今週はチャンピオンズリーグの試合が入るってことで、この間出ていたサイモン・クーパーのコラム。以前ブラジルサッカーについて書かれたコラムが出ていた謎のポータルサイト「AskMen」に出ていたもの。バルセロナに挑戦するのは誰か?という主旨で、モウリーニョ率いるレアル・マドリー、マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘンなどの可能性に触れつつ、結局のところバルサ?という展開。
++(以下、要訳)++
灼熱のマドリードの夏、レアル・マドリーの練習に訪れた人々は同じトレーニングを目にしていた。今やほぼクラブの全権を勝ち取ったジョゼ・モウリーニョは、ディフェンスから相手陣内へできるだけ早く運ぶ動きを何度も何度も選手たちに叩きこんでいた。9月27日のチャンピオンズリーグアヤックス戦のゴールは、正にこの手法を発揮することで生まれていた。
3秒ルール
モダンサッカーにおいて得点の可能性が最も高いのはボールを奪った3秒後だ。それは相手が依然として当惑にあって、ディフェンスのポジションに戻っていない時間だ。しかし、この3秒ルールが問題になるのはバルセロナが相手の時くらいで、モウリーニョの向こう数カ月の目的は、8月にアシスタントのティト・ヴィラノバに食らわした(本当の意味での)目潰しを、バルセロナに食らわせることにある。このレアルのスピード重視の練習は、今季のヨーロッパについて回る「人はどうしたらバルサを打ち負かせるか」という問いへのベストアンサーとなるかもしれない。
新しいバルセロナを目にすれば、相手はただ諦めたいと思うに違いない。バルセロナのプレーメーカーであるシャビは、「チームは一段と良くなった。より多くをもたらせる選手たちを迎えたからね」と語る。その通りで、チリ人のアレクシス・サンチェスはバルサに伝統的なウィンガーとしてプレーするオプションをもたらし、今季最初の6試合で6ゴールを決めているセスク・ファブレガスの存在は、シャビとアンドレス・イニエスタがアンタッチャブルではないことを意味する。
1つの値段で2つ
恐ろしいことに、バルセロナは2つの素晴らしいフォーメーションでプレーすることができる。長年にわたってチームは4-3-3でプレーしてきたが、9月に3-4-3を使ってオサスナを8-0で粉砕した。もはや彼らは、ボールを奪っては必ずボールを戻してポジションを確認し、相手に「行くぞ!」と言って、まるで小人たちクロスワードパズルを埋めるようにパスを縦横無尽に回すという、フットボール界で最も予測可能なチームではない。監督のペップ・グアルディオラは、過去最高と言われたチームの更なる改善に情熱を燃やしている。
もちろん、それでも多くはバルセロナで替えの利かないリオネル・メッシに依存している。世界王者のスペインというのは、バルセロナからメッシを引いたものだ。そして、昨年のワールドカップで、10人で守ったスイスやパラグアイ、オランダは、スペインが必ずしも完全無欠ではないことを示して見せた。もしメッシがケガをすれば-2006年にモウリーニョ率いるチェルシーは彼を潰しにかかった-、ヨーロッパのタイトルは他クラブにも獲得可能なものになる。ただ、メッシほどレフェリーたちに守られている選手は他にはいない。
天才モウリーニョ
それでもメッシがいるバルセロナにもスキはある。過去3シーズンでそれを突いた唯一の監督がモウリーニョだ。2010年、当時インテルを率いていたモウリーニョはチャンピオンズリーグの準決勝を前に終わりなきDVD分析からカタルーニャの弱点を見出した。チームメイトがいつもシャビにボールを預けられるのは、彼が必ずしも常にディフェンスをケアしなくとも良いからだった。これはモダンサッカーでは非常に稀少な特権だ。更に、バルセロナの両サイドバックは非常に高い位置で守備をし、背後に広大なスペースがあった。インテルは自陣ペナルティエリアのすぐ外側まで引いて辛抱強く守り、モウリーニョが見出したスペースを狙ったカウンターでバルセロナを仕留めた。
奇妙なことに、モウリーニョはレアルの監督を引き継ぐとこの勝利の法則を捨て去った。昨年の11月のカンプ・ノウでの試合では、ハーフウェー・ライン近くで守備をしていた。おそらく彼は、バルセロナを破る1つでなく2つの方法を見せることで自分の天才ぶりを知らしめたかったのだろう。レアルは0-5で敗れた。それ以降、モウリーニョはカウンターに戻した。昨季の国宝杯決勝でバルセロナを破り、ゴンサロ・イグアインのカウンターからのゴールが不当に取り消されなければ、チャンピオンズリーグの準決勝でもそれを成し遂げかけた。
スタンドからこのレアルの計算しつくされたディフェンスに目をやり、85歳になるレアルのレジェンドであるアルフレド・ディ・ステファノは、「バルセロナがライオンでマドリーはネズミ」と不満をこぼした。レアル伝統のスタイルは攻撃だ。モウリーニョは気にかけないだろう。会長のフロレンティーノ・ペレスが、モウリーニョと対立していた攻撃サッカーの信奉者であるテクニカル・ディレクターのホルヘ・バルダーノを解任し、このポルトガル人監督は自分の好きなようにできる。
イングランド流
バルセロナを倒すのは、イングランドのクラブよりもモウリーニョのチームの方が可能性が高そうだ。分厚い守備にカウンターというのは単純にイングランドのスタイルではないのだ。イングランドのファンはそんなものに我慢できない。5月にウェンブリーで行われたチャンピオンズリーグの決勝で、マンチェスター・ユナイテッドはバルセロナのディフェンスにプレッシャーをかけようと試みた。それが持続したのは僅かに10分、早々に疲弊してしまった。ユナイテッドの守備陣が押し上げに一生懸命では無かったことも一因ではあるが。いずれにしても、ここ最近は平均23歳程度の布陣で試合に臨んでいるユナイテッドは、成熟を語るには程遠い。逆にチェルシーは成熟し切ってしまった。
ここのところ、フランク・ランパード、ニコラ・アネルカ、そしてディディエ・ドログバといったここ数年間のクラブの繁栄を気付いてきた選手たちが話題に上るが、チーム写真に映る新顔のひとりが33歳の青年監督、アンドレ・ヴィラス・ボアスであるならば、問題があることには気づくだろう。
過去の過ちの克服
新聞上ではマンチェスター・シティがイングランド史上最強の挑戦者ということになっているようだ。このクラブは全てのポジションに実力を証明した選手たちを揃え、しかもほぼ全員が全盛期にある。
バイエルン・ミュンヘン相手の敗戦から明瞭に分かるシティのチーム・スピリットの問題 -カルロス・テヴェスの出場拒否、交代時のエディン・ジェコの怒り、ロベルト・マンチーニとパブロ・サバレタの口論- は、大事には至らないだろう。トップクラスの選手は互いに仲良しである必要は無いし、ましてやクラブを愛する必要などまったくない。彼らは非常に任務中心の人間で、自分の役割をこなすのだ。いかにも、テヴェスは90分間自分の全てを捧げるという自分の任務をマンチーニに邪魔された時、大きな怒りを抱いたのだろう。これは昨年ウェイン・ルーニーが突然マンチェスター・ユナイテッドを出てマンチェスター・シティに行きたい、と言った時のように、早々に忘れられる騒動のひとつに過ぎない。それでも、ナポリとバイエルンと対戦し、2試合で1ポイントというチャンピオンズリーグでの戦いぶりはあまり縁起の良いものではない。
この夏にマンチェスター・シティからバイエルン・ミュンヘンに加わったジェローム・ボアテングは、ミュンヘンでの勝利の後に「シティが決勝に進めるとは思えない。他に良いチームがある。例えばウチがそうさ」と語った。その通り、この素晴らしいバイエルンは来る5月のミュンヘンでのファイナルの気品高いホストになることだけを望んでいるわけではない。バイエルンは、既に昨年のドイツのチャンピオンであるボルシア・ドルトムントを遥か後方へと押しやった。バイエルンの前監督であるルイス・ファン・ハールはディフェンスをあまり気に掛けなかった。10月3日現在で、後任であるユップ・ハインケスのチームは11試合無失点だ。
警戒すべきバイエルン
歴史的にはバイエルンはドイツ・サッカーが強い時に繁栄する。クラブが1974年から76年に3つのヨーロッパカップを勝ち取ったのを覚えているだろうか?そして現在のチームは、ここ20年でベストの世代が中心になっている。マヌエル・ノイアー(彼が何もしなくて良いというわけではないが)、フィリップ・ラーム、ホルガー・バトシュトゥバー、バスティアン・シュバインシュタイガー、トニ・クロース、そしてマリオ・ゴメス。バイエルンに住むフランス人、フランク・リベリーはケガとセックス・スキャンダル、出て行ったファン・ハールとの対立で乗り遅れてしまった。他の外国人、オランダ人の「ガラスの男」アリエン・ロッベンは再び負傷したが、バイエルンがすぐに彼を必要としているようにも見えない。個のチームは彼無しでもブンデスリーガを制する力がある。ロッベンが必要となるのはゲームを決める顔見せか、次の春のチャンピオンズリーグだ。バイヤー・レヴァークーゼンでスポーツ・ディレクターを務めるルディ・フェラーは、「バイエルンはバルセロナやレアル・マドリーのレベルにある」と警告する。
もしバイエルンがファイナルに到達すれば、ホーム・アドバンテージがプラスに働くはずだ。それでもなお、来年5月19日にシャビやイニエスタ、ファブレガスよりも背の高い大男たちがビッグイヤーを掲げるとは、理性ある人なら誰も予想しないだろう。
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インテル時代のモウリーニョが取ったあの戦術じゃないとバルサは倒せない、とモウリーニョ自身がレアルで再確認しちまった感じだなー。
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