Thursday, October 20, 2011

フットボールへの誠実さを貫くハリー・レドナップ

「テレグラフ」紙のオリヴァー・ブラウン記者による、スパーズの監督ハリー・レドナップへのインタビュー記事。フットボール好きのオッサン、という側面を上手く浮き上がらせている。


++(以下、要訳)++

バークシャーのデ・ヴィア・ウォークフィールド・パーク・ホテルで、彼はスタッフに気軽に冗談を言い、妻のサンドラが彼に坐骨神経痛の治療を兼ねていかにヨガを始めさせたかを説明していた。しかし、並外れた賢明さと献身で偉業を成し遂げてきたこの男のキャリアの中で初めて疲労の色が見え始めている。この64歳には滅多に見られなかった兆候だが、イングランドの歴史の中でも最も屈強で長寿の部類に入るハリー・レドナップも疲れを感じ初めているのだ。

素晴らしい1時間の会話の話題は、デイビッド・ベッカムからキャニング・タウンの学校でのコーチ業の記憶にまで多岐に及んだが、忍び寄る疲労についても告白した。ドーセット海岸近くのサンドバンクスの牧場からトッテナムのチグウェルの練習場までの明け方のドライブにいよいよくじけそうになってきた。「情熱が衰えてるわけじゃないんだが、疲れを感じるようになっていないと言えば嘘になるだろう。単純に年齢の問題だ。だんだん効いてきているよ」

「そりゃキツいさ。朝の3時に家を出て、5時にはトレーニング場に着くが、そこが開くのは7時から。そこに座ってラジオを聞いて待つんだ。健康に影響は出るさ。結局ロンドンに泊まることが増えたよ。昔は毎日車で通ったものだけどね。1日に6時間運転する計算だ。それでも私は今でも変わらぬ情熱を持っている。良い選手たちと一緒に仕事をするのは大好きだし、彼らのボールさばきをトレーニングで見るもの好きだ。その分、下手くそな選手と仕事をするのはキビしくなったな。ウチの選手たちは見ていて本当に素晴らしいと思うよ」

レドナップの宿命的な視点は、代理人たちの強欲やプレミア各クラブと地元コミュニティの断絶ぶりではなく、彼をフットボールの単純な喜びにぞっこん惚れ込んだままにし続けている。

だからこそ、ニューカッスルへの遠征の前日でもブラックバーンを迎えるQPRの試合を観に行き、ロフタス・ロードの雰囲気に酔いしれるのだ。トラック付きのピッチにはひと言ある。ウェストハムによるストラトフォードのオリンピック・スタジアムへの入札が差し戻される週には、この老いた伝統主義者は、執念深く自分の古巣の移転に反対していた。

「陸上用トラックのあるスタジアムはフットボールを殺してしまう。私は我々がホワイト・ハート・レーンで作りだしているような雰囲気、もしくはかつてウェストハムがアップトン・パークで持っていた雰囲気に身を置くのが大好きなんだ。トラックがあって遠くに座っていたら、そんな雰囲気は作れやしないよ。そういう時代じゃないんだ。ウェストハムのサポーターがそれを喜ぶとはとても思えないね」

レドナップはファンの視点に敏感に思慮を働かせていて、昨シーズンのチャンピオンズリーグ出場でトッテナムに生まれた楽観を維持する方法を模索している。

2月にデイビッド・ベッカムがトレーニングに参加したことは、彼が練習のみにしか参加できなくとも、トッテナムに明らかなアドレナリンをもたらした。レドナップは36歳になるベッカムのギャラクシーとの契約が来月切れた際に、再びトッテナムにやってくる可能性も完全には否定しない。

「人間、そして選手としてのデイビッドに本当に感銘を受けたよ。クラブにいてくれたのは素晴らしいことだし、彼は一級品だ。彼を目にする若手たちには最高のロールモデルだ」

「問題があるとすれば、デイビッドが定期的にプレーしたいと考える一方で、私が彼に出番を保証できないことだ。難しいよ。アーロン・レノンは戻ってくるし、ラファエル・ファン・デル・ファールトも右ができる。私には既に多くのオプションがある。両サイドをギャレス・ベイルとルカ・モドリッチにすることもできる。サンドロがトップクラスの選手になろうとしていて、そしてスコット・パーカーもやってきた。デイビッドを連れてきたのにプレーさせられないのは問題だろう」

メンバー選びの贅沢な悩みは、トッテナムの忌まわしい開幕には考えられなかったことだ。オールド・トラフォードでは0-3で屈辱を味わい、ホームではマンチェスター・シティに1-5で粉砕された。アーセナル相手の勝利を含むその後の4連勝はまったく約束などされていなかった。

当初の中盤ではニコ・クラニチャルとジェイク・リバモアがペアを組み、危険なほどの未熟さがそこにあったが、トム・ハドルストンの足首の手術からの回復も含めれば、今はチャンピオンズリーグへの正当な挑戦者としての自信が感じられるようになった。

彼を錬金術師ハリーと呼んでも良いかもしれない。たとえ、彼が自分の道程を振り返って、今の業界が向かっている方向を嘆いているとしてもだ。レドナップは代理人たちの台頭に冷笑して「彼らは監督よりも会長に電話をするし、自分の抱える選手たちには皆スーパースターだと吹き込んでいる」と語るが、むしろ今の選手たちの住む世界がこれまでとは随分違うことに懸念を抱いている。

「今まで自分も一員だと思っていたが、その時代はもう終わってしまった。そういう時代が帰ってくるかも分からない。選手たちはもはやボートの漕ぎ手ではなく、給料を払っている雇い主に対しても十分な時間を与えてはくれない」

「私がウェストハムにいた頃は、みな午後は学校に行って子供たちのコーチをしていた。最高の時間だったよ。キャニング・タウンの学校で週に5日、私とフランク・ランパード・シニアとね。トレヴァー・ブルッキングはよくサン・ボナヴェントゥラで教えていた。3時間教えて皆2.5ポンド貰っていた。最高だったよ。今の選手たちは、自分たちの輪に閉じこもってしまう。ちょっと政治家みたいな感じだ。道行く人々とは交わらないんだ」

レドナップ自身は、自分が愛されていたと感じている。「我々は良い仕事をしてきていると思うよ。昨日の夜は航空救急隊とディナーに行ったが、みなトッテナムのファンで、今のスパーズに起きていることを本当に喜んでくれていた。もはやアーセナルとの差が無くなったという事実が嬉しいんだ」

この相思相愛の関係に潜む危険は、レドナップが依然としてユーロ2012後にファビオ・カペッロが退任した後のイングランド代表の有力候補であることだ。レドナップのスパーズでの地位は安泰だが、本人は基本的にはこの見方を喜んでいて、実際のところこの状況を楽観視している。

「この話は断るのは難しいタイプのものだ。特にイングランド人ならね。ただ、私はプレミアリーグをエンジョイしていて、毎週毎週の監督業も楽しんでいるよ。私は毎日関わりを持っていたいし、それが私を駆り立てているんだ」

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珍しいハリー単独特集の記事。しかし、マイカー往復6時間の通勤をしてトッテナムまで通ってたとは凄い。

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