Thursday, August 30, 2012

移籍市場最終日のプレミア各クラブに必要なもの

毎年恒例、8月末の移籍市場締め切りは、スカイをはじめとする各メディアの煽りもあって、常にドタバタ感と緊迫感の溢れる夜となる。締め切りは現地時間で金曜の23時。ドラマがどう動くか、現在の舞台設定を、BBCのフットボール主幹であるフィル・マクナルティ氏がまとめている。
 ※記事は29日の17時(日本時間の30日1時)にアップされたもの


++(以下、要訳)++

移籍市場のウィンドウが閉じるのは金曜の夜、ここまで出ている兆候は、各クラブの1月までの戦力を整える8月の大仕事が、全て狂乱の結末へと向かうものとなっている。

戦力補強には夏じゅう時間があったはずだが、プレミアリーグでの違いをもたらす戦力補強のために、いつもの駆け込みの買い物が行われることになるだろう。

あなたのチームの補強ポイントはどこだろうか?あなたなら誰を補強するだろうか?


アーセナル

アーセン・ヴェンゲルはロビン・ファン・ペルシとアレックス・ソングの退団、ルーカス・ポドルスキとオリヴィエ・ジルー、そして既に際立っているサンティ・カソルラの補強でひとまず変革のドアは閉じている。しかし、テオ・ウォルコットに退団の可能性が出てきたことで、仕事がまだ残ってしまった。

アストン・ヴィラ

新監督のポール・ランバートはアレックス・マクリーシュを引き継いだ後も限られた予算でやり繰りしているが、開幕の2試合を経て明らかになったのは、カギとなるポジションに補強が必要だということだ。プライオリティは、ダレン・ベントのゴールをアシストできる選手であり、それゆえゲンクのストライカー、クリスティアン・ベンテケの獲得に動いている。もうひとつは左サイドバックであり、ミドルスブラからジョー・ベネットを獲得したところだ。

チェルシー

エディン・アザール、オスカル、ヴィクター・モーゼスを獲得して、チェルシーの夏の豪勢な買い物はもう終わっている。ロベルト・ディ・マテオは金曜の夜にまだ攻撃の駒を揃えたいと思うだろうか?

エヴァートン

エヴァートンは、スティーブン・ピーナール、スティーブン・ネイスミス、そしてケヴィン・ミララスを獲得したが、上場のスタートを切って、デイビッド・モイーズはもう少し補強を進めたいと考えているようだ。中盤と攻撃の補強をしたいと考えていることから、リバプールのチャーリー・アダムやダンディー・ユナイテッドのストライカーであるジョニー・ラッセルの名前が挙がっている。マイケル・オーウェンはエヴァートンからの電話を待っていると言われるが、その兆候は今のところない。

フラム

フラムがトッテナムへと向かったムサ・デンベレの代役を見つけねばならないのは明らかで、サンダーランドのマーティン・オニールは、キーラン・リチャードソンへのオファーを受け入れたことを明らかにした。また、リヨンのバフェティンビ・ゴミスを650万ポンドで獲得するという話も出ているようだ。

リバプール

ブレンダン・ロジャースは戦力を追加するチャンスを得られるなら、非常に忙しくなるだろう。チェルシーのダニエル・スタルリッジとアーセナルのテオ・ウォルコットの名前は既に挙がっているし、ファンとしても補強をして欲しいと思っているエリアだ。前線にゴールの脅威がもっと欲しいのだ。

マンチェスター・シティ

シティのメイン・ターゲットは、エディン・アザール、ロビン・ファン・ペルシ、ハヴィ・マルティネス、そしてダニエレ・デ・ロッシだったが、誰一人やってこなかった。アブ・ダビのオーナーたちとロベルト・マンチーニには十分な資金があるが、移籍金やサラリーでもうひと押ししなかったことの現われだ。

センターバック、中盤中央、そしてアダム・ジョンソンが出て行ったウィングが、マンチーニが埋めたいと考えている穴だろう。ティーンエイジャーのセルビア人、マティヤ・ナスタシッチは守備に固さをもたらすだろうし、テオ・ウォルコットのアーセナルとの契約延長交渉が上手くいっていないことは関心をひくかもしれない。スコット・シンクレアをスウォンジーから連れてくる交渉は依然生きている。

マンチェスター・ユナイテッド

サー・アレックス・ファーガソンは、アーセナルからロビン・ファン・ペルシを補強して前線に大きな買い物をしたが、香川真司も既に中盤で存在感を出している。それでも、ファンは依然として中盤の発電所が欠けていると感じているだろう。多くのサポーターが、土曜のオールド・トラフォードでも印象に残るプレーをしていたフラムのムサ・デンベレの獲得でスパーズに競り勝てていれば、と望んでいた。しかしながら、ファーガソンは今の戦力で満足なのだろう。

ニューカッスル・ユナイテッド

今のところリバプールの元ニューカッスルのストライカー、アンディ・キャロルと、リールのディフェンダーであるマテュー・デビュッシへの関心に進展はなく、アラン・パーデューは昨季5位に導いた現有の戦力で満足しているのだろう。

ノリッジ・シティ

何とかQPRに勝って今季最初のポイントを得たノリッジだが、クリス・ヒュートンの大きな動きはもう終わっていると思われる。

クイーンズ・パーク・レンジャーズ

監督のマーク・ヒューズはプライオリティがどこにあるかを隠しはしなかった。開幕のスウォンジー戦で0-5で敗れると、トッテナムのマイケル・ドーソン、レアル・マドリッドのリカルド・カルヴァーリョの獲得に動いた。今のところそれは実を結んでいないが、驚きのインター・ミランのジュリオ・セザル獲得の動きは、ロバート・グリーンにプレッシャーをかけることになるだろう。資金は使うためにあり、すべきは補強。移籍市場の終盤に多忙に動くであろうQPRにご注目を。

サウサンプトン

数多くのセインツのファンが同じことを求めている。明らかに守備の強化が急務だと感じているのだ。

ストーク・シティ

監督のトニー・ピューリスは、スウィンドン・タウンとのリーグカップの試合に向けたマッチデー・プログラムで、自身の興奮を伝えている。「他にも選手たちを連れてこようと動いているところで、その方向で行けるなら忙しくなる」。

トッテナムのトム・ハドルストンは明瞭なターゲットで、彼のチームメイトであるマイケル・ドーソンにも注目している。また、ブラックバーンのスティーブ・ゾンジもレーダーにかかっているようだ。ピューリスは、公にマイケル・オーウェンを賞賛しているが、ストークが彼にプレミアで最後の輝きを見せる機会を与えられるだろうか?

サンダーランド

ウォルヴズのスティーブン・フレッチャー獲得とイングランド代表ウィンガーのアダム・ジョンソン獲得で大きな仕事は終わっているが、忙しい夏の終わりのスタジアム・オブ・ライトに他に新戦力到来の可能性はないだろうか?マーティン・オニールは、トッテナムのマイケル・ドーソンとフラムのクリント・デンプシーに大きな興味を持っている。それらの話をまとめられれば、チーム変革のための完璧なカルテットの補強となるだろう。

スウォンジー・シティ

新監督ミカエル・ラウドルップの下開幕2試合を無失点で乗り切ったが、マンチェスター・シティから620万ポンドを提示されたスコット・シンクレアの移籍が再び動き出すか、流動的な状況だ。クルーのキャプテンであるアシュリー・ウェストウッドの獲得に動いてもいるようだが、クラブが幸福感に包まれる今は、シンクレアの未来が明確になって欲しいところだろう。

トッテナム

ここからが本番だ。前任のハリー・レドナップ時代、トッテナムは伝統的に締切日に多忙を極めていた。しかし、ルカ・モドリッチをレアル・マドリッドに売却した今、会長のダニエル・リヴィが本気を出す狂乱の終盤には要注目だ。

ムサ・デンベレを獲得し、フランス代表GKのウーゴ・ロリスもターゲットだが、スパーズは筆頭ターゲットのホアン・モウチーニョをまだあきらめてはいない。マルセイユのロイク・レミーの名も挙がっており、CSKAモスクワのアラン・ザゴエフとシャフタール・ドネツクのウィリアンも視野に入っている。放出の方も要注目で、スパーズ・ファンは心の準備をすべきだろう。

ウェスト・ブロミッジ・アルビオン

新監督のスティーブ・クラークの下、開幕2試合で4ポイントを獲得し、ホーソンズではすべてが穏やかに見えるが、クラークはディフェンダーの層を厚くしたいと考えている。ブラックバーンのマーティン・オルソンを狙っていると言われ、エヴァートンも狙うFCコペンハーゲンの左サイドバック、ブライアン・オヴィエドも追っている。

ウェストハム・ユナイテッド

サム・アラーダイスは多くの案件をまとめているが、リバプールのアンディ・キャロルについては行き詰ってしまった。もう1人のアンフィールドのスターで、元ハマーズのジョー・コールについては可能性がある。アラーダイスは可能な案件は積極的に動くだけに、終盤の動きからは目が離せない。

ウィガン・アスレティック

チェルシーにヴィクター・モーゼスを引き抜かれたのは痛手だが、監督のロベルト・マルティネスの手元には900万ポンドの資金が残っている。とはいえ、ファンは新戦力の補強については楽観的な様子だ。

++++

ということで、普段は賞味期限の長い記事を選ぶように心がけてるつもりながら、今回は極めて短いものをピックアップしてしまった。それでも、これがアップされてからも状況は動いていて、夜が明ければすべて決まっているのは分かっていても、ついつい追ってしまう。今年の夏はヘリコプターで飛ぶ選手は出てくるだろうか?

Wednesday, August 29, 2012

ミカエル・ラウドルップが魅せるエレガントなスウォンジー劇場

昇格組ながらバルセロナを彷彿させるパスサッカーで昨季のプレミアで躍進したものの、その結果、礎を築いた監督のブレンダン・ロジャースをリバプールに引き抜かれたスウォンジー・シティ。その監督の座を継いだのは、かつてユヴェントスやバルセロナ、レアル・マドリッドで活躍し、後にはヴィッセル神戸でもプレーしたミカエル・ラウドルップ。

監督としても、ブレンビー、ヘタフェ、スパルタク・モスクワ、マジョルカとキャリアを積み上げてきていたが、次に選択したのがこのスウォンジー・シティだった。就任時のインタビューでも「クラブのことは良く知らなかったから事前に調べた」と言っていた一方で、「フィロソフィーに触れて、是非やりたいと思った」との判断もしていた。

主力だったギルフィ・シグルズソンやジョー・アレンの退団もあって、残留に向けて苦戦が予想されたものの、フタを開けてみればいきなりの開幕2連勝。この舞台裏を開幕2戦目のウェストハム戦を取材した「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター記者が探った。



++(以下、要訳)++

歓喜に満ちた土曜日のリバティー・スタジアムの前半、ルーズボールがスウォンジーのベンチへとラインを割って向かって行くと、我々にはハッとさせられる瞬間が訪れた。

ボールを簡単にコントロールして少々弄ぶと、巧みにスローインのためにボールを取りに来たケヴィン・ノーランに蹴り返した。試合をテンポ良く続けさせたこの見慣れた顔はミカエル・ラウドルップで、その華やかな現役生活で彼をアイドルたらしめた、かつてのエレガントなタッチを見せつけた。

偉大なフットボーラーは、しばしば監督としては失敗しがちだ。自分では簡単にプレーできてしまうために、自分よりも才能に恵まれない選手たちとの仕事への我慢を欠いてしまうからだ。それでも、ラウドルップには落ち着きと穏やかさ、知性がある。彼の父親にも監督経験があることは、彼がこれだけスムーズにスウォンジーに馴染んだことの説明になるだろう。

彼の小さな存在感は、プレミアリーグにより多くの星屑をバラ撒くことになるだろう。彼は自身の持つ尊厳も垣間見せた。ノーランがスローインを急ぐ姿を目にすれば、ボールをそのまま流れさせてプレーを遅らせることもできたが、それはこのデンマーク人のスタイルではないのだ。

いずれにしても、非常に統率が取れたスウォンジーに対してウェストハムはとにかく出来が悪く、スウォンジーがポゼッションを取り戻して、現在のプレミアリーグの順位表の頂点を周囲にアピールするのは時間の問題だった。これを10年前に想像するのは、よほどの妄想だったろう。

ラウドルップの就任前にも、スウォンジーではロベルト・マルティネス、パウロ・ソウザ、そしてブレンダン・ロジャースによって良い仕事が成されてきていた。ポジティブな原理原則が植え付けられてきていたのだ。後半のプレーのひとつは、そのままロジャースのスクラップブックにあるはずだ。44本のパスが2分間に渡ってつながれ、ウェイン・ルートリッジがゴールに向かって走るところを、ジョージ・マッカートニーがようやくスライディング・タックルで止めたのだ。

これを証明するのが開幕の5-0で圧勝したQPR戦で、ラウドルップはロジャースの戦術を微調整していた。中盤で喜んでパスを回すのは同様だったが、スウォンジーはより早いタイミングでギアを入れ、鋭さを増していたのだ。

彼らはジョー・アレンをリバプールに引き抜かれ、スティーブン・コールカーをスパーズに返し、スコット・シンクレアもマンチェスター・シティに狙われているが、ラウドルップは勢いが失われてはいないことを確信させた。監督は、ゲームプランの有効性や、移籍市場での成否、人身掌握術で評価されるが、ここには全ての要素が凝縮されていた。

まずは戦術。ロジャース時代のウィングのネイサン・ダイアーとシンクレアがライン沿いを突き進むケースが多かったのに対し、ラウドルップ下でのダイアーとルートリッジは中に切り込んでも来て、ミチュやダニー・グラハムの近くでプレーする。これが両サイドバックのアンヘル・ランヘルとニール・テイラーに上がってくるスペースをもたらすのだ。実際、2人は輝いた:ランヘルは先制ゴールを決め、テイラーもヤースケライネンに弾きだされたものの、良いシュートを放った。

ラウドルップの賢く選手を買う能力は、ミチュの影響力あるプレーからも見てとれた。200万ポンドでやってきた彼は、リオン・ブリットンとダニー・グラハム、中盤と攻撃のリンクマンとして機能し、スウォンジーに一層の流動性をもたらした。何度も自陣に引いてボールを受け、前を向いてダイアーにスルーパスを出すと、これがランヘルの先制ゴールにつながった。また、ジェームス・コリンズの無茶なバックパスをかっさらうと2試合で3つ目となるゴールを決め、得点力があるところも見せている。

ラウドルップはプランBの必要性も説いていたが、時折アシュリー・ウィリアムズがグラハムへとロングボールを繰り出していた。昨季であれば、スウォンジーのセンターバックは左右にボールを回してダイアーにボールをつないでいただろうが、こうしたプレーはよりダイレクトだ。スウォンジーはラウドルップの下で様々なスタイルを有効に取り入れていっている。

選手たちはすぐにラウドルップを監督として認め、支えている。ピッチを華麗に舞った最も有能なフットボーラーとしての名声も理由のひとつだろう。ウェストハムの選手同士が衝突したとき、その時間を活かしてラウドルップはテイラーを呼んで静かに指示を与えていた。監督に惹きつけられているテイラーの表情が、いかにこの新監督がドレッシングルームで尊敬を集めているかを物語っている。彼が練習で5対5に加わる時などは、特別な瞬間なのだろう。

柔らかな口調は、些細なことで騒ぎ立てるスタイルとは一線を画するが、それでもハーフタイムにはこう指示をしていた。「ウチは2-0でリードしている。向こう(ウェストハム)が攻めてきたのはどこだ?セットプレーだ。だからエリアの近くやサイドでファウルはするな」。ハーフタイム後のスウォンジーの守備はより堅実になっていた。決して高さがある方でもフィジカルで勝負するタイプでもないが、スウォンジーは明らかにセットプレー時の守備について、ラウドルップのアシスタントであるエリック・ラーセンの特訓を受けていた。

選手時代同様、ラウドルップはほとんど手立てを誤ることはない。

抜け目ない会長のヒュー・ジェンキンスの勧めもあって、クラブのレジェンドであるアラン・カーティスのクラブでの役割を維持するだけでなく拡大した。こうして新たにやってきた自分がクラブの理解を早々と深めると同時に、スウォンジーのサポーターたちを喜ばせた。グラハムが3点目を決めると、ファンは完全にパーティーの雰囲気になった。

ラウドルップは「特にファンにとっては、フットボールとは夢であり感情そのものだ。しかし、ピッチを含めてこちら側にいる人間にとっては、そこに感情はあるにせよ、夢を見ているわけにはいかない。現実を生きなきゃいけないんだ。月曜になれば、次の相手、バーンズリーのことを考えるんだよ」と語った。ラウドルップがこうして監督としての能力に磨きをかけ続けるならば、その先にはバルセロナがあるかもしれない。彼は見るからにスウォンジーでの生活を楽しんでいるが、その卓越した腕前を見せ続ければ、活躍の場は自ずとより緑の生い茂った場へと移っていくだろう。ラウドルップは穏やかな男で過去の栄光で威張るようなことはしないが、それらを避けることはできない。

ウェストハム戦のマッチデー・プログラムでQPR戦の勝利を振り返り、ラウドルップは「5-0はスペインでの自分を象徴するスコアラインで、俺には皮肉だ」と記した。バルセロナではレアル・マドリッドを5-0で下した試合の中心選手だった。そして、そのクラシコの反対側へと移った後、ラウドルップはレアルがバルセロナを5-0で粉砕するのを助けた。

「ヴァレンシアで小さな息子を連れた父親に出会った時のことをいつも思い出すんだ。その父親が、俺が誰か知っているか息子に聞いたんだ。息子は父親を見て嫌な顔をすると、俺の名を言うこともなく『5-0、5-0』って答えたんだ」。今のリバティー・スタジアムでは、確実に誰もが彼の名前を口にしているはずだ。

++++

自分が海外フットボール的に物心がついた頃には、ラウドルップはレアルでイヴァン・サモラーノとプレーしてた(NHK-BSで放送があった時代)けど、そのラウドルップが日本に来たときには随分驚いた。そんな勢いで、次にビッグクラブを率いるであろう前には、日本でも監督やってみて欲しいよな。

それにしても監督のロジャースだけでなく、主力も次々と抜かれてもこうして前評判をひっくり返すんだから面白い。前半戦で勢いがある昇格組というと、終盤に失速するケースが多くて(ハル・シティ、ブラックプール然り)、実際昨シーズンのスウォンジーも終盤は失点が増えて不安定ではあった。一巡目を乗り切ったとして、後半戦どうなるか、そこで記事でウィンター記者も触れている「多様性」が効いてくれば良いのだけど。

オマケ:開幕戦で大勝した後の記者座談会。


ここでは、この先スウォンジーには「雨」の時期がやってくるとの見解も。(他にもスコット・シンクレアがシティに行く意味が分からんとか色々・・・。)

Saturday, August 18, 2012

プレミアリーグ新シーズン、各クラブの展望

いよいよ開幕するプレミアリーグの2012-13シーズン。今年はユーロと五輪もあってオフシーズンが少々長めだったこともあって、随分待ち遠しい気分だった。

この時期には、各チームごとの夏の補強の動きやプレシーズンでの動向を含めた詳細なプレビューがクラブごとに出るものの、それをひとつずつ紹介するのは大変。コンパクトにまとまったもの、かつ移籍関係ばかりに特化しないものがあまり出て来ず、ここで選択したのは「BBC」によるもの。

BBCの各クラブの番記者やラジオ番組担当者が、オフの動きとシーズンの展望を順々に語っている。


++(以下、要訳)++


新たな9ヶ月間の興奮、ドラマ、論争、歓喜と失望への準備はいいか?プレミアリーグが帰ってきた。

王者マンチェスター・シティは、ライバルのユナイテッドの挑戦を抑えることができるだろうか? チェルシー、トッテナム、リバプールは皆監督を変え、昨季からの向上を図っている。アーセン・ヴェンゲルはアーセナルでのタイトル挑戦にどう取り組むのか?

昇格してきたサウサンプトン、レディング、ウェストハムの目標は残留だが、同様に苦しむことも予想されるノリッジ、スウォンジー、ウェストブロムはいずれも新監督を迎えている。

開幕を前にBBCスポーツでは、各クラブの準備状況を分析し、新シーズンに向けた各クラブのガイドとしてここにまとめた(アルファベット順)。

--

アーセナル(イアン・ヒューズ氏)

アーセナルには厳しい教訓から学んだ様子が伺えた。

昨シーズンはセスク・ファブレガスとサミ・ナスリの代役を見つけられなかったことが、シーズンがロクに始まらないうちに崩壊してしまう原因となった。プレーヤー・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞したロビン・ファン・ペルシがマンチェスター・ユナイテッドへと移籍し、再び最高のタレントを失ったかもしれないが、今回は既に3人の代表選手 -ルーカス・ポドルスキ、オリヴィエ・ジルー、そして中盤のサンティ・カソルラ- を補強していた。

そして守備の脆さが昨季のリーグ49失点となって現れたが、元ガナーズのセンターバックであるスティーブ・ボウルドがその立て直しを担当し、ここにも手が打たれつつある。

加えて昨季をケガで棒に振ったジャック・ウィルシャーの復帰も見込まれ、昨季3位のフィニッシュよりも上に行ける、そして7年間の無冠時代に終止符が打てるという楽観できな見方も正当化できるのではないか。


アストン・ヴィラ(フィル・メイデン氏)

クラブ史上ワーストとなるホームの戦績となったアレックス・マクリーシュとの1年を経て、ファンはポール・ランバートの就任が、ヴィラ・パークに明らかに欠けていた興奮を再びもたらしてくれるのではないかと期待している。

ヴィラはマーティン・オニールの辞任以降、順位表の上位争いに加われずにおり、出費を削ってきているオーナーのランディ・ラーナーも、ランバートにクラブの威信回復を期待しているはずだ。

プレシーズンでも好調だったカリム・エル・アーマディは中盤のキーマンとなりそうで、マクリーシュ時代にボスマン・ルールで加入したブレット・ホルマンも得点力不足に泣いたヴィラの有効な攻撃のオプションだと証明するかもしれない。

チームの移り変わりにはもう1年かかるかもしれないが、ヴィラ・ファンは予算に限りはあれど、今回は将来の成功に導いてくれる監督が来たはず、と望んでいることだろう。


チェルシー(オーウェン・フィリップス氏)

今季は遂にフェルナンド・トーレスが真価を発揮する時になるのか?ディディエ・ドログバの退団とロメウ・ルカクのローン移籍は、ロベルト・ディ・マテオがそう考えていると思わせるものだ。このイタリア人監督はチャンピオンズリーグ制覇によってフルタイムのポジションを与えられたが、リーグ戦での不振は、今季のプレミアリーグで結果を出す重圧となっている。

プレシーズンの成績はお世辞にも良かったとは言えず、才能ある中盤の3人がいたとしても、実証済みの「ドログバ・モデル」からの転換には時間を要するだろう。新加入のオスカルやエディン・アザールがフアン・マタにどうフィットするかは分からないが、トーレスのワントップであれば、上手くハマるのではないか。

明確な右サイドバックがいないものの、チェルシーの守備は安定しているように見え、フランク・ランパードの安定した影響力と疲れ知らずのラミレスのエネルギーは、中盤の良い基盤になっている。トーレスにボールを供給するシステムの確立と、そのスタイルで早期に自信を深めることが、チェルシーの今季のチャンスのカギとなるだろう。


エヴァートン(イアン・ケネディ氏)

エヴァートンを順位表のあれだけ上に届かせたデイビッド・モイーズは、今回も高く評価されて然るべきだし、リバプールより上だったことは、誰もが忘れないだろう。

昨季もシーズンを良い形で終えたことを考えれば、目標は今シーズンをポジティブな形で始め、1月以降の基盤とすることだろう。 それが可能であれば、ヨーロッパの舞台での存在感も維持できるようになるはずだ。

ニキツァ・イェラビッチの獲得で、彼らは直感的な才能を持ち、ドローを勝利に変えることができる男を得た。彼にレンジャース時代のパートナーであるスティーブン・ネイスミスが加わるのは心強い限りだ。

また、スティーブン。ピーナールを完全移籍で再獲得したことも非常に重要で、今季もカップで手強いエヴァートンがソリッドなシーズンを送るだろう。


フラム(ジョン・スタントン氏)

影響力の大きかったキャプテンのダニー・マーフィーがブラックバーンへと去ったのは中盤のクリエイティブな面での穴となっているが、多くのサポーターの懸念は、攻撃の2人、クリント・デンプシーとムサ・デンベレの動向だ。

両選手ともクレイヴン・コテージを去ることが継続的に噂されていて、今シーズンも彼らが残るかどうかがフラムの野心にも大きく影響してくる。

監督のマルティン・ヨルは、励みになるフラムでの1年目を過ごし、 プレシーズンからも若手の登用を積極的に行っている。ケリム・フレイやアレックス・カカニクリッチ、メサといったウィングたちの成長が活力をもたらし、新加入のムラデン・ペトリッチはプレシーズンでもゴールを量産して、長らく変わり映えの無かったチームでも際立っている。


リバプール(イアン・ケネディ氏)

リバプールの今季の目標は、リーグでの戦いぶりを大きく改善することで、恐らくトップ4への復帰を狙っているはずだ。カップ戦での勝ち上がりには勇気づけられたが、プライオリティは常にリーグであるはずだ。

ブレンダン・ロジャースの下でリバプールのスタイルがどう発展して行くかの判断はまだ待たねばならないが、何人かのトップ選手たちの去就は不透明なままだ。ファビオ・ボリーニとルイス・スアレスのコンビがどう機能するかも興味深い。

ロジャースはスウォンジーに華麗なフットボールをもたらしたが、それをチャンスでの決定力と共に持ち込めれば(そしてポストに当てないこと)、 多くのチームがヨーロッパを目指して戦うとは言え、そこでリバプールが競い合えない理由は無い。


マンチェスター・シティ(イアン・チーズマン氏)

夢のシーズンをどう超えるか?

それがシティがやらねばならないことだが、ブルーズがヨーロッパの巨人へと進化して行くのならば、その偉業を繰り返しつつ、チャンピオンズリーグでも終盤まで勝ち残る必要があるだろう。

選手層がいかに強固なものかは既に証明したし、カルロス・テヴィスも非常に集中した態度で戻ってきた。ワールドクラスの選手が新たに加入したようなものだ。移籍市場の締切前に守備と中盤に何人か補強できれば、彼らが去年よりも甘く考えたりしなければ、今シーズンを彼らに賭けないのは難しいだろう。

今のシティのスタッフからは一体感が感じられるし、タイトルの非常に有力な候補だと思う。


マンチェスター・ユナイテッド(ビル・ライス氏)

マンチェスター・ユナイテッドは2006年以来初めての無冠に終わったが、プレミアリーグはライバルのマンチェスター・シティに得失点差で届かずに逃した。

ネマニャ・ヴィディッチもケガから復帰し、彼らは良いシーズンを送って20度目のリーグタイトルを獲得したいと願っているだろう。

新たにボルシア・ドルトムントから1,700万ポンドで獲得した香川真司は中盤から狡猾さと創造性、そしてゴールの脅威をもたらし、トム・クレバリとアンデルソンは彼らのキャリアを妨げてきたケガを今季こそは避けたいと考えるだろう。

その重役を背中で語る役割はいつも通りウェイン・ルーニーであり、 彼のゴールがプレミアリーグの制覇とチャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出をもたらすことが期待されている。


ニューカッスル(ラフル・シュリバスタバ氏)

ニューカッスルは昨季のニューカッスルのサプライズであり、セネガル人ストライカーのパピス・シセが1月にドイツのフライブルクから移籍して14試合で13ゴールを決めた昨季の破壊力を維持できるならば、マグパイズは再びヨーロッパの舞台を争うインパクトを残せるだろう。

監督のアラン・パーデューは、主力が引き抜きやケガも無く開幕を迎えることができて胸を撫で下ろしているだろう。そして、昨季の大半を負傷で棒に振ったディフェンダーのスティーブン・テイラーやウィングのシルヴァン・マルヴォーを使うこともできる。

しかしながら、新たに加わったのは将来を嘱望される若手が中心で、選手層の厚さは 懸念材料だ。ヨアン・カバイェやファブリシオ・コロッチーニ、チェイク・ティオテのような主力がケガで長期離脱することが起きれば、昨季の輝かしい進歩も中位争いへと姿を変えてしまうだろう。


ノリッジ・シティ(ロブ・バトラー氏)

ポール・ランバートのアストン・ヴィラへの流出がどれだけのノリッジに影響するかは予測が難しい。監督の座を引き継いだのはクリス・ヒュートンだが、彼はクラブの幹部の第一候補として信念をもって支えられている。彼の最初の任務は、12位で終えた素晴らしい昨季の中で唯一の難点だった守備の穴を塞ぐことだ。

この夏、もうひとつの特筆すべきニュースは、クラブの守護神ともいうべきキャプテンでチーム得点王のグラント・ホルトをキープできたことだ。イングランドの希望でもあるホルトはシーズンの終わりに移籍志願書を出し、昇格してくるウェストハムが興味を示したとも言われている。それでもホルトは心を変え、新たに3年契約を締結した。

カナリーズの主たる目標は今季も残留だろうが、ファンはヒュートンと共にウェンブリーを目指すことを歓迎するだろう。


クイーンズ・パーク・レンジャース(アンドリュー・ラウリー氏)

5月にやっとの思いで残留を果たすと、QPRは同じ状況に巻き込まれないように機敏に動いた。マーク・ヒューズは昨季の後半にもボビー・ザモラ、ジブリル・シセ、ネダム・オヌオハと補強したが、さらにロバート・グリーン、ライアン・ネルセン、パク・チソン、アンドリュー・ジョンソンを加えてチームに経験をもたらしている。

グリーンは退団したパディ・ケニーの位置にそのまま入るだろうし、パクがチームにもたらすものも興味深い。そして昨季欠いていた切れ味をもたらすために、ジュニオール・ホイレットの獲得競争にも競り勝った。昨季66失点の守備の強化には、マンチェスター・ユナイテッドからローンで 獲得したブラジル人サイドバック、ファビオ・ダ・シルバが貢献する。

昨季終盤の15試合で6枚のレッドカードを受けた規律面での改善も今季は見込めるだろう。


レディング(エイドリアン・ウィリアムス氏:ロイヤルズの元キャプテン)

チャンピオンシップで王者に輝き、レディングに復活の時が来た。監督のブライアン・マクダーモットの下で、マデイスキ・スタジアムには6人の新戦力が加わってきたが、そのひとり、ニック・ショーリーは既にロイヤルズのレジェンドとなりつつある。

左サイドバックのポジションは、イアン・ハートにポジションを明け渡す雰囲気は無く懸念する必要が無いだろうし、 ゴールでホームの観客を喜ばせたいと考えているパヴェル・ポグレブニャクには期待をかけて良いだろう。しかし、注目すべきはその相方のジェイソン・ロバーツだ。1月に加入して以来の昨季の勢いを維持したいと考えているだろう。

サー・ジョン・ マデイスキ氏はクラブの51%をアントン・ジンガレヴィッチ氏に売却したが、マデイスキはレディングのファンにクラブは安泰だと伝えている。マッド・スタッド(マデイスキ・スタジアム)の安泰といえば、最初に浮かぶのはアダム・フェデリチの名前だ。今季の多くはこのオーストラリア人ゴールキーパーにかかっているし、公平に見れば皆彼には忙しいシーズンになると考えるだろう。


サウサンプトン(アダム・ブラックモア氏)

セインツは7年の不在を経て、勢いと共にプレミアリーグに帰ってきた。ナイジェル・アトキンスに率いられて2シーズンで2度の昇格は、素晴らしいチーム・スピリットと会長のニコラ・コルテセからの支援の賜物だ。

サポートは今オフも続いていて、ジェイ・ロドリゲスやスティーブン・デイヴィスの補強からもそれはうかがえ、さらにピッチ外でもクラブの長期的な基礎を築いて行っている。

彼らの今季の野望は残留に超えた所にあり、評論家の一部がすぐに降格すると予想しているものの、そうなるとは思えない。


ストーク・シティ(マット・サンドス氏)

ヨーロッパ探検後のストークのシーズン後半は失速に終わり、ポッターズは2008年のプレミア昇格以来最低のポイント数と最低の順位でフィニッシュした。加えて、このオフにはほとんど動きが無かったことから、ファンは降格争いに巻き込まれるのではないかと懸念している。

最初の7試合でトニー・ピューリスがある程度のポイントを確保できなければ、その恐怖心はますます増して行くだろう。最初の難所は、昇格してきたレディングとのアウェー戦、その後の6試合にアーセナル、マンチェスター・シティ、チェルシー、リバプール、マンチェスター・ユナイテッドとの対戦が含まれているのだ。

ストークのこのプレシーズンの過ごし方は、彼らがそのダイレクトなプレー・スタイルを変える可能性は無いということであり、今季もホームでの戦績が残留に大きく影響するだろう。


サンダーランド(ニック・バーンズ氏)

これだけ開幕が近付いても移籍市場で動きが少ないことが、サンダーランドのファンを心配させていることは間違いない。しかし、マーティン・オニールは、自分がどれだけソリッドな選手層を引き継いでいるのかを理解している。

昨季から続いている弱みはストライカーのポジションだが、プレシーズンは再び前線の駒不足に焦点が当たった。コナー・ウィッカム、ジ・ドンウォン、フレイザー・キャンベルというのは答になっておらず、ステファン・セセニョンはストライカーのパートナーを強く求めている。

昨季の終盤13試合で僅かに2勝だったことは懸念材料であり、データの専門家はその流れは今季も続くと考えるだろう。スティーブ・ブルースは、昨季最初の13試合で2勝しかできずに解任された。補強が叶わないのなら、スタートダッシュが肝要だ。それでもオニールは既に実績を証明済みの監督であり、サンダーランドは今季も中位で終えられると見ている。


スウォンジー(サイモン・デイヴィス氏)

スウォンジー・シティは新監督と共にシーズンを迎えるが、それがかつての世界でも偉大な選手の1人であるという点が、クラブの進歩を表している。

それでも、ミカエル・ラウドルップにはタフな任務が待っている。前任者のブレンダン・ロジャースはリバプールに引き抜かれる立派な仕事をした上に、ジョー・アレンをそのままリバプールへと連れて行ってしまった。ローンで加入していたアイスランド人のギルフィ・シグルズソンは新シーズンはトッテナムでプレーすることを選択した。18試合で7ゴールを決めた彼の不在は大きいだろう。

中盤のミチュやジョナサン・デ・グズマンはプレミアリーグは初めてだが、リーガの経験があるし、それはディフェンダーのチコ・フローレスも同じだ。

ブレンダン・ロジャースがスウォンジーの精神的な支柱でもあったことを考えれば、昨季11位を再現するのは非常に難しい。しかし、変化が悪いことだと誰か言っただろうか?


トッテナム(ジェイミー・リリーホワイト氏)

この夏のレーンは全てが変わる。新体制に新ユニフォーム・サプライヤー。アンドレ・ヴィラス・ボアスがトラウマとも言えるチェルシー時代から何を学んだのか、そして過去3シーズンで2度4位に入ったハリー・レドナップよりもチームを改善できるのか、大きな関心が集まるだろう。

チームの質に不足は無いが、ルカ・モドリッチの将来は未解決で、エマニュエル・アデバヨルとは完全移籍で合意できていない。レドリー・キングの引退は痛手だが、ファンの人気が高かった彼に悪い結果をもたらしたのはケガだった。ファンは、ベルギー人のヤン・フェルトンゲンが再びフィットしたマイケル・ドーソンと強力な守備のパートナーシップを築くことを期待しており、ギルフィ・シグルズソンの獲得も抜け目ない補強だったと証明されるだろう。

1月の補強は、スパーズのファンには刺激に欠けるものだったが(30代のライアン・ネルセンやルイ・サハは彼らが望んだ選手ではなかった)、会長のダニエル・リヴィは8月31日の締切前にビッグネームを連れてくることができるはずだ。


ウェストブロム(デイビッド・グリーン氏)

2011-12シーズンは、アルビオンのサポーターには素晴らしい1年だった。ライバルであるウォルヴズとの5-1を含む、数多くのアウェーでの勝利は、ロイ・ホジソンの拙いホームでの戦績を隠すには十分だったし、2シーズン続けて中位で終えることにもつながった。

 ミッドランドで最高位につけるクラブとして脚光を浴びつつも、プレミアでの最高位を記録できるかということになると、依然疑念が残る。元々選手層が十分に厚いのか、代表監督へと去って行ったホジソンの知性が自分のウェイト以上の相手にもパンチを繰り出すことを可能にしていたのかはまだ分からない。

ベン・フォスターというワールドクラスのゴールキーパーがいるし、アルゼンチン人のクラウディオ・ヤコブとチェルシーのロメウ・ルカクの獲得は素晴らしい補強。 今季の行方の多くは、監督としての初仕事となるスティーブ・クラークのハンドルさばきにかかっている。

ファンはカップ戦での勝ち上がりとトップ10フィニッシュを望んでいるだろうが、スタートで失敗すればクラークはその期待に応える難しさを痛感するだろう。


ウェストハム(フランク・キーオ氏)

クラブはプレミアリーグへの残留とオリンピック・スタジアムへの移転という、ピッチ内外でクラブとして重要な局面に入っている。

アップトン・パークのコアな層は、サム・アラーダイスのフットボールのスタイルに疑問を持って「俺達は地面でプレーするんだ」とチャントを送っていたが、プレーオフを経て昇格を達成することで寛容になって行った。

アラーダイスには好スタートを切るチャンスがある。最初の6試合は、昨季のプレミアでトップ8に入れなかったチームとの対戦だからだ。この10年間でハマーズは2度降格を味わっており、ファンはウィガンから獲得したボール奪取能力に長けるモハメド・ディアメのような補強がチームに安定感をももたらしてくれることを期待している。

攻撃面では、アンディ・キャロルの獲得に失敗したことから、マリ人フォワードのモディボ・マイガにかかる期待は大きい。一方で、ゴールキーパーのロバート・グリーンがQPRへと移籍してしまったのは痛手となるだろう。



ウィガン(ポール・ラウリー氏)

ウィガン・アスレティックの、唯一トップリーグから一度も降格したことのないクラブとしてのおとぎ話は、プレミアリーグ8年目の今季も続く。これは15年前には4部相当にいたクラブとしては驚くべき偉業なのだ。

ラティックスは、昨季の終盤9試合で7勝して降格を免れた勢いそのままに今季開幕を迎えたいと考えているだろう。マンチェスター・ユナイテッド、リバプール、アーセナルを撃破した歴史的勝利快進撃や4-0で圧勝したニューカッスル戦は良い目安になるだろう。

ウーゴ・ロダジェガとモハメド・ディアメはフラム、ウェストハムへと移籍し、ヴィクター・モーゼスもチェルシーへの移籍が繰り返し取り沙汰されている。

リバプールやアストン・ヴィラからのアプローチがありながら、ロベルト・マルティネスは任期4年目に入り 、レアル・マジョルカから同じスペイン人のイヴァン・ラミスを補強し、未開のスコットランドの市場からはアバディーンの19歳、フレイザー・ファイヴィーを連れてきている。


++++

という形で、20クラブ分のBBC担当者のコメントを紹介したけど、順位めいたものが無いと、開幕前の予想としては若干淋しいので、それは「ガーディアン」紙の先週末(なのでRVP移籍決定前)の記事から拝借。順位については特定の記者ではなく、スタッフの平均値で算出しているとのこと。

※カッコ内は(優勝オッズ/降格オッズ)

1. マンチェスター・シティ(2.4倍/3,001倍)
2. マンチェスター・ユナイテッド(3.8倍/3,001倍)
3. チェルシー(6.5倍/1,501倍)
4. アーセナル(15倍/751倍)
5. リバプール(34倍/251倍)
6. ニューカッスル・ユナイテッド(201倍/51倍)
7. エヴァートン(251倍/34倍)
8. トッテナム・ホットスパー(41倍/251倍)
9. QPR(3,001倍/6.5倍)
10. サンダーランド(1,251倍/13倍)
11. ストーク・シティ(3,501倍)
12. アストン・ヴィラ(2,501倍/9倍)
13. ウェスト・ブロミッジ・アルビオン(3,501倍/5倍)
14. フラム(2,501倍/12倍)
15. ウェストハム・ユナイテッド(5,501倍/3.3倍)
16. スウォンジー(4,501倍/3.3倍)
17. ウィガン・アスレティック(6,001倍/2.8倍)
18. ノリッジ・シティ(5,501倍/2.6倍)
19. レディング(10,001倍/2.2倍)
20. サウサンプトン(7,501倍/2.4倍)


なんと我らがスパーズは8位の予想、優勝オッズで見ても6番目。まぁ、期待が低い方が結果は良いかもしれないけど・・・。

Thursday, August 16, 2012

ファン・ペルシ移籍がユナイテッドとアーセナルに意味するもの


プレミアリーグの開幕を週末に控える中で、クラブ間で合意に達したロビン・ファン・ペルシの移籍。マンチェスター・ユナイテッドとアーセナルの両クラブにどのようなインパクトをもたらすのか。「テレグラフ」紙のマーク・オグデン、ジェレミー・ウィルソンの両記者がそれぞれの側面から描写している。



++(以下、要訳)++

マンチェスター・ユナイテッド

ロビン・ファン・ペルシの加入で、マンチェスター・ユナイテッドには2つのシナリオが想定される - ひとつはポジティブ、もうひとつはネガティブなものだ。

一見すれば、ウェイン・ルーニーが昨シーズンのプレミアリーグの得点王でフットボーラー・オブ・ザ・イヤーと並んでプレーするというのは、ヨダレが出るシーンだろう。

ルーニーとファン・ペルシは1999年のトレブル達成に欠かせなかったドワイト・ヨークとアンディ・コールのような相手を脅かせるコンビとなるだろう。同様に、ルーニーとファン・ペルシは2008年にチャンピオンズリーグをモノにした2トップに比肩するポテンシャルも持っている。しかし、サー・アレックス・ファーガソンのプランの裏側には、パートナーとなるストライカーと必ずしも気分良くプレーできていたわけではないルーニーにファン・ペルシが適応できない可能性もある。

ロナウドと組んでいた時には、ルーニーは自分の攻撃本能を犠牲にする形でこのポルトガル人フォワードを輝かせた。しかし、2009年にロナウドがレアル・マドリッドへと去って以降はユナイテッドの攻撃の中心として君臨しており、26歳のルーニーが脇役としてのプレーを再び受け入れるとは考えにくい。

ルーニーはルート・ファン・ニステルロイの横では滅多にハッピーにプレーできなかったし、ディミタール・ベルバトフやハヴィエル・エルナンデスとは相互理解を確立したものの、彼のベストフォームは攻撃の中心としてプレーしている時だ。

今季は誰がその役割を担うことになるのか?ルーニーとファン・ペルシが並んで2トップを組み、その後ろに1人入る、と考えるのが簡単だろうが、序盤戦は将来を占う意味でも興味深いものになるだろう。

そして、ファン・ペルシの到来は、ダニー・ウェルベックにとって何を意味するだろうか?彼はエルナンデスと3番目のフォワードの座を巡って争うことになるだろうが、この2人は1999年でいう所のオーレ・グンナー・ソルシャールやテディ・シェリンガムのような貴重な戦力になるだろう。

2010年の10月にルーニーがクラブの野心に疑問を投げかけた時、ファン・ペルシと組むことなど 想像できなかっただろう。今のルーニーにとってのチャレンジは、それを機能させることだ。


アーセナル

それは2010年だった。それまでも何度もアーセナルの基本的な戦略について弁護させられてきたアーセン・ヴェンゲルの我慢が少々崩れた。「我々はただ売るためにこれだけの時間をかけて選手たちを育てていると思っているのか?」というその表情からは、他のクラブが彼の最高の選手たちを引き抜くなどとは考えてもいない様子だった。

やがて、ヴェンゲルは彼の、若い選手たちが共に育ち、共に指導を受け、共に輝きを放つ、というヴィジョンは、彼らが将来のアーセナルについて同じ展望を持っているかどうかに依存する、ということを渋々認めるようになった。しかしながら、セスク・ファブレガスやサミ・ナスリ、そしてロビン・ファン・ペルシのような選手たちは、同様にクラブの将来にコミットしてくれると信じて疑わなかった。そして2年が経ち、我々は若干ことなる答を目にしている。

選手たちの忠誠心はアーセナルに対してではなく彼ら自身に対してであり、それは残念なことでもあるが、この先もヴェンゲルに「そうではない」と考えるのはナイーブ過ぎると伝えに来る者が出てくるだろう。

アーセナルはケガがちな29歳で2,400万ポンドの移籍金が得られるのは見事なビジネス、と確信を持って主張することもできるだろうが、それでもファン・ペルシを失うことは過去の退団劇よりもダメージが大きい。ティエリ・アンリ、パトリック・ヴィエラ、ソル・キャンべル、あるいはニコラ・アネルカの場合でさえも、彼らの最高の時期はもう超えた、という感覚があった。ナスリの場合には、金の問題だと勘繰らないのは難しかった。ファブレガスの場合も、彼の過去のバルセロナへの愛情が理由だった。

ファン・ペルシの場合、これらのいずれも当てはまらないのだ。彼はいまキャリアのピークにあり、ヴェンゲルは彼に残って欲しいと考えていて、彼は億万長者が資金を注入しているクラブに行ったわけでもない。

アーセナルが重視する育成を軸にしたモデルを固持するという意味で、ユナイテッドは直接のライバルにあたる。ファン・ペルシが去ったのは、多くのサポーターと同様にアーセナルの選手層は、主要タイトルを勝ち取るにはもはや十分ではない、と考えたからだ。

ヴェンゲルが彼の監督キャリアを守る上で重要で決定的な挑戦は、ファン・ペルシが間違っていると証明することだ。

++++

日本で話題となってる香川のポジションの話は全く出てこなかったが、むしろルーニーの「現在の」キャラクターがファン・ペルシとどうフィットするか、というところがポイントとなってくるんだろうな。個人的には完全に居場所のなくなるベルバトフの処遇。あとはアーセナルがこの資金で補強をするのかどうか。これまでの流れだと、いったんこれで様子を見るんじゃないか、って気もするけど。