++(以下、要訳)++
赤と白のスカーフを首に巻いたティエリ・アンリは、救世主的とも言えるポーズの自らのブロンズの像を凝視して家族やファンに目を向けると、次第に涙が浮かんできて視線を反らさざるを得なくなった。
前にこれに似た感情を味わったのは、2007年にアーセナルを去った時だとアンリは断言した。その時には、誰も彼の涙など目にしなかったが、彼はここに戻って来た。そして今回の涙は全く恥ずべきものではないし、誰もがそれを注視した。
自分の人生とも言えるクラブのスタジアムの外で、銅像として不滅の存在になること。それは夢にも思わなかったことだ、とアンリは語る。
「心の底からアーセナルには感謝したい。今までにも言ってきたことだが、『ひとたびグーナー(Gooner)となれば、生涯グーナー』とこれからも言い続けるよ」と言うアンリの声は詰まっていた。
アンリの像は、アーセナルに最も多大な影響を与えた3人 - アンリ、トニー・アダムス、ハーバート・チャップマン - の銅像のひとつであり、クラブの創設125周年を祝う一環で建てられた。アンリにとっては、自分が常にクラブに対して感じてきたものを体現するものに感じられた。
重さ200kgの記念碑は、アンリがアーセナルにもたらした驚くべき226ゴールの中でも伝説的な、2002年11月のハイバリーでのスパーズ戦でのゴールを祝うポーズで、膝をついたスライディングで喜びを見せている。「これは僕がいかにアーセナルを愛しているかを示す完璧な例だよ。膝立ちをしてエミレーツ・スタジアムを向いてる - 僕のすぐ後ろ側にはハイバリー - とは驚きだよ」
※このトップ25ゴールの中では第5位がそのスパーズ戦のもの。
最初にこの名誉について聞かされた時にはからかわれているのだと感じた。125年の歴史を彩った偉大な選手たちを差し置いて?おい、冗談だろ?と代理人のダレン・ディーンに聞いたが、答はそうではなかった。
そして、会長のピーター・ヒルウッドが銅像を覆っていた赤い布を取り払うボタンを押すと、数百人の熱きファンたちが拍手と共に歌い始め、アンリの表情は子供のようなはにかみに変わった。確信を得るために、アンリは愛娘のティーを連れて、スタジアムの南東に立つその記念碑の周りを歩いてみた。
「僕はキャリアの中で様々なものを勝ち取る幸運に恵まれてきたけど、これはその中でもトップだ。現実なんだと思うと圧倒されそうだよ」ヒルウッドが、気に入ってくれたか、とすかさず聞くと、アンリは「ああ、もちろん」と会長に断言した。
もしかすると、アーセン・ヴェンゲルも認めるクラブ史上最も偉大で博識な監督だったチャップマンや驚くべきキャプテンだったアダムスと並び立つという超然たる事実が、アンリに涙を流させたのかもしれない。
しかし、34歳にしてアンリは現在もニューヨークでゴールを量産しており、マーティン・キーオンが先月、ローン加入で仕事ができるのではないかと語っていたくらいだ。生きた伝説となることについてアンリは次のように語った。「前にここまで感情的になったのはアーセナルを去ったときだった。涙が出たけど誰にも気付かれはしなかった。それでも僕はアーセナルを愛しているし試合も観る。負けるた時にはいつだって痛みを感じるよ。いつだって僕は自分の人生のクラブに戻ってくるさ。一番良いのはすべての偉大な選手たちの一部を集めてひとつの銅像にできることなんだけどね。選ばれたことは本当に名誉に感じているよ」
ヴェンゲルが群衆になぜアンリでなければならなかったのかを説明した。「彼のセンセーショナルなキャリアは単純にアンリ本人が持っていた違いによるものだ。彼には、選手であれば誰もが持ちたいと夢見るもの - フィジカル能力、技術レベル、優れた知性と献身 - の全てを持ち合わせていた。この世界で勝者となるために必要な全てを備えていたのだ」
そして、彼がモナコで最初にティーンエイジャーとして育て始めたアンリに向かってこう言った。「ティエリ、よくやったよ。おめでとう。君は本当にスペシャルだった」全くもってスペシャルだった。そしてスペシャルだっただけにいつの日かエミレーツに監督として戻ることがあるか、という疑問が湧いてくる。展望を聞かれたアンリは、ヴェンゲルの横で笑って答えた。「いつかはね。でもいつ彼が辞めるって言うんだい?」
ヴェンゲルも「まずは、彼を選手として見ようじゃないか。彼のキャリアは終わってないのだしね。しかし、私の下にいた多くの選手、例えばティエリやパトリック・ヴィエラには監督になる資質があると思っている、というべきだろう」と返した。
ヴェンゲルはアーセナルでアンリにコーチ修行をさせるだろうか?「もちろん。だが彼は急がないとね。私も決して若くはないから」その通りだ。そして、それはもうひとつの銅像がやがてこの3つに加わるはずであることを思い出させる。以前、ヴェンゲルの半身像が幹部向けの入口に作られた時、彼は「あれは誰だ?まるでもう死んだみたいだな」と語っていたことがある。
アンリはエミレーツのアーセン・ヴェンゲル・スタンドに座ることについては、「ああ、このエヴァートン戦で勝つためにね」と完璧な答えをヴェンゲルに返した。ヴェンゲルの銅像がアンリの横に並び立つ日はまだ先で良さそうだ。
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いい話。選手にとっても、心のクラブをこうして持てることは幸せなことだと思う。
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