移籍市場の締切間際にリバプールからフランスのリールにローン移籍したジョー・コールは、リーグ・アンとチャンピオンズリーグでの活躍でイングランド代表に返り咲くことを夢見ている。一時はロンドンからの電車通勤が噂されたが、本人はしっかりとフランスに根を下ろして新しい生活を満喫している様子。チャンピオンズリーグでは、かつての指揮官でもあるクラウディオ・ラニエリが率いるインテルとの対戦を控えている。
++(以下、要訳)++
ジョー・コールはフランスに移り、生きる喜びを再発見して人生を謳歌している。それは学校に通ってフランス語を学ぶ気になるほど充実したものだ。この日の午後はトレーニングがあり、その後、彼と妻のカーリーは学生時代以来のフランス語のレッスンに通っている。
「こっちに来てからなかなか落ち着かなかったけど、ゆっくりだけど少しずつ慣れてきてるよ。学校通いもそのひとつさ。時間がある時にいはカフェに座って『レキップ』(フランスの新聞)を読んでるんだ。綺麗な街でね。何を期待したら良いのか分からずに来たけど、ここでの生活は悪くないよ。ここでは『北フランスに来たら人は泣く。しかし、そこを去る時にはいっそう泣く』って諺があるくらい、みんなこの場所と仲間意識を愛してるんだ。良かったと思うね」
コールがここまでポジティブでいるのを見るのは新鮮だ。この29歳のキャリアは航路を外れたかのように見えた。チェルシーとの契約が2010年に切れた時には、南アフリカで不名誉なワールドカップを戦うイングランド代表の一員に何とか踏みとどまっていた。リバプールへの移籍金無しでの移籍はキャリアを蘇らせるきっかけになるはずで、当初はリバプールに馴染むかに見えた。しかし、退場や数々の小さなケガ、監督の交代や経営陣の混乱が次第に彼を蚊帳の外へと追いやって行った。しかし本当の驚きは、それが代表クラスとしては22年前にクリス・ワドルがマルセイユに移籍した時以来となるリーグ・アンへのクラブへのローン移籍へとつながったことだった。
リールでプレーした国内リーグの数試合で、コールは既に称賛を浴びている。このインタビューの最中も、サインを求める多くの人々が我々の会話を遮り、「サンキュー」も言わずに去っていく。シミー(ダンスの一種)とダーツ、交代出場でデビューしたサンテティエンヌ戦のアシストが、コールのリズムを作り出している。それが本格化したのは、25ヤードのシュートでロリアンのファビアン・オダールを抜いた時だった。チームは潤沢な資金で大型補強をしたパリ・サンジェルマンから6ポイント差の3位、火曜日にはチェルシー時代のコールの指揮官だったクラウディオ・ラニエリ率いるインテルとチャンピオンズリーグで対戦する。リールはヨーロッパで最もテクニックに秀でたリーグのひとつであるリーグ・アンで輝き、来年の夏には55,000人収容のスタジアムに居を移すクラブである。コールが運が自分に向いてきたと感じるには理由があるのだ。
「イングランド人が海外に行くと言うと、ビールを10パイント飲んでカラオケを壊しているイメージだろうが、フットボールとは関係なく、僕と妻にとっては違う国に住むチャンスだった。僕はカムデン・タウン(ロンドン北部)の出身で、フランスに住んだり、フランスでフットボールをする機会に恵まれるとは夢にも思わなかった。イングランドの選手には海外に行かない、とネガティブなイメージがある。僕は自分がその認識を変える助けになれると思いたいね。自分を試しているようなものさ。僕は多くの外国人がイングランドにやってきて皆と交わり、チームメイトと夜な夜な出かけてイングランドのメンタリティに馴染んでいったのを見てきたし、逆にためらいがちだったり、シャイで苦しむ奴らもね。だから、僕もできるだけ自分から溶け込もうとして
そのひとつ。水晶玉で未来を予期でいていたら、学生の頃のフランス語の授業をもっと頑張ったけど、その頃は単に興味がなかった。今はセロから始めてるようなものさ。ミシェル・トーマスのオーディオ・ブックを聞いて、毎週クラスでのレッスンにも行ってるよ。自分でコーヒーや水くらいはオーダーできるし、小さなことを少しずつ覚えているところだね。今日は。『練習は何時から?』ってチームメイトに聞いて『午後からだよ』と教わった。そういうところからね」
「9カ月で流暢に話すのは難しいだろうけど、うまくやって行きたいんだ。すこし大きな文脈で考える必要があるね。ウェストハムではリチャード・ガルシアと育ったけど、彼は15歳でオーストラリアからイングランドにやってきた。それは本当に国を出る、ということだ。僕のキャリアは、と言えば、東ロンドンから西ロンドン、そしてリバプール。今だってユーロスターに乗ればすぐにロンドンに行ける。まぁ、もうイングランドに家は無いし、滅多にしないけどね。時に自分の地平線を拡げる必要があるってことさ。今までと違う経験をしてね。この間、初めてカエルの足を食べたけど、脂の乗ったチキンみたいで本当に美味しかった。素晴らしいよ。街の真ん中に店があるから行ってみなよ」
そう含み笑いで言ったが、コールはこうして新しい生活にピッチの内外で挑戦している。いまリールで見せているプレーは、彼の才能を垣間見せているだけだったのかもしれないとリバプールのファンを苛立たせるかもしれない。
「単に十分なプレーができなかったんだ。退場になったし、戻ってきてもチームはロイと共に難しい時期にあった。戦術も僕には合わなかったしね。ロイは凄く難しい仕事に直面してたし、彼を批判しようとは思わない。でも、チームのプレーが良くなければ、最初に外されるのは若い選手や感覚でプレーする選手なのさ。そういうものなんだ」
「監督がケニーに代わってからは、僕がケガをしている間にチームが固まっていた。ウェストハムやチェルシーにいた頃はパッと入ってすぐにインパクトを残して、そのままチームに居座れた。リバプールではまた若手の一人に戻った感覚で、チャンスを掴むにはいつも何か特別なことをする必要があった。そしてそれが起こることは無かった。リバプールが好きだし、誰を批判するつもりもない。クラブの考えがあることも分かるよ。でも、僕はここにきて再びプレーする必要があった。今まで、選手が新しい国に来れば慣れるのには時間が掛かった。ルイス・スアレスみたいにすぐにインパクトを残せるのは稀だよ。僕には慣れている時間は無い。4年契約で来たわけじゃなく、ここに9ヶ月の予定で来た」
インパクトのあるデビューは、レフェリーがプレミアリーグよりも選手を守るリーグ・アンが彼に向いていることを示唆している。試合のペースも大慌てというよりは正確だ。リュディ・ガルシア率いる攻撃的なリールはコールにも合っているし、彼の横には才能溢れるエデン・アザールもいる。唯一ショッキングだったことと言えば、自分のスパイクを自分で磨く必要があったことだ。「イングランドじゃ一度プロになったら全部放ったらかしさ」とコールは語る。「国内の試合は、戦術的にはチャンピオンズリーグの試合をやってる感じだよ。今まで対戦した相手は、みんなしっかりしたフットボールをプレーしようとするし、ヨーロッパのレフェリーはテクニカルな選手を輝かせようとしてくれるね」
「アタッキング・サードまで行けばディフェンスもしっかり詰めてくるし、テンポは変わらない。でも、いったん引けば我慢強くビルドアップする時間もある。クレバーに動く必要があるよ。今まで必要のない動きも沢山してきたし、プレミアリーグじゃサイドバックにプレッシャーを掛けにも行ってた。イングランドじゃ、「前から行け」って後ろから叫び声がするからね。でも、ここでそうやって後ろを見てみると、「何やってんだ、力を残しておけ」って言われるんだ。学んでる最中だけど、これは予想していたことさ。学ぶのをやめたらプレーする意味は無いからね。マスターした気になるかもしれないけど、フットボールをマスターした奴なんて一人もいないよ」
この序盤の高まりを維持できるなら、フランスでの長い将来が訪れ、ワドルと並ぶカルト的な人気を勝ち取るかもしれない。リーグの上位とヨーロッパでの活躍が、ファビオ・カペッロにあのドイツ戦で今のところ最後となる56キャップ目を刻んだ選手がいることを思い出させることは確かだ。「代表でのプレーは懐かしいよ。10年レギュラーを張ってきて、そこにいるのが当たり枚に感じていたのかもしれない。いまこうして1年も呼ばれなくなって、11月には30歳になる。若手もどんどん入ってきているから、まだ僕のことを見てくれてるのかな、って気にはなるよね」
「気付いてもらえたらいいと思ってるよ。イングランドの人々の多くは、何で僕がフランスに来たのか不思議に思っているし、きっと忘れてしまうだろう。まだ完全には終わってないと思ってくれているかもしれない。彼らが間違っていることを証明したいわけじゃないんだ。それは誤ったモチベーションだよ。でも、僕は自分がまだトップクラスの選手だと証明したい。今の環境ならそれができると思ってるんだ。この間、ジョン・テリーが、僕と南アフリカでサメと泳ぎに行きたがった、って話をしていたのを見たよ。カゴに入ってるんだよ、もちろん。結局ダメって言われたけど、僕はそうして違ったことを試してみたいんだ。サメと泳いだりね。フランスに住むってのもそういうことさ」
このイングランド人は、海外ですっかり我が家の気分を味わっている。
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ロンドンに住んでた頃、他の留学生と「地元の奴らはチャレンジしないよな。旅行に行っても結局フィッシュ・アンド・チップかマクドナルド探してるし」って話してたのを思い出した。僕らが思ってる以上に内向き志向なんだよな。
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