引退を表明したスパーズのレドリー・キング。スパーズのファンにとっては、いつか来てしまう、しかも最近のケガの状況を考えれば近いもしれない、とここ数年感じていたことではあったが、今季は欠場もしつつ、一定のサイクルでコンスタントに出場していつも通りの素晴らしい守備を見せていただけに、少し先に延びるのではないかと、個人的に期待したりもしていた。
潮目が変わってしまったのを感じたのはアウェーのシティ戦。バロテッリに決勝点となるPKを献上した試合だったけど、これ以降、出場できた試合でもパフォーマンスが落ちて行って、ホームで敗れたQPR戦を最後に姿を見ることはできなくなってしまった。
今回ピックアップしたのは、キングの引退に寄せた「インディペンデント」紙のジェームス・マリナー記者のエッセイ。普段はデータに強いマリナー記者は、ホワイト・ハート・レーンのシーズンチケット・ホルダーでもある。
++(以下、要訳)++
"Ledley's gone"(もうレドリーは戻ってこない)。我々が決して聞きたくはなかった言葉だ。ホワイト・ハート・レーンの外側の人間の多くはレドリー・ブレントン・キングの終焉を予感してはいたが、その3語をサウス・スタンドの下フロア(訳注:ホワイト・ハート・レーンで一番「熱い」エリア)で肩を並べ、自分たちがキングを最も良く知っていると感じている仲間内から聞くと、トッテナム・ホットスパーで最も偉大な選手の1人の終わりがすぐそこまで来てしまったことが、痛いほど明らかになった。我々は、いつかは受け入れねばならないとしても、決して起きて欲しくはないと願っていた現実に直面させられた。いつか遠くのある日が、突然やってきてしまったのだ。
イースターの月曜日、トッテナムのチャンピオンズリーグへの野心がポール・ランバートのカナリーズに手痛い一撃を食らった試合で、キングがアンソニー・ピルキントンやグラント・ホルトに走りまわらされている姿は、我々のリリーホワイトの信念を打ち砕くには十分だった。その後、31歳のキングは、ともに敗れたチェルシー戦、QPR戦に出場したが、そこまでだった。我々は終わりにしなければならない、と目を見開かされた。元はと言えばデビューから5ヶ月後の退屈なダービー戦まで遡ることになる膝の負傷が、遂に偉大な男に幕を下ろさせることになった。
ホワイト・ハート ・レーンでの13年間を通じて、キングは単なるトッテナムの「キープレーヤー」の域を超える存在となるに至った。レドリーは落ち着きを呼んだ。レドリーは安心をもたらした。レドリーは栄光を勝ち取る機会を高めた。レドリーはディフェンス・ラインを仲間と共に率いて、マイケル・ドーソンに代表される若い選手が自信をつけるのを助けた。彼は323試合に出場した - もっと出られたはず、片手で数えられてしまう。アンフィールドでリバプールに2-3で敗れた1999年5月の試合でデビューしたが、その真価を見せつけたのは、ジョージ・グラハムに中盤で起用された翌シーズンのリバプール戦だ。当時20歳の彼が11月の昼下がりに見せた落ち着きとバランス感覚は多くの人々の注目を集め、誰もが彼は偉大な選手になるとすぐに考えた。数週間後、彼はブラッドフォード戦で開始10秒でゴールを決めた。これは現在も破られていないプレミアリーグ記録だ。すぐにイングランド代表にもデビューし、3試合目、ヨーロッパ選手権でホスト国のポルトガルと1-1で引き分けた試合ではゴールも決めた。リオ・ファーディナンドがメンバーから外れざるを得なかったことが、キングにこの大会で輝く機会をもたらした。グループリーグ初戦のフランス戦では、シネディーヌ・ジダンに決められるまでは、イングランド好スタートの立役者となるようなプレーぶりだった。結局キングは代表では僅かに21試合の出場にとどまった。しかし、ファビオ・カペッロは、多くのスパーズ・ファンの希望に反して彼のメンバー入りに熱心で、2010年のワールドカップのチームにもキングを加えた - 開幕戦の45分しかもたなかった。
そのプレーぶりと疑いのない才能は、ファンにとって苦痛だった2001年7月のソル・キャンベルの退団劇を受け入れるのも容易にした。キングはキャプテンに任命され、相手にも一目置かれるようになった - ティエリ・アンリは、キングを「ファウルをしなくて、それでいて僕の足下から簡単にボールを奪える唯一の選手」評していた。彼がクラブ勝ち獲った唯一のトロフィーは2008年のリーグカップだ。彼がチェルシーを倒すのを率い、新しいウェンブリーの階段を上って行く姿は、彼の全ての貢献に報いるものだ。また、2010年にクラブが半世紀ぶりにチャンピオンズリーグの舞台に返り咲くのにも大きく貢献した。フラム戦でハムストリングを痛めてからは3試合しか出場することができなかった - 日常的にトレーニングができない結果だ。酔った時の行動で逮捕されても、ファンは「楽しんでんだな」と笑って受け入れた。スパーズは長期的な代役を探し始めていて、ユネス・カブールの堂々たるプレーぶりやヤン・フェルトンゲンの獲得は、我々がこうしてキング引退の報を耳にする根拠でもあった。今シーズンの終わりには彼の引退記念試合も開催されるし、サポーターの記憶から簡単に消え去ることはないだろう。この男を、このレジェンドを、キングを。
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昨シーズン序盤のプレーぶりには励まされたし、実際キングが出ると失点しないし、負けない、っていう結果も出てたけど、良いことばかりは続かないんだな、やっぱ。ウッディに続いてキングも去るとなると、ひと時代に区切りがつく気がするな、やっぱ。
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