いつもはどちらかというと「賞味期限」の長い記事を選んでるのだけど、今回はその意味では凄く短いもの。週末、奇しくもロンドン対マンチェスターの構図となった日曜の2試合に焦点を当てた、アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記事。
++(以下、要訳)++
少なくとも、2012年のイングランドのプレミアリーグは、2つの大都市、ロンドンとマンチェスターに2分されたライバル関係として記憶されることになるだろう。両都市のトップクラブたちは、どのようにしてこのフットボールというゲームを勝つかについて、次第に異なる考えを見せ始めているようだ。
このあまり紳士的とも思えない論争は1990年代から大きくなり続けているが、日曜日の2つの試合によって、あらためて焦点が当たるだろう。この2試合は、2つの都市を象徴し、各チーム同様に世界で最もポピュラーになったリーグの現状を表すものになるはずだ。
このプレミアリーグの覇権が懸かった舞台は、トッテナム・ホットスパー対マンチェスター・シティ、そしてアーセナル対マンチェスター・ユナイテッドの対戦で、ちょうど伝統的な労働者階級の北部と、金銭的に豊かな南部との戦いの構図だ。同時に、今さかんに言われている美しいフットボールをプレーするための「正しい方法」についての危機を象徴してもいる。彼らはそれぞれ、今起こっている財力と脳力との戦いを端的に示しているのだ。
リバプール出身の作家であるロジャー・ベネットは「これは国の中での栄光を掛けた戦いだが、それはパニックと恐怖に満ちている」と語った。
1980年代には、そうした地域間の戦いは殆ど注目されなかった。スタジアムのチケットの売上への悪影響を懸念したFAは毎週のハイライトとFAカップくらいしかテレビ中継をしなかった。
それが変わったのが1992年のプレミアリーグの誕生で、新たなテレビ放映権販売によって、ファンはいつでも労働者階級の北部のチームが、ロンドンを中心とした南部のチームと対戦するのを観ることができるようになった。都市内のダービーマッチに頭がいっぱいだった人々は、ユナイテッド対アーセナル、リバプール対チェルシーといった対戦にもいちいち気を留めるようになった。
それでも、10カ月に及ぶプレミアリーグのシーズンが始まった8月に、イングランド中が思いもしなかった特別な注目を浴びた試合があった。
8月28日、トッテナムと今季最初の対戦をしたマンチェスター・シティは5-1彼らをで叩きのめし、ユナイテッドは、アーセナルを彼らにとって過去114年で最悪となる8-2で打ち負かし、アーセナルの低調な開幕を際立たせた。
世界でも有数のサラリーを受け取る選手たちが揃うマンチェスターの2チームは優勢に見えた。5ヵ月が経ち、彼らはリーグの上位2席を不安定に占めている。ユナイテッドは続出するケガ人に悩まされ、シティのシーズンは毎週栄光に満ちた行進から不条理な演目へと姿を変えて行っている。
マンチェスター・シティのスター選手の一人であるカルロス・テヴェスは、後に誤解があったと釈明したものの、バイエルン・ミュンヘンとの試合に交代選手として出場する明白な侮辱を拒み、チームから追放された。21歳のチームメイト、マリオ・バロテッリは、不注意にピッチでイエローカードを集め続け、マンションでの花火遊びや、自分のアウディA8で交通事故を起こして見出しを飾っている。先月、マンチェスターの両チームはチャンピオンズリーグから敗退した。
その一方で、悲惨な開幕から復調したアーセナルは、10月の半ばから9勝1敗2分、この間25得点10失点で乗り切って来ていた。アーセナル(とロンドンのライバルであるチェルシー)がチャンピオンズリーグに残っている一方、最近のフラムとスウォンジー・シティに対する2つの敗戦は、アーセン・ヴェンゲルをしてチームに覚醒を促させている。
トッテナムも同様にマンチェスター勢への敗戦から立ち直ってきた。日曜にシティに勝つことができるなら、圧倒的に小規模な給与水準のスパーズが、首位に2ポイント差まで詰め寄ることになる。1961年以来リーグタイトルを勝ち取っていないチームとしては大きな達成と言えよう。「彼らは恐らくリーグの中で他のどのチームよりも素晴らしいフットボールを展開している」と元ウェストハムのゴールキーパーだったシャカ・ヒスロップも語っている。
マンチェスターの両チームは、その分厚い選手層を活かしてライバルを圧倒しようとしている。ディフェンスは安定していて、ラインのキープを第一の目的とし、攻撃陣は、バルセロナのようにポゼッションをし、短いパスをつなぎつつ、ダイレクトパスをアタキング・サードにいち早く入れる展開を好む。
ヴェンゲルの下でのアーセナルは、決して重厚な守備で称賛されてはいない。しかし、プレミアリーグにおいて、その美しくテンポの速いパスゲームでバルセロナに最も近づき、バレエのようなゴールを決めている。そのゴールの大半は、ストライカーで、現在18得点とリーグ得点王であるロビン・ファン・ペルシの魔法の左足から生まれている。
トッテナムの進歩は、オランダ風の「トータル・フットボール」の実践から来ており、選手たちは上下のオーバーラップを繰り返し、ペナルティ・エリアに次々とクロスが送られる。この戦術は、ここまで20試合で6得点と好調なウェールズ人ウィンガーであるギャレス・ベイルを、リーグで最も恐れられる選手へと成長させた。ベイルは試合の間でも左から右、中盤へとポジションを変え、サイドにボールを展開させさえする。
評論家で元イングランド代表のクリス・ワドルは、「誰だってギャレス・ベイルのことは知っているが、アーロン・レノンがいることで両サイドにスピードが生まれ、非常に危険な攻撃を展開できる」と語っている。
日曜のマンチェスター・シティとトッテナムの今季2戦目は、トッテナムの監督であるハリー・レドナップの創意工夫が、シティのオーナーであるアブ・ダビのシェイク・マンスールによって3.1億ポンドをかけて集められたタレント集団を打ち負かすことができるか、という試練だ。
レドナップのチームはあまりメンバーをいじらず、8月のマンチェスター勢への敗戦以降は1敗しかしていないが、このチームを作るのにかかったコストは8,300万ポンドだ。レドナップはクラブのタイトルについて、以下のように語っている。「不可能じゃないさ。難しい注文であり、我々はアウトサイダーのひとつにすぎないが、不可能じゃあない」
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とまぁ、日曜の2試合を前に、各チームをバランス良く紹介した格好。我らがスパーズを良く書いてくれるのは嬉しいけど、「トータル・フットボール」とはね。ぐふふ。
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