今回ピックアップしたのは、地元の復興に力を貸すスパーズのレドリー・キングが、地元の人々向けに講演した話から始まる「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター氏の記事。少し前の記事なのだけど、スパーズというチームの描写に深みが出てて面白い。
++(以下、要訳)++
夏にロンドンで暴動が起きた時、それはまずトッテナムから始まり、より激しくなっていった。石油爆弾が投げ込まれ、略奪が横行し、警察が行く手を阻む期間が長く続いた。
その暗黒の8月以来、コミュニティのどのセクションも再建に忙しくしているが、それは街の中心でもあるトッテナム・ホットスパーも同じだ。
スパーズのキャプテンであるレドリー・キングは、「暴動はこのエリアに大きなダメージを与えたね。何の罪もない数多くの人々が影響を受けたんだ。クラブがここでそうした人へのサポートをするのは大事なことで、選手たちもコミュニティでできることをしているんだ。僕自身、地元だからね」
キングはピッチでそうであるのと同じように、周囲の手本となっている。トッテナム・ホットスパー基金とプレミアリーグ・グローバル起業家週間をサポートして、地元の人々が自ら起業するのを支援しているのだ。「新しいビジネスを始めてみよう、って話さ。困難に負けて諦めるんじゃなくて、それを跳ね返すのさ」そうキングは説明した。
起業家のアラン・シュガーのようになりたいと願ってホワイト・ハート・レーンの会議場に集まった聴衆たちに、キングはフットボールを例えに語りかけた。「業界」の特色や発見、チームとして働くこと。スパーズには間違いなくこれらの特性を見て取ることができる。
月曜日のアストン・ヴィラ戦を前に、ハリー・レドナップのチームはブラッド・フリーデルやスコット・パーカー、エマニュエル・アデバヨルといった抜け目なく補強された選手たちと共に活気に満ちていた。「ブラッドの経験には言葉で言い表せない価値がある。皆を落ち着かせられるんだ」キングはそう語った。
「スコットには驚かされるよ。この間フィットネスのコーチと、ある試合で俺の運動量が40%も落ちた話で冗談を言ってたんだ。俺は『そりゃスコットのせいだ』って言ったよ。アイツがヘトヘトになってピッチから下がってるのに、俺はピンピンしてたんだからな!」
「スコットは最高の形でディフェンスラインの4人を守ってくれるんだ。ダヴィド・シルバやロビン・ファンペルシはディフェンスと中盤の嫌な場所を狙ってプレーしてくるだろ?ディフェンダーにはやりづらいんだ。それでも俺が1、2秒時間を稼げれば、スコットはいつだって戻って来てくれて、俺がポジションを大きく崩す前にボールを奪いに行ってくれる。全然戻ってこない選手だっているけど、スコットは違うんだよ」
「それにスコットはロッカールームでも最高だよ。静かなヤツなんだけど、ヤツが話す時はみんな聞くんだ」
キングはアデバヨルに対しても同様の印象を持っている。「シティから来たとなれば、何か突っかかって来るのか、意気消沈してるかと思う人間もいるだろう。でもマヌは初日から凄くはしゃいでたんだ。トレーニングに来ればいつだって一生懸命だし、チームに活気をもたらしてくれるんだ」
スパーズのゴールが生まれるのはそこからだけではない。「30ヤードの距離なら、ジャメイン(デフォー)がイングランドで一番だね。ボールをちょっと動かしてズドンさ。深く考えてない時が一番良いんだよ。信じられないレベルのフィニッシャーだし、いつだってゴールを上げることだけを考えているからね」
「彼も29歳で年齢を重ねてきてるけど、子供みたいなんだ。トレーニングが終われば『さっきの俺のハットトリック見た?』なんて言ってきてね。自分がどれだけ凄いか示したいだけなんだけどさ」
スパーズは、デフォー、アデバヨル、ルカ・モドリッチ、ラファエル・ファン・デル・ファールト、ギャレス・ベイル、そしてアーロン・レノン、と皆攻める気持ちを持っている。
「トレーニングで彼らが小さなトライアングルでプレーするのを見れば、そこにあるのは試合で見るあのテンポさ。マヌ、ルカ、ファン・デル・ファールトのような選手とウィングのあの速さを考えれば、このメンバーは俺がトッテナムでプレーしてきた中でも最強だよ」
キングはクラブがモドリッチをチェルシーに奪われずにキープしたことに喜びを見せる。
「チームとしては、俺らが皆彼に残って欲しい、一緒に戦って最高のシーズンにしたいと思ってる、と伝えたよ。ルカは本当にいいヤツで、クラブの誰とも上手くやってるよ。凄く難しい立場にあったと思うけど、やるべきことに集中して最高のフットボールを見せている。もう終わったことだと思いたいけど、結局は僕らが今シーズンをどう戦うかに懸かってるんだ。良い選手がいれば、他のクラブへの噂話に巻き込まれるのは避けられないし、次はギャレスに同じことが起きると思っている」
「長距離だったらギャレスはクラブで一番の早さだよ。10mから15mの初速だったらアーロンの方が速いと思うけど、ギャレスほどコンスタントにペースを維持できる奴を見たことがないね。ピッチの長い距離を同じ速さで走り続けられるんだ。フットボーラーには稀有な能力だよ。普通は瞬間的だからね」
「ギャレスは俺が見てきた中で一番のアスリートさ。フィットしてるし、速くてあの左足は魔法だね。完璧な選手を作りたいと思えば、ギャレスがそこにかなり近いと思う」
「ウチには本物のスピードがあると思う。バックラインを見てみろよ。カイル(ウォーカー)、ユネス(カブール)にベノワ(アス・エコト)。俺が一番遅いな!昔は一番スピードがあったのに!カイルも最高のアスリートで素晴らしいディフェンダーだと思う。ポジション面でも随分改善してきてるしね。アイツは前に行くのが好きなんだよ」
「そういうタイプの選手に多いのは、逆サイドで待ってるだけ、ってパターンなんだけど、今季の彼は適切なポジションが取れている。カバーも凄く良いんだ。ユーロの頃には、イングランド代表のレギュラーになっていると思うね」
レドナップはこうした才能を見事にブレンドしている。「中には難しい性格で知られる選手もいるけど、彼らも皆ハリーのためにプレーできるのさ。ハリーは人の心を掴むのが本当に上手いね。ハリーはたまに俺達がいかに凄いかを思い出させてくれる。素晴らしいチームで、どんな相手にでも勝てるんだ、とね」
「俺達が8試合無敗をキープできてるのは、俺達には本当に良いメンバーが揃ってる、と信じられるようになったからさ。ベストメンバーが組んだら、どこにだって肩を並べられるはずだ」
レドナップはキングを上手に起用している。膝への負担を考慮してトレーニングを免除することもある。そしてキングはファビオ・カペッロも同様の理由で称賛する。
「ワールドカップでファビオとは素晴らしい関係を築けたと思う。ファビオは俺がトッテナムでしているのと同じようにさせてくれたんだ。別に隔離されたわけじゃなくて、話し合ったんだ。俺には本当に良くしてくれて、色々助けてくれようとしてね。ケガをしてしまったのは本当に不運だったけど、それはよくあることさ」
アメリカ戦でグロインを痛めたキングは、それ以来代表でプレーしていない。「俺にとっても代表にとっても難しい問題だよ。もちろん気持ちは今でも持っているけど、どんどん遠ざかってはいるね。代表について言えば、俺にはピッチで馴染む時間が必要だ。もし俺がジム通いでチームのみんなと一緒にいないのだったら、ますます難しい。ワールドカップでやってみたけど、タフな経験だった」
「毎試合ピッチに出ては、怪我をしなかったことに安心する。痛みは感じてないけど、いつも違和感と制約を感じながらプレーしているんだ。もうそれには慣れる方法を学んだけどね。そんなには走らないし、前にもできるだけ出ない。俺、ピラティスやってるんだ」
ケガに対する苛立ちは、ピッチ外での軽率な行動にもつながった。既に謝罪をしていることだが、2009年にはロンドンのナイトクラブで不祥事を起こしている。
「この4年間は人生の中でも一番の試練の期間だった。落ち込んだよ。誰もがするように、俺だって過ちを犯した。ネガティブなことがこの4年間に起こっていて、それらは普段の練習ができずに、チームのみんなといられなかったことも原因だった。俺は強くならなきゃいけなかった」
31歳となったキングは、息子のコビーが草サッカーをしたがることに当惑することがある。
「時には膝に負担をかけられないから一緒にできない、と言うこともある。俺がゴールキーパーを務めることもね。息子は分かってくれるよ。この膝と共に育ったようなものだからね。俺のことを誇りに思ってくれてると思うし、俺がプレーしてたことを忘れないように、できるだけ長くプレーしたいと思っているよ」
「アイツ、俺にレノンのシャツをくれって言ってきたんだ。あげようかどうか迷ったね。キングのシャツは既に大量に持ってるよ。フットボールが大好きなんだ。トッテナムと同じくらいマンチェスター・ユナイテッドが好きなんだけどね…」
スパーズ一筋のキングも契約が来年の夏で切れるが、本人はここで続けたいと考えている。
「来シーズンだってプレーできるさ。どんな選手だって、自分の体のことは分かってるし、いつが辞め時かも理解している。俺の場合はそれはまだ、ってことさ。コーチの講習は受けてるけどね」
「バルセロナがトレーニングをしているのを見るのは楽しいよ。自分のプラスになるからね。もちろん、いつの日か監督かコーチになってみたいと思っている。でも俺にはまだまだこなせる試合が残ってるからね」
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ということで、チームメイトのことから自分のことまで、幅広くキングが語った記事。こんな選手がキャプテンやっててくれるのは嬉しいし、何より今シーズンはちゃんと試合に出て、しっかり守備を締めてくれている。来シーズン以降もドーンと構えてて欲しいところ。
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