Wednesday, September 7, 2011

ピーター・クラウチ、巨人の島に流れ着く

スパーズでチャンピオンズリーグ出場を決めるゴールをシティ戦で決め、チャンピオンズリーグでは、ACミランを破る決勝ゴールを決めたピーター・クラウチ。逆に、レアル・マドリー戦では早々に退場となり、次の出場権を手繰り寄せたかった昨季終盤のシティ戦では、1年前とほぼ同じ場所でオウンゴール。外見だけでなく、スパーズ・ファンには印象に残るシーンを演出してくれた選手だったが、今回のマーケットでストークに移籍することになった。そこで切り拓く未来とは。「テレグラフ」紙のジム・ホワイト記者による、アーセナルとストークの比較を交えたコラム。


++(以下、要訳)++

アーセン・ヴェンゲルがオールド・トラフォードで惨敗を喫した後に言ったことのうち最も驚いたのは、アーセナルが移籍を掌る部署に20人を雇っていて、日々アーセナルにフィットする才能の発掘と獲得を担っているということだった。この狂ったような夏の移籍市場が閉じると、我々は「このヴェンゲルに仕える20人の部署は残りの364日は何をしているのか」と聞きたくなるだろう。

8月31日のエミレーツは、クリスマス・イヴが近づく高速道路のサービスエリアのようで、売り場の棚はどんどん空っぽになり、どんなものでも残っていれば懸命に買物カゴへと入れられた。ライバル2チームで余剰人員となったケガがちなイスラエル人は、本当にアテになるのか?

いないよりはいい。他に誰も残っていなかったのだから。

アーセナルが公衆の面前で監督が長きに渡って大事にしてきた哲学を解体し、高い値段をつぎ込む24時間を見ながら、最初に浮かんだのはこのシステムへの批判だった。こんな条件でどうやって効率的なビジネスをするのだ?ある意味、「売る」クラブが締切間際のプレミアムを期待して待ち続ければ、最終的にはパニック買いを誘発するのは目に見えている。

それでも、この騒乱の真っ只中で非常に効率的に取引を進めていたクラブがある。

ストーク・シティはこの夏、非常に良い補強をした。彼らが獲得した選手は、ヨーロッパでも戦うチームを強くするだけではなく、その明快な意図を周囲に伝えるものだった。

記憶の良い読者であれば、コヴェントリー・シティで監督をしていたジョン・シレットを覚えているだろう。1987年のFAカップで優勝し「今まで随分長い間ウールワースで買い物してきたが、これからは買い物はハロッズだ」と語っていた。

結局コヴェントリーのその後はそうはならなかったが、この夏のストークはプレミアリーグでの安定感を取り戻し、世界で最も裕福なオンライン・ブッキング企業をオーナーに持つことから、まるでハロッズのカードを持つかのようなった。

そして、アーセナルの締切間際のパニックとは異なり、ストークの投資には、規模は別にして一貫性があった。ピーター・クラウチが6フィート7インチ、ジョナサン・ウッドゲイトは6フィート2インチ、そしてマシュー・アップソンとキャメロン・ジェロームは6フィート1インチ。トニー・ピューリスが得た果実は、バルセロナが主張する「チビこそ進む道」に鋭く反論するものとなった。

より標準的な5フィート10インチのウィルソン・パラシオスには当てはまらないとしても、ブリタニアでの選手獲得ポリシーはすべてメジャーで測って決められているのではないかと考えざるを得ない。4人の代表選手がストークにやってきたが、皆プレミアリーグとヨーロッパの舞台で実績があり、より重要なことに、皆何か自分を証明するものを持っている。

しかしながら、最も重要な取引はクラウチだった。彼は最後の最後にやってきた。スカイのカメラがストークのオフィスにいる彼の痩せ顔をとらえた時もまだ交渉は続いていて、ビッグベンはもう移籍市場の終了を伝えようとしていた。1,000万ポンドは安い買い物ではないが、価値を証明する甲斐があるというものだろう。これは冷静な頭脳と落ち着いた気性、そしてその脚のように長い実績の履歴書を持つ男なのだ。

昨シーズン、トッテナムのチャンピオンズリーグへの挑戦において、クラウチはファースト・チョイスのフォワードであり、10試合で7ゴールを決めた。アテにならないスパーズ時代のチームメイトの何人かと比べて、彼はケガにも強く、好不調の波も無い方であり、意志の強い努力家だ。それでも、彼の以前の雇用主たちは同じポジションに彼ほどの意志もなくゴール数も少ない選手を残しつつ、彼を売ることを決めてきた。

奇怪なフットボール財務の世界においては、クラウチは彼の売却につながる一貫性を持っているのだろう。彼の監督が補強で誰かを連れてこようと思えば、誰かのサラリーを削る必要があるのだ。そして、彼の会長がルカ・モドリッチをキープすることで名誉を守るのだとすれば、ハリー・レドナップにとって最も売却の容易な資産はクラウチだったのだ。結局のところ、誰もロマン・パヴリュチェンコにはオファーを出さなかった。

これはクラウチのキャリアの中で何度も起きてきたことだ。最初にスパーズで。次いでQPR、リバプール、ポーツマスでも起きたが、その間、誰を失望させることもしなかった。

イングランドでも同様だ。ファビオ・カペッロはクラウチの誰もが羨むようなゴール実績を否定し、アンディ・キャロルの屈強な体躯と比較して説得力が無いと考えている。事実は、その体格から、彼はフットボールのスタイルの変化による影響を最も受けやすい、ということだ。

これはつまり、彼は遂に自分に相応しい場所にたどり着いた、ということを意味する。結局のところ、ストーク・シティでは背の高さが原因で選手同士が争うことなど無い。

クラウチは遂に彼が属する「巨人の島」という場所に歓迎されたのだ。

++++

細長い体系が自分に似てて、クラウチは相当に感情移入する選手だったから、スパーズを出るのは残念だったけど、行き先がストークだった時は安心もした。背に目が行きがちだけど、俺はあの柔らかいタッチのプレーが結構好きなんだよな。このあいだ取り上げたウッドゲイトと同じくスパーズ⇒ストークの移籍。プレミアだけじゃなくて、ヨーロッパ・リーグでも対戦できるかなぁ。

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