Friday, February 3, 2012

目を覚ました各クラブ、静かな移籍市場は必然か

結局大きな動きの無いまま終了した1月の移籍マーケット。トーレス、キャロルが動いた去年と比べるとインパクトも小さいが、こうなった要因はFFPの導入が迫っていること以外にもあるのでは、という「ガーディアン」紙のデイビッド・コン記者の見方。


++(以下、要訳)++

かつても動きの少ない移籍市場(トランスファー・ウィンドウ)は以前にもあったが、今回はUEFAが示すファイナンシャル・フェアプレー(FFP)のガイドラインが、クラブの支出に影響を与えている。

1月の移籍市場ででたらめな賭けをしてフットボールの健全な未来を占おうとしても、それはいかがわしい詐欺に満ちたものになるだろう。移籍締切日のランチタイムになっても、大きな話がまとまる雰囲気はない。今年の動向について言おうとするなら、2011年に史上最大となる2.25億ポンドが投じられた移籍締切日の浪費や見出しを飾る大型移籍は、とても起こりそうにないということだ。息が詰まっていたプレミアリーグにも、空気の入れ替えが必要なのだ。

この慎重さの要因が、UEFAが赤字でも出費を続けるクラブに対して、収支のバランスを取らなければ罰則の対象になると定めたファイナンシャル・フェアプレー(FFP)であることは明らかだ。直近の決算でも1.97億ポンドの損失を計上しているマンチェスター・シティや同じく7,800万ポンドの損失となったチェルシーは、富豪オーナーたちが過度な出費を続けていくと、最悪の場合チャンピオンズリーグの出場権を剥奪されることになる。

当然そこには何らかの狙いがある。かつてはFFPをヨーロッパ的で、ミシェル・プラティニがイングランドの資金力に対抗するために騒いでいる謀略だと考えてきたプレミアリーグの各クラブも、損失を圧縮し、選手の給料を抑えることも悪くないのではないか、と気付き始めている。クラブの役員たちはUEFAのルールにインパクトがあることを理解し、クラブには代理人や選手たちからの要求に抵抗するためのエクスキューズが用意された。オーナーたちも、給料や移籍金が跳ね上がるスパイラルに陥り、大幅な損失を計上することになるため、制約の無いマーケットを持つことは本意ではないと考えるはずだ。

それでも、先週のUEFAが改めてこのFFPの目的を明確にした点からは、各クラブが即座に「長期的視野と持続性」に移っているとは言えない側面も見てとれる。2年前、2010年1月の移籍市場も緊縮されたもので、各クラブで合計3,000万ポンドしか使われなかった。当時シティの監督だったマーク・ヒューズは、4人の選手に5,000万ポンドを投じた後で、ここでは700万ポンドでアダム・ジョンソンを獲得するに止まっていた。FFPの概要が明らかになりつつある頃で、皆が現実的になっていたのだ。その1年後、昨年はヒューズの後任であるロベルト・マンチーニが、長らく追っていたエディン・ジェコを2,700万ポンドで獲得し、アストン・ヴィラはダレン・ベントの獲得に1,800万ポンド、ロマン・アブラモビッチはチェルシーには2,650万ポンドをかけてもダヴィド・ルイスが必要だと判断し、リバプールはルイス・スアレスに2,280万ポンドを費やした。そしてのその眩いばかりの移籍最終日にアブラモビッチはリバプールからフェルナンド・トーレスを買うために5,000万ポンドの出費を認め、リバプールのオーナー、フェンウェイ・スポーツ・グループもアンディ・キャロル獲得のために3,500万ポンドをニューカッスルに振り向けた。世界はフットボールはまた常軌を逸したと考えた。

プレミアリーグのクラブの中には、この騒動の結果、特にトーレスとキャロルの不調が計8,500万ポンドのほんの一部も正当化できない現状が、今季の慎重さを生みだしていると考えるところもある。サー・アレックス・ファーガソンがいつも言うように、1月の移籍市場は問題があるウィンドウだとも言われてきている。選手を買う必要があるクラブはどこも必死であるため値段が高騰する一方、加入する選手たちはシーズン途中の加入でフィットするのが容易ではない。

アブラモビッチは2011年の散財が何のタイトルにも結び付かず監督をまた一人解任したこともあり、今年は静かだ。シティは、UEFAにFFP正式導入の2014-15シーズンを前に、収支をチェックされる2012年、2013年の会計がどうなるかを懸念している。この移行期間の間も、オーナーがそれをカバーするのであれば、4,500万ポンドまでの損失しか認められていない。オーナーのアブ・ダビは、カルロス・テヴェスとの衝突があったにせよ、マンチーニはシェイク・マンスールが買収以来3年半の間に投じてきた8億ポンドの投資でリーグタイトルを勝ち取るべきだ、と判断した。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リバプールは、利益を上げようとするアメリカ人オーナーが保有しており、トロフィーによる自らのアドレナリンのために資材を投じたりはしないことから、彼らが出費を抑えているのは驚きではない。フェンウェイのオーナーであるジョン・ヘンリーは、キャロル獲得のためにニューカッスルに支払った金額は、トーレスの移籍金で得た金額に紐付いている、と語った。多くの出費をしながら、リバプールの収支はトントンだった。

こうしたメガクラブを除けば、プレミアリーグは以前に比べて安定化の傾向が強まっている。トッテナム・ホットスパー、ニューカッスル・ユナイテッド、ストーク・シティ、アストン・ヴィラ、サンダーランド、フラム、ウォルバーハンプトン・ワンダラーズなどは、資金力のあるオーナーの下でも、慎重に資金を使い、湯水のような出費には断固とした姿勢をとっている。デイビッド・モイーズが嘆くようにエヴァートンには使う資金は無く、降格圏内に沈むクラブがパニックに陥っての出費も少なくなってきた。

UEFAは、FFPが既に移籍金の高騰を抑えると言う目的のために機能し始めていると考えており、各クラブにも徹底を奨励している。選手にかけるコストについて、新たな慎重なアプローチができてきてはいるが、比較的静かだった移籍市場の動きだけで判断するのは早計だろう。絶え間のない野望や、金持ちの我慢弱さ、苦闘する者の必死さが実際の価値以上に金を使わせることは、穏やかになることはあってもなくなることはないからだ。

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スパーズの名前もチラリと出てきたけど、スパーズの場合は監督交代のサイクルがやってくる可能性があることも影響してるかな、と。今は脱税の件で裁判中だけど、本当に代表監督になれば、後任監督が好みの選手を獲るための資金はプールしておく必要がある。ベテランのレンタルが多いのもそういうことなんだな、と。

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