Sunday, July 31, 2011

イングランドのフットボール・ポリティクス

フットボールの政治パワーの話はとっつきにくいものだけれど、BBCのマット・スレイター記者がポイントをかいつまんで説明・批判してくれている。


++(以下、要訳)++

フットボール・タスク・フォース、バーンズ・レビュー、文化・メディア・スポーツ大臣だったアンディー・バーナム7つの質問・・・、これらは私自身も報じ、そして何もおきずに忘れ去ったものだ。1964年にスポーツ大臣のポストができて以来、フットボールの変革は大臣の範疇を超えてるものだと分かった、と指摘するものもいる。

そうした過去の事例はあるものの、最近の文化・メディア・スポーツ委員会の出したフットボール・ガバナンスに関するレポートは思いのほか出来の良いものだった。34の結論・提案を含む112ページのレポートの概要は以下のようになっている。

FAの改革

FAが国のトップの組織であり、制度面でのリーダーシップをとるべき立場にあるのは誰の目にも明らかだが、利害の対立もあって有効に機能しているとは言いがたい。現在の構成は会長と総書記のもとに、プロ(プレミアとフットボール・リーグ)と全国(各州のFA)それぞれからの5人ずつの評議員と議論をする仕組みだが、結果的にウィンターブレークや若手育成のあり方の考えの相違から機能不全に陥っている。

新レポートでは、会長、総書記、さらに2人のFA重役(ひとりは若手育成のトップ)、2人の独立委員、さらに2人を全国から(ひとりはノン・リーグの代表)、そして各リーグからひとりずつにする、というものだ。より民主的、独立、合理的だ。実現可能か?おそらく。

しかし、FAの幹部というのは変わった存在で、フットボールの「議会」からも意見を聞く必要がある。100人以上のメンバー(ほぼ全員男性、年寄り、白人)がいて、出欠を取り始めたらキリがない。オックスフォード、ケンブリッジといった大学、軍隊、そしてパブリック・スクールのFA、それに全国の各地方・・・。選手とファンにも1票ずつ投票権限がある。レポートでは、その観点から、誰であれ10年以上同じ組織で仕事をすべきでない、としている。

クラブ・ライセンス制度

上の項が、FAに向けた矢だとすれば、次の矢は各リーグに向いている。
プレミアリーグは確かに世界中の何百万人の人々に観られていて、エキサイティングだし、スタジアムはいつもほぼ満杯だ。しかし、その負債、コスト、噴出する問題の数々、そして失態続きの代表チームのことはどう説明するのだ?

提案されているのは、「クラブが持続可能なビジネス・プランを進め、自己規制を機能させる」ライセンス制度だ。身近なところでそこまで厳格でなくとも機能している例としてはブンデスリーガがある。

プレミアリーグは、すでに「リーグ・ルールブック」と呼ばれるシステムを運用していて、毎年FAの承認も受けていると主張するだろう(下部リーグのフットボール・リーグも同様)。そしてヨーロッパに目を向けているクラブであれば、UEFAが各クラブの支出・給与をコントロールしようと取り組んでいるファイナンシャル・フェアプレーの影響で、そうした圧力は強まっているはずである。

この環境下でライセンスについて何かを言うのであれば、その定義を明確にしておかなければ、何らかの抵抗にあう可能性もあるだろう。

フットボール関係者債権優先法(The Football Creditors Rule)

論争を呼ぶこのトピックについての委員会のスタンスは明確で、自分たちでルールを無くすか、そうでなければ我々がそうけしかける、というものだ。この法律に詳しくない方のために補足すると、これはクラブが破産するような場合に、他の債権者(地元の出資者など)に先がけて選手を含むクラブ関係者が保護されるというものだ。

11人の委員のひとりであるダミアン・コリンズは、現在の制度はモラル上の問題があるだけでなく、フェアなビジネスの継続という意味でもフットボールには悪影響だ、と指摘している。

クラブ・オーナーシップ

委員長のジョン・ウィッティングデールは冗談ぶってクラブを経営するのに「フィットとする適切な人材」を見つけるのが如何に難しいかをしてきた。委員会も、その基準は厳しくしかもい完成を持ったものであるべきことは分かっている。興味深いのは、外国人が保有するばあいには、イギリス人が保有するさいよりも厳しく審査すべき、と提案している点だ。愛国的ではあるが、事実には反する。必要なのは良いオーナーであり、別にイギリス人ではない。

リーズ・ユナイテッドは結局ケン・ベイツ(モナコに住み、会社をカリブ海に登記している)が保有することとなったが、委員会はFAに詳細な調査をするよう望んでいる。必要であれば英国歳入税関庁を仰げばいよい、と。(※この点について、ケン・ベイツ本人は強く反論している:Leeds owner Ken Bates attacks MPs over football governance inquiry

より前向きな話としては、レポートはサポーターによるクラブ所有を推し進めるべき、と提言し、サポーター基金による資金調達を円滑にするための法制化に動くことすら示唆している。レポートはその一部で、アーセナル・サポーターズ・トラスト(基金)について、その「Fanshare」スキームが良い印象を持った、と触れているが、現在は反目する金持ちオーナーたちからの圧力に直面しており、レポートは、政府に対して、株主としてはマイノリティであるサポーターたちが、その持分を無理やり買われることの無いよう、そうした圧力を予め避けられるようにすべきだ、と述べている。

他にも触れるべき点はいくつもあるが、このへんにしておこう。優先順位は何よりもFAの改革だが、FAだって再びきちんとした監督機関に慣れるのあれば、変革にチャレンジする動機はあるはずだ。問題は、政府は変わるし、大臣は考えを変え、選挙にも影響され、動きは停滞しがちなことだ。

まあ、いまはポジティブにいることにして、委員会のモットーである「変化なしはあり得ない/"no change is not an option"」がウェンブリーでの新しいチャントになることを期待しよう。

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カタい話は、ボキャブラリー的にも翻訳に骨が折れるところだけど、やわらかめに書いてくれたコラムだしアーセナルのサポーター基金のスキームは気になるとこ。それがメインで記事になることもあれば、そん時は拾ってみようかな。

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