Sunday, April 29, 2012

プレミアリーグの決着は、天王山のダービーへ

ダービーの月曜は、蒼き月曜(Blue Monday)か紅き月曜(Red Monday)か。 そんな見出しも踊り、月曜の決戦に向けメディアも盛り上がってきているマンチェスター・ダービー。こちらは早目に出ていたものだけど、BBCによるプレビュー的な記事。



++(以下、要訳)++

プレミアリーグは、過去20年のベストマッチの募集を既に始めているが、1週間ほど早過ぎたのではないだろうか?

マンチェスター・ユナイテッドのサー・アレックス・ファーガソンはそう考えないだろうが、オールド・トラフォードで4-4のドローとなったエヴァートン戦には本物のスリルがあった。

そして、それに続いたウォルヴズでのマンチェスター・シティの勝利は、4月30日のエティハド・スタジアムでのマンチェスター・ダービーへの完璧なお膳立てをした。ファーガソンもこの試合を彼のクラブでの25年で「最も重要な」試合と位置付けている。

もちろん、シティがアーセナルに敗れ、ユナイテッドが8ポイントリードしていた2週間前とは全く異なる風景になっている。ロベルト・マンチーニ率いるシティは3連勝を飾り、その間12ゴールを重ね、差を3ポイントまで詰めて見せた。

この結果、ダービーで勝利することができれば、得失点差で上回っているシティが順位表のトップに立つことになる。

果たして、勝つための準備ができているのはどちらなのだろうか?

両チームのムード

アレックス・ファーガソン:「人生の中でも最も重要なダービーだろう。アウェーに乗り込まねばならず、確実に良いプレーをし、くだらない失点をしないことが重要だ。我々がエティハドで良い結果を得られない理由などない。シティは自分たちの勝利を決める試合、と位置付けるだろうが、ウチにだって同じことだ」

ロベルト・マンチーニ:「いつだって有利なのはユナイテッドだ。ウチよりも3ポイント多いし、残り試合もウチほどの大変さではない。ウチの方がタイトルに近いとは思わない。ダービーは良い試合だろうが、ユナイテッドの方がチャンスは大きいよ」

ナニ:「エヴァートンには勝ちたかったから、選手の間にも怒りはあるよ。4失点にはガッカリ来ている。タイトルの可能性はまだあるわけで、自分たちのクオリティを信じ続けないとね。シティ戦は大一番だね。最高の雰囲気になると思う」

ジョー・ハート:「僕らは自分たち自身のことに集中している。確かにタイトルの可能性はいくらかマシになった。準備はできてるし、ゴールも量産して雰囲気は良いよ。ダービーを楽しみにしている」

アラン・シアラー(BBC マッチ・オブ・ザ・デー解説者) :「シティは勢いに乗っていて、まさに今調子を戻してきた。もう終わったと思っていたが、状況は毎週のように変わっている。どちらかを選べと言われれば、ユナイテッドを選ぶがね」

ロビー・サヴェージ(BBC マッチ・オブ・ザ・デー解説者) :「今でも有利なのはユナイテッドだと思うね。FAカップの試合じゃエティハドでユナイテッドが勝ったし、アウェーでのニューカッスル戦はシティには難しい試合になる」


チームの調子

勝った相手の大半が下位チームだったとはいえ、ユナイテッドはこの15試合を2分け1敗で乗り切ってきている。

最近のウィガンへの敗戦は、アストン・ヴィラへの勝利でカバーされたが、エヴァートン戦で見せたシーズン序盤を思わせる守備の脆さには、再び何らかのリアクションが求められることになるだろう。

対照的に、2アシストに自らも1ゴールを決めたナニはフレッシュな状態にあり、ウェイン・ルーニーとダニエル・ウェルベックのコンビは、ユナイテッドに活力をもたらしている。

カルロス・テヴェスの復活は、シティの運気の好転と時を同じくしている。依然マンチーニはゴール前での慎重さを求めてはいるが、彼のセルヒオ・アグエロとのコンビは、 見る者の目を引き付けている。

3月に訪れた3試合未勝利の躓きは、より心理的な所に原因があり、タイトル争いの経験の不足によるところが大きかった。しかし、それも今では乗り越え、シティは「狩られる」側から「狩る」方へと姿を変えている。

監督の心理戦

ロベルト・マンチーニは、プレミアリーグ制覇に向けて有利なのはユナイテッド、としきりに主張するが、ノリッジ戦の後には、そのスタンスが選手たちに「監督が間違っていた」と奮起するのに役立てば良い、とも言っていた。

今や3ポイント差でバカバカしくも聞こえるが、ユナイテッドが揺らぐようにトリックを仕掛けているようにも見える。

ファーガソンはウィガン戦の敗戦は受け入れていたが、エヴァートン戦の後にはあまり寛大さが感じられなくなっていた。そして、守備での問題点に焦点を当てることで、少なくとも2失点には責任のあるラファエルやリオ・ファーディナンドに目先を向けた。

それでも様々な状況下でのタイトルに向けたチームの活性化においてはファーガソンに一日の長がある。問題は、今のチームがそれに応えられるチームなのかどうかだ。

近年の状況

オールド・トラフォードでの6-1の試合のシーンは、多くのTV局でも月曜の試合に向けて使われていることだろう。

その試合での急先鋒だったマリオ・バロテッリの出場は微妙だが、それでもFAカップでの敗戦はヴァンサン・コンパニが不在だったこともあり、心理的は優位性はまだ持っているだろう。

ユナイテッドもそのオールド・トラフォードの試合でジョニー・エヴァンスが退場になっており、もしかすると、どちらが11人をピッチに残せるか、という問題になるかもしれない。

もうひとつの重要な側面は、ユナイテッドはシティと違って必ずしも勝たねばならなくはない、ということだ。 しかし、エヴァートンとの試合を見て、マンチーニもトフィーズの5人の中盤がどのようにポール・スコールズとマイケル・キャリックの間のスペースを突いたのか、という点に興味は示すだろう。

「ノース・イースト」の要因

ファーガソンが、彼にとっての最大のダービー、と言ったことで、騒ぎは一層大きくなるだろう。しかし、エティハド・スタジアムで何が起きようと、その先にはどちらにプレミアのトロフィーの行方が転ぶかを決める難しい試合が待ち構えている。

マンチーニが言うように、対戦相手が楽なのはユナイテッドであるようにも見える。ホームでのスウォンジー戦と、アウェーのサンダーランド戦だ。ブレンダン・ロジャースのスウォンジーは、今季は良い出来だが、アウェーの戦績はいまひとつ、サンダーランドはここ4試合無得点だ。

シティはこのダービーの後、リーグでもトップクラスの調子を誇るニューカッスルと対戦する。その後は、トッテナム、アーセナル、リバプールを下し、降格から逃れるべく戦っているQPRを迎えることになる

++++

この「ユナイテッド有利」のマンチーニのコメントにマーティン・オニールが噛み付いてて、本当にユナイテッドにひと泡吹かせられるなら、それも面白いところではある。個人的にはこれは第3者の立場で楽しめるから良いけど。

Friday, April 27, 2012

ダイブ撲滅への道は険しきもの

少し前の記事なのだけど、ギャリー・ネヴィルのダイブに対する論考。論争の的にもなった、アシュリー・コールのアストン・ヴィラ戦でのダイブ疑惑に先んじるもので、恐らくイングランド人であるアンディ・キャロルがニューカッスル戦であからさまなダイブをしたあたりに、ネヴィルも思うところがあったのだと思う。

この記事が出て以降、アーセン・ヴェンゲルがネヴィルの論旨("海外からの影響でイングランド人も変わってきてしまった") に同調するコメントを出したり、メディアの中でも昨今のダイブ連発にウンザリする論調の記事がポツポツと出てきた。

そんな流れがあったもんで、そこはいっちょ、元をたどって「デイリーメール」に出ていたネヴィルのエッセイを復習しようと思った次第。




++(以下、要訳)++

僕のプロのフットボール選手としての教育の礎が始まったのは7歳の頃だったと思う。僕はマンチェスターの地域リーグでプレーしていて、何に対してでも叩くことを教え込まれたタフな地域の連中とプレーしていた。

そのイングランド北部の文化では、誰に対しても傷を見せるなと叩きこまれる。タッチラインにいる親父やコーチは立ち上がってプレーしろと叫ぶし、そうしてタックルをされても痛みを見せたり泣いたりすることのない男へと成長していく、そういうものだった。

そうした時代には、ダイブをしたり、チャージを受けた時に倒れるなんてことは夢にも思わなかった。弱っちい奴、とレッテルを貼られるくらいなら、ケガした方がマシだった。小学校時代にマンチェスター・ユナイテッドに行くと、コーチはノビー・スタイルス、ブライアン・キッド、それにエリック・ハリソンだった。ノビーの評判は言うに及ばず、エリックもハリファクスやハートプール、バロウといったクラブで500試合以上プレーしたということから理解できるだろう。だから、よりタフであれ、っていうカルチャーは一層僕らに擦り込まれて行くことになった。

それでもティーンエイジャーに なると、僕らはヨーロッパのトーナメントに出るようになって、インテルやバルセロナ、アヤックスといった偉大なクラブと対戦するようになった。試合はごく普通に始まるけど、そこで普通のタックルをすると相手は激しい苦痛で地面に身悶えするのさ。時に自分は相手に触ったとさえ思ってなくてもね。そして、次に気が付くと、スイス人のレフェリーが僕のもとにやってきて、「もうダメ!もうダメ!」と言いながらイエローカードを出すのさ。そこに立ちつくして「アイツら何してくれんだ…?」って思うわけさ。

ウチにはポール・スコールズとニッキー・バットが中盤にいたけど、相手のイタリア人やスペイン人のコーチたちや親御さんたちは、クレイ兄弟(伝説のギャング)か何かを見るようなリアクションさ。どんなチャレンジをしても、ベンチ全体が怒り爆発になってしまう。

僕たちもみんな怒ってたさ。 フラストレーションが溜まって、倒れてる相手を立たせに行くだろ?すると相手は突然、こっちが向こうを殴ったかのようなリアクション。そうしてイエローカードではなく、レッドカードになる。こうなるとチーム全体が怒り心頭さ。純粋、かつシンプルに欺きだよね。もしくは僕らがそう思っただけ。しかし、エリックにブライアン、ノビーは、「お前らいつになったら学ぶんだ?」と言うだけだった。

ほどなく、僕らはみなユナイテッドの一軍でプレーするようになった。そこが本当の「教育」が始まったところだった。1995年から99年の間、僕らは初めてのチャンピオンズリーグを制覇し、戦術的、技術的な学習をかなりした。しかし、それと同時に、このゲームの他の側面についても学んだのだ。時間を遅らせる、ゲームのテンポを落ち着かせる、戦術的なファウル、フリーキックを貰う。そういった側面だ。これらは、少しずつ我々に影を差し始めた。この流れが変わることは無い。これがグローバルなフットボールの流儀で、ベリー出身のギャリー・ネヴィルがどう考えようと、関係ないのだ。これがトップレベルでのフットボール、というわけだ。

そうして僕らの考えは少しずつ変わって行った。モラルが弱まったと言う者もいるだろう。確かに、自分が育ってきた価値観が試されていた。そして、ヨーロッパの舞台で最初の15分で ファウルをされれば、恐らく倒れてフィジオを呼び、チームに休息をもたらすだろう。コーナーキックの時にファーポストで相手フォワードの手が自分を抑えるのを感じれば、確実にフリーキックがもらえるように、やはり倒れるだろう。フォワードたちもファウルをされれば、レフェリーに気付いてもらえるように倒れるはずだ。

やがて考えるようになる。ロベール・ピレスが僕に向かって走ってきている。僕は「足を出すなよ。足を出せば、彼は何らかの形で倒れるだろう。もしそうなれば、ロッカルームに帰った時に監督は『ギャリー、運が悪かったな。お前はそこに縫い付けられちまってたからな』とは言わないだろう。彼は僕をナイーブだと言って、バカなチャレンジをしたと言って糾弾するはずだ」 と考え始めた。

こういう時こそ、僕のようなベテラン選手が若い選手にエリア内でファウルをされてもプレーを続けろ、と言うべきなのだろう。これが、ダイブなんかしたら恥ずかしくて死んだ方がマシ、と考えてた7歳の自分からの変化なのだ。だから、アンディ・キャロルがニューカッスル戦でダイブをした時は笑うしかなかった。簡単に倒れる、という文化からは守られてきたイングランドの伝統的なセンターフォワードが、突如として賢くなろうとして訳の分からないことをした典型例だ。

この出来事は、PFA会長のクラーク・カーライルからダイブについてのもう1つの論争を呼び込んだ。彼は、レフェリーたちはこれを絶対に許容すべきでなく、やった者には警告、退場を宣告すべき、と徹底的な取り締まりを主張した。コトがそれだけ簡単ならば良いと思う。ここには複雑さという要因が絡んでいて、簡単に「取り締まり」なんて言うことはできないのだ。

我々イングランドでのプレーも変わった。今ではグローバルな流儀に影響され、プレースタイルも変わった。今週末先発する選手のうち、イングランド人は35%程度だろう。そして、かつてあのイタリア人の両親たちがニッキー・バットにカッカしていたように、我々も別の文化には別の価値感があることを受け入れなければならないのだ。僕がこれをクリスティアーノ・ロナウドに話したとしたら、彼はサイドバックが彼に横からのタックルを仕掛けてきたなら、それはダイブよりも汚いと信じている、と言うだろう。 彼はケガを避けるために飛び、タックルに乗ることを選択するはずだ。彼が言うことには一理ある。「弱っちい」と言うことはできるが、ラテンの文化では、ダイブではなく、そうしたタックルこそが恥ずべきものなのだ。

ラテンの選手だけではない。リーグで最もエキサイティングな選手であるギャレス・ベイルも最近こんなことを言っている。「人々が、僕がダイブをしていると言いたければ言えば良いさ。でも僕は逃れようとしてるんだ。自分に向かって飛んで来る奴がいて、そのままそこに突っ立ってたら消されるだけさ」

もう文化は変わってしまった。今ではファウルの75%で選手は倒れていると思う。 立っていることができるのに、ファウルをされた、ということをレフェリーにアピールしたいがために倒れている、という意味だ。

今シーズンの初めに、ディミタール・ベルバトフがクリス・サンバのシャツを引っ張ると、サンバは地面に倒れた。しかし、サンバをシャツを引っ張るだけで本気で倒そうと思うなら、20トントラックが必要なはずだ。しかし、サンバもズルをしているわけではない - 彼はファウルをされたのだ。となると、どうしたらダイブの徹底取り締まりなどできるのだろうか?

先日、スウォンジーのニール・テイラーがトッテナムのペナルティ・エリアに侵入した時、ウィリアム・ギャラスはテイラーの肩に手を当てて、後ろに引き戻そうとした。テイラーはそのまま進み、PKを得ることは無かった。しかし、ルールのどこにも相手を引っ張って良いとは書いていない。ちょっと触るだけなら良いとも言っていない。あれはファウルだったのだ。

ここまで来ると、モラルが何なのか分からなくなってくる。僕自身の価値観も大きく変わってきた。そして、それを分析してみれば、時間をかけて僕は他の価値観を受け入れてきたことが分かる。僕たちは、国際的な考え方にオープンな、マルチ文化の中に生きている。20年前に僕に、ドライブスルーでラテを買って、カフェの外で飲んでるなんて言ったら大笑いだったと思うし、そもそもラテなんて知らなかった。

同じようにフットボールも変わっていて、お偉方もイングランドのアティテュードをレフェリングに組み入れようとはもはや思わないだろう。 皆がどうしてダイブに怒り狂うかは理解できるよ。僕も7歳の頃の純真さが失われて悲しい気持ちはある。ある意味、そうした時代の純粋さが僕は好きだ。でも、それはもう僕らが今プレーするフットボールではないのだ。

++++

残念だけど、その通りなんだろうな。少し前だと、加入間もなかったドログバにチェルシーのイングランド人の面々、テリーやランパードが「お前、2度とすんなよ」と後で詰め寄った、なんてエピソードも洩れ聞こえてきてたけど、今じゃキャロルのあのダイブ。確かにイングランドは外の血を取り入れるのはいつでも早かったね。


(オマケ)ユーロ2004の時の「ガーディアン」紙のCM。 この頃はまだ他国への皮肉だった・・・。

 

Tuesday, April 24, 2012

ファイナル進出のためにチェルシーがカンプノウですべきこと

1stレグでの戦いぶりからも、チェルシーが引いて守ってバルセロナが圧倒的なボール支配とともに押し込む、という図式を誰もが予想している2ndレグ。それでもバルセロナのホームカンプノウでの一戦となれば、それも一筋縄ではいかないはず。

そんな状況で、何を念頭にチェルシーは戦うべきか、についてプレミアのご意見番、アラン・ハンセンが「テレグラフ」紙に語った。


++(以下、要訳)++ 

アラン・ハンセンが、チャンピオンズリーグ準決勝の第2戦に向け、チェルシーが守るべき5つのポイントを挙げている。


マスチェラーノを狙え 

バルセロナには守備面で脆さがあり、私は長い間ハヴィエル・マスチェラーノがディフェンスラインの弱点だと考えてきた。 彼は中盤の選手で5フィート8インチしかないが、バルセロナは素晴らしいチームであり、それでもやりくり出来てきた。

リバプールにいた頃、マスチェラーノは直感的な飛び込みでしばしばボールを奪っていて、その能力は今でも高いが、センターバックのポジションでそうプレーすることはできない。 

チェルシーの1stレグでのゴールはそこがポイントだった。マスチェラーノの守備のノウハウの欠如が、カルレス・プジョルとの連携の悪さを生み、それがディディエ・ドログバのゴールにつながるラミレスのクロスを許してしまったのだ。

結果的には、マスチェラーノは自分のポジションに戻るために素早く調節することができなかったのだ。彼は最初のスローインの場面でもブラニスラフ・イヴァノビッチへの対応を誤り、先制ゴールを献上しそうだった。

彼の存在が、バルセロナの4バックに安心感をもたらすことはないだろう。 また、彼が直感的なタイプであるがために、PKを与える可能性が高いディフェンダーだとも言える。火曜のチェルシーは、彼を標的にすれば良い結果を得られるかもしれない。


空中戦を仕掛けろ

バルセロナは空中戦で脆い。これは弱点の中でもカギとなるもので、チェルシーは積極的に突くべきだ。単純に、バルセロナにはこれに適切に対処する方法がないのだ。

パス回しの早さで守備に苦しんだのなら、守備を深い位置に敷くこと、18ヤードのボックス近くまでラインを下げることで対処できるだろう。

しかし、空中戦につながるクロスやセットプレーに敏感になったとして、それらに対する欠陥をカバーする方法などないのだ。

もしペップ・グァルディオラがジェラール・ピケを復帰させるなら、それは改善だろう。彼はマスチェラーノよりもすぐれたディフェンダーだからで、重要なのは彼が6フィートを超える長身で、高さをもたらすことが可能なことだ。

しかし、ピケが入っても高さには不足があり、その弱点があってもヨーロッパを圧倒出来てしまうというのが、彼らがどんなチームであるのかを象徴している。

土曜のカンプノウで、レアル・マドリッドが2-1で勝った試合、その先制点はバルサの空中戦での弱さを際立たせたし、チェルシーは同じ方法でゴールを奪えるかもしれない。

あらゆるコーナーキック、フリーキック、スローインが、チェルシーにバルセロナの弱点を突く機会を与えるだろう。そして、残り20分になっても決着がついていなければ、それが彼らの武器となることに気づくはずだ。


形を維持すること

ポジション面での規律は、メッシへの対応と並んで決定的に重要だ。バルセロナを相手にする時に基本原則とも言えるが、口で言うのは簡単でも実行するのは難しい。

ジョゼ・モウリーニョのインター・ミランが2010年の準決勝でバルセロナを破った時、戦術は素晴らしいほどに機能した。しかし、同じことを翌年レアル・マドリッドでやろうとした時には失敗に終わった。早々に先制点を許したからだ。

レアルは追いかける展開となり、血祭りにあげられた。クリスティアーノ・ロナウドは前線で孤立してカンカンに怒るばかりだった。

単純に、チェルシーはボールを失ったらすぐにポジションに戻ることが求められる。これを先週は忠実に実行したが、同じことをカンプノウでさらに90分間やるのはより難しいことだ。それでも、すべてのフィールド・プレーヤーが可能な限り早くポジションに戻るというのは大事なことだ。

先週はそれがうまく行き、実際、3対3や4対4となった場面を私は思い出すことが出来ない。

戦術的には、ディ・マテオのさじ加減次第だ。チェルシーはイケイケでゴールを狙い、バルセロナが3点必要な場面を作りに行くことはできないが、90分間引きっ放しでは、やがてバルサに仕留められてしまうだろう。


メッシを自由にさせるな

リオネル・メッシの周りのスペースをつぶすこと。メッシにマンマークの選手を貼ることに意味はないし、ロベルト・ディ・マテオがそうしたいと思うとも考えられない。

しかし、先週水曜のスタンフォード・ブリッジでチェルシーが証明したのは、周りのスペースを消すことで、メッシの脅威は薄めることができるということだった。

彼は世界最高の選手で、彼がトップフォームにあるならばチェルシーにも止める術はほぼ無い。しかし、今の彼はベストの状態ではないし、望みはある。

バルセロナにスペースがあれば、世界のどのチームよりもボールを素早く動かすし、守備と中盤のラインの間でプレーさせれば、メッシ以上の選手はいない。

それでも1stレグでは、チェルシーは超規律ある動き(ultra-disciplined)をすることで彼の周りのスペースを埋め、メッシもバルセロナも試合を決めるようなチャンスを作り出すことはできなかった。

これはチェルシーの選手がボールを奪われると即座にポジションに戻っていたからだ。2、3秒の遅れもなくすぐに戻ることで、バルセロナとメッシは切り込むスペースを見つけることができなかった。


パフォーマンスを見せるべき守旧派

この夜は、ドログバとテリーのためにあり、チェルシーがファイナルに進出するためにある。チェルシーとしては、ディディエ・ドログバとジョン・テリーが先週と同様のプレーをすることが大事だ。

火曜の試合は、テリーのキャリアの中でも最大の大一番だろう。この6週間の彼のプレーは素晴らしく、彼が織りなすチェルシーの守備が試合の肝となる。

彼は常にディフェンス・ラインの位置を把握しているし、すべてを組織している。彼が先週バルセロナの一員であったなら、チェルシーにアドバンテージをもたらしたあの失点は生まれなかっただろう。

ドログバについては、ディ・マテオは膝の怪我が試合までに癒えることを祈っているだろう。彼の高さと強さは、先週そうだったように、相手ディフェンダーを弾き飛ばし、バルセロナにあらゆる種類の問題を引き起こすことができる。

彼が間に合わなければ、フェルナンド・トーレスを使うことになるだろうが、そこまでの自信を得ることはできないだろう。彼はもはや、かつてのようにディフェンダーを振り切ることができるようにも見えないし、ドログバのようなパワーも持ち合わせていない。

火曜の夜、バルセロナはおそらくゴールを決めるだろう。つまり、チェルシーもゴールを決める必要があるということだ。ドログバがいることで、チェルシーに対するその期待も持てるというものだ。

++++

元ディフェンダーらしく、守備の規律に論点が置かれてるけど、実際こういう展開になっちゃうのは仕方ないんだろうな。個人的には、こういう舞台でこそプレミアらしさとリーガらしさがぶつかって欲しいのだけど、程よく戦力が分散してるプレミアと、完全に二強に集中しちゃってるリーガとの対戦だと仕方ないのかな。っていうか、バルサだとこうなっちゃうのか。だとしたら、なおさら、レアル・マドリッドと対戦するチェルシーを見てみたい気もするけど。

Thursday, April 12, 2012

スパーズが失速した6つの理由

月曜の試合でノリッジにも敗れ、いよいよ失速の度合いが色濃くなってきたスパーズ。既に多くのメディアが失速の理由として、監督のハリー・レドナップが、ファビオ・カペッロの辞任によりイングランド代表の後任監督候補なってしまったことを挙げているが、他にどのような点が考えられるだろうか。「テレグラフ」紙のジェレミー・ウィルソン記者が6つのポイントに整理。


++(以下、要訳)++

トッテナム・ホットスパーは、プレミアリーグのここ8試合で僅かに1勝、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権確保に暗雲が立ちこみ始めている。ホワイト・ハート・レーンでは一体何がうまく行かなかったのだろうか?


不透明なハリー・レドナップの将来

ハリー・レドナップ本人は、トッテナムの失速とファビオ・カペッロのイングランド代表監督辞任が時を同じくしていることには何の関連もない、と頑として譲らない。正確なインパクトを定量化することはできないが、レドナップのカペッロの圧倒的な有力後任候補としての位置付けが、絶え間ない暗雲としてホワイト・ハート・レーンの上空にかかっていることに疑いの余地は無い。そして、フットボールの歴史が語るのは、選手たちは監督のいかなる種類の曖昧さにも前に向きに反応はしないということだ。トップチームのコーチングスタッフの将来もレドナップ次第であり、彼が何を言おうと、選手が将来を考える上で、監督がどうなのか、というのは切り離せない要素なのだ。ルカ・モドリッチは昨年の夏に出ていくことを考え、新たな契約がまとまったわけでもない。エマニュエル・アデバヨルのローンは夏に終わり、ギャレス・ベイルがヨーロッパのトップクラブから巨額オファーを受けるのは時間の問題だ。トッテナムは、自分たちとは関係のない場所での混乱によって困難な状況に置かれたが、彼らのシーズンが12マイル離れたウェンブリーでの突然の空位によって損なわれていることは、ますます明らかになってきている。


メンタルの強さ

トッテナムがエヴァートンに快勝し、マンチェスター・ユナイテッドに2ポイント差と迫った1月、フィル・ネヴィルはトッテナムがタイトル挑戦者に相応しいかを尋ねられた。3ヶ月後の今、彼の言葉はまさに予言だったように思える。「最大の試練は、そこまでの自信や自由を伴ってプレーすることができなくなる3月にやってくるだろう」ネヴィルはそう語っていた。「カギになるのは経験だと思うね。その段階で結果を絞り出せているかどうか、この質問には答え続けないとね」答は8試合で1勝という絶望的な流れだった。残り試合に向けてチームが一体感を取り戻せるか、が今の彼らへの精神面での試練だ。ニューカッスルには失うものがなく、チェルシーには他を大きく上回る経験値がある中、トッテナムのチームとしてのメンタリティには疑問の余地がまだある。


決定力を欠くストライカーたち

ストライカーたちのゴール数の少なさは、昨シーズンチャンピオンズリーグの出場権を逃す一因になった。エマニュエル・アデバヨルが加わりはしたが、今シーズンも歴史が繰り返してしまうかもしれない。昨シーズンのリーグ戦で唯一2ケタ得点を記録したのはラファエル・ファン・デル・ファールトだけだった。今季はアデバヨルがトップスコアラーで13ゴールを決めているが、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、ニューカッスルにはより多くのゴールを決めているストライカーたちがいる。しかし、最も危惧すべきは、クリスマス以降のストライカーたちの調子だ。クリスマス以降、4ゴール以上を決めている選手は1人もいない。ジャメイン・デフォーは実際、最高の時間当たりのゴール数を記録しているが、問題は、中盤とのつなぎにはアデバヨルを欠かすことはできず、彼が一番機能するのはファン・デル・ファールトと組んでいる時だ、ということだ。しかしながら、4位以内を死守できるかは、誰であれストライカーのひとりが残りの5試合でコンスタントにゴールを決める、ということに依存しそうだ。


フィットネスと疲れ

月曜にノリッジに敗れた後、キャプテンのレドリー・キングが「疲れ」について言及した点は見逃せない。確かにトッテナムは、同じく2日前にプレーしていたノリッジと比べて疲れて見えた。月曜の様子と、2012年に入ってからだけの結果ではトッテナムはボトムハーフにいるという事実からは、チームのフィットネスに対する疑問が湧いてくる。中心選手の何人かはケガと付き合わってきていて、FAカップ準決勝を迎える心理面と体力面での負担を考えても、今季前半にあったシャープさは無くなってしまっている。良い知らせは、スパーズは日曜のFAカップのチェルシー戦まで1週間近くあることで、残りのスケジュールの相手とは既に差が付いている。


選手層

トッテナムがプレミアリーグで6番目の給与総額でありながら、リーグのトップ近くで競い続ける選手層を作り上げた点は、大きな称賛に値すると信じている。自分たちのやり方を崩すことなく、ギャレス・ベイル、ルカ・モドリッチ、エマニュエル・アデバヨルといった面々をチームに引き付けることができているのは、彼らのスカウト戦略が成功している証しでもある。しかしながら、ここで明らかなのはチームが何人かのキープレーヤーたちに依存している、という点だ。マンチェスター・ユナイテッドに1-3で敗れた時には、負傷でベイルを欠いていた。ストークに手痛い敗戦を喫した時にはアデバヨル、そしてユナイテッド戦と月曜のノリッジ戦の両方で痛手だったのはスコット・パーカーの不在だ。また、ハムストリングの負傷でアーロン・レノンを欠いた時には、右サイドの彼のスピードが明らかに欠けていた。トッテナムにベストの11人が揃って彼らが皆フィットし、自信に満ちている時には、どこにでも勝つことができる。しかし、シーズンが進んでくると、比較的薄い選手層が露呈してきている。


試合日程

トッテナムの失速を分析してみると、その試合日程にも一定のウェイトが置けるだろう。アウェーでのマンチェスター・シティ、リバプール、アーセナル、エヴァートン、チェルシー、そしてホームでのマンチェスター・ユナイテッドとニューカッスル、これらの全てがこの9週間の間に押し寄せてきた。躓きがあるとすれば、シーズンのこのタイミングで起きる可能性が高かった。それでも、この先は残る2枠のチャンピオンズリーグを争う4チームの中では、トッテナムが一番楽な日程だ。トップハーフにいる相手は唯一フラムで、対戦は最終節のホワイト・ハート・レーンだ。ここのところの全ての困難を考慮しても、トップ4入りはトッテナム次第であることに変わりはないのだ。

++++

先月の「スパーズが3位に留まるために必要なこと」と比べてみても、みんな好き勝手言ってくれるよな、という以上の感想にはならないんだけど、冷静に考えると、大きく&たくさん取り上げられるようになったよなー、と感じる部分が大きい。

Saturday, April 7, 2012

リバプールの憂鬱を語る10の事実

カップ戦で出している結果で何とか示しがついているものの、リーグでは一向に調子が上向かず、チャンピオンズリーグ出場権は今季も夢と消えそうなリバプール。ダルグリッシュの進退に関しては大きな話は出ていないが、一体どうしてこうなっているのか。「ガーディガン」紙のマイク・アダムソン記者が10のポイントを指摘。


++++

1. もしプレミアリーグが元旦から始まっていたなら、リバプールは12試合で勝ち点8、順位表上は19位に位置していたことになる。下にはウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズがいるだけだ。

 トップ6
 マンチェスター・ユナイテッド(28)
 マンチェスター・シティ(26)
 ニューカッスル(23)
 サンダーランド(23)
 アーセナル(22)
 エヴァートン(22)

 ボトム6
 ウィガン(13)
 ストーク(12)
 QPR(11)
 アストン・ヴィラ(10)
 リバプール(8)
 ウォルヴズ(5)

2. リバプールは今季の目標としていたチャンピオンズリーグ出場権の4位から16ポイント差。むしろ彼らは降格圏に近く、18位のQPRとは14ポイント差である。

 トッテナム(58)
 リバプール(42)
 QPR(28)

3. リバプールは、リーグ戦ここ7試合で6敗している。ここまでの不調は1953-54シーズン以来で、この時は降格している。

4. 1953-54シーズンは1試合当たりの勝ち点(当時の勝利=2ポイントを現行化)でも今シーズン並みに低かった。今季ここまでの1試合当たりの勝ち点は1.35、31試合で42ポイントである。

5. リバプールの1試合当たりのゴール数は1.16、31試合で36ゴールであり、グレアム・スーネスが率いた1991-92シーズン以来の得点率の低さとなっている。

6. これまでリバプールは勝ち点、ゴール数の両方がここまで低いシーズンを送っていない。最も近いのは1923-24シーズンで、この時は42試合で41ポイント(0.98)、49ゴール(1.17)だった。

7. 今季のホームの結果は極めて悪く、15試合で僅か5勝、33%の勝率となっている。これについても降格した1953-54シーズンまで遡る必要があり、21試合で7勝しかできなかった。

8. リバプールの得失点差は+3、ここまで低いのは-6に終わった1964-65シーズン以来。

9. リーグ戦でのチーム得点王は26試合で7ゴールのルイス・スアレス。プレミア化以降、リーグ戦で2ケタ得点の選手がいなかったのは2004-05シーズンのみ、この時はミラン・バロシュの9ゴールが最高だった。

10. 2004-05シーズンはプレミア化以降唯一エヴァートンよりも下の順位でシーズンを終えている。現在エヴァートンはリバプールと1ポイント差の7位である。

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そういう主旨の記事だから仕方ないけど、これだとリバプールは夢もチボーも持てないな…。