Wednesday, October 26, 2011

オールド・トラフォードの午後から分かったこと

衝撃的な結果となったオールド・トラフォードでのマンチェスター・ダービー。「この試合から分かった5つのこと」をさっそくコラムとして「テレグラフ」紙にアップしたのはアーセナルのOBでスカイの実況解説者としても知られるアラン・スミス氏。しかしこの記事の写真のマンチーニの表情…。


++(以下、要訳)++

1. マンチーニは良いメンバーを選択した

このダービーに向けて、ロベルト・マンチーニはいくつかのアプローチを取ることができた。トップにエディン・ジェコを置き、ジェームス・ミルナーの代わりにサミ・ナスリを使うこともできた。そして、マイカ・リチャーズでなく、パブロ・サバレタで守備を厚くすることもできただろう。しかしそうはしなかった。マンチーニは自分の本能を信じ、それが正しいことが証明された。ミルナーとリチャーズは出色の出来だった。そして、無鉄砲なマリオ・バロテッリについて言えば、指揮官の信頼に応えるのにこれ以上はできないほどだった。


2. サー・アレックス・ファーガソンも人間だ

ここで言っているのはメンバーの選択のことだ。中盤が強力な相手に対して備えをしないのは珍しいことだったからだ。シティは、ダヴィド・シルバが中に流れてくると、ミルナーも同様にギャレス・バリーとヤヤ・トゥーレに加わる。結果的にアンデルソンとダレン・フレッチャーは対処できなくなるだけだ。ユナイテッドはエヴァンスが退場になる前から数的にも完全にシティに裏をかかれていた。


3. ユナイテッドのディフェンスには安定感が必要だ

彼らにはネマヤ・ヴィディッチと固定されたパートナーが必要だ。ユナイテッドがケガで台所事情が苦しいことは理解しているが、ジョニー・エヴァンスはそのレベルにはまだ少々足りていないことを露呈した。バロテッリを止めるには、ああしてファウルをせずにもっと気を利かせる必要があった。あれではレフェリーは退場させざるを得ない。あれは起こしてはいけないミスだったし、強力なセンターバックがいる守備陣なら犯さない類のものだ。


4. 選手層の厚さ

シティにはユナイテッドを上回る選手層がある。大げさな言い方はすべきではなく、今日の試合はひとつの結果に過ぎない。シティはまず、覇権の移行が正しい焦点を当てられる前に、彼らが一体どこまで行けるのかを証明する必要があるだろう。それでもなお、シティが手にしている戦力に注目すれば、ジョー・ハート、ヴァンサン・コンパニ、ヤヤ・トゥーレ、シルバ、ナスリにセルヒオ・アグエロ、誰がユナイテッドに行ってもポジションを奪えるはずだ。同意するしないに関わらず、選手層というのはそうした側面から議論されるべきだ。


5. ついにやってきたシティ

彼らは本物のタイトル挑戦者だ。これまで我々は散々疑問の目を向けてきたが、この勝利はそれを打ち砕いて見せた。もはや誰もマンチーニのチームに十分なメンバーが揃い、ユナイテッドやチェルシーを押しのけるのに十分なレベルにあることに疑いは持てない。重要なことは、自信がその屋根を突き破って舞い上がったことだ。最初の15分間、シティは自分たちに確信を持てないプレーをしていたが、もはやそれさえ歴史とみなされるべきだ。

++++

…というコラムをアップしてすぐに、このスミス氏はユナイテッドが抱える懸念を3つに分けて解説している。「中盤」「センターバック」「サイドバック」の3ヶ所が議論のポイント。


++(以下、要訳)++

マンチェスター・ユナイテッドの破綻の原因は、中盤とディフェンスにある。


中盤

ファーガソンが選んだスタメンには非常に驚いた。相手が中盤を厚くしてくる場合には、通常自分たちの形を変えて数的不利に陥らないようにするからだ。過去のアーセナルやチェルシーとの対戦を思い出せば、両チームとも3人を中盤に置いていた。

ユナイテッドは4-4-2にこだわるケースというのはあまり多くなく、ヨーロッパの舞台でそうすることが多いように、4-3-3を採用してパク・チソンを入れ、彼の運動量と規律で中盤を堅く締めてくるのだ。

それが毎回必ずしも機能するわけではないにしろ、少なくともこの日のようにダレン・フレッチャーとアンデルソンが救いようなく人数で圧倒され、シティに出し抜かれ続けることは無かったはずだ。ダヴィド・シルバとジェームス・ミルナーは中に入り続けてギャレス・バリーとヤヤ・トゥーレに加勢し、フレッチャーとアンデルソンの裏のスペースを突き続けた。

シティの4人の中盤は遥かに綿密なゲームを挑んでいた。序盤こそ不安定であったが、やがて試合を支配すべきポジションを見つけた。シンプルに聞こえるかもしれないが、これを実現するには自分が前に出る脅威を持ちつつ、ウィングを動かせるような強力なサイドバックが必要だ。

この日、マイカ・リチャーズとガエル・クリシーはそれを最高の形でやってのけた。アシュリー・ヤングとナニはサイドに張り続けていたが、開始後しばらくの良い時間以降はシティを押し込めなくなってしまった。

無論中盤の質も問題となる。ユナイテッドの中盤にはシティのシルバのようなレベルの創造性が必要だ。


センターバック

ケガが主たる原因ではあるが、ファーガソンのディフェンスラインには継続性が欠けている。開幕のウェストブロム戦でリオ・ファーディナンドとネマヤ・ヴィディッチの両方が負傷して以降、6種類の異なるペアがセンターバックに起用されている。右サイドバックにしても4人だ。

こんなディフェンスの回し方はできない。本人が悪いわけではないが、フォーディナンドが一番の問題だ。衰えが出始める年齢に到達し、この燃費の良かった32歳も毎試合はプレーできない。結果的にファーガソンは数週間ごとに他をあたらなければいけなくなっている。

ファーガソン本人は、ファーディナンドの経験を捨て去るのは惜しいが、同時にセンターバックのポジションを入れ替え続けることもしたくない、という微妙な気持ちを抱いている。週末の試合にヴィディッチは間に合うだろう。もしかすると、フィル・ジョーンズかクリス・スモーリングにキャプテンの横でプレーする機会を与える時なのかもしれない。

なぜならば、長期的にはジョーンズもスモーリングも、シティ戦で基準に達していないところ見せたジョニー・エヴァンスよりは確かな選択になるはずだからだ。退場の場面、エヴァンスのポジショニングが悪かったわけではないが、セルヒオ・アグエロのスルーパスへの反応は遅過ぎ、マリオ・バロテッリを追うのにも誤った方向に反転していた。

このミスは避けられるものであったことが、代償の手痛さを倍増させる結果となった。


両サイドバック

残り10分でスコアは1-3。エヴラと代役で右サイドバックに入ったダレン・フレッチャーは前へ出続け、ファーガソンを当惑させていた。敗れるとしても戦い続ける、と言ってもそこには限界がある。

時には守備に専念し、脅威を取りはらう必要があるのだ。特にエヴラについては、今季その面では素晴らしい出来とは言い難い。ポジショニングで勝負するタイプではないが、普段はスピードと技術で十分凌いできた。

しかしながら、最近のエヴラは脆さを露呈し始め、この日も3ゴールは彼のサイドを破られて生まれている。これをユナイテッド他の問題と重ね合わせれば、今季のプレミアリーグでユナイテッドが他のどのチームよりも被シュート数が多いという事実にはさほど驚かないだろう。

++++

2本のコラムを並べたから若干の重複はあるけど、他の評論家も含めて、ユナイテッドのスタメンの中盤の並びに疑問を呈する意見は多い気がする。ま、後からは何とでも言えるんだけど、実際シティの2トップを予想するメディアは少なかったし、ユナイテッドが対処できなかったのも事実なんだろうな。でも、後半早々ひとり少なくなった試合で色々結論付けるのは難しいと思う。

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