Saturday, August 17, 2013

2013/14シーズンのプレミアリーグも魅力溢れるものになるか?

新シーズンの開幕も目前。今季の変わった所と言えば、昨季の上位3クラブが、それぞれ事情は異なるものの、いずれも新監督を迎えているところ。そうした背景が、今季のプレミアリーグを面白くするかどうか、という観点から、「BBC」のフットボール主幹であるフィル・マクナルティ氏が記事にしている。


++(以下、要訳)++

プレミアリーグの序列は、昨季マンチェスター・ユナイテッドがマンチェスター・シティから王座を奪い返し、チェルシーが3位に入った形で固いものになったと思われた。

仮にいつもの順番が戻ってきていたのだとしても、プレミアの裏舞台での力関係の入れ替わりは、新たなシーズンで順位表の上位側に広がる巨大な不確定要素をもたらしている。

上位3クラブすべてが新監督を迎えている、という状況が、プレミアの歴史の中でも最もシーズンの行方の予想を難しいものにしている。

賢明な投資は、慣れ親しんだ面々が上位に来ることを予想するだろうが、オールド・トラフォード、エティハド・スタジアム、スタンフォード・ブリッジの全てに「新監督」の看板がかか

っている状況では、最終的にどこに賭けるかを決めるには、危険が付きまとうだろう。

マンチェスター・ユナイテッドの13度目のプレミア制覇での大騒ぎは、ほどなく26年の任期を経てのサー・アレックス・ファーガソン衝撃の退任で影を落とした。自らが同郷のスコットランド人であるデイビッド・モイーズを後任にエヴァートンから引き抜いたことから、一定の影響力が続くとしてもだ。

この刷新された監督勢力図に加わるのがマヌエル・ペジェグリーニだ。彼は、ロベルト・マンチーニの嵐が去った静かなマンチェスター・シティに招かれた。この舞台は、ジョゼ・モウリーニョがチェルシーに復帰したことで、一層の輝きが増している。

蓋を開けてみなければ分からない運気に加え、カギとなるのは彼ら新監督がいかに早く新たな環境に適応できるかだ。チェルシーに復帰したモウリーニョの場合には、かつて成功した古巣でどれだけ上手くチームを掌握するか、ということになる。

近づいている新シーズンで、これらのライバル関係はどんな様相を呈すだろうか?ファーガソンという要素の消失には、どれだけのインパクトがあるだろうか?

モイーズは同業の他の監督たちにもその働きを認められている。グッディソン・パークで11年の長きにわたってふるった敏腕で、エヴァートンをトップ10クラブに定着させた。

トロフィーは勝ち取れず、ヨーロッパでの成功にも縁遠かったかもしれないが、彼が抱えていた財政面での制約を考えれば、仕事は上出来だったとみなせるだろう。

オールド・トラフォードでは6年契約という期間を与えられたとはいえ、どれだけエヴァートンでの仕事で準備を重ねたとしても、モイーズにはマンチェスター・ユナイテッドでの圧倒的なスケール、そして即座の要求に応えるための準備はできなかったはずだ。

ファーガソンは、不満を抱えたウェイン・ルーニーという毒の杯を残していった。そして、ユナイテッドが長年抱える中盤真ん中の脆弱さも克服しなければならない。

日程的にもモイーズにはタフなスタートとなりそうだ。スウォンジー・シティとの開幕戦の後には、オールド・トラフォードにモウリーニョのチェルシーを迎え、そこにアウェーでのリバプール戦が続く。アウェーのリバプール戦というのは、彼が一度も結果を出せず、エヴァートン時代にはほぼ毎回惨めな思いをしてきた。

しかしながら、逆にこれは彼が、彼以上の名将を偉大なファーガソンの後任に望んだあらゆるユナイテッド・ファンに良い第一印象を与えるチャンスでもある。

過去長年にわたって、モイーズはモウリーニョと良好な関係を維持してきており、チェルシーのあからさまなルーニー獲得に向けた動きがあるとはいえ、それは維持されてきていると思われる。

しかし、今季ユナイテッドとチェルシーが持つであろうライバル関係は、それぞれのパーソナリティにも奇妙な影響を与えるかもしれない。

アーセナルがやがて脅威でなくなるまでの間のファーガソンとアーセン・ヴェンゲルとの間の憎悪を覚えているだろうか?ラファエル・ベニテスの下でリバプールが厄介な存在になる前の、ファーガソンとベニテスの短い親愛の時期を覚えているだろうか?

モイーズとモウリーニョの間には何の憎悪も生まれないかもしれないが、それでも激しい戦いになることは間違いない。

モイーズにユナイテッドで挑戦が待ち受けるとすれば、それはここまで穏やかなチェルシーでのモウリーニョも同様だ。

かつての「スペシャル・ワン」は若く好戦的なスタイルでチェルシーにタイトルをもたらし、やがてオーナーのロマン・アブラモヴィッチとの関係を冷え込ませていったかつての自分自身と比べて、より賢明で成熟した存在に自分を見せようと躍起になっているようだ。

彼は、前回の任期後のインター・ミラン、レアル・マドリッドでの経験が、彼をより融和的でチェルシーでの仕事に集中する存在にしてプレミアリーグに戻した、と世界に知らしめたいのだ。

しかし、今のモウリーニョには怒りの材料も無く、論争を呼ぶ決断を下す場面も訪れてはいない。静かなモウリーニョは、嵐のモウリーニョの前の姿に過ぎないのだろう。

この誇り高い、敢えて言うなら自惚れの強いモウリーニョは、2度目のチェルシー時代も、最初の任期並みに成功できなければ気が済まないだろう。もちろん、チェルシーも彼の不在時にFAカップ、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、と軽視できないタイトルを獲得してきており、モウリーニョともいえど、クラブが膝を付いて迎え入れたわけではないのだ。

ユナイテッドでのモイーズ、チェルシーでのモウリーニョとは違った形でこの舞台に招かれたのが、温和で落ち着きのあるマヌエル・ペジェグリーニだ。来月60歳になるこのチリ人が、マンチェスター・シティの新監督だ。

ペジェグリーニは、何かと対立を呼ぶマンチーニを44年ぶりのタイトルをもたらした12ヵ月後に解任したシティが取り組む「総括的な」新政策の象徴だ。

マンチーニ時代の難点は、落ち着きの無いドレッシング・ルーム、そして常にチームを覆っていたネガティブな雰囲気だった。それでも、多くのシティ・ファンは、マンチーニの退団を残念に思う気持ちを明確にしていた。マンチーニは、彼らにとってはトロフィー、誇り、信頼を取り戻した存在であり、もっと良い扱いを受けて然るべきだと考えたのだ。

しかしながら、ペジェグリーニは冷静で威厳のあるキャラクターであり、その名手と言われたファーガソンでも大げさだと後に認めた激しい舌戦、所謂「駆け引き」に巻き込まれるような可能性はほとんど無いだろう。

彼には既に9,000万ポンドの資金が支援され、アルバロ・ネグレド、ヘスス・ナヴァス、フェルナンジーニョ、そしてステファン・ヨヴェティッチを獲得している。

また、シティはマンチーニのタフな物言いに不満を抱いていたゴールキーパーのジョー・ハートやキャプテンのヴァンサン・コンパニらの復活にも期待を寄せている。

中にはペジェグリーニがスペインで主要なトロフィーを勝ち取れなかったことを指摘する向きもあるが、指導者の世界でこれだけの尊敬を集める男に対しては不当なものだといえる。

2006年にヴィジャレアルをチャンピオンズリーグの準決勝に導き(アーセナルに敗れた)、昨季はマラガを率い、終盤の2ゴールでボルシア・ドルトムントに敗れたものの、同じ舞台にあと一歩まで到達していた。いずれも深刻な財政難の中での偉業だった。

ペジェグリーニが志向するのは、魅力的な攻撃フットボールだ。レアル・マドリッドでの任期は僅か1年で終わったが、内情を知るものに言わせれば、彼に不足があったのではなく、クラブの絶え間ない「ギャラクティコ」政策の被害者だったのだ。彼がカカやカリム・ベンゼマの獲得を求めるようなことは決して無かった。

彼の経歴を評価するのであれば、こうした文脈を理解しなければならない。

ペジェグリーニはモイーズやモウリーニョの挑戦から逃げるようなことは無いだろうし、またも無冠に終わったアーセン・ヴェンゲルも巻き返しを期している。

深謀は他の場所にもある。アンドレ・ヴィラス・ボアスは、チャンピオンズリーグ出場権を逃したとはいえ、スパーズでの最初のシーズンで残した好印象に上乗せができるだろうか?リバプールのブレンダン・ロジャースは、FAカップをウィガン・アスレティックで制したロベルト・マルティネスを新監督に迎え入れた地元のライバル、エヴァートンを上回れるのか?

それでも、全ての目線は、頂上での争い、そしてオールド・トラフォード、エティハド・スタジアム、そしてスタンフォード・ブリッジで監督室の席に着く男たちに向けられることだろう。

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