Friday, February 24, 2012

ヴェンゲルが迎える「かつてなく重要なダービー」

昨シーズンのエミレーツでのノース・ロンドン・ダービーは、アーセナル2-0リードからの大逆転劇でスパーズがモノにして、ヴェンゲルのあの「ペットボトル叩きつけ」シーンが登場した思い出深い試合。

自分はロンドン暮らしながら授業でスタジアムには行けなかったのだけど、そもそもスパーズ側への割り当ては2,900枚で、累積ロイヤリティ・ポイントが少ない自分がチケットを取るのは厳しい情勢だった。授業中にもスコア速報を自分のPCに表示させてる教授が「いま2-1だよ」とかお茶目に教えてくれ、隣の席のナイジェリア人同級生はiPhoneでしっかり観ていて(スカイを契約していればプラス数ポンドでモバイルでも視聴可)、休み時間にカブールの3点目が入った時には意気消沈してたのは良き思い出。

順位の面で拮抗していたからこその緊迫感もあったのだけど、今シーズンは若干トーンが違う。順位差は1つながらポイントで10も離れ、ヴェンゲル周辺にも過渡期の落ち着かない雰囲気が流れている。そこでピックアップしたのが、BBCの「ヴェンゲル政権史上で最も重要なダービー」と題した特集記事。


++(以下、要訳)++

一見しただけでは、なぜ今回トッテナムがアーセナルに乗り込む日曜のダービーが、今までのノース・ロンドン・ダービー以上の重要性を持つのか分からないだろう。

激しい対抗意識を持つ地元のライバルが、プレミアリーグの3ポイントを競い合い、ひとつしかない自慢の権利を互いに渇望している。ここまでは見慣れた光景だろう。しかし、その表面をかき分けてみると、これまでとは全く異なる絵が見えてくるのだ。

元ガナーズの右サイドバックだったリー・ディクソンは「このダービーは、アーセン・ヴェンゲルのアーセナルの監督としての16年間の中で、最も重要なダービーだ。クラブの歴史の中でも、非常に苦しい時期のダービーとなってしまった」と語る。

国内のカップ戦からは全て敗れ去り、チャンピオンズリーグも敗退同然。アーセナルは無冠のシーズンを7年にのばそうとしている。

ヴェンゲルが就任して以降、一度もアーセナルより上の順位でフィニッシュしていないトッテナムに敗れれば、3位のスパーズからは残り12試合で13ポイント離されることになる。アーセナルは、チェルシー、ニューカッスル、リバプールとの4つ巴の争いを勝ち抜かない限り、15年続いたチャンピオンズリーグ出場も止まってしまうことになる。

元アーセナルのミッドフィルダーだったエマニュエル・プティは「チャンピオンズリーグに出られなかったら悪夢だよ。今までいたポジションに戻るには、アーセナルは夏にビッグネームを連れてくる必要があるが、チャンピオンズリーグに出られなければそれも叶わないだろう」

サンダーランド、ACミランに惨敗し、アーセナルはスパーズとの一戦で今シーズンの勢いを取り戻したいと考えているだろう。

この対戦は、ヴェンゲルが最初の14年間で1度しか負けていないカードだったが、全ての証拠は流れが変わっていることを示している。リーグ戦でのここ7度の対戦を見れば、アーセナルは1勝しかしておらずトッテナムより下の順位で臨むのは32度のダービーでたった4度目だ。

「スパーズはアーセナルよりも良いチームだ」とプティが認めると、ディクソンも「ここ数シーズンで決定的にパワーバランスが変わった」と付け加えた。

2000年に『The Great Divide』と題した本でトッテナムを圧倒し続けるアーセナルについて著した、作家でフットボールアナリストでもあるアレックス・フィンは、「あの時記した大きな差などもう無い。あるとすれば立場が逆だ」と語っている。ただこの考え方は、不満の声を上げることが多くなっているエミレーツの観衆には受けが良くない。

アーセナル・サポーターズ基金(AST)のスポークスマンを務めるティム・パイソンは「これは、今まで"St. Totteringham's Day"を楽しむことに慣れてきたファンたちにはカルチャー・ショックであり、警鐘だ」と言う。この"St. Totteringham's Day"というのは、アーセナルのファンが、毎年トッテナムがアーセナルよりも上の順位でフィニッシュすることができないと確定する日のことを冗談めかして名付けた日のことだ。

残念ながら、2012年にはその祝日は訪れそうになく、多くのファンは一体どうしてこんなことになってしまったのか、首を傾げるだろう。ヴェンゲルはアーセナルでの最初の9年間で7つのトロフィーを掲げたが、今やクラブ史上最も長く無冠でいる監督になりそうだ。

フィンはこう主張する。「ヴェンゲルには、彼に詰め寄るスタッフや役員が必要だった。これは彼が対処に失敗した最も重大な問題だ。他のビッグクラブはより優秀なスタッフを揃え、様々な機会に入替えを行なっている。マンチェスター・ユナイテッドを見てみればいい。ヴェンゲルは一度もそれをせずに来ていて、他のクラブは進化する中、アーセナルはそのまま、もしくは退化してしまった。何故より質の高い人材で周りを固めようとしないのか?パトリック・ヴィエラはマンチェスター・シティで何をブラブラしてるんだ?」

加えて、フィンは2007年に当時社長のデイビッド・ディーン -今でもヴェンゲルの友人だ- が退団したことが、移籍市場で他クラブに遅れをとることになった原因だ、と責めている。これは、トッテナムの会長であるダニエル・リヴィが2008年にハリー・レドナップを監督に任命して以来、スパーズがアーセナルを上回ることになった数多くの分野のひとつだ。

プティは「スパーズと言えば、10年以上に渡って野心の無いクラブの代名詞だった。しかしこの2年で多くの良い選手たちを獲得してチームに特長がもたらされ、アーセナルよりも遥かに競争力を持つチームになった」と語る。

「突然やり方が変わって、多くの金を投資するようになった。高いサラリー、経験ある代表選手たちの加入、強烈なキャラクター - 元々いたギャレス・ベイルやアーロン・レノン、ジャメイン・デフォーらに、ラファエル・ファン・デル・ファールト、エマニュエル・アデバヨルといった面々が加わった」

「今やクオリティはピカイチ、そこにメンタリティも備わってきた。アーセナルが、特にホームで彼らにどう対抗するのか興味深いね。先週起きたことを考えれば、これは重大な試練だよ」

ディクソンも続ける。「ノース・ロンドン・ダービーを控えれば、ファンだって色々な記事を目にするだろう。しかし、選手たちはそんなことは関係ない。試合当日に起きることが全てだからだ」

「より目を引くのは最近の結果であり、その意味でアーセナルは見劣りする。そのこと自体、非常に士気に影響するが、俺が現役の頃は悪い結果が続けば、次の試合は強敵とやりたいと思ったものさ。その方が、自分たちに失望し続けるより次の試合に集中できるからね」

「その意味で、これだけ多くのものが懸かった、シーズンのこのタイミングでのノース・ロンドン・ダービー以上のものは無いだろう。腕まくりをして、気合いを入れて臨むべきなんだ」

ASTは、チャンピオンズリーグ出場を逃せば4,500万ポンドを失うと見立てており、それがペイトンが「単なるノース・ロンドン・ダービー以上の意味」を感じている理由だ。勝つことができればフレッシュな希望がもたらされるが、アーセナルもヴェンゲルも、敗戦を考えることができる状況ではないだろう。

フィンもこのように語っている。「負ければボディーブローの3連発目だ。それでノックアウトだろうな」

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スパーズを応援する身としては、ダービー前はスパーズ側で書いた記事で盛り上がりたいところだけど、今回はちょうど良いのも見つからず、逆にアーセナル側でしっかり書かれたものがあったのでコレにした。前回もベルカンプのインタビューだったから、ちとアーセナルが続いちゃったな。ま、あとはこのクリップで気分を上げておきたいところ。


Saturday, February 18, 2012

デニス・ベルカンプが語るアーセナルの課題

アーセナルが大敗を喫したミラン戦を前に、アーセナルOBで現在は古巣のアヤックスでコーチを務めるデニス・ベルカンプが、同じくアーセナルOBのアラン・スミス氏のインタビューに答え、現在のアーセナルについての率直な印象を語っている。この2人、実はアーセナルの選手としてはちょうど入れ違いのタイミングで、引退するスミスの代わりにベルカンプが加入したという経緯がある。


++(以下、要訳)++

初めて私がデニス・ベルカンプに会った時、彼は私とは反対の方向に進んでいた。私が膝のケガで引退せざるを得なくなり、プレシーズン初日にアーセナルのトレーニング場に別れの挨拶をしに行った時だった。

私には感情的な時だったとすれば、私の穴埋めを期待されて加入した彼にはハッピーな時だっただろう。

「幸運を祈るよ、デニス。全てが上手くいくことを祈ってるよ」

今振り返ってみれば、この青年は良くやったと安心して言うことができる。

17年後。42歳になったベルカンプが、全てのスタートとなったアヤックスの練習施設で食堂を横切る姿からは、満足そうな様子が見て取れた。

彼の輝かしい代表およびクラブでのキャリアには、3つのプレミアリーグタイトル、4つのFAカップと数え切れない個人的な称賛を結実させた、アーセナルでの11年間も含まれている。

チャンピオンズリーグのベスト16でACミランと対戦するアーセナルは、ベルカンプが退団した2006年以降、何のタイトルも獲得できずにいる。ベルカンプは、トロフィーの枯渇についてアーセン・ヴェンゲルを責めるつもりはないが、チーム構成と選手のメンタリティに根本的な問題があると考えている。

「今のチームには似たような特徴を持つ選手が多過ぎるように感じるし、もっと多様性が必要だろう。トレーニングでも試合でもチームを前進させる強いキャラクターを持った選手が何人か必要だ」

「それに、得点を決めるという意味においても、違いをもたらす選手が何人か必要だろう。今の中盤を俺たちの時代と比べてみたらいい。フレディー・リュンベルグ、ロベール・ピレス、レイ・パーラー - ビッグネームのひとりが上手くいかなくとも、誰かがカバーできたんだ。1人や2人の選手に頼り切るのは無理だよ」

同じオランダ人のロビン・ファン・ペルシについては、1トップを務めてこれだけのゴールを挙げていることに驚いたようだ。

「正直に言えば、今でもロビンにはメインのストライカーから少し下がったところでプレーして欲しいと思っている。俺もそうだったけど、彼もその方が輝けるだろうからね。その役割の方が彼には合ってるよ。それでも、今の彼のプレーを見てたら、あそこで使う監督を責めることはできないよね」

そのファン・ペルシの英雄的な活躍をもってしても、うごめく不満を抑えることはできなかった。多くのサポーターたちは、ベルカンプの以下のような考えに同意するだろう。

「時にはパスのメンタリティよりも勝者のメンタリティが必要になるんだよ(“Sometimes you need more of a winning mentality than a passing mentality”)。今のアーセナルの選手たちにそれがあるのか、よく分からない。単にパスを回す能力よりも、アティテュードが大事になる場面においてね。イングランドらしいメンタリティが失われてきてるのかもね」

「俺たちの頃は、ディフェンスの4人には当然それがあって、『よし、この試合はもらった』と考えることができていた。今のアーセナルの試合を見ていると、いつも同じプレーの仕方で、あまりに予測可能なんだ("it’s always the same way of playing, a bit too predictable")。選手たちが皆素晴らしいのは確かで、それは認めるべきだけど、それだけじゃ足りないんだよ」

ヴェンゲルについてはどうだろうか?今のような状況で、ベルカンプは彼の元ボスがより長くエミレーツに留まることができると考えてるのだろうか?

「ああ、そう思うよ。俺が知っているヴェンゲルは、勝利者だ。放り出して出て行くなんてできないだろう。まだ終わりじゃないと考えているだろうし、終わる時には上にいたいと思うはずだ。もしくは、チームを何らかの形で再び成功に導かないとね。だから、出ていく前にはそれを達成するためにチャンスを待って、一気に実現させようとするだろうね」

「アーセンと一緒にやっていた11年間にも上り下りがあった。良い時があれば、再構築に時間を要することもあり、その後また上手くも行く。今の問題は何のトロフィーも勝ち取れていないことだ。さっきも言ったことだけど、チームを前に進めるためには、気持ちを前面に出してとにかく勝つことが必要なこともあるんだよ」

「今はそうできていないわけで、苦しんでいる原因はそこさ。それがヴェンゲルのせいだとは思わないね。かつても素晴らしい監督だったけども、今もアーセナルにはファンタスティックな存在だよ。若い選手を連れてきて、多くの資金にかえていく。財務面で考えれば本当に偉大だ」

もしかすると、この点については今のアヤックスとの比較ができるかもしれない。アーセナル同様、オランダの古豪も今季はリーグのトップ集団に付いて行けずに苦しんでいるが、歴史があり、並外れた才能を生みだしてきた。

ベルカンプの今の仕事はフランク・デブールのアシスタントだが、そこにはストライカーの育成も含まれている。もちろん、役割には責任があり、ベルカンプもそこは真剣に受け止めているが、最終的には、家に帰る時には友人でもあるデブールが背負うプレッシャーからは解放されて家族のもとに帰って行ける。そこには、引退後の生活と現場への接点との良いバランスがあるように見える。

仕事の局面では、彼の詳細にこだわる鋭い視点が活きるだろう。彼のアーセナル時代のチームメイトは良く知っているだろうが、トレーニング後に既に誰もかなわぬ一級品だったテクニックにさらに磨きをかけようとする姿は、感嘆をもって受け止められていた。現在の挑戦のひとつは、今の世代はそこまでの完璧さを求めようとするとは限らないことだ。

「それは俺たちが変えたいと思っていることのひとつだね」とユース世代の育成にも携わっているベルカンプは語る。「選手たちの関心を保つように色々努力してるんだ。おかしなことに感じるだろうけど、そういう時代なんだ。お金だとか代理人ってものの影響も大きいよね」

「俺たちがトロフィーを勝ち取ること、ベストを尽くすことをきっかけにしていたのは、多くの若い選手にとってはできるだけ多くの金を稼ぐことになってしまっている。かつてとは違うメンタリティなんだけど、それと向き合ってやり繰りしていく必要があるんだよ。若い選手たちが毎日上手くなりたいと思ってトレーニングに来て、それを楽しめるようにアイディアを絞り出しているのさ」

同様の不満をイングランドの何人かの監督たちからも聞いていたから、ある意味、私は安心した。イングランドだけの問題ではなく、ヨハン・クライフ、マルコ・ファン・バステン、フランク・ライカールト、そしてベルカンプを生みだしてきたアヤックスのような偉大なアカデミーであっても、現代の潮流を変えるのには苦心しているのだ。

アーセナルも苦しんでいる、もうひとつの厄介な問題は、育てた選手がライバルに流出していかないように維持することだ。そこが、アヤックスがヨーロッパリーグで対戦するマンチェスター・ユナイテッドのようなクラブと競い合って行くのを困難にしてもいる。

ベルカンプは「俺たちはそれは一種のボーナスみたいなものって考えてるよ」と語る。「対戦から何かを得られればラッキー。でも、今シーズンはチャンピオンズリーグでもレアル・マドリッドと対戦したけど、ウチは圧倒されたよ。レベルが数段違うよね。マンチェスター・ユナイテッドだってそのくらい手の届かない存在さ」

アヤックスに若きベルカンプがいて冷静な目でキラーパスを流し込んでいたらどうだろうか?その点で言えば、アーセナルのファンもこの「アイスマン」がチームにいて、相手が束になってかかってもかなわないとしたら、どう思うだろうか?

本人も回想しながらこう語る。

「思い返せば思い返すほど特別な時だったと思うよ。自分が素晴らしいチームの一員であることがよく分かるからね。ピッチに出れば、自分が違いをもたらすことができるんだ。『今日の俺は誰にも止められない』ってね。傲慢になっているわけじゃなくて、そう感じてたってことさ」



「ティエリ・アンリについても同じさ。ボールを彼に預けさえすれば、残りは全部やってくれるからね。若かったパトリック・ヴィエラがハーフタイムの交代出場でデビューした時のことをよく覚えてるよ。彼は自分でゲームを変えて見せたからね」

先週ヴィエラは、家族と共にベルカンプを訪ねてきたという。ベルカンプは笑ってこう言った。

「パトリックとは昔話をしたよ。本当に特別だったよ」

++++

スパーズを応援しつつ、ベルカンプは本当に好きな選手で、引退の時には記念のTシャツを買ってしまったくらい。よく覚えてるのは、ワールドカップ、アルゼンチン戦での神業トラップ+完璧なタイミングのシュート。大学の夏休みに長野に免許合宿に行ってる時で、早朝にテレビで見てたけど思わず「うわ、天才!」と叫んで、「これ見るべき」とか言って同部屋にいた先輩を起こして回ってた。


アーセナルでの晩年、契約更新が1年ずつで、アーセナルのクラブのポリシーがよく分かったけど、それでもあそこまでプレーを続けて、しかも「効いてた」んだから偉大だよな。

Friday, February 10, 2012

イングランドとイタリアのメディアが伝えたカペッロ辞任

世界を驚かせたファビオ・カペッロのイングランド代表辞任劇。イギリスとイタリアのメディアがどのように伝えたのかを、「テレグラフ」紙がまとめてくれている。イタリアのメディアは若干せいせいしたって感もあるのかな。


++(以下、要訳)++

「サン」紙は、一面を大きく「Arryvederci(アリベデルチ:イタリア語で『さようなら』)」で飾ったのをはじめ、イギリスとイタリアのメディアの多くがこの件を一面もしくは最終面で大きく扱っている。

アリベデルチ/さよなら(サン)

4年間の間に計2,400万ポンドのサラリーを支払って、ファビオ・カペッロは言葉を学んで帰ったと思うだろう。しかし、彼にはそれすらできなかった。南アフリカのベンチに座って、品の無い言葉を選手たちに向けて叫ぶことはできたとしてもだ。彼が脱線しているという明らかなサインが出ていた。彼は眼鏡の奥から選手たちを見つめながら、何をすべきなのか分からず、近眼のマグーのように世界を見渡していたのだ。


さよなら、ファビオ(ガーディアン)

ファビオ・カペッロは英語を勉強する気などなく、イングランドにもさして興味はなかった。彼に支払われた年間600万ポンドのサラリーも、自分がそのメジャー大会での復権のために雇われた競技の母国の文化に興味を持たせるには十分ではなかった。


イングランドの期待(タイムズ)

ハリー・レドナップは前日は自分が牢獄行きになるかを懸念しながら目覚めただろうが、今度は自分がイングランド代表監督になるかと思案しながら眠りに就いたはずだ。フットボールという云々よりは、驚きでしかない。フットボールというのは、ピッチ上でボールが動いている時がいつもそうであるように、ピッチの外も奇妙に予測不可能になった。


苦き終焉(デイリーメール)

一体どうしてレドナップがこのカオスを歓迎するというのか?ここ最近の彼の状況を考えて、一体どうして彼がFAを適切な雇用者と考えるだろうか?レドナップは5年にわたる調査を耐え抜き、脱税に関する極めてプライベートな裁判を終えたところだ。全ての疑念が晴れて無罪放免となり、サザーク刑事裁判所の階段に立って、トッテナム・ホットスパーの重役に惜しみない感謝の意を評したばかりなのだ。


・・・一方のイタリアでは。


さよなら、イングランド(レバッブリカ)

イングランド人はもはや彼に我慢できなくなり、彼はイングランド人に我慢がならなくなった。とうとう上手く行くことの無かったこの婚姻関係の終焉には政治的に正しい理屈が必要で、テリーの一件は渡りに船だった。


カペッロ、衝撃の辞任(ガゼッタ・デロ・スポルト)

戦術家カペッロはFAに裏切られたと感じた。彼は2007年から4年間監督の座におり、ユーロ2012の4カ月前に辞任することになった。それでも新たな職を見つけるのに苦労をすることはないだろう。


驚きの冷遇(レパッブリカ)

フットボールを発明した国は(エリザベス女王が若き女性だった頃以降ワールドカップを勝ち取っていないが)、成功を収めて歴史を書き替える方法を知っているのなら、このイタリア人監督を支援していたはずだ。しかし、彼の選択はほぼ悲劇に等しく、そこにあったのは身の毛のよだつ南アフリカワールドカップでの記憶、そして同じ憂鬱なパフォーマンスユーロで繰り返されるという恐怖感だった。彼らは、手遅れになる前に自分たちを障害物から解放する必要があったのだ。


++++

ま、いろいろ見ていると、カペッロ自身も辞める口実を探していた、FAもいい加減テリーの擁護が厳しくなってきたってとこも見え隠れしてて、イタリアの「コリエレ・デラ・セラ」紙が『秀逸なソープオペラ』と書いたのもあながち外れてないのかも、と思ってみたり。

Saturday, February 4, 2012

タイトル争いに僅かな差をもたらす4つの要素

いよいよ勝ち点で並び、シーズンの終盤にかけてテンションも上がってきたマンチェスター勢でのタイトル争い。雌雄を決する4つポイントについて、スカイで実況解説を務めるアラン・スミス氏が「テレグラフ」紙に寄せたコラム。コラム自体はシティがエヴァートンに敗れる前のものだけど、依然として当てはまる部分も多いから、そのままピックアップ。


++(以下、要訳)++

ロベルト・マンチーニがタイトル争いでサー・アレックス・ファーガソンの先手を行くのは今回が初めてだが、強固なチームの選手層や比較的有利な対戦相手は、ブルーのマンチェスターに僅差でタイトルをもたらすことになりそうだ。


ケガ人と出場停止

通常あまりないことだが、マンチェスター・シティは、ケガよりも出場停止やアフリカ・ネーションズ・カップで選手を失うことで苦しんでいる。ヴァンサン・コンパニとヤヤ・トゥーレがここまで最も高くついた不在だ。マリオ・バロテッリの現在の出場停止の方が、まだカバーしやすいだろう。

しかし、もしダヴィド・シルバを1カ月もしくはそれ以上ケガで欠くことになったらどうだろうか?これまでも数回シルバ抜きだったことはあるが、チームが同じとはとても言えない状況となった。このスペイン人のパスの視野と創造性は、特に試合がタイトになるほど代えが利かないのだ。

若干理由は異なるとはいえ、それは街の反対側でも同じだ。マンチェスター・ユナイテッドがウェイン・ルーニーを欠けば、機動力を欠いてしまうし、彼の勝利への意欲、そして言うまでもないが、フィニッシュの場面での彼の能力を必要としているのだ。

他の面に目を向けると、ユナイテッドはここまでケガ人の波に襲われても何とか凌いできている。特にディフェンスラインの4人については、あらゆる変更を強いられてきており、ロベルト・マンチーニが持つような強固な継続性を持ち合わせてはいない。

この先については、運もカギを握るようになってくる。チームのベストプレーヤーをピッチに残せる方が、より大きなアドバンテージを持つはずだ。


チームの選手層

当然、上で述べた話とつながってくる。抱える戦力を最大限活用しながら、この挑戦を抜け目なくやり繰りしていけるのはどちらのクラブか?

ケガと出場停止を別にして、調子の下降や特にヨーロッパリーグが再開することから休養の必要など、シーズンの残り期間の間には変化が必要な時が来るだろう。

ユナイテッドはネマニャ・ヴィディッチが長期間欠場しているにもかかわらず、守備が大きく破綻しているわけではない。パトリス・エヴラが負傷しない限り、サー・アレックス・ファーガソンは5月に見込まれる復帰までやり繰りするはずだ。

しかしながら、中盤については、ライアン・ギッグスとポール・スコールズという2人のベテランに頼っていることから、もう少し脆さがある。ファーガソンが最もケガ人を出したくないポジションがここだろう。

最近のステファン・サヴィッチのプレーから考えるに、シティにとってのそうした急所はセンターバックだろう。ヤヤとコロのトゥーレ兄弟は、アフリカからすぐには戻ってこなそうだ。

このポジションを除けば、マンチーニはチームをフレッシュに保つための十分な質がある。これだけ資金を費やせば、あらためて驚くことではないが。


精神的な図太さ

これは監督だけでなく選手たちにも当てはまる部分で、ユナイテッドにアドバンテージがある。ファーガソンは当然これまでに全てを分かっている。彼は、何をいつ言ったら良いかを分かっているし、プレッシャーが高まってきた時に誰を信頼すべきかも知っている。これまでに起きてきたこと、決断してきたことで、現在の状況も経験済みだ、というのは大きい。多くのタイトルを勝ち取ってくると、どのように寝床を準備したら良いかは分かっているのだ。

対照的にマンチーニのチームの選手たちの大半にとっては、少なくともイングランドでは未経験のステージであり、いざという時になれば、神経が張り詰めるはずだ。ゴールが見えてきた時に、緊張感で普段のパフォーマンスが発揮できない者も出てくるだろう。

となると、ここでマンチーニの役割がモノを言うことになる。監督としてセリエAで3つのタイトル、このイタリア人はトラックのホームストレートに差し掛かった時に何が必要かを知っているはずだ。適切な態度をチームの内外で示すこともここには含まれてくる。緊張感溢れる姿など選手は見たいと思わないし、ロッカールームでの自信には何の役にも立たない。


残り試合

誰もが知るように、フットボールは机上の話ではない。仮にそうであれば、もうタフなアウェー戦がアーセナルくらいしか残っていないシティには、今すぐにでもプレミアリーグのトロフィーが手渡されるだろう。確かにチェルシーとユナイテッドはまだエティハド・スタジアムに乗り込んでくるが、シティが今のホームの戦いぶりにいくらかでも近いパフォーマンスができるとすれば、タイトルは手が届くところまできているように思える。

事実、4月28日には、シティのファンによって「D-Day(ノルマンディー上陸の日)」として印がつけられている。ここで地元のライバルを叩けば、優勝がほぼ決まるという目算だ。この楽観主義の一部は、ライバルがこの日曜にチェルシー、1ヶ月後にはトッテナムに乗り込まなければならないことから来ている。シティはそれぞれフラム、ボルトンと対戦する時にだ。

結局のところ、ここは我々にもまだ分からない。それでも確かなのは、シティが残りの日程をユナイテッドと交換したいとは考えないであろうことだ。


判定

シーズンの終わりにその大きなカップからシャンペンをすすりながら、タイトル獲得に向けて大きな違いをもたらした試合、決定的な瞬間をいくつか振り返るだろう。ラッキーなボールのバウンド、レフェリーの判定や仲間のひとりの魔法のようなプレーかもしれない。何が起きるにせよ、シティはそのひとつを試合終盤で勝利を掴み、エティハドを興奮させたスパーズ戦で得た。2点差を追いつかれながら試合をモノにするという、今年は行けると人々に思わせる勝利だった。

この点から考えても、シティの選手たちはこの先の困難に立ち向かっていく必要がある。そして、私はそれができると思う。2試合を残して。

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最後の「2試合残して」、ってのは、後ろから3試合目の直接対決に勝って、って意味なんだけど、個人的にはその試合の結果ますます分からない、って展開の方が面白いなー。そんくらいの混戦の方がスパーズにもチャンスがあると願いたいし。

Friday, February 3, 2012

目を覚ました各クラブ、静かな移籍市場は必然か

結局大きな動きの無いまま終了した1月の移籍マーケット。トーレス、キャロルが動いた去年と比べるとインパクトも小さいが、こうなった要因はFFPの導入が迫っていること以外にもあるのでは、という「ガーディアン」紙のデイビッド・コン記者の見方。


++(以下、要訳)++

かつても動きの少ない移籍市場(トランスファー・ウィンドウ)は以前にもあったが、今回はUEFAが示すファイナンシャル・フェアプレー(FFP)のガイドラインが、クラブの支出に影響を与えている。

1月の移籍市場ででたらめな賭けをしてフットボールの健全な未来を占おうとしても、それはいかがわしい詐欺に満ちたものになるだろう。移籍締切日のランチタイムになっても、大きな話がまとまる雰囲気はない。今年の動向について言おうとするなら、2011年に史上最大となる2.25億ポンドが投じられた移籍締切日の浪費や見出しを飾る大型移籍は、とても起こりそうにないということだ。息が詰まっていたプレミアリーグにも、空気の入れ替えが必要なのだ。

この慎重さの要因が、UEFAが赤字でも出費を続けるクラブに対して、収支のバランスを取らなければ罰則の対象になると定めたファイナンシャル・フェアプレー(FFP)であることは明らかだ。直近の決算でも1.97億ポンドの損失を計上しているマンチェスター・シティや同じく7,800万ポンドの損失となったチェルシーは、富豪オーナーたちが過度な出費を続けていくと、最悪の場合チャンピオンズリーグの出場権を剥奪されることになる。

当然そこには何らかの狙いがある。かつてはFFPをヨーロッパ的で、ミシェル・プラティニがイングランドの資金力に対抗するために騒いでいる謀略だと考えてきたプレミアリーグの各クラブも、損失を圧縮し、選手の給料を抑えることも悪くないのではないか、と気付き始めている。クラブの役員たちはUEFAのルールにインパクトがあることを理解し、クラブには代理人や選手たちからの要求に抵抗するためのエクスキューズが用意された。オーナーたちも、給料や移籍金が跳ね上がるスパイラルに陥り、大幅な損失を計上することになるため、制約の無いマーケットを持つことは本意ではないと考えるはずだ。

それでも、先週のUEFAが改めてこのFFPの目的を明確にした点からは、各クラブが即座に「長期的視野と持続性」に移っているとは言えない側面も見てとれる。2年前、2010年1月の移籍市場も緊縮されたもので、各クラブで合計3,000万ポンドしか使われなかった。当時シティの監督だったマーク・ヒューズは、4人の選手に5,000万ポンドを投じた後で、ここでは700万ポンドでアダム・ジョンソンを獲得するに止まっていた。FFPの概要が明らかになりつつある頃で、皆が現実的になっていたのだ。その1年後、昨年はヒューズの後任であるロベルト・マンチーニが、長らく追っていたエディン・ジェコを2,700万ポンドで獲得し、アストン・ヴィラはダレン・ベントの獲得に1,800万ポンド、ロマン・アブラモビッチはチェルシーには2,650万ポンドをかけてもダヴィド・ルイスが必要だと判断し、リバプールはルイス・スアレスに2,280万ポンドを費やした。そしてのその眩いばかりの移籍最終日にアブラモビッチはリバプールからフェルナンド・トーレスを買うために5,000万ポンドの出費を認め、リバプールのオーナー、フェンウェイ・スポーツ・グループもアンディ・キャロル獲得のために3,500万ポンドをニューカッスルに振り向けた。世界はフットボールはまた常軌を逸したと考えた。

プレミアリーグのクラブの中には、この騒動の結果、特にトーレスとキャロルの不調が計8,500万ポンドのほんの一部も正当化できない現状が、今季の慎重さを生みだしていると考えるところもある。サー・アレックス・ファーガソンがいつも言うように、1月の移籍市場は問題があるウィンドウだとも言われてきている。選手を買う必要があるクラブはどこも必死であるため値段が高騰する一方、加入する選手たちはシーズン途中の加入でフィットするのが容易ではない。

アブラモビッチは2011年の散財が何のタイトルにも結び付かず監督をまた一人解任したこともあり、今年は静かだ。シティは、UEFAにFFP正式導入の2014-15シーズンを前に、収支をチェックされる2012年、2013年の会計がどうなるかを懸念している。この移行期間の間も、オーナーがそれをカバーするのであれば、4,500万ポンドまでの損失しか認められていない。オーナーのアブ・ダビは、カルロス・テヴェスとの衝突があったにせよ、マンチーニはシェイク・マンスールが買収以来3年半の間に投じてきた8億ポンドの投資でリーグタイトルを勝ち取るべきだ、と判断した。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リバプールは、利益を上げようとするアメリカ人オーナーが保有しており、トロフィーによる自らのアドレナリンのために資材を投じたりはしないことから、彼らが出費を抑えているのは驚きではない。フェンウェイのオーナーであるジョン・ヘンリーは、キャロル獲得のためにニューカッスルに支払った金額は、トーレスの移籍金で得た金額に紐付いている、と語った。多くの出費をしながら、リバプールの収支はトントンだった。

こうしたメガクラブを除けば、プレミアリーグは以前に比べて安定化の傾向が強まっている。トッテナム・ホットスパー、ニューカッスル・ユナイテッド、ストーク・シティ、アストン・ヴィラ、サンダーランド、フラム、ウォルバーハンプトン・ワンダラーズなどは、資金力のあるオーナーの下でも、慎重に資金を使い、湯水のような出費には断固とした姿勢をとっている。デイビッド・モイーズが嘆くようにエヴァートンには使う資金は無く、降格圏内に沈むクラブがパニックに陥っての出費も少なくなってきた。

UEFAは、FFPが既に移籍金の高騰を抑えると言う目的のために機能し始めていると考えており、各クラブにも徹底を奨励している。選手にかけるコストについて、新たな慎重なアプローチができてきてはいるが、比較的静かだった移籍市場の動きだけで判断するのは早計だろう。絶え間のない野望や、金持ちの我慢弱さ、苦闘する者の必死さが実際の価値以上に金を使わせることは、穏やかになることはあってもなくなることはないからだ。

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スパーズの名前もチラリと出てきたけど、スパーズの場合は監督交代のサイクルがやってくる可能性があることも影響してるかな、と。今は脱税の件で裁判中だけど、本当に代表監督になれば、後任監督が好みの選手を獲るための資金はプールしておく必要がある。ベテランのレンタルが多いのもそういうことなんだな、と。