どのリーグでも起きる序盤戦の不振からの監督交代。ここまでプレミアリーグでは無風が続くが、インターナショナル・ウィークを挟むことから動きのあるクラブも出てくる可能性も指摘されている。それを具体的に5人の候補に絞って焦点を当てたのが「ガーディアン」紙のルイーズ・テイラー記者。
++(以下、要訳)++
代表の試合が組まれるインターナショナル・ウィークは、苦戦している監督たちにとっては危険な時期だ。国内の日程が小休止となり、クラブの会長たちは今の監督を更迭しても後任の救世主的な監督にスムーズに引き継げるからだ。その脅威は、クラブが特に名の通った有益な監督を求めているなら、尚更であろう。もしマーク・ヒューズやマーティン・オニールがどのクラブでも話題に上がっていないとしたら驚きだ。
プレミアリーグが第7節まで終了したものの、まだシーズンの先が長い現在であれば、この中断期間は何らかの変更を加えるにはちょうど良い時期だ。そしてクラブによってはファンが既に変化を求めているところもある。自分の首が飛ぶ可能性すらある流れでは、監督たちは彼らの関与を無視するわけにはいかない。かつてケヴィン・キーガンはこう語っていた。「監督になればいつだって銃口を頭に突き付けられている。問題はそこに弾丸が装填されているかどうかだ」
スティーブ・キーン(ブラックバーン・ローバーズ)
解任のシナリオ:絶え間なく前向きな発言を繰り返す姿は、彼をフットボールの監督版のデイビッド・ブレント(TVドラマ『The Office』)にし、もはや実際にブラックバーンの面々のモチベーションを成功裏に高めているとは思えない。プレミアリーグ21試合でわずかに3勝、イーウッド・パークの観衆たちは敵対心をもつようになり、次第に毒気を帯びてきた雰囲気が良い結果につながることは無い。キーンのこれまでの監督経験の無さは、そもそも彼がアラーダイスの後任に指名されるべきではなかったことを示唆している。
続投のシナリオ:キーンが今週のインドへのミニ・ツアーを率いていることから、彼が即座に解任されることは考えにくい。ブラックバーンのオーナーであるヴェンキーズは彼の監督能力に信頼を寄せていて、彼をサポートするフットボール・ディレクターを呼ぶことで、最大限の結果を得ようとするだろう。ロナウジーニョを獲得する、というような派手な素振りをしてきたが、実際はキーンはフィル・ジョーンズのような主力を失い、移籍市場のバーゲン品での補強を強いられている。
最初の解任劇となるオッズ:4-9(1.44倍)
スティーブ・ブルース(サンダーランド)
解任のシナリオ:元旦から数えてここまでホームで2勝。ローンも含めて2年間で30人の選手を獲得してきた監督としては切れ味に欠ける結果と言える。疑問符が付けられている点は、彼の戦術面での知性と選手交代策、頻繁に起こる選手との衝突、怪我の選手の復帰を急ぐ傾向、21世紀型の監督方法への適応力、そして論争を呼びがちなイングランド北東部に対する偏見とプレッシャーなど、多岐にわたる。
続投のシナリオ:ブルースは条件の良い延長契約を2月に結んだばかりであり、彼を解任するのは非常に費用がかさむ。この夏には10人の選手を補強したが、彼らが馴染むには時間も必要だ。サンダーランドのオーナーであるエリス・ショートは、ブルースがチームのミッシング・リンクと考えていた左ウィングにチャールズ・エンゾグビアを買うことを許さなかった。ダレン・ベント、ジョーダン・ヘンダーソン、ケンウィン・ジョーンズと失ってきたブルースは、移籍市場でも難しい時期を過ごしている。
最初の解任劇となるオッズ:7-2(4.5倍)
アーセン・ヴェンゲル(アーセナル)
解任のシナリオ:プレミア第7節まで終えて、2勝4敗1分け。アーセナルのようなクラブではこの数字は危機以外の何物でもなく、この15シーズンで初めてチャンピオンズリーグに出場できない恐れがでてきた。誰ひとりとして、ベンゲルであっても、代えの利かない人間などおらず、6シーズン続いた無冠にセスク・ファブレガスとサミ・ナスリの代役を見つけられなかった失態で、ヴェンゲルは長居をしているように映る。明白になったディフェンス面でのコーチング不足は若手とベテランのバランスの悪さで一層際立っている。
続投のシナリオ:チーム全体が悪い日に遭遇してしまったとみなすなら、特に、チームの倹約的なやりくりが上手く行っていることが分かった後であるだけに、ヴェンゲルにはもうひとシーズンチャンスがあるだろう。加えて言うならば、一体誰がヴェンゲルの後を継ぐのか?アーセナルは自分たちが何を望んでいるかについて、注意深くなる必要がある。
最初の解任劇となるオッズ:12-1(13倍)
オーウェン・コイル(ボルトン・ワンダラーズ)
解任のシナリオ:現在順位表の一番底。その脆い守備でイースター以来リーグ戦はここ12試合で11敗。ホーム6連敗はここ109年で最悪となる開幕での躓きを加速させ、ファンの中にはあのギャリー・メグソン時代にノスタルジアを感じ始める者もいる。昨シーズンの攻撃面での素晴らしさが守備の脆さを覆い隠していただけだったのだ、と。
続投のシナリオ:以上のことを考慮しても、コイルのここ10年のキャリアは上向きのものであった。ボルトンの幹部は、依然として人気のある元クラブの元ストライカーでもあるコイルに時間の猶予を与える余裕を持つべきだろう。ヨアン・エルマンデルやダニエル・スタルリッジのようなストライカーの代役を連れてこられなかったのはコイルの責任ではない。重要な中盤の駒であるスチュワート・ホウルデンが膝のケガで3月まで使えないことについても同様だ。
最初の解任劇となるオッズ:16-1(17倍)
ロベルト・マルチネス(ウィガン・アスレチック)
解任のシナリオ:リーグとカップ合わせて5連敗は、マルティネスが言っているほど良いフットボールが展開されていないことの証明だ。ディフェンスはしばしばナイーブであり、精神的にも脆い。明らかなのは二部のチャンピオンシップに向かって滑り落ちていっているということだ。マルティネスが非常に良い監督であったとしても、やはりウィガンにはマッチしていない。
続投のシナリオ:かつてウィガンのミッドフィルダーとしてプレーしたマルティネスの気高い忠誠心がオフのアストン・ヴィラからのオファーを断った、という話は相応に報いられるべきだろう。アストン・ヴィラに移籍したチャールズ・エンゾグビアやマンチェスター・ユナイテッドに復帰したトム・クレバリの代役はまだ十分ではない。マルティネスが追い求める哲学は魅力溢れるフットボールを生んでいるが、会長のデイブ・ウィーランはマルティネスの総合力と知性に比肩する後継者を見つけるのには苦労するだろう。
最初の解任劇となるオッズ:33-1(34倍)
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このインターバルの間に出てきたのは「マーティン・オニールがブルースの後任に、との打診を受けた」という記事。それに合わせて、ブルースのオッズが下がるといういかにもな展開。現実的にはもう少し様子を見ると思うけど…。
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