今シーズンのプレミアの王者は、マンチェスター・ユナイテッドでほぼ決まり、という状況になってきたが、今シーズンはオフからしてサー・アレックスの気合が違っていた。タイトルを昨シーズンは得失点差で地元の「隣人」、マンチェスター・シティに奪われていただけに、期するものがあったのだろう。
そんな経験は今回が初めてではなく、これまでにもいくつかの屈服と王座奪回を繰り返してきている。ここで紹介するラジオ局「トークスポーツ」ウェブ版のコラムは、そうした「奪回」の歴史に焦点を当てたもの。
++(以下、要訳)++
昨季王者のマンチェスター・シティがエヴァートンに敗れ、マンチェスター・ユナイテッドがレディング戦に勝利したことで、今季のプレミアリーグのタイトルがオールド・トラフォードへと向かうことはほぼ確実になった。 巨額を投じながらも、青きマンチェスターは残り9試合でファーギーのチームの15ポイント後ろを走っており、サー・アレックスはイングランド・フットボール界の王として、また新たな挑戦者を退けることになる。ここでは、これまでにユナイテッドとその監督をプレミアリーグの支配から引きずり降ろしては失敗してきたクラブと監督たちを振り返る。
ブラックバーン・ローヴァーズ
ローヴァーズは当時、今で言うところのマンチェスター・シティのような存在だった。1990年代、プレミアリーグへと昇格し、オーナーのジャック・ウォーカーの巨額の資金を得た。イーウッド・パークを本拠とする彼らも、ケニー・ダルグリッシュが大金を費やしてアラン・シアラー、ポール・ウォルハースト、デイビッド・バッティ、ティム・フラワーズらを獲得し、「タイトルを買った」と揶揄された。 ローヴァーズは1993/94シーズンにユナイテッドに次ぐ2位に入り、タイトルへの挑戦が相応しいものであると証明すると、そのオフには当時の英国最高額となる500万ポンドでノリッジ・シティからクリス・サットンを補強した。シアラーとサットンがゴールを量産し、1994/95シーズンの最終日、 - シティと同じように - ローヴァーズはユナイテッドとの争いを最後の瞬間で制した。これが1914年以来のタイトルだった。
ファーガソンがブラックバーンの栄光への対処として動いたのは、ポール・インス、マーク・ヒューズ、アンドレイ・カンチェルスキスといったベテランの放出によってであり、彼らをデイビッド・ベッカム、ポール・スコールズ、ニッキー・バット、そしてギャリーとフィルのネヴィル兄弟といった若手と入れ替え、赤い悪魔は路頭に迷うと予想された。しかしながら、「ファーギーの雛鳥たち」と、95年初めの観客へのカンフー・キックによる9か月出場停止を終えたエリック・カントナの復帰が、批評家が誤っていたことを証明し、ブラックバーンはタイトルの翌年は7位まで順位を落とした。ケニー・ダルグリッシュの辞任後、1999年にはブラックバーンはプレミアから降格していったが、ファーギーには新たな敵が現れていた。
ニューカッスル・ユナイテッド
ブラックバーンの崩壊と時を同じくして、ケヴィン・キーガン率いるニューカッスルが隆盛してきていた。「エンターテイナーズ」と評されたそのエキサイティングなフットボールで、キーガンもタイトルを目指してチームを補強することができた。1993年の昇格を経て、1994/95シーズンには、主力のゴールスコアラーだったアンディ・コールをマンチェスター・ユナイテッドへと放出しながら6位に入っていた。オーナーのジョン・ホールの富により、キーガンはレス・ファーディナンド、ワーナー・バートン、ダヴィド・ジノラ、シャカ・ヒスロップ、後にはファウスティノ・アスプリージャも買うことができた。そして、このエキサイティングなトゥーンの戦士たちは、1996年初頭には、ユナイテッドに12ポイント差をつけてトップに立っていた。しかしながら、次に起きたのは屈辱的な失速であり、崩壊したニューカッスルは、ファーギーの若きユナイテッドにタイトルを献上することとなった。
それでもブラックバーンとは異なり、タイトルをギリギリのところで逃しても、ニューカッスルは移籍マーケットで素早く動いた。ユナイテッドに競り勝って、当時の世界記録である1,500万ポンドでアラン・シアラーの獲得に成功した。プレミア最高のストライカーの獲得は、キーガンのパズルの最後のワンピースになるはずだったが、シアラーの獲得がマグパイズにとって唯一ユナイテッドを上回ることができた瞬間であり、1997年もユナイテッドが順位表のトップに立っていた。シーズン途中のキーガン解任もプラスには働かず、 ファーギーとのライバル関係はケニー・ダルグリッシュが引き継いだものの、トゥーンは再生しつつあったアーセナルを上回る2位につけるのがやっとだった。
アーセナル
1996年10月のアーセン・ヴェンゲルの到来は、イングランドでのフットボールのプレーのされ方に革命ともいうべき何かをもたらした。 知名度が高いとは言えなかったこのフランス人は、新たなコーチング手法を適用し、アーセナルの戦術的なダイナミックさをもたらすにとどまらず、選手たちのコンディショニングにも重きを置くようになった。ガナーズはプレミアリーグを揺り動かし、ユナイテッドに正面から立ち向かっていった。
フランスのフットボールの隆盛と時を同じくして、ヴェンゲルの抜け目ない補強によって彼の母国からエマニュエル・プティ、パトリック・ヴィエラ、二コラ・アネルカといった面々がやってきて、彼がハイバリーにやってきて最初のフルシーズンで、ガナーズはリーグとカップのダブルを達成した。その翌シーズン以降、90年代後半から2000年代の初期にかけて、アーセナルとマン・ユナイテッドはプレミアリーグの覇権をかけて凌ぎを削ることとなった。ユナイテッドはかの有名なトレブルを果たした1998/99シーズンを含む、プレミア3連覇で反撃し、この間アーセナルは2位に甘んじていたが、ティエリ・アンリ、ロベール・ピレスそしてソル・キャンベルによって補強されたガナーズは、オールド・トラフォードでの勝利でタイトルを手繰り寄せ、2001/02シーズンにもダブルを果たした。
ガナーズは 2003年にもダブルを勝ち取っておかしくなかったが、最後の数週間でヴェンゲルたちが首位の座を投げ捨てる状況の中、ファーギーが先にゴールのテープを切った。この失敗が効いたのか、2003/04年は無敗のアーセナルがユナイテッドを置き去りにし、新たに資金が注入されたチェルシーがファーギーのチームを3位へと沈めた。ガナーズと金満ブルーズが先を行き、2004年、2005年にユナイテッドは優勝クラブからそれぞれ15、18ポイント離されてフィニッシュした。まるで、ロンドンがイングランド・フットボールの新たな首都になったかのような様相だった。
チェルシー
多額の資金を得たチェルシーの存在は、プレミアリーグへの投資家たちにも分水嶺だった。これまでにも豊富な資金を持つオーナーたちがタイトル争いに投資をしてきたが、西ロンドンに現れた、潤沢なオイルマネーを持つロマン・アブラモビッチは、イングランドのフットボールでの資金の使われ方を変えてしまった。2003/04シーズンにアーセナルに次ぐ2位に入ると、ジョゼ・モウリーニョと数多くのスター選手の到来で、ブルーズは2005年にタイトルに向かってまい進し、ガナーズはまたもヴェンゲルの下でタイトルを守ることができなかった。また、この年は14年間で初めてファーギーのチームが2年続けて優勝を逃したシーズンでもあった。しかし、翌シーズンもチェルシーは誰にも止められず、ガナーズは4位まで滑り落ちた。ロナウドとルーニーを中心に作り上げられたファーギーの新しいユナイテッドが、チェルシーに最も近い挑戦者となった。
3シーズン続けて優勝を逃しても、ユナイテッドは典型的にファーギーな反撃を見せ、2006/07シーズンはチェルシーの上に立ってみせた。しかし、その翌シーズン早々、ロマン・アブラモビッチはジョゼ・モウリーニョを解任するという自らの足を撃つに等しい行為に出て、結果的にこのあとユナイテッドはリーグを3連覇、そしてチェルシーを下しての2008年のチャンピオンズリーグ制覇は説明の必要もないだろう。アヴラム・グラント、ルイス・フェリペ・スコラーリ、フース・ヒディンクの後にスタンフォード・ブリッジにやってきたのは、カルロ・アンチェロッティで、彼が2010年にファーギーの4連覇を阻止した。それでも、翌年ユナイテッドがタイトルを奪い返してチェルシーが2位となると、アブラモビッチは再び自分の高価な靴に発砲し、アンチェロッティを解任。チェルシーはそれ以来タイトルに近づいてはいない。
マンチェスター・シティ
チェルシー以上に金を使うことなど不可能だと思われたが、それはシェイク・マンスールがユナイテッドの地元のライバルを2008年に買収して資金を注入したことで、マンチェスター・シティによって上回られてしまった。準決勝でユナイテッドを破ってのFAカップ優勝を上回ったのは、最終節の信じがたいロスタイムでの2ゴールで逆転してのリーグ制覇だろう。ユナイテッドのトレードマークとも言うべき「諦めない姿勢」でタイトルを勝ち取ったことで、青きマンチェシターの半分が、遂にファーギーを玉座から引きずり降ろすかと思われた。
しかし、それもオフにはファーガソンが良い手を打ってきて、移籍マーケットでシティが標的にしていたロビン・ファン・ペルシ獲得に成功した。アウェーのシティ戦での決勝ゴールを含む、ファン・ペルシの素晴らしいゴール量産体制は、ファーギーが元の王座に戻るのを大いに助けている。これまでに克服してきたライバルの数々を考えれば、彼は引退するまでトップの座を守り続ける、と賭けない人の方が珍しいだろう。
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「やられたらやり返す」シーズンにあたる今季は、差のつけ方も圧倒的ですよね。ファーガソンには相当期するものがあるんだと思いますけど。
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