この週末の土曜日に昨年解任された古巣チェルシーとの対戦を控えるアンドレ・ヴィラス・ボアスは、どのような気持ちでスパーズの監督としてこの試合に臨むだろうか。「テレグラフ」紙のジェイソン・バート記者によるコラム。
ちなみに、前回AVBの記事を取り上げた時も「テレグラフ」だったのだけど、結局メディアの予想を遥かに上回るタイミングでクビが飛んでいたのだな・・・。
++(以下、要訳)++
怒りも苛立ちも遥かに超えていた。3月にチェルシーに解任を通告された時、アンドレ・ヴィラス・ボアスに覆いかぶさった感情は、当惑だった。
彼はまるでプレミアリーグでの容赦の無い8カ月が、彼の名声を傷つけたと感じただろう。そもそもチェルシーなどに行ったのが誤りで、彼は過ちを犯しただけでなく、失望もさせられた、と。
彼にとっての最大の過ちは、人心掌握ではなく、単に結果が出なかったことでも、強大な力が渦巻くロッカールームをまとめられなかったことでもない。それは、彼がロマン・アブラモビッチ -より規律があり、内容の濃いフットボールを望んでいた- から得ていた信頼を信じきれなかったことだ。
ヴィラス・ボアスは、 トッテナム・ホットスパーの監督就任時には、チェルシー監督の座を解任されて反撃する初めての監督になることを我慢できはしなかった。彼が言うには、アブラモビッチの方が彼に愛想を尽かしたのだ。
重圧は非常に大きなものになっていて、彼の解任は避けられないものだったし、その解任でチェルシーが解放されたことは、チャンピオンズリーグ制覇という並外れた栄光によって証明されてしまった。チェルシーは判断の正しさを証明した気分だっただろう。
ヴィラス・ボアスがイングランドのフットボールから距離を置きたいと感じていた後にも、多くのオファーがやってきたが、ヴァレンシアやサンパウロの話を断ってトッテナムに加わることに合意したことには、何かが暗示されている。
リベンジというわけではないだろうが、今週で35歳ながら、長くとも10年以上も監督生活を続ける気がない男には、名声の回復という側面はいくらかは含まれているだろう。ひとたび就任が決まり、ひとたび日程が決まって公開されれば、スパーズとヨーロッパ・チャンピオンであるチェルシーとの最初に試合にはまず目が行ったはずだ。そして、それはこの土曜のランチタイムにホワイト・ハート・レーンで実現するのだ。
今週ヴィラス・ボラスがチェルシー、彼の元アシスタントにして後継者のロベルト・ディ・マテオ、そして選手たちについて発する一語一句が注目され、分析され、見出しとなるだろう。そして、全ての質問に率直に答える男には、それはあまり心地の良い経験ではないだろう。彼は落ち着いている必要がある。
エゴについての批判はあるにせよ、ヴィラス・ボアスは原理原則の男であり、チームと組織力、そして手柄を得るだけでなく、注目の的となることにも耐えうる選手たちを信じる監督だ。例えば、チェルシー時代に彼が持っていた考えには、監督ばかりが会見するのでなく、選手がメディアに話をする「ミックスゾーン」を試合前の金曜日にやる、ということも含まれていた。注目が監督ばかりに集まることを嫌い、ピッチでクラブを代表している選手たちにより多くの責任を担って欲しいと考えていたのだ。もっとも、これが実現することは無かった。
ヴィラス・ボアスは目的を持ってスパーズにやってきた。そしてその目的は、願わくばスパーズを安定させるということだけでなく、トップ4入りを実現してチャンピオンズリーグの舞台に再び立つことだ。彼はトロフィーを勝ち取りたいと思っている。そして、それを今実現したいのだ。競争力を高めて帳尻を合わせるだけでは彼には不十分で、必要なのはタイトルであり、勝利なのだ。
スパーズの選手たちもそれをトレーニングの初日から告げられ、ヴィラス・ボラスは念押した。 単に効果を狙って言っているわけではない。2シーズン前のポルト時代に制したヨーロッパリーグにあれだけ強力なメンバーで臨んでいるのも偶然ではない。選手たちもヴィラス・ボアスのフットボール哲学の何たるかを伝えられている。
彼は恐れずに常に攻撃を仕掛け、常にボールを支配するチームで成功したいと考えている。ポゼッションを高めるということは、攻撃のカギであると同時に、守備の負担も軽減できるのだ。アウェーで3-2でマンチェスター・ユナイテッド相手に挙げた勝利でのペース、目的意識、意図は、このシーズンの青写真となった。そして、チェルシー時代に初黒星をオールド・トラフォーで喫した監督にとっては、素晴らしい挽回劇だった。
ヴィラス・ボアス本人も、その攻撃なスタイルをこのイングランドで適用するのは難しいと理解しているのは明白だ。他の多くの国と違って、ここは勝利第一の文化だけでなく、勝つにも内容のあるフットボールを求められるのだ。
大胆?勇敢?ナイーブ?時折この前2つがヴィラス・ボアスに当てはまるのは確かだろうが、特に敗れる時には3つ目そのものであり、それを評論家にも指摘されている。しかし、スパーズは開幕戦以降は敗れておらず、リーグ戦は4連勝中だ。
チェルシー戦は大きな試練となるし、ヴィラス・ボアスも我を忘れてはいないだろう。結局、昨季の現時点でチェルシーは16ポイント -今のスパーズが14ポイント- で、フランク・ランパードは「CHELSEA TV」で新監督のアプローチと戦術、オープンさを褒め称えていた。しかし、それは今のスパーズでは異なった印象で、それは誰にとってもの心地良さになっているかもしれない。ヴィラス・ボアスはチームを安定させ、彼への賞賛で上向きの風が吹くようになったのも最近になってからだ。
試合の流れを変えるルカ・モドリッチとラファエル・ファン・デル・ファールトは売却され、レドリー・キングは引退、スコット・パーカーとユネス・カブール、そしてベノワ・アス・エコトはケガで欠場し、エマニュエル・アデバヨルもまだフィットしてはいない。 昨季であれば大半の試合に先発していた7人だ。
5,000万ポンドの豪華な投資 -そして6,000万ポンドを回収した-が行われたが、6人の補強のうち4人はシーズンも始まった後の移籍締切日近くに獲得が決まっている。そして、中でもヴィラス・ボアスが最も獲得を望んだポルトのプレーメーカー、ジョアン・モウチーニョは、スパーズは11時までの締切に話をまとめることができず、獲得に至らなかったことは言うまでもない。
その不満はいったん棚上げされ、スパーズの選手たちはヴィラス・ボアスの綿密で実力を重視するスタイル、彼の詳細にこだわる目、そして彼の先進的なトレーニングに適応して行っている。どの監督も「ドアは開いている」と主張するが、ヴィラス・ボアスの場合は、いかに選手のモチベーションを上げるか、いかに自分たちが重要だと感じさせるか、と考える際にそれが発揮されている。
スパーズに来て以来、チームの強化について語るのに四苦八苦してきているが、数人の選手には明瞭な成長の兆しが見えている。サンドロはレベルを一段上げたし、カイル・ウォーカーはディフェンス面で向上している。アーロン・レノンは中への切り込みで成長を見せ、サイドをえぐるだけの選手ではなくなっている。スティーブン・コールカーもいよいよ台頭し始め、ジェイク・リバモアも改善してきている。
ヴィラス・ボアスにその価値を認めさせ、新たな契約も手にしたジャメイン・デフォーは、まるで息を吹き返したかのようだ。ギャレス・ベイルは過去最高の破壊力を見せつけている。マイケル・ドーソンの処遇には多くの疑問符も付いたが、QPRからの900万ポンドのオファーは、ウィリアム・ギャラス、カブール、ヤン・フェルトンゲン、さらにはコールカーも揃う中では良いビジネスだ。
ヴィラス・ボアスがスパーズでの生活をエンジョイしていることに疑いは無い。新練習場や会長のダニエル・リヴィによる新スタジアム計画、そして彼が熱心に進めるフットボール・ディレクターの採用 -元イングランド代表のGM、フランコ・バルディーニが依然第一候補-等に感銘を受けて来ているのだ。
まだまだ始まったばかりではある。尊大なフットボールを目指す欲望の裏には、この青年監督への注意も常に付いて回る。この土曜日は試練だ。彼が率いるスパーズだけでなく、彼自身にとっても。
++++
AVBの自己実現の場にスパーズが重なっていることを強く言いたそうな主旨ではあるけど、どんな監督もそれは同じだと思う。むしろ、この年齢で昨季チェルシーを率い、8カ月で解任の憂き目にあったAVB本人が、この先の自分のキャリアをどう判断して同じロンドンのスパーズに来たのか、という方が個人的には興味があるけど。
でも、去年のユナイテッド戦でのスタンスについて、アラン・ハンセンにBBCで「あんなオープンに撃ち合いに持ち込むなんてナイーブ過ぎる」って言われてたことを考えれば、スパーズ監督として乗り込んだこの間のオールド・トラフォードは既に成長の一端を見せたってことにはなると思う。古巣のチェルシー戦はホントに楽しみ。
Friday, October 19, 2012
Sunday, October 14, 2012
さらばアンブロ:イングランド代表との一時代の終焉
イングランド代表と言えばアンブロ、という印象を持っている人も多いだろう。それも当然で、実際の所、過去60年間に渡って代表のユニフォームのサプライヤーはアンブロだった。それでも、それももうあと数カ月の話。今回の契約が切れると、イングランド代表はナイキのユニフォームを身にまとうことになる。この歴史と背景について、「インディペンデント」紙のサム・ウォレス氏がコラムにしている。
++(以下、要訳)++
アンブロは過去60年間に渡って、イングランド代表の大半の象徴的なシーンにそのシャツを提供してきた - しかし、それももう終わりだ。ナイキはどのようにこの斜陽の国産ブランドを追い込んで行ったのだろうか。
新たにオープンしたセント・ジョージ・パークのフットボール・センターの照明に満たされたアトリウムには、150体のマネキンがあり、皆アンブロがデザインしたジャージを身にまとって来年に迫ったFAの創設150周年を祝う準備をしている。いくつかはクラシックなアンブロで、他もイングランド代表の歴史から、良く知られたシーンや選手を描き出している。
ものの数週間のうちに、これらは皆はがされてしまうだろう。まるで企業の一揆かのようにナイキが代表チームのキット・サプライヤーになることが決まり、88年前にチェシャーのウィルムスロウにあるパブの奥の小部屋で産声を上げた古き英国ブランドは、今は実権を握るアメリカの親会社に道をあけるために、横に下がるよう礼儀正しく求められている。
英国のスポーツ用品ブランドのアンブロは、生き残りのために戦っている。ナイキは5月にアンブロを売却する方針を発表しており、一番あり得る未来は、ライセンスモデルでブランドとしてのみ生き残る形だ。英国本社の経験やノウハウがあるにも関わらず、そのクリエイティブな頭脳は活かされずに、製造業者がアンブロに費用を払って製品を販売する。ここまで多くの資産を失ってきた企業の最後の価値を絞り出す、というわけだ。
ハロルドとウォレスのハンフリーズ兄弟によって1924年に設立されたアンブロには輝かしい歴史がある。これまでにも1962年のブラジルのワールドカップ制覇、1967年のセルティック、1977年のリバプール、1999年のマンチェスター・ユナイテッド、そして何より1966年のイングランドの栄冠と共にあった。ブランドが最も近い関係にあったのが1954年に着用を始めたイングランド代表であり、1974年から84年を除いて(訳注:アドミラルがサプライヤー)、それは続いてきた。
ダンカン・エドワーズはアンブロのシャツで代表デビューをした。ボビー・ムーアがジュールス・リメ杯(訳注:ワールドカップの初代のトロフィー)を掲げ、テリー・ブッチャーが血まみれになり(上写真)、ポール・ガスコインが涙したのもアンブロのシャツだ。デイビッド・ベッカムもこれで退場して行った。それが、これからはそこで愛情を注がれるのは、ナイキのスウーシュのロゴであり、ナイキの最初のメッセージはおそらく火曜日にウィリアム王子がセント・ジョージ・パークのオープン時に大胆に宣言した「イングランドのフットボール、未来」だろう。
しかし、その過去というのはどんなものだっただろうか?アンブロの衰退には、複雑な要素が絡み合っている。2008年の3.77億ポンドでのナイキによる買収は上手く行かなかった。社内事情に近い関係者によると、ナイキはこの小さくニッチな会社に、自社の製造・販売網を押しつけようとしたようだ。伝統的に、アンブロは小さな単位でのオーダーの工場との交渉も販売店との親密な関係の構築ももっと戦術的に行ってきた。
販売店にどの程度その商品が必要なのか、などと聞くことのないナイキのような巨大企業には、アンブロは違った種類の生き物に思えた。ナイキによるより小さなブランドの買収の結果はまちまちだ。アイスホッケー関連ブランドのバウアーは買収したものの、やがて売却された。逆にコンバースとはここまで上手く行っているようだ。しかし、アンブロに影響を及ぼしたのはナイキによる買収だけではない。
2004年から06年の間、アンブロはホーム、アウェー合わせて約300万着のイングランド代表のレプリカを販売した。 2009年にFAと9年契約の交渉に臨んだが、その頃には2008年のユーロ予選敗退による本大会吹出場もあり、イングランド代表のシャツの人気は急落していた。販売店のスポーツ・ダイレクトとJJBスポーツとの間の競争も、レプリカ・シャツの値下げを容易なものへとしていった。状況悪化の一途をたどる経済状況も一部は影響しているだろう。
年間2,000万ポンドと言われるFAとの契約は元が取れるとは考えられず、アンブロには重荷になっていった。ナイキが引き継いだのはこの契約であり、FA側からも何の抵抗もないまま、来年からイングランド代表のシャツのナイキへの移行は始まる。
ナイキやアディダスのようなグローバルなメガブランドは、代表のシャツでの赤字などマーケティング費用として処理できてしまう。ナイキは元々「パフォーマンス」と呼ばれる商品ラインに注力しており、アンブロの買収は「フットボール・ライフスタイル」や「ファンのファッション」といった市場に切り込むためだった。これらのビジネスは必ずしも交わるわけではないが、やがてナイキはアンブロの偉大な資産を切り裂いていった。
アンブロの抱えるもう一つの宝石は、マンチェスター・シティとのシャツの契約だが、これも来季にはナイキに引き継がれることになるだろう。こうした要素に敏感な者であれば、エティハド・スタジアムのピッチ脇の看板は、もうナイキに入れ替わっている、と言うだろう。現在もアンブロのスパイクを着用する数少ないスター選手のジョー・ハートも、ほどなくナイキになっているだろう。ダレン・ベント、アンディ・キャロル、マイケル・オーウェンも依然アンブロと契約している。ジョン・テリーの契約は6月に 切れたが、彼も依然としてアンブロのスパイクを着用している。
数々のビッグクラブや代表チームのユニフォームを提供してきたブランド、そして言うまでも無く最初の子供用レプリカシャツを出したブランドは、来年にはイングランドではノッティンガム・フォレスト、ハダースフィールド・タウン、そしてブラックバーン・ローヴァーズにしか契約が無い状態になる。
ハンフリーズ兄弟の実家から数マイル、南マンチェスターのチードルにあるアンブロの本社では、約200人の社員が働き、ナイキによる買収時にはオフィスの拡大もしたが、最近ではアンブロの社員がブランドの将来について知らされるのを待っている様子は、廃墟の街のようだ、と語られていた。
グローバル化した世界にあって、イングランド代表が少なくともイングランドにルーツがある会社のシャツを着なくなったとして問題だろうか?フランスだってル・コックでなく、結局はナイキを着用している。スペイン、ブラジル、アルゼンチン、オランダといった代表の強豪は、いずれもアディダスかナイキと契約している。それでも、ドイツ代表がドイツのブランドであるアディダスかプーマ以外のシャツを着用しているのは想像しがたい。
1994年のワールドカップ優勝時のブラジルのユニフォームや、1997年のフランス戦で見せたロベルト・カルロスの有名なフリーキックの時のスパイクなど、アンブロにはフットボールの遺産の中に一定の存在感があることは誰にも否定できない。文化の中にも浸透していったのも確かだ。リアム・ギャラガーは1995年の「トップ・オブ・ザ・ポップス」出演時には、シティ色のアンブロのコートを身にまとっていた。
1966年ワールドカップの決勝トーナメントでは、 16チーム中15チームがアンブロ製のシャツを着ていた。近年では、それはナイキとアディダスによる世界の覇権を戦いの場となってしまった。アンブロは今後もフットボールの市場での居場所があると望んでいるが、イングランド代表という大きな勲章を失ってしまい、歴史はそれを2度と取り戻すことはできないと示唆している。
++++
何年か前のナイキによる買収の話の時は驚きつつも時の流れと感じてたけど(実際、その前にアディダス傘下にリーボックが入ったりって流れもあったし)、イングランド代表のユニフォームがアンブロからナイキになってしまう違和感はかなりのもの。
個人的に、現行のアウェー・モデルは結構好きだから、買っとこうかな、と。
(↓は、そのアウェー・モデルがデビューした去年のブルガリア戦)
日本代表の今のサプライヤーはアディダスになって長いけど、昔は結構ローテーションしてたよね。
++(以下、要訳)++
アンブロは過去60年間に渡って、イングランド代表の大半の象徴的なシーンにそのシャツを提供してきた - しかし、それももう終わりだ。ナイキはどのようにこの斜陽の国産ブランドを追い込んで行ったのだろうか。
新たにオープンしたセント・ジョージ・パークのフットボール・センターの照明に満たされたアトリウムには、150体のマネキンがあり、皆アンブロがデザインしたジャージを身にまとって来年に迫ったFAの創設150周年を祝う準備をしている。いくつかはクラシックなアンブロで、他もイングランド代表の歴史から、良く知られたシーンや選手を描き出している。
ものの数週間のうちに、これらは皆はがされてしまうだろう。まるで企業の一揆かのようにナイキが代表チームのキット・サプライヤーになることが決まり、88年前にチェシャーのウィルムスロウにあるパブの奥の小部屋で産声を上げた古き英国ブランドは、今は実権を握るアメリカの親会社に道をあけるために、横に下がるよう礼儀正しく求められている。
英国のスポーツ用品ブランドのアンブロは、生き残りのために戦っている。ナイキは5月にアンブロを売却する方針を発表しており、一番あり得る未来は、ライセンスモデルでブランドとしてのみ生き残る形だ。英国本社の経験やノウハウがあるにも関わらず、そのクリエイティブな頭脳は活かされずに、製造業者がアンブロに費用を払って製品を販売する。ここまで多くの資産を失ってきた企業の最後の価値を絞り出す、というわけだ。
ハロルドとウォレスのハンフリーズ兄弟によって1924年に設立されたアンブロには輝かしい歴史がある。これまでにも1962年のブラジルのワールドカップ制覇、1967年のセルティック、1977年のリバプール、1999年のマンチェスター・ユナイテッド、そして何より1966年のイングランドの栄冠と共にあった。ブランドが最も近い関係にあったのが1954年に着用を始めたイングランド代表であり、1974年から84年を除いて(訳注:アドミラルがサプライヤー)、それは続いてきた。
ダンカン・エドワーズはアンブロのシャツで代表デビューをした。ボビー・ムーアがジュールス・リメ杯(訳注:ワールドカップの初代のトロフィー)を掲げ、テリー・ブッチャーが血まみれになり(上写真)、ポール・ガスコインが涙したのもアンブロのシャツだ。デイビッド・ベッカムもこれで退場して行った。それが、これからはそこで愛情を注がれるのは、ナイキのスウーシュのロゴであり、ナイキの最初のメッセージはおそらく火曜日にウィリアム王子がセント・ジョージ・パークのオープン時に大胆に宣言した「イングランドのフットボール、未来」だろう。
しかし、その過去というのはどんなものだっただろうか?アンブロの衰退には、複雑な要素が絡み合っている。2008年の3.77億ポンドでのナイキによる買収は上手く行かなかった。社内事情に近い関係者によると、ナイキはこの小さくニッチな会社に、自社の製造・販売網を押しつけようとしたようだ。伝統的に、アンブロは小さな単位でのオーダーの工場との交渉も販売店との親密な関係の構築ももっと戦術的に行ってきた。
販売店にどの程度その商品が必要なのか、などと聞くことのないナイキのような巨大企業には、アンブロは違った種類の生き物に思えた。ナイキによるより小さなブランドの買収の結果はまちまちだ。アイスホッケー関連ブランドのバウアーは買収したものの、やがて売却された。逆にコンバースとはここまで上手く行っているようだ。しかし、アンブロに影響を及ぼしたのはナイキによる買収だけではない。
2004年から06年の間、アンブロはホーム、アウェー合わせて約300万着のイングランド代表のレプリカを販売した。 2009年にFAと9年契約の交渉に臨んだが、その頃には2008年のユーロ予選敗退による本大会吹出場もあり、イングランド代表のシャツの人気は急落していた。販売店のスポーツ・ダイレクトとJJBスポーツとの間の競争も、レプリカ・シャツの値下げを容易なものへとしていった。状況悪化の一途をたどる経済状況も一部は影響しているだろう。
年間2,000万ポンドと言われるFAとの契約は元が取れるとは考えられず、アンブロには重荷になっていった。ナイキが引き継いだのはこの契約であり、FA側からも何の抵抗もないまま、来年からイングランド代表のシャツのナイキへの移行は始まる。
ナイキやアディダスのようなグローバルなメガブランドは、代表のシャツでの赤字などマーケティング費用として処理できてしまう。ナイキは元々「パフォーマンス」と呼ばれる商品ラインに注力しており、アンブロの買収は「フットボール・ライフスタイル」や「ファンのファッション」といった市場に切り込むためだった。これらのビジネスは必ずしも交わるわけではないが、やがてナイキはアンブロの偉大な資産を切り裂いていった。
アンブロの抱えるもう一つの宝石は、マンチェスター・シティとのシャツの契約だが、これも来季にはナイキに引き継がれることになるだろう。こうした要素に敏感な者であれば、エティハド・スタジアムのピッチ脇の看板は、もうナイキに入れ替わっている、と言うだろう。現在もアンブロのスパイクを着用する数少ないスター選手のジョー・ハートも、ほどなくナイキになっているだろう。ダレン・ベント、アンディ・キャロル、マイケル・オーウェンも依然アンブロと契約している。ジョン・テリーの契約は6月に 切れたが、彼も依然としてアンブロのスパイクを着用している。
数々のビッグクラブや代表チームのユニフォームを提供してきたブランド、そして言うまでも無く最初の子供用レプリカシャツを出したブランドは、来年にはイングランドではノッティンガム・フォレスト、ハダースフィールド・タウン、そしてブラックバーン・ローヴァーズにしか契約が無い状態になる。
ハンフリーズ兄弟の実家から数マイル、南マンチェスターのチードルにあるアンブロの本社では、約200人の社員が働き、ナイキによる買収時にはオフィスの拡大もしたが、最近ではアンブロの社員がブランドの将来について知らされるのを待っている様子は、廃墟の街のようだ、と語られていた。
グローバル化した世界にあって、イングランド代表が少なくともイングランドにルーツがある会社のシャツを着なくなったとして問題だろうか?フランスだってル・コックでなく、結局はナイキを着用している。スペイン、ブラジル、アルゼンチン、オランダといった代表の強豪は、いずれもアディダスかナイキと契約している。それでも、ドイツ代表がドイツのブランドであるアディダスかプーマ以外のシャツを着用しているのは想像しがたい。
1994年のワールドカップ優勝時のブラジルのユニフォームや、1997年のフランス戦で見せたロベルト・カルロスの有名なフリーキックの時のスパイクなど、アンブロにはフットボールの遺産の中に一定の存在感があることは誰にも否定できない。文化の中にも浸透していったのも確かだ。リアム・ギャラガーは1995年の「トップ・オブ・ザ・ポップス」出演時には、シティ色のアンブロのコートを身にまとっていた。
1966年ワールドカップの決勝トーナメントでは、 16チーム中15チームがアンブロ製のシャツを着ていた。近年では、それはナイキとアディダスによる世界の覇権を戦いの場となってしまった。アンブロは今後もフットボールの市場での居場所があると望んでいるが、イングランド代表という大きな勲章を失ってしまい、歴史はそれを2度と取り戻すことはできないと示唆している。
++++
何年か前のナイキによる買収の話の時は驚きつつも時の流れと感じてたけど(実際、その前にアディダス傘下にリーボックが入ったりって流れもあったし)、イングランド代表のユニフォームがアンブロからナイキになってしまう違和感はかなりのもの。
個人的に、現行のアウェー・モデルは結構好きだから、買っとこうかな、と。
(↓は、そのアウェー・モデルがデビューした去年のブルガリア戦)
日本代表の今のサプライヤーはアディダスになって長いけど、昔は結構ローテーションしてたよね。
Thursday, October 11, 2012
冷静なレイトン・ベインズの謙虚な振舞いと好調エヴァートン
エヴァートンの左サイドバック、レイトン・ベインズは、この夏のマンチェスター・ユナイテッドへの移籍が噂されるなど、イングランドでの評価は非常に高い。それでも、代表のこのポジションには、間もなく代表100キャップのアシュリー・コールがおり、必然的にその「影」を歩むことがこれまでも長かった。テリーの裁判沙汰に関するツイッター上でのFA批判(既にコールは謝罪し、代表に合流)で今回のワールドカップ予選でのコールの出場が微妙な中、BBCのフットボール主幹であるフィル・マクナルティ記者がベインズにスポットライトを当てたコラムをアップ。
++(以下、要訳)++
アシュリー・コールがFAからの処罰を待つ中、エヴァートンのレイトン・ベインズは自分がその代役をこなせるのだと証明するのに忙しかった。
マージーサイド出身の27歳は、イングランド代表98キャップが示す通りの衰えぬクオリティを持つ、誰もが認めるワールドクラスであるチェルシーのコールの陰で、彼のサブとして代表のキャリアを送ってきた。
そして、代表がサンマリノとポーランドとのワールドカップ予選に臨む 準備期間の間にも、コールは、チームメイトのジョン・テリーがQPRのアントン・ファーディナンドに発した人種差別発言で有罪とされた審問で自分の証言に疑問符を付けられたことでFAに軽はずみに罵言をツイッターで飛ばしたことで、再度見出しを飾ることになるだろう。
ベインズがツイッターで発言をするとは到底考えられないし、FAを批判するための道具にするとなれば尚更だ。彼は思慮深い性格で、ピッチを去れば注目を浴びるよりも人混みに消えて行くことを好み、意図的に控え目でいるタイプなのだ。
彼はむしろロイ・ホジソンと1950年代の音楽について話している可能性の方が高く -実際彼らはその話題で議論をしていたのだが- 、ツイッターでの暴言について説明を求められる電話を受けたりはしていないはずだ。
それはホジソン、そしておそらくFAにとっても好ましいことで、彼が最高レベルのディフェンダーとして成熟して行っていることは、2-2のドローで終わったウィガン戦を見ていた者であれば、より確信を持てただろう。
仮にホジソンがイングランド代表の左サイドバックのポジションがアシュリー・コールの後も安泰だと分かっていなかったとしても、DWスタジアムに送り込んだスパイがホジソンにしっかりと報告するはずだ。私の考えでは、コールには依然としてより優れた左サイドバックだと言える点が残っているが、その差はこれまでにないほど縮まってきているし、ベインズには土曜日のプレー以上にまだ成長するための時間もある。
ピッチを離れれば、ベインズを知る者はその地味ながらも知性溢れるキャラクター -国を代表する欲望と情熱には事欠かない- を褒め称える。自信の欠如が彼をクラブでもで意表でも表舞台から遠ざけたことはあっただろうが、今の彼は才能が花開き、デイビッド・モイーズも何度となく賞賛している。
エヴァートンが終盤のPK、彼の3度目となる古巣相手のゴールで1ポイントをもぎ取ったウィガン戦の後、モイーズはベインズがチームにもたらした影響を賞賛することを躊躇わなかった。かつて彼を賞賛していたウィガンのファンも温かい声援を送ったが、ロベルト・マルティネスにとってはより大きな傷となったことは間違いない。
「レイトン・ベインズはファンタスティックだった。彼のプレーもPKもね」とモイーズは語った。「彼のパフォーマンスは見ての通り、ピカイチだった。彼がウチを波に乗せたんだ。圧倒的なプレーだった」
アリ・アル・ハブシに向かって強く高く蹴り上げたPKが決まったのは、ウィガンのアルナ・コネとフランコ・ディ・サントのゴール、その間のニキツァ・イェラビッチゴールで環境を夢中にさせた試合の中で彼とエヴァートンには相応しい報いであった。
守備をこなし、前半にはポストを叩くシュートを放ち、貴重なPKを決める前にはエヴァートンの後半の猛攻を引き出すなど、ベインズはこの試合では圧倒的な存在感だった。
要するにそれはほぼノーミスのプレーであり、可能性の低かったエヴァートンの勝利を引き寄せるために、気まぐれだったパスを活かそうと、無駄だと分かっていても96分間走り続けたことが彼のキャラクターを示している。試合後に彼について訊かれたモイーズは直ちに賞賛の言葉を並べた。
今季素晴らしい開幕ダッシュを見せるエヴァートンのチャンスメイカーとしても得点者としてもベインズはチームに欠かせない存在で、彼がスパーズから復帰したスティーブン・ピーナールと再び見せる左サイドでの連携はプレミア屈指だ。
この日は、マージーサイドの面々にはタフな午後で、エンジン全開のウィガンが精彩を欠いたエヴァートンに付け込んで攻め込み、自分たちの持つと信じる力の証明に躍起になっていた。
エヴァートンのように大きな変化を見せないチームでは珍しいことだったが、モイーズは必要と思われた調整をハーフタイムに行った。コネに対峙してスピード不足を露呈していたジョン・ハイティンガは、哀れなことにそのままロッカールームに残ることになり、活躍を嘱望される若きベルギー人のケヴィン・ミララスは、右サイドからイェラヴィッチのパートナーへとポジションを上げた。
これが最終的にはエヴァートンに勢いをもたらし、アウェーに駆け付けた彼らの5,000人のファンの目の前へと押し込んで行った。モイーズが後半開始後のプレーで主審のケヴィン・フレンドがPKを認めなかったことは不満だったろうし、疑問の余地のあるコネの先制ゴールにも一言あるだろう。
しかしながら、この試合、ウィガンは勝ち点1には値したし、それは開幕以来の好調で信念が吹き込まれたシステムで、次第にウィガンにプレッシャーをかけて行ったエヴァートンも同様だ。エヴァートンが現在の順位を維持できるかどうかはまだ分からないし、現在ケガで欠場するダロン・ギブソンを欠くと、中盤は安定感を欠いてしまう。
それでも、今季のエヴァートンが昨季と違うことに疑いは無い。イェラヴィッチは脅威であり続け、ベインズとピーナールの最高のコンビは、ほぼテレパシーだ。そのスタイルはより拡張性に富み、守備の綻びが若干広がったとしても、相手にとっての脅威も明らかだ。
チームの各ピースは、エヴァートンが敗戦によってモラルを失うことのないよう再びひとつになり、土曜にその中で最も重要なピースだったのはベインズだ。
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コールの後塵を拝する期間が長いままもう27歳になってしまったのは惜しいけど、今回の代表ウィークは彼に追い風になっているのは間違いなく、本人もまだ限られている出番で結果を出したいところなんじゃないかな、と。
++(以下、要訳)++
アシュリー・コールがFAからの処罰を待つ中、エヴァートンのレイトン・ベインズは自分がその代役をこなせるのだと証明するのに忙しかった。
マージーサイド出身の27歳は、イングランド代表98キャップが示す通りの衰えぬクオリティを持つ、誰もが認めるワールドクラスであるチェルシーのコールの陰で、彼のサブとして代表のキャリアを送ってきた。
そして、代表がサンマリノとポーランドとのワールドカップ予選に臨む 準備期間の間にも、コールは、チームメイトのジョン・テリーがQPRのアントン・ファーディナンドに発した人種差別発言で有罪とされた審問で自分の証言に疑問符を付けられたことでFAに軽はずみに罵言をツイッターで飛ばしたことで、再度見出しを飾ることになるだろう。
ベインズがツイッターで発言をするとは到底考えられないし、FAを批判するための道具にするとなれば尚更だ。彼は思慮深い性格で、ピッチを去れば注目を浴びるよりも人混みに消えて行くことを好み、意図的に控え目でいるタイプなのだ。
彼はむしろロイ・ホジソンと1950年代の音楽について話している可能性の方が高く -実際彼らはその話題で議論をしていたのだが- 、ツイッターでの暴言について説明を求められる電話を受けたりはしていないはずだ。
それはホジソン、そしておそらくFAにとっても好ましいことで、彼が最高レベルのディフェンダーとして成熟して行っていることは、2-2のドローで終わったウィガン戦を見ていた者であれば、より確信を持てただろう。
仮にホジソンがイングランド代表の左サイドバックのポジションがアシュリー・コールの後も安泰だと分かっていなかったとしても、DWスタジアムに送り込んだスパイがホジソンにしっかりと報告するはずだ。私の考えでは、コールには依然としてより優れた左サイドバックだと言える点が残っているが、その差はこれまでにないほど縮まってきているし、ベインズには土曜日のプレー以上にまだ成長するための時間もある。
ピッチを離れれば、ベインズを知る者はその地味ながらも知性溢れるキャラクター -国を代表する欲望と情熱には事欠かない- を褒め称える。自信の欠如が彼をクラブでもで意表でも表舞台から遠ざけたことはあっただろうが、今の彼は才能が花開き、デイビッド・モイーズも何度となく賞賛している。
エヴァートンが終盤のPK、彼の3度目となる古巣相手のゴールで1ポイントをもぎ取ったウィガン戦の後、モイーズはベインズがチームにもたらした影響を賞賛することを躊躇わなかった。かつて彼を賞賛していたウィガンのファンも温かい声援を送ったが、ロベルト・マルティネスにとってはより大きな傷となったことは間違いない。
「レイトン・ベインズはファンタスティックだった。彼のプレーもPKもね」とモイーズは語った。「彼のパフォーマンスは見ての通り、ピカイチだった。彼がウチを波に乗せたんだ。圧倒的なプレーだった」
アリ・アル・ハブシに向かって強く高く蹴り上げたPKが決まったのは、ウィガンのアルナ・コネとフランコ・ディ・サントのゴール、その間のニキツァ・イェラビッチゴールで環境を夢中にさせた試合の中で彼とエヴァートンには相応しい報いであった。
守備をこなし、前半にはポストを叩くシュートを放ち、貴重なPKを決める前にはエヴァートンの後半の猛攻を引き出すなど、ベインズはこの試合では圧倒的な存在感だった。
要するにそれはほぼノーミスのプレーであり、可能性の低かったエヴァートンの勝利を引き寄せるために、気まぐれだったパスを活かそうと、無駄だと分かっていても96分間走り続けたことが彼のキャラクターを示している。試合後に彼について訊かれたモイーズは直ちに賞賛の言葉を並べた。
今季素晴らしい開幕ダッシュを見せるエヴァートンのチャンスメイカーとしても得点者としてもベインズはチームに欠かせない存在で、彼がスパーズから復帰したスティーブン・ピーナールと再び見せる左サイドでの連携はプレミア屈指だ。
この日は、マージーサイドの面々にはタフな午後で、エンジン全開のウィガンが精彩を欠いたエヴァートンに付け込んで攻め込み、自分たちの持つと信じる力の証明に躍起になっていた。
エヴァートンのように大きな変化を見せないチームでは珍しいことだったが、モイーズは必要と思われた調整をハーフタイムに行った。コネに対峙してスピード不足を露呈していたジョン・ハイティンガは、哀れなことにそのままロッカールームに残ることになり、活躍を嘱望される若きベルギー人のケヴィン・ミララスは、右サイドからイェラヴィッチのパートナーへとポジションを上げた。
これが最終的にはエヴァートンに勢いをもたらし、アウェーに駆け付けた彼らの5,000人のファンの目の前へと押し込んで行った。モイーズが後半開始後のプレーで主審のケヴィン・フレンドがPKを認めなかったことは不満だったろうし、疑問の余地のあるコネの先制ゴールにも一言あるだろう。
しかしながら、この試合、ウィガンは勝ち点1には値したし、それは開幕以来の好調で信念が吹き込まれたシステムで、次第にウィガンにプレッシャーをかけて行ったエヴァートンも同様だ。エヴァートンが現在の順位を維持できるかどうかはまだ分からないし、現在ケガで欠場するダロン・ギブソンを欠くと、中盤は安定感を欠いてしまう。
それでも、今季のエヴァートンが昨季と違うことに疑いは無い。イェラヴィッチは脅威であり続け、ベインズとピーナールの最高のコンビは、ほぼテレパシーだ。そのスタイルはより拡張性に富み、守備の綻びが若干広がったとしても、相手にとっての脅威も明らかだ。
チームの各ピースは、エヴァートンが敗戦によってモラルを失うことのないよう再びひとつになり、土曜にその中で最も重要なピースだったのはベインズだ。
++++
コールの後塵を拝する期間が長いままもう27歳になってしまったのは惜しいけど、今回の代表ウィークは彼に追い風になっているのは間違いなく、本人もまだ限られている出番で結果を出したいところなんじゃないかな、と。
Sunday, September 23, 2012
ヒルズボロの悲劇:その真実
先日明らかになった、ヒルズボロの悲劇についての「新たな真実」についてのニュースは日本でも断片的に「キャメロン首相が謝罪」といった形で報道されていたが、やはり本国での報道量は非常に多く、「これから正義が下される」というニュアンスも含めて、各メディアのトーンにも力が入っていた。
こういう時はBBCかな、という気もしたけど、フットボール系の記者の間でも評価が高かった、「ガーディアン」紙のデイビッド・コン記者による取材記事をピックアップ。個人的にも彼のコラムは好きで、前にもチケット代の高騰に関するネタをここで紹介している。
++(以下、要訳)++
23年の時を経て、何が起きたのかの真実 - そしてそれに続く警察による隠蔽 - が遂に明らかになった。
リバプールのアングリカン聖堂での重大な一日を通じて、シェフィールド・ウェンズデーのヒルズボロ・フットボール・グラウンドで落とす必要のない命を無くしてしまった96人の人々の家族には、何よりも「真実(the truth)」という言葉が大事だった。
今では我々も非常にショッキングなほどに詳細を知るに至ったが、この言葉は、「サン」紙の見出しで、南ヨークシャー警察が自分たちがこの悲劇で無実の被害者を出してしまったことへの過失を曲げようと提供された話の記事で恥ずかしくも掲げられたものだ。
18歳だった息子のジェームスを亡くしたマーガレット・アスピノール(訳注:上掲のビデオの中盤でスピーチし、終盤でもコメントしている女性)は、家族は23年間に渡ってその「真実」だけのために戦わざるを得なかった、と語る。息子は、リバプールとノッティンガム・フォレストのFAカップ準決勝を春の日射しの中で観に行き、楽しい一日を過ごすはずだった。ヒルズボロ家族支援会(HFSG)の会長を務めるアスピノールは、遺族の中の喪失は決してなくならないものの、デイビッド・キャメロンによる明確で深遠な謝罪の言葉があったことは「嬉しく思う」と語った。
リバプール主教であるジェームズ・ジョーンズが率いるヒルズボロ独立委員会は、警察、シェフィールド・ウェンズデイ、その他責任のあったと思われる機関の45万枚もの文書を調査し、特筆に値する395ページのレポートで、警察の失策を指摘し、被害者、そしてフットボール・サポーターたちの無実の罪を晴らした。
悲劇が起きた原因、そして警察による責任の転嫁が、この長年を経て明らかになったのだ。しかし、遺族が「隠蔽」と語るものの深さ、特に南ヨークシャー警察による、責任を回避してサポーターたちに無実の罪を着せるための周到で無慈悲な活動への調べはまだ始まったばかりだ。
まだ遺体がヒルズボロ内に設けられた仮の安置所に横たわっていた頃に行われた、申し合わされた調査では、南ヨークシャー警察の本部長であったピーター・ライトが酔ったサポーターかチケットを持たないサポーターが悲劇の原因だった、という話にさせていたことが判った。多くはティンエイジャーで、最年少で10歳、大半が30歳以下だった被害者たちはアルコールのレベルについての血液検査をされた。委員会は、これは「合理的な理由が無く、極めて例外的な判断」と指摘した。全ての関連機関が内部文書を提出した今回の調査で新たに明らかになったことのひとつは、血液からアルコール値が検出されたら、警察は過去の犯罪歴が無いかを確認していた、というものだった。
かなりの部分がベルファストのクイーンズ大学のフィル・スクラトン教授によってまとめられたこのレポートは、8人の専門家によっても満場一致で承認されているが、「際立ったレベルの泥酔やチケット非保持、暴力がリバプール・ファンの中にあったという疑いを正当化する証拠は一切ない」としている。
レポートは、ライトが警察幹部とシェフィールドのレストランで会食し、「弁護」と「確固たるストーリー」を準備していたことを明かしている。南ヨークシャー警察連盟支所の秘書であるポール・ミダップ巡査がライトが現れる前に話をまとめ、「本部長は真実を語ることはできず、秘書に自由にさせつつそれを支援した」。他の幹部と同様だった。
ミーティングは、シェフィールドのピクウィック・レストランで1989年の4月19日、悲劇の僅か4日後に行われた。それは、ケルヴィン・マッケンジーの「サン」紙が、「真実」の見出しを付けた虚実の記事を出した日だった。記事はホワイト・プレス経由で、委員会の調査によれば、皆ヨークシャー警察の4人の警察官が作り上げたものだった。ミダップはリバプールのファンを泥酔と不祥事の疑いで中傷する警察のキャンペーンを継続し、「一体感あるメッセージを部隊全体に伝える」よう支援を受けていた。
委員会のレポートは、議会で行われた不正についても記述を残している。マージーサイド議会の労働党の議員マリア・イーグルが、若い警察官たちからのコメントを、「暗黒のプロパカンダ集団」とまで呼ばれていた南ヨークシャー警察幹部にもみ消させていた。
警察官たちのコメントは、テイラー主席判事(訳注:事故調査を行い、後の90年1月にフットボール界の問題を指摘する「テイラー・レポート」を出すピーター・テイラー氏)からの継続的な取り調べに対して公式な見解として提出されたが、警察自身への批判をかわし、サポーターによる不祥事を強調するために内容が書き替えられていた。委員会は、この取り組みは非常に深く大規模なもので、164のコメントのうち、116までもが「南ヨークシャー警察に好ましくない内容」として、変更、もしくは削除されていたことを突き止めた。
警察は、これを「推測」や「意見」を取り払うだけのために行った、と主張したが、委員会は、この取り組みが、警察の公式見解を出すことよりも、事件を捏造するためにエスカレートして行った、と信じて疑っていない。
スクラトンは、「警察への批判をかわすために行われたものだ」と語っている。
このプロパガンダは、テイラーを納得させはしなかった。彼は1989年8月の時点で、警察の言うファンの酔いや不祥事が誤りであると断じていた。テイラーは、重大な要素でシェフィールド・ウェンズデーのフットボール場は危険な状態で、FAが名誉ある大会の舞台に、ヒルズボロが安全の基準を満たしているかを確かめもせずに選んでいたことを明らかにした。
こうした配慮の欠如に加えて、そこには経験の浅い管理者だったデイビッド・ダッケンフィールドに率いられた南ヨークシャー警察による観衆の誘導ミスが重なり、これが悲劇の「第一の要因」となった。警察はグラウンドの外でのコントロールを失っており、24,000人のリバプール・ファンが、たった23の回転ドアに押し寄せていた。そこで、ダッケンフィールドは、より大きな出口用のドアを開けることを命じ、多くの人数を中に入れさせた。テイラーによれば、この彼の「最大級の大失策("blunder of the first magnitude")」は、既に満席だったレッピングス・レーン・テラス中央のへのトンネルを閉じなかったことだ。
この点については既にテイラー・レポートで述べられているが、それでも簡単には屈しない警察は彼らの主張を 以降の取り調べでも繰り返した。悲劇の日の3時15分以降の起きたことの証拠を集めなくとも、その日の流れは検視官の判断から分かっており、結果的に救急の対応はカオス状態だったと委員会は見ている。96名の死者のうち41名は、警察と救急が適切な対応をしていれば救われていた、という事実が判明し、死者、そして遺族には受け入れることが難しい、とアスピノールは語る。
法務長官のドミニク・グレイブは委員会によるレポートが提出されたことを受け、事故での死因について新たな審問を行うために高等裁判所への訴訟を行うかどうかを検討することになる。
この長年の時を経て、 シェフィールド・ウェンズデー、南ヨークシャー警察、そしてフットボール場の安全管理責任を果たしていなかったシェフィールド市議会への訴訟もありうる話だろう。HFSGの代表を務めるトレヴァー・ヒックスはティーンエイジャーだったサラとヴィクトリアという2人の娘をこのレッピングス・レーンの崩壊で失っているが、彼は全ての法的補償を求めにいくと語っている。「真実は今日明らかになった。明日からは正義のためにある」
アスピノールは、特に権威からの真相が明らかになるのにこれだけ時間がかかり、彼女や他の遺族が長年戦わざるを得なかったことに深い怒りと不正義を感じていると語る。
彼女は「遺族がこの23年間を耐え抜いてこなければならずこれだけの痛みに晒されてきたのは不名誉なこと」と続け、自分たち遺族がこの法的な争いのために資金を工面しなければならなかった一方で、南ヨークシャー警察や、他の公的機関の面々は自分たちの税金から給与を受け取っていることに不平を述べた。
「それでも、彼らが嘘つきであり、我々が誠実だったわけよね」
主教のジョーンズは、自身のリバプール教区での仕事をする聖堂に落ち着いて座り、自身は牧師として「正当な世界にコミットしていて、それこそが委員会としての自分たちの仕事の中心だった。我々は真実、そして正義を追い求めているのだ」と語った。
そして、ここでまたこの言葉だ。これだけの年月と痛み、愛する家族のために決して諦めない遺族による長く辛い戦いを経て、それは遂に取り戻された。「真実」だ。
++++
このコン記者は、ヒルズボロの悲劇について深く取材をしていて、先週はこれだけでなく多くの記事を出していた。(↓こんな感じの人)
全席指定のスタンド設置義務化等、安全に配慮した流れを生んだことは確かだけど、こうした苦しみがその裏にはあり、消してなくらないことは、もう少しきちんと伝えられても良いと思うし、象徴的な事件や出来事ほど、つながっている点や線の理解が大事なんだな、と痛感した一連の報道。
【ITVによる約1時間のドキュメンタリー】
こういう時はBBCかな、という気もしたけど、フットボール系の記者の間でも評価が高かった、「ガーディアン」紙のデイビッド・コン記者による取材記事をピックアップ。個人的にも彼のコラムは好きで、前にもチケット代の高騰に関するネタをここで紹介している。
++(以下、要訳)++
23年の時を経て、何が起きたのかの真実 - そしてそれに続く警察による隠蔽 - が遂に明らかになった。
リバプールのアングリカン聖堂での重大な一日を通じて、シェフィールド・ウェンズデーのヒルズボロ・フットボール・グラウンドで落とす必要のない命を無くしてしまった96人の人々の家族には、何よりも「真実(the truth)」という言葉が大事だった。
今では我々も非常にショッキングなほどに詳細を知るに至ったが、この言葉は、「サン」紙の見出しで、南ヨークシャー警察が自分たちがこの悲劇で無実の被害者を出してしまったことへの過失を曲げようと提供された話の記事で恥ずかしくも掲げられたものだ。
18歳だった息子のジェームスを亡くしたマーガレット・アスピノール(訳注:上掲のビデオの中盤でスピーチし、終盤でもコメントしている女性)は、家族は23年間に渡ってその「真実」だけのために戦わざるを得なかった、と語る。息子は、リバプールとノッティンガム・フォレストのFAカップ準決勝を春の日射しの中で観に行き、楽しい一日を過ごすはずだった。ヒルズボロ家族支援会(HFSG)の会長を務めるアスピノールは、遺族の中の喪失は決してなくならないものの、デイビッド・キャメロンによる明確で深遠な謝罪の言葉があったことは「嬉しく思う」と語った。
リバプール主教であるジェームズ・ジョーンズが率いるヒルズボロ独立委員会は、警察、シェフィールド・ウェンズデイ、その他責任のあったと思われる機関の45万枚もの文書を調査し、特筆に値する395ページのレポートで、警察の失策を指摘し、被害者、そしてフットボール・サポーターたちの無実の罪を晴らした。
悲劇が起きた原因、そして警察による責任の転嫁が、この長年を経て明らかになったのだ。しかし、遺族が「隠蔽」と語るものの深さ、特に南ヨークシャー警察による、責任を回避してサポーターたちに無実の罪を着せるための周到で無慈悲な活動への調べはまだ始まったばかりだ。
まだ遺体がヒルズボロ内に設けられた仮の安置所に横たわっていた頃に行われた、申し合わされた調査では、南ヨークシャー警察の本部長であったピーター・ライトが酔ったサポーターかチケットを持たないサポーターが悲劇の原因だった、という話にさせていたことが判った。多くはティンエイジャーで、最年少で10歳、大半が30歳以下だった被害者たちはアルコールのレベルについての血液検査をされた。委員会は、これは「合理的な理由が無く、極めて例外的な判断」と指摘した。全ての関連機関が内部文書を提出した今回の調査で新たに明らかになったことのひとつは、血液からアルコール値が検出されたら、警察は過去の犯罪歴が無いかを確認していた、というものだった。
かなりの部分がベルファストのクイーンズ大学のフィル・スクラトン教授によってまとめられたこのレポートは、8人の専門家によっても満場一致で承認されているが、「際立ったレベルの泥酔やチケット非保持、暴力がリバプール・ファンの中にあったという疑いを正当化する証拠は一切ない」としている。
レポートは、ライトが警察幹部とシェフィールドのレストランで会食し、「弁護」と「確固たるストーリー」を準備していたことを明かしている。南ヨークシャー警察連盟支所の秘書であるポール・ミダップ巡査がライトが現れる前に話をまとめ、「本部長は真実を語ることはできず、秘書に自由にさせつつそれを支援した」。他の幹部と同様だった。
ミーティングは、シェフィールドのピクウィック・レストランで1989年の4月19日、悲劇の僅か4日後に行われた。それは、ケルヴィン・マッケンジーの「サン」紙が、「真実」の見出しを付けた虚実の記事を出した日だった。記事はホワイト・プレス経由で、委員会の調査によれば、皆ヨークシャー警察の4人の警察官が作り上げたものだった。ミダップはリバプールのファンを泥酔と不祥事の疑いで中傷する警察のキャンペーンを継続し、「一体感あるメッセージを部隊全体に伝える」よう支援を受けていた。
委員会のレポートは、議会で行われた不正についても記述を残している。マージーサイド議会の労働党の議員マリア・イーグルが、若い警察官たちからのコメントを、「暗黒のプロパカンダ集団」とまで呼ばれていた南ヨークシャー警察幹部にもみ消させていた。
警察官たちのコメントは、テイラー主席判事(訳注:事故調査を行い、後の90年1月にフットボール界の問題を指摘する「テイラー・レポート」を出すピーター・テイラー氏)からの継続的な取り調べに対して公式な見解として提出されたが、警察自身への批判をかわし、サポーターによる不祥事を強調するために内容が書き替えられていた。委員会は、この取り組みは非常に深く大規模なもので、164のコメントのうち、116までもが「南ヨークシャー警察に好ましくない内容」として、変更、もしくは削除されていたことを突き止めた。
警察は、これを「推測」や「意見」を取り払うだけのために行った、と主張したが、委員会は、この取り組みが、警察の公式見解を出すことよりも、事件を捏造するためにエスカレートして行った、と信じて疑っていない。
スクラトンは、「警察への批判をかわすために行われたものだ」と語っている。
このプロパガンダは、テイラーを納得させはしなかった。彼は1989年8月の時点で、警察の言うファンの酔いや不祥事が誤りであると断じていた。テイラーは、重大な要素でシェフィールド・ウェンズデーのフットボール場は危険な状態で、FAが名誉ある大会の舞台に、ヒルズボロが安全の基準を満たしているかを確かめもせずに選んでいたことを明らかにした。
こうした配慮の欠如に加えて、そこには経験の浅い管理者だったデイビッド・ダッケンフィールドに率いられた南ヨークシャー警察による観衆の誘導ミスが重なり、これが悲劇の「第一の要因」となった。警察はグラウンドの外でのコントロールを失っており、24,000人のリバプール・ファンが、たった23の回転ドアに押し寄せていた。そこで、ダッケンフィールドは、より大きな出口用のドアを開けることを命じ、多くの人数を中に入れさせた。テイラーによれば、この彼の「最大級の大失策("blunder of the first magnitude")」は、既に満席だったレッピングス・レーン・テラス中央のへのトンネルを閉じなかったことだ。
この点については既にテイラー・レポートで述べられているが、それでも簡単には屈しない警察は彼らの主張を 以降の取り調べでも繰り返した。悲劇の日の3時15分以降の起きたことの証拠を集めなくとも、その日の流れは検視官の判断から分かっており、結果的に救急の対応はカオス状態だったと委員会は見ている。96名の死者のうち41名は、警察と救急が適切な対応をしていれば救われていた、という事実が判明し、死者、そして遺族には受け入れることが難しい、とアスピノールは語る。
この長年の時を経て、 シェフィールド・ウェンズデー、南ヨークシャー警察、そしてフットボール場の安全管理責任を果たしていなかったシェフィールド市議会への訴訟もありうる話だろう。HFSGの代表を務めるトレヴァー・ヒックスはティーンエイジャーだったサラとヴィクトリアという2人の娘をこのレッピングス・レーンの崩壊で失っているが、彼は全ての法的補償を求めにいくと語っている。「真実は今日明らかになった。明日からは正義のためにある」
アスピノールは、特に権威からの真相が明らかになるのにこれだけ時間がかかり、彼女や他の遺族が長年戦わざるを得なかったことに深い怒りと不正義を感じていると語る。
彼女は「遺族がこの23年間を耐え抜いてこなければならずこれだけの痛みに晒されてきたのは不名誉なこと」と続け、自分たち遺族がこの法的な争いのために資金を工面しなければならなかった一方で、南ヨークシャー警察や、他の公的機関の面々は自分たちの税金から給与を受け取っていることに不平を述べた。
「それでも、彼らが嘘つきであり、我々が誠実だったわけよね」
主教のジョーンズは、自身のリバプール教区での仕事をする聖堂に落ち着いて座り、自身は牧師として「正当な世界にコミットしていて、それこそが委員会としての自分たちの仕事の中心だった。我々は真実、そして正義を追い求めているのだ」と語った。
そして、ここでまたこの言葉だ。これだけの年月と痛み、愛する家族のために決して諦めない遺族による長く辛い戦いを経て、それは遂に取り戻された。「真実」だ。
++++
このコン記者は、ヒルズボロの悲劇について深く取材をしていて、先週はこれだけでなく多くの記事を出していた。(↓こんな感じの人)
全席指定のスタンド設置義務化等、安全に配慮した流れを生んだことは確かだけど、こうした苦しみがその裏にはあり、消してなくらないことは、もう少しきちんと伝えられても良いと思うし、象徴的な事件や出来事ほど、つながっている点や線の理解が大事なんだな、と痛感した一連の報道。
【ITVによる約1時間のドキュメンタリー】
Tuesday, September 11, 2012
ワールドカップに向けてイングランド代表に必要なもの
夏のユーロを失望のPK負けで終えたイングランド代表には、カペッロ辞任からホジソン就任に至る流れで準備期間も少なく元々期待も低かったが、トーナメントを勝ち上がって行くには限界があることも指摘されていた。
ユーロを終えて、ブラジルW杯に向けての準備こそがホジソン政権での本番と見る向きも多く、ユーロ後の初戦、かつ予選の初戦となったアウェーのモルドバ戦には注目が集まったが、これを5-0で快勝。相手のレベルもあっての結果とはいえ、現地のメディアには一気にポジティブな論調が出回った。特に、10番を背負ったトム・クレバリのプレーや、代表32キャップ目にして初ゴールを挙げたジェームス・ミルナーのプレーを称える記者が多かった印象で、次いでスティーブン・ジェラードとフランク・ランパードの共存を議論する内容が目立っていた。
そんな雰囲気の中で、BBCの「Match of the Day」でお馴染みのアラン・ハンセンが、戦術よりも選手たち自身に目を向けるべきとのトーンでコラムを書いている。
++(以下、要訳)++
イングランドでは代表チームに対して、主要な国際大会でこれ以上の失望を味わわないために、よりフレキシブルで戦術的な取り組みを切望する声がある。そして、モルドバ戦での快勝は、トム・クレバリが中盤とストライカーのリンクマンとして機能する、より進化したシステムでのプレーの最初の兆候だと考える者もいる。
アウェーで5-0で勝ったことの重要性を否定するわけではないが、イングランドのプレーが今後先進的な変化を遂げる時期が来た、と語るにはまだ早い。
私が金曜に見て、この先の予選でも予期できることは、イングランド代表のここ16年間かそこらの間の予選の戦いで見てきたものと同じだ。予選では素晴らしい戦いをしても、本番では無防備さを露呈してしまうのだ。実際、今まで主要大会に向けた予選で大きく崩れることは少なかったし、それはスヴェン・ゴラン・エリクソンの時もファビオ・カペッロの時も同様だった。そして、それがロイ・ホジソンの下であてはまらない理由は見出せない。
監督の戦術的な知性、もしくは選手たちの質の面でのチャレンジは、難しさもあったであろうモルドバでのアウェー戦で訪れることは無かった。しかし、国際大会の場で技術的に最も恵まれているチームに対しては、3ヶ月前のイタリア戦で見たようにそうならないのだ。
最大限の敬意をモルドバに払ったとして、金曜の夜にイングランドが4-4-2、4-3-3、5-3-2のどの形でプレーしても問題にはならなかっただろう。彼らが勝ったのは、より優れた選手たちを揃えていたからだ。
戦術について、向こう2年間好き放題語り続けることもできるが、仮にリオでの準々決勝で技術的に優れたチームと対戦すれば、 何の違いも生み出さないだろう。厳格でないシステムについて語るとき、それは私にとっては、選手たちが試合の進め方について責任を持ち、ピッチでの問題を自分で解決することを究極的には意味している。
ホジソンには彼のシステムを変える必要がある、と考えるのはいささか安易過ぎる。システムを機能させるのは選手たちであり、コーチたちではない。しかしながら、監督は試合が特定の流れにある時に、選手たちがどう対応すべきかについて、指示をすることができる。
ユーロ2012の準々決勝を例にとってみよう。
あの日のピッチではアンドレア・ピルロがベスト・プレーヤーだったことは周知の事実だ。多くの人々、そして私自身も、ピルロには試合をコントロールするためのスペースが与えられ過ぎていた、と考えていた。
イングランド代表のスタッフにもそう考えた者がいると感じるのは、ピルロにいくらボールを持たせようが、実際にイングランド守備を脅かすことはなかった、という別の見方で、それが実際の決着がPKでついた理由だ、とするものだ。
イングランドがウクライナ戦で4-4-2であったか4-5-1であったか以上に私を憂えさせたのは。後者の考え方だ。
あの晩になされるべきだったことは、ウェイン・ルーニーがピルロに時間とスペースがあり過ぎることに気付き、開始15分でもうひとりの中盤の人材となってピルロの前に立ちはだかり、彼がボールに触れるのを防ぐことだった。
ルーニー自身も自分でその判断をする権限があると考えるべきだったし、もしくはチームの誰かがひとりでも彼にそうしろと言えるべきだった。ベンチからそうした指示があっても良かったと思う者もいるだろうが、監督は選手たちがそうした問題点に自ら気付いて対処すべきと考えるものだろう。
したがって、イングランドがよりフレキシブルなアプローチを取るようになる、という点において最も重要なことは、ゲームの流れに応じて選手たちがそうした決断をする自由があると感じられることなのだ。知性ある選手たちには、何が起きているかを判断してほしいだろうし、決まったパターンにとらわれて持ち味を発揮できないような状況は望まないだろう。
イングランド内であれヨーロッパ内であれ、優れたチームには厳格な枠組みなどない。すべてのチームには適応能力のある選手がいて、選手たちに責任あるプレーを望む監督がいる。
4-4-2でプレーしていて中盤の人数で圧倒されていると感じたならば、前線から下がってくるか、サイドがフォローする。スペースが空きすぎていると感じたならば、自分たちの位置取りを確認し、スペースを消すために距離を詰めるべきなのだ。
これらはフットボールの基本だ。監督が予めイメージしておくプレーのイメージとは何の関係もなく、むしろ試合の中で進化していくために状況ごとにどう対応していくかという話だ。イングランドが強敵と対戦する際の問題点を解決するには4-4-2を捨てて4-5-1でプレーすべき、などと提案するのは危険なまでに短絡的だ。
仮にブラジルでのワールドカップが明日開幕するとして、金曜に先発した面々で大会に優勝できるだろうか?答えはもちろんノーだ。
ポジティブな前進は勿論認識すべきではあるが、どんな励みの兆しも、こうしたリアリズムでバランスを取る必要があるだろう。
トム・クレバリを見れば、イングランドには国際的に良いレベルに達するポテンシャルのある選手がいると考えることができる。ジャック・ウィルシャーの早期の復帰は望めないが、彼には海外のスターと同様のテクニックが備わっている。そしてアレックス・オックスレイド=チェンバレンが、将来に希望をもたらす、この際立った若き才能のトリオを完成させる。
しかし、イングランドもこの3人だけで成り立つわけではない。スペインやイタリア、南米の強豪と真剣勝負の場で対等に戦うには、2014年までに同様に高いクオリティを持つ10人のフィールド・プレーヤーが必要なのだ。
私はこの2年でイングランドがその域に達することができると信じて疑わないし、モルドバのような相手に完勝することは、モラルと自信の確立につながる。
しかしながら、より手強い相手と渡り合っていくには、新たな戦術に頼るだけでなく、選手自身を育てていく必要があるのだ。
++++
たしかにこのモルドバ戦後の楽観ムードは過剰な印象で、ユーロでのイタリア戦の明確な技術面での差はボールの保持率にもシュート数にも表れていたはずだった。ただ、チェルシーが気合と根性の堅守でチャンピオンズリーグを勝ち取った余韻とホジソンに与えられた準備期間の短さもあり、それらを深刻に反芻する流れも起きてはいなかった。
このハンセンの見解は極めて当たり前というか、基本的なことではあるのだけど、そのくらいユーロに望んだイングランドは「堅かった」。時間を与えられたホジソンの下で、この先代表がどう変わっていくは確かに楽しみではあるが、今回のグループHはイングランドの他は、モンテネグロ、ポーランド、サンマリノ、ウクライナ、モルドバ。指摘通りに予選はスムーズに行ってしまう気もするし、イタリア戦のような「学習」の機会が少ないと、応用の利かないチームのままブラジル大会に臨んでしまう可能性も無くもない。
ユーロを終えて、ブラジルW杯に向けての準備こそがホジソン政権での本番と見る向きも多く、ユーロ後の初戦、かつ予選の初戦となったアウェーのモルドバ戦には注目が集まったが、これを5-0で快勝。相手のレベルもあっての結果とはいえ、現地のメディアには一気にポジティブな論調が出回った。特に、10番を背負ったトム・クレバリのプレーや、代表32キャップ目にして初ゴールを挙げたジェームス・ミルナーのプレーを称える記者が多かった印象で、次いでスティーブン・ジェラードとフランク・ランパードの共存を議論する内容が目立っていた。
そんな雰囲気の中で、BBCの「Match of the Day」でお馴染みのアラン・ハンセンが、戦術よりも選手たち自身に目を向けるべきとのトーンでコラムを書いている。
++(以下、要訳)++
イングランドでは代表チームに対して、主要な国際大会でこれ以上の失望を味わわないために、よりフレキシブルで戦術的な取り組みを切望する声がある。そして、モルドバ戦での快勝は、トム・クレバリが中盤とストライカーのリンクマンとして機能する、より進化したシステムでのプレーの最初の兆候だと考える者もいる。
アウェーで5-0で勝ったことの重要性を否定するわけではないが、イングランドのプレーが今後先進的な変化を遂げる時期が来た、と語るにはまだ早い。
私が金曜に見て、この先の予選でも予期できることは、イングランド代表のここ16年間かそこらの間の予選の戦いで見てきたものと同じだ。予選では素晴らしい戦いをしても、本番では無防備さを露呈してしまうのだ。実際、今まで主要大会に向けた予選で大きく崩れることは少なかったし、それはスヴェン・ゴラン・エリクソンの時もファビオ・カペッロの時も同様だった。そして、それがロイ・ホジソンの下であてはまらない理由は見出せない。
監督の戦術的な知性、もしくは選手たちの質の面でのチャレンジは、難しさもあったであろうモルドバでのアウェー戦で訪れることは無かった。しかし、国際大会の場で技術的に最も恵まれているチームに対しては、3ヶ月前のイタリア戦で見たようにそうならないのだ。
最大限の敬意をモルドバに払ったとして、金曜の夜にイングランドが4-4-2、4-3-3、5-3-2のどの形でプレーしても問題にはならなかっただろう。彼らが勝ったのは、より優れた選手たちを揃えていたからだ。
戦術について、向こう2年間好き放題語り続けることもできるが、仮にリオでの準々決勝で技術的に優れたチームと対戦すれば、 何の違いも生み出さないだろう。厳格でないシステムについて語るとき、それは私にとっては、選手たちが試合の進め方について責任を持ち、ピッチでの問題を自分で解決することを究極的には意味している。
ホジソンには彼のシステムを変える必要がある、と考えるのはいささか安易過ぎる。システムを機能させるのは選手たちであり、コーチたちではない。しかしながら、監督は試合が特定の流れにある時に、選手たちがどう対応すべきかについて、指示をすることができる。
ユーロ2012の準々決勝を例にとってみよう。
あの日のピッチではアンドレア・ピルロがベスト・プレーヤーだったことは周知の事実だ。多くの人々、そして私自身も、ピルロには試合をコントロールするためのスペースが与えられ過ぎていた、と考えていた。
イングランド代表のスタッフにもそう考えた者がいると感じるのは、ピルロにいくらボールを持たせようが、実際にイングランド守備を脅かすことはなかった、という別の見方で、それが実際の決着がPKでついた理由だ、とするものだ。
イングランドがウクライナ戦で4-4-2であったか4-5-1であったか以上に私を憂えさせたのは。後者の考え方だ。
あの晩になされるべきだったことは、ウェイン・ルーニーがピルロに時間とスペースがあり過ぎることに気付き、開始15分でもうひとりの中盤の人材となってピルロの前に立ちはだかり、彼がボールに触れるのを防ぐことだった。
ルーニー自身も自分でその判断をする権限があると考えるべきだったし、もしくはチームの誰かがひとりでも彼にそうしろと言えるべきだった。ベンチからそうした指示があっても良かったと思う者もいるだろうが、監督は選手たちがそうした問題点に自ら気付いて対処すべきと考えるものだろう。
したがって、イングランドがよりフレキシブルなアプローチを取るようになる、という点において最も重要なことは、ゲームの流れに応じて選手たちがそうした決断をする自由があると感じられることなのだ。知性ある選手たちには、何が起きているかを判断してほしいだろうし、決まったパターンにとらわれて持ち味を発揮できないような状況は望まないだろう。
イングランド内であれヨーロッパ内であれ、優れたチームには厳格な枠組みなどない。すべてのチームには適応能力のある選手がいて、選手たちに責任あるプレーを望む監督がいる。
4-4-2でプレーしていて中盤の人数で圧倒されていると感じたならば、前線から下がってくるか、サイドがフォローする。スペースが空きすぎていると感じたならば、自分たちの位置取りを確認し、スペースを消すために距離を詰めるべきなのだ。
これらはフットボールの基本だ。監督が予めイメージしておくプレーのイメージとは何の関係もなく、むしろ試合の中で進化していくために状況ごとにどう対応していくかという話だ。イングランドが強敵と対戦する際の問題点を解決するには4-4-2を捨てて4-5-1でプレーすべき、などと提案するのは危険なまでに短絡的だ。
仮にブラジルでのワールドカップが明日開幕するとして、金曜に先発した面々で大会に優勝できるだろうか?答えはもちろんノーだ。
ポジティブな前進は勿論認識すべきではあるが、どんな励みの兆しも、こうしたリアリズムでバランスを取る必要があるだろう。
トム・クレバリを見れば、イングランドには国際的に良いレベルに達するポテンシャルのある選手がいると考えることができる。ジャック・ウィルシャーの早期の復帰は望めないが、彼には海外のスターと同様のテクニックが備わっている。そしてアレックス・オックスレイド=チェンバレンが、将来に希望をもたらす、この際立った若き才能のトリオを完成させる。
しかし、イングランドもこの3人だけで成り立つわけではない。スペインやイタリア、南米の強豪と真剣勝負の場で対等に戦うには、2014年までに同様に高いクオリティを持つ10人のフィールド・プレーヤーが必要なのだ。
私はこの2年でイングランドがその域に達することができると信じて疑わないし、モルドバのような相手に完勝することは、モラルと自信の確立につながる。
しかしながら、より手強い相手と渡り合っていくには、新たな戦術に頼るだけでなく、選手自身を育てていく必要があるのだ。
++++
たしかにこのモルドバ戦後の楽観ムードは過剰な印象で、ユーロでのイタリア戦の明確な技術面での差はボールの保持率にもシュート数にも表れていたはずだった。ただ、チェルシーが気合と根性の堅守でチャンピオンズリーグを勝ち取った余韻とホジソンに与えられた準備期間の短さもあり、それらを深刻に反芻する流れも起きてはいなかった。
このハンセンの見解は極めて当たり前というか、基本的なことではあるのだけど、そのくらいユーロに望んだイングランドは「堅かった」。時間を与えられたホジソンの下で、この先代表がどう変わっていくは確かに楽しみではあるが、今回のグループHはイングランドの他は、モンテネグロ、ポーランド、サンマリノ、ウクライナ、モルドバ。指摘通りに予選はスムーズに行ってしまう気もするし、イタリア戦のような「学習」の機会が少ないと、応用の利かないチームのままブラジル大会に臨んでしまう可能性も無くもない。
Thursday, August 30, 2012
移籍市場最終日のプレミア各クラブに必要なもの
毎年恒例、8月末の移籍市場締め切りは、スカイをはじめとする各メディアの煽りもあって、常にドタバタ感と緊迫感の溢れる夜となる。締め切りは現地時間で金曜の23時。ドラマがどう動くか、現在の舞台設定を、BBCのフットボール主幹であるフィル・マクナルティ氏がまとめている。
※記事は29日の17時(日本時間の30日1時)にアップされたもの
++(以下、要訳)++
移籍市場のウィンドウが閉じるのは金曜の夜、ここまで出ている兆候は、各クラブの1月までの戦力を整える8月の大仕事が、全て狂乱の結末へと向かうものとなっている。
戦力補強には夏じゅう時間があったはずだが、プレミアリーグでの違いをもたらす戦力補強のために、いつもの駆け込みの買い物が行われることになるだろう。
あなたのチームの補強ポイントはどこだろうか?あなたなら誰を補強するだろうか?
アーセナル
アーセン・ヴェンゲルはロビン・ファン・ペルシとアレックス・ソングの退団、ルーカス・ポドルスキとオリヴィエ・ジルー、そして既に際立っているサンティ・カソルラの補強でひとまず変革のドアは閉じている。しかし、テオ・ウォルコットに退団の可能性が出てきたことで、仕事がまだ残ってしまった。
アストン・ヴィラ
新監督のポール・ランバートはアレックス・マクリーシュを引き継いだ後も限られた予算でやり繰りしているが、開幕の2試合を経て明らかになったのは、カギとなるポジションに補強が必要だということだ。プライオリティは、ダレン・ベントのゴールをアシストできる選手であり、それゆえゲンクのストライカー、クリスティアン・ベンテケの獲得に動いている。もうひとつは左サイドバックであり、ミドルスブラからジョー・ベネットを獲得したところだ。
チェルシー
エディン・アザール、オスカル、ヴィクター・モーゼスを獲得して、チェルシーの夏の豪勢な買い物はもう終わっている。ロベルト・ディ・マテオは金曜の夜にまだ攻撃の駒を揃えたいと思うだろうか?
エヴァートン
エヴァートンは、スティーブン・ピーナール、スティーブン・ネイスミス、そしてケヴィン・ミララスを獲得したが、上場のスタートを切って、デイビッド・モイーズはもう少し補強を進めたいと考えているようだ。中盤と攻撃の補強をしたいと考えていることから、リバプールのチャーリー・アダムやダンディー・ユナイテッドのストライカーであるジョニー・ラッセルの名前が挙がっている。マイケル・オーウェンはエヴァートンからの電話を待っていると言われるが、その兆候は今のところない。
フラム
フラムがトッテナムへと向かったムサ・デンベレの代役を見つけねばならないのは明らかで、サンダーランドのマーティン・オニールは、キーラン・リチャードソンへのオファーを受け入れたことを明らかにした。また、リヨンのバフェティンビ・ゴミスを650万ポンドで獲得するという話も出ているようだ。
リバプール
ブレンダン・ロジャースは戦力を追加するチャンスを得られるなら、非常に忙しくなるだろう。チェルシーのダニエル・スタルリッジとアーセナルのテオ・ウォルコットの名前は既に挙がっているし、ファンとしても補強をして欲しいと思っているエリアだ。前線にゴールの脅威がもっと欲しいのだ。
マンチェスター・シティ
シティのメイン・ターゲットは、エディン・アザール、ロビン・ファン・ペルシ、ハヴィ・マルティネス、そしてダニエレ・デ・ロッシだったが、誰一人やってこなかった。アブ・ダビのオーナーたちとロベルト・マンチーニには十分な資金があるが、移籍金やサラリーでもうひと押ししなかったことの現われだ。
センターバック、中盤中央、そしてアダム・ジョンソンが出て行ったウィングが、マンチーニが埋めたいと考えている穴だろう。ティーンエイジャーのセルビア人、マティヤ・ナスタシッチは守備に固さをもたらすだろうし、テオ・ウォルコットのアーセナルとの契約延長交渉が上手くいっていないことは関心をひくかもしれない。スコット・シンクレアをスウォンジーから連れてくる交渉は依然生きている。
マンチェスター・ユナイテッド
サー・アレックス・ファーガソンは、アーセナルからロビン・ファン・ペルシを補強して前線に大きな買い物をしたが、香川真司も既に中盤で存在感を出している。それでも、ファンは依然として中盤の発電所が欠けていると感じているだろう。多くのサポーターが、土曜のオールド・トラフォードでも印象に残るプレーをしていたフラムのムサ・デンベレの獲得でスパーズに競り勝てていれば、と望んでいた。しかしながら、ファーガソンは今の戦力で満足なのだろう。
ニューカッスル・ユナイテッド
今のところリバプールの元ニューカッスルのストライカー、アンディ・キャロルと、リールのディフェンダーであるマテュー・デビュッシへの関心に進展はなく、アラン・パーデューは昨季5位に導いた現有の戦力で満足しているのだろう。
ノリッジ・シティ
何とかQPRに勝って今季最初のポイントを得たノリッジだが、クリス・ヒュートンの大きな動きはもう終わっていると思われる。
クイーンズ・パーク・レンジャーズ
監督のマーク・ヒューズはプライオリティがどこにあるかを隠しはしなかった。開幕のスウォンジー戦で0-5で敗れると、トッテナムのマイケル・ドーソン、レアル・マドリッドのリカルド・カルヴァーリョの獲得に動いた。今のところそれは実を結んでいないが、驚きのインター・ミランのジュリオ・セザル獲得の動きは、ロバート・グリーンにプレッシャーをかけることになるだろう。資金は使うためにあり、すべきは補強。移籍市場の終盤に多忙に動くであろうQPRにご注目を。
サウサンプトン
数多くのセインツのファンが同じことを求めている。明らかに守備の強化が急務だと感じているのだ。
ストーク・シティ
監督のトニー・ピューリスは、スウィンドン・タウンとのリーグカップの試合に向けたマッチデー・プログラムで、自身の興奮を伝えている。「他にも選手たちを連れてこようと動いているところで、その方向で行けるなら忙しくなる」。
トッテナムのトム・ハドルストンは明瞭なターゲットで、彼のチームメイトであるマイケル・ドーソンにも注目している。また、ブラックバーンのスティーブ・ゾンジもレーダーにかかっているようだ。ピューリスは、公にマイケル・オーウェンを賞賛しているが、ストークが彼にプレミアで最後の輝きを見せる機会を与えられるだろうか?
サンダーランド
ウォルヴズのスティーブン・フレッチャー獲得とイングランド代表ウィンガーのアダム・ジョンソン獲得で大きな仕事は終わっているが、忙しい夏の終わりのスタジアム・オブ・ライトに他に新戦力到来の可能性はないだろうか?マーティン・オニールは、トッテナムのマイケル・ドーソンとフラムのクリント・デンプシーに大きな興味を持っている。それらの話をまとめられれば、チーム変革のための完璧なカルテットの補強となるだろう。
スウォンジー・シティ
新監督ミカエル・ラウドルップの下開幕2試合を無失点で乗り切ったが、マンチェスター・シティから620万ポンドを提示されたスコット・シンクレアの移籍が再び動き出すか、流動的な状況だ。クルーのキャプテンであるアシュリー・ウェストウッドの獲得に動いてもいるようだが、クラブが幸福感に包まれる今は、シンクレアの未来が明確になって欲しいところだろう。
トッテナム
ここからが本番だ。前任のハリー・レドナップ時代、トッテナムは伝統的に締切日に多忙を極めていた。しかし、ルカ・モドリッチをレアル・マドリッドに売却した今、会長のダニエル・リヴィが本気を出す狂乱の終盤には要注目だ。
ムサ・デンベレを獲得し、フランス代表GKのウーゴ・ロリスもターゲットだが、スパーズは筆頭ターゲットのホアン・モウチーニョをまだあきらめてはいない。マルセイユのロイク・レミーの名も挙がっており、CSKAモスクワのアラン・ザゴエフとシャフタール・ドネツクのウィリアンも視野に入っている。放出の方も要注目で、スパーズ・ファンは心の準備をすべきだろう。
ウェスト・ブロミッジ・アルビオン
新監督のスティーブ・クラークの下、開幕2試合で4ポイントを獲得し、ホーソンズではすべてが穏やかに見えるが、クラークはディフェンダーの層を厚くしたいと考えている。ブラックバーンのマーティン・オルソンを狙っていると言われ、エヴァートンも狙うFCコペンハーゲンの左サイドバック、ブライアン・オヴィエドも追っている。
ウェストハム・ユナイテッド
サム・アラーダイスは多くの案件をまとめているが、リバプールのアンディ・キャロルについては行き詰ってしまった。もう1人のアンフィールドのスターで、元ハマーズのジョー・コールについては可能性がある。アラーダイスは可能な案件は積極的に動くだけに、終盤の動きからは目が離せない。
ウィガン・アスレティック
チェルシーにヴィクター・モーゼスを引き抜かれたのは痛手だが、監督のロベルト・マルティネスの手元には900万ポンドの資金が残っている。とはいえ、ファンは新戦力の補強については楽観的な様子だ。
++++
ということで、普段は賞味期限の長い記事を選ぶように心がけてるつもりながら、今回は極めて短いものをピックアップしてしまった。それでも、これがアップされてからも状況は動いていて、夜が明ければすべて決まっているのは分かっていても、ついつい追ってしまう。今年の夏はヘリコプターで飛ぶ選手は出てくるだろうか?
※記事は29日の17時(日本時間の30日1時)にアップされたもの
++(以下、要訳)++
移籍市場のウィンドウが閉じるのは金曜の夜、ここまで出ている兆候は、各クラブの1月までの戦力を整える8月の大仕事が、全て狂乱の結末へと向かうものとなっている。
戦力補強には夏じゅう時間があったはずだが、プレミアリーグでの違いをもたらす戦力補強のために、いつもの駆け込みの買い物が行われることになるだろう。
あなたのチームの補強ポイントはどこだろうか?あなたなら誰を補強するだろうか?
アーセナル
アーセン・ヴェンゲルはロビン・ファン・ペルシとアレックス・ソングの退団、ルーカス・ポドルスキとオリヴィエ・ジルー、そして既に際立っているサンティ・カソルラの補強でひとまず変革のドアは閉じている。しかし、テオ・ウォルコットに退団の可能性が出てきたことで、仕事がまだ残ってしまった。
アストン・ヴィラ
新監督のポール・ランバートはアレックス・マクリーシュを引き継いだ後も限られた予算でやり繰りしているが、開幕の2試合を経て明らかになったのは、カギとなるポジションに補強が必要だということだ。プライオリティは、ダレン・ベントのゴールをアシストできる選手であり、それゆえゲンクのストライカー、クリスティアン・ベンテケの獲得に動いている。もうひとつは左サイドバックであり、ミドルスブラからジョー・ベネットを獲得したところだ。
チェルシー
エディン・アザール、オスカル、ヴィクター・モーゼスを獲得して、チェルシーの夏の豪勢な買い物はもう終わっている。ロベルト・ディ・マテオは金曜の夜にまだ攻撃の駒を揃えたいと思うだろうか?
エヴァートン
エヴァートンは、スティーブン・ピーナール、スティーブン・ネイスミス、そしてケヴィン・ミララスを獲得したが、上場のスタートを切って、デイビッド・モイーズはもう少し補強を進めたいと考えているようだ。中盤と攻撃の補強をしたいと考えていることから、リバプールのチャーリー・アダムやダンディー・ユナイテッドのストライカーであるジョニー・ラッセルの名前が挙がっている。マイケル・オーウェンはエヴァートンからの電話を待っていると言われるが、その兆候は今のところない。
フラム
フラムがトッテナムへと向かったムサ・デンベレの代役を見つけねばならないのは明らかで、サンダーランドのマーティン・オニールは、キーラン・リチャードソンへのオファーを受け入れたことを明らかにした。また、リヨンのバフェティンビ・ゴミスを650万ポンドで獲得するという話も出ているようだ。
リバプール
ブレンダン・ロジャースは戦力を追加するチャンスを得られるなら、非常に忙しくなるだろう。チェルシーのダニエル・スタルリッジとアーセナルのテオ・ウォルコットの名前は既に挙がっているし、ファンとしても補強をして欲しいと思っているエリアだ。前線にゴールの脅威がもっと欲しいのだ。
マンチェスター・シティ
シティのメイン・ターゲットは、エディン・アザール、ロビン・ファン・ペルシ、ハヴィ・マルティネス、そしてダニエレ・デ・ロッシだったが、誰一人やってこなかった。アブ・ダビのオーナーたちとロベルト・マンチーニには十分な資金があるが、移籍金やサラリーでもうひと押ししなかったことの現われだ。
センターバック、中盤中央、そしてアダム・ジョンソンが出て行ったウィングが、マンチーニが埋めたいと考えている穴だろう。ティーンエイジャーのセルビア人、マティヤ・ナスタシッチは守備に固さをもたらすだろうし、テオ・ウォルコットのアーセナルとの契約延長交渉が上手くいっていないことは関心をひくかもしれない。スコット・シンクレアをスウォンジーから連れてくる交渉は依然生きている。
マンチェスター・ユナイテッド
サー・アレックス・ファーガソンは、アーセナルからロビン・ファン・ペルシを補強して前線に大きな買い物をしたが、香川真司も既に中盤で存在感を出している。それでも、ファンは依然として中盤の発電所が欠けていると感じているだろう。多くのサポーターが、土曜のオールド・トラフォードでも印象に残るプレーをしていたフラムのムサ・デンベレの獲得でスパーズに競り勝てていれば、と望んでいた。しかしながら、ファーガソンは今の戦力で満足なのだろう。
ニューカッスル・ユナイテッド
今のところリバプールの元ニューカッスルのストライカー、アンディ・キャロルと、リールのディフェンダーであるマテュー・デビュッシへの関心に進展はなく、アラン・パーデューは昨季5位に導いた現有の戦力で満足しているのだろう。
ノリッジ・シティ
何とかQPRに勝って今季最初のポイントを得たノリッジだが、クリス・ヒュートンの大きな動きはもう終わっていると思われる。
クイーンズ・パーク・レンジャーズ
監督のマーク・ヒューズはプライオリティがどこにあるかを隠しはしなかった。開幕のスウォンジー戦で0-5で敗れると、トッテナムのマイケル・ドーソン、レアル・マドリッドのリカルド・カルヴァーリョの獲得に動いた。今のところそれは実を結んでいないが、驚きのインター・ミランのジュリオ・セザル獲得の動きは、ロバート・グリーンにプレッシャーをかけることになるだろう。資金は使うためにあり、すべきは補強。移籍市場の終盤に多忙に動くであろうQPRにご注目を。
サウサンプトン
数多くのセインツのファンが同じことを求めている。明らかに守備の強化が急務だと感じているのだ。
ストーク・シティ
監督のトニー・ピューリスは、スウィンドン・タウンとのリーグカップの試合に向けたマッチデー・プログラムで、自身の興奮を伝えている。「他にも選手たちを連れてこようと動いているところで、その方向で行けるなら忙しくなる」。
トッテナムのトム・ハドルストンは明瞭なターゲットで、彼のチームメイトであるマイケル・ドーソンにも注目している。また、ブラックバーンのスティーブ・ゾンジもレーダーにかかっているようだ。ピューリスは、公にマイケル・オーウェンを賞賛しているが、ストークが彼にプレミアで最後の輝きを見せる機会を与えられるだろうか?
サンダーランド
ウォルヴズのスティーブン・フレッチャー獲得とイングランド代表ウィンガーのアダム・ジョンソン獲得で大きな仕事は終わっているが、忙しい夏の終わりのスタジアム・オブ・ライトに他に新戦力到来の可能性はないだろうか?マーティン・オニールは、トッテナムのマイケル・ドーソンとフラムのクリント・デンプシーに大きな興味を持っている。それらの話をまとめられれば、チーム変革のための完璧なカルテットの補強となるだろう。
スウォンジー・シティ
新監督ミカエル・ラウドルップの下開幕2試合を無失点で乗り切ったが、マンチェスター・シティから620万ポンドを提示されたスコット・シンクレアの移籍が再び動き出すか、流動的な状況だ。クルーのキャプテンであるアシュリー・ウェストウッドの獲得に動いてもいるようだが、クラブが幸福感に包まれる今は、シンクレアの未来が明確になって欲しいところだろう。
トッテナム
ここからが本番だ。前任のハリー・レドナップ時代、トッテナムは伝統的に締切日に多忙を極めていた。しかし、ルカ・モドリッチをレアル・マドリッドに売却した今、会長のダニエル・リヴィが本気を出す狂乱の終盤には要注目だ。
ムサ・デンベレを獲得し、フランス代表GKのウーゴ・ロリスもターゲットだが、スパーズは筆頭ターゲットのホアン・モウチーニョをまだあきらめてはいない。マルセイユのロイク・レミーの名も挙がっており、CSKAモスクワのアラン・ザゴエフとシャフタール・ドネツクのウィリアンも視野に入っている。放出の方も要注目で、スパーズ・ファンは心の準備をすべきだろう。
ウェスト・ブロミッジ・アルビオン
新監督のスティーブ・クラークの下、開幕2試合で4ポイントを獲得し、ホーソンズではすべてが穏やかに見えるが、クラークはディフェンダーの層を厚くしたいと考えている。ブラックバーンのマーティン・オルソンを狙っていると言われ、エヴァートンも狙うFCコペンハーゲンの左サイドバック、ブライアン・オヴィエドも追っている。
ウェストハム・ユナイテッド
サム・アラーダイスは多くの案件をまとめているが、リバプールのアンディ・キャロルについては行き詰ってしまった。もう1人のアンフィールドのスターで、元ハマーズのジョー・コールについては可能性がある。アラーダイスは可能な案件は積極的に動くだけに、終盤の動きからは目が離せない。
ウィガン・アスレティック
チェルシーにヴィクター・モーゼスを引き抜かれたのは痛手だが、監督のロベルト・マルティネスの手元には900万ポンドの資金が残っている。とはいえ、ファンは新戦力の補強については楽観的な様子だ。
++++
ということで、普段は賞味期限の長い記事を選ぶように心がけてるつもりながら、今回は極めて短いものをピックアップしてしまった。それでも、これがアップされてからも状況は動いていて、夜が明ければすべて決まっているのは分かっていても、ついつい追ってしまう。今年の夏はヘリコプターで飛ぶ選手は出てくるだろうか?
Wednesday, August 29, 2012
ミカエル・ラウドルップが魅せるエレガントなスウォンジー劇場
昇格組ながらバルセロナを彷彿させるパスサッカーで昨季のプレミアで躍進したものの、その結果、礎を築いた監督のブレンダン・ロジャースをリバプールに引き抜かれたスウォンジー・シティ。その監督の座を継いだのは、かつてユヴェントスやバルセロナ、レアル・マドリッドで活躍し、後にはヴィッセル神戸でもプレーしたミカエル・ラウドルップ。
監督としても、ブレンビー、ヘタフェ、スパルタク・モスクワ、マジョルカとキャリアを積み上げてきていたが、次に選択したのがこのスウォンジー・シティだった。就任時のインタビューでも「クラブのことは良く知らなかったから事前に調べた」と言っていた一方で、「フィロソフィーに触れて、是非やりたいと思った」との判断もしていた。
主力だったギルフィ・シグルズソンやジョー・アレンの退団もあって、残留に向けて苦戦が予想されたものの、フタを開けてみればいきなりの開幕2連勝。この舞台裏を開幕2戦目のウェストハム戦を取材した「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター記者が探った。
++(以下、要訳)++
監督としても、ブレンビー、ヘタフェ、スパルタク・モスクワ、マジョルカとキャリアを積み上げてきていたが、次に選択したのがこのスウォンジー・シティだった。就任時のインタビューでも「クラブのことは良く知らなかったから事前に調べた」と言っていた一方で、「フィロソフィーに触れて、是非やりたいと思った」との判断もしていた。
主力だったギルフィ・シグルズソンやジョー・アレンの退団もあって、残留に向けて苦戦が予想されたものの、フタを開けてみればいきなりの開幕2連勝。この舞台裏を開幕2戦目のウェストハム戦を取材した「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター記者が探った。
++(以下、要訳)++
歓喜に満ちた土曜日のリバティー・スタジアムの前半、ルーズボールがスウォンジーのベンチへとラインを割って向かって行くと、我々にはハッとさせられる瞬間が訪れた。
ボールを簡単にコントロールして少々弄ぶと、巧みにスローインのためにボールを取りに来たケヴィン・ノーランに蹴り返した。試合をテンポ良く続けさせたこの見慣れた顔はミカエル・ラウドルップで、その華やかな現役生活で彼をアイドルたらしめた、かつてのエレガントなタッチを見せつけた。
偉大なフットボーラーは、しばしば監督としては失敗しがちだ。自分では簡単にプレーできてしまうために、自分よりも才能に恵まれない選手たちとの仕事への我慢を欠いてしまうからだ。それでも、ラウドルップには落ち着きと穏やかさ、知性がある。彼の父親にも監督経験があることは、彼がこれだけスムーズにスウォンジーに馴染んだことの説明になるだろう。
彼の小さな存在感は、プレミアリーグにより多くの星屑をバラ撒くことになるだろう。彼は自身の持つ尊厳も垣間見せた。ノーランがスローインを急ぐ姿を目にすれば、ボールをそのまま流れさせてプレーを遅らせることもできたが、それはこのデンマーク人のスタイルではないのだ。
ボールを簡単にコントロールして少々弄ぶと、巧みにスローインのためにボールを取りに来たケヴィン・ノーランに蹴り返した。試合をテンポ良く続けさせたこの見慣れた顔はミカエル・ラウドルップで、その華やかな現役生活で彼をアイドルたらしめた、かつてのエレガントなタッチを見せつけた。
偉大なフットボーラーは、しばしば監督としては失敗しがちだ。自分では簡単にプレーできてしまうために、自分よりも才能に恵まれない選手たちとの仕事への我慢を欠いてしまうからだ。それでも、ラウドルップには落ち着きと穏やかさ、知性がある。彼の父親にも監督経験があることは、彼がこれだけスムーズにスウォンジーに馴染んだことの説明になるだろう。
彼の小さな存在感は、プレミアリーグにより多くの星屑をバラ撒くことになるだろう。彼は自身の持つ尊厳も垣間見せた。ノーランがスローインを急ぐ姿を目にすれば、ボールをそのまま流れさせてプレーを遅らせることもできたが、それはこのデンマーク人のスタイルではないのだ。
いずれにしても、非常に統率が取れたスウォンジーに対してウェストハムはとにかく出来が悪く、スウォンジーがポゼッションを取り戻して、現在のプレミアリーグの順位表の頂点を周囲にアピールするのは時間の問題だった。これを10年前に想像するのは、よほどの妄想だったろう。
ラウドルップの就任前にも、スウォンジーではロベルト・マルティネス、パウロ・ソウザ、そしてブレンダン・ロジャースによって良い仕事が成されてきていた。ポジティブな原理原則が植え付けられてきていたのだ。後半のプレーのひとつは、そのままロジャースのスクラップブックにあるはずだ。44本のパスが2分間に渡ってつながれ、ウェイン・ルートリッジがゴールに向かって走るところを、ジョージ・マッカートニーがようやくスライディング・タックルで止めたのだ。
これを証明するのが開幕の5-0で圧勝したQPR戦で、ラウドルップはロジャースの戦術を微調整していた。中盤で喜んでパスを回すのは同様だったが、スウォンジーはより早いタイミングでギアを入れ、鋭さを増していたのだ。
彼らはジョー・アレンをリバプールに引き抜かれ、スティーブン・コールカーをスパーズに返し、スコット・シンクレアもマンチェスター・シティに狙われているが、ラウドルップは勢いが失われてはいないことを確信させた。監督は、ゲームプランの有効性や、移籍市場での成否、人身掌握術で評価されるが、ここには全ての要素が凝縮されていた。
まずは戦術。ロジャース時代のウィングのネイサン・ダイアーとシンクレアがライン沿いを突き進むケースが多かったのに対し、ラウドルップ下でのダイアーとルートリッジは中に切り込んでも来て、ミチュやダニー・グラハムの近くでプレーする。これが両サイドバックのアンヘル・ランヘルとニール・テイラーに上がってくるスペースをもたらすのだ。実際、2人は輝いた:ランヘルは先制ゴールを決め、テイラーもヤースケライネンに弾きだされたものの、良いシュートを放った。
ラウドルップの賢く選手を買う能力は、ミチュの影響力あるプレーからも見てとれた。200万ポンドでやってきた彼は、リオン・ブリットンとダニー・グラハム、中盤と攻撃のリンクマンとして機能し、スウォンジーに一層の流動性をもたらした。何度も自陣に引いてボールを受け、前を向いてダイアーにスルーパスを出すと、これがランヘルの先制ゴールにつながった。また、ジェームス・コリンズの無茶なバックパスをかっさらうと2試合で3つ目となるゴールを決め、得点力があるところも見せている。
ラウドルップはプランBの必要性も説いていたが、時折アシュリー・ウィリアムズがグラハムへとロングボールを繰り出していた。昨季であれば、スウォンジーのセンターバックは左右にボールを回してダイアーにボールをつないでいただろうが、こうしたプレーはよりダイレクトだ。スウォンジーはラウドルップの下で様々なスタイルを有効に取り入れていっている。
選手たちはすぐにラウドルップを監督として認め、支えている。ピッチを華麗に舞った最も有能なフットボーラーとしての名声も理由のひとつだろう。ウェストハムの選手同士が衝突したとき、その時間を活かしてラウドルップはテイラーを呼んで静かに指示を与えていた。監督に惹きつけられているテイラーの表情が、いかにこの新監督がドレッシングルームで尊敬を集めているかを物語っている。彼が練習で5対5に加わる時などは、特別な瞬間なのだろう。
柔らかな口調は、些細なことで騒ぎ立てるスタイルとは一線を画するが、それでもハーフタイムにはこう指示をしていた。「ウチは2-0でリードしている。向こう(ウェストハム)が攻めてきたのはどこだ?セットプレーだ。だからエリアの近くやサイドでファウルはするな」。ハーフタイム後のスウォンジーの守備はより堅実になっていた。決して高さがある方でもフィジカルで勝負するタイプでもないが、スウォンジーは明らかにセットプレー時の守備について、ラウドルップのアシスタントであるエリック・ラーセンの特訓を受けていた。
選手時代同様、ラウドルップはほとんど手立てを誤ることはない。
抜け目ない会長のヒュー・ジェンキンスの勧めもあって、クラブのレジェンドであるアラン・カーティスのクラブでの役割を維持するだけでなく拡大した。こうして新たにやってきた自分がクラブの理解を早々と深めると同時に、スウォンジーのサポーターたちを喜ばせた。グラハムが3点目を決めると、ファンは完全にパーティーの雰囲気になった。
ラウドルップは「特にファンにとっては、フットボールとは夢であり感情そのものだ。しかし、ピッチを含めてこちら側にいる人間にとっては、そこに感情はあるにせよ、夢を見ているわけにはいかない。現実を生きなきゃいけないんだ。月曜になれば、次の相手、バーンズリーのことを考えるんだよ」と語った。ラウドルップがこうして監督としての能力に磨きをかけ続けるならば、その先にはバルセロナがあるかもしれない。彼は見るからにスウォンジーでの生活を楽しんでいるが、その卓越した腕前を見せ続ければ、活躍の場は自ずとより緑の生い茂った場へと移っていくだろう。ラウドルップは穏やかな男で過去の栄光で威張るようなことはしないが、それらを避けることはできない。
ウェストハム戦のマッチデー・プログラムでQPR戦の勝利を振り返り、ラウドルップは「5-0はスペインでの自分を象徴するスコアラインで、俺には皮肉だ」と記した。バルセロナではレアル・マドリッドを5-0で下した試合の中心選手だった。そして、そのクラシコの反対側へと移った後、ラウドルップはレアルがバルセロナを5-0で粉砕するのを助けた。
「ヴァレンシアで小さな息子を連れた父親に出会った時のことをいつも思い出すんだ。その父親が、俺が誰か知っているか息子に聞いたんだ。息子は父親を見て嫌な顔をすると、俺の名を言うこともなく『5-0、5-0』って答えたんだ」。今のリバティー・スタジアムでは、確実に誰もが彼の名前を口にしているはずだ。
++++
自分が海外フットボール的に物心がついた頃には、ラウドルップはレアルでイヴァン・サモラーノとプレーしてた(NHK-BSで放送があった時代)けど、そのラウドルップが日本に来たときには随分驚いた。そんな勢いで、次にビッグクラブを率いるであろう前には、日本でも監督やってみて欲しいよな。
それにしても監督のロジャースだけでなく、主力も次々と抜かれてもこうして前評判をひっくり返すんだから面白い。前半戦で勢いがある昇格組というと、終盤に失速するケースが多くて(ハル・シティ、ブラックプール然り)、実際昨シーズンのスウォンジーも終盤は失点が増えて不安定ではあった。一巡目を乗り切ったとして、後半戦どうなるか、そこで記事でウィンター記者も触れている「多様性」が効いてくれば良いのだけど。
オマケ:開幕戦で大勝した後の記者座談会。
ここでは、この先スウォンジーには「雨」の時期がやってくるとの見解も。(他にもスコット・シンクレアがシティに行く意味が分からんとか色々・・・。)
ラウドルップの就任前にも、スウォンジーではロベルト・マルティネス、パウロ・ソウザ、そしてブレンダン・ロジャースによって良い仕事が成されてきていた。ポジティブな原理原則が植え付けられてきていたのだ。後半のプレーのひとつは、そのままロジャースのスクラップブックにあるはずだ。44本のパスが2分間に渡ってつながれ、ウェイン・ルートリッジがゴールに向かって走るところを、ジョージ・マッカートニーがようやくスライディング・タックルで止めたのだ。
これを証明するのが開幕の5-0で圧勝したQPR戦で、ラウドルップはロジャースの戦術を微調整していた。中盤で喜んでパスを回すのは同様だったが、スウォンジーはより早いタイミングでギアを入れ、鋭さを増していたのだ。
彼らはジョー・アレンをリバプールに引き抜かれ、スティーブン・コールカーをスパーズに返し、スコット・シンクレアもマンチェスター・シティに狙われているが、ラウドルップは勢いが失われてはいないことを確信させた。監督は、ゲームプランの有効性や、移籍市場での成否、人身掌握術で評価されるが、ここには全ての要素が凝縮されていた。
まずは戦術。ロジャース時代のウィングのネイサン・ダイアーとシンクレアがライン沿いを突き進むケースが多かったのに対し、ラウドルップ下でのダイアーとルートリッジは中に切り込んでも来て、ミチュやダニー・グラハムの近くでプレーする。これが両サイドバックのアンヘル・ランヘルとニール・テイラーに上がってくるスペースをもたらすのだ。実際、2人は輝いた:ランヘルは先制ゴールを決め、テイラーもヤースケライネンに弾きだされたものの、良いシュートを放った。
ラウドルップの賢く選手を買う能力は、ミチュの影響力あるプレーからも見てとれた。200万ポンドでやってきた彼は、リオン・ブリットンとダニー・グラハム、中盤と攻撃のリンクマンとして機能し、スウォンジーに一層の流動性をもたらした。何度も自陣に引いてボールを受け、前を向いてダイアーにスルーパスを出すと、これがランヘルの先制ゴールにつながった。また、ジェームス・コリンズの無茶なバックパスをかっさらうと2試合で3つ目となるゴールを決め、得点力があるところも見せている。
ラウドルップはプランBの必要性も説いていたが、時折アシュリー・ウィリアムズがグラハムへとロングボールを繰り出していた。昨季であれば、スウォンジーのセンターバックは左右にボールを回してダイアーにボールをつないでいただろうが、こうしたプレーはよりダイレクトだ。スウォンジーはラウドルップの下で様々なスタイルを有効に取り入れていっている。
選手たちはすぐにラウドルップを監督として認め、支えている。ピッチを華麗に舞った最も有能なフットボーラーとしての名声も理由のひとつだろう。ウェストハムの選手同士が衝突したとき、その時間を活かしてラウドルップはテイラーを呼んで静かに指示を与えていた。監督に惹きつけられているテイラーの表情が、いかにこの新監督がドレッシングルームで尊敬を集めているかを物語っている。彼が練習で5対5に加わる時などは、特別な瞬間なのだろう。
柔らかな口調は、些細なことで騒ぎ立てるスタイルとは一線を画するが、それでもハーフタイムにはこう指示をしていた。「ウチは2-0でリードしている。向こう(ウェストハム)が攻めてきたのはどこだ?セットプレーだ。だからエリアの近くやサイドでファウルはするな」。ハーフタイム後のスウォンジーの守備はより堅実になっていた。決して高さがある方でもフィジカルで勝負するタイプでもないが、スウォンジーは明らかにセットプレー時の守備について、ラウドルップのアシスタントであるエリック・ラーセンの特訓を受けていた。
選手時代同様、ラウドルップはほとんど手立てを誤ることはない。
抜け目ない会長のヒュー・ジェンキンスの勧めもあって、クラブのレジェンドであるアラン・カーティスのクラブでの役割を維持するだけでなく拡大した。こうして新たにやってきた自分がクラブの理解を早々と深めると同時に、スウォンジーのサポーターたちを喜ばせた。グラハムが3点目を決めると、ファンは完全にパーティーの雰囲気になった。
ラウドルップは「特にファンにとっては、フットボールとは夢であり感情そのものだ。しかし、ピッチを含めてこちら側にいる人間にとっては、そこに感情はあるにせよ、夢を見ているわけにはいかない。現実を生きなきゃいけないんだ。月曜になれば、次の相手、バーンズリーのことを考えるんだよ」と語った。ラウドルップがこうして監督としての能力に磨きをかけ続けるならば、その先にはバルセロナがあるかもしれない。彼は見るからにスウォンジーでの生活を楽しんでいるが、その卓越した腕前を見せ続ければ、活躍の場は自ずとより緑の生い茂った場へと移っていくだろう。ラウドルップは穏やかな男で過去の栄光で威張るようなことはしないが、それらを避けることはできない。
ウェストハム戦のマッチデー・プログラムでQPR戦の勝利を振り返り、ラウドルップは「5-0はスペインでの自分を象徴するスコアラインで、俺には皮肉だ」と記した。バルセロナではレアル・マドリッドを5-0で下した試合の中心選手だった。そして、そのクラシコの反対側へと移った後、ラウドルップはレアルがバルセロナを5-0で粉砕するのを助けた。
「ヴァレンシアで小さな息子を連れた父親に出会った時のことをいつも思い出すんだ。その父親が、俺が誰か知っているか息子に聞いたんだ。息子は父親を見て嫌な顔をすると、俺の名を言うこともなく『5-0、5-0』って答えたんだ」。今のリバティー・スタジアムでは、確実に誰もが彼の名前を口にしているはずだ。
++++
自分が海外フットボール的に物心がついた頃には、ラウドルップはレアルでイヴァン・サモラーノとプレーしてた(NHK-BSで放送があった時代)けど、そのラウドルップが日本に来たときには随分驚いた。そんな勢いで、次にビッグクラブを率いるであろう前には、日本でも監督やってみて欲しいよな。
それにしても監督のロジャースだけでなく、主力も次々と抜かれてもこうして前評判をひっくり返すんだから面白い。前半戦で勢いがある昇格組というと、終盤に失速するケースが多くて(ハル・シティ、ブラックプール然り)、実際昨シーズンのスウォンジーも終盤は失点が増えて不安定ではあった。一巡目を乗り切ったとして、後半戦どうなるか、そこで記事でウィンター記者も触れている「多様性」が効いてくれば良いのだけど。
オマケ:開幕戦で大勝した後の記者座談会。
Saturday, August 18, 2012
プレミアリーグ新シーズン、各クラブの展望
いよいよ開幕するプレミアリーグの2012-13シーズン。今年はユーロと五輪もあってオフシーズンが少々長めだったこともあって、随分待ち遠しい気分だった。
この時期には、各チームごとの夏の補強の動きやプレシーズンでの動向を含めた詳細なプレビューがクラブごとに出るものの、それをひとつずつ紹介するのは大変。コンパクトにまとまったもの、かつ移籍関係ばかりに特化しないものがあまり出て来ず、ここで選択したのは「BBC」によるもの。
BBCの各クラブの番記者やラジオ番組担当者が、オフの動きとシーズンの展望を順々に語っている。
++(以下、要訳)++
新たな9ヶ月間の興奮、ドラマ、論争、歓喜と失望への準備はいいか?プレミアリーグが帰ってきた。
王者マンチェスター・シティは、ライバルのユナイテッドの挑戦を抑えることができるだろうか? チェルシー、トッテナム、リバプールは皆監督を変え、昨季からの向上を図っている。アーセン・ヴェンゲルはアーセナルでのタイトル挑戦にどう取り組むのか?
昇格してきたサウサンプトン、レディング、ウェストハムの目標は残留だが、同様に苦しむことも予想されるノリッジ、スウォンジー、ウェストブロムはいずれも新監督を迎えている。
開幕を前にBBCスポーツでは、各クラブの準備状況を分析し、新シーズンに向けた各クラブのガイドとしてここにまとめた(アルファベット順)。
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アーセナル(イアン・ヒューズ氏)
アーセナルには厳しい教訓から学んだ様子が伺えた。
昨シーズンはセスク・ファブレガスとサミ・ナスリの代役を見つけられなかったことが、シーズンがロクに始まらないうちに崩壊してしまう原因となった。プレーヤー・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞したロビン・ファン・ペルシがマンチェスター・ユナイテッドへと移籍し、再び最高のタレントを失ったかもしれないが、今回は既に3人の代表選手 -ルーカス・ポドルスキ、オリヴィエ・ジルー、そして中盤のサンティ・カソルラ- を補強していた。
そして守備の脆さが昨季のリーグ49失点となって現れたが、元ガナーズのセンターバックであるスティーブ・ボウルドがその立て直しを担当し、ここにも手が打たれつつある。
加えて昨季をケガで棒に振ったジャック・ウィルシャーの復帰も見込まれ、昨季3位のフィニッシュよりも上に行ける、そして7年間の無冠時代に終止符が打てるという楽観できな見方も正当化できるのではないか。
アストン・ヴィラ(フィル・メイデン氏)
クラブ史上ワーストとなるホームの戦績となったアレックス・マクリーシュとの1年を経て、ファンはポール・ランバートの就任が、ヴィラ・パークに明らかに欠けていた興奮を再びもたらしてくれるのではないかと期待している。
ヴィラはマーティン・オニールの辞任以降、順位表の上位争いに加われずにおり、出費を削ってきているオーナーのランディ・ラーナーも、ランバートにクラブの威信回復を期待しているはずだ。
プレシーズンでも好調だったカリム・エル・アーマディは中盤のキーマンとなりそうで、マクリーシュ時代にボスマン・ルールで加入したブレット・ホルマンも得点力不足に泣いたヴィラの有効な攻撃のオプションだと証明するかもしれない。
チームの移り変わりにはもう1年かかるかもしれないが、ヴィラ・ファンは予算に限りはあれど、今回は将来の成功に導いてくれる監督が来たはず、と望んでいることだろう。
チェルシー(オーウェン・フィリップス氏)
今季は遂にフェルナンド・トーレスが真価を発揮する時になるのか?ディディエ・ドログバの退団とロメウ・ルカクのローン移籍は、ロベルト・ディ・マテオがそう考えていると思わせるものだ。このイタリア人監督はチャンピオンズリーグ制覇によってフルタイムのポジションを与えられたが、リーグ戦での不振は、今季のプレミアリーグで結果を出す重圧となっている。
プレシーズンの成績はお世辞にも良かったとは言えず、才能ある中盤の3人がいたとしても、実証済みの「ドログバ・モデル」からの転換には時間を要するだろう。新加入のオスカルやエディン・アザールがフアン・マタにどうフィットするかは分からないが、トーレスのワントップであれば、上手くハマるのではないか。
明確な右サイドバックがいないものの、チェルシーの守備は安定しているように見え、フランク・ランパードの安定した影響力と疲れ知らずのラミレスのエネルギーは、中盤の良い基盤になっている。トーレスにボールを供給するシステムの確立と、そのスタイルで早期に自信を深めることが、チェルシーの今季のチャンスのカギとなるだろう。
エヴァートン(イアン・ケネディ氏)
エヴァートンを順位表のあれだけ上に届かせたデイビッド・モイーズは、今回も高く評価されて然るべきだし、リバプールより上だったことは、誰もが忘れないだろう。
昨季もシーズンを良い形で終えたことを考えれば、目標は今シーズンをポジティブな形で始め、1月以降の基盤とすることだろう。 それが可能であれば、ヨーロッパの舞台での存在感も維持できるようになるはずだ。
ニキツァ・イェラビッチの獲得で、彼らは直感的な才能を持ち、ドローを勝利に変えることができる男を得た。彼にレンジャース時代のパートナーであるスティーブン・ネイスミスが加わるのは心強い限りだ。
また、スティーブン。ピーナールを完全移籍で再獲得したことも非常に重要で、今季もカップで手強いエヴァートンがソリッドなシーズンを送るだろう。
フラム(ジョン・スタントン氏)
影響力の大きかったキャプテンのダニー・マーフィーがブラックバーンへと去ったのは中盤のクリエイティブな面での穴となっているが、多くのサポーターの懸念は、攻撃の2人、クリント・デンプシーとムサ・デンベレの動向だ。
両選手ともクレイヴン・コテージを去ることが継続的に噂されていて、今シーズンも彼らが残るかどうかがフラムの野心にも大きく影響してくる。
監督のマルティン・ヨルは、励みになるフラムでの1年目を過ごし、 プレシーズンからも若手の登用を積極的に行っている。ケリム・フレイやアレックス・カカニクリッチ、メサといったウィングたちの成長が活力をもたらし、新加入のムラデン・ペトリッチはプレシーズンでもゴールを量産して、長らく変わり映えの無かったチームでも際立っている。
リバプール(イアン・ケネディ氏)
リバプールの今季の目標は、リーグでの戦いぶりを大きく改善することで、恐らくトップ4への復帰を狙っているはずだ。カップ戦での勝ち上がりには勇気づけられたが、プライオリティは常にリーグであるはずだ。
ブレンダン・ロジャースの下でリバプールのスタイルがどう発展して行くかの判断はまだ待たねばならないが、何人かのトップ選手たちの去就は不透明なままだ。ファビオ・ボリーニとルイス・スアレスのコンビがどう機能するかも興味深い。
ロジャースはスウォンジーに華麗なフットボールをもたらしたが、それをチャンスでの決定力と共に持ち込めれば(そしてポストに当てないこと)、 多くのチームがヨーロッパを目指して戦うとは言え、そこでリバプールが競い合えない理由は無い。
マンチェスター・シティ(イアン・チーズマン氏)
夢のシーズンをどう超えるか?
それがシティがやらねばならないことだが、ブルーズがヨーロッパの巨人へと進化して行くのならば、その偉業を繰り返しつつ、チャンピオンズリーグでも終盤まで勝ち残る必要があるだろう。
選手層がいかに強固なものかは既に証明したし、カルロス・テヴィスも非常に集中した態度で戻ってきた。ワールドクラスの選手が新たに加入したようなものだ。移籍市場の締切前に守備と中盤に何人か補強できれば、彼らが去年よりも甘く考えたりしなければ、今シーズンを彼らに賭けないのは難しいだろう。
今のシティのスタッフからは一体感が感じられるし、タイトルの非常に有力な候補だと思う。
マンチェスター・ユナイテッド(ビル・ライス氏)
マンチェスター・ユナイテッドは2006年以来初めての無冠に終わったが、プレミアリーグはライバルのマンチェスター・シティに得失点差で届かずに逃した。
ネマニャ・ヴィディッチもケガから復帰し、彼らは良いシーズンを送って20度目のリーグタイトルを獲得したいと願っているだろう。
新たにボルシア・ドルトムントから1,700万ポンドで獲得した香川真司は中盤から狡猾さと創造性、そしてゴールの脅威をもたらし、トム・クレバリとアンデルソンは彼らのキャリアを妨げてきたケガを今季こそは避けたいと考えるだろう。
その重役を背中で語る役割はいつも通りウェイン・ルーニーであり、 彼のゴールがプレミアリーグの制覇とチャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出をもたらすことが期待されている。
ニューカッスル(ラフル・シュリバスタバ氏)
ニューカッスルは昨季のニューカッスルのサプライズであり、セネガル人ストライカーのパピス・シセが1月にドイツのフライブルクから移籍して14試合で13ゴールを決めた昨季の破壊力を維持できるならば、マグパイズは再びヨーロッパの舞台を争うインパクトを残せるだろう。
監督のアラン・パーデューは、主力が引き抜きやケガも無く開幕を迎えることができて胸を撫で下ろしているだろう。そして、昨季の大半を負傷で棒に振ったディフェンダーのスティーブン・テイラーやウィングのシルヴァン・マルヴォーを使うこともできる。
しかしながら、新たに加わったのは将来を嘱望される若手が中心で、選手層の厚さは 懸念材料だ。ヨアン・カバイェやファブリシオ・コロッチーニ、チェイク・ティオテのような主力がケガで長期離脱することが起きれば、昨季の輝かしい進歩も中位争いへと姿を変えてしまうだろう。
ノリッジ・シティ(ロブ・バトラー氏)
ポール・ランバートのアストン・ヴィラへの流出がどれだけのノリッジに影響するかは予測が難しい。監督の座を引き継いだのはクリス・ヒュートンだが、彼はクラブの幹部の第一候補として信念をもって支えられている。彼の最初の任務は、12位で終えた素晴らしい昨季の中で唯一の難点だった守備の穴を塞ぐことだ。
この夏、もうひとつの特筆すべきニュースは、クラブの守護神ともいうべきキャプテンでチーム得点王のグラント・ホルトをキープできたことだ。イングランドの希望でもあるホルトはシーズンの終わりに移籍志願書を出し、昇格してくるウェストハムが興味を示したとも言われている。それでもホルトは心を変え、新たに3年契約を締結した。
カナリーズの主たる目標は今季も残留だろうが、ファンはヒュートンと共にウェンブリーを目指すことを歓迎するだろう。
クイーンズ・パーク・レンジャース(アンドリュー・ラウリー氏)
5月にやっとの思いで残留を果たすと、QPRは同じ状況に巻き込まれないように機敏に動いた。マーク・ヒューズは昨季の後半にもボビー・ザモラ、ジブリル・シセ、ネダム・オヌオハと補強したが、さらにロバート・グリーン、ライアン・ネルセン、パク・チソン、アンドリュー・ジョンソンを加えてチームに経験をもたらしている。
グリーンは退団したパディ・ケニーの位置にそのまま入るだろうし、パクがチームにもたらすものも興味深い。そして昨季欠いていた切れ味をもたらすために、ジュニオール・ホイレットの獲得競争にも競り勝った。昨季66失点の守備の強化には、マンチェスター・ユナイテッドからローンで 獲得したブラジル人サイドバック、ファビオ・ダ・シルバが貢献する。
昨季終盤の15試合で6枚のレッドカードを受けた規律面での改善も今季は見込めるだろう。
レディング(エイドリアン・ウィリアムス氏:ロイヤルズの元キャプテン)
チャンピオンシップで王者に輝き、レディングに復活の時が来た。監督のブライアン・マクダーモットの下で、マデイスキ・スタジアムには6人の新戦力が加わってきたが、そのひとり、ニック・ショーリーは既にロイヤルズのレジェンドとなりつつある。
左サイドバックのポジションは、イアン・ハートにポジションを明け渡す雰囲気は無く懸念する必要が無いだろうし、 ゴールでホームの観客を喜ばせたいと考えているパヴェル・ポグレブニャクには期待をかけて良いだろう。しかし、注目すべきはその相方のジェイソン・ロバーツだ。1月に加入して以来の昨季の勢いを維持したいと考えているだろう。
サー・ジョン・ マデイスキ氏はクラブの51%をアントン・ジンガレヴィッチ氏に売却したが、マデイスキはレディングのファンにクラブは安泰だと伝えている。マッド・スタッド(マデイスキ・スタジアム)の安泰といえば、最初に浮かぶのはアダム・フェデリチの名前だ。今季の多くはこのオーストラリア人ゴールキーパーにかかっているし、公平に見れば皆彼には忙しいシーズンになると考えるだろう。
サウサンプトン(アダム・ブラックモア氏)
セインツは7年の不在を経て、勢いと共にプレミアリーグに帰ってきた。ナイジェル・アトキンスに率いられて2シーズンで2度の昇格は、素晴らしいチーム・スピリットと会長のニコラ・コルテセからの支援の賜物だ。
サポートは今オフも続いていて、ジェイ・ロドリゲスやスティーブン・デイヴィスの補強からもそれはうかがえ、さらにピッチ外でもクラブの長期的な基礎を築いて行っている。
彼らの今季の野望は残留に超えた所にあり、評論家の一部がすぐに降格すると予想しているものの、そうなるとは思えない。
ストーク・シティ(マット・サンドス氏)
ヨーロッパ探検後のストークのシーズン後半は失速に終わり、ポッターズは2008年のプレミア昇格以来最低のポイント数と最低の順位でフィニッシュした。加えて、このオフにはほとんど動きが無かったことから、ファンは降格争いに巻き込まれるのではないかと懸念している。
最初の7試合でトニー・ピューリスがある程度のポイントを確保できなければ、その恐怖心はますます増して行くだろう。最初の難所は、昇格してきたレディングとのアウェー戦、その後の6試合にアーセナル、マンチェスター・シティ、チェルシー、リバプール、マンチェスター・ユナイテッドとの対戦が含まれているのだ。
ストークのこのプレシーズンの過ごし方は、彼らがそのダイレクトなプレー・スタイルを変える可能性は無いということであり、今季もホームでの戦績が残留に大きく影響するだろう。
サンダーランド(ニック・バーンズ氏)
これだけ開幕が近付いても移籍市場で動きが少ないことが、サンダーランドのファンを心配させていることは間違いない。しかし、マーティン・オニールは、自分がどれだけソリッドな選手層を引き継いでいるのかを理解している。
昨季から続いている弱みはストライカーのポジションだが、プレシーズンは再び前線の駒不足に焦点が当たった。コナー・ウィッカム、ジ・ドンウォン、フレイザー・キャンベルというのは答になっておらず、ステファン・セセニョンはストライカーのパートナーを強く求めている。
昨季の終盤13試合で僅かに2勝だったことは懸念材料であり、データの専門家はその流れは今季も続くと考えるだろう。スティーブ・ブルースは、昨季最初の13試合で2勝しかできずに解任された。補強が叶わないのなら、スタートダッシュが肝要だ。それでもオニールは既に実績を証明済みの監督であり、サンダーランドは今季も中位で終えられると見ている。
スウォンジー(サイモン・デイヴィス氏)
スウォンジー・シティは新監督と共にシーズンを迎えるが、それがかつての世界でも偉大な選手の1人であるという点が、クラブの進歩を表している。
それでも、ミカエル・ラウドルップにはタフな任務が待っている。前任者のブレンダン・ロジャースはリバプールに引き抜かれる立派な仕事をした上に、ジョー・アレンをそのままリバプールへと連れて行ってしまった。ローンで加入していたアイスランド人のギルフィ・シグルズソンは新シーズンはトッテナムでプレーすることを選択した。18試合で7ゴールを決めた彼の不在は大きいだろう。
中盤のミチュやジョナサン・デ・グズマンはプレミアリーグは初めてだが、リーガの経験があるし、それはディフェンダーのチコ・フローレスも同じだ。
ブレンダン・ロジャースがスウォンジーの精神的な支柱でもあったことを考えれば、昨季11位を再現するのは非常に難しい。しかし、変化が悪いことだと誰か言っただろうか?
トッテナム(ジェイミー・リリーホワイト氏)
この夏のレーンは全てが変わる。新体制に新ユニフォーム・サプライヤー。アンドレ・ヴィラス・ボアスがトラウマとも言えるチェルシー時代から何を学んだのか、そして過去3シーズンで2度4位に入ったハリー・レドナップよりもチームを改善できるのか、大きな関心が集まるだろう。
チームの質に不足は無いが、ルカ・モドリッチの将来は未解決で、エマニュエル・アデバヨルとは完全移籍で合意できていない。レドリー・キングの引退は痛手だが、ファンの人気が高かった彼に悪い結果をもたらしたのはケガだった。ファンは、ベルギー人のヤン・フェルトンゲンが再びフィットしたマイケル・ドーソンと強力な守備のパートナーシップを築くことを期待しており、ギルフィ・シグルズソンの獲得も抜け目ない補強だったと証明されるだろう。
1月の補強は、スパーズのファンには刺激に欠けるものだったが(30代のライアン・ネルセンやルイ・サハは彼らが望んだ選手ではなかった)、会長のダニエル・リヴィは8月31日の締切前にビッグネームを連れてくることができるはずだ。
ウェストブロム(デイビッド・グリーン氏)
2011-12シーズンは、アルビオンのサポーターには素晴らしい1年だった。ライバルであるウォルヴズとの5-1を含む、数多くのアウェーでの勝利は、ロイ・ホジソンの拙いホームでの戦績を隠すには十分だったし、2シーズン続けて中位で終えることにもつながった。
ミッドランドで最高位につけるクラブとして脚光を浴びつつも、プレミアでの最高位を記録できるかということになると、依然疑念が残る。元々選手層が十分に厚いのか、代表監督へと去って行ったホジソンの知性が自分のウェイト以上の相手にもパンチを繰り出すことを可能にしていたのかはまだ分からない。
ベン・フォスターというワールドクラスのゴールキーパーがいるし、アルゼンチン人のクラウディオ・ヤコブとチェルシーのロメウ・ルカクの獲得は素晴らしい補強。 今季の行方の多くは、監督としての初仕事となるスティーブ・クラークのハンドルさばきにかかっている。
ファンはカップ戦での勝ち上がりとトップ10フィニッシュを望んでいるだろうが、スタートで失敗すればクラークはその期待に応える難しさを痛感するだろう。
ウェストハム(フランク・キーオ氏)
クラブはプレミアリーグへの残留とオリンピック・スタジアムへの移転という、ピッチ内外でクラブとして重要な局面に入っている。
アップトン・パークのコアな層は、サム・アラーダイスのフットボールのスタイルに疑問を持って「俺達は地面でプレーするんだ」とチャントを送っていたが、プレーオフを経て昇格を達成することで寛容になって行った。
アラーダイスには好スタートを切るチャンスがある。最初の6試合は、昨季のプレミアでトップ8に入れなかったチームとの対戦だからだ。この10年間でハマーズは2度降格を味わっており、ファンはウィガンから獲得したボール奪取能力に長けるモハメド・ディアメのような補強がチームに安定感をももたらしてくれることを期待している。
攻撃面では、アンディ・キャロルの獲得に失敗したことから、マリ人フォワードのモディボ・マイガにかかる期待は大きい。一方で、ゴールキーパーのロバート・グリーンがQPRへと移籍してしまったのは痛手となるだろう。
ウィガン(ポール・ラウリー氏)
ウィガン・アスレティックの、唯一トップリーグから一度も降格したことのないクラブとしてのおとぎ話は、プレミアリーグ8年目の今季も続く。これは15年前には4部相当にいたクラブとしては驚くべき偉業なのだ。
ラティックスは、昨季の終盤9試合で7勝して降格を免れた勢いそのままに今季開幕を迎えたいと考えているだろう。マンチェスター・ユナイテッド、リバプール、アーセナルを撃破した歴史的勝利快進撃や4-0で圧勝したニューカッスル戦は良い目安になるだろう。
ウーゴ・ロダジェガとモハメド・ディアメはフラム、ウェストハムへと移籍し、ヴィクター・モーゼスもチェルシーへの移籍が繰り返し取り沙汰されている。
リバプールやアストン・ヴィラからのアプローチがありながら、ロベルト・マルティネスは任期4年目に入り 、レアル・マジョルカから同じスペイン人のイヴァン・ラミスを補強し、未開のスコットランドの市場からはアバディーンの19歳、フレイザー・ファイヴィーを連れてきている。
++++
という形で、20クラブ分のBBC担当者のコメントを紹介したけど、順位めいたものが無いと、開幕前の予想としては若干淋しいので、それは「ガーディアン」紙の先週末(なのでRVP移籍決定前)の記事から拝借。順位については特定の記者ではなく、スタッフの平均値で算出しているとのこと。
※カッコ内は(優勝オッズ/降格オッズ)
1. マンチェスター・シティ(2.4倍/3,001倍)
2. マンチェスター・ユナイテッド(3.8倍/3,001倍)
3. チェルシー(6.5倍/1,501倍)
4. アーセナル(15倍/751倍)
5. リバプール(34倍/251倍)
6. ニューカッスル・ユナイテッド(201倍/51倍)
7. エヴァートン(251倍/34倍)
8. トッテナム・ホットスパー(41倍/251倍)
9. QPR(3,001倍/6.5倍)
10. サンダーランド(1,251倍/13倍)
11. ストーク・シティ(3,501倍)
12. アストン・ヴィラ(2,501倍/9倍)
13. ウェスト・ブロミッジ・アルビオン(3,501倍/5倍)
14. フラム(2,501倍/12倍)
15. ウェストハム・ユナイテッド(5,501倍/3.3倍)
16. スウォンジー(4,501倍/3.3倍)
17. ウィガン・アスレティック(6,001倍/2.8倍)
18. ノリッジ・シティ(5,501倍/2.6倍)
19. レディング(10,001倍/2.2倍)
20. サウサンプトン(7,501倍/2.4倍)
なんと我らがスパーズは8位の予想、優勝オッズで見ても6番目。まぁ、期待が低い方が結果は良いかもしれないけど・・・。
この時期には、各チームごとの夏の補強の動きやプレシーズンでの動向を含めた詳細なプレビューがクラブごとに出るものの、それをひとつずつ紹介するのは大変。コンパクトにまとまったもの、かつ移籍関係ばかりに特化しないものがあまり出て来ず、ここで選択したのは「BBC」によるもの。
BBCの各クラブの番記者やラジオ番組担当者が、オフの動きとシーズンの展望を順々に語っている。
++(以下、要訳)++
新たな9ヶ月間の興奮、ドラマ、論争、歓喜と失望への準備はいいか?プレミアリーグが帰ってきた。
王者マンチェスター・シティは、ライバルのユナイテッドの挑戦を抑えることができるだろうか? チェルシー、トッテナム、リバプールは皆監督を変え、昨季からの向上を図っている。アーセン・ヴェンゲルはアーセナルでのタイトル挑戦にどう取り組むのか?
昇格してきたサウサンプトン、レディング、ウェストハムの目標は残留だが、同様に苦しむことも予想されるノリッジ、スウォンジー、ウェストブロムはいずれも新監督を迎えている。
開幕を前にBBCスポーツでは、各クラブの準備状況を分析し、新シーズンに向けた各クラブのガイドとしてここにまとめた(アルファベット順)。
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アーセナル(イアン・ヒューズ氏)
アーセナルには厳しい教訓から学んだ様子が伺えた。
昨シーズンはセスク・ファブレガスとサミ・ナスリの代役を見つけられなかったことが、シーズンがロクに始まらないうちに崩壊してしまう原因となった。プレーヤー・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞したロビン・ファン・ペルシがマンチェスター・ユナイテッドへと移籍し、再び最高のタレントを失ったかもしれないが、今回は既に3人の代表選手 -ルーカス・ポドルスキ、オリヴィエ・ジルー、そして中盤のサンティ・カソルラ- を補強していた。
そして守備の脆さが昨季のリーグ49失点となって現れたが、元ガナーズのセンターバックであるスティーブ・ボウルドがその立て直しを担当し、ここにも手が打たれつつある。
加えて昨季をケガで棒に振ったジャック・ウィルシャーの復帰も見込まれ、昨季3位のフィニッシュよりも上に行ける、そして7年間の無冠時代に終止符が打てるという楽観できな見方も正当化できるのではないか。
アストン・ヴィラ(フィル・メイデン氏)
クラブ史上ワーストとなるホームの戦績となったアレックス・マクリーシュとの1年を経て、ファンはポール・ランバートの就任が、ヴィラ・パークに明らかに欠けていた興奮を再びもたらしてくれるのではないかと期待している。
ヴィラはマーティン・オニールの辞任以降、順位表の上位争いに加われずにおり、出費を削ってきているオーナーのランディ・ラーナーも、ランバートにクラブの威信回復を期待しているはずだ。
プレシーズンでも好調だったカリム・エル・アーマディは中盤のキーマンとなりそうで、マクリーシュ時代にボスマン・ルールで加入したブレット・ホルマンも得点力不足に泣いたヴィラの有効な攻撃のオプションだと証明するかもしれない。
チームの移り変わりにはもう1年かかるかもしれないが、ヴィラ・ファンは予算に限りはあれど、今回は将来の成功に導いてくれる監督が来たはず、と望んでいることだろう。
チェルシー(オーウェン・フィリップス氏)
今季は遂にフェルナンド・トーレスが真価を発揮する時になるのか?ディディエ・ドログバの退団とロメウ・ルカクのローン移籍は、ロベルト・ディ・マテオがそう考えていると思わせるものだ。このイタリア人監督はチャンピオンズリーグ制覇によってフルタイムのポジションを与えられたが、リーグ戦での不振は、今季のプレミアリーグで結果を出す重圧となっている。
プレシーズンの成績はお世辞にも良かったとは言えず、才能ある中盤の3人がいたとしても、実証済みの「ドログバ・モデル」からの転換には時間を要するだろう。新加入のオスカルやエディン・アザールがフアン・マタにどうフィットするかは分からないが、トーレスのワントップであれば、上手くハマるのではないか。
明確な右サイドバックがいないものの、チェルシーの守備は安定しているように見え、フランク・ランパードの安定した影響力と疲れ知らずのラミレスのエネルギーは、中盤の良い基盤になっている。トーレスにボールを供給するシステムの確立と、そのスタイルで早期に自信を深めることが、チェルシーの今季のチャンスのカギとなるだろう。
エヴァートン(イアン・ケネディ氏)
エヴァートンを順位表のあれだけ上に届かせたデイビッド・モイーズは、今回も高く評価されて然るべきだし、リバプールより上だったことは、誰もが忘れないだろう。
昨季もシーズンを良い形で終えたことを考えれば、目標は今シーズンをポジティブな形で始め、1月以降の基盤とすることだろう。 それが可能であれば、ヨーロッパの舞台での存在感も維持できるようになるはずだ。
ニキツァ・イェラビッチの獲得で、彼らは直感的な才能を持ち、ドローを勝利に変えることができる男を得た。彼にレンジャース時代のパートナーであるスティーブン・ネイスミスが加わるのは心強い限りだ。
また、スティーブン。ピーナールを完全移籍で再獲得したことも非常に重要で、今季もカップで手強いエヴァートンがソリッドなシーズンを送るだろう。
フラム(ジョン・スタントン氏)
影響力の大きかったキャプテンのダニー・マーフィーがブラックバーンへと去ったのは中盤のクリエイティブな面での穴となっているが、多くのサポーターの懸念は、攻撃の2人、クリント・デンプシーとムサ・デンベレの動向だ。
両選手ともクレイヴン・コテージを去ることが継続的に噂されていて、今シーズンも彼らが残るかどうかがフラムの野心にも大きく影響してくる。
監督のマルティン・ヨルは、励みになるフラムでの1年目を過ごし、 プレシーズンからも若手の登用を積極的に行っている。ケリム・フレイやアレックス・カカニクリッチ、メサといったウィングたちの成長が活力をもたらし、新加入のムラデン・ペトリッチはプレシーズンでもゴールを量産して、長らく変わり映えの無かったチームでも際立っている。
リバプール(イアン・ケネディ氏)
リバプールの今季の目標は、リーグでの戦いぶりを大きく改善することで、恐らくトップ4への復帰を狙っているはずだ。カップ戦での勝ち上がりには勇気づけられたが、プライオリティは常にリーグであるはずだ。
ブレンダン・ロジャースの下でリバプールのスタイルがどう発展して行くかの判断はまだ待たねばならないが、何人かのトップ選手たちの去就は不透明なままだ。ファビオ・ボリーニとルイス・スアレスのコンビがどう機能するかも興味深い。
ロジャースはスウォンジーに華麗なフットボールをもたらしたが、それをチャンスでの決定力と共に持ち込めれば(そしてポストに当てないこと)、 多くのチームがヨーロッパを目指して戦うとは言え、そこでリバプールが競い合えない理由は無い。
マンチェスター・シティ(イアン・チーズマン氏)
夢のシーズンをどう超えるか?
それがシティがやらねばならないことだが、ブルーズがヨーロッパの巨人へと進化して行くのならば、その偉業を繰り返しつつ、チャンピオンズリーグでも終盤まで勝ち残る必要があるだろう。
選手層がいかに強固なものかは既に証明したし、カルロス・テヴィスも非常に集中した態度で戻ってきた。ワールドクラスの選手が新たに加入したようなものだ。移籍市場の締切前に守備と中盤に何人か補強できれば、彼らが去年よりも甘く考えたりしなければ、今シーズンを彼らに賭けないのは難しいだろう。
今のシティのスタッフからは一体感が感じられるし、タイトルの非常に有力な候補だと思う。
マンチェスター・ユナイテッド(ビル・ライス氏)
マンチェスター・ユナイテッドは2006年以来初めての無冠に終わったが、プレミアリーグはライバルのマンチェスター・シティに得失点差で届かずに逃した。
ネマニャ・ヴィディッチもケガから復帰し、彼らは良いシーズンを送って20度目のリーグタイトルを獲得したいと願っているだろう。
新たにボルシア・ドルトムントから1,700万ポンドで獲得した香川真司は中盤から狡猾さと創造性、そしてゴールの脅威をもたらし、トム・クレバリとアンデルソンは彼らのキャリアを妨げてきたケガを今季こそは避けたいと考えるだろう。
その重役を背中で語る役割はいつも通りウェイン・ルーニーであり、 彼のゴールがプレミアリーグの制覇とチャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出をもたらすことが期待されている。
ニューカッスル(ラフル・シュリバスタバ氏)
ニューカッスルは昨季のニューカッスルのサプライズであり、セネガル人ストライカーのパピス・シセが1月にドイツのフライブルクから移籍して14試合で13ゴールを決めた昨季の破壊力を維持できるならば、マグパイズは再びヨーロッパの舞台を争うインパクトを残せるだろう。
監督のアラン・パーデューは、主力が引き抜きやケガも無く開幕を迎えることができて胸を撫で下ろしているだろう。そして、昨季の大半を負傷で棒に振ったディフェンダーのスティーブン・テイラーやウィングのシルヴァン・マルヴォーを使うこともできる。
しかしながら、新たに加わったのは将来を嘱望される若手が中心で、選手層の厚さは 懸念材料だ。ヨアン・カバイェやファブリシオ・コロッチーニ、チェイク・ティオテのような主力がケガで長期離脱することが起きれば、昨季の輝かしい進歩も中位争いへと姿を変えてしまうだろう。
ノリッジ・シティ(ロブ・バトラー氏)
ポール・ランバートのアストン・ヴィラへの流出がどれだけのノリッジに影響するかは予測が難しい。監督の座を引き継いだのはクリス・ヒュートンだが、彼はクラブの幹部の第一候補として信念をもって支えられている。彼の最初の任務は、12位で終えた素晴らしい昨季の中で唯一の難点だった守備の穴を塞ぐことだ。
この夏、もうひとつの特筆すべきニュースは、クラブの守護神ともいうべきキャプテンでチーム得点王のグラント・ホルトをキープできたことだ。イングランドの希望でもあるホルトはシーズンの終わりに移籍志願書を出し、昇格してくるウェストハムが興味を示したとも言われている。それでもホルトは心を変え、新たに3年契約を締結した。
カナリーズの主たる目標は今季も残留だろうが、ファンはヒュートンと共にウェンブリーを目指すことを歓迎するだろう。
クイーンズ・パーク・レンジャース(アンドリュー・ラウリー氏)
5月にやっとの思いで残留を果たすと、QPRは同じ状況に巻き込まれないように機敏に動いた。マーク・ヒューズは昨季の後半にもボビー・ザモラ、ジブリル・シセ、ネダム・オヌオハと補強したが、さらにロバート・グリーン、ライアン・ネルセン、パク・チソン、アンドリュー・ジョンソンを加えてチームに経験をもたらしている。
グリーンは退団したパディ・ケニーの位置にそのまま入るだろうし、パクがチームにもたらすものも興味深い。そして昨季欠いていた切れ味をもたらすために、ジュニオール・ホイレットの獲得競争にも競り勝った。昨季66失点の守備の強化には、マンチェスター・ユナイテッドからローンで 獲得したブラジル人サイドバック、ファビオ・ダ・シルバが貢献する。
昨季終盤の15試合で6枚のレッドカードを受けた規律面での改善も今季は見込めるだろう。
レディング(エイドリアン・ウィリアムス氏:ロイヤルズの元キャプテン)
チャンピオンシップで王者に輝き、レディングに復活の時が来た。監督のブライアン・マクダーモットの下で、マデイスキ・スタジアムには6人の新戦力が加わってきたが、そのひとり、ニック・ショーリーは既にロイヤルズのレジェンドとなりつつある。
左サイドバックのポジションは、イアン・ハートにポジションを明け渡す雰囲気は無く懸念する必要が無いだろうし、 ゴールでホームの観客を喜ばせたいと考えているパヴェル・ポグレブニャクには期待をかけて良いだろう。しかし、注目すべきはその相方のジェイソン・ロバーツだ。1月に加入して以来の昨季の勢いを維持したいと考えているだろう。
サー・ジョン・ マデイスキ氏はクラブの51%をアントン・ジンガレヴィッチ氏に売却したが、マデイスキはレディングのファンにクラブは安泰だと伝えている。マッド・スタッド(マデイスキ・スタジアム)の安泰といえば、最初に浮かぶのはアダム・フェデリチの名前だ。今季の多くはこのオーストラリア人ゴールキーパーにかかっているし、公平に見れば皆彼には忙しいシーズンになると考えるだろう。
サウサンプトン(アダム・ブラックモア氏)
セインツは7年の不在を経て、勢いと共にプレミアリーグに帰ってきた。ナイジェル・アトキンスに率いられて2シーズンで2度の昇格は、素晴らしいチーム・スピリットと会長のニコラ・コルテセからの支援の賜物だ。
サポートは今オフも続いていて、ジェイ・ロドリゲスやスティーブン・デイヴィスの補強からもそれはうかがえ、さらにピッチ外でもクラブの長期的な基礎を築いて行っている。
彼らの今季の野望は残留に超えた所にあり、評論家の一部がすぐに降格すると予想しているものの、そうなるとは思えない。
ストーク・シティ(マット・サンドス氏)
ヨーロッパ探検後のストークのシーズン後半は失速に終わり、ポッターズは2008年のプレミア昇格以来最低のポイント数と最低の順位でフィニッシュした。加えて、このオフにはほとんど動きが無かったことから、ファンは降格争いに巻き込まれるのではないかと懸念している。
最初の7試合でトニー・ピューリスがある程度のポイントを確保できなければ、その恐怖心はますます増して行くだろう。最初の難所は、昇格してきたレディングとのアウェー戦、その後の6試合にアーセナル、マンチェスター・シティ、チェルシー、リバプール、マンチェスター・ユナイテッドとの対戦が含まれているのだ。
ストークのこのプレシーズンの過ごし方は、彼らがそのダイレクトなプレー・スタイルを変える可能性は無いということであり、今季もホームでの戦績が残留に大きく影響するだろう。
サンダーランド(ニック・バーンズ氏)
これだけ開幕が近付いても移籍市場で動きが少ないことが、サンダーランドのファンを心配させていることは間違いない。しかし、マーティン・オニールは、自分がどれだけソリッドな選手層を引き継いでいるのかを理解している。
昨季から続いている弱みはストライカーのポジションだが、プレシーズンは再び前線の駒不足に焦点が当たった。コナー・ウィッカム、ジ・ドンウォン、フレイザー・キャンベルというのは答になっておらず、ステファン・セセニョンはストライカーのパートナーを強く求めている。
昨季の終盤13試合で僅かに2勝だったことは懸念材料であり、データの専門家はその流れは今季も続くと考えるだろう。スティーブ・ブルースは、昨季最初の13試合で2勝しかできずに解任された。補強が叶わないのなら、スタートダッシュが肝要だ。それでもオニールは既に実績を証明済みの監督であり、サンダーランドは今季も中位で終えられると見ている。
スウォンジー(サイモン・デイヴィス氏)
スウォンジー・シティは新監督と共にシーズンを迎えるが、それがかつての世界でも偉大な選手の1人であるという点が、クラブの進歩を表している。
それでも、ミカエル・ラウドルップにはタフな任務が待っている。前任者のブレンダン・ロジャースはリバプールに引き抜かれる立派な仕事をした上に、ジョー・アレンをそのままリバプールへと連れて行ってしまった。ローンで加入していたアイスランド人のギルフィ・シグルズソンは新シーズンはトッテナムでプレーすることを選択した。18試合で7ゴールを決めた彼の不在は大きいだろう。
中盤のミチュやジョナサン・デ・グズマンはプレミアリーグは初めてだが、リーガの経験があるし、それはディフェンダーのチコ・フローレスも同じだ。
ブレンダン・ロジャースがスウォンジーの精神的な支柱でもあったことを考えれば、昨季11位を再現するのは非常に難しい。しかし、変化が悪いことだと誰か言っただろうか?
トッテナム(ジェイミー・リリーホワイト氏)
この夏のレーンは全てが変わる。新体制に新ユニフォーム・サプライヤー。アンドレ・ヴィラス・ボアスがトラウマとも言えるチェルシー時代から何を学んだのか、そして過去3シーズンで2度4位に入ったハリー・レドナップよりもチームを改善できるのか、大きな関心が集まるだろう。
チームの質に不足は無いが、ルカ・モドリッチの将来は未解決で、エマニュエル・アデバヨルとは完全移籍で合意できていない。レドリー・キングの引退は痛手だが、ファンの人気が高かった彼に悪い結果をもたらしたのはケガだった。ファンは、ベルギー人のヤン・フェルトンゲンが再びフィットしたマイケル・ドーソンと強力な守備のパートナーシップを築くことを期待しており、ギルフィ・シグルズソンの獲得も抜け目ない補強だったと証明されるだろう。
1月の補強は、スパーズのファンには刺激に欠けるものだったが(30代のライアン・ネルセンやルイ・サハは彼らが望んだ選手ではなかった)、会長のダニエル・リヴィは8月31日の締切前にビッグネームを連れてくることができるはずだ。
ウェストブロム(デイビッド・グリーン氏)
2011-12シーズンは、アルビオンのサポーターには素晴らしい1年だった。ライバルであるウォルヴズとの5-1を含む、数多くのアウェーでの勝利は、ロイ・ホジソンの拙いホームでの戦績を隠すには十分だったし、2シーズン続けて中位で終えることにもつながった。
ミッドランドで最高位につけるクラブとして脚光を浴びつつも、プレミアでの最高位を記録できるかということになると、依然疑念が残る。元々選手層が十分に厚いのか、代表監督へと去って行ったホジソンの知性が自分のウェイト以上の相手にもパンチを繰り出すことを可能にしていたのかはまだ分からない。
ベン・フォスターというワールドクラスのゴールキーパーがいるし、アルゼンチン人のクラウディオ・ヤコブとチェルシーのロメウ・ルカクの獲得は素晴らしい補強。 今季の行方の多くは、監督としての初仕事となるスティーブ・クラークのハンドルさばきにかかっている。
ファンはカップ戦での勝ち上がりとトップ10フィニッシュを望んでいるだろうが、スタートで失敗すればクラークはその期待に応える難しさを痛感するだろう。
ウェストハム(フランク・キーオ氏)
クラブはプレミアリーグへの残留とオリンピック・スタジアムへの移転という、ピッチ内外でクラブとして重要な局面に入っている。
アップトン・パークのコアな層は、サム・アラーダイスのフットボールのスタイルに疑問を持って「俺達は地面でプレーするんだ」とチャントを送っていたが、プレーオフを経て昇格を達成することで寛容になって行った。
アラーダイスには好スタートを切るチャンスがある。最初の6試合は、昨季のプレミアでトップ8に入れなかったチームとの対戦だからだ。この10年間でハマーズは2度降格を味わっており、ファンはウィガンから獲得したボール奪取能力に長けるモハメド・ディアメのような補強がチームに安定感をももたらしてくれることを期待している。
攻撃面では、アンディ・キャロルの獲得に失敗したことから、マリ人フォワードのモディボ・マイガにかかる期待は大きい。一方で、ゴールキーパーのロバート・グリーンがQPRへと移籍してしまったのは痛手となるだろう。
ウィガン(ポール・ラウリー氏)
ウィガン・アスレティックの、唯一トップリーグから一度も降格したことのないクラブとしてのおとぎ話は、プレミアリーグ8年目の今季も続く。これは15年前には4部相当にいたクラブとしては驚くべき偉業なのだ。
ラティックスは、昨季の終盤9試合で7勝して降格を免れた勢いそのままに今季開幕を迎えたいと考えているだろう。マンチェスター・ユナイテッド、リバプール、アーセナルを撃破した歴史的勝利快進撃や4-0で圧勝したニューカッスル戦は良い目安になるだろう。
ウーゴ・ロダジェガとモハメド・ディアメはフラム、ウェストハムへと移籍し、ヴィクター・モーゼスもチェルシーへの移籍が繰り返し取り沙汰されている。
リバプールやアストン・ヴィラからのアプローチがありながら、ロベルト・マルティネスは任期4年目に入り 、レアル・マジョルカから同じスペイン人のイヴァン・ラミスを補強し、未開のスコットランドの市場からはアバディーンの19歳、フレイザー・ファイヴィーを連れてきている。
++++
という形で、20クラブ分のBBC担当者のコメントを紹介したけど、順位めいたものが無いと、開幕前の予想としては若干淋しいので、それは「ガーディアン」紙の先週末(なのでRVP移籍決定前)の記事から拝借。順位については特定の記者ではなく、スタッフの平均値で算出しているとのこと。
※カッコ内は(優勝オッズ/降格オッズ)
1. マンチェスター・シティ(2.4倍/3,001倍)
2. マンチェスター・ユナイテッド(3.8倍/3,001倍)
3. チェルシー(6.5倍/1,501倍)
4. アーセナル(15倍/751倍)
5. リバプール(34倍/251倍)
6. ニューカッスル・ユナイテッド(201倍/51倍)
7. エヴァートン(251倍/34倍)
8. トッテナム・ホットスパー(41倍/251倍)
9. QPR(3,001倍/6.5倍)
10. サンダーランド(1,251倍/13倍)
11. ストーク・シティ(3,501倍)
12. アストン・ヴィラ(2,501倍/9倍)
13. ウェスト・ブロミッジ・アルビオン(3,501倍/5倍)
14. フラム(2,501倍/12倍)
15. ウェストハム・ユナイテッド(5,501倍/3.3倍)
16. スウォンジー(4,501倍/3.3倍)
17. ウィガン・アスレティック(6,001倍/2.8倍)
18. ノリッジ・シティ(5,501倍/2.6倍)
19. レディング(10,001倍/2.2倍)
20. サウサンプトン(7,501倍/2.4倍)
なんと我らがスパーズは8位の予想、優勝オッズで見ても6番目。まぁ、期待が低い方が結果は良いかもしれないけど・・・。
Thursday, August 16, 2012
ファン・ペルシ移籍がユナイテッドとアーセナルに意味するもの
プレミアリーグの開幕を週末に控える中で、クラブ間で合意に達したロビン・ファン・ペルシの移籍。マンチェスター・ユナイテッドとアーセナルの両クラブにどのようなインパクトをもたらすのか。「テレグラフ」紙のマーク・オグデン、ジェレミー・ウィルソンの両記者がそれぞれの側面から描写している。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・ユナイテッド
ロビン・ファン・ペルシの加入で、マンチェスター・ユナイテッドには2つのシナリオが想定される - ひとつはポジティブ、もうひとつはネガティブなものだ。
一見すれば、ウェイン・ルーニーが昨シーズンのプレミアリーグの得点王でフットボーラー・オブ・ザ・イヤーと並んでプレーするというのは、ヨダレが出るシーンだろう。
ルーニーとファン・ペルシは1999年のトレブル達成に欠かせなかったドワイト・ヨークとアンディ・コールのような相手を脅かせるコンビとなるだろう。同様に、ルーニーとファン・ペルシは2008年にチャンピオンズリーグをモノにした2トップに比肩するポテンシャルも持っている。しかし、サー・アレックス・ファーガソンのプランの裏側には、パートナーとなるストライカーと必ずしも気分良くプレーできていたわけではないルーニーにファン・ペルシが適応できない可能性もある。
ロナウドと組んでいた時には、ルーニーは自分の攻撃本能を犠牲にする形でこのポルトガル人フォワードを輝かせた。しかし、2009年にロナウドがレアル・マドリッドへと去って以降はユナイテッドの攻撃の中心として君臨しており、26歳のルーニーが脇役としてのプレーを再び受け入れるとは考えにくい。
ルーニーはルート・ファン・ニステルロイの横では滅多にハッピーにプレーできなかったし、ディミタール・ベルバトフやハヴィエル・エルナンデスとは相互理解を確立したものの、彼のベストフォームは攻撃の中心としてプレーしている時だ。
今季は誰がその役割を担うことになるのか?ルーニーとファン・ペルシが並んで2トップを組み、その後ろに1人入る、と考えるのが簡単だろうが、序盤戦は将来を占う意味でも興味深いものになるだろう。
そして、ファン・ペルシの到来は、ダニー・ウェルベックにとって何を意味するだろうか?彼はエルナンデスと3番目のフォワードの座を巡って争うことになるだろうが、この2人は1999年でいう所のオーレ・グンナー・ソルシャールやテディ・シェリンガムのような貴重な戦力になるだろう。
2010年の10月にルーニーがクラブの野心に疑問を投げかけた時、ファン・ペルシと組むことなど 想像できなかっただろう。今のルーニーにとってのチャレンジは、それを機能させることだ。
アーセナル
それは2010年だった。それまでも何度もアーセナルの基本的な戦略について弁護させられてきたアーセン・ヴェンゲルの我慢が少々崩れた。「我々はただ売るためにこれだけの時間をかけて選手たちを育てていると思っているのか?」というその表情からは、他のクラブが彼の最高の選手たちを引き抜くなどとは考えてもいない様子だった。
やがて、ヴェンゲルは彼の、若い選手たちが共に育ち、共に指導を受け、共に輝きを放つ、というヴィジョンは、彼らが将来のアーセナルについて同じ展望を持っているかどうかに依存する、ということを渋々認めるようになった。しかしながら、セスク・ファブレガスやサミ・ナスリ、そしてロビン・ファン・ペルシのような選手たちは、同様にクラブの将来にコミットしてくれると信じて疑わなかった。そして2年が経ち、我々は若干ことなる答を目にしている。
選手たちの忠誠心はアーセナルに対してではなく彼ら自身に対してであり、それは残念なことでもあるが、この先もヴェンゲルに「そうではない」と考えるのはナイーブ過ぎると伝えに来る者が出てくるだろう。
アーセナルはケガがちな29歳で2,400万ポンドの移籍金が得られるのは見事なビジネス、と確信を持って主張することもできるだろうが、それでもファン・ペルシを失うことは過去の退団劇よりもダメージが大きい。ティエリ・アンリ、パトリック・ヴィエラ、ソル・キャンべル、あるいはニコラ・アネルカの場合でさえも、彼らの最高の時期はもう超えた、という感覚があった。ナスリの場合には、金の問題だと勘繰らないのは難しかった。ファブレガスの場合も、彼の過去のバルセロナへの愛情が理由だった。
ファン・ペルシの場合、これらのいずれも当てはまらないのだ。彼はいまキャリアのピークにあり、ヴェンゲルは彼に残って欲しいと考えていて、彼は億万長者が資金を注入しているクラブに行ったわけでもない。
アーセナルが重視する育成を軸にしたモデルを固持するという意味で、ユナイテッドは直接のライバルにあたる。ファン・ペルシが去ったのは、多くのサポーターと同様にアーセナルの選手層は、主要タイトルを勝ち取るにはもはや十分ではない、と考えたからだ。
ヴェンゲルが彼の監督キャリアを守る上で重要で決定的な挑戦は、ファン・ペルシが間違っていると証明することだ。
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日本で話題となってる香川のポジションの話は全く出てこなかったが、むしろルーニーの「現在の」キャラクターがファン・ペルシとどうフィットするか、というところがポイントとなってくるんだろうな。個人的には完全に居場所のなくなるベルバトフの処遇。あとはアーセナルがこの資金で補強をするのかどうか。これまでの流れだと、いったんこれで様子を見るんじゃないか、って気もするけど。
Friday, July 20, 2012
トッテナム・サポーターの心に残り続けるレドリー・キング
引退を表明したスパーズのレドリー・キング。スパーズのファンにとっては、いつか来てしまう、しかも最近のケガの状況を考えれば近いもしれない、とここ数年感じていたことではあったが、今季は欠場もしつつ、一定のサイクルでコンスタントに出場していつも通りの素晴らしい守備を見せていただけに、少し先に延びるのではないかと、個人的に期待したりもしていた。
潮目が変わってしまったのを感じたのはアウェーのシティ戦。バロテッリに決勝点となるPKを献上した試合だったけど、これ以降、出場できた試合でもパフォーマンスが落ちて行って、ホームで敗れたQPR戦を最後に姿を見ることはできなくなってしまった。
今回ピックアップしたのは、キングの引退に寄せた「インディペンデント」紙のジェームス・マリナー記者のエッセイ。普段はデータに強いマリナー記者は、ホワイト・ハート・レーンのシーズンチケット・ホルダーでもある。
++(以下、要訳)++
"Ledley's gone"(もうレドリーは戻ってこない)。我々が決して聞きたくはなかった言葉だ。ホワイト・ハート・レーンの外側の人間の多くはレドリー・ブレントン・キングの終焉を予感してはいたが、その3語をサウス・スタンドの下フロア(訳注:ホワイト・ハート・レーンで一番「熱い」エリア)で肩を並べ、自分たちがキングを最も良く知っていると感じている仲間内から聞くと、トッテナム・ホットスパーで最も偉大な選手の1人の終わりがすぐそこまで来てしまったことが、痛いほど明らかになった。我々は、いつかは受け入れねばならないとしても、決して起きて欲しくはないと願っていた現実に直面させられた。いつか遠くのある日が、突然やってきてしまったのだ。
イースターの月曜日、トッテナムのチャンピオンズリーグへの野心がポール・ランバートのカナリーズに手痛い一撃を食らった試合で、キングがアンソニー・ピルキントンやグラント・ホルトに走りまわらされている姿は、我々のリリーホワイトの信念を打ち砕くには十分だった。その後、31歳のキングは、ともに敗れたチェルシー戦、QPR戦に出場したが、そこまでだった。我々は終わりにしなければならない、と目を見開かされた。元はと言えばデビューから5ヶ月後の退屈なダービー戦まで遡ることになる膝の負傷が、遂に偉大な男に幕を下ろさせることになった。
ホワイト・ハート ・レーンでの13年間を通じて、キングは単なるトッテナムの「キープレーヤー」の域を超える存在となるに至った。レドリーは落ち着きを呼んだ。レドリーは安心をもたらした。レドリーは栄光を勝ち取る機会を高めた。レドリーはディフェンス・ラインを仲間と共に率いて、マイケル・ドーソンに代表される若い選手が自信をつけるのを助けた。彼は323試合に出場した - もっと出られたはず、片手で数えられてしまう。アンフィールドでリバプールに2-3で敗れた1999年5月の試合でデビューしたが、その真価を見せつけたのは、ジョージ・グラハムに中盤で起用された翌シーズンのリバプール戦だ。当時20歳の彼が11月の昼下がりに見せた落ち着きとバランス感覚は多くの人々の注目を集め、誰もが彼は偉大な選手になるとすぐに考えた。数週間後、彼はブラッドフォード戦で開始10秒でゴールを決めた。これは現在も破られていないプレミアリーグ記録だ。すぐにイングランド代表にもデビューし、3試合目、ヨーロッパ選手権でホスト国のポルトガルと1-1で引き分けた試合ではゴールも決めた。リオ・ファーディナンドがメンバーから外れざるを得なかったことが、キングにこの大会で輝く機会をもたらした。グループリーグ初戦のフランス戦では、シネディーヌ・ジダンに決められるまでは、イングランド好スタートの立役者となるようなプレーぶりだった。結局キングは代表では僅かに21試合の出場にとどまった。しかし、ファビオ・カペッロは、多くのスパーズ・ファンの希望に反して彼のメンバー入りに熱心で、2010年のワールドカップのチームにもキングを加えた - 開幕戦の45分しかもたなかった。
そのプレーぶりと疑いのない才能は、ファンにとって苦痛だった2001年7月のソル・キャンベルの退団劇を受け入れるのも容易にした。キングはキャプテンに任命され、相手にも一目置かれるようになった - ティエリ・アンリは、キングを「ファウルをしなくて、それでいて僕の足下から簡単にボールを奪える唯一の選手」評していた。彼がクラブ勝ち獲った唯一のトロフィーは2008年のリーグカップだ。彼がチェルシーを倒すのを率い、新しいウェンブリーの階段を上って行く姿は、彼の全ての貢献に報いるものだ。また、2010年にクラブが半世紀ぶりにチャンピオンズリーグの舞台に返り咲くのにも大きく貢献した。フラム戦でハムストリングを痛めてからは3試合しか出場することができなかった - 日常的にトレーニングができない結果だ。酔った時の行動で逮捕されても、ファンは「楽しんでんだな」と笑って受け入れた。スパーズは長期的な代役を探し始めていて、ユネス・カブールの堂々たるプレーぶりやヤン・フェルトンゲンの獲得は、我々がこうしてキング引退の報を耳にする根拠でもあった。今シーズンの終わりには彼の引退記念試合も開催されるし、サポーターの記憶から簡単に消え去ることはないだろう。この男を、このレジェンドを、キングを。
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昨シーズン序盤のプレーぶりには励まされたし、実際キングが出ると失点しないし、負けない、っていう結果も出てたけど、良いことばかりは続かないんだな、やっぱ。ウッディに続いてキングも去るとなると、ひと時代に区切りがつく気がするな、やっぱ。
潮目が変わってしまったのを感じたのはアウェーのシティ戦。バロテッリに決勝点となるPKを献上した試合だったけど、これ以降、出場できた試合でもパフォーマンスが落ちて行って、ホームで敗れたQPR戦を最後に姿を見ることはできなくなってしまった。
今回ピックアップしたのは、キングの引退に寄せた「インディペンデント」紙のジェームス・マリナー記者のエッセイ。普段はデータに強いマリナー記者は、ホワイト・ハート・レーンのシーズンチケット・ホルダーでもある。
++(以下、要訳)++
"Ledley's gone"(もうレドリーは戻ってこない)。我々が決して聞きたくはなかった言葉だ。ホワイト・ハート・レーンの外側の人間の多くはレドリー・ブレントン・キングの終焉を予感してはいたが、その3語をサウス・スタンドの下フロア(訳注:ホワイト・ハート・レーンで一番「熱い」エリア)で肩を並べ、自分たちがキングを最も良く知っていると感じている仲間内から聞くと、トッテナム・ホットスパーで最も偉大な選手の1人の終わりがすぐそこまで来てしまったことが、痛いほど明らかになった。我々は、いつかは受け入れねばならないとしても、決して起きて欲しくはないと願っていた現実に直面させられた。いつか遠くのある日が、突然やってきてしまったのだ。
イースターの月曜日、トッテナムのチャンピオンズリーグへの野心がポール・ランバートのカナリーズに手痛い一撃を食らった試合で、キングがアンソニー・ピルキントンやグラント・ホルトに走りまわらされている姿は、我々のリリーホワイトの信念を打ち砕くには十分だった。その後、31歳のキングは、ともに敗れたチェルシー戦、QPR戦に出場したが、そこまでだった。我々は終わりにしなければならない、と目を見開かされた。元はと言えばデビューから5ヶ月後の退屈なダービー戦まで遡ることになる膝の負傷が、遂に偉大な男に幕を下ろさせることになった。
ホワイト・ハート ・レーンでの13年間を通じて、キングは単なるトッテナムの「キープレーヤー」の域を超える存在となるに至った。レドリーは落ち着きを呼んだ。レドリーは安心をもたらした。レドリーは栄光を勝ち取る機会を高めた。レドリーはディフェンス・ラインを仲間と共に率いて、マイケル・ドーソンに代表される若い選手が自信をつけるのを助けた。彼は323試合に出場した - もっと出られたはず、片手で数えられてしまう。アンフィールドでリバプールに2-3で敗れた1999年5月の試合でデビューしたが、その真価を見せつけたのは、ジョージ・グラハムに中盤で起用された翌シーズンのリバプール戦だ。当時20歳の彼が11月の昼下がりに見せた落ち着きとバランス感覚は多くの人々の注目を集め、誰もが彼は偉大な選手になるとすぐに考えた。数週間後、彼はブラッドフォード戦で開始10秒でゴールを決めた。これは現在も破られていないプレミアリーグ記録だ。すぐにイングランド代表にもデビューし、3試合目、ヨーロッパ選手権でホスト国のポルトガルと1-1で引き分けた試合ではゴールも決めた。リオ・ファーディナンドがメンバーから外れざるを得なかったことが、キングにこの大会で輝く機会をもたらした。グループリーグ初戦のフランス戦では、シネディーヌ・ジダンに決められるまでは、イングランド好スタートの立役者となるようなプレーぶりだった。結局キングは代表では僅かに21試合の出場にとどまった。しかし、ファビオ・カペッロは、多くのスパーズ・ファンの希望に反して彼のメンバー入りに熱心で、2010年のワールドカップのチームにもキングを加えた - 開幕戦の45分しかもたなかった。
そのプレーぶりと疑いのない才能は、ファンにとって苦痛だった2001年7月のソル・キャンベルの退団劇を受け入れるのも容易にした。キングはキャプテンに任命され、相手にも一目置かれるようになった - ティエリ・アンリは、キングを「ファウルをしなくて、それでいて僕の足下から簡単にボールを奪える唯一の選手」評していた。彼がクラブ勝ち獲った唯一のトロフィーは2008年のリーグカップだ。彼がチェルシーを倒すのを率い、新しいウェンブリーの階段を上って行く姿は、彼の全ての貢献に報いるものだ。また、2010年にクラブが半世紀ぶりにチャンピオンズリーグの舞台に返り咲くのにも大きく貢献した。フラム戦でハムストリングを痛めてからは3試合しか出場することができなかった - 日常的にトレーニングができない結果だ。酔った時の行動で逮捕されても、ファンは「楽しんでんだな」と笑って受け入れた。スパーズは長期的な代役を探し始めていて、ユネス・カブールの堂々たるプレーぶりやヤン・フェルトンゲンの獲得は、我々がこうしてキング引退の報を耳にする根拠でもあった。今シーズンの終わりには彼の引退記念試合も開催されるし、サポーターの記憶から簡単に消え去ることはないだろう。この男を、このレジェンドを、キングを。
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昨シーズン序盤のプレーぶりには励まされたし、実際キングが出ると失点しないし、負けない、っていう結果も出てたけど、良いことばかりは続かないんだな、やっぱ。ウッディに続いてキングも去るとなると、ひと時代に区切りがつく気がするな、やっぱ。
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