Friday, September 30, 2011

フランク・ランパードが追求する新たなプレースタイル

途中交代やベンチスタートとなる度にメディアでも高まる感のあるランパード限界説。一方で、役割の変更を勧めたり、その最中だと主張する意見も出てき始めている。BBCのサイモン・オースティン記者がクラウディオ・ラニエリやパット・ネヴィンの言葉を引きつつ描くコラム。


++(以下、要訳)++

ここ10年間、フランク・ランパードの名前はチェルシーの先発メンバー表に消せないインクで書かれているかのようであったが、その地位も怪しいものになってきた。マンチェスター・ユナイテッド戦はハーフタイムで交代、スウォンジー戦は起用されず、得点もここまでPKによる1点のみ。ランパードはもはやスタンフォード・ブリッジのキープレーヤーには見えない。

彼の立場は代表チームにおいても同様に不安定ものになっている。今月初めのブルガリア戦はベンチスタートとなったが、これは彼が出場可能な真剣勝負の場では、ここ4年で初めてのことだった。2,350万ポンドでやってきたフアン・マタがチェルシーの中盤に光明をもたらしている今、33歳にしてランパードはメンバー表から姿を消してしまうのだろうか?

こうした論調は、2001年6月にランパードをウェストハムからチェルシーに連れてきたクラウディオ・ラニエリを苛立たせる。「私を信じて欲しい、彼は今でも素晴らしい選手だ」先週インター・ミランの監督の座に就いたイタリア人は語る。「パス、シュート、リーダーシップに知性。これら全てが彼を世界一流のミッドフィルダーにしてきた」

ラニエリは10年前、チェルシーに1,100万ポンドを支払うよう説得した。この移籍金は何度となく嘲笑の対象となったが、最高の掘り出し物であったことが分かった。ランパードはその後、クラブが最も成功した10年間のリーグ戦で116ゴールを記録した。そしてラニエリは、年齢がランパードの能力に与える影響などないと主張する。

「スピードがフランクの売りであったことなど一度もないし、常に厳しいトレーニングで最高のコンディションを保っている。監督はトレーニングの場に彼のような選手がいることを夢見る。他の選手たちの真のお手本になるからね。彼が30代の半ば、後半にさしかかろうが、トップレベルでプレーできないなどと考える理由が分からない」

しかしながら、これを実現するにはランパードは彼の流儀を変える必要があるだろう。そしてそのプロセスは既に進行中のようだ。

今シーズンのデータを一見すると、ランパードは下降線を辿り始めている、とも考えられるだろう。ゴールはノーリッジ戦のひとつだけ、1試合あたりのシュート数は2009-10シーズンの3分の1にも満たない。シュートの精度も際立って下がっているのが見て取れる。昨シーズンはシュートの56%が枠を捕えたのに対し、今シーズンはここまでわずかに25%だ。

しかし、80年代にチェルシーのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに2度輝き、BBCで解説者を務めるパット・ネヴィンは、この数字はむしろランパードのプレースタイルの変化の結果だ、と述べている。

グッバイ、ゴールを量産するミッドフィルダー。ハロー、中盤深くに位置するプレーメーカー。

「フランクはいま、中盤の引いた位置でボールを保持して正確なパスで攻撃をビルドアップしていて、必ずしもフィニッシュまで持って行ってはいない。人々は彼のプレースタイルに対する先入観を捨て去る必要があると思う」

下のグラフもネヴィンの理論を支持するものとなっている。左のグラフの中の8番は、1-3で敗れたマンチェスター・ユナイテッド戦でのランパードの平均ポジションを示している。彼は16番のラウル・メイレレシュと共に中盤を締めるポジションにいて、10番のフアン・マタや7番のラミレスと比較すると深いポジショニングになっている。


後半にチェルシーは追い上げを図り、ランパードは監督のヴィラス・ボアスによって交代させられた。マタのポジションは一層上がって9番のフェルナンド・トーレスに近づき、2人の後ろで39番のアネルカが動く形だ(右のグラフ)。ネヴィンは、チェルシーの中盤の攻撃的なアタッカーとしてランパードが果たしてきた役割は、完全にマタが取って代わったと見ている。

「トーレスとプレーするようになれば、ドログバがメイン・ストライカーの頃に使っていたロングボールは不要になる。トーレスの角度をつけた裏への走りは彼が加入した頃から素晴らしいかったが、彼に糸引くパスが出て来るようになったのはマタがやってきて以降のことだ。それはフランクの役割ではなかったし、いま彼は新しいポジションを見つけるために進化する必要に迫られている。新しいプレースタイルでね」

ゴールを量産していたランパードは、ポール・スコールズがマンチェスター・ユナイテッドでのキャリア終盤にそうしたように、中盤深めのミッドフィルダーとしての自分を再発見するだろうか?

ネヴィンはそう信じていて、「ヴィラス・ボアスは4-2-3-1を好んでいるように見えるし、フランクにはその"2"の一角を占めるための戦術的な知性、視野、パス能力とタックルがある」と主張する。

偶然にも、これは最近ファビオ・カペッロがイングランド代表で好んでいるシステムでもある。

ランパードは「フットボールの世界で、批評家が誤っていたことを証明することほど気持ちの良いことはない」と言ってきた。恐らく彼は、クラブと代表の双方でその快感を楽しむ時を迎えようとしているのだろう。

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