロビー・キーンは350万ポンドでLAギャラクシーに加入した。そしてスパーズはジョヴァンニ・ドス・サントス、アラン・ハットン、デイヴィッド・ベントレーを売ろうとしていて、ジャメイン・ジーナス、ニコ・クラニチャル、セバスチャン・バソング、ウィルソン・パラシオス、そして3人のストライカーのうちの一人も、適正なオファーがあれば取引に応じる構えだ。
プレミアリーグの規約では、ファースト・チームには25人の選手しか登録できず、これを超えては21歳以下の選手しか加えられない。昨シーズン最大の25人を登録し、スティーブン・ピーナールを獲得、そしてギャレス・ベイルとジョヴァンニ・ドス・サントスは22歳になった。この点が、スパーズは売る前には買いたがらない理由だ。9月2日に選手登録を行う時には、余計な選手に給料を支払っていたくはないのだ。現在のところ、スパーズには27人の21歳以上の選手がいる。
新スタジアム
トッテナムにはクラブの成長を維持するためのスタジアムが必要で、仮にこの4、5年を上手く運ぶことができれば、ヨーロッパのエリート・クラブに挑戦し続けるクラブへと脱皮できるはずだ。今シーズンの終わりにはチャンピオンズリーグの常連クラブに肩を並べる施設を誇るのブルズ・クロスの練習場がオープンするが、ノーザンバーランド開発プロジェクトを進めることができなければ、結局ホワイト・ハート・レーンにとどまることになる。
オリンピック・スタジアムの入札に敗れ、クラブは再びトッテナム地区でのノーザンバーランド開発プロジェクトに集中しているが、この実現の可能性はトッテナムが自治体の支援金を得られるかに左右される。すでに地域成長基金(RGF)助成金には申請を行っており、最終的には副首相のニック・クレッグによる閣僚会議で決定されるが、その前に、ロード・ヘセルティンが率いる独立諮問会議に持ち込まれる。助成金を受けられることになった場合は、その資金はスタジアム自体ではなく鉄道・駅の改良や近辺の公共の場所、その他インフラの改良に充てられる。
最近起きた最悪の暴動はこのエリアで起こっており、スパーズは地元の自治体と、プロジェクトがどのようにこの地域の高く増大している失業率の改善に役立つことができるか、議論を重ねている。
トッテナムのそもそもの動機は、より大きな収入を得るために大きなスタジアムを持つことであるが、地元の再開発はロンドン市長のボリス・ジョンソンにとっては嬉しい副産物であろう。地元のサポートが無ければ、トッテナムはまた振り出しに戻ることになる。クラブはピッチの中でも外でも、これ以上現状維持を続けることはできないのだ。
++++
ということで、モドリッチの件はそのうち決着するだろうけど、他はこれからしばらくずっとついて回る話。サラリーキャップも含め、スパーズは良くも悪くも持続可能かどうかを凄く重視する。アイデンティティの再定義が必要な時期なんだよな、ホント。
++(以下、要訳)++
2度目のチャンピオンズリーグ出場とオリンピック・スタジアムの使用権確保を逃し、クラブは前のめりになって他の大枚をはたくビッグクラブと競い合うのか、そもそも現在の位置にたどり着くのを助けた持続可能で慎ましいクラブ経営にこだわり続けるのか、板ばさみの状態になっているようだ。
この先、移籍市場が閉まるまでの間に起こることが、スパーズがチャンピオンズリーグに相応しいのかを決め、この先3ヶ月でスタジアム問題に起こることが、長期的にクラブがヨーロッパのエリートと競っていけるのか決めることになるだろう。昨シーズンのような活気はないかもしれないが、トッテナムの未来に向けては重要なシーズンなのだ。
新加入選手
使える資金が手元にあるのは確実だ。クラブの1月の動きは活発で、ディエゴ・フォルランやジュセッペ・ロッシ、アンディ・キャロル、フェルナンド・ジョレンテ、そしてセルヒオ・アグエロさえ獲得を狙っていた。ハリー・レドナップは、ダニエル・リヴィ会長は確かな選手には3,000万ポンドでも支払う気があった、と言っている。クラブはチャンピオンズリーグから2,700万ポンドの収入を得ており、ある程度の選手獲得が可能な状態なのだ。
1月の候補リストからも明らかなのは、優先順位が高いのが、4-5-1でワントップを務められるストライカーだ。ジャメイン・デフォーとピーター・クラウチはパートナーがいた方が活きるタイプで、一番適正があるロマン・パヴリュチェンコは安定感に欠ける。短期的な解決策はエマニュエル・アデバヨールのローンだろうが、長期的にはレアンドロ・ダミアンの獲得が望ましい。トッテナムは夏の初めにこの22歳のブラジル人ストライカーを獲得しようとしたが、3,000万ポンド以上を求める所属のインテルナシオナルと条件で合意できなかった。スパーズはすでにサンドロを獲得しているインテルナシオナルと良い関係を持っているが、バルセロナとインテル・ミラノも獲得に動いており、これを実現するのは困難な挑戦となるかもしれない。
レドナップは中盤とセンターバックも強化したいと考えており、スコット・パーカーはその候補だったが、現在はレアル・マドリードのラッサナ・ディアラとの契約が近づいている。ディフェンスでは、レドナップはマンチェスター・ユナイテッドに移籍したフィル・ジョーンズの獲得を狙って失敗したことを明かしたが、そのブラックバーンのクリス・サンバを好んでいる。
「我々は今もディアラやアデバヨールの話を進めているが、どんな進捗があるのかは分からない。それに獲得したとしても、彼らがどの程度プレーする準備ができているかは、今の所属クラブでのトレーニング次第だからね」とレドナップは語った。
モドリッチの状況
仮にモドリッチが売られれば、すべてが変わるはずだ。レドナップはこの夏初めて、クラブの鋼の抵抗に壁にはヒビが入っていることを示した。先週「ルカについては2つのオプションがあり、素晴らしい選手を確保するか、資金を得て4人補強し、良いチームを作るということもできる」とレドナップは述べた。
これは会長のリヴィに対する、事態を先延ばしにするなという明瞭なメッセージだ。レドナップはチームには使える選手が足りないと見ていて、彼が必要と考える選手を獲得するためにはモドリッチを犠牲にすることもできるのだ。チェルシーはまだ金額を上げたオファーを出しておらず、リヴィは依然売却を拒否する姿勢を示し、モドリッチの残留に自分の信用を懸けている。3,500万~4,000万ポンドともなればリヴィも態度を軟化させこともあるかもしれないが、オファーが殺到でもしない限り、モドリッチ放出は自爆に等しい。
レドナップは、「会長がモドリッチは売らないと言った以上、それが決断だ」と述べている。
過剰な人員
モドリッチを売って3、4人の選手を獲得したとして、それはトッテナムのもうひとつの問題を増大させるだけだ。過剰な選手数だ。トッテナムはこの夏、選手の売却に苦しんできており、登録できる以上の人員を抱えることになりかねない。トッテナムは良い給料を支払っており、それが移籍先を見つけるのを難しくしている。
ジョナサン・ウッドゲイトはリリースされ、ジェイミー・オハラは500万ポンドでウルヴズ、ロビー・キーンは350万ポンドでLAギャラクシーに加入した。そしてスパーズはジョヴァンニ・ドス・サントス、アラン・ハットン、デイヴィッド・ベントレーを売ろうとしていて、ジャメイン・ジーナス、ニコ・クラニチャル、セバスチャン・バソング、ウィルソン・パラシオス、そして3人のストライカーのうちの一人も、適正なオファーがあれば取引に応じる構えだ。
プレミアリーグの規約では、ファースト・チームには25人の選手しか登録できず、これを超えては21歳以下の選手しか加えられない。昨シーズン最大の25人を登録し、スティーブン・ピーナールを獲得、そしてギャレス・ベイルとジョヴァンニ・ドス・サントスは22歳になった。この点が、スパーズは売る前には買いたがらない理由だ。9月2日に選手登録を行う時には、余計な選手に給料を支払っていたくはないのだ。現在のところ、スパーズには27人の21歳以上の選手がいる。
新スタジアム
トッテナムにはクラブの成長を維持するためのスタジアムが必要で、仮にこの4、5年を上手く運ぶことができれば、ヨーロッパのエリート・クラブに挑戦し続けるクラブへと脱皮できるはずだ。今シーズンの終わりにはチャンピオンズリーグの常連クラブに肩を並べる施設を誇るのブルズ・クロスの練習場がオープンするが、ノーザンバーランド開発プロジェクトを進めることができなければ、結局ホワイト・ハート・レーンにとどまることになる。
オリンピック・スタジアムの入札に敗れ、クラブは再びトッテナム地区でのノーザンバーランド開発プロジェクトに集中しているが、この実現の可能性はトッテナムが自治体の支援金を得られるかに左右される。すでに地域成長基金(RGF)助成金には申請を行っており、最終的には副首相のニック・クレッグによる閣僚会議で決定されるが、その前に、ロード・ヘセルティンが率いる独立諮問会議に持ち込まれる。助成金を受けられることになった場合は、その資金はスタジアム自体ではなく鉄道・駅の改良や近辺の公共の場所、その他インフラの改良に充てられる。
最近起きた最悪の暴動はこのエリアで起こっており、スパーズは地元の自治体と、プロジェクトがどのようにこの地域の高く増大している失業率の改善に役立つことができるか、議論を重ねている。
トッテナムのそもそもの動機は、より大きな収入を得るために大きなスタジアムを持つことであるが、地元の再開発はロンドン市長のボリス・ジョンソンにとっては嬉しい副産物であろう。地元のサポートが無ければ、トッテナムはまた振り出しに戻ることになる。クラブはピッチの中でも外でも、これ以上現状維持を続けることはできないのだ。
++++
ということで、モドリッチの件はそのうち決着するだろうけど、他はこれからしばらくずっとついて回る話。サラリーキャップも含め、スパーズは良くも悪くも持続可能かどうかを凄く重視する。アイデンティティの再定義が必要な時期なんだよな、ホント。
Sunday, August 21, 2011
莫大な収入と寄付についてのアス・エコトの提案
トッテナム・ホットスパーの左サイドバック、カメルーン代表のベノワ・アス・エコトは、その飄々とした立ち振る舞いとしなやかな守備、正確なフィード、休まない鉄人ぶりと適度なポカで、スパーズファンの間では隠れた人気だ。そんなエコトが、ロンドンでの暴動の後にした意外な提案とは。「テレグラフ」紙のオリヴァー・ブラウン記者のエッセイ。
++(以下、要訳)++
ハリー・レドナップは、気取って気ままに振る舞うこのカメルーン人に苛立つこともあるが、そんなレドナップでさえ、暴動の時にはアス・エコトの神経も張り詰めていたんじゃないか、と認める。
緊急事態は過ぎ去ったものの、臆面もない気取り屋の彼も現実に目を向けている。先週、トッテナム・ハイロード近辺を破壊して回った暴徒たちの温床とも言われるブロードウォーター・ファーム一帯を訪れたアス・エコトは、クラブと地元に向けられる同情を良い意味で裏切って見せた。そして、プレミアリーグの選手たちは、収入の1%か2%くらいを地元のコミュニティに還元してはどうか、とジェスチャー混じりに彼が強調するとは、誰も予測できなかっただろう。
彼の無私無欲ぶりを称賛する前に、彼は矛盾しがちなキャラクターの持ち主だと強調しておいた方が良いだろう。トッテナム・ホットスパーに加入して間もない頃、彼はチームメイトの偽善ぶりを一刀両断にして、自分の唯一のモチベーションは金だ、と説明し、「世界にひとりでもクラブのために契約して、『このシャツを愛してる』なんて言う奴がいるのかよ」と雄弁に問うていた。「人が第一に話すこと言えば金のことだ。だから俺が金のためにプレーするんだ、って言った時にみんなが『奴は金目当ての傭兵だ』ってショックを受けてたのが信じられなかった。どの選手も同じさ」
彼の欲が、クラブのバッジにキスする他の選手と同じだとして、我々は彼を称賛する人々が、並外れて彼のことを支持することを記しておかなければならないだろう。
彼は喜んでN17(トッテナム近辺)のレストランで食事をするし、オイスター・カード(日本のSuica等と同じICカード)すら持っている。これらは、うつろな目でヘッドフォンをかけているアンドロイドのような選手たちの振る舞いとはまったく異なる。アス・エコトにとって、フットボール選手というのはどこかに密閉されているような存在ではないし、彼はフットボール選手という偏屈な種族を解放する存在になるかもしれない。
それでも、彼や彼のチームメイトが収入の一部を寄付すべきという主張は、彼の最も特筆すべき発言だ。デロイトのフットボール財務に関する年刊レポートによれば、プレミアリーグの選手は合計で140億ポンドを稼いでいる。アス・エコトに主張を最大化して、2%をここから取ると、2,800万ポンドになる。破壊されたセブン・シスターズ・ロードのいくつかの建物を修復するには十分な金額だ。
収入の一部をチャリティに、というのは盛んに論じられるコンセプトだ。2007年には看護婦たちによる似たような取組があり、トップクラスの選手たちの一日分のサラリーを求めた。これに同意したのがギャリー・ネヴィルとライアン・ギッグスの二人だけだった時にはもっともな怒りの声が上がった。
批評家たちは、ケチな奴らだと糾弾した。擁護するする側は、何がおかしいのかと言い返した。結局のところ、そこには資本主義の稼いだものは取っておくべき、という教えがある。私がハイゲートの地下鉄の駅を降りてからすべての募金箱に金を入れることはできないのと同じことで、フランク・ランパードや他の選手たちは、こうしたすべての要求に黙って応え続けるようなことはしないのだ。この話とは別に、ランパードはガン研究への寄付で称賛を受けている。
しかし、トッテナムがこの25年で最悪の暴動によって荒らされた現在、アス・エコトの言うように「多くを稼ぐ地域の代表としてもっとできないか」と疑問を持つことがおかしなことだろうか?
私が論理の飛躍で矛盾をきたす前に、フットボールも理解しがたい根深き社会の病によって荒らされているスポーツなのだ、ということを認めておきたい。
ゴルフの世界でもケン・グリーンやタイガー・ウッズのように、この議論で論争を呼んできた例があるが、最後に私は日本の石川遼という逆の例を引き合いに出したい。石川は、2011シーズンに稼ぎ出す賞金のすべてを3月の津波の被害者に差し出すことを申し出た。荒廃した仙台の様子に影響を受けたこの19歳は「これが一番のお金の使い方だ、と信じている」と語っている。
ひとシーズンで彼は100万ポンド以上を稼ぎ出す。これだけ若い青年による謙虚な取り組みと比べてみれば、プレミアリーグの選手たちの莫大な収入の2%を集めるコンセプトは、さして大げさな利他主義ではないし、最低限彼らができるレベルのことであるように思える。
++++
最後に石川遼まで出てきたけど、元々伝えたかったのはエコトの不思議だけど愛されるキャラクターなんだよな。『Footballista』で山中忍さんが、ワースト11の左サイドバックに選んでたけど、それは無いだろ、と微妙に憤ってしまった。あの飄々とした立ち振る舞いの中には、実は熱いものが…、とか思わせてやっぱ飄々、ナイスなキャラ。
++(以下、要訳)++
ハリー・レドナップは、気取って気ままに振る舞うこのカメルーン人に苛立つこともあるが、そんなレドナップでさえ、暴動の時にはアス・エコトの神経も張り詰めていたんじゃないか、と認める。
緊急事態は過ぎ去ったものの、臆面もない気取り屋の彼も現実に目を向けている。先週、トッテナム・ハイロード近辺を破壊して回った暴徒たちの温床とも言われるブロードウォーター・ファーム一帯を訪れたアス・エコトは、クラブと地元に向けられる同情を良い意味で裏切って見せた。そして、プレミアリーグの選手たちは、収入の1%か2%くらいを地元のコミュニティに還元してはどうか、とジェスチャー混じりに彼が強調するとは、誰も予測できなかっただろう。
彼の無私無欲ぶりを称賛する前に、彼は矛盾しがちなキャラクターの持ち主だと強調しておいた方が良いだろう。トッテナム・ホットスパーに加入して間もない頃、彼はチームメイトの偽善ぶりを一刀両断にして、自分の唯一のモチベーションは金だ、と説明し、「世界にひとりでもクラブのために契約して、『このシャツを愛してる』なんて言う奴がいるのかよ」と雄弁に問うていた。「人が第一に話すこと言えば金のことだ。だから俺が金のためにプレーするんだ、って言った時にみんなが『奴は金目当ての傭兵だ』ってショックを受けてたのが信じられなかった。どの選手も同じさ」
彼の欲が、クラブのバッジにキスする他の選手と同じだとして、我々は彼を称賛する人々が、並外れて彼のことを支持することを記しておかなければならないだろう。
彼は喜んでN17(トッテナム近辺)のレストランで食事をするし、オイスター・カード(日本のSuica等と同じICカード)すら持っている。これらは、うつろな目でヘッドフォンをかけているアンドロイドのような選手たちの振る舞いとはまったく異なる。アス・エコトにとって、フットボール選手というのはどこかに密閉されているような存在ではないし、彼はフットボール選手という偏屈な種族を解放する存在になるかもしれない。
それでも、彼や彼のチームメイトが収入の一部を寄付すべきという主張は、彼の最も特筆すべき発言だ。デロイトのフットボール財務に関する年刊レポートによれば、プレミアリーグの選手は合計で140億ポンドを稼いでいる。アス・エコトに主張を最大化して、2%をここから取ると、2,800万ポンドになる。破壊されたセブン・シスターズ・ロードのいくつかの建物を修復するには十分な金額だ。
収入の一部をチャリティに、というのは盛んに論じられるコンセプトだ。2007年には看護婦たちによる似たような取組があり、トップクラスの選手たちの一日分のサラリーを求めた。これに同意したのがギャリー・ネヴィルとライアン・ギッグスの二人だけだった時にはもっともな怒りの声が上がった。
批評家たちは、ケチな奴らだと糾弾した。擁護するする側は、何がおかしいのかと言い返した。結局のところ、そこには資本主義の稼いだものは取っておくべき、という教えがある。私がハイゲートの地下鉄の駅を降りてからすべての募金箱に金を入れることはできないのと同じことで、フランク・ランパードや他の選手たちは、こうしたすべての要求に黙って応え続けるようなことはしないのだ。この話とは別に、ランパードはガン研究への寄付で称賛を受けている。
しかし、トッテナムがこの25年で最悪の暴動によって荒らされた現在、アス・エコトの言うように「多くを稼ぐ地域の代表としてもっとできないか」と疑問を持つことがおかしなことだろうか?
私が論理の飛躍で矛盾をきたす前に、フットボールも理解しがたい根深き社会の病によって荒らされているスポーツなのだ、ということを認めておきたい。
ゴルフの世界でもケン・グリーンやタイガー・ウッズのように、この議論で論争を呼んできた例があるが、最後に私は日本の石川遼という逆の例を引き合いに出したい。石川は、2011シーズンに稼ぎ出す賞金のすべてを3月の津波の被害者に差し出すことを申し出た。荒廃した仙台の様子に影響を受けたこの19歳は「これが一番のお金の使い方だ、と信じている」と語っている。
ひとシーズンで彼は100万ポンド以上を稼ぎ出す。これだけ若い青年による謙虚な取り組みと比べてみれば、プレミアリーグの選手たちの莫大な収入の2%を集めるコンセプトは、さして大げさな利他主義ではないし、最低限彼らができるレベルのことであるように思える。
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最後に石川遼まで出てきたけど、元々伝えたかったのはエコトの不思議だけど愛されるキャラクターなんだよな。『Footballista』で山中忍さんが、ワースト11の左サイドバックに選んでたけど、それは無いだろ、と微妙に憤ってしまった。あの飄々とした立ち振る舞いの中には、実は熱いものが…、とか思わせてやっぱ飄々、ナイスなキャラ。
Saturday, August 20, 2011
ジョナサン・ウッドゲイトの終わりなき上昇気流
相次ぐケガに悩まされ続け、契約満了に伴い昨シーズン限りでスパーズからリリースとなったジョナサン・ウッドゲイトは、今季からトニー・ピューリス率いるストーク・シティに籍を置くこととなった。才能に恵まれながら、ケガとの戦いで何度も躓いてきた彼の挑戦が、アメリカは「ニューヨーク・タイムス」のコラムに描かれている。
++(以下、要訳)++
「もし」というのは、誰にとっても大きな質問だ。
ストーク・シティのジョナサン・ウッドゲイトにとって、彼のサッカー人生の中で唯一と言ってもいい質問だろう。選手として必要な要素をほぼすべて持ちながら、それが彼に何ももたらさないというのはある意味残酷なことでもある(それはウッドゲイトに限ったことではない。現在QPRに所属するキーロン・ダイアーも同様の例だ)。ただし、ダイアーの才能には限りがある一方で、ウッドゲイトはケガさえなければボビー・ムーア以来最高のセンターバックになっていたはずだった。
これは大胆な言い方で、誰も断言などできないのだが、もし完璧な守備陣を構築しようとしているのであれば、31歳のウッドゲイトが4人のバックラインにもたらす要素は、まず第一に考えるべき素晴らしいものだ。フィジカル面では彼は大型で屈強だし、スピードと敏捷性を兼ね備え、ゲームを読む力を持っている。それに、ボール捌きも優れたもので、シンプルな配給で見事に仲間を動かして見せる。ウッドゲイトはすべてを持っているのだ。
不運なことに彼には最もタフな敵がいて、この敵にだけは彼も手を焼き続けた。リーズ・ユナイテッドに所属していた頃、彼は6シーズンで104試合に出場したにとどまったが、彼の才能をもってすれば本来到達できるであろうレベルに達するには、フィットしていた時間が短すぎた。デイヴィッド・オレアリーの若いチームが、30年前のドン・リヴィの偉大なリーズに近づき始めると、彼もようやく一人前になり始めた。
役員たちは新監督のテリー・ベナブルズに対して、彼の「王冠の宝石」であるウッドゲイトは売らないと約束していたにも関わらず、その後の財政危機によって、ウッドゲイトも緊急に現金が必要だったクラブのために売られる要員のひとりとなった。クラブのためになることが、選手のためにもなると判断されたのだ。ニューカッスルは1,470万ドルを支払う代わりに将来のスターを手に入れた。
やがてウッドゲイトはリーズで見せていた才能を開花させ、タインサイドでもファンのお気に入りの選手となった。2004年4月にニューカッスルがUEFAカップ・マルセイユ戦で0-0と引き分けた時の彼のパフォーマンスは、ヨーロッパのプレスの間では語り草だ。若き日のディディエ・ドログバを誰も見たこともないような流儀で完璧に抑えた。それは、そのシーズンのあらゆる選手の中でも際立つデフィエンスのプレーであり、相手のマルセイユの監督だったジョセ・アニゴもこの若きデフィンダーが目立っていたことを認めている。「ウッドゲイトの印象は強烈だった。彼は本物のクオリティを持ったディフェンダーだ」。同様に、アーセナルやPSVアイントホーフェンを向こうに回しても同じレベルのパフォーマンスを見せつけ、イングランド代表のセンターバックとなるのは時間の問題だった。彼は24歳にしてその座をつかんだ。
そして、冒頭の2語「もし(What if?)」が出てくるのだ。もし彼が出場28試合に終わったニューカッスルでケガと戦わずに済んでいたら?もしレアル・マドリーに売られた時によりフィットすることができて、2シーズンで9試合以上プレーできていたら?そしてミドルスブラに戻り、3年以上ぶりに代表に呼ばれた時に、ケガでこれを断念せずに済んでいたら?
ウッドゲイトは、2008年の1月にトッテナムに加入し、チェルシーとのカーリングカップのファイナルでは決勝ゴールを決めたが、またすぐに彼のキャリアはケガによって荒廃させられ、その後2シーズンで4ゲームしかプレーすることができなかった。彼のキャリアはいま再び危機に瀕しているのだ。
彼のピッチ外での行いに目をやれば、同情をするのは難しいかもしれない -14歳にして彼の行った暴行に対する警察からの警告を受けると、その後も複数の事件に関与して顎の骨を折ることすらあった。そして、2000年の3月には当時リーズでチームメイトだったリー・ボウヤーと共にリーズのナイトクラブの外で学生を襲撃した罪で起訴された。彼の罪は軽めのものであったが、クラブからはサラリー8週間分の罰金を科され、加えて100時間のボランティア活動と代表チームでのプレー禁止 - 代表監督であったスヴェン・ゴラン・エリクソンの希望には反していたが - が言い渡され、2002年の日本と韓国でのワールドカップ出場を逃すことになった。これらすべてをもってしても、ウッドゲイトの並外れた才能を考えると、どこか不当な扱いを受けてしまったと感じざるを得ない。
ピッチ外で大人の振る舞いができるようになり、ケガの苦しみから脱しつつあるように見える中、ウッドゲイトはシーズンの終わりにスパーズからリリースされると、ストーク・シティの監督、トニー・ピューリスに新たなチャンスを貰った。彼の契約は試合に出場するごとに支払われる仕組み(pay as you play)で、シーズンの終わりに1年間の契約延長オプションが付いているが、これはこのオフで最も抜け目のない契約となる可能性がある。彼は、ライアン・ショークロス、ロベルト・フート、最近加入が決まったマシュー・アップソンからなる鉄壁のストーク・ディフェンスに加わった。スコアレス・ドローに終わった日曜日のブリタニア・スタジアムでのチェルシー戦では、シャープな動きを見せていたフェルナンド・トーレスを巧妙に封じ込め、その圧倒的な才能を垣間見せた。
当然ピューリスはウッドゲイトの出場時間とフィットネスを注意深く管理するだろうし、この先の道はまだ長い。それでも、もしシーズンで合計30試合出場することができ、1年間の延長契約にサインすることができたとしたら、彼は十分にやったと言えるだろうし、プレミアリーグは再びジョナサン・ウッドゲイトの類稀なる才能を堪能する幸運にめぐりあえるだろう。
まさに、「もし」なのだ。
++++
記者はイギリスの人なのかもしれないけど、こんなコラムがアメリカのメディアにしか出ないんだったら勿体ない。スパーズでのキャリアの終わりは本当に惜しいもので、チャンピオンズリーグのミラン戦での途中出場が最後、(少なくともスパーズでのキャリアって意味では)線香花火みたいになっちまった。この途中出場も本当に久しぶりで、スカイの実況が起用への驚きと共に「ジョナサン・ウッドゲイト、フットボールの世界におかえり」と興奮気味に伝えてたのが印象的だった。まだ31、やれるはず。
++(以下、要訳)++
「もし」というのは、誰にとっても大きな質問だ。
ストーク・シティのジョナサン・ウッドゲイトにとって、彼のサッカー人生の中で唯一と言ってもいい質問だろう。選手として必要な要素をほぼすべて持ちながら、それが彼に何ももたらさないというのはある意味残酷なことでもある(それはウッドゲイトに限ったことではない。現在QPRに所属するキーロン・ダイアーも同様の例だ)。ただし、ダイアーの才能には限りがある一方で、ウッドゲイトはケガさえなければボビー・ムーア以来最高のセンターバックになっていたはずだった。
これは大胆な言い方で、誰も断言などできないのだが、もし完璧な守備陣を構築しようとしているのであれば、31歳のウッドゲイトが4人のバックラインにもたらす要素は、まず第一に考えるべき素晴らしいものだ。フィジカル面では彼は大型で屈強だし、スピードと敏捷性を兼ね備え、ゲームを読む力を持っている。それに、ボール捌きも優れたもので、シンプルな配給で見事に仲間を動かして見せる。ウッドゲイトはすべてを持っているのだ。
不運なことに彼には最もタフな敵がいて、この敵にだけは彼も手を焼き続けた。リーズ・ユナイテッドに所属していた頃、彼は6シーズンで104試合に出場したにとどまったが、彼の才能をもってすれば本来到達できるであろうレベルに達するには、フィットしていた時間が短すぎた。デイヴィッド・オレアリーの若いチームが、30年前のドン・リヴィの偉大なリーズに近づき始めると、彼もようやく一人前になり始めた。
役員たちは新監督のテリー・ベナブルズに対して、彼の「王冠の宝石」であるウッドゲイトは売らないと約束していたにも関わらず、その後の財政危機によって、ウッドゲイトも緊急に現金が必要だったクラブのために売られる要員のひとりとなった。クラブのためになることが、選手のためにもなると判断されたのだ。ニューカッスルは1,470万ドルを支払う代わりに将来のスターを手に入れた。
やがてウッドゲイトはリーズで見せていた才能を開花させ、タインサイドでもファンのお気に入りの選手となった。2004年4月にニューカッスルがUEFAカップ・マルセイユ戦で0-0と引き分けた時の彼のパフォーマンスは、ヨーロッパのプレスの間では語り草だ。若き日のディディエ・ドログバを誰も見たこともないような流儀で完璧に抑えた。それは、そのシーズンのあらゆる選手の中でも際立つデフィエンスのプレーであり、相手のマルセイユの監督だったジョセ・アニゴもこの若きデフィンダーが目立っていたことを認めている。「ウッドゲイトの印象は強烈だった。彼は本物のクオリティを持ったディフェンダーだ」。同様に、アーセナルやPSVアイントホーフェンを向こうに回しても同じレベルのパフォーマンスを見せつけ、イングランド代表のセンターバックとなるのは時間の問題だった。彼は24歳にしてその座をつかんだ。
そして、冒頭の2語「もし(What if?)」が出てくるのだ。もし彼が出場28試合に終わったニューカッスルでケガと戦わずに済んでいたら?もしレアル・マドリーに売られた時によりフィットすることができて、2シーズンで9試合以上プレーできていたら?そしてミドルスブラに戻り、3年以上ぶりに代表に呼ばれた時に、ケガでこれを断念せずに済んでいたら?
ウッドゲイトは、2008年の1月にトッテナムに加入し、チェルシーとのカーリングカップのファイナルでは決勝ゴールを決めたが、またすぐに彼のキャリアはケガによって荒廃させられ、その後2シーズンで4ゲームしかプレーすることができなかった。彼のキャリアはいま再び危機に瀕しているのだ。
彼のピッチ外での行いに目をやれば、同情をするのは難しいかもしれない -14歳にして彼の行った暴行に対する警察からの警告を受けると、その後も複数の事件に関与して顎の骨を折ることすらあった。そして、2000年の3月には当時リーズでチームメイトだったリー・ボウヤーと共にリーズのナイトクラブの外で学生を襲撃した罪で起訴された。彼の罪は軽めのものであったが、クラブからはサラリー8週間分の罰金を科され、加えて100時間のボランティア活動と代表チームでのプレー禁止 - 代表監督であったスヴェン・ゴラン・エリクソンの希望には反していたが - が言い渡され、2002年の日本と韓国でのワールドカップ出場を逃すことになった。これらすべてをもってしても、ウッドゲイトの並外れた才能を考えると、どこか不当な扱いを受けてしまったと感じざるを得ない。
ピッチ外で大人の振る舞いができるようになり、ケガの苦しみから脱しつつあるように見える中、ウッドゲイトはシーズンの終わりにスパーズからリリースされると、ストーク・シティの監督、トニー・ピューリスに新たなチャンスを貰った。彼の契約は試合に出場するごとに支払われる仕組み(pay as you play)で、シーズンの終わりに1年間の契約延長オプションが付いているが、これはこのオフで最も抜け目のない契約となる可能性がある。彼は、ライアン・ショークロス、ロベルト・フート、最近加入が決まったマシュー・アップソンからなる鉄壁のストーク・ディフェンスに加わった。スコアレス・ドローに終わった日曜日のブリタニア・スタジアムでのチェルシー戦では、シャープな動きを見せていたフェルナンド・トーレスを巧妙に封じ込め、その圧倒的な才能を垣間見せた。
当然ピューリスはウッドゲイトの出場時間とフィットネスを注意深く管理するだろうし、この先の道はまだ長い。それでも、もしシーズンで合計30試合出場することができ、1年間の延長契約にサインすることができたとしたら、彼は十分にやったと言えるだろうし、プレミアリーグは再びジョナサン・ウッドゲイトの類稀なる才能を堪能する幸運にめぐりあえるだろう。
まさに、「もし」なのだ。
++++
記者はイギリスの人なのかもしれないけど、こんなコラムがアメリカのメディアにしか出ないんだったら勿体ない。スパーズでのキャリアの終わりは本当に惜しいもので、チャンピオンズリーグのミラン戦での途中出場が最後、(少なくともスパーズでのキャリアって意味では)線香花火みたいになっちまった。この途中出場も本当に久しぶりで、スカイの実況が起用への驚きと共に「ジョナサン・ウッドゲイト、フットボールの世界におかえり」と興奮気味に伝えてたのが印象的だった。まだ31、やれるはず。
Friday, August 19, 2011
スティーブ・ブルースのこだわり
このオフは大型補強でも注目を集めて、いよいよ上位を伺う基盤ができてきた感のあるサンダーランド。週末のニューカッスルとのタイン・ウィア・ダービーを前に、スティーブ・ブルース監督は「ニューカッスルより上にいること」へのこだわりを「インディペンデント」紙に語った。
++(以下、要訳)++
スティーブ・ブルースは、サンダーランドの永遠のライバルであるニューカッスルを、ダービーで破ることよりも、最近続いているリーグの順位で優位を保つことを最優先しており、その点については非常に頑固だ。
サンダーランドは地元のライバルを相手に明日のホーム開幕戦を迎えるが、昨年はマグパイズを相手に1ポイントしか取れず、タインサイドで1-5と強烈に踏みにじられて敗れる苦しみを味わった。ブルースはこのセント・ジェームズ・パークでの敗戦を、30年近いキャリアの中でもっとも恥ずかしい経験だと考えており、スタジアム・オブ・ライトでアラン・パーデュー率いるニューカッスルのダブルを阻止したアサモア・ジャンの同点弾のようなリベンジをしたいと望んでいる。
サンダーランドは、昨シーズンをニューカッスルより2つ上の10位でプレミアリーグを終えた。勝利が意味するところを問われると、タインサイド出身のブルースは「ニューカッスルに勝つことが、サポーターに何を意味するかは理解している。私にとって重要なことは、3シーズン続けてニューカッスルよりも上の順位でシーズンを終えていることだ。こんなことは長い間無かったし、今年も彼らよりも上の順位で終えることが目標だ。」
「サンダーランドの監督である限り、大事なことは彼らより上でシーズンを終えることで、これはアラン・パーデューだって同じはずだ。ダービーで勝てばそれが身を助けるのは確かだが、それがすべてじゃない。もちろん、それがすべてというサポーターがいくらかいることも知っている。『何位で終えようが、ニューカッスルに勝てば関係ない』という考えだろうが、私は決してそうではない」
昨シーズンのハロウィンの日、セント・ジェームズ・パークでのホラー・ショーで、ブルースは彼自身や選手たちのことを考え直さざるを得なくなった。結果論になるが、サンダーランドにはダービーの日の白熱をコントロールする術に長けていなかったのだ。
しかし、彼は今回は同じ過ちを犯さないだろう。このオフには、マンチェスター・ユナイテッドとそれぞれの代表チームで最高レベルのプレーをしてきたウェス・ブラウンとジョン・オシェイを獲得した。(アイルランド代表のオシェイは、ハムストリングの負傷により練習への復帰が遅れたため、ダービー出場の可能性は半々)
ブルースは、「あの敗戦は私のキャリア30年で最悪の結果だったと思うし、あんな恥ずかしい思いをした記憶は他にない。しかし、経験から学べば、状況に対応してさらに戦える。チェルシー相手に3-0で勝つ最高の結果を得たのはその2週間後だった」と語った。「去年は私が過ちを犯した。経験が不十分な選手が多すぎたのだろう。責任の一部は私が負わなければならない。我々は、今度の土曜の試合には十分な経験を持って臨めるようにする必要がある。オシェイやブラウンなら問題ない。彼らはチャンピオンズリーグのファイナルのような大舞台を経験しているから、先発したって気後れするようなことなんか無い」
ブルースはさらに、双方のファンが昨年の2試合のようにトラブルで一日を台無しにしないよう懇願した。「そうしたライバル心こそダービーなのだが、ライバル心で留め、昨シーズンのような醜い真似は無しで行こうじゃないか。凶暴な雰囲気になりがちだが、ライバル心と憎しみは別だ」
パーデューは、ダービーにおける双方の対立構造が、論争を呼んでいるニューカッスルのジョーイ・バートンへの怒りに端発するものとならないよう警告している。28歳のミッドフィルダーは、先週末の試合においてアーセナルのアレックス・ソングに踏みつけられ、ジェルビーニョに引っ叩かれることで、また注目を浴びることとなった。しかし、本人の集中を確認した上で移籍リストに載っているバートンを起用したパーデューは、スタジアム・オブ・ライトでの一戦でも起用には何のためらいも無いようだ。
「正直に言えば、ゲームの中で、彼について触れる機会はあるだろう。ジョーイは、この1週間プレスの渦中にあった。彼、そして私が望む以上にね。しかし、もうひとつ着目される点は、彼が良い選手だということだ。向こうは彼を止めねばならない。おそらく、そのことの方がスティーブにとっては頭痛の種なんじゃないかと思うよ」とパーデューは付け加えた。
++++
気がつけば、ブルースの下でサンダーランドはしぶといチームになってきているなと感じる。去年スパーズも勝ち切れなかったし。ただ、「今の」バートンへの注目はメガトン級だから、他の選手たちも違う面でダービーが熱くなるようにコントロールしてほしいもの。
++(以下、要訳)++
スティーブ・ブルースは、サンダーランドの永遠のライバルであるニューカッスルを、ダービーで破ることよりも、最近続いているリーグの順位で優位を保つことを最優先しており、その点については非常に頑固だ。
サンダーランドは地元のライバルを相手に明日のホーム開幕戦を迎えるが、昨年はマグパイズを相手に1ポイントしか取れず、タインサイドで1-5と強烈に踏みにじられて敗れる苦しみを味わった。ブルースはこのセント・ジェームズ・パークでの敗戦を、30年近いキャリアの中でもっとも恥ずかしい経験だと考えており、スタジアム・オブ・ライトでアラン・パーデュー率いるニューカッスルのダブルを阻止したアサモア・ジャンの同点弾のようなリベンジをしたいと望んでいる。
サンダーランドは、昨シーズンをニューカッスルより2つ上の10位でプレミアリーグを終えた。勝利が意味するところを問われると、タインサイド出身のブルースは「ニューカッスルに勝つことが、サポーターに何を意味するかは理解している。私にとって重要なことは、3シーズン続けてニューカッスルよりも上の順位でシーズンを終えていることだ。こんなことは長い間無かったし、今年も彼らよりも上の順位で終えることが目標だ。」
「サンダーランドの監督である限り、大事なことは彼らより上でシーズンを終えることで、これはアラン・パーデューだって同じはずだ。ダービーで勝てばそれが身を助けるのは確かだが、それがすべてじゃない。もちろん、それがすべてというサポーターがいくらかいることも知っている。『何位で終えようが、ニューカッスルに勝てば関係ない』という考えだろうが、私は決してそうではない」
昨シーズンのハロウィンの日、セント・ジェームズ・パークでのホラー・ショーで、ブルースは彼自身や選手たちのことを考え直さざるを得なくなった。結果論になるが、サンダーランドにはダービーの日の白熱をコントロールする術に長けていなかったのだ。
しかし、彼は今回は同じ過ちを犯さないだろう。このオフには、マンチェスター・ユナイテッドとそれぞれの代表チームで最高レベルのプレーをしてきたウェス・ブラウンとジョン・オシェイを獲得した。(アイルランド代表のオシェイは、ハムストリングの負傷により練習への復帰が遅れたため、ダービー出場の可能性は半々)
ブルースは、「あの敗戦は私のキャリア30年で最悪の結果だったと思うし、あんな恥ずかしい思いをした記憶は他にない。しかし、経験から学べば、状況に対応してさらに戦える。チェルシー相手に3-0で勝つ最高の結果を得たのはその2週間後だった」と語った。「去年は私が過ちを犯した。経験が不十分な選手が多すぎたのだろう。責任の一部は私が負わなければならない。我々は、今度の土曜の試合には十分な経験を持って臨めるようにする必要がある。オシェイやブラウンなら問題ない。彼らはチャンピオンズリーグのファイナルのような大舞台を経験しているから、先発したって気後れするようなことなんか無い」
ブルースはさらに、双方のファンが昨年の2試合のようにトラブルで一日を台無しにしないよう懇願した。「そうしたライバル心こそダービーなのだが、ライバル心で留め、昨シーズンのような醜い真似は無しで行こうじゃないか。凶暴な雰囲気になりがちだが、ライバル心と憎しみは別だ」
パーデューは、ダービーにおける双方の対立構造が、論争を呼んでいるニューカッスルのジョーイ・バートンへの怒りに端発するものとならないよう警告している。28歳のミッドフィルダーは、先週末の試合においてアーセナルのアレックス・ソングに踏みつけられ、ジェルビーニョに引っ叩かれることで、また注目を浴びることとなった。しかし、本人の集中を確認した上で移籍リストに載っているバートンを起用したパーデューは、スタジアム・オブ・ライトでの一戦でも起用には何のためらいも無いようだ。
「正直に言えば、ゲームの中で、彼について触れる機会はあるだろう。ジョーイは、この1週間プレスの渦中にあった。彼、そして私が望む以上にね。しかし、もうひとつ着目される点は、彼が良い選手だということだ。向こうは彼を止めねばならない。おそらく、そのことの方がスティーブにとっては頭痛の種なんじゃないかと思うよ」とパーデューは付け加えた。
++++
気がつけば、ブルースの下でサンダーランドはしぶといチームになってきているなと感じる。去年スパーズも勝ち切れなかったし。ただ、「今の」バートンへの注目はメガトン級だから、他の選手たちも違う面でダービーが熱くなるようにコントロールしてほしいもの。
Wednesday, August 17, 2011
プレミアリーグの高額チケットが追いやる世代
高い高い、といわれるプレミアリーグのチケットであるが、実際の肌感覚ではどのくらいなのかというと、インフレ率の約10倍。ファンの内訳が変わるもの道理だと思う。この点を、「ガーディアン」のデイヴィッド・コン記者が深掘りしてくれている。
++(以下、要訳)++
衛星放送の繁栄を助けるためにトップリーグがフットボールリーグから「プレミアリーグ」として分離して20年目、金はフットボールの構造を変え、そしてそれを観る値段も変えてしまった。毎年のチケット値上げはお約束になりつつあるが、 - アーセナルは6.5%値上げ、ストークは据え置き、ブラックバーン・ローバーズには10ポンドの大人チケットがある - ファンが現在支払ってる金額とプレミアリーグ化以前の金額との大きな差は誰の目にも明らかになってきた。
1989-90シーズンは、ヒルスボロの悲劇を受け、スタジアムを全席指定席とすることを提案したピーター・テイラー判事による「テイラー・レポート」が出された年であるが、アレックス・ファーガソン率いるマンチェスター・ユナイテッドの試合は、最安で3.5ポンドで観ることができた。それ以降現在まで、イングランド銀行の言う合計77.1%のインフレを考慮した場合、当時ストレトフォード・エンドやユナイテッド・ロード側で観ていた人たちのチケット代は現在6.2ポンドであるはずだ。しかし、現在のオールド・トラフォードでもっと安いチケットは28ポンドする。これは他のトップクラブと比べて安い方なのだが、チケット代に関してはインフレが700%だったことになる。オールド・トラフォードの席はもっと高い。28ポンドの席はイースト・スタンドとウェスト・スタンドの下の階の席だけだからだ。
アーセナルの試合のうち、カテゴリーAに分類される、チェルシー、リバプール、トッテナム・ホットスパー、マンチェスター・ユナイテッド、そしてマンチェスター・シティとの試合は、1989-90シーズンのハイバリー、ノース・バンクの席であれば、5ポンドで観ることができた。6万の収容人員を誇るエミレーツ・スタジアムはその高額チケットで知られ、イングランド・フットボールの歴史の中で初となる、100ポンドを超える席もある。現在、そのカテゴリーAの試合で一番安いチケットは51ポンドする。これはテイラー・レポート以来のインフレ率が920%であることを意味する。
ヒルスボロの惨劇以降、フットボール・サポーター協会は、スタジアムの全席指定化に反対してきたが、第一にこれはクラブがチケット値上げの口実に使うだろうと考えたからだ。この議論を却下するために、テイラーはレポートに有名な以下のような記述をした。「各クラブは、座席に対して立見よりも高い料金を課そうと考えるだろうが、現在の立見席と同等の料金を最安の座席の値段とする料金構造を築き上げることができるはずだ」
判事は、グラスゴー・レンジャースのアイブロックス・パークの6ポンドという座席料金をテイラー・レポートにおける提案に用いた。これは現在の料金と比べると古臭いものではあるが、それでもフットボール再生の礎となった。当時、フットボール・サポーター協会の会長で、現在はリバプール大学でフットボール産業部門のディレクターを務めるローガン・テイラーは「テイラーは、テレビ放映権料増大によるフットボールの商業革命が近づいているとは考えていなかったと思う」と語っている。
「もちろんスタジアムは誰の目に見ても明らかなくらい改善が進んだが、チケット料金の値上げは必ずしもそれに見合うものではない - 各クラブは、今や選手のサラリーの値上げ競争に一生懸命だ。私がいまリバプールの試合(1989-90年のカテゴリーAのチケット代は4ポンド、現在は45ポンド)を観に行っても、そこにブルジョワやミドルクラスの人々はいない。普通の人々が背伸びをしてチケット代を払っているんだ。そしてチケット代の値上げによって追い出されたのは、老人たちと若者という2つの区分の人々だ」
1980年代においては、フットボールを観るということは、子供たち(大抵は少年だ)がスタジアムに連れて行ってもらう時期から若者として観に行く段階への通過儀礼であり、チケット代の高さゆえに弾き出される者などいなかった。
1989-90年の統計によれば、アンフィールドの一番安いシーズンチケットはわずか60ポンド、ユナイテッドの場合でも96ポンドだった(インフレを考慮して現在の価格に置きかえるとそれぞれ106ポンド、170ポンド)が、今ではリバプールで725ポンド、ユナイテッドで532ポンドだ(インフレ率は各1,108%、454%)。
当時の各クラブは、自分のクラブのサポーターの属性を分析するほど洗練されても商業的でもなかったが、若者が多かったという記憶は当時のレスター大学のサー・ノーマン・チェスター・センターによる調査よるところが大きい。調査は、当時の一部リーグにいたコヴェントリー・シティのファンを対象に行われ、1983年当時でサポーターの22%は16~20歳だった。1992年のアストン・ヴィラでは25%、アーセナルは17%が16~20歳だ。
毎年のプレミアリーグの調査では、若者世代(16歳からチケットは大人料金)のコンスタントな減少が判明している。2006-07年までに16~24歳の世代は9%にまで減少し、良く2007-08年は11%、そして昨シーズンは19%まで急回復しているが、プレミアリーグ側の見解は調査方法の変更によるものだという。
プレミアリーグの調査では、シーズンチケット・ホルダーの13%が16歳以下で、大人の平均年齢は41歳だという。彼らのほぼすべては、クラブへの忠誠心をまだチケット代が手頃な頃に育んだ世代だ。リーグの広報担当者であるダン・ジョンソンは、「チケット代を払えないがために追い出された、と感じている人がいることは認めざるを得ないが、各クラブは手頃な料金でファンを引き付けるための様々な努力をしているし、観る方法は複数ある」と語る。
「20年前は、多くの人々が別々の事情でスタジアムに行けなくなった。雰囲気は険悪で、スタジアムも不適切な状況だった。我々はスタジアムで得られる体験は劇的に向上したと考えているし、それによって観客も大きく増加した。結果的に、より多くの階層の人々がフットボールを観に行くということを快適なものと考えるようになった」
観衆の数は、過去最高のレベルにある。オールド・トラフォードの昨シーズンの平均観客数は74,864人で、キャパシティの75,769人をわずかに下回っただけであった。同じように、エミレーツ・スタジアムも60,361人のキャパシティに対し、平均で59,930人を集めた。2005-06年の94%をわずかに下回るものの、プレミアリーグのスタジアムはキャパシティの92%観客を集めている。
比較的恵まれない北部のクラブ、ボルトンやブラックバーン、ウィガンなどは観衆を維持するために惜しみない努力をし、格安の料金設定をしている。しかしながら、この景気後退の時期にあって、トップクラブは観客たちが収入の多くを高額チケットに割り当て続けることはできないと考えている。試合の1週間前になっても、来週月曜にオールド・トラフォードで行われるスパーズとの一戦のチケットは4,000枚以上売れ残っている。アメリカ人オーナーのグレイザー一家がチケット代の値上げをして以降も何年にも渡ってソールド・アウトが続いていたが、今回は満員になるかは分からない。
現在フットボール・サポーター協会の会長を務めるマルコム・クラークは、「いくつかのクラブは魅力的なオファーをしている」と言う。「しかし、トップクラブ、特にロンドンのクラブの料金は目玉が飛び出るほどだ。かつてスタジアムに通っていたような若者世代には到底払えるものではないし、そうした世代は今興味があればパブで観ているよ」
「伝統的にフットボールというのは誰の手にも届くものであったが、仕事や生活レベルが危機にさらされている現在の経済状況では、さらに多くのコミュニティの人々がスタジアムに行けなくなる可能性がある」
プレミアリーグ開始以降のフットボールの輝かしい成功は、矛盾を多く持つ物語だ。各クラブのコミュニティ・プログラムは、近隣の若者の「社会的関与」を目指したものであるが、その一方でそうした若者を、高額なチケットでスタジアムから遠ざけているのだ。
++++
ホワイト・ハート・レーンに通ってた頃、僕はシェルフ・サイドと呼ばれる東スタンド下の階にいたのだけど、チケット代は37ポンドから56ポンドだった。5試合も観れば今の浦和のシーズン・チケットが買えちゃう値段で、ちょっと日本の感覚とは違うんだよな、既に。少し前のレートなら1万円超えちゃうから。
++(以下、要訳)++
衛星放送の繁栄を助けるためにトップリーグがフットボールリーグから「プレミアリーグ」として分離して20年目、金はフットボールの構造を変え、そしてそれを観る値段も変えてしまった。毎年のチケット値上げはお約束になりつつあるが、 - アーセナルは6.5%値上げ、ストークは据え置き、ブラックバーン・ローバーズには10ポンドの大人チケットがある - ファンが現在支払ってる金額とプレミアリーグ化以前の金額との大きな差は誰の目にも明らかになってきた。
1989-90シーズンは、ヒルスボロの悲劇を受け、スタジアムを全席指定席とすることを提案したピーター・テイラー判事による「テイラー・レポート」が出された年であるが、アレックス・ファーガソン率いるマンチェスター・ユナイテッドの試合は、最安で3.5ポンドで観ることができた。それ以降現在まで、イングランド銀行の言う合計77.1%のインフレを考慮した場合、当時ストレトフォード・エンドやユナイテッド・ロード側で観ていた人たちのチケット代は現在6.2ポンドであるはずだ。しかし、現在のオールド・トラフォードでもっと安いチケットは28ポンドする。これは他のトップクラブと比べて安い方なのだが、チケット代に関してはインフレが700%だったことになる。オールド・トラフォードの席はもっと高い。28ポンドの席はイースト・スタンドとウェスト・スタンドの下の階の席だけだからだ。
アーセナルの試合のうち、カテゴリーAに分類される、チェルシー、リバプール、トッテナム・ホットスパー、マンチェスター・ユナイテッド、そしてマンチェスター・シティとの試合は、1989-90シーズンのハイバリー、ノース・バンクの席であれば、5ポンドで観ることができた。6万の収容人員を誇るエミレーツ・スタジアムはその高額チケットで知られ、イングランド・フットボールの歴史の中で初となる、100ポンドを超える席もある。現在、そのカテゴリーAの試合で一番安いチケットは51ポンドする。これはテイラー・レポート以来のインフレ率が920%であることを意味する。
ヒルスボロの惨劇以降、フットボール・サポーター協会は、スタジアムの全席指定化に反対してきたが、第一にこれはクラブがチケット値上げの口実に使うだろうと考えたからだ。この議論を却下するために、テイラーはレポートに有名な以下のような記述をした。「各クラブは、座席に対して立見よりも高い料金を課そうと考えるだろうが、現在の立見席と同等の料金を最安の座席の値段とする料金構造を築き上げることができるはずだ」
判事は、グラスゴー・レンジャースのアイブロックス・パークの6ポンドという座席料金をテイラー・レポートにおける提案に用いた。これは現在の料金と比べると古臭いものではあるが、それでもフットボール再生の礎となった。当時、フットボール・サポーター協会の会長で、現在はリバプール大学でフットボール産業部門のディレクターを務めるローガン・テイラーは「テイラーは、テレビ放映権料増大によるフットボールの商業革命が近づいているとは考えていなかったと思う」と語っている。
「もちろんスタジアムは誰の目に見ても明らかなくらい改善が進んだが、チケット料金の値上げは必ずしもそれに見合うものではない - 各クラブは、今や選手のサラリーの値上げ競争に一生懸命だ。私がいまリバプールの試合(1989-90年のカテゴリーAのチケット代は4ポンド、現在は45ポンド)を観に行っても、そこにブルジョワやミドルクラスの人々はいない。普通の人々が背伸びをしてチケット代を払っているんだ。そしてチケット代の値上げによって追い出されたのは、老人たちと若者という2つの区分の人々だ」
1980年代においては、フットボールを観るということは、子供たち(大抵は少年だ)がスタジアムに連れて行ってもらう時期から若者として観に行く段階への通過儀礼であり、チケット代の高さゆえに弾き出される者などいなかった。
1989-90年の統計によれば、アンフィールドの一番安いシーズンチケットはわずか60ポンド、ユナイテッドの場合でも96ポンドだった(インフレを考慮して現在の価格に置きかえるとそれぞれ106ポンド、170ポンド)が、今ではリバプールで725ポンド、ユナイテッドで532ポンドだ(インフレ率は各1,108%、454%)。
当時の各クラブは、自分のクラブのサポーターの属性を分析するほど洗練されても商業的でもなかったが、若者が多かったという記憶は当時のレスター大学のサー・ノーマン・チェスター・センターによる調査よるところが大きい。調査は、当時の一部リーグにいたコヴェントリー・シティのファンを対象に行われ、1983年当時でサポーターの22%は16~20歳だった。1992年のアストン・ヴィラでは25%、アーセナルは17%が16~20歳だ。
毎年のプレミアリーグの調査では、若者世代(16歳からチケットは大人料金)のコンスタントな減少が判明している。2006-07年までに16~24歳の世代は9%にまで減少し、良く2007-08年は11%、そして昨シーズンは19%まで急回復しているが、プレミアリーグ側の見解は調査方法の変更によるものだという。
プレミアリーグの調査では、シーズンチケット・ホルダーの13%が16歳以下で、大人の平均年齢は41歳だという。彼らのほぼすべては、クラブへの忠誠心をまだチケット代が手頃な頃に育んだ世代だ。リーグの広報担当者であるダン・ジョンソンは、「チケット代を払えないがために追い出された、と感じている人がいることは認めざるを得ないが、各クラブは手頃な料金でファンを引き付けるための様々な努力をしているし、観る方法は複数ある」と語る。
「20年前は、多くの人々が別々の事情でスタジアムに行けなくなった。雰囲気は険悪で、スタジアムも不適切な状況だった。我々はスタジアムで得られる体験は劇的に向上したと考えているし、それによって観客も大きく増加した。結果的に、より多くの階層の人々がフットボールを観に行くということを快適なものと考えるようになった」
観衆の数は、過去最高のレベルにある。オールド・トラフォードの昨シーズンの平均観客数は74,864人で、キャパシティの75,769人をわずかに下回っただけであった。同じように、エミレーツ・スタジアムも60,361人のキャパシティに対し、平均で59,930人を集めた。2005-06年の94%をわずかに下回るものの、プレミアリーグのスタジアムはキャパシティの92%観客を集めている。
比較的恵まれない北部のクラブ、ボルトンやブラックバーン、ウィガンなどは観衆を維持するために惜しみない努力をし、格安の料金設定をしている。しかしながら、この景気後退の時期にあって、トップクラブは観客たちが収入の多くを高額チケットに割り当て続けることはできないと考えている。試合の1週間前になっても、来週月曜にオールド・トラフォードで行われるスパーズとの一戦のチケットは4,000枚以上売れ残っている。アメリカ人オーナーのグレイザー一家がチケット代の値上げをして以降も何年にも渡ってソールド・アウトが続いていたが、今回は満員になるかは分からない。
現在フットボール・サポーター協会の会長を務めるマルコム・クラークは、「いくつかのクラブは魅力的なオファーをしている」と言う。「しかし、トップクラブ、特にロンドンのクラブの料金は目玉が飛び出るほどだ。かつてスタジアムに通っていたような若者世代には到底払えるものではないし、そうした世代は今興味があればパブで観ているよ」
「伝統的にフットボールというのは誰の手にも届くものであったが、仕事や生活レベルが危機にさらされている現在の経済状況では、さらに多くのコミュニティの人々がスタジアムに行けなくなる可能性がある」
プレミアリーグ開始以降のフットボールの輝かしい成功は、矛盾を多く持つ物語だ。各クラブのコミュニティ・プログラムは、近隣の若者の「社会的関与」を目指したものであるが、その一方でそうした若者を、高額なチケットでスタジアムから遠ざけているのだ。
++++
ホワイト・ハート・レーンに通ってた頃、僕はシェルフ・サイドと呼ばれる東スタンド下の階にいたのだけど、チケット代は37ポンドから56ポンドだった。5試合も観れば今の浦和のシーズン・チケットが買えちゃう値段で、ちょっと日本の感覚とは違うんだよな、既に。少し前のレートなら1万円超えちゃうから。
Tuesday, August 16, 2011
トーレスの復調ぶりとチェルシーの中盤に必要なもの
BBCがたまーに更新する「Tactics Blog」はその名の通り戦術分析のブログで、マンチェスター・ユナイテッド対バルセロナのチャンピオンズリーグ決勝以来の更新は、プレミア開幕節のチェルシー。トーレスの好調さを活かすには中盤の奮起が必要と指摘。BBCの記事ってことで、ハイライト番組「Match of the Day」の解説者で元アーセナルのリー・ディクソンのコメントがかなり引用されている。
++(以下、要訳)++
チェルシーのアンドレ・ヴィアス・ボアスはこの夏にスタンフォード・ブリッジに来て以来、自分をスペシャル・ワンと考えるよりも、むしろコレクティブなアプローチを説いてきた。
フェルナンド・トーレスのコンディションについて何度聞かれても、彼は個々の選手についてのコメントはためらいがちだった。そのスタンスはトーレスが0-0のドローに終わったストーク戦で移籍以来最高のプレーを見せても同じで、このポルトガル人監督は注意深くグループを称賛した。
彼は必ずしも完全にチームのパフォーマンスに満足しているわけではないが、鉄壁の守備陣をこの夏に構築したかのようなストークを相手に1ポイント確保したことには満足していた。
トーレスは、ライアン・ショークロスからの集中砲火を浴びながら、ジョナサン・ウッドゲイトともやり合った。それでも見る者を唸らせたのはトーレスのシャープさと改善された動きだった。
「マッチ・オブ・ザ・デー」の解説者リー・ディクソンは、「ヴィラス・ボアスはトーレスに前線での自由を与え、それが彼に自信をもたらした。トーレスのプレーは本当に良かったし、昨シーズンとは別人だ」と語った。「あの頃はやらされてるイメージがあったし、気の利いたプレーはひとつも無かったが、本物のトーレスが戻ってきた。前半チェルシーはほとんどチャンスを作れなかったが、ラインを破ろうと上手く走っていた。ただ、そのラインが尋常に無く屈強でプレッシャーがきつかった」
トーレスには一度PKをもらってもおかしくないプレーがあり、シュートは3本だったが彼のプレーへの関与ぶりには目を見張るものがあった。昨シーズン、チェルシーでのトーレスは90分平均で44タッチだったが、ストーク戦のブリタニア・スタジアムでは89分で66タッチであった。配球の面でも改善が見られ36本のパスというのは、昨年の21本とは大違いだ。しかし、話はそれで終わらない。
※1は先週末のストーク戦、2は昨シーズンのニューカッスル戦。青はパス成功、赤は失敗。
この27歳のストライカーは、継続的に頭脳的なポジションを取ってボールを受け、ストークのペナルティエリアに向かうドリブルは、ショークロスに脅威を与え続けた。それでもショークロスはトーレスのドリブルに幻惑されながらも、賢明なディフェンスで凌いで見せた。
ヴィラス・ボアスは、試合に先立って、ピッチにもっとスペースを作るという意図について説明していたが、それこそがディディエ・ドログバよりもトーレスを選択している理由なのだろう。彼の理論では、フランク・ランパードのような選手が中盤にいるのであれば、フォワードの選手にはラインの間でプレーして欲しいとは考えない。トーレスが横の動きで改善を見せたことが、起用の決め手となった。
移籍マーケットが閉まるまであと2週間となり、ルカ・モドリッチを望む声はますます高まり、ディクソンもモドリッチの加入はランパードを助ける意味でも有効と考えている。「ジョン・オビ・ミケルの配球は時折遅く、マイケル・エッシェンがフィットしていればおそらく彼はチームにいないだろう。チェルシーにはボールにシャープにアタックできるラミレスがいて、中盤はジョゼ・ボシングワとアシュリー・コールというフォワードのような2人のサイドバックのフォローも得られる」
「ランパードは、フィットネスの面でペースをつかむのに時間を要することがある。33歳になり、大きな怪我からの回復には時間がかかるのだ。彼が良いときには、ペナルティ・ボックスに次々飛び込み、ピッチを走り回ってゴールを決めている。チェルシーは、モドリッチのような選手がもたらすちょっとした違いを必要としていて、彼の獲得には必ずまた動くはずさ。いま求められている中盤でのクリエイティビティのプレッシャーから開放されれば、フランクはもっと前にいけるはずだ」
「ボール捌きが得意で、パス出しができ、そしてどんな状況でも受けられる選手が必要で、それで相手に不安を与えることができればなお良い。モドリッチが相手に与える脅威は、ディフェンスや中盤を押し込むことができ、それがトーレスやランパードのスペースを生むことになる。それだけでなく、他の選手も今までなら走りこまなかったスペースに走り込める。ボールが出てくるのは分かっているし、モドリッチも再びボールを受けるために他の場所へ走り込むからだ。そういう能力を持つ選手が入ることによるドミノ効果だ」
「ストーク戦後には、ヴィラス・ボアスは自分のチームには様々なクオリティがあることを知ったはずだし、タイトル獲りに挑戦するにふさわしい力があると分かっただろう。そして、中盤のクリエイティブな選手が欠けていることも。それでも、一番のプラスはトーレスのシャープさだ。圧倒的な結果を出したわけではないが、それでも昨シーズン末からの飛躍的な改善を見せた」
++++
なんか、後半はディクソンがしゃべり倒した感のある記事だな。それでもトーレスの復調ぶりはあちこちで語られていて、やはり途中合流ってのは難しかったんだなとも思う。しっかし、モドリッチの件はずーっとヒヤヒヤしてるから、そろそろ勘弁して欲しいんだけどな。
++(以下、要訳)++
チェルシーのアンドレ・ヴィアス・ボアスはこの夏にスタンフォード・ブリッジに来て以来、自分をスペシャル・ワンと考えるよりも、むしろコレクティブなアプローチを説いてきた。
フェルナンド・トーレスのコンディションについて何度聞かれても、彼は個々の選手についてのコメントはためらいがちだった。そのスタンスはトーレスが0-0のドローに終わったストーク戦で移籍以来最高のプレーを見せても同じで、このポルトガル人監督は注意深くグループを称賛した。
彼は必ずしも完全にチームのパフォーマンスに満足しているわけではないが、鉄壁の守備陣をこの夏に構築したかのようなストークを相手に1ポイント確保したことには満足していた。
トーレスは、ライアン・ショークロスからの集中砲火を浴びながら、ジョナサン・ウッドゲイトともやり合った。それでも見る者を唸らせたのはトーレスのシャープさと改善された動きだった。
「マッチ・オブ・ザ・デー」の解説者リー・ディクソンは、「ヴィラス・ボアスはトーレスに前線での自由を与え、それが彼に自信をもたらした。トーレスのプレーは本当に良かったし、昨シーズンとは別人だ」と語った。「あの頃はやらされてるイメージがあったし、気の利いたプレーはひとつも無かったが、本物のトーレスが戻ってきた。前半チェルシーはほとんどチャンスを作れなかったが、ラインを破ろうと上手く走っていた。ただ、そのラインが尋常に無く屈強でプレッシャーがきつかった」
トーレスには一度PKをもらってもおかしくないプレーがあり、シュートは3本だったが彼のプレーへの関与ぶりには目を見張るものがあった。昨シーズン、チェルシーでのトーレスは90分平均で44タッチだったが、ストーク戦のブリタニア・スタジアムでは89分で66タッチであった。配球の面でも改善が見られ36本のパスというのは、昨年の21本とは大違いだ。しかし、話はそれで終わらない。
※1は先週末のストーク戦、2は昨シーズンのニューカッスル戦。青はパス成功、赤は失敗。
この27歳のストライカーは、継続的に頭脳的なポジションを取ってボールを受け、ストークのペナルティエリアに向かうドリブルは、ショークロスに脅威を与え続けた。それでもショークロスはトーレスのドリブルに幻惑されながらも、賢明なディフェンスで凌いで見せた。
ヴィラス・ボアスは、試合に先立って、ピッチにもっとスペースを作るという意図について説明していたが、それこそがディディエ・ドログバよりもトーレスを選択している理由なのだろう。彼の理論では、フランク・ランパードのような選手が中盤にいるのであれば、フォワードの選手にはラインの間でプレーして欲しいとは考えない。トーレスが横の動きで改善を見せたことが、起用の決め手となった。
移籍マーケットが閉まるまであと2週間となり、ルカ・モドリッチを望む声はますます高まり、ディクソンもモドリッチの加入はランパードを助ける意味でも有効と考えている。「ジョン・オビ・ミケルの配球は時折遅く、マイケル・エッシェンがフィットしていればおそらく彼はチームにいないだろう。チェルシーにはボールにシャープにアタックできるラミレスがいて、中盤はジョゼ・ボシングワとアシュリー・コールというフォワードのような2人のサイドバックのフォローも得られる」
「ランパードは、フィットネスの面でペースをつかむのに時間を要することがある。33歳になり、大きな怪我からの回復には時間がかかるのだ。彼が良いときには、ペナルティ・ボックスに次々飛び込み、ピッチを走り回ってゴールを決めている。チェルシーは、モドリッチのような選手がもたらすちょっとした違いを必要としていて、彼の獲得には必ずまた動くはずさ。いま求められている中盤でのクリエイティビティのプレッシャーから開放されれば、フランクはもっと前にいけるはずだ」
「ボール捌きが得意で、パス出しができ、そしてどんな状況でも受けられる選手が必要で、それで相手に不安を与えることができればなお良い。モドリッチが相手に与える脅威は、ディフェンスや中盤を押し込むことができ、それがトーレスやランパードのスペースを生むことになる。それだけでなく、他の選手も今までなら走りこまなかったスペースに走り込める。ボールが出てくるのは分かっているし、モドリッチも再びボールを受けるために他の場所へ走り込むからだ。そういう能力を持つ選手が入ることによるドミノ効果だ」
「ストーク戦後には、ヴィラス・ボアスは自分のチームには様々なクオリティがあることを知ったはずだし、タイトル獲りに挑戦するにふさわしい力があると分かっただろう。そして、中盤のクリエイティブな選手が欠けていることも。それでも、一番のプラスはトーレスのシャープさだ。圧倒的な結果を出したわけではないが、それでも昨シーズン末からの飛躍的な改善を見せた」
++++
なんか、後半はディクソンがしゃべり倒した感のある記事だな。それでもトーレスの復調ぶりはあちこちで語られていて、やはり途中合流ってのは難しかったんだなとも思う。しっかし、モドリッチの件はずーっとヒヤヒヤしてるから、そろそろ勘弁して欲しいんだけどな。
Sunday, August 14, 2011
自ら招く混乱でユナイテッド追走に躓くマンチーニ
今季はチャンピオンズリーグの出場権も獲得しており、いよいよ打倒ユナイテッドに意気上がるマンチェスター・シティ。アーセナルからナスリの獲得も近いと言われるが、毎年の騒動の真ん中にいる監督のロベルト・マンチーニについて、「インディペンデント」紙のイアン・ハーバート記者が柔軟性に欠けると指摘している。
++(以下、要訳)++
マンチェスターの両指揮官は、共に昨日の街の惨状を目にしたが、状況を把握しているのは一人だけのようだった。
ロベルト・マンチーニは、「フットボールの話をする前に、まず事態の鎮静化に尽力してくれたマンチェスターの良識ある人々に感謝したい」と述べたが、サミ・ナスリの価値について語る前に、地域の団結を重視した姿勢は歓迎されるべきだ。
しかし、サー・アレックス・ファーガソンにとっては、暴動を起こした若者の動機に対する当惑というのは、自分のチームの若者の気持ちを理解することとさほど違いはないようだ。「彼らは目を覚ませて、自分の属する社会を認め、両親が彼らのためにしてきたことを認め、得てきた機会を認めようとしているんだ」と略奪者たちについて、声明を読み上げるでもなく淡々と語った。ウェズリー・スナイデルとの契約について聞かれると、「もう誰のことでも忘れていいんだ。今いる若者たちに満足している」と答えた。
もちろん2人とも体裁を取り繕ってはいるのだが、ファーガソンが若者に賭ける決断をした後の安堵感から語ったのに対し、マンチーニはまだ自分が大混乱の真っ只中にいることを自覚していて、アブダビが所有するクラブとなって4年目を迎えるにあたり、怒りに満ちて選手の売り買いとチーム作りを行っている。マンチーニは昨日、結局ナスリが月曜のスウォンジーとの一戦を前にシティの選手とはなっていない状況について「心配している」と語っていた。
シティが描く壮大なシナリオのもとでは、カーリングカップでウェスト・ブロミッジに敗れたことなど記録に留めるまでもないことであるが、マンチーニはことある毎にそこに立ち返るという。昨年の9月、マンチーニは結果的に1-0で勝つことになる4日後のチェルシー戦のためにメンバーを温存し、どこのクラブか分からないようなメンバーでホーソーンズに乗り込み、結局チームの敗戦を見届けた。もちろん彼は、グレッグ・カニンガム、ジョン・ギデッティ、ジャヴァン・ヴィダル、ベン・ミーといったメンバーをチャンピオンズリーグ・クラスの戦いに使えないことは分かっていた。二兎を追う戦いをして、5月の時点でチャンピオンズリーグ圏内に入れないという結果に対する恐怖に彼はこの3ヶ月間も苛まれてきている。
幹部のギャリー・クックやブライアン・マーウッドについて、マンチーニは「彼らだけの問題ではない。今はマーケットの状況も厳しいのだ」とナスリ獲得が進まない苛立ちを表しつつ語った。「彼らには迅速に動くように伝えた。簡単でないのは分かるが、我々はこの選手を必要としているのだ。リクエストを出したのは2カ月も前だ」
マンチーニは、選手の獲得については権限を持っている。彼はアシュリー・ヤングはシティが追い求めるべき選手ではないと判断し、フィオレンティーナで右ウィングを務めるアレッシオ・チェルチに関心を持つのが彼だけであったとしても、必要と判断すればマリオ・バロテッリ並みに気の短いこのイタリア人の獲得に動くこともできる。しかし、依然としてそれはマンチーニを含む幹部の間に「彼ら」と「我々」っがあることを示している。それは、前任のマーク・ヒューズの頃には無かったことなのだが。
マンチーニは話し合いで物事を解決するのが難しい男ともいえ、選手時代は全く妥協が無かった。メンターでもあるスヴェン・ゴラン・エリクソンは昨年の春に「レフェリーと?いやいや、彼は酷かったよ。彼は自分をコントロールできなかったんだ」と思い起こしていたし、年齢がそれを和らげたことも全く無い。マンチーニと共にベンチに座っているコーチたちは、選手として才能に溢れていると、自分の選手たちのミスを理解できないものなのだ、と見ている。妥協を許さないキャラクターは、彼がシティに来る以前からあった前提に対する態度からも見てとれる。昨日の午前10時にふらりとカリントンの練習場に姿を見せたクレイグ・ベラミーは2年前は最も影響力のある選手だったが、マンチーニが彼と上手くやれていれば、今のチームには無いサイドでの幅をもたらしていたはずだ。
しかし、このイタリア人はそうした素養を持ち合わせてはいない。「我々には今のチームがあり、彼は良い選手だが他に解決策があるのであれば、その方が良いだろう。彼がここに留まるのは難しい」と昨日も語っていた。ショーン・ライト・フィリップスもサイドに深みをもたらす選手で、UEFAの求める自国出身選手の規定(チャンピオンズリーグ選手登録の4分の1)も満たす存在であるにも関わらず、9月には放出されていることであろう。
多くの人は、その2人はヨーロッパリーグ・レベルの選手だ、と言うだろうが、彼らの代わりにやってくる選手たちも、必ずしもシティに来たいわけではないのだ。ユナイテッドに加わりたいと考えていたナスリは、親しい友人たちには「別にシティに行きたいわけじゃない」と語っている。セルヒオ・アグエロの戦略的な獲得も、アトレティコ・マドリーの幹部のアンヘル・ヒル・マリンがレアル・マドリーに彼を放出することで予期される批判を受けるつもりが無いことを計算してのことだが、シティとしてはバロテッリやカルロス・テヴェスをどれだけの間キープしておけるのか確信を持てないという事情があった。
これだけの選手層を持つマンチーニに、月曜にはナスリも加わるかもしれないという状況で、シティ以上にユナイテッドを追い上げられる存在は見当たらない。しかし、昨日の暴動に対するマンチーニのコメントを聞くと、彼の中でのサイレンはもう鳴りやんだようだ。激動の9ヶ月後には、より大きな音が鳴り響いているのではないか?
++++
この暴動に関することが無くとも、普段からマンチーニはプレス対応で割を食ってる気が…。上手にやればクラブの印象も変わるハズなんだけど。ま、ファーガソンもBBCとケンカしっ放しだし、それで成績が上向くわけじゃないんだけど。スパーズ的には、サラリー半分以上負担してくれてアデバヨール貸してくれたら嬉しいことこの上なし。いまシティに必要なのは、選手の資産としての現在価値をマトモに評価して、サンク・コストは損切りして早く適正規模にチームをまとめることだと思う。これは、40人の大所帯のスパーズも同じで、簡単に行かないのが移籍マーケット。「マーケット」だから、出し手と受け手の双方が納得しないと動かないしね。
++(以下、要訳)++
マンチェスターの両指揮官は、共に昨日の街の惨状を目にしたが、状況を把握しているのは一人だけのようだった。
ロベルト・マンチーニは、「フットボールの話をする前に、まず事態の鎮静化に尽力してくれたマンチェスターの良識ある人々に感謝したい」と述べたが、サミ・ナスリの価値について語る前に、地域の団結を重視した姿勢は歓迎されるべきだ。
しかし、サー・アレックス・ファーガソンにとっては、暴動を起こした若者の動機に対する当惑というのは、自分のチームの若者の気持ちを理解することとさほど違いはないようだ。「彼らは目を覚ませて、自分の属する社会を認め、両親が彼らのためにしてきたことを認め、得てきた機会を認めようとしているんだ」と略奪者たちについて、声明を読み上げるでもなく淡々と語った。ウェズリー・スナイデルとの契約について聞かれると、「もう誰のことでも忘れていいんだ。今いる若者たちに満足している」と答えた。
もちろん2人とも体裁を取り繕ってはいるのだが、ファーガソンが若者に賭ける決断をした後の安堵感から語ったのに対し、マンチーニはまだ自分が大混乱の真っ只中にいることを自覚していて、アブダビが所有するクラブとなって4年目を迎えるにあたり、怒りに満ちて選手の売り買いとチーム作りを行っている。マンチーニは昨日、結局ナスリが月曜のスウォンジーとの一戦を前にシティの選手とはなっていない状況について「心配している」と語っていた。
シティが描く壮大なシナリオのもとでは、カーリングカップでウェスト・ブロミッジに敗れたことなど記録に留めるまでもないことであるが、マンチーニはことある毎にそこに立ち返るという。昨年の9月、マンチーニは結果的に1-0で勝つことになる4日後のチェルシー戦のためにメンバーを温存し、どこのクラブか分からないようなメンバーでホーソーンズに乗り込み、結局チームの敗戦を見届けた。もちろん彼は、グレッグ・カニンガム、ジョン・ギデッティ、ジャヴァン・ヴィダル、ベン・ミーといったメンバーをチャンピオンズリーグ・クラスの戦いに使えないことは分かっていた。二兎を追う戦いをして、5月の時点でチャンピオンズリーグ圏内に入れないという結果に対する恐怖に彼はこの3ヶ月間も苛まれてきている。
幹部のギャリー・クックやブライアン・マーウッドについて、マンチーニは「彼らだけの問題ではない。今はマーケットの状況も厳しいのだ」とナスリ獲得が進まない苛立ちを表しつつ語った。「彼らには迅速に動くように伝えた。簡単でないのは分かるが、我々はこの選手を必要としているのだ。リクエストを出したのは2カ月も前だ」
マンチーニは、選手の獲得については権限を持っている。彼はアシュリー・ヤングはシティが追い求めるべき選手ではないと判断し、フィオレンティーナで右ウィングを務めるアレッシオ・チェルチに関心を持つのが彼だけであったとしても、必要と判断すればマリオ・バロテッリ並みに気の短いこのイタリア人の獲得に動くこともできる。しかし、依然としてそれはマンチーニを含む幹部の間に「彼ら」と「我々」っがあることを示している。それは、前任のマーク・ヒューズの頃には無かったことなのだが。
マンチーニは話し合いで物事を解決するのが難しい男ともいえ、選手時代は全く妥協が無かった。メンターでもあるスヴェン・ゴラン・エリクソンは昨年の春に「レフェリーと?いやいや、彼は酷かったよ。彼は自分をコントロールできなかったんだ」と思い起こしていたし、年齢がそれを和らげたことも全く無い。マンチーニと共にベンチに座っているコーチたちは、選手として才能に溢れていると、自分の選手たちのミスを理解できないものなのだ、と見ている。妥協を許さないキャラクターは、彼がシティに来る以前からあった前提に対する態度からも見てとれる。昨日の午前10時にふらりとカリントンの練習場に姿を見せたクレイグ・ベラミーは2年前は最も影響力のある選手だったが、マンチーニが彼と上手くやれていれば、今のチームには無いサイドでの幅をもたらしていたはずだ。
しかし、このイタリア人はそうした素養を持ち合わせてはいない。「我々には今のチームがあり、彼は良い選手だが他に解決策があるのであれば、その方が良いだろう。彼がここに留まるのは難しい」と昨日も語っていた。ショーン・ライト・フィリップスもサイドに深みをもたらす選手で、UEFAの求める自国出身選手の規定(チャンピオンズリーグ選手登録の4分の1)も満たす存在であるにも関わらず、9月には放出されていることであろう。
多くの人は、その2人はヨーロッパリーグ・レベルの選手だ、と言うだろうが、彼らの代わりにやってくる選手たちも、必ずしもシティに来たいわけではないのだ。ユナイテッドに加わりたいと考えていたナスリは、親しい友人たちには「別にシティに行きたいわけじゃない」と語っている。セルヒオ・アグエロの戦略的な獲得も、アトレティコ・マドリーの幹部のアンヘル・ヒル・マリンがレアル・マドリーに彼を放出することで予期される批判を受けるつもりが無いことを計算してのことだが、シティとしてはバロテッリやカルロス・テヴェスをどれだけの間キープしておけるのか確信を持てないという事情があった。
これだけの選手層を持つマンチーニに、月曜にはナスリも加わるかもしれないという状況で、シティ以上にユナイテッドを追い上げられる存在は見当たらない。しかし、昨日の暴動に対するマンチーニのコメントを聞くと、彼の中でのサイレンはもう鳴りやんだようだ。激動の9ヶ月後には、より大きな音が鳴り響いているのではないか?
++++
この暴動に関することが無くとも、普段からマンチーニはプレス対応で割を食ってる気が…。上手にやればクラブの印象も変わるハズなんだけど。ま、ファーガソンもBBCとケンカしっ放しだし、それで成績が上向くわけじゃないんだけど。スパーズ的には、サラリー半分以上負担してくれてアデバヨール貸してくれたら嬉しいことこの上なし。いまシティに必要なのは、選手の資産としての現在価値をマトモに評価して、サンク・コストは損切りして早く適正規模にチームをまとめることだと思う。これは、40人の大所帯のスパーズも同じで、簡単に行かないのが移籍マーケット。「マーケット」だから、出し手と受け手の双方が納得しないと動かないしね。
Saturday, August 13, 2011
マーティン・タイラーが選ぶプレミアリーグのベストシーン20
「ITV」のフットボール中継で名を馳せ、プレミアリーグの創設後も「スカイ」の実況コメンテーターとしてお馴染みのマーティン・タイラー氏。「デイリー・メール」にプレミアリーグ開始後の印象に残ったシーンを20挙げる記事を寄稿している。
++(以下、要訳)++
1. スカイで中継されたプレミアリーグ最初のゴール:8/17, 1992
キックオフ2時間前。リチャード・キーズが進行をして、アンディ・グレイが私とジェフ・シュリーヴスと共にいた。他に仕事を持っていた我々にとって、スカイに加わるのはギャンブルだった。自分の役割は他の人間が担っていて、それを取って代わるには何らかの確信を与える必要があった。我々はFAカップや代表のゲームの中継はしていたが、それだけだった。しかし、スカイがプレミアリーグの中継をすることになると、私はオフィスに呼ばれ、このチームと一緒になった。私はテディ・シェリンガムのゴール(↓0:30~)を"a peach"と表現したが、そんな言い方はそれ以来していない。リバプールのデイヴィッド・ジェームスの横を抜ける、素晴らしいゴールだった。最初の生中継を勝ち取ることができたのは意義深いことだった。
2. ファーガソンに初タイトルをもたらしたブルースの2ゴール:4/10, 1993
スティーブ・ブルースが2ゴールを決め、ブライアン・キッドがピッチを走り回って祝福を表したことで知られる試合。ブルースが決めた時、我々はタイトルはユナイテッドのものだと確信した。そういう瞬間があるものだ。最近では、数年前にフェデリコ・マケダがアストン・ヴィラ相手にゴールを決めた時がそういう時だ。そして、アンディの伝説が生まれたのがこの後だ。リーグタイトルが決まっている試合で、彼は「このフリーキックはギャリー・パリスターに蹴らせると思う」とコメントした。フィールド・プレーヤーで唯一得点していなかったからだ。すると、本当にパリスターがゴールを決め、我々のディレクターはスタンドにいるサー・マット・バズビーの美しい姿を捉えていた。
3. ブラックバーンのリーグ優勝:5/14, 1995
私は(下部リーグの)ワーキングFCのファンで、プレミアリーグの最終日と同じ日に、私の愛するクラブはFAトロフィーのファイナルをウェンブリーで戦っていた。家族は皆ウェンブリーにいて、私も自分の前のモニターで戦況は追えたが、試合は延長になり、私は自分の仕事に集中しなくてはいけなかった。ワークングは120分にゴールを決めて試合に勝った。私は完全に興奮してしまい、アンディにハグとキスをした。彼は私と2度と仕事をしたくない、と言っていたが。私はフットボールがもたらす幸福に一日中幸せだったが、この日の中心はブラックバーンでありアラン・シアラーだった。おかしかったのは、同僚のニック・コリンズがドレッシング・ルームのケニー・ダルグリッシュにインタビューをしに行ったのだが、ケニーはマイクを取ると、ニックにインタビューを始めたんだ。散々素っ気ない受け答えをしてはいたものの、ニックには好印象を持ってたんだ。
4. リバプール 4 - 3 ニューカッスル:4/30, 1996
今までに中継した中でベストのゲーム。90分の中に全てがあり、タイトルを狙うエンターテイナーのニューカッスルとフルメンバーのリバプールが作り出す素晴らしい雰囲気がそこにはあった。リバプールは開始2分でリードしたが、それ以降、92分のコリモアのゴールまでリードすることは無かった。私はケヴィン・キーガンが「Carlsberg」の看板の後ろに頭を落としている姿が忘れられないね。
5. ベッカムのウィンブルドン戦でのハーフウェイラインからのゴール:8/17, 1996
ボールが宙を舞っている時間が長かったから、何を言ったら良いか考えるには十分だったが、アンディが先に「take a bow/拍手に応えるがいい」と言った。セルハースト・パークの放送席からの眺望は素晴らしく、これは入るだろうとすぐに分かった。こことアンフィールドは私のお気に入りだ。歴史が目の前で作られるのが、まずはその大胆さと技術、そしてベッカムという人物から分かったはずだ。特別な存在になる階段を上っている選手による特別なゴールだった。
6.フィリップ・アルバートのチップキック:10/20, 1996
ユナイテッドにとってはツキの無い日であり、ニューカッスルは聖杯を掴みつつあるように見えた。アルバートがあの位置に上がっている(1:30~)こと自体不合理で、4-0の展開だからこそだ。あの頃のニューカッスルは、エンターテイナーとして最高だった。「何点取られようが、それ以上決める」という展開のニューカッスル戦を割り当てられるのが本当に嬉しかった。ニューカッスルのオーナーのサー・ジョン・ホールは、我々に「今日はチャンピオンを目にすることになる」と言ったが、その通りになった。それは、この日0-5で敗れたマンチェスター・ユナイテッドだったが。
7. エヴァートン戦でのトニー・アダムスのゴール:5/3, 1998
こちら(↓)はウィンブルドン戦の素晴らしいゴール
++(以下、要訳)++
1. スカイで中継されたプレミアリーグ最初のゴール:8/17, 1992
キックオフ2時間前。リチャード・キーズが進行をして、アンディ・グレイが私とジェフ・シュリーヴスと共にいた。他に仕事を持っていた我々にとって、スカイに加わるのはギャンブルだった。自分の役割は他の人間が担っていて、それを取って代わるには何らかの確信を与える必要があった。我々はFAカップや代表のゲームの中継はしていたが、それだけだった。しかし、スカイがプレミアリーグの中継をすることになると、私はオフィスに呼ばれ、このチームと一緒になった。私はテディ・シェリンガムのゴール(↓0:30~)を"a peach"と表現したが、そんな言い方はそれ以来していない。リバプールのデイヴィッド・ジェームスの横を抜ける、素晴らしいゴールだった。最初の生中継を勝ち取ることができたのは意義深いことだった。
2. ファーガソンに初タイトルをもたらしたブルースの2ゴール:4/10, 1993
スティーブ・ブルースが2ゴールを決め、ブライアン・キッドがピッチを走り回って祝福を表したことで知られる試合。ブルースが決めた時、我々はタイトルはユナイテッドのものだと確信した。そういう瞬間があるものだ。最近では、数年前にフェデリコ・マケダがアストン・ヴィラ相手にゴールを決めた時がそういう時だ。そして、アンディの伝説が生まれたのがこの後だ。リーグタイトルが決まっている試合で、彼は「このフリーキックはギャリー・パリスターに蹴らせると思う」とコメントした。フィールド・プレーヤーで唯一得点していなかったからだ。すると、本当にパリスターがゴールを決め、我々のディレクターはスタンドにいるサー・マット・バズビーの美しい姿を捉えていた。
3. ブラックバーンのリーグ優勝:5/14, 1995
私は(下部リーグの)ワーキングFCのファンで、プレミアリーグの最終日と同じ日に、私の愛するクラブはFAトロフィーのファイナルをウェンブリーで戦っていた。家族は皆ウェンブリーにいて、私も自分の前のモニターで戦況は追えたが、試合は延長になり、私は自分の仕事に集中しなくてはいけなかった。ワークングは120分にゴールを決めて試合に勝った。私は完全に興奮してしまい、アンディにハグとキスをした。彼は私と2度と仕事をしたくない、と言っていたが。私はフットボールがもたらす幸福に一日中幸せだったが、この日の中心はブラックバーンでありアラン・シアラーだった。おかしかったのは、同僚のニック・コリンズがドレッシング・ルームのケニー・ダルグリッシュにインタビューをしに行ったのだが、ケニーはマイクを取ると、ニックにインタビューを始めたんだ。散々素っ気ない受け答えをしてはいたものの、ニックには好印象を持ってたんだ。
4. リバプール 4 - 3 ニューカッスル:4/30, 1996
今までに中継した中でベストのゲーム。90分の中に全てがあり、タイトルを狙うエンターテイナーのニューカッスルとフルメンバーのリバプールが作り出す素晴らしい雰囲気がそこにはあった。リバプールは開始2分でリードしたが、それ以降、92分のコリモアのゴールまでリードすることは無かった。私はケヴィン・キーガンが「Carlsberg」の看板の後ろに頭を落としている姿が忘れられないね。
5. ベッカムのウィンブルドン戦でのハーフウェイラインからのゴール:8/17, 1996
ボールが宙を舞っている時間が長かったから、何を言ったら良いか考えるには十分だったが、アンディが先に「take a bow/拍手に応えるがいい」と言った。セルハースト・パークの放送席からの眺望は素晴らしく、これは入るだろうとすぐに分かった。こことアンフィールドは私のお気に入りだ。歴史が目の前で作られるのが、まずはその大胆さと技術、そしてベッカムという人物から分かったはずだ。特別な存在になる階段を上っている選手による特別なゴールだった。
6.フィリップ・アルバートのチップキック:10/20, 1996
ユナイテッドにとってはツキの無い日であり、ニューカッスルは聖杯を掴みつつあるように見えた。アルバートがあの位置に上がっている(1:30~)こと自体不合理で、4-0の展開だからこそだ。あの頃のニューカッスルは、エンターテイナーとして最高だった。「何点取られようが、それ以上決める」という展開のニューカッスル戦を割り当てられるのが本当に嬉しかった。ニューカッスルのオーナーのサー・ジョン・ホールは、我々に「今日はチャンピオンを目にすることになる」と言ったが、その通りになった。それは、この日0-5で敗れたマンチェスター・ユナイテッドだったが。
7. エヴァートン戦でのトニー・アダムスのゴール:5/3, 1998
誰にも知られていなかったアーセン・ヴェンゲルは苦しいスタートを味わったが、やがて素晴らしい監督として知られるようになった。ヴェンゲルが初めてのタイトルを勝ち取る上でのキープレーヤーだった2人の忠実なセンターバックは、シーズンの終わりになってようやく自己表現をすることにした。ボウルドのパスに抜け出したのは、アダムスだった。出せたコメントに私も満足していた。「決めたのはスティーブ・ボウルドのパスに抜け出したトニー・アダムス、信じられるか?これがすべてを表している」このコメントは、今ではエミレーツ・スタジアムに掲げられていると聞いた。私の活躍の場が、彼らのためにもなったというのは嬉しい限りだ。
8. ブラッドフォードの残留:5/14, 2000
彼らはデイヴィッド・ウェザーウォールのヘディングで、勝てばチャンピオンズリーグに出られたリヴァプールを下し、残留を決めたウェザーウォールは地元の選手で、ポール・ジュウェルは聡明な若手監督だった。誰もブラッドフォードにチャンスがあるとは思っていなかったが、彼らの勝利は、サウザンプトンに敗れたウィンブルドンを降格させることになった。
9. ボールを手でキャッチしたディカニオ:12/16, 2000
パオロ・ディカニオがウィンブルドン戦で素晴らしいボレーを決めた時も、彼がポール・アルコックを押し倒した時も私は実況席にいた。彼には色々な側面があるが、エヴァートン戦でボールをキャッチしたシーンは特別だ。私はスポーツマンシップの世代だが、同時にこの業界で生きてきて、試合に勝つことの難しさも理解しているつもりだ。どんな幸運であれ活かすべきであろう。彼は、ゴールキーパーのボール・ジェラードがけがをした時に、本能的に正しいことをした。素晴らしい人間味ある瞬間で、我々はこれを忘れるべきではない。彼のスウィンドンでの幸運を祈りたい。
こちら(↓)はウィンブルドン戦の素晴らしいゴール
10. ちょっとした番外をいくつか
・昨シーズンピーター・ウォルトンがカードを忘れた時、バーミンガムのジョードン・ムッチに見えないカードを提示した。それはいい。面白かったのは、その見えないカードをポケットに戻したことだ。
・もうひとつ、マット・マティアスがうっかりロビー・サヴェージにヒジ鉄した場面もおかしかった。
・アストン・ビラのゴールキーパーだったピーター・エンケルマンが、スローインのボールを受けるのに失敗して許してしまったオウンゴール。
11. ルーニーの初ゴール:10/21, 2002
それは、その後起きる事の前兆だった。ルーニーの噂を聞いて、初めて彼を見たのはFAのユースカップのトッテナム戦だった。私が翌朝の朝食で「センセーショナルな存在になる奴を見た」と家族に言ったため、家族はその後3年間に渡って私がルーニーを発掘したと思い込んでいた。そこにはデイヴィッド・モイーズとコリン・ハーヴェイがいた。エヴァートンは若手を使うのが上手いクラブであるが、ハーヴェイは「今まで見てきた中で最高」と言い、モイーズは「金を払ってでも見たい」と表現していた。そして16歳と360日にしてチャンピオン相手にセンス溢れるスタイルで決勝ゴールを決め、「俺はここにいる」とアピールして見せ、才能を開花させた。彼はフットボールをするために生まれてきたんだ。
12. アーセナルの無敗優勝:5/16, 2004
最も重要な瞬間は、最後のホイッスルだった。シーズンを無敗で切り抜けるというのは驚くべきことだった。シーズン最後のその日はレスター相手にリードを許したが、結局勝って見せた。皆、これは2度とないことだと思っていたし、おそらく今でも思っている。最も敗戦に近づいたのはマンチェスター・ユナイテッド戦で、ルート・ファン・ニステルローイが終了間際にPKを得た時だった。そうしたギリギリの戦いの結果だが、プレミアリーグの競争の厳しさが、この偉業の価値を高めている。すべての試合がカップ・ファイナルのようで、3連勝や6戦無敗だって今では信じられないくらいだ。それだけアーセナルがしたことは驚嘆に値する。それから彼らがタイトルを一度も獲れないとは、誰が想像しただろうか?
13. チェルシーのプレミア初タイトル:4/20, 2005
かつてのリーグ・タイトルからちょうど50年でプレミア初戴冠とは信じられない流れだ。ロマン・アブラモイッチがクラブを買収してから2年足らずのことだった。数週間前にアジアに行った時、チェルシーの取材でアジアに飛んだ2003年を思い出した。ウェイン・ブリッジ、デイミアン・ダフと共に飛行機に乗ったが、そこで何が起こるのか、誰も分かってはいなかった。皆が不安に思っていたし、確かなことなどひとつもなかっただけに、こうしてタイトルを獲れたことに、皆が胸をなでおろしたはずだ。
14. ブライアン・ロブソン率いるウェスト・ブロミッジの奇跡の残留:5/16, 2005
運命の日曜日に残留の可能性があったのは、他にノーリッジ、クリスタル・パレス、ウェスト・ブロミッジ、サウザンプトンだった。クリスマスに最下位だったクラブは残留できない、と言われる中、ウェスト・ブロミッジはクリスマスに最下位だった。しかし、ジェフ・ホースフィールドとキーラン・リチャードソンのゴールで勝利し、素晴らしい日に花を添えた。昨シーズンの残留争いもエキサイティングだったが、この残留劇こそファンの記憶に最も残るものだろう。私はプレミアリーグの重要さから、残留こそ成功だといつも言っている。バーミンガムはカーリング・カップのタイトルと残留を引き換えるだろうか?
15. マンチェスター・シティのミュンヘンへの哀悼:2/10, 2008
ミュンヘンの悲劇から50周年の日にマンチェスター・ダービーが行われたのは特別な日だった。マンチェスター・シティが示した振る舞いと敬意は申し分の無いものだった。私は飛行機事故が起きた時の記憶があるし、それは大きな事故だった。私は、ファンが不適切な振る舞いをしたら何と言うべきか、どんなトーンで語るべきか、心配していた。私は畏敬の念を感じたが、それは皆がそうだったからだ。試合はシティがベンジャニとダリウス・ヴァッセルのゴールで勝ったが、プレミアリーグの尊厳という意味で素晴らしい時だったと思っている。シティが愛すべきクラブであり、勝利は素晴らしい振る舞いのご褒美のようだった。
16. トッテナムの8ゴールのスリル:3/20, 2008
ハリー・レドナップ率いるトッテナムは、ここ数年観るのには一番のチームで、クレイジーな試合をいくつも演じている。アストン・ヴィラ、チェルシー、そしてアーセナル相手の4-4の試合などだ。その中でも一番のゲームはチェルシー相手のものだが、当時チェルシーのゴールキーパーだったカルロ・クディチーニは、終盤にディミタール・ベルバトフに決められていたらトットナムが勝っていたと感じていただろう。アーセナル戦では、デイヴィッド・ベントリーのゴールがあり、多くのスパーズ・ファンがスタジアムを去った後のアーロン・レノンの終盤の同点ゴールがあった。
17. ニューカッスル 4 - 4 アーセナル:2/5, 2011
0-4とリードされてからの挽回と、チェイク・ティオテのゴールのクオリティがランクインの理由だ。この週は、他の試合でもゴールがたくさん生まれていた。4点ビハインドからの同点劇は、プレミアでは初のことだった。
18. ユナイテッドの19度目のタイトル:5/14, 2011
プレミアリーグが始まるまでのマンチェスター・ユナイテッドのタイトルは7つ、リバプールは18だった。それが、今では19のプレミアリーグタイトルのうち、12をユナイテッドが勝ち取った。サー・アレックス・ファーガソンの功績によって。こんなタイプのマネジメントにお目にかかることは2度とないだろう - 長さにおいても管理においても。彼の下でキチンと振る舞わねばならないことは分かるだろうが、私が魅了されるのは人々のリーダーとしての彼だ。外国人選手が数多く流れ込み、クラブは地球規模で拡大し、クラブの幹部も変わったが、それらすべてを通じても彼のチームは上手くやってきている。いまでは監督は25カ月も続けば上手く行ってる方だが、ファーガソンは11月には任期25年を迎える。
19. スウォンジーの昇格:5/30, 2011
プレミアリーグの開始時には、所詮トップのクラブが恩恵を受け、同じ上位4クラブでのタイトル争いを見るだけだ、という感覚もあったが、20年経ってみると、スウォンジーがプレミアに入る45クラブ目となった。つまり、元々のフットボールリーグの92クラブのおよそ半分がプレミアの舞台に立ったことになる。ウェールズのクラブはずっとフットボールリーグに貢献してきたし、そこには深いルーツがある。スウォンジーにとってはウェールズを代表するチャンスであり、私もウェールズでプレミアリーグの中継をすることを長年夢見てきた。私が本当にそれを楽しみにしているのは、母が言うには、私にもウェールズ人の血がいくばくか流れているからだ。
20. グローバルな力
アジアから戻ってみて、プレミアリーグがいかに広がっているかを痛感させられた。最近、ファンがいかに凄い方法でプレミアリーグを観ているか、というコンテストの審査員をしたのだが、アフリカでは毎週末テレビを観に行くために20マイルを走っている人々がいた。人々をそれだけ駆り立てるものの一部になっていることを考えると、本当に卑屈な気分になってしまう。素晴らしい選手や監督たちが我々の元へやってきたが、代わりに我々は素晴らしいフットボールを世界中に届けているのだ。私は、フットボールはポジティブな力になると感じるし、香港でブラックバーン、チェルシー、そしてアストン・ヴィラのコーチがしていたことは、私を喜ばしい気持ちにさせた。それは、1990年代に流行った国際的なスター選手たちが世界中を回る「The Hurricanes」というサッカー漫画を思い出させる。まさにそれが実現すると予期していたようなものだ。
Friday, August 12, 2011
アーセナルにふさわしいのはヴェンゲル
昨シーズン現役を引退した元マンチェスター・ユナイテッドのギャリー・ネヴィルは、「スカイスポーツ」で解説をすることになっている。すでにスカイの中継ではおなじみのグレアム・スーネス、ジェイミー・レドナップと共に、新シーズンの展望を語っている。
スカイ側が用意したコンテンツが複数のメディアで取り上げられていて、ここでは「インディペンデント」紙の記事を中心に「テレグラフ」紙や「デイリーメール」紙(普段は飛ばしが多く、個人的には流し読みが多い)等からもコメントを拾ってみた。主に、セスク、ナスリの退団希望騒動に揺れるアーセナルを支持するもの。
++(以下、要訳)++
約15年のピッチ上の経験をもとに、ギャリー・ネヴィルは今でもアーセン・ヴェンゲルはアーセナルを指揮するのにふさわしい人物だ、と述べている。リーグのタイトルを獲ったのは7年前、最後のタイトルからも6年が経つが、スタジアム建設後の緊縮財政のものとで、ヴェンゲルよりも上手くやれた監督はいない、と考えている。
「アーセナルのファンが思っていることは分かるが、ファンは我慢できないものだ。トロフィーが欲しいからと言って、ヴェンゲルを失うというのは考えられない。彼は長くその職にあるが、素晴らしい仕事をしているし、それこそ、彼がそこにとどまっている理由だ。なかなか飛躍しきれない選手も何人かいて、彼らはブレイクに近づいてはまた遠ざかっている。しかし、クラブは投資した選手たちを信じつつ、新たな選手を迎える必要もあるが、監督がそうした選手を使って成し遂げられることを見くびってはいけない」
「人々は急いでバンドワゴンに乗りたがるが、彼のようなクオリティであれだけのことを成し遂げた監督はいないし、プレッシャーなど感じる必要はない。クラブとして彼らは長期計画に信念を持っている。アーセナルがタイトルを必要としているのは間違いないし、投資を続けるためには4位以内は必須だ」
またネヴィルは、セスクやナスリの将来は、この騒動がクラブの「ガン」になる前に早急に決着すべきと警告している。「彼らを失ったら、アーセナルはトップ4に入れるのか?彼らを失って代わりがいないとしたら、それは本当に驚きだ。ひとつ確かなのは、彼らを失えば、再投資すべき莫大な金が入るということだ」
それに、モラルの面からも早期解決が望ましいと続けた。「選手たちがクラブにいたくないのなら、その選手の考えを改めさせる必要がある。彼らだって考えは変わる。しかし、悪い時間が続くとプライベートでも難しさができて、家族も街を離れたい、となってくると、彼らも『ガン』になりえるんだよ。本当にいたくなければ、行かせてやるべきだ」
元イングランド代表の右サイドバックは、似たような問題に直面してきたサー・アレックス・ファーガソンの対応と重ね合わせてこう語る。「過去25年に渡って、辿ればアンドレイ・カンチェルスキスの頃から出て行きたいという選手と向き合ってきて、何にでも対処できるようになっている。現代フットボールでは特に難しい問題だ」
「今のアーセナルの問題をみてもヴェンゲルが制御不能に陥ってるとは思わないし、セスクやナスリが公にヴェンゲルやクラブを批判することもないだろう。そこには適度なコントロールとリスペクトがある。いまのところ対処を誤っているとも思えない」
新たにスカイに解説者として加わったネヴィルは、優勝はマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナル、リバプールの5チームによる接戦になると見ている。
現役時代には最もしのぎを削り合ったアンフィールドのクラブについて、スーネス同様、ネヴィルもその回復基調を感じ取っている。「彼らがこの夏にしていることは、イギリス人プレーヤーを買い集めてコアとなる安定感をもたらそうとするものだ。アンフィールドはプレーするのがもっとも難しい場所の一つだし、経験のある監督を迎えて、ここ数シーズンには無いレベルの期待感がある。タイトルを争うのは金を使った5クラブだという確信がある」とネヴィルが語ると、スーネスも「リバプールがサポーターと共にこの勢いを活かせれば、確実に挑戦状を叩きつけられる存在になる」と続けた。
ネヴィルは、コミュニティ・シールドでのユナイテッドのパフォーマンスと、サー・アレックス・ファーガソンの下での進化の早さに舌を巻いている。「ポール・スコールズの穴を埋めるのは簡単なことではないし、ピタリとはまる代役はいない。そういう状況をいつもファーガソンは乗り越えてきた。彼は難なく選手を一流に育て上げ、また新しい選手を連れて来るんだ」
レドナップもユナイテッドがタイトルの最有力と睨んでいる。「彼らは良い買い物をした。フィル・ジョーンズは将来のイングランドのキャプテン、アシュリー・ヤングもプラスをもたらすはず」
そして、トッテナムが上位から滑り落ちる存在、とネヴィルは見ている。「トッテナムは、前進するには2人か3人新しい選手が必要だ。リフレッシュが必要なんだ。ここ数年は素晴らしいが、今年は厳しいシーズンになる」
++++
最後のスパーズの一節にガックリきたけど、まだあんま深いコメントは出てこないな、ネヴィル。しばらくはこうやってファーガソンとの内幕話で持たせる感じか?アーセナルについては他にもっと良い記事があったから、そっちにすればよかったわ。
スカイ側が用意したコンテンツが複数のメディアで取り上げられていて、ここでは「インディペンデント」紙の記事を中心に「テレグラフ」紙や「デイリーメール」紙(普段は飛ばしが多く、個人的には流し読みが多い)等からもコメントを拾ってみた。主に、セスク、ナスリの退団希望騒動に揺れるアーセナルを支持するもの。
++(以下、要訳)++
約15年のピッチ上の経験をもとに、ギャリー・ネヴィルは今でもアーセン・ヴェンゲルはアーセナルを指揮するのにふさわしい人物だ、と述べている。リーグのタイトルを獲ったのは7年前、最後のタイトルからも6年が経つが、スタジアム建設後の緊縮財政のものとで、ヴェンゲルよりも上手くやれた監督はいない、と考えている。
「アーセナルのファンが思っていることは分かるが、ファンは我慢できないものだ。トロフィーが欲しいからと言って、ヴェンゲルを失うというのは考えられない。彼は長くその職にあるが、素晴らしい仕事をしているし、それこそ、彼がそこにとどまっている理由だ。なかなか飛躍しきれない選手も何人かいて、彼らはブレイクに近づいてはまた遠ざかっている。しかし、クラブは投資した選手たちを信じつつ、新たな選手を迎える必要もあるが、監督がそうした選手を使って成し遂げられることを見くびってはいけない」
「人々は急いでバンドワゴンに乗りたがるが、彼のようなクオリティであれだけのことを成し遂げた監督はいないし、プレッシャーなど感じる必要はない。クラブとして彼らは長期計画に信念を持っている。アーセナルがタイトルを必要としているのは間違いないし、投資を続けるためには4位以内は必須だ」
またネヴィルは、セスクやナスリの将来は、この騒動がクラブの「ガン」になる前に早急に決着すべきと警告している。「彼らを失ったら、アーセナルはトップ4に入れるのか?彼らを失って代わりがいないとしたら、それは本当に驚きだ。ひとつ確かなのは、彼らを失えば、再投資すべき莫大な金が入るということだ」
それに、モラルの面からも早期解決が望ましいと続けた。「選手たちがクラブにいたくないのなら、その選手の考えを改めさせる必要がある。彼らだって考えは変わる。しかし、悪い時間が続くとプライベートでも難しさができて、家族も街を離れたい、となってくると、彼らも『ガン』になりえるんだよ。本当にいたくなければ、行かせてやるべきだ」
元イングランド代表の右サイドバックは、似たような問題に直面してきたサー・アレックス・ファーガソンの対応と重ね合わせてこう語る。「過去25年に渡って、辿ればアンドレイ・カンチェルスキスの頃から出て行きたいという選手と向き合ってきて、何にでも対処できるようになっている。現代フットボールでは特に難しい問題だ」
「今のアーセナルの問題をみてもヴェンゲルが制御不能に陥ってるとは思わないし、セスクやナスリが公にヴェンゲルやクラブを批判することもないだろう。そこには適度なコントロールとリスペクトがある。いまのところ対処を誤っているとも思えない」
新たにスカイに解説者として加わったネヴィルは、優勝はマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナル、リバプールの5チームによる接戦になると見ている。
現役時代には最もしのぎを削り合ったアンフィールドのクラブについて、スーネス同様、ネヴィルもその回復基調を感じ取っている。「彼らがこの夏にしていることは、イギリス人プレーヤーを買い集めてコアとなる安定感をもたらそうとするものだ。アンフィールドはプレーするのがもっとも難しい場所の一つだし、経験のある監督を迎えて、ここ数シーズンには無いレベルの期待感がある。タイトルを争うのは金を使った5クラブだという確信がある」とネヴィルが語ると、スーネスも「リバプールがサポーターと共にこの勢いを活かせれば、確実に挑戦状を叩きつけられる存在になる」と続けた。
ネヴィルは、コミュニティ・シールドでのユナイテッドのパフォーマンスと、サー・アレックス・ファーガソンの下での進化の早さに舌を巻いている。「ポール・スコールズの穴を埋めるのは簡単なことではないし、ピタリとはまる代役はいない。そういう状況をいつもファーガソンは乗り越えてきた。彼は難なく選手を一流に育て上げ、また新しい選手を連れて来るんだ」
レドナップもユナイテッドがタイトルの最有力と睨んでいる。「彼らは良い買い物をした。フィル・ジョーンズは将来のイングランドのキャプテン、アシュリー・ヤングもプラスをもたらすはず」
そして、トッテナムが上位から滑り落ちる存在、とネヴィルは見ている。「トッテナムは、前進するには2人か3人新しい選手が必要だ。リフレッシュが必要なんだ。ここ数年は素晴らしいが、今年は厳しいシーズンになる」
++++
最後のスパーズの一節にガックリきたけど、まだあんま深いコメントは出てこないな、ネヴィル。しばらくはこうやってファーガソンとの内幕話で持たせる感じか?アーセナルについては他にもっと良い記事があったから、そっちにすればよかったわ。
Monday, August 8, 2011
アラン・ハンセンによるプレミアリーグ・プレビュー
BBCのハイライト番組「Match of the Day」での辛口コメントでおなじみのアラン・ハンセン(元スコットランド代表&リバプール)が、「テレグラフ」紙にシーズン・プレビューのコラムを寄稿。コミュニティ・シールドを観て、今シーズンのユナイテッドは強いと感じている様子。
++(以下、要訳)++
タイトルの行方
通常、コミュニティ・シールドについてはあまり語らない方が賢明だ。通常、コミュニティ・シールドがシーズンの行方に影響を与えることは少ない。通常、コミュニティ・シールドは重要度の高いゲームではない。それでも、日曜のマンチェスター・ユナイテッドの勝利は、そのすべてを劇的に変えて見せた。
試合前からユナイテッドは、チェルシーと並んで今シーズンのリーグタイトルの有力候補ではあった。しかし昨シーズンの歴史を塗り替える通算19度目のタイトルは、シーズンの大半を本来いるべき「皆から追われるトップの座」から離れ、プレッシャーを感じずに過ごすという上手い立ち回りの結果だったとも言えた。
しかし、日曜のファーガソンの若いチームは、スタンフォード・ブリッジ、エミレーツ・スタジアム、アンフィールド、そしてホワイト・ハート・レーンに向けた警鐘を鳴らし、シティの心を引き裂いて見せた。ユナイテッドは突如圧倒的な優勝候補となった。
このチームは、若く活気があり、エキサイティングだった。ゲームを締めくくった若い選手たちはまるで何年もオールド・トラフォードにいるかのようだった。そして何より、彼らはチームだった。シティが全くそうでないのとは対照的だ。
マンチーニのチームは、未だに多くの問題を抱えている。出て行きたがっている選手たちがいるが、ユナイテッドでは考えられないことで、例えばファーガソンがバロテッリを獲得していたとしたら、今頃飼いならすか売り払うか、どちらかになっていたはずだ。これがシティにおいては、マンチーニはそうできずにいる。これだけでも多くが語れるが、つまりは、シティは未だに懸命にクラブのアイデンティティを探している最中だ、ということだ。
チェルシーは、一度はチームになった。そして、それは素晴らしいチームだった。しかし、アンドレ・ヴィラス・ボアスが直面している挑戦は、それを解体して新しい選手たちを馴染ませるということで、それはフットボールの世界では一番難しいことだ。選手経験の無い33歳には不可能に近い。もちろんファーガソンもこれまでに多くのチームを作っては解体してきた。そしてまた新たな生まれ変わりを見つけている。
つまり、ライバルたちにこのユナイテッドを打ち負かすほど安定しているところなど無いのだ。
トップ4
3クラブ(ユナイテッド、チェルシー、シティ)のうち1クラブが優勝するとすれば、残る1つのチャンピオンズリーグ枠に滑り込むのも3クラブのうち1つだ。それがトッテナムの野望なのは間違いないが、よりプレッシャーがかかるのはリバプール、そして特にアーセナルだろう。
アーセン・ヴェンゲルは崖っぷちに立たされている。キャプテンのセスク・ファブレガスとベスト・プレーヤーのひとりサミ・ナスリはクラブを出て行きたいと言っていて、その一方でジェルビーニョを除けばこれと言って誰も連れてこれずにいる。チームはリーダシップと経験を求め続けているのだが。
アーセナルはそのプレースタイルで数え切れないほどの称賛を受けてきたが、ヴェンゲルがいま直面しているのは、その美しさだけでは(特にファブレガスもしくはナスリ抜きでは)タイトルは勝ち取れないのだが、スタイルを捨てれば、勝負でも美しさでも敗れ去るリスクがあるという危機だ。スタイルも結果も無くなれば、アーセナルは深刻な危機に陥るだろう。
アーセナルやリバプールにとってはスタートダッシュが肝だ。開幕2試合目で、彼らはエミレーツで相まみえるが、仮に両クラブが開幕戦を落としていると、開幕2ゲームで勝ち点ゼロという状況に陥る可能性さえある。
ケニー・ダルグリッシュは、昨シーズン後半の良い締めくくりとアンフィールドにおけるその立場で、いくらかの時間と信頼を勝ち取ってはいるが、過ちを犯すことはできない。オーナーのジョン・W・ヘンリーが明らかにしているように、来シーズンのチャンピオンズリーグに出られなければ、リバプールは大きな失望を味わうだろう。万全のシーズンを送れても、リーグタイトルはまだ遠いだろう。しかし4位はそうでない。それがアンフィールドとエミレーツで望まれていることなのだ。
残留に向けた戦い
ここ数年、昇格クラブのスタンスには変化が見られ、残留のために将来を犠牲にする戦い方から、チャンピオンシップ時代と同様の給与体系に残留を決めた場合の大きなボーナス、というインセンティブを付けるようになった。
元々そうすべきことであり、短期間のもうけのために長期の安定性についてリスクをかけるべきではない。ウェスト・ブロミッジのような成功例や、シーズン最終日まで粘ったものの降格してしまったブラックプールの取り組みは、ノーリッジ、スウォンジー、QPRにいくらかのインスピレーションを与えるはずだ。
それでも、とるべきバランスがあるのも確かだ。チャンピオンシップ上位とプレミアシップの下位にあるギャップは、要するに「キャズム」だ。これを超えるには、クラブにもある程度の投資が必要であり、それは6クラブに降格の可能性があった昨シーズンの最終節によってことさら強調されたのではないか。
注目選手
昨シーズンはエンタテインメントとしては最高だったが、全体としてのクオリティがいまひとつだったのは否定できない。それでも、各クラブには語られるべきストーリーが数多くあり、これがクオリティ改善に貢献するだろうと見ている。アーセナルの混乱、リバプールの復活、チームになろうとするシティ、ひとつであり続けようとするチェルシー、そしてそれらを迎え撃つユナイテッド。
そしてそこにはキャストとなる選手たちがいる。ルイス・スアレスのマージーサイドにおける最初の6カ月はすっかり魅了された。初めてイングランドにやってきた彼のプレーはセンセーショナルだった。
次はルカ・モドリッチ。チェルシーに切望され、トッテナムには高く評価されている。彼がホワイト・ハート・レーンにとどまり、機嫌を損ねる代わりに(そうなる選手が多いのだが)ピッチで彼がリーグで最高の選手であることを証明してくれたら、本当に素晴らしいと思う。
もちろん、シティのセルヒオ・アグエロは、海外からの興味をひかれる買い物だ。外国人がイングランドの試合を魅力あるものにしてきたことは確かだが、最近のバロテッリやカルロス・テヴェスの騒動はそのイメージに水を差している。出て行きたいとコンスタントに言い続けるのは、何よりプレミアリーグ、そして自分たちが稼いでいる大金への敬意の欠如を示している。願わくば、アグエロのクオリティが否定できないもので、そうしたイメージを一掃する存在であって欲しい。
そして、日曜日に素晴らしい印象を残したユナイテッドのディフェンスのフィル・ジョーンズからアシュリー・ヤング(いくらか成熟してるが、まだ伸びる)に至るヤングスターたちだ。彼らはバルセロナとの差を埋めようとするファーガソンが呼んだタレントだ。ファーガソンは、5月のチャンピオンズリーグのファイナル(同じくウェンブリーでのゲームだった)で、1999年のチームのようなクオリティがあったら結果は違っていたと信じている。日曜のピッチで披露された新しいチームが成長を続ければ、そうしたチームはすぐに実現するだろう。
++++
スパーズにも触れてくれると思いきや、あっっっっさり流されてしまった…。しかし、色々と下馬評を見ていると今季のトップ4争いはリバプールの積極的な動きもあって、より熾烈になりそう。今週末の開幕を前に、スパーズのチーム編成は遅れ気味な感じ。
++(以下、要訳)++
タイトルの行方
通常、コミュニティ・シールドについてはあまり語らない方が賢明だ。通常、コミュニティ・シールドがシーズンの行方に影響を与えることは少ない。通常、コミュニティ・シールドは重要度の高いゲームではない。それでも、日曜のマンチェスター・ユナイテッドの勝利は、そのすべてを劇的に変えて見せた。
試合前からユナイテッドは、チェルシーと並んで今シーズンのリーグタイトルの有力候補ではあった。しかし昨シーズンの歴史を塗り替える通算19度目のタイトルは、シーズンの大半を本来いるべき「皆から追われるトップの座」から離れ、プレッシャーを感じずに過ごすという上手い立ち回りの結果だったとも言えた。
しかし、日曜のファーガソンの若いチームは、スタンフォード・ブリッジ、エミレーツ・スタジアム、アンフィールド、そしてホワイト・ハート・レーンに向けた警鐘を鳴らし、シティの心を引き裂いて見せた。ユナイテッドは突如圧倒的な優勝候補となった。
このチームは、若く活気があり、エキサイティングだった。ゲームを締めくくった若い選手たちはまるで何年もオールド・トラフォードにいるかのようだった。そして何より、彼らはチームだった。シティが全くそうでないのとは対照的だ。
マンチーニのチームは、未だに多くの問題を抱えている。出て行きたがっている選手たちがいるが、ユナイテッドでは考えられないことで、例えばファーガソンがバロテッリを獲得していたとしたら、今頃飼いならすか売り払うか、どちらかになっていたはずだ。これがシティにおいては、マンチーニはそうできずにいる。これだけでも多くが語れるが、つまりは、シティは未だに懸命にクラブのアイデンティティを探している最中だ、ということだ。
チェルシーは、一度はチームになった。そして、それは素晴らしいチームだった。しかし、アンドレ・ヴィラス・ボアスが直面している挑戦は、それを解体して新しい選手たちを馴染ませるということで、それはフットボールの世界では一番難しいことだ。選手経験の無い33歳には不可能に近い。もちろんファーガソンもこれまでに多くのチームを作っては解体してきた。そしてまた新たな生まれ変わりを見つけている。
つまり、ライバルたちにこのユナイテッドを打ち負かすほど安定しているところなど無いのだ。
トップ4
3クラブ(ユナイテッド、チェルシー、シティ)のうち1クラブが優勝するとすれば、残る1つのチャンピオンズリーグ枠に滑り込むのも3クラブのうち1つだ。それがトッテナムの野望なのは間違いないが、よりプレッシャーがかかるのはリバプール、そして特にアーセナルだろう。
アーセン・ヴェンゲルは崖っぷちに立たされている。キャプテンのセスク・ファブレガスとベスト・プレーヤーのひとりサミ・ナスリはクラブを出て行きたいと言っていて、その一方でジェルビーニョを除けばこれと言って誰も連れてこれずにいる。チームはリーダシップと経験を求め続けているのだが。
アーセナルはそのプレースタイルで数え切れないほどの称賛を受けてきたが、ヴェンゲルがいま直面しているのは、その美しさだけでは(特にファブレガスもしくはナスリ抜きでは)タイトルは勝ち取れないのだが、スタイルを捨てれば、勝負でも美しさでも敗れ去るリスクがあるという危機だ。スタイルも結果も無くなれば、アーセナルは深刻な危機に陥るだろう。
アーセナルやリバプールにとってはスタートダッシュが肝だ。開幕2試合目で、彼らはエミレーツで相まみえるが、仮に両クラブが開幕戦を落としていると、開幕2ゲームで勝ち点ゼロという状況に陥る可能性さえある。
ケニー・ダルグリッシュは、昨シーズン後半の良い締めくくりとアンフィールドにおけるその立場で、いくらかの時間と信頼を勝ち取ってはいるが、過ちを犯すことはできない。オーナーのジョン・W・ヘンリーが明らかにしているように、来シーズンのチャンピオンズリーグに出られなければ、リバプールは大きな失望を味わうだろう。万全のシーズンを送れても、リーグタイトルはまだ遠いだろう。しかし4位はそうでない。それがアンフィールドとエミレーツで望まれていることなのだ。
残留に向けた戦い
ここ数年、昇格クラブのスタンスには変化が見られ、残留のために将来を犠牲にする戦い方から、チャンピオンシップ時代と同様の給与体系に残留を決めた場合の大きなボーナス、というインセンティブを付けるようになった。
元々そうすべきことであり、短期間のもうけのために長期の安定性についてリスクをかけるべきではない。ウェスト・ブロミッジのような成功例や、シーズン最終日まで粘ったものの降格してしまったブラックプールの取り組みは、ノーリッジ、スウォンジー、QPRにいくらかのインスピレーションを与えるはずだ。
それでも、とるべきバランスがあるのも確かだ。チャンピオンシップ上位とプレミアシップの下位にあるギャップは、要するに「キャズム」だ。これを超えるには、クラブにもある程度の投資が必要であり、それは6クラブに降格の可能性があった昨シーズンの最終節によってことさら強調されたのではないか。
注目選手
昨シーズンはエンタテインメントとしては最高だったが、全体としてのクオリティがいまひとつだったのは否定できない。それでも、各クラブには語られるべきストーリーが数多くあり、これがクオリティ改善に貢献するだろうと見ている。アーセナルの混乱、リバプールの復活、チームになろうとするシティ、ひとつであり続けようとするチェルシー、そしてそれらを迎え撃つユナイテッド。
そしてそこにはキャストとなる選手たちがいる。ルイス・スアレスのマージーサイドにおける最初の6カ月はすっかり魅了された。初めてイングランドにやってきた彼のプレーはセンセーショナルだった。
次はルカ・モドリッチ。チェルシーに切望され、トッテナムには高く評価されている。彼がホワイト・ハート・レーンにとどまり、機嫌を損ねる代わりに(そうなる選手が多いのだが)ピッチで彼がリーグで最高の選手であることを証明してくれたら、本当に素晴らしいと思う。
もちろん、シティのセルヒオ・アグエロは、海外からの興味をひかれる買い物だ。外国人がイングランドの試合を魅力あるものにしてきたことは確かだが、最近のバロテッリやカルロス・テヴェスの騒動はそのイメージに水を差している。出て行きたいとコンスタントに言い続けるのは、何よりプレミアリーグ、そして自分たちが稼いでいる大金への敬意の欠如を示している。願わくば、アグエロのクオリティが否定できないもので、そうしたイメージを一掃する存在であって欲しい。
そして、日曜日に素晴らしい印象を残したユナイテッドのディフェンスのフィル・ジョーンズからアシュリー・ヤング(いくらか成熟してるが、まだ伸びる)に至るヤングスターたちだ。彼らはバルセロナとの差を埋めようとするファーガソンが呼んだタレントだ。ファーガソンは、5月のチャンピオンズリーグのファイナル(同じくウェンブリーでのゲームだった)で、1999年のチームのようなクオリティがあったら結果は違っていたと信じている。日曜のピッチで披露された新しいチームが成長を続ければ、そうしたチームはすぐに実現するだろう。
++++
スパーズにも触れてくれると思いきや、あっっっっさり流されてしまった…。しかし、色々と下馬評を見ていると今季のトップ4争いはリバプールの積極的な動きもあって、より熾烈になりそう。今週末の開幕を前に、スパーズのチーム編成は遅れ気味な感じ。
コミュニティー・シールドから分かった5つの事実
ウェンブリーでのマンチェスター・ダービーとなった今年のコミュニティー・シールドは、劇的な展開でマンチェスター・ユナイテッドの勝利。「ガーディアン」紙のダニエル・テイラー記者が、この試合で分かった5つのコト、という記事を書いています。
++(以下、要訳)++
1. マンチェスター・シティはまだ構築中
シティの側に掲げられた「イングランドのバルセロナ」という弾幕のように感じられる場面は無く、注意散漫なパス、去年の安定感に程遠いディフェンスで、ロベルト・マンチーニがタッチライン近くにいる時には空に絶叫していた。アレクサンダー・コラロフのコーナーキックは直接ゴールラインを割り、ヤヤ・トゥーレの6ヤードの距離にいるウェイン・ルーニーのボールを渡すありさまだった。マンチーニは、タイトルを狙うには少なくともあと2人の補強が必要と言っているが、それが真実か役員たちへのプレッシャーなのかは分からない。
2. ダヴィド・デ・ヘアを「第2のマッシモ・タイービ」と呼ぶのはまだ早い
彼が早い段階でミスをするであろうことは予測できた。彼は20歳と若い上、新しい国に来たばかり、サポーターはまだエドウィン・ファン・デル・サルとの思い出に浸っている段階となれば、そこで少々想定外の事態を経験せずに代役をこなすのは困難だろう。大事なことは、ここからどう反応するかであり、彼が自分の基準から抜け出せるかだ。プレミアリーグは過ちは許されない場なのだ。それでも、ファーガソンが日曜日のウェスト・ブロミッジ戦に向けてどう判断するだろうか。我慢をするのか、アンデルス・リンデガードを使うのか。後半には素晴らしいセーブが2つあり、今の段階でデ・ヘアをタイービと比較するのは過剰反応だが、少なくとも今のところはリンデガードで行くという判断もできる。
3. ナニは注目の選手かもしれない
昨シーズンの後半以来、ナニはいくらか不当な扱いを受けている気分になっていたかもしれない。素晴らしいウィングプレーで優勝に貢献しながら、PFAのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーにノミネートすらされなかった。チャンピオンズリーグの決勝では先発の座をアントニオ・バレンシアに奪われ、クラブの夏の補強は1,400万ポンドを費やしたアシュリー・ヤングから始まった。機嫌を損ねてもおかしくない状況ではあったが、ナニはPFAがいかに誤っているかなど話題にもしなかった。のちにサー・アレックス・ファーガソンがナニについて「ロナウドの姿など重ねて合わせてはいない」とコメントしたことから判断するに、これだけの破壊力を持つウィングは他にはいないのではないだろうか?
4. バロテッリ氏には、もう少し安定感が欲しい
マリオ・バロテッリについて書くのが難しいのは、毎試合大きく評価が異なる珍しいタイプの選手だからだ。今週褒めたと思ったら、来週には退場している。それを批判すれば、次の週には決勝ゴールを決める。我々はあまり遠い将来について語らない方が良いのだろうが、バロテッリが定着するまでにはマンチーニに仕事が山積みなのは確かだ。ちなみに、この試合のバロテッリは典型的にダメな方だった。相手と口論し、プレーしてるフリもしばしば。何本かそこそこのパスはあったものの、ゴールにつながるようなものでもなかった。次の試合では良い方のバロテッリが出てくるかもしれない。摩訶不思議なバロテッリの世界へようこそ。
5. トム・クレバリーは、マイケル・キャリックの立場を脅かせる
公平を期せば、マイケル・キャリックはアキレス腱の負傷に見舞われ、サー・アレックス・ファーガソンも金曜の朝には彼を使わないことを決めていたくらいだ。それでも強行出場したキャリックと交代で後半からクレバリーが入ると、ユナイテッドのパフォーマンスは格段に上向いた。クレバリーは聡明でアイディアがあり、常にゲームに違いをもたらしたい、と思っている。キャリックを中傷するつもりはないが、19分に近年のキャリックを象徴する場面があった。ゴールから約25ヤードでナニからのボールを受けたもの、シュートの自信が無かったのか、キャリックはデイフェンスのブロックが無いにもかかわらずシュートでなくパスを選択し、すべてが裏目に出た。クリス・スモーリングと同様、ファーガソンの気持ちに訴えるものを、クレバリーは持っているのだ。
++(以下、要訳)++
1. マンチェスター・シティはまだ構築中
シティの側に掲げられた「イングランドのバルセロナ」という弾幕のように感じられる場面は無く、注意散漫なパス、去年の安定感に程遠いディフェンスで、ロベルト・マンチーニがタッチライン近くにいる時には空に絶叫していた。アレクサンダー・コラロフのコーナーキックは直接ゴールラインを割り、ヤヤ・トゥーレの6ヤードの距離にいるウェイン・ルーニーのボールを渡すありさまだった。マンチーニは、タイトルを狙うには少なくともあと2人の補強が必要と言っているが、それが真実か役員たちへのプレッシャーなのかは分からない。
2. ダヴィド・デ・ヘアを「第2のマッシモ・タイービ」と呼ぶのはまだ早い
彼が早い段階でミスをするであろうことは予測できた。彼は20歳と若い上、新しい国に来たばかり、サポーターはまだエドウィン・ファン・デル・サルとの思い出に浸っている段階となれば、そこで少々想定外の事態を経験せずに代役をこなすのは困難だろう。大事なことは、ここからどう反応するかであり、彼が自分の基準から抜け出せるかだ。プレミアリーグは過ちは許されない場なのだ。それでも、ファーガソンが日曜日のウェスト・ブロミッジ戦に向けてどう判断するだろうか。我慢をするのか、アンデルス・リンデガードを使うのか。後半には素晴らしいセーブが2つあり、今の段階でデ・ヘアをタイービと比較するのは過剰反応だが、少なくとも今のところはリンデガードで行くという判断もできる。
3. ナニは注目の選手かもしれない
昨シーズンの後半以来、ナニはいくらか不当な扱いを受けている気分になっていたかもしれない。素晴らしいウィングプレーで優勝に貢献しながら、PFAのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーにノミネートすらされなかった。チャンピオンズリーグの決勝では先発の座をアントニオ・バレンシアに奪われ、クラブの夏の補強は1,400万ポンドを費やしたアシュリー・ヤングから始まった。機嫌を損ねてもおかしくない状況ではあったが、ナニはPFAがいかに誤っているかなど話題にもしなかった。のちにサー・アレックス・ファーガソンがナニについて「ロナウドの姿など重ねて合わせてはいない」とコメントしたことから判断するに、これだけの破壊力を持つウィングは他にはいないのではないだろうか?
4. バロテッリ氏には、もう少し安定感が欲しい
マリオ・バロテッリについて書くのが難しいのは、毎試合大きく評価が異なる珍しいタイプの選手だからだ。今週褒めたと思ったら、来週には退場している。それを批判すれば、次の週には決勝ゴールを決める。我々はあまり遠い将来について語らない方が良いのだろうが、バロテッリが定着するまでにはマンチーニに仕事が山積みなのは確かだ。ちなみに、この試合のバロテッリは典型的にダメな方だった。相手と口論し、プレーしてるフリもしばしば。何本かそこそこのパスはあったものの、ゴールにつながるようなものでもなかった。次の試合では良い方のバロテッリが出てくるかもしれない。摩訶不思議なバロテッリの世界へようこそ。
5. トム・クレバリーは、マイケル・キャリックの立場を脅かせる
公平を期せば、マイケル・キャリックはアキレス腱の負傷に見舞われ、サー・アレックス・ファーガソンも金曜の朝には彼を使わないことを決めていたくらいだ。それでも強行出場したキャリックと交代で後半からクレバリーが入ると、ユナイテッドのパフォーマンスは格段に上向いた。クレバリーは聡明でアイディアがあり、常にゲームに違いをもたらしたい、と思っている。キャリックを中傷するつもりはないが、19分に近年のキャリックを象徴する場面があった。ゴールから約25ヤードでナニからのボールを受けたもの、シュートの自信が無かったのか、キャリックはデイフェンスのブロックが無いにもかかわらずシュートでなくパスを選択し、すべてが裏目に出た。クリス・スモーリングと同様、ファーガソンの気持ちに訴えるものを、クレバリーは持っているのだ。
Saturday, August 6, 2011
モイーズ率いるエヴァートン、復権への想い
一時期はトップ4を脅かす一番手となっていたエヴァートンは、近年なかなかその位置に近づけずにいる。昨季も開幕時の躓きが尾を引いて、終盤追い上げたものの、ヨーロッパの舞台には届かなかった。近年は財政難も叫ばれ、補強もままならない状況の中、監督のデイビッド・モイーズがどのようにチームをまとめ上げているのか。「インディペンデント」紙のサイモン・ハート記者による記事。
++(以下、要訳)++
今晩、最後のプレシーズン・マッチの相手としてヴィジャレアルをグッディソン・パークに迎えるエヴァトニアンたちの脳裏には何が浮かぶだろうか。
2005年にチャンピオンズリーグのグループステージに挑んだエヴァートンは、このスペインのクラブに一歩及ばずに散った。ファンは、ピエルルイジ・コッリーナの不可解な判定にダンカン・ファーガソンの重要なゴールを取り消されたことをよく覚えている。
エバートンはホームで1-2で敗れた後に、マドリガルに乗り込んだ。ミケル・アルテタのフリーキックで1-1の同点にした後、コーナーキックからのボールをファーガソンが力強くゴールに押し込んだ時、タイの立場に追いついたと思った。しかし、コッリーナはこのゴールを認める代わりに、マーカス・ベントとゴンサロ・ロドリゲスに接触があったとして笛を吹いた。TVカメラの映像を見る限り、2人はさしたる押し合いをしていたわけではなかった。ヴィジャレアルは、2点目のゴールを突き刺してエヴァートンの傷に塩を塗りこむと、準決勝まで進出した。エバートンはそれ以来、この現代フットボールの約束の地には近づいていない。
ミケル・アルテタはヴィジャレアルは避けたい相手だと警告していた。モイーズとグッディソン・パークで8年間を共にしたミック・ラスボーンは、当時を4位でシーズンを終えた後の「とんだ目論み違い」と表現してこう振り返る。「ヴィジャレアルを引いた時はみな沈黙したよ。当たりたくない相手だった。モイーズは、エヴァートンを変えるチャンスで、トップ4のクラブにできると信じていた」そして、コッリーナの判定を後に確認し、それが「見え透いた誤審」だったと分かった時には、怒りに満ちた失望を味わった。
モイーズ政権の10年目が近づくにつれ、来年の5月にはクラブはどうなっているのかという疑問が渦巻いている。クラブが最後に9度目となるリーグ・タイトルを獲ったのは25年前だ。エヴァートンを支える人々も、移籍マーケットでモイーズをサポートするための投資をちっともできないオーナーのビル・ケンライトとその幹部たちに向け、苛立ちの声を強めている。
エヴァートンの負債はおよそ4,500万ポンドと見積もられ、CEOのロバート・エルストンはクラブ公式サイトのブログで「資金を絞り出すのは今までになく厳しい」と述べている。隣町のクラブとのコントラストは明らか過ぎるくらいで、リバプールの監督であるケニー・ダルグリッシュが2011年に向けて1億ポンド相当の選手を補強したのに対し、モイーズがこの1年の間に費やした資金はわずかに200万ポンドだ。それでもなお、誰かを買うにはその前に売る必要がある状況だ。
ケンライトへの批判は、キングス・ドック、カークビーへの移転の失敗にも向けられている。グッディソン・パークが17年間に渡って手付かずの状態であるということは、試合の日にはオールド・トラフォードの5分の1の収入しか生めないことを意味している。今週もクラブに抗議する複数のグループが、停滞と不透明さに不満を表するプレスリリースを出している。
メンバーの一人であるデイブ・ケリーは「エヴァトニアンが買うには売らねばならない、という状況に慣れてきてしまっていることは悲しいことだ。7位で終えることを望み続けるか、スイッチを入れるかだ」と語る。ディフェンダーのシルヴァン・ディスタンでさえ、ツイッターでファンからモイーズがチャールズ・エンゾグビアに興味をも持っているという話について聞かれて、「残念だが今のウチには誰も買うことはできないみたいだ」と答えていたくらいだ。
24ゲームを2敗で切り抜ける素晴らしいフィニッシュを見せ、主力の流出もなく大きな期待感のあった昨年の夏とは大違いの状況だ。当時はサー・アレックス・ファーガソンもモイーズを讃え、チャンピオンズリーグも手の届くところにあるはずだ、と言ってたくらいだ。しかし、開幕ダッシュの失敗と信頼できるストライカー不足が高い代償となった。モイーズは今でもストライカーを必要としているし、ヤクブとジョセフ・ヨボの売却で資金の捻出も図っている。今問われているのは、フィル・ジャギエルカのような資産ですら手放すのか、それともローン移籍頼みで行くのかということだ。
ラスボーンは、この財政難の下であってもクラブ本部は悲運と憂鬱の陰に覆われているわけではない、と語る。彼の書いた自伝である『The Smell of Football』では、彼によるモイーズの方法論への洞察が描かれ、「モイーズが壁に頭を打ちつけて嘆いていると考えるのは誤りだ」と述べている。
どのプレシーズンにおいても、モイーズは「新鮮さと刺激をもたらすために、凄く小さなことにも注意を払っていた」と、プレストンでもモイーズと仕事をしていたラスボーンは言う。「一昨年の夏には、一人か二人の選手にベストを着せ始めたが、それは我々がその選手たちがトレーニングで何をしているのか、キチンと把握するためだった。2,000万ポンドで選手を買うのとは違う話だが、皆の肩を叩いて『やってやろうぜ』と声を掛けるんだ」
エヴァートンのアカデミーにも進化が見られ、プレシーズンで活躍を見せた17歳のロス・バークリーはクラブの希望のひとつだ。イングランドU-19で負った骨折からも回復した。クラブの切迫した状況は、強固なチームスピリットを生んでいて、高く評価される2人のイングランド人ディフェンダーであるフィル・ジャギエルカとレイトン・ベインズのどちらも、急いで出て行くそぶりなど見せない。ラスボーンも「私は、エヴァートンのタイトなメンバーとタイトなスタッフが、現代フットボールでは極めてユニークな状況を生んでいると思う」と語っている。
仮に、モイーズが昨年12月に通算400試合を前に語った「何らかのタイトルを獲る」という希望をこのかつてマージーの富豪と言われたクラブで実現するとしたら、この背水の陣とも言うべき状況でのクオリティが欠かせないものなのだろう。
- モイーズのベスト・バイ6 -
ティム・ケーヒル(200万ポンド、ミルウォール/2004)
ミケル・アルテタ(220万ポンド、レアル・ソシエダ/2005)
フィル・ジャギエルカ(400万ポンド、シェフィールド・ユナイテッド/2007)
スティーブン・ピーナール(205万ポンド、ボルシア・ドルトムント/2008)
シーマス・コールマン(6万ポンド、スリゴ・ローバーズ/2009)
ランドン・ドノバン(ローン、LAギャラクシー/2010)
++(以下、要訳)++
今晩、最後のプレシーズン・マッチの相手としてヴィジャレアルをグッディソン・パークに迎えるエヴァトニアンたちの脳裏には何が浮かぶだろうか。
2005年にチャンピオンズリーグのグループステージに挑んだエヴァートンは、このスペインのクラブに一歩及ばずに散った。ファンは、ピエルルイジ・コッリーナの不可解な判定にダンカン・ファーガソンの重要なゴールを取り消されたことをよく覚えている。
エバートンはホームで1-2で敗れた後に、マドリガルに乗り込んだ。ミケル・アルテタのフリーキックで1-1の同点にした後、コーナーキックからのボールをファーガソンが力強くゴールに押し込んだ時、タイの立場に追いついたと思った。しかし、コッリーナはこのゴールを認める代わりに、マーカス・ベントとゴンサロ・ロドリゲスに接触があったとして笛を吹いた。TVカメラの映像を見る限り、2人はさしたる押し合いをしていたわけではなかった。ヴィジャレアルは、2点目のゴールを突き刺してエヴァートンの傷に塩を塗りこむと、準決勝まで進出した。エバートンはそれ以来、この現代フットボールの約束の地には近づいていない。
ミケル・アルテタはヴィジャレアルは避けたい相手だと警告していた。モイーズとグッディソン・パークで8年間を共にしたミック・ラスボーンは、当時を4位でシーズンを終えた後の「とんだ目論み違い」と表現してこう振り返る。「ヴィジャレアルを引いた時はみな沈黙したよ。当たりたくない相手だった。モイーズは、エヴァートンを変えるチャンスで、トップ4のクラブにできると信じていた」そして、コッリーナの判定を後に確認し、それが「見え透いた誤審」だったと分かった時には、怒りに満ちた失望を味わった。
モイーズ政権の10年目が近づくにつれ、来年の5月にはクラブはどうなっているのかという疑問が渦巻いている。クラブが最後に9度目となるリーグ・タイトルを獲ったのは25年前だ。エヴァートンを支える人々も、移籍マーケットでモイーズをサポートするための投資をちっともできないオーナーのビル・ケンライトとその幹部たちに向け、苛立ちの声を強めている。
エヴァートンの負債はおよそ4,500万ポンドと見積もられ、CEOのロバート・エルストンはクラブ公式サイトのブログで「資金を絞り出すのは今までになく厳しい」と述べている。隣町のクラブとのコントラストは明らか過ぎるくらいで、リバプールの監督であるケニー・ダルグリッシュが2011年に向けて1億ポンド相当の選手を補強したのに対し、モイーズがこの1年の間に費やした資金はわずかに200万ポンドだ。それでもなお、誰かを買うにはその前に売る必要がある状況だ。
ケンライトへの批判は、キングス・ドック、カークビーへの移転の失敗にも向けられている。グッディソン・パークが17年間に渡って手付かずの状態であるということは、試合の日にはオールド・トラフォードの5分の1の収入しか生めないことを意味している。今週もクラブに抗議する複数のグループが、停滞と不透明さに不満を表するプレスリリースを出している。
メンバーの一人であるデイブ・ケリーは「エヴァトニアンが買うには売らねばならない、という状況に慣れてきてしまっていることは悲しいことだ。7位で終えることを望み続けるか、スイッチを入れるかだ」と語る。ディフェンダーのシルヴァン・ディスタンでさえ、ツイッターでファンからモイーズがチャールズ・エンゾグビアに興味をも持っているという話について聞かれて、「残念だが今のウチには誰も買うことはできないみたいだ」と答えていたくらいだ。
24ゲームを2敗で切り抜ける素晴らしいフィニッシュを見せ、主力の流出もなく大きな期待感のあった昨年の夏とは大違いの状況だ。当時はサー・アレックス・ファーガソンもモイーズを讃え、チャンピオンズリーグも手の届くところにあるはずだ、と言ってたくらいだ。しかし、開幕ダッシュの失敗と信頼できるストライカー不足が高い代償となった。モイーズは今でもストライカーを必要としているし、ヤクブとジョセフ・ヨボの売却で資金の捻出も図っている。今問われているのは、フィル・ジャギエルカのような資産ですら手放すのか、それともローン移籍頼みで行くのかということだ。
ラスボーンは、この財政難の下であってもクラブ本部は悲運と憂鬱の陰に覆われているわけではない、と語る。彼の書いた自伝である『The Smell of Football』では、彼によるモイーズの方法論への洞察が描かれ、「モイーズが壁に頭を打ちつけて嘆いていると考えるのは誤りだ」と述べている。
どのプレシーズンにおいても、モイーズは「新鮮さと刺激をもたらすために、凄く小さなことにも注意を払っていた」と、プレストンでもモイーズと仕事をしていたラスボーンは言う。「一昨年の夏には、一人か二人の選手にベストを着せ始めたが、それは我々がその選手たちがトレーニングで何をしているのか、キチンと把握するためだった。2,000万ポンドで選手を買うのとは違う話だが、皆の肩を叩いて『やってやろうぜ』と声を掛けるんだ」
エヴァートンのアカデミーにも進化が見られ、プレシーズンで活躍を見せた17歳のロス・バークリーはクラブの希望のひとつだ。イングランドU-19で負った骨折からも回復した。クラブの切迫した状況は、強固なチームスピリットを生んでいて、高く評価される2人のイングランド人ディフェンダーであるフィル・ジャギエルカとレイトン・ベインズのどちらも、急いで出て行くそぶりなど見せない。ラスボーンも「私は、エヴァートンのタイトなメンバーとタイトなスタッフが、現代フットボールでは極めてユニークな状況を生んでいると思う」と語っている。
仮に、モイーズが昨年12月に通算400試合を前に語った「何らかのタイトルを獲る」という希望をこのかつてマージーの富豪と言われたクラブで実現するとしたら、この背水の陣とも言うべき状況でのクオリティが欠かせないものなのだろう。
- モイーズのベスト・バイ6 -
ティム・ケーヒル(200万ポンド、ミルウォール/2004)
ミケル・アルテタ(220万ポンド、レアル・ソシエダ/2005)
フィル・ジャギエルカ(400万ポンド、シェフィールド・ユナイテッド/2007)
スティーブン・ピーナール(205万ポンド、ボルシア・ドルトムント/2008)
シーマス・コールマン(6万ポンド、スリゴ・ローバーズ/2009)
ランドン・ドノバン(ローン、LAギャラクシー/2010)
Monday, August 1, 2011
昇格に自信を見せるアラーダイス
プレミアリーグから降格し、今シーズンはチャンピオンシップで戦うウェストハムの監督に就任したサム・アラーダイスは、1年での復帰に自信を見せている。「ガーディアン」紙のデイビッド・ハイトナー記者によるインタビュー記事。
++(以下、要訳)++
サム・アラーダイスは、フットボールの監督しての自分の進化を振りかえり、「俺は獰猛な牛で、常に怒り、心配症で、要求の強い男だった」とゆっくり語った。常識を覆し続けたボルトン時代のことを語っているのではなく、リムリック、ノッツ・カウンティ、ブラックプールを率いて成長していた頃の話だ。
「今のスタイルを考えれば、あれも成長プロセスの一環だ。経験が無かったのだから、他の方法があったとは思えない。ただ、経験から学ばなければ、この世界では生きて行けないよ」そう語るアラーダイスは、ここまで続けられた。以前ボルトンで10年契約を結んで56歳で引退したいと語っていたが、この10月に57歳になる。先月の初め、ウェストハム・ユナイテッドと2年契約を結んだ。彼の役目は、降格でダメージを受けたクラブのモラルを回復し、すぐにプレミアリーグに戻ることだが、もちろんこれは簡単なことではない。
ウェストハムは降格が決まって以来、12人の選手を放出したが、その数はまだ増えるかもしれない。プレミアに残ることを切望しているスコット・パーカーは、値段が見合えば売られるだろう。アラーダイスも「スコットの話はデリケートだ。我々の望む額を提示するクラブがあり、それが彼の望むプレミアのクラブからのものであれば、彼はいなくなるだろう」と語っている。
アラーダイスは、パーカーではなくニューカッスルから400万ポンドで獲得したケヴィン・ノーランをキャプテンに指名した。いずれにしても昨シーズンもオフに契約切れでリリースされたマシュー・アップソンがキャプテン・マークを巻いていたのだが。
「スコットがキャプテンだったという誤解は、チームを奮い立たせたウェスト・ブロミッジ戦(2月)でのハーフタイムの演説から来ている」とアラーダイスは0-3から3-3に持ち込む奮起をチームに促したスピーチに触れ、「何て言ったのか、議事録でも欲しいね。俺も使う」と笑った。「でも彼を構想に入れるのは誤りだろうな。ケヴィンは自分の将来がここにあり、チームをプレミアに連れ戻したいと思っているからここにいるんだ。俺も同じだが、ドロップアウトしているのは1シーズンで十分だ」
1シーズンでの復帰を公に約束させられているも同然だとアラーダイス本人も認めているが、昇格が必須なのは財務面にも理由がある。クラブには8,000万ポンドの負債があり、共同オーナーのデイビッド・サリヴァンが言うには、チャンピオンシップでシーズンを過ごすことで、クラブの計画には4,000万ポンドの穴が開く。それに、2014年にはオリンピック・スタジアムに移転することから、プレミア復帰は急務なのだ。
それでもアラーダイスは楽観的だ。ノーランに加え、ボルトンから220万ポンドでマシュー・テイラーとフリーでジョーイ・オブライエンを獲得し、ストーク・シティからは、アブドライ・フェイを迎えた。左サイドバックとストライカーを優先に、さらなる選手獲得を目論んでいるが、イングランド代表でもあるロバート・グリーンとカールトン・コールについては、残る公算が高くなってきた。
アラーダイスは、「狙いは当然自動昇格だ」と語り、「仮にそれを逃したとしても、俺が一夜にして最低な監督になって選手たちが最低なプレーをするようにならない限り、最悪でもプレーオフだ」と続けた。
近年のアラーダイスのスタイルは、図太い神経に支えられた自分への信念と燃えたぎる情熱で特徴づけられている。かつては「ファンや新聞、オーナーたちが言うことに怯えて」夜中に目を覚ましていた彼は、いまでは周囲の雑音を完全に無視できるようになっているが、ウェストハムのような騒がしいクラブにはちょうど良いだろう。
「俺はかつては酷く心配症で、悲観主義者だった。元々ディフェンダーだったことが影響しているかもしれない。ひとつミスをすれば監督に怒鳴られるからな。自分が良いプレーをした記憶はないし、憶えているのはミスばかりだ。昔は本当にバカみたいに心配ばかりしてたが、年をとって実績も残すとそれは無くなったし、監督業でも同じことだ」
身の不安定さが確信を生むということをアラーダイスの過去は雄弁に語っている。ニューカッスル、そして最近ではブラックバーンでの彼の解任劇は、いずれも新オーナーとウマが合わなかったのだが、それでも彼は自分の履歴書に強い誇りを持っている。人心掌握術が一番の強みであり、レアル・マドリーやインテルのようなビッグクラブでも、機会さえ与えられればトロフィーを勝ち取れると考えているくらいだ。
「何年にもわたって俺は色々なことを言ってきたが、人々はそれを笑い、俺が一体どうしてどこかの監督になって指揮を執れるのか、と笑った。実に不愉快な侮辱だ。俺は、いつ、どこのどんなクラブに行ったって結果を残せると思ってる。CEOみたいなもんだと思うだろ?優秀なCEOなら、どんな業界のポジションについたって会社に利益をもたらせるはずで、俺はそれをフットボールの文脈でやるまでだ」
今でもアラーダイスを苛立たせることは簡単だ。あんたのチームはロングボールのケンカ・サッカーだとか、ウェストハムのやり方には合わないとか言ってみれば良い。彼は「小さく古びたボルトンがチェルシーやアーセナル、マンUなんかを打ち負かすような時には、人々には言い訳が必要なんだ。ラファエル・ベニテスのリバプールがリーボック・スタジアムに来た時にはいつだって負かしてやったが、彼らにはそれが我慢ならなかったんだよ」と言い返す。
アラーダイスのウェストハムは我々を楽しませてくれそうだが、それ以上に勝つだろう。彼は、マンチェスター・ユナイテッドやチェルシーは創造的であると同時に破壊的なんだ、と主張する。「彼らには適応力があって、2度同じようにプレーすることはない。アーセナルはするだろうが、それこそアーセナルが6年も何も勝ち取れない原因だろう」
アラーダイスはまず、降格は跳躍板に乗るようなものだと確信させなければならないが、彼は既に「ヨーロッパ圏内に食い込み、カップ戦のタイトルを獲る」と将来を描いている。「どこまでいけるか?それは、オーナーたちがどれだけ本気で夢を現実にしたいと思っているかにかかってる。俺は今までそうしてきたし、ここでもそうだ。俺の役目は夢を現実に変えることだ」
++(以下、要訳)++
サム・アラーダイスは、フットボールの監督しての自分の進化を振りかえり、「俺は獰猛な牛で、常に怒り、心配症で、要求の強い男だった」とゆっくり語った。常識を覆し続けたボルトン時代のことを語っているのではなく、リムリック、ノッツ・カウンティ、ブラックプールを率いて成長していた頃の話だ。
「今のスタイルを考えれば、あれも成長プロセスの一環だ。経験が無かったのだから、他の方法があったとは思えない。ただ、経験から学ばなければ、この世界では生きて行けないよ」そう語るアラーダイスは、ここまで続けられた。以前ボルトンで10年契約を結んで56歳で引退したいと語っていたが、この10月に57歳になる。先月の初め、ウェストハム・ユナイテッドと2年契約を結んだ。彼の役目は、降格でダメージを受けたクラブのモラルを回復し、すぐにプレミアリーグに戻ることだが、もちろんこれは簡単なことではない。
ウェストハムは降格が決まって以来、12人の選手を放出したが、その数はまだ増えるかもしれない。プレミアに残ることを切望しているスコット・パーカーは、値段が見合えば売られるだろう。アラーダイスも「スコットの話はデリケートだ。我々の望む額を提示するクラブがあり、それが彼の望むプレミアのクラブからのものであれば、彼はいなくなるだろう」と語っている。
アラーダイスは、パーカーではなくニューカッスルから400万ポンドで獲得したケヴィン・ノーランをキャプテンに指名した。いずれにしても昨シーズンもオフに契約切れでリリースされたマシュー・アップソンがキャプテン・マークを巻いていたのだが。
「スコットがキャプテンだったという誤解は、チームを奮い立たせたウェスト・ブロミッジ戦(2月)でのハーフタイムの演説から来ている」とアラーダイスは0-3から3-3に持ち込む奮起をチームに促したスピーチに触れ、「何て言ったのか、議事録でも欲しいね。俺も使う」と笑った。「でも彼を構想に入れるのは誤りだろうな。ケヴィンは自分の将来がここにあり、チームをプレミアに連れ戻したいと思っているからここにいるんだ。俺も同じだが、ドロップアウトしているのは1シーズンで十分だ」
1シーズンでの復帰を公に約束させられているも同然だとアラーダイス本人も認めているが、昇格が必須なのは財務面にも理由がある。クラブには8,000万ポンドの負債があり、共同オーナーのデイビッド・サリヴァンが言うには、チャンピオンシップでシーズンを過ごすことで、クラブの計画には4,000万ポンドの穴が開く。それに、2014年にはオリンピック・スタジアムに移転することから、プレミア復帰は急務なのだ。
それでもアラーダイスは楽観的だ。ノーランに加え、ボルトンから220万ポンドでマシュー・テイラーとフリーでジョーイ・オブライエンを獲得し、ストーク・シティからは、アブドライ・フェイを迎えた。左サイドバックとストライカーを優先に、さらなる選手獲得を目論んでいるが、イングランド代表でもあるロバート・グリーンとカールトン・コールについては、残る公算が高くなってきた。
アラーダイスは、「狙いは当然自動昇格だ」と語り、「仮にそれを逃したとしても、俺が一夜にして最低な監督になって選手たちが最低なプレーをするようにならない限り、最悪でもプレーオフだ」と続けた。
近年のアラーダイスのスタイルは、図太い神経に支えられた自分への信念と燃えたぎる情熱で特徴づけられている。かつては「ファンや新聞、オーナーたちが言うことに怯えて」夜中に目を覚ましていた彼は、いまでは周囲の雑音を完全に無視できるようになっているが、ウェストハムのような騒がしいクラブにはちょうど良いだろう。
「俺はかつては酷く心配症で、悲観主義者だった。元々ディフェンダーだったことが影響しているかもしれない。ひとつミスをすれば監督に怒鳴られるからな。自分が良いプレーをした記憶はないし、憶えているのはミスばかりだ。昔は本当にバカみたいに心配ばかりしてたが、年をとって実績も残すとそれは無くなったし、監督業でも同じことだ」
身の不安定さが確信を生むということをアラーダイスの過去は雄弁に語っている。ニューカッスル、そして最近ではブラックバーンでの彼の解任劇は、いずれも新オーナーとウマが合わなかったのだが、それでも彼は自分の履歴書に強い誇りを持っている。人心掌握術が一番の強みであり、レアル・マドリーやインテルのようなビッグクラブでも、機会さえ与えられればトロフィーを勝ち取れると考えているくらいだ。
「何年にもわたって俺は色々なことを言ってきたが、人々はそれを笑い、俺が一体どうしてどこかの監督になって指揮を執れるのか、と笑った。実に不愉快な侮辱だ。俺は、いつ、どこのどんなクラブに行ったって結果を残せると思ってる。CEOみたいなもんだと思うだろ?優秀なCEOなら、どんな業界のポジションについたって会社に利益をもたらせるはずで、俺はそれをフットボールの文脈でやるまでだ」
今でもアラーダイスを苛立たせることは簡単だ。あんたのチームはロングボールのケンカ・サッカーだとか、ウェストハムのやり方には合わないとか言ってみれば良い。彼は「小さく古びたボルトンがチェルシーやアーセナル、マンUなんかを打ち負かすような時には、人々には言い訳が必要なんだ。ラファエル・ベニテスのリバプールがリーボック・スタジアムに来た時にはいつだって負かしてやったが、彼らにはそれが我慢ならなかったんだよ」と言い返す。
アラーダイスのウェストハムは我々を楽しませてくれそうだが、それ以上に勝つだろう。彼は、マンチェスター・ユナイテッドやチェルシーは創造的であると同時に破壊的なんだ、と主張する。「彼らには適応力があって、2度同じようにプレーすることはない。アーセナルはするだろうが、それこそアーセナルが6年も何も勝ち取れない原因だろう」
アラーダイスはまず、降格は跳躍板に乗るようなものだと確信させなければならないが、彼は既に「ヨーロッパ圏内に食い込み、カップ戦のタイトルを獲る」と将来を描いている。「どこまでいけるか?それは、オーナーたちがどれだけ本気で夢を現実にしたいと思っているかにかかってる。俺は今までそうしてきたし、ここでもそうだ。俺の役目は夢を現実に変えることだ」
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