今回紹介するのは、かつてリーズの育成部門の指導者として、その若き日のレノンを指導したグレッグ・アボットなど、彼に関わってきた数名のコメントを織り交ぜつつ、彼がいかに才能あふれる選手であるかを紹介する、ロンドンの無料夕刊紙「イーブニング・スタンダード」紙の記事。
++(以下、要訳)++
移籍マーケットでこんな話があったらどうだろうか。やがてイングランドで最高のウィンガーの1人になり、26歳前にクラブで300試合以上に出場、2度のワールドカップにも出場することになる選手を、僅かに50万ポンドで獲得する。
そんな話が真実とは信じられないだろうが、日曜のエランド・ロードでのFAカップ4回戦の場にいる者には、それが分かるだろう。リーズを去って7年半、アーロン・レノンはトッテナムに50万ポンドで移籍して以来初めて地元のチームとの対戦に臨む。契約切れであったにも関わらず金銭の支払いが発生したのは、彼が当時18歳だったからだ。
レノンはハリー・レドナップがフル・シーズンを最初に率いた2009年にも素晴らしいシーズンを送ったが、ホワイト・ハート・レーンでの8年目を迎える今季はもっとも印象に残るものになりつつある。
危険な香りを発散し、機敏で破壊力あるそのプレーは、彼が25歳にして今までで最も才能に自信を持っているようにさえ見える。3ゴールと彼が作り上げた多くのチャンスは物語の一部でしかない。守備面での働きと戦術理解は称賛に値する。
複数の関係者も監督のアンドレ・ヴィラス・ボアスとの良好な関係を強調している。レノンはヴィラス・ボアスの明快な指示、実直さ、そして常に会話にオープンな姿勢を称賛しているようだ。同様にレノン本人も「自分の殻を破って」、ドレッシングルームでも、トッテナムでの在籍最澄選手として、より大きな責任を果たすようになっているようだ。彼は5か月前に、クラブとの新たな4年契約にサインしている。
それは今まで常にそうだったわけではない。リーズでユース世代の指導にあたっていたグレッグ・アボットは、2001年にU-14の試合でレノンの才能に気が付くのには「3秒で十分だった」が、ロンドンへの移籍は壁が高いうえに時期尚早なのではないかと感じていた。
現在リーグ・ワンのカーライルを率いるアボットは、スタンダード・スポーツの取材に対して、このように語っている。
「ロンドンに彼を送り込むのは恐らく1年早かった。マンチェスター・ユナイテッドやリバプールも彼を欲しがっていて、その方がリーズの家族の下にも近かったしね。家族を愛するアーロンだけに、ロンドンでの暮らしはタフに感じただろうが、彼は乗り切ったね。リーズでは、彼や彼の家族に問題があれば、私はいつでもそばにいると約束していたよ」
「試合の時には私は彼を家まで迎えに行って、他クラブからの関心にとらわれないように気を付けていたんだ。彼とリーズでのプロ契約にこぎつけて、彼はそこから43試合プレーして移籍した。去年9月にカーリングカップで対戦(訳注:カーライルがスパーズと対戦)した時に、試合前に話をしたけど、今でもしっかり地に足がついていたよ。彼は自分の成功やライフスタイルについて話すのではなく、家族やリーズでの日々について話してくれた。ユニフォームにサインを入れて僕にくれたけど、誇らしい宝物だね」
今季が始まるまでは、レノンは好不調の波が大きかった。今でもそうなのだが、彼の数少ない安定した傾向と言えば、メディアに自分のプレーを語ることを躊躇いがちなことだった。彼を知らないものには、寡黙で不愛想でさえあると見えるだろう。彼をよく知るものでも、レノンはシャイであり、控えめな性格で知られるマンチェスター・ユナイテッドのポール・スコールズのように、注目の的になることに前向きではないのだ。
それでも、レノンのプレーは、周囲から際立ったものであることを証明している。パスと苦手だった左足の向上を見たアボットは、レノンがやがては中央の攻撃的な選手として活躍できると確信している。
レノンをスパーズに連れてきたフランク・アルネセンは、彼との契約を完了させる前にチェルシーへと旅立っていったが、それでも彼の獲得を決めたことを誇りに思っている。現在はハンブルクのスポーツ・ディレクターを務めるアルネセンは、「アーロンの獲得には50万ポンドしかかからなかったし、彼とトム・ハドルストンで当初のコストはたったの110万ポンドだった」と語る。「そんな値段で彼を獲れるなら即決だ。2006年の1月にアーセナルはセオ・ウォルコットを1,200万ポンドで獲得していたが、我々はアーロンを遥かに安い金額で得ていたんだ。リーズ時代にワトフォード相手にプレーする彼を見た時にはベストの調子ではなかったが、スピード、ドリブル、クロスにその素質は十分に見て取れたよ
「私はPSVアイントホーフェンにいた頃には、ロナウド、アリエン・ロッベン、ヤープ・スタム、ルート・ファン・ニステルローイの契約にも関わったが、その中でもアーロンがベストだ。特にかけた費用と得チームにもたらしたものを考えればね」
アルネセンは首都ロンドンでの生活に適応する上でレノンが直面するであろう課題を認識していたが、週末に自身が育ったリーズへの帰還を控えるレノンの次なる挑戦は、彼の才能のすべてを発揮することだ。
ハリー・レドナップ時代のトッテナムでアシスタントを務めていたジョー・ジョーダンも、「未だに本人は、自分のスピードとプレーの質が相手にもたらしている脅威を認識していないと思っている」と語る。
それが実現する時には、レノンは相手にとって大きな脅威となっていて、50万ポンド -最終的に100万ポンドに上がったが- は、スパーズがこれまでに投資した金額の中でも最高の使い道であったように見える。
【レノンについてのコメント】※カッコ内はレノンとの接点
グレッグ・アボット(元リーズ・アカデミー監督)「彼はいつもサイドで選手をかわしていくけど、4-2-3-1のセンターフォワードの後ろで中央でもプレーできると思う。彼が思われているよりも、視野は広いんだよ」
ジョー・ジョーダン(元スパーズ・アシスタント)「彼は今でも成長しているよ。人々は彼がまだ25歳であることを忘れがちだ。ウィンガーだと試合に関わっていくのは難しいことが多いが、様々な方法を見出しているよ」
アンドレ・ヴィラス・ボアス(現スパーズ監督)「凄い選手だよ。陽の当たらないこともあるが、自分のパフォーマンスのレベルがもう一段上げられることも理解している」
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ということで、チームの色があるものとしては自分の好きなスパーズのものが続いてしまったけど、こういうトーンの記事を追ってしまうもんで、また選んでしまった。FAカップの試合もどんどん中継してくれると良いんだけどなー。