Wednesday, August 24, 2011

尊重されるべきブラックバーンの遺産

日本の『Footballista』にも寄稿していることから、その名を知る人も多いであろう「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター記者。いくらかでもフットボールに理解のある者であれば、こんな形でこれまで適切な経営で好感をもたれてきたクラブがズタズタにされるのは見たくないであろう、と語る。


++(以下、要訳)++

ローヴァーズを買収したインド企業のヴェンキーズは、どんな宣伝もそれは良い宣伝だ、という信念でクラブを運営しているのだろう。選手たちをチキンのCMに起用したり、カカやロナウジーニョ、デイヴィッド・ベッカムへのオファーを公言したりしているが、フットボールリーグとプレミアリーグ、双方の創設メンバーでもあるこの古豪クラブは、もっと尊敬をもって扱われるべきだ。

ヴェンキーズは、いくつかの良い決断をしていて、ユニフォームに若者を支援する皇室の慈善団体「Prince's Trust」のロゴを入れたのはその一つだ。しかし、クラブを率いるデサイ氏が懸念を強めるローヴァーズのファンから受け入れられるには、フットボールのサイクルを考慮するのはもちろんのこと、サポーターともっとコミュニケーションを取り、ダウアウトの明らかな問題に取り組むことが必要で、非現実的なオファー話に関わるのでなく、1875年以来の歴史を誇るクラブの経営に相応しい人物であることを証明することが必要だ。デサイ氏には、イングランドの伝統とサポーターの感情に向き合う役割があるのだ。

それは、ブラックバーンの選手たちがヴェンキーズのチキンを喜んでむさぼり食う、あの派手な広告で見る者を困惑させることでは決してない。そして、深刻に警鐘を鳴らすのはダグアウトや幹部からの人材の流出だ。


サム・アラーダイスは、限られたリソースの中で良い仕事をしていた。フィル・ジョーンズのような若手を登用し、ローヴァーズが常に良く組織された競争力あるチームであるよう気にかけていた。彼は大きな当惑をもって追い出され、同様の驚きとともにスティーブ・キーンがその後を継いだ。

単にキーンがグラスゴーの出身だからといって、それがすなわちサー・アレックス・ファーガソンと同様の魔力を持つ一員であることは意味しない。イーウッド・パークでの暗雲への不安感に苛まれるポール・ロビンソンや、ミチェル・サルガド、ライアン・ネルセン、デイヴィッド・ダン、そしてジェイソン・ロバーツといったベテラン選手には、もっと良い処遇があって然るべきとの同情が集まるだろう。

確実に言えることは、彼らにはもっと経験のある監督が相応しいということだ。チームがキーンの下で今後もプレミアリーグで苦闘を続けるとしたら、デイヴィッド・ホイレットのような才能がフィル・ジョーンズを追うまでの時間はどれだけだろうか?

ヴェンキーズは、クラブでの戦略、特にキーンのサポートについて、サポーターに明らかにする必要がある。一部のサポーターは、この新たな経営陣への苛立ちからシーズンチケットを更新していない。この先悪い結果と失望が続けば、クラブへの不支持がより強烈になっていくだけだ。

ダグアウトでの一体感に問題が出始めた一方で、運営側でも人材を失った。ジョン・ウィリアムスは高い尊敬を受けてきた会長だったが、マンチェスター・シティに引き抜かれてしまい、ファンの支持を集めていた役員のトム・フィンも辞任した。監督のポジションに応募しながら、不合格通知を受け取った筋金入りのローヴァーズ好きたちは、その礼儀正しい手紙を誇りをもって保管している。フィンは、そうした筋金入りたちを人間として扱った。彼はローヴァーズのハートであり、魂だった。

ウィリアムスとフィンが去ると、地元紙「ランカシャー・イーブニング・テレグラフ」のウェブサイトには、これだけ献身的だった2人の辞任に対する怒りの投稿が渦巻いた。ブラックバーンの選手たち同様、このサポーターたちにももっと相応しい扱いがあるのだ。例えばウィリアムスであれば、ファンからのメールに返信をし、クラブの決断を説明し、シンプルにブラックバーンは良い状態にあることを伝えるはずだ。実際そうだった。

きのうひとりのサポーターがヴェンキーズにメールを送った。多くが共感する涙を伴う叫びで、彼が愛したローヴァーズは「鮮烈な空中分解に向かっている」と声を上げた。そして「ヴェンキーズはファンの前に出てきて、クラブを一番に想っている、ということを確信させるべきだ。キーンがやっていることは週を追うごとに理解不能になっている」と続けた。

オーナーたちは耳を傾けているだろうか?商業界でのデサイ氏の実績は、彼女がバカなどではなく、ビジネスをどう回していくか、理解しているように見える。しかし、フットボールクラブ、特にブラックバーンのようなクラブは単なるビジネスではない。人々の生活の試金石なのであり、サポーターを無視することは愚の骨頂だ。なぜ、ジャック・ウォーカー(元会長)のような人物がクラブの守護神的存在になっているのか、ヴェンキーズはローヴァーズの歴史をまず学ぶ必要がある。イーウッド・パークは、クラブを愛し、鉄鋼で財を成し、1995年にプレミアリーグのタイトルを獲った時に涙を浮かべ、トロフィーを初めて授かった子供のように抱いていたジャックによって再建されたホームだ。

ウォーカーにとっては、それは栄光であり、地元のクラブの誇りであり、都会のビッグクラブと相まみえてそれを打ち負かすことだった。ウォーカーがローヴァーズに誇りをもたらしたのだ。彼は際立った手腕を見せ、意義ある投資をした。マネジメントにケニー・ダルグリッシュ、選手にはアラン・シアラーを引き入れ、スタジアムも改修した。

イーウッド・パークは、ウォーカーから贈られた遺産で、それはブロックホール・ヴィレッジにあるトレーニング・センターとアカデミーも同様だ。ウォーカーの記憶をもって、ヴェンキーズを叩くのはたやすいことだが、ヴェンキーズはまずウォーカーの繊細な先導から学ぶ必要があるだろう。

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テレビでプレミアリーグを観るようになったのは、1994-95シーズンが最初だった。カントナのカンフーキックのシーズン。ワールドカップでクリンスマンが活躍し、彼が移籍したスパーズというクラブが気になり始めた頃、NHKの衛星放送で何試合かずつ放送があった。ケニー・ダルグリッシュが指揮し、後にスパーズに移籍するティム・シャーウッド(現コーチ)がキャプテンを務めるブラックバーンは、アラン・シアラーとクリス・サットンの2トップがゴールを量産して優勝した。僕はてっきり強いクラブ なんだと思ったが、以後はまた降格したり中位をさまよって現在に至っている。しかし、このCMは本当に酷い。確かにズタズタ。

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