Monday, August 8, 2011

アラン・ハンセンによるプレミアリーグ・プレビュー

BBCのハイライト番組「Match of the Day」での辛口コメントでおなじみのアラン・ハンセン(元スコットランド代表&リバプール)が、「テレグラフ」紙にシーズン・プレビューのコラムを寄稿。コミュニティ・シールドを観て、今シーズンのユナイテッドは強いと感じている様子。


++(以下、要訳)++

タイトルの行方

通常、コミュニティ・シールドについてはあまり語らない方が賢明だ。通常、コミュニティ・シールドがシーズンの行方に影響を与えることは少ない。通常、コミュニティ・シールドは重要度の高いゲームではない。それでも、日曜のマンチェスター・ユナイテッドの勝利は、そのすべてを劇的に変えて見せた。

試合前からユナイテッドは、チェルシーと並んで今シーズンのリーグタイトルの有力候補ではあった。しかし昨シーズンの歴史を塗り替える通算19度目のタイトルは、シーズンの大半を本来いるべき「皆から追われるトップの座」から離れ、プレッシャーを感じずに過ごすという上手い立ち回りの結果だったとも言えた。

しかし、日曜のファーガソンの若いチームは、スタンフォード・ブリッジ、エミレーツ・スタジアム、アンフィールド、そしてホワイト・ハート・レーンに向けた警鐘を鳴らし、シティの心を引き裂いて見せた。ユナイテッドは突如圧倒的な優勝候補となった。

このチームは、若く活気があり、エキサイティングだった。ゲームを締めくくった若い選手たちはまるで何年もオールド・トラフォードにいるかのようだった。そして何より、彼らはチームだった。シティが全くそうでないのとは対照的だ。

マンチーニのチームは、未だに多くの問題を抱えている。出て行きたがっている選手たちがいるが、ユナイテッドでは考えられないことで、例えばファーガソンがバロテッリを獲得していたとしたら、今頃飼いならすか売り払うか、どちらかになっていたはずだ。これがシティにおいては、マンチーニはそうできずにいる。これだけでも多くが語れるが、つまりは、シティは未だに懸命にクラブのアイデンティティを探している最中だ、ということだ。

チェルシーは、一度はチームになった。そして、それは素晴らしいチームだった。しかし、アンドレ・ヴィラス・ボアスが直面している挑戦は、それを解体して新しい選手たちを馴染ませるということで、それはフットボールの世界では一番難しいことだ。選手経験の無い33歳には不可能に近い。もちろんファーガソンもこれまでに多くのチームを作っては解体してきた。そしてまた新たな生まれ変わりを見つけている。

つまり、ライバルたちにこのユナイテッドを打ち負かすほど安定しているところなど無いのだ。

トップ4

3クラブ(ユナイテッド、チェルシー、シティ)のうち1クラブが優勝するとすれば、残る1つのチャンピオンズリーグ枠に滑り込むのも3クラブのうち1つだ。それがトッテナムの野望なのは間違いないが、よりプレッシャーがかかるのはリバプール、そして特にアーセナルだろう。

アーセン・ヴェンゲルは崖っぷちに立たされている。キャプテンのセスク・ファブレガスとベスト・プレーヤーのひとりサミ・ナスリはクラブを出て行きたいと言っていて、その一方でジェルビーニョを除けばこれと言って誰も連れてこれずにいる。チームはリーダシップと経験を求め続けているのだが。

アーセナルはそのプレースタイルで数え切れないほどの称賛を受けてきたが、ヴェンゲルがいま直面しているのは、その美しさだけでは(特にファブレガスもしくはナスリ抜きでは)タイトルは勝ち取れないのだが、スタイルを捨てれば、勝負でも美しさでも敗れ去るリスクがあるという危機だ。スタイルも結果も無くなれば、アーセナルは深刻な危機に陥るだろう。

アーセナルやリバプールにとってはスタートダッシュが肝だ。開幕2試合目で、彼らはエミレーツで相まみえるが、仮に両クラブが開幕戦を落としていると、開幕2ゲームで勝ち点ゼロという状況に陥る可能性さえある。

ケニー・ダルグリッシュは、昨シーズン後半の良い締めくくりとアンフィールドにおけるその立場で、いくらかの時間と信頼を勝ち取ってはいるが、過ちを犯すことはできない。オーナーのジョン・W・ヘンリーが明らかにしているように、来シーズンのチャンピオンズリーグに出られなければ、リバプールは大きな失望を味わうだろう。万全のシーズンを送れても、リーグタイトルはまだ遠いだろう。しかし4位はそうでない。それがアンフィールドとエミレーツで望まれていることなのだ。

残留に向けた戦い

ここ数年、昇格クラブのスタンスには変化が見られ、残留のために将来を犠牲にする戦い方から、チャンピオンシップ時代と同様の給与体系に残留を決めた場合の大きなボーナス、というインセンティブを付けるようになった。

元々そうすべきことであり、短期間のもうけのために長期の安定性についてリスクをかけるべきではない。ウェスト・ブロミッジのような成功例や、シーズン最終日まで粘ったものの降格してしまったブラックプールの取り組みは、ノーリッジ、スウォンジー、QPRにいくらかのインスピレーションを与えるはずだ。

それでも、とるべきバランスがあるのも確かだ。チャンピオンシップ上位とプレミアシップの下位にあるギャップは、要するに「キャズム」だ。これを超えるには、クラブにもある程度の投資が必要であり、それは6クラブに降格の可能性があった昨シーズンの最終節によってことさら強調されたのではないか。

注目選手

昨シーズンはエンタテインメントとしては最高だったが、全体としてのクオリティがいまひとつだったのは否定できない。それでも、各クラブには語られるべきストーリーが数多くあり、これがクオリティ改善に貢献するだろうと見ている。アーセナルの混乱、リバプールの復活、チームになろうとするシティ、ひとつであり続けようとするチェルシー、そしてそれらを迎え撃つユナイテッド。

そしてそこにはキャストとなる選手たちがいる。ルイス・スアレスのマージーサイドにおける最初の6カ月はすっかり魅了された。初めてイングランドにやってきた彼のプレーはセンセーショナルだった。

次はルカ・モドリッチ。チェルシーに切望され、トッテナムには高く評価されている。彼がホワイト・ハート・レーンにとどまり、機嫌を損ねる代わりに(そうなる選手が多いのだが)ピッチで彼がリーグで最高の選手であることを証明してくれたら、本当に素晴らしいと思う。

もちろん、シティのセルヒオ・アグエロは、海外からの興味をひかれる買い物だ。外国人がイングランドの試合を魅力あるものにしてきたことは確かだが、最近のバロテッリやカルロス・テヴェスの騒動はそのイメージに水を差している。出て行きたいとコンスタントに言い続けるのは、何よりプレミアリーグ、そして自分たちが稼いでいる大金への敬意の欠如を示している。願わくば、アグエロのクオリティが否定できないもので、そうしたイメージを一掃する存在であって欲しい。

そして、日曜日に素晴らしい印象を残したユナイテッドのディフェンスのフィル・ジョーンズからアシュリー・ヤング(いくらか成熟してるが、まだ伸びる)に至るヤングスターたちだ。彼らはバルセロナとの差を埋めようとするファーガソンが呼んだタレントだ。ファーガソンは、5月のチャンピオンズリーグのファイナル(同じくウェンブリーでのゲームだった)で、1999年のチームのようなクオリティがあったら結果は違っていたと信じている。日曜のピッチで披露された新しいチームが成長を続ければ、そうしたチームはすぐに実現するだろう。

++++

スパーズにも触れてくれると思いきや、あっっっっさり流されてしまった…。しかし、色々と下馬評を見ていると今季のトップ4争いはリバプールの積極的な動きもあって、より熾烈になりそう。今週末の開幕を前に、スパーズのチーム編成は遅れ気味な感じ。

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