Monday, November 26, 2012

アブラモビッチへの批判を肩代わりするベニテス

ファンをも驚かせたロベルト・ディ・マテオの解任。それ以上に驚いたのが、ラファエル・ベニテスが後任の「暫定」監督だということ。お気づきの方も多いだろうが、ベニテスに集中している批判は、結果的にそれがオーナーのロマン・アブラモビッチに向くことをいくらかでも避けさせることにもなっている。そんな視点からBBCのフィル・マクナルティ主幹が描く、チェルシーとベニテスの現在。


 ++(以下、要訳)++

チェルシー・ファンがオーナーのロマン・アブラモビッチと交わした沈黙と従属の約束は、ラファエル・ベニテスを憎悪に包まれたスタンフォード・ブリッジへと直行させることとなった。

チャンピオンズリーグを制した6ヶ月後にロベルト・ディ・マテオを解任するというアブラモビッチの決断は、多くのチェルシー・ファンを傷つけた。しかし、それはその後任にベニテスを選ぶという判断に比べれば、ごく普通のことのように思えた。

ベニテスのリバプール時代は、チェルシーのファンにとっては嘲笑と憎しみの対象だった。それはジョゼ・モウリーニョとの辛辣なライバル関係の産物でもあり、ベニテスがチェルシー・ファンにとっての「スペシャル・ワン」を2005年、2007年のチャンピオンズリーグ準決勝、そして2006年のFAカップ準決勝で出し抜き続け、サポーターたちが忘れないベニテスの手厳しい言葉をよく覚えているからでもある。

これらの歴史は、暫定監督してのベニテスの就任と、日曜のマンチェスター・シティ戦のスタンフォード・ブリッジで彼がファンと初めて出会う場が、どれだけ場違いなものになることを意味していた。

いかにベニテスがその罵声には耳を傾けなかったと主張しようが、キックオフ前にトンネルを抜けてテクニカル・エリアに向かう彼を襲う大音量の怒りに対処する方法など無かったはずだ。チェルシーの面々にもう驚く力など残っていなかっただろうが、せいぜい冷たい歓迎だろうと予想していた彼らにも、これだけの敵意はショッキングだっただろう。

ベニテスはマンチェスター・シティの面々からはチェルシー・ファンからに比べれば温かい挨拶を受けたが、その一方でアブラモビッチに向けては何の声も上がってはいなかった。このロシア人富豪が歓迎されないという横断幕やチャントには遭遇しなかった。一切無かったのだ。

したがって、スコアレスドローに終わったマンチェスター・シティ戦を通じて、スタンフォード・ブリッジにはこれまでにない程の憎悪が充満しながら、アブラモビッチへの怒りは聞かれずじまいだった。全ての罵りは、痛々しいまでにベニテスにのしかかったのだ。

厳然たる事実は、多くのチェルシー・サポーターたちは、アブラモビッチの金がもたらすものを、チャンピオンズリーグ、プレミアリーグ、FAカップを通じてエンジョイし過ぎてきており、単純に彼のアプローチが受け入れられてしまっているのだ。そして、多くの他クラブのサポーターたちがそこに非難と軽蔑をぶつけることも同様であることにあなたも気付いているだろう。

状況によってはベニテスも面の皮の厚い所を見せる。しかし、彼がテクニカルエリアで浴びせられていたものの内容は理解していなかったという、単純な反対から辛辣な嘲りに至る様々なチャントは、彼がこの先歩む、居心地の悪いことこの上ない仕事を体現しているものだろう。 これだけの個人攻撃を受けるとなると、石からでも生まれていない限り、何のインパクトも受けないというのは無理だ。

スタンフォード・ブリッジの雑音があまりに大き過ぎて、場内アナウンスが亡き元監督のデイブ・セクストンに1分間の拍手を捧げる案内を伝えるのにも一苦労していた。実際、セクストンに対する敬意は、場内の注意がひと時でもこの歓迎されない新監督から偉大な古きスタンフォード・ブリッジの奉仕者へと移ったことで、ベニテスを救いもした。

アブラモビッチは微動もせずにその様子を眺めていた。仮に彼が目撃した場面を気にしようが、彼の取り巻き以外は誰も気付きはしないし、いずれにしてもベニテスが彼の盾となっているのだ。

ベニテスは嬉々としてクリーンシートのポジティブさや王者相手の1ポイントなどを強調したが、今やマイナスになっている評判を挽回するために必要なことを説明したのは、相手のロベルト・マンチーニだった。「勝利、勝利、勝利、勝利、勝利・・・毎試合だ」

別にベニテスへの中傷を確かなものにするために多くの金を使う者などいないだろう。監督が就任当初から時間を与えられず、これだけの大音量と悪意に満ちた形で自分のチームのサポーターからの不支持を知らされれば、アブラモビッチに「暫定」の肩書を外すよう説得する前にファンの支持を得ようにもやれることが見当たらなくなってしまう。

シェッド・スタンドの横断幕には「ラファは出て行け - 動かぬ事実」と掲げられ、「俺たちが信じて愛したロベルト、決して信じないラファ。動かぬ事実」というポスター、他にも沢山の横断幕があった。

もうひとつの事実は、アブラモビッチがこの監督を選んだのであり、いかに反対の声が大きかろうが、そして好むと好まざると、この監督とやっていくしかないのだ。彼が他の決断をするまで。これがスタンフォード・ブリッジの掟なのだ。

若干マンチェスター・シティが優勢ではあったが、この凡戦の中で、ベニテスが施した戦術的な修正で組織的になったチームに喜びは見出せるのかもしれないが、他にこの楽しみに欠ける1日を救うものは見当たらなかった。

そして、ベニテスならかつてのリバプールの狙撃手であるフェルナンド・トーレスを即座に再生できると考えた者たちは失望することになるだろう。おそらく最初の疑問はこうだろう。「フェルナンド、どうしてそんなに悲しそうなんだ?」

トーレスは意気消沈して惨めな存在に映り、それは何故彼から活力も脅威も無くなってしまったのかを考えるまでもなく明らかだ。ベニテスのチェルシーでは、より長いボールでより素早くトーレスにボールを渡す、という指示が出ているのはすぐに分かる。しかし、それはこのストライカーよりもマンチェスター・シティのキャプテンであるヴァンサン・コンパニに喜ばれる策略となった。

ベニテスは最初のうちはチームの中での約束事の浸透に時間を費やすだろう。チームに信頼性と我慢強さを植え付けるためには、ディ・マテオ時代の艶やかさの一部は喜んで切り捨てるだろう。

そして、1月に1つか2つの修正を施した後は、マンチーニが主張する「勝利、勝利、勝利、勝利、勝利・・・毎試合だ」という言葉を追いかけていることだろう。

これがベニテスがアブラモビッチと交わした取引だ。そして、チェルシーのファンが成功のためにアブラモビッチと交わした取引なのだ。

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※シティ戦後の「スカイ」でのインタビュー。聞き手のジェフ・シュリーヴスも厳しい・・・。
「アンタは聞こえてなかっただろうけど、酷いブーイングでしたぜ。この先どうする?」


アブラモビッチの資金力に飼いならされるのも、チェルシーをアブラモビッチの乗り物、金満クラブと揶揄するのも同じこと、という一節にハッとさせられてしまった。その通りだよな。

それでも、このコラムを書いたマクナルティ氏も思う所があるんだろうな。興奮してたんだろうか、似たことを何度も繰り返してる感もあったけど、ひとまずそのまま訳出。昨日、一昨日あたりはこんな記事ばっか。ホント、メディアもアブラモビッチを必要としているね。

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