Tuesday, August 30, 2011

ダニエル・リヴィ会長の瀬戸際戦略がスパーズにもたらすリスク

スパーズのダニエル・リヴィ会長の補強戦略に関する記事。移籍市場の締切も近くて、賞味期限の短い記事になるかもだから取り上げるか迷ったけど、珍しいから勢いで。昨年はトランスファー・ウィンドウ締切直前に大幅な割引価格でラファエル・ファン・デル・ファールトを獲得し、サポーターがリヴィ会長に感謝するチャントまで作るなど、手腕が話題になるが、その「瀬戸際戦略」が落とし穴になるのでは?というのが「ガーディアン」紙の指摘。(※日曜にシティに1-5で敗れる前の記事)


++(以下、要訳)++

この夏もまた、トッテナム・ホットスパーの武闘派会長であるダニエル・リヴィが、瀬戸際戦略が大きなスリルをもたらす長く、大金のかかったポーカーでフットボール界を混乱させている。

スパーズのファンは、クラブの役員たちの戦いを、両面性をもって見ていることだろう。ルカ・モドリッチをホワイト・ハート・レーンにキープすべくチェルシーにジャブを繰り出している一方で、トッテナムの移籍市場に臨む戦略は、不必要に長引いていて、またエゴイスティックであり、クラブに不利益をもたらし得るものだ。

ひとつ確実に言えるのは、アーセナルのサポーターは、リヴィのような会長を望むだろう、ということだ。移籍市場において、アーセナルの動きは遅過ぎ、本気でメジャーなターゲットを狙ってはいない。最近でも、例えばボルトンのギャリー・ケーヒルを狙った低価格でのオファーは、移籍市場の初期ならともかく、このタイミングでは的外れだ。高給に怯えて動揺が走っているアーセナルと真逆なのが隣町のターミネーター、ダニエル・リヴィだ。他クラブに狙われるトッテナムの選手たちの値段を吊り上げ、売りたいクラブが提示する値段は大いに叩く。

金に男意気が伴えば当然活気は出てくるのだが、カウボーイ・ブーツを履いたポーカーの達人たちとラスベガスで延々競い合っているような会長を持つことにはリスクも伴う。そのひとつは確実性の無さだ。最後の最後まで交渉で粘り続ける傾向を持つならば、選手や監督・コーチングスタッフは、9月1日に夜が明けるまで、どんなスタメンになるのか、不安なまま過ごすことになる。

エマニュエル・アデバヨールでの獲得は、人々に示すことができる最低限の成果だ。それでも、これはローン移籍であり、アデバヨールの態度にもまだ疑念がある。彼がトッテナムを大陸のトップ5クラブへの移籍の手段として使うのであれば、トッテナムにとってもメリットとなるような輝きを放つ必要がある。この種の契約は、トップクラスのセンターフォワードを求めるハリー・レドナップにとっては一時的な解決策でしかない。他は今のところ、頑張ってブラジル人のレアンドロ・ダミアンに1,100万ポンドのオファーを出したと報じられているくらいだ。

モドリッチは必ず残ると固い意志を表明しているクラブにしては、その代役のリストアップは順調すぎるくらいだ。ジョー・コール、ラッサナ・ディアラ、スコット・パーカーはいずれもハリー・レドナップが熱望する選手たちで、ユヴェントスからは既にローンで若きアタッカーのファルケを獲得している。ここには、モドリッチの穴を新たな中盤の選手で埋めようというレドナップと、チェルシーに「クソッタレ」と言い続けるリヴィという構図がある。

背景には、スパーズのヨーロッパ・リーグへの参戦がある。昨年の素晴らしいチャンピオンズリーグでの冒険の後、スパーズはシティに打ち負かされ、ワンランク下の大会に降格することになった。スパーズの最終的な選手リストがまだ未確定である一方、セルヒオ・アグエロとサミ・ナスリを既に加えたシティの方が強いのは明らかだ。したがって、日曜日、ユナイテッドに敗れた6日後に対戦するシティとの一戦は、リヴィのサイのような交渉スタイルが成功するのか否か、良い判断材料になるはずだ。

ポジティブな要員も多々ある。最もダイナミックなギャレス・ベイルを残すことには成功しているし、若手選手の育成も強みとなっている。右サイドのカイル・ウォーカーは将来を嘱望され、ジェイク・リバモアはファビオ・カペッロの目にも留まった。先週半ばのハーツとの一戦では、ハリー・ケイン、トム・キャロル、ライアン・フレデリクス、ジェイク・ニコルソンといった計6人のアカデミー出身選手がプレーした。アンドロス・タウンセンドも未来ある選手の一人だ。

しかし、チームの一番表側では、チャンピオンズリーグ出場権奪回の必要があり、その意味ではキザな態度を取っている場合ではない。リヴィは、ラファエル・ファン・デル・ファールトは、移籍市場の最後の最後にやってきた、と指摘するかもしれないし、瀬戸際戦略は必ずしもカオスを意味するわけでもない。それでも、スパーズはトップクラブの中でも解決すべき問題が多いほうだ。

リバプールは、スチュワート・ダウニング、ジョーダン・ヘンダーソン、チャーリー・アダムの獲得に迅速に動いたし、シティはターゲットを定めては獲得した。ユナイテッドは余計な考えは無しにして、フィル・ジョーンズ、ダヴィド・デ・ヘア、アシュリー・ヤング等を補強してきた。チェルシーがモドリッチを追うのはトッテナムの誤りではないが、スパーズの夏は、ひとりのスター選手を確保し、万が一彼が移籍した場合の代替手段をあれこれ考える、非常に長い苦闘の夏となったようだ。

我々も知るように、レドナップは直感で動く。彼はかつて指導したコールやディアラを知っているし、いつでも良いタレントをチームに加えようとしている。しかし、生まれながらの才能発掘者の本能は、交渉から喜びを得る会長の強固なビジネス倫理とは衝突する。トッテナムの移転問題(オリンピック・スタジアムかノーサンバーランドか)でさえ、その衝突の場となった。

チームの選手のひとりの値段を提示されれば、リヴィは決まって「もっと値段を上げるべきだ」と言ってきた。リスクを取るべき世界において、それは何ら間違ってはいない。結果が下降線をたどらない限りは。

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リヴィ会長については、特にスタジアムの問題に対するスタンスを見ているとビジネスマンとして深いなーと感じるし、戦う会長って感じがする場面も多い。他クラブが割と現場のことは放任するのに対して、リヴィの移籍市場でのコミットぶりは見てて興味深い。ただ、クラブとして一枚岩であってほしい。

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