年末以来、2011年のまとめ記事が出てきた(ここでは「ヘンリー・ウィンターが振り返る2011年」と「アラン・スミスが選ぶ上期のベストゲーム、ベスト10」をピックアップ)のと同様に、メディアのあちこちで2012年の予想や展望を語る記事が出てきたけど、内容的に好感が持てたBBCのフィル・マクナルティ主幹のものをピックアップ。始めと結びの「外れたって誰も気にしやしない」ってのがナイス。
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今年もこの時期がやってきた。ヒビだらけでまったく信用できない水晶玉にかかったクモの巣を取り払い、2012年にフットボールに何が起きるかを懸命に見入るのだ。
この世界の言葉で言えば、そんな当てにならない予想は受け手が困る「病院送りのパス」に等しいが、同僚記者のハワード・ナースがかけてくれた「気にするな。間違ってたって誰も気にしないさ」という言葉と共にやらせてもらうことにする。
実際、私が以前に「2009-10シーズンはリバプールがタイトルを獲る」なんて恥ずかしくも予想したことなど誰も覚えていないだろう。予想はかすりもせず、たった23ポイント差の7位だった。
この2012年のハイライトはポーランドとウクライナで開催されるユーロ2012だろう。ファビオ・カペッロとイングランド代表は、後に続くロンドン・オリンピックに向けて完璧なムード作りをするチャンスを与えられている。
イングランドは余裕を持って予選を通過したが、2010年の南アフリカワールドカップ、ドイツ戦での大崩壊は、イングランドへの期待値を低いままにしている。カペッロは何とか前向きなムードを作りだそうと、ここ数カ月は若手の登用に励んでいる。
そしてカペッロはスティーブン・ジェラードとジャック・ウィルシャーがコンディションを戻して中盤でコンビを組むことを望んでいて、それがグループステージ最終節の共催国ウクライナ戦で、フランス戦、スウェーデン戦に出られないウェイン・ルーニーが戻ってくるまでチームに可能性を残しておくための基盤にするつもりでいる。
アイルランドは、スペイン、イタリア、クロアチアと同居するタフな課題に直面することになるが、ここを勝ち抜く術を見出す男がいるとすれば、老将ジョヴァンニ・トラパットーニだろう。このグループに衝撃を与える能力は十分にある。
カペッロ政権は大会後に終焉を迎えるが、現実的に考えて準決勝に進出できれば、カペッロも尊厳を以って退任できるだろう。ベスト8でも何とか穏やかなムードで終えられるかもしれない。
これは、2012年にFAがこのイタリア人監督の後任を指名する必要があることを意味している。全てのフットボール界のロジックは、トッテナムの監督であるハリー・レドナップこそその男だと示している。彼の国籍、フットボール哲学、抜け目のない人心掌握術で大物選手から最高の力を引き出す能力に白羽の矢が立った格好だ。
仮にレドナップが就任するとなったら、誰がスパーズを率いるのか?その鍵を握るのは、エヴァートンの会長ビル・ケンライトが、デイビッド・モイーズを助けるための終わりなき資金繰りをどうすべきかを、いかに結論付けるかだ。
モイーズは2012年にエヴァートンを率いて10周年を迎えるが、新たな資金が無ければこれ以上チームを前進させるのは難しいだろう。彼は財務に慎重なスタンスであることも、もし監督の座が空位となるのであれば、スパーズの会長であるダニエル・リヴィにアピールするところだろうし、リヴィの取り巻きもモイーズには大きな敬意を抱いている。
予想をする必要が無くなったのは、マンチェスターの2クラブのチャンピオンズリーグでの命運だ。グループステージをたとえ勝ち抜けていたとしても、バルセロナやレアル・マドリーを向こうに回して成功を収められると考えるとしたら、よほどの楽観主義者だろう。実際のところ、2012年についてはバルセロナ以上の存在は見当たらない。
ヨーロッパリーグはそのマンチェスターの2クラブの目標 -両クラブとも最終的にタイトルを獲る大きなチャンスがある- となっているが、より優先されるのはプレミアリーグのタイトルの方だ。そして、その争いはマンチェスターの街で争われるものとなる可能性が高まっている。
このマンチェスターの覇権に待ったをかけるのは、ロンドンの別の一角のクラブ、トッテナムだ。彼らは、偉大なるホワイト・ハート・レーンの伝統に忠実な、ペース、パス、ゴールの三拍子揃ったフットボールで、このエキサイティングな争いに名乗りを上げてきた。
スパーズはマンチェスターの2強に割って入るアウトサイダーの域を出ないが、レドナップが創り出すエンタテインメントは、今シーズンを彩る要素のひとつであり、プレミアリーグのどのチームよりも観る価値がある。スパーズがタイトルを勝ち取れるか?彼らはアウトサイダーだが、その躍動感とクオリティは、流れが変わるリーグの中で、確かな存在感を示すはずだ。
私のシーズン前の予想は、ユナイテッドがシティを制してフィニッシュし、20度目のリーグタイトルを勝ち取る、というものだった。ロベルト・マンチーニのチームは、その予想を逆にさせる調子だが、エティハド・スタジアムで無視できないだけの証拠が揃うまでは、今のところは最初の予想にこだわっておこうと思う。アーセナル、チェルシー、リバプールがスパーズの背後で残りひとつのチャンピオンズリーグ枠をかけて4位の座を争うだろう。
アーセナルとチェルシーは、今やチャンピオンズリーグのイングランド代表だが、彼らがユナイテッドやシティ以上にトロフィーを勝ち取る可能性が高かったとは思わない。それぞれACミラン、ナポリとのタフな対戦を控え、その先に到達できる可能性こそあれ、優勝候補の姿には程遠い。
チャンピオンズリーグの舞台に戻るというケニー・ダルグリッシュの希望は、7,800万ポンドを費やしてルイス・スアレス、アンディ・キャロル、そしてスチュワート・ダウニングを補強してきたことからは考えにくいが、ゴール不足によって遠のいてしまっている。それでも、カップ戦では強さを発揮できそうであり、ダルグリッシュがリーグカップかFAカップでアンフィールドにタイトルをもたらす可能性は高いと見ている。
スティーブ・キーンのブラックバーンでの将来、そして彼が自チームのサポーターから受け続けるうヤジは、2011年のプレミアリーグの物語の一部だった。2012年には、あと何章分追加されるだろうか?インド系ヴェンキーズがオーナーになって以降のブラックバーンの転落は既に語り尽くされているが、この古き良きクラブがいかに騒動から脱することができるかが、プレミアリーグでの生き残りにも大きな役割を果たすことになる。
降格回避の争いには、ブラックバーン、ボルトン、ウィガンとランカスター地方の香りが漂うが、いずれのチームも数カ月のうちに簡単に安全圏へと抜けられそうにはない。
私は8月にブラックバーンとウィガンを、スウォンジーと共に降格候補に挙げた。しかし、ブレンダン・ロジャース率いるスウォンジーは、既に残留に足るだけの力があることを証明して見せた。この結果、ボルトンがもう一つの降格候補となっている。ボルトンは昨季ウェンブリーで行われたFAカップ準決勝でストークに惨敗して以降の失速に歯止めがかかっていない状態だ。
したがって、ブラックバーンとウィガンの周辺には依然として降格ラインが見え続けるだろうが、降格確定は今季も最終節までもつれると見ている。
そんなところだ。水晶玉はまた奥にしまってしまうが、ひとつだけ確かに言えることは、2012年がフットボールで記念すべき年になるだけの要素は十分に揃っているということだ。
予想について?このひと言を心に留めておいて欲しい:「外れたって誰も気にしやしない」
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個人的にはスパーズについての前向きなコメントが嬉しかったけど、変にカタくならず、ストレートな語り口なのが良かった。
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