フットボールの政治パワーの話はとっつきにくいものだけれど、BBCのマット・スレイター記者がポイントをかいつまんで説明・批判してくれている。
++(以下、要訳)++
フットボール・タスク・フォース、バーンズ・レビュー、文化・メディア・スポーツ大臣だったアンディー・バーナム7つの質問・・・、これらは私自身も報じ、そして何もおきずに忘れ去ったものだ。1964年にスポーツ大臣のポストができて以来、フットボールの変革は大臣の範疇を超えてるものだと分かった、と指摘するものもいる。
そうした過去の事例はあるものの、最近の文化・メディア・スポーツ委員会の出したフットボール・ガバナンスに関するレポートは思いのほか出来の良いものだった。34の結論・提案を含む112ページのレポートの概要は以下のようになっている。
FAの改革
FAが国のトップの組織であり、制度面でのリーダーシップをとるべき立場にあるのは誰の目にも明らかだが、利害の対立もあって有効に機能しているとは言いがたい。現在の構成は会長と総書記のもとに、プロ(プレミアとフットボール・リーグ)と全国(各州のFA)それぞれからの5人ずつの評議員と議論をする仕組みだが、結果的にウィンターブレークや若手育成のあり方の考えの相違から機能不全に陥っている。
新レポートでは、会長、総書記、さらに2人のFA重役(ひとりは若手育成のトップ)、2人の独立委員、さらに2人を全国から(ひとりはノン・リーグの代表)、そして各リーグからひとりずつにする、というものだ。より民主的、独立、合理的だ。実現可能か?おそらく。
しかし、FAの幹部というのは変わった存在で、フットボールの「議会」からも意見を聞く必要がある。100人以上のメンバー(ほぼ全員男性、年寄り、白人)がいて、出欠を取り始めたらキリがない。オックスフォード、ケンブリッジといった大学、軍隊、そしてパブリック・スクールのFA、それに全国の各地方・・・。選手とファンにも1票ずつ投票権限がある。レポートでは、その観点から、誰であれ10年以上同じ組織で仕事をすべきでない、としている。
クラブ・ライセンス制度
上の項が、FAに向けた矢だとすれば、次の矢は各リーグに向いている。
プレミアリーグは確かに世界中の何百万人の人々に観られていて、エキサイティングだし、スタジアムはいつもほぼ満杯だ。しかし、その負債、コスト、噴出する問題の数々、そして失態続きの代表チームのことはどう説明するのだ?
提案されているのは、「クラブが持続可能なビジネス・プランを進め、自己規制を機能させる」ライセンス制度だ。身近なところでそこまで厳格でなくとも機能している例としてはブンデスリーガがある。
プレミアリーグは、すでに「リーグ・ルールブック」と呼ばれるシステムを運用していて、毎年FAの承認も受けていると主張するだろう(下部リーグのフットボール・リーグも同様)。そしてヨーロッパに目を向けているクラブであれば、UEFAが各クラブの支出・給与をコントロールしようと取り組んでいるファイナンシャル・フェアプレーの影響で、そうした圧力は強まっているはずである。
この環境下でライセンスについて何かを言うのであれば、その定義を明確にしておかなければ、何らかの抵抗にあう可能性もあるだろう。
フットボール関係者債権優先法(The Football Creditors Rule)
論争を呼ぶこのトピックについての委員会のスタンスは明確で、自分たちでルールを無くすか、そうでなければ我々がそうけしかける、というものだ。この法律に詳しくない方のために補足すると、これはクラブが破産するような場合に、他の債権者(地元の出資者など)に先がけて選手を含むクラブ関係者が保護されるというものだ。
11人の委員のひとりであるダミアン・コリンズは、現在の制度はモラル上の問題があるだけでなく、フェアなビジネスの継続という意味でもフットボールには悪影響だ、と指摘している。
クラブ・オーナーシップ
委員長のジョン・ウィッティングデールは冗談ぶってクラブを経営するのに「フィットとする適切な人材」を見つけるのが如何に難しいかをしてきた。委員会も、その基準は厳しくしかもい完成を持ったものであるべきことは分かっている。興味深いのは、外国人が保有するばあいには、イギリス人が保有するさいよりも厳しく審査すべき、と提案している点だ。愛国的ではあるが、事実には反する。必要なのは良いオーナーであり、別にイギリス人ではない。
リーズ・ユナイテッドは結局ケン・ベイツ(モナコに住み、会社をカリブ海に登記している)が保有することとなったが、委員会はFAに詳細な調査をするよう望んでいる。必要であれば英国歳入税関庁を仰げばいよい、と。(※この点について、ケン・ベイツ本人は強く反論している:Leeds owner Ken Bates attacks MPs over football governance inquiry)
より前向きな話としては、レポートはサポーターによるクラブ所有を推し進めるべき、と提言し、サポーター基金による資金調達を円滑にするための法制化に動くことすら示唆している。レポートはその一部で、アーセナル・サポーターズ・トラスト(基金)について、その「Fanshare」スキームが良い印象を持った、と触れているが、現在は反目する金持ちオーナーたちからの圧力に直面しており、レポートは、政府に対して、株主としてはマイノリティであるサポーターたちが、その持分を無理やり買われることの無いよう、そうした圧力を予め避けられるようにすべきだ、と述べている。
他にも触れるべき点はいくつもあるが、このへんにしておこう。優先順位は何よりもFAの改革だが、FAだって再びきちんとした監督機関に慣れるのあれば、変革にチャレンジする動機はあるはずだ。問題は、政府は変わるし、大臣は考えを変え、選挙にも影響され、動きは停滞しがちなことだ。
まあ、いまはポジティブにいることにして、委員会のモットーである「変化なしはあり得ない/"no change is not an option"」がウェンブリーでの新しいチャントになることを期待しよう。
++++
カタい話は、ボキャブラリー的にも翻訳に骨が折れるところだけど、やわらかめに書いてくれたコラムだしアーセナルのサポーター基金のスキームは気になるとこ。それがメインで記事になることもあれば、そん時は拾ってみようかな。
Sunday, July 31, 2011
Saturday, July 30, 2011
ブラジル・サッカーへのパワーシフト
イングランド中心に記事を選んでるつもりだけど、サイモン・クーパー氏のものは別枠。ということで、本日のお題はブラジル・サッカー。ちなみに「AskMen」という媒体は男性向けポータルなんだが、クーパー氏はサイトのカラーを知っててこの連載を受けてるんだろうか。まぁいいや。
++(以下、要訳)++
「ブラジルでワールドカップが開催された後には、ブラジルには世界最強のリーグがあるだろう。政治と経済のパワーバランスが北から南へとシフトするのと同じことがサッカーにも起きるのだ」
1999年のある夜に、リオ・デ・ジャネエイロのマラカナン・スタジアムに試合を観に行った。マラカナンは1950年にワールドカップが行われたスタジアムで、収容人数は20万人、世界最大のスタジアムだ。私が観たのはブラジルで最も人気があるフラメンゴの試合だったが、観衆は1万人にも満たなかった。そして観客の多くは、ボールを追ってトラックを行ったり来たりして時を過ごしていた。臆面もなくレフェリーがフラメンゴの勝利を告げる笛を吹いたが、夜中に家路に就くのはどうにも怖かった。これがブラジル、世界最高のサッカー選手たちを生みだし、最もリーグが機能していない国だった。すべての素晴らしいブラジル人選手と、多くの大したことないブラジル人選手たちは、適したクラブを見つけるために地球上のさまざまな場所に散った。
ブラジルの復権
数十年にわたってそのような流れだったが、それが今年は変わってきている。ワールドカップの開催を控え、サントスはネイマールに対するレアル・マドリーやチェルシーからのオファーを受け流し続け、サンパウロのコリンチャンスはマンチェスター・シティのカルロス・テヴェスを6,300万ポンドで獲得しようと試み、昨年のワールドカップでセンターフォワードを務めたルイス・ファビアーノはサンパウロに戻ってきた。もはやブラジルは選手の輸出国とは言いきれないのだ。ブラジルでワールドカップが開催された後には、ブラジルには世界最強のリーグがあるだろう。政治と経済のパワーバランスが北から南へとシフトするのと同じことがサッカーにも起きるのだ。
選手たちはどこへ行ったのか
1999年に私がブラジルを訪れた時、フラメンゴの監督であったカリーニョは皆いなくなってしまった、と嘆いていた。「このリーグのチームはみんな平均レベルだ。代表チームだけが以前のレベルを維持してる」
選手たちが平均レベルだとしたら、運営側はより酷かった。入ってくる金はほとんど搾取してしまう。バスコ・ダ・ガマを長きに渡って取り仕切っていた会長のエウリコ・ミランダは、ある時警察に対して自宅前で待ち伏せに遭い、試合で得た4万5,000ドルを奪われたと言ってきた。もちろん金は戻らなかった。
選手、運営と並んで酷いのはそのファンたちだ。最近のドキュメンタリー『Loucos de futebol』はフォルタレッツァの街のファンについて取り上げていたが、1983年のイングランド最悪の時期を思い起こさせるものだった。試合のいくつかでは暴徒と化していて、酔っ払いがピッチに侵入する場面もあった。1999年にリヴァウドに話を聞いた際、バルセロナでのプレーがどのくらいストレスのたまるのものか聞いてみた。彼は、「いや、一番のプレッシャーはブラジル、コリンチャンスやパルメイラスにいた時だ。家族を脅し、車を破壊し…、ブラジルでのプレッシャーは複雑なんだ。最近のバルセロナでのような結果をパルメイラスで出せば、もう通りなんて歩けたもんじゃないよ」と語った。
それがブラジルのリーグの状況だったが、ブラジルの経済成長と共にそれは変わってきている。中国やインドからの需要が、ブラジルの農作物や輸出品の価格を引き上げているのだ。ヨーロッパ経済が縮小傾向なのを尻目に、ブラジル経済は急成長を遂げており、「未来の国」に本当に未来がやってきている。
ブラジルは新たな機会の国か?
年々、多くのブラジル人たちが貧困から抜け出し、最近の調査では2003年以来4,900万人が中流・上流階級に加わっているという。サッカーに熱狂する国において、彼らがチケットやシャツにお金を使いたくなるのは自然なことだ。
使う基準にもよるが、ブラジル経済はすでにイギリス、フランス、イタリアなどの経済規模を上回っている。これは、仮に国の収入の同じ割合がサッカーに費やされるとしたら、ブラジルのリーグはそれらの国よりも豊かだということになる。ただ、イングランドのプレミアリーグに追い付くのはほぼ不可能だろう。世界各国でTV放映権を通じて莫大な収入を上げているからだ。
ブラジルでは、ここのところ急速に新たな資金がサッカーに流れ込んでいる。ブラジルのトップ12クラブの収入は、2003年から2010年の間におよそ3倍になった。こうしたクラブは、TV放映権についても来年以降有利な条件を引き出せるだろう。フラメンゴとコリンチャンスは、それぞれTVだけで年間6,500万ドルの収入を上げている。そしてブラジルの政治家たちと同様にクラブの幹部たちも、より効率的になり、また汚職から距離を置くようになった。つまり、ブラジル・サッカーはいよいよ離陸の時を迎えているのだ。
現在では、ブラジルのトップクラブはヨーロッパのビッグクラブに移籍金やサラリーで対抗できるようになった。昨年の移籍金の総額は、前年から63%増え7,900万ドルに達した。ヨーロッパでは、金額の規模こそ違え、29%下がっている。ブラジルのクラブたちは、選手たちを再輸入しており、昨年は135人が帰国した。ロナウジーニョはフラメンゴ、アドリアーノはコリンチャンス、ジョーはマンチェスター・シティを出てインテルナシオナルに加わり、デニウソンはアーセナルからサンパウロに貸し出されている。サントスは、ネイマールへのレアル・マドリーからの6,500万ドルのオファーを断り、彼に65万ドルの月給を支払っている。事実、ブラジルは一番の選手輸出国ではなくなった。2009-10シーズンに、ブラジルが1,440人の選手を送り出したのに対し、アルゼンチンからは1,800人が海外の扉を叩いているのだ。
ワールドカップへの備えとその先
それでも、これはまだ始まりに過ぎない。2013年から2016年にかけて、ブラジルは3つの大きなスポーツイベントを開催する。コンフェデレーションズ・カップ、ワールドカップ、そしてオリンピックである。ワールドカップの開催が決まった時には、基準を満たすスタジアムはひとつもなかったが、現在7つのスタジアムを建設中で、マラカナンを含む5つが改修中だ。
新しいブラジルにはより多くの快適なスタジアムが必要だ。より中流階級が増えれば、スポンサーも増え、快適にスタジアムでサッカーを観たい層も増えるだろう。賢明なブラジル人納税者の資金でよりスマートなスタジアムができれば、より多くのブラジル人たちがスタジアムでサッカーを観る、ということだ。2014年以降のブラジルでは、1990年代のイングランドで見られたスタジアムの改革が起こるだろう。スタンドには女性や中流階級以上の人々が増え、より大きなサッカー共和国ができあがる。2014年以降の観衆たちがクラブを豊かにし、才能ある選手たちをもう1年か2年長く、もしくは永遠にキープできるようにするはずだ。最近話したチェルシーの関係者は、「2014年以降のブラジルは、いまここに招き入れている才能の確保という意味では脅威の市場になる」と見ている。ヨーロッパの代表選手がブラジルのクラブと契約することだって起こりうるのだ。北から南へのパワーシフトというのはそういうことだ。
ブラジルは常に素晴らしい代表チームと酷い国内リーグを抱えてきた。2014年以降はこれが逆になる。リーグが強くなって代表選手を国内に抱えておくことができるようになると、すでに不安定になり始めている代表チームは一層脆くなるだろう。ブラジルには最高の選手がいるが、1970年以降、西ヨーロッパは最高の戦術を見出してきた。ブラジルよりスピーディーでダイレクト、そしてチームプレー重視だ。ロナウドやロベルト・カルロスはヨーロッパに渡ってきてそのノウハウを吸収した。ネイマールの世代にはまだこれが無い。それでも、サッカーで最高の国がようやくそこそこ良いリーグを持てるようになるとすれば、それはスポーツ界全体を豊かにすることになるはずだ。
++++
最後の、代表チームと国内リーグのねじれの部分は、なるほどな、と唸った。選手が国内にとどまると代表は強くならない、なんとも皮肉。
++(以下、要訳)++
「ブラジルでワールドカップが開催された後には、ブラジルには世界最強のリーグがあるだろう。政治と経済のパワーバランスが北から南へとシフトするのと同じことがサッカーにも起きるのだ」
1999年のある夜に、リオ・デ・ジャネエイロのマラカナン・スタジアムに試合を観に行った。マラカナンは1950年にワールドカップが行われたスタジアムで、収容人数は20万人、世界最大のスタジアムだ。私が観たのはブラジルで最も人気があるフラメンゴの試合だったが、観衆は1万人にも満たなかった。そして観客の多くは、ボールを追ってトラックを行ったり来たりして時を過ごしていた。臆面もなくレフェリーがフラメンゴの勝利を告げる笛を吹いたが、夜中に家路に就くのはどうにも怖かった。これがブラジル、世界最高のサッカー選手たちを生みだし、最もリーグが機能していない国だった。すべての素晴らしいブラジル人選手と、多くの大したことないブラジル人選手たちは、適したクラブを見つけるために地球上のさまざまな場所に散った。
ブラジルの復権
数十年にわたってそのような流れだったが、それが今年は変わってきている。ワールドカップの開催を控え、サントスはネイマールに対するレアル・マドリーやチェルシーからのオファーを受け流し続け、サンパウロのコリンチャンスはマンチェスター・シティのカルロス・テヴェスを6,300万ポンドで獲得しようと試み、昨年のワールドカップでセンターフォワードを務めたルイス・ファビアーノはサンパウロに戻ってきた。もはやブラジルは選手の輸出国とは言いきれないのだ。ブラジルでワールドカップが開催された後には、ブラジルには世界最強のリーグがあるだろう。政治と経済のパワーバランスが北から南へとシフトするのと同じことがサッカーにも起きるのだ。
選手たちはどこへ行ったのか
1999年に私がブラジルを訪れた時、フラメンゴの監督であったカリーニョは皆いなくなってしまった、と嘆いていた。「このリーグのチームはみんな平均レベルだ。代表チームだけが以前のレベルを維持してる」
選手たちが平均レベルだとしたら、運営側はより酷かった。入ってくる金はほとんど搾取してしまう。バスコ・ダ・ガマを長きに渡って取り仕切っていた会長のエウリコ・ミランダは、ある時警察に対して自宅前で待ち伏せに遭い、試合で得た4万5,000ドルを奪われたと言ってきた。もちろん金は戻らなかった。
選手、運営と並んで酷いのはそのファンたちだ。最近のドキュメンタリー『Loucos de futebol』はフォルタレッツァの街のファンについて取り上げていたが、1983年のイングランド最悪の時期を思い起こさせるものだった。試合のいくつかでは暴徒と化していて、酔っ払いがピッチに侵入する場面もあった。1999年にリヴァウドに話を聞いた際、バルセロナでのプレーがどのくらいストレスのたまるのものか聞いてみた。彼は、「いや、一番のプレッシャーはブラジル、コリンチャンスやパルメイラスにいた時だ。家族を脅し、車を破壊し…、ブラジルでのプレッシャーは複雑なんだ。最近のバルセロナでのような結果をパルメイラスで出せば、もう通りなんて歩けたもんじゃないよ」と語った。
それがブラジルのリーグの状況だったが、ブラジルの経済成長と共にそれは変わってきている。中国やインドからの需要が、ブラジルの農作物や輸出品の価格を引き上げているのだ。ヨーロッパ経済が縮小傾向なのを尻目に、ブラジル経済は急成長を遂げており、「未来の国」に本当に未来がやってきている。
ブラジルは新たな機会の国か?
年々、多くのブラジル人たちが貧困から抜け出し、最近の調査では2003年以来4,900万人が中流・上流階級に加わっているという。サッカーに熱狂する国において、彼らがチケットやシャツにお金を使いたくなるのは自然なことだ。
使う基準にもよるが、ブラジル経済はすでにイギリス、フランス、イタリアなどの経済規模を上回っている。これは、仮に国の収入の同じ割合がサッカーに費やされるとしたら、ブラジルのリーグはそれらの国よりも豊かだということになる。ただ、イングランドのプレミアリーグに追い付くのはほぼ不可能だろう。世界各国でTV放映権を通じて莫大な収入を上げているからだ。
ブラジルでは、ここのところ急速に新たな資金がサッカーに流れ込んでいる。ブラジルのトップ12クラブの収入は、2003年から2010年の間におよそ3倍になった。こうしたクラブは、TV放映権についても来年以降有利な条件を引き出せるだろう。フラメンゴとコリンチャンスは、それぞれTVだけで年間6,500万ドルの収入を上げている。そしてブラジルの政治家たちと同様にクラブの幹部たちも、より効率的になり、また汚職から距離を置くようになった。つまり、ブラジル・サッカーはいよいよ離陸の時を迎えているのだ。
現在では、ブラジルのトップクラブはヨーロッパのビッグクラブに移籍金やサラリーで対抗できるようになった。昨年の移籍金の総額は、前年から63%増え7,900万ドルに達した。ヨーロッパでは、金額の規模こそ違え、29%下がっている。ブラジルのクラブたちは、選手たちを再輸入しており、昨年は135人が帰国した。ロナウジーニョはフラメンゴ、アドリアーノはコリンチャンス、ジョーはマンチェスター・シティを出てインテルナシオナルに加わり、デニウソンはアーセナルからサンパウロに貸し出されている。サントスは、ネイマールへのレアル・マドリーからの6,500万ドルのオファーを断り、彼に65万ドルの月給を支払っている。事実、ブラジルは一番の選手輸出国ではなくなった。2009-10シーズンに、ブラジルが1,440人の選手を送り出したのに対し、アルゼンチンからは1,800人が海外の扉を叩いているのだ。
ワールドカップへの備えとその先
それでも、これはまだ始まりに過ぎない。2013年から2016年にかけて、ブラジルは3つの大きなスポーツイベントを開催する。コンフェデレーションズ・カップ、ワールドカップ、そしてオリンピックである。ワールドカップの開催が決まった時には、基準を満たすスタジアムはひとつもなかったが、現在7つのスタジアムを建設中で、マラカナンを含む5つが改修中だ。
新しいブラジルにはより多くの快適なスタジアムが必要だ。より中流階級が増えれば、スポンサーも増え、快適にスタジアムでサッカーを観たい層も増えるだろう。賢明なブラジル人納税者の資金でよりスマートなスタジアムができれば、より多くのブラジル人たちがスタジアムでサッカーを観る、ということだ。2014年以降のブラジルでは、1990年代のイングランドで見られたスタジアムの改革が起こるだろう。スタンドには女性や中流階級以上の人々が増え、より大きなサッカー共和国ができあがる。2014年以降の観衆たちがクラブを豊かにし、才能ある選手たちをもう1年か2年長く、もしくは永遠にキープできるようにするはずだ。最近話したチェルシーの関係者は、「2014年以降のブラジルは、いまここに招き入れている才能の確保という意味では脅威の市場になる」と見ている。ヨーロッパの代表選手がブラジルのクラブと契約することだって起こりうるのだ。北から南へのパワーシフトというのはそういうことだ。
ブラジルは常に素晴らしい代表チームと酷い国内リーグを抱えてきた。2014年以降はこれが逆になる。リーグが強くなって代表選手を国内に抱えておくことができるようになると、すでに不安定になり始めている代表チームは一層脆くなるだろう。ブラジルには最高の選手がいるが、1970年以降、西ヨーロッパは最高の戦術を見出してきた。ブラジルよりスピーディーでダイレクト、そしてチームプレー重視だ。ロナウドやロベルト・カルロスはヨーロッパに渡ってきてそのノウハウを吸収した。ネイマールの世代にはまだこれが無い。それでも、サッカーで最高の国がようやくそこそこ良いリーグを持てるようになるとすれば、それはスポーツ界全体を豊かにすることになるはずだ。
++++
最後の、代表チームと国内リーグのねじれの部分は、なるほどな、と唸った。選手が国内にとどまると代表は強くならない、なんとも皮肉。
Friday, July 29, 2011
移籍マーケットランキング
「テレグラフ」紙のトム・ギッブス記者が、一風変わった移籍市場ランキングを作成。今季の移籍マーケットで、各クラブはいかにうまく立ち回っているのか。
++(以下、要訳)++
いま現在のプレミアリーグの順位表はアルファベット順だ。だったら、ノーリッジはスパーズよりも良いチームなのか?QPRのキーロン・ダイアーはプレミアにふさわしいのか、理学療法のためにマッサージ台に乗っているのがお似合いなのか?ジェルビーニョは、ヴェンゲルが見出した原石なのか、それともケガをした後のエドゥアルド・シルバのクローンなのか?
こうした質問に答えるのは簡単だ(念のために言うと、答えは、ノー、後者、後者だ)が、今日のところはリーグ順位をここまでの選手獲得から考えたい。
僕の考えた誇り高いほどに主観的で、特許的にもアンフェア極まりない採点方法で各クラブを評価して、ゼロばかりで淋しいリーグの順位表に彩りを添えようという試みだ。
基準は以下の通り:
3ポイント:素晴らしい。金額に見合う価値がある。
1ポイント:悪くない。まだ証明できていないが、メンバーに加える価値はある。
0ポイント:ダメ。キーロン・ダイアー。
これで順位表を見てみると、「トップ6」に来るのはサンダーランド(16)、ウルヴズ(7)、ニューカッスル(6)、マンU(5)、フルハム(5)、シティ(5)となり、中盤選手を漁るリヴァプール(4)は7位。逆にブラックバーン、ストーク、エヴァートンが0ポイントに。
で、サンダーランドはどうして16ポイントでトップなのか。
各3ポイント
コナー・ウィッカム(イプスウィッチ/800万ポンド):イプスウィッチでの活躍からも本物の香り
ジョン・オシェイ (マンU/400万ポンド):経験がある。良いところが無ければ10年もマンチェスター・ユナイテッドでプレーできない
ウェス・ブラウン(マンU/400万ポンド):フィットさえすれば、向こう何年間か、素晴らしいセンターバックになる
キーラン・ウェストウッド(コヴェントリー/フリー):クレイグ・ゴードンを脅かす素晴らしいキーパー
各1ポイント
クレイグ・ガードナー(バーミンガム/600万ポンド):高かったが中盤の強化には貢献する
セブ・ラーション(バーミンガム/フリー):いかにもサンダーランドがサインしそうな選手。信頼感と闘争心があってスウェーデン人
アーメド・エルモハマディ(ENPPI/200万ポンド):ローンで十分に価値を証明した
デイビッド・ヴォーガン(ブラックプール/フリー):チャーリー・アダムの陰に隠れてたが、いぶし銀の働きをする
ジョーダン・ヘンダーソンをリヴァプールに売却し、資金面での余裕があったことからここまで2,400万ポンドを投じて補強している。これが全クラブ分、延々と続くのだけど、ここでは面白そうなところをあと数クラブほど。
まずマンチェスター・ユナイテッド。
3ポイント
アシュリー・ヤング(アストン・ヴィラ/1,700万ポンド):才能があり、より高いステージが相応しいことを代表で証明済み。オールド・トラフォードで輝く存在
各1ポイント
ダヴィド・デ・ヘア(アトレティコ・マドリー/1,890万ポンド):値段からはギャンブルと見るべきだが、アトレティコでは際立っていた。彼がシュマイケルかタイービかは時が経てば分かる
フィル・ジョーンズ(ブラックバーン/1,650万ポンド):驚くほどの高価格だが、クリス・スモーリングと長くコンビを組むことになれば納得
ブラウン、オシェイという信頼できる駒を失ったことを公開する可能性はある。スコールズは大事な試合には出ていなかったが、フォン・デル・サールの穴は大きい。スナイデルが獲れるなら、かなり理想的な補強。
マンチェスター・シティ
3ポイント
ステファン・サビッチ(パルチザン・ベオグラード/600万ポンド):ジェローム・ボアテングの代役として悪くない
各1ポイント
ガエル・クリシー(アーセナル/700万ポンド):アーセナルの脆いディフェンスで、過去の栄光でポジションを張っていたが、シティで輝きを取り戻すかもしれない。ただ、700万ポンドは高い
セルヒオ・アグエロ(アトレティコ・マドリー/3,500万ポンド):新聞では新しいテヴェスだが、実際はより高価なもうひとりのロビーニョ、ジェコ、ジョー。適応に失敗すれば後者
リバプール
3ポイント
スチュワート・ダウニング(アストン・ヴィラ/2,000万ポンド):高い値段を払ったが、ダウニングは安定して高いパフォーマンスを発揮しているし、アンディ・キャロルと合うはず
1ポイント
チャーリー・アダム(ブラックプール/700万ポンド):輝きが昨季だけならば700万ポンドは高い。過去のキャリアを見るに、線香花火である可能性もある
0ポイント
ジョーダン・ヘンダーソン(サンダーランド/2,000万ポンド):サンダーランドでさえ目立っていたわけでなく、U-21代表でも期待を裏切ったことを考えると、考えられない値段。ダルグリッシュの信念が正しいことを証明するには、かなりの改善が必要
冷遇されたポール・コンチェンスキーは去ったが、ダルグリッシュが0-10-0のフォーメーションを考えているのでなければ、多くの中盤の選手が放出されるはず。
++++
という感じで、全チームの補強状況を採点。いわゆるメガクラブの場合、8月末の締切直前にバタバタと決まる感じなので、この順位も最終的には大きく変わるはず。でも、ひとまず表にしてみたところに面白さがあるのかも。上で紹介したクラブ以外や、今の順位表については、原文(Premier League transfer table - who is winning the window?)を。
++(以下、要訳)++
いま現在のプレミアリーグの順位表はアルファベット順だ。だったら、ノーリッジはスパーズよりも良いチームなのか?QPRのキーロン・ダイアーはプレミアにふさわしいのか、理学療法のためにマッサージ台に乗っているのがお似合いなのか?ジェルビーニョは、ヴェンゲルが見出した原石なのか、それともケガをした後のエドゥアルド・シルバのクローンなのか?
こうした質問に答えるのは簡単だ(念のために言うと、答えは、ノー、後者、後者だ)が、今日のところはリーグ順位をここまでの選手獲得から考えたい。
僕の考えた誇り高いほどに主観的で、特許的にもアンフェア極まりない採点方法で各クラブを評価して、ゼロばかりで淋しいリーグの順位表に彩りを添えようという試みだ。
基準は以下の通り:
3ポイント:素晴らしい。金額に見合う価値がある。
1ポイント:悪くない。まだ証明できていないが、メンバーに加える価値はある。
0ポイント:ダメ。キーロン・ダイアー。
これで順位表を見てみると、「トップ6」に来るのはサンダーランド(16)、ウルヴズ(7)、ニューカッスル(6)、マンU(5)、フルハム(5)、シティ(5)となり、中盤選手を漁るリヴァプール(4)は7位。逆にブラックバーン、ストーク、エヴァートンが0ポイントに。
で、サンダーランドはどうして16ポイントでトップなのか。
各3ポイント
コナー・ウィッカム(イプスウィッチ/800万ポンド):イプスウィッチでの活躍からも本物の香り
ジョン・オシェイ (マンU/400万ポンド):経験がある。良いところが無ければ10年もマンチェスター・ユナイテッドでプレーできない
ウェス・ブラウン(マンU/400万ポンド):フィットさえすれば、向こう何年間か、素晴らしいセンターバックになる
キーラン・ウェストウッド(コヴェントリー/フリー):クレイグ・ゴードンを脅かす素晴らしいキーパー
各1ポイント
クレイグ・ガードナー(バーミンガム/600万ポンド):高かったが中盤の強化には貢献する
セブ・ラーション(バーミンガム/フリー):いかにもサンダーランドがサインしそうな選手。信頼感と闘争心があってスウェーデン人
アーメド・エルモハマディ(ENPPI/200万ポンド):ローンで十分に価値を証明した
デイビッド・ヴォーガン(ブラックプール/フリー):チャーリー・アダムの陰に隠れてたが、いぶし銀の働きをする
ジョーダン・ヘンダーソンをリヴァプールに売却し、資金面での余裕があったことからここまで2,400万ポンドを投じて補強している。これが全クラブ分、延々と続くのだけど、ここでは面白そうなところをあと数クラブほど。
まずマンチェスター・ユナイテッド。
3ポイント
アシュリー・ヤング(アストン・ヴィラ/1,700万ポンド):才能があり、より高いステージが相応しいことを代表で証明済み。オールド・トラフォードで輝く存在
各1ポイント
ダヴィド・デ・ヘア(アトレティコ・マドリー/1,890万ポンド):値段からはギャンブルと見るべきだが、アトレティコでは際立っていた。彼がシュマイケルかタイービかは時が経てば分かる
フィル・ジョーンズ(ブラックバーン/1,650万ポンド):驚くほどの高価格だが、クリス・スモーリングと長くコンビを組むことになれば納得
ブラウン、オシェイという信頼できる駒を失ったことを公開する可能性はある。スコールズは大事な試合には出ていなかったが、フォン・デル・サールの穴は大きい。スナイデルが獲れるなら、かなり理想的な補強。
マンチェスター・シティ
3ポイント
ステファン・サビッチ(パルチザン・ベオグラード/600万ポンド):ジェローム・ボアテングの代役として悪くない
各1ポイント
ガエル・クリシー(アーセナル/700万ポンド):アーセナルの脆いディフェンスで、過去の栄光でポジションを張っていたが、シティで輝きを取り戻すかもしれない。ただ、700万ポンドは高い
セルヒオ・アグエロ(アトレティコ・マドリー/3,500万ポンド):新聞では新しいテヴェスだが、実際はより高価なもうひとりのロビーニョ、ジェコ、ジョー。適応に失敗すれば後者
リバプール
3ポイント
スチュワート・ダウニング(アストン・ヴィラ/2,000万ポンド):高い値段を払ったが、ダウニングは安定して高いパフォーマンスを発揮しているし、アンディ・キャロルと合うはず
1ポイント
チャーリー・アダム(ブラックプール/700万ポンド):輝きが昨季だけならば700万ポンドは高い。過去のキャリアを見るに、線香花火である可能性もある
0ポイント
ジョーダン・ヘンダーソン(サンダーランド/2,000万ポンド):サンダーランドでさえ目立っていたわけでなく、U-21代表でも期待を裏切ったことを考えると、考えられない値段。ダルグリッシュの信念が正しいことを証明するには、かなりの改善が必要
冷遇されたポール・コンチェンスキーは去ったが、ダルグリッシュが0-10-0のフォーメーションを考えているのでなければ、多くの中盤の選手が放出されるはず。
++++
という感じで、全チームの補強状況を採点。いわゆるメガクラブの場合、8月末の締切直前にバタバタと決まる感じなので、この順位も最終的には大きく変わるはず。でも、ひとまず表にしてみたところに面白さがあるのかも。上で紹介したクラブ以外や、今の順位表については、原文(Premier League transfer table - who is winning the window?)を。
Saturday, July 23, 2011
レプリカ売上トップはルーニー

2010-11シーズンのレプリカ・ユニフォームの売り上げでトップに立ったのは、マンチェスター・ユナイテッドのウェイン・ルーニーだった。ルーニーがトップに立つのは初めてで、マンUの選手としては、2007-08シーズンのクリスティアーノ・ロナウド以来だ。
集計は、プレミアリーグのシーズン期間中、世界中のデータをもとに弾き出されている。過去2シーズンはフェルナンド・トーレスがトップであったが、リバプールから出ると同時にその座も失った。
2010-11シーズンのレプリカ売上トップ10
1. ウェイン・ルーニー
2. フェルナンド・トーレス
3. スティーブン・ジェラード
4. チチャリート(ハヴィエル・エルナンデス)
5. ロビン・ファン・ペルシー
6. フランク・ランパード
7. ディディエ・ドログバ
8. ルイス・スアレス
9. アンドレイ・アルシャヴィン
10. ライアン・ギッグス
++++
個人的には冬のマーケットで加入してるスアレスのランクインが凄いなー、と。残念ながらスパーズからは誰も入らず。いい塩梅に分散してる、と前向きに考えることにする。
Saturday, June 18, 2011
フットボールにおけるデータ革命
訳書が隠れた人気で日本でも知名度の高いサイモン・クーパーは、イギリスの経済紙『ファイナンシャル・タイムス』のコラムニストで、普段はサッカー以外のコラムも書いている。

この6月17日付の記事のテーマは、フットボール界において、データが果たす役割がいかに大きくなってきたかについて。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・シティの練習場を訪れた時に、パフォーマンス分析のトップであるギャビン・フレイグに会った。彼の名前を聞いたことがある人などいないだろうが、彼はフットボール界におけるデータ革命の第一人者である。人々の視線に触れることはないが、こうしたデータは、クラブの決定、特に誰を買い、誰を売るのかという決断に大きな影響を与えている。
この専門チームの手法はさながら投資銀行であるが、シティはプレミアリーグに所属する全選手のデータを獲得している。フレイグは「中盤のアタッカーの獲得を考えているとしたら、どのMFが80%以上のパス成功率を持つか、簡単に調べられる」と語る。検索の結果はどうか。スティーブン・ジェラードやセスク・ファブレガスはデータが無くとも容易に想定できるが、ケヴィン・ノーランという意外な顔も出てくるのだ。これだけですぐに契約しようとは思わないだろうが、注視しようという気にはなるだろう。
他にもフレイグは、「トップ4はアタッキング・サードでのパス成功率が高い。カルロス・デヴェス、ダヴィド・シルヴァ、アダム・ジョンソン、そしてヤヤ・トゥーレの獲得後、直近の半年だけでもシティのこの値は7.7%改善も改善した」と述べている。ちなみに、シルヴァは誰よりもこの値が高い。ただし、同時にフレイグは、必ずしもデータで選手獲得が加速したわけでもない、と念を押してもいる。
PCの到来以来、データを選手の判断に使おうと試みるパイオニアは何人かいたが、それはやがてアーセナルで指揮を執る当時ASモナコのアーセン・ヴェンゲルや、ディナモ・キエフのヴァレリ・ロバノフスキといった監督たちだ。経済学の学位を持つヴェンゲルは、モナコ時代から友人が開発したTop Scoreというシステムを愛用しており、試合の翌朝はほぼ中毒状態で分析をし、エクセルにまとめていた。例えば、2002年にデニス・ベルカンプを試合終盤で交代させるようになり、これに不満を表した時のことをベルカンプはこう振り返っている。「ヴェンゲルは『見ろデニス、70分以降、君の走る距離は短くなり、スピードも落ちているだろう』って言うんだ。彼はフットボールの教授だよ」
ウェストハムの監督に就任するサム・アラーダイスは、その新石器時代的な見かけによらずデータ重視だ。アラーダイスは、選手としてフロリダのタンパ・ベイで1年間プレーしてたことがあり、ここでアメリカのスポーツがいかに科学とデータを活用しているかに魅了された。1999年にボルトンの監督になった際、彼はベストな選手を獲得することはできなかったが、良い統計専門家たちを雇った。そこでは、「1試合の間にボールはチーム間を試合に約400回行き来する」ということが分かった、とアラーダイスのもとでフットボールの分析を始め、現在はチェルシーで辣腕をふるうマイク・フォードは語る。これを受けてアラーダイスは、攻守の切替えの早さに厳格になり、ボールを失ったらすぐにディフェンスのポジションにつくことを強く求めるようになった。
より具体的な例としては、統計を分析した結果、アラーダイスはより簡単にゴールする方法に行き着いた。コーナー、スローイン、フリーキックなどのセットプレーである。同じくアラーダイスの門下生だったフレイグはボルトン時代を思い返し、「当時のボルトンはゴールの45~50%をセットプレーであげていた。リーグ平均は3分の1くらいなのに対してね。ディフェンダーがロングスローをクリアしたら、ボールはどこに行くか。我々はそれを分析して、そこに人を置いたんだ」と語っている。
2003年に出版されたマイケル・ルイスの『マネーボール』は、フットボール界のデータ革命をより推し進めることになった。これは、メジャーリーグのオークランド・アスレチックスのGM、ビリー・ビーンが統計を用いた新たな選手評価手法を描いたものだ。リバプールの新たなオーナーになった、ジョン・ヘンリーが所有するボストン・レッドソックスもこのメソッドを参考に2度ワールドシリーズを制した。
前出のマイク・フォード(元ボルトン、現チェルシーのデータ分析担当)は、ビーンの出身地であるサンディエゴで学んでいた。彼はオークランドに出向いてビーンにデータの使い方についての教えを乞うなど懇意になった。さらには、アーセン・ヴェンゲルの補佐(スカウト)をしていて、2005年にトッテナム・ホットスパーのフットボール・ディレクターに就任するダミアン・コモッリともここで出会っている。
コモッリのスパーズでの3年間は、データ革命初期の苦闘の記録でもある。英国のフットボール界は、いつだって教育された人間を疑いの目をもって見てきた。プロ経験のないフランス人がエクセルの表を片手に何を言おうと、説得するのは簡単ではなかった。実際、ルカ・モドリッチ、ディミタール・ベルバトフ、エウレーリョ・ゴメス、そして当時17歳のギャレス・ベイルを連れて来はしたが、やがて自身はクラブを追われている。
こうした例は、現場の監督自身がデータを信用したクラブ(アーセナルやボルトン)によってこの革命がリードされたことを裏付けている。ボルトンが2004年に34歳になるギャリー・スピードを雇ったのも、「年をとり過ぎているとも言われたが、フィジカルのデータが若手に匹敵していたし長年安定したパフォーマンスをしていたから」とフレイグは語る。実際、彼は38歳までプレーした。
しかし、実際にデータを分析している本人たちは、データは選手に関する決断をサポートこそすれ、決定することはできないことを理解している。2004年にヴェンゲルがパトリック・ヴィエラの後継者を探していた時、ヨーロッパの他リーグのデータをあたり、当時マルセイユに所属していた無名のティーンエイジャーで、1試合に14km走るというマシュー・フラミニを発掘した。ヴェンゲルは、それだけでは足りないと考え、実際のフットボールができるのか、正しい方向に走っているのかをよく吟味した上で、格安でフラミニを獲得した。
逆に、数字でなく直感に頼ったクラブが苦しむケースも出始めている。2003年にレアル・マドリーはクロード・マケレレを1,700万ポンドでチェルシーに売った。これは控え目な30歳のディフェンシブ・ハーフには巨額だとみなされ、会長のフロレンティーノ・ペレスは「マケレレを懐かしく思うことはない。テクニックは平均でスピードも無い。相手に渡ったボールを奪うスキルも無いし、パスの9割はバックパスかサイドへのパスで、3メートル以上のパスなんて稀だ。若手がマケレレの記憶なんて一掃するさ」と言い放った。
ペレスの批評は完全に間違っていたわけではないが、レアルは大きな過ちを犯した。マケレレはチェルシーで素晴らしい5シーズンを過ごし、『マケレレ』という新たなポジションができたほどだった。もしレアルが数字を見ていたならば、何がマケレレを際立たせていたのかを知ることができていたかもしれない。フォードは「大抵の選手は、相手ゴールに向かう時に高負荷の運動をし、反対の選手は少ない。しかし、マケレレの場合、高負荷の運動をしている時間の84パーセントは相手ボールの時であり、この数字はチームの他のメンバーの倍だった」と説明してくれた。試合を見れば、マケレレを懐かしく思うはずだ。データをみれば、彼はそこにいたのだから。
2000年代も半ばにさしかかると、これまで重視されてきたデータが使い物にならないことが分かったりもしてくる。クラブが選手を評価するのに使っていたパス、タックル、走行キロ数などは、今ではテレビでもよく目にするが、ほとんど意味を成さない。フォードはかつてキロ数を追っていたことを思い出しながら、「総走行キロ数と勝利に相関があるかと言えば、答えはいつだってノーだ」と述べている。
同じことはタックル数にも言える。典型的におかしな例が、偉大なイタリア人ディフェンダー、パオロ・マルディーニのケースだ。フォードは「彼は2試合に1度しかタックルをしなかった」としょぼくれた様子で言ったが、つまりはポジショニングが素晴らしくて、タックルをする必要が無かったのだ。
サー・アレックス・ファーガソンが、2001年の8月にヤープ・スタムを突然ラツィオに放出したのは、当時発売されたスタムの自伝が原因ではないかと言われた。真実は自伝が原因でなく、タックル数の減少というデータにも端を発していた。タックル数が減っていたため、当時29歳のスタムは衰え始めていると判断され、売られた。しかし、ファーガソンは、それが誤っていたことを後に認めている。実際のところスタム全く衰えてはおらず、ファーガソンは誤ったデータを分析していたことになる。イタリアでの数年間の素晴らしい活躍はそれを証明するものだ。それでもこの事例は、いかに移籍がデータによって決まってしまうものかを端的に語っていよう。
フォードは「ボルトンでは多くのミーティングに出た。それをいま思い返してみると『うわ、無関係なデータでチームを壊してたものだ』と思う。もっと重要なものに目を向けているべきだった」と回顧している。
同じことがまた起こり始めていて、膨大な統計が着目すべき数字を見えにくくするケースもある。しかし、統計はフットボールの世界の共通言語についての論議を呼ぶこともある。例えば、多くのクラブは総走行距離の代わりにトップスピードで走った距離に着目している。2008年に、ACミランでアスレチック・コーチを務めるダニエレ・トニャチーニは「スプリント回数と勝利には相関がある」と私に語ってくれた。
フレイグが選手の高負荷での結果を重視するのもこのためだ。彼は、「このデータは会社によって解釈が異なる。しかし、これは究極的には秒速7メートルに到達する能力を考慮していれば、ユベントスは1999年にアンリをアーセナルに売る過ちは犯していなかった。アンリにとって、秒速7メートルはお手のもの、走ればいつだってそのスピードに達していた」と語る。同様に大事なのは、繰り返しスプリントを行う能力であり、シティはカルロス・テヴェスにはこれを90分以上にわたってやれると分析している。
昨年の秋に新たに統計を重視するクラブとなったのが、リバプールだ。ボストン・レッドソックスのオーナーであるジョン・ヘンリーは、2002年にビリー・ビーンを雇おうとしたことがあるくらいだが、彼はリバプールを手中に収めると、さっそくビーンの盟友とも言えるコモッリを雇い、「サッカー版マネーボール」をさせようとしている。
アンフィールドに職を得たコモッリは、しばしば5,000キロの彼方にいるマネーボールの父と会話を交わしている。ビーンに言わせれば、「あいつ(コモッリ)にはいつでも電話できるし、メールを送れば向こうが夜中の2時だって起きている。そして返事の中では『いまアスレチックスの試合観てるよ』と言ってくる。彼はPCで観れるからなんだが、要するにコイツは眠らないんだ」ということらしい。コモッリはリバプールで大きな力を持っていて、アンディ・キャロルとルイス・スアレスを合計6,000万ポンドで獲得したのも、データに導き出された結論だという。
アスレチックスでディレクターを務めるファハーン・ザイディはMITの経済学の学位を持つが、彼は野球で起きたデータ革命がもたらしたものを理解しており、同じことがサッカーに起こると考えている。「野球の世界でも、10~15年前には考えもしなかった方法で選手を分析している」
古代の戦いにおいても、アスリートたちに最後に復讐をしたのはオタクたちであった。

この6月17日付の記事のテーマは、フットボール界において、データが果たす役割がいかに大きくなってきたかについて。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・シティの練習場を訪れた時に、パフォーマンス分析のトップであるギャビン・フレイグに会った。彼の名前を聞いたことがある人などいないだろうが、彼はフットボール界におけるデータ革命の第一人者である。人々の視線に触れることはないが、こうしたデータは、クラブの決定、特に誰を買い、誰を売るのかという決断に大きな影響を与えている。
この専門チームの手法はさながら投資銀行であるが、シティはプレミアリーグに所属する全選手のデータを獲得している。フレイグは「中盤のアタッカーの獲得を考えているとしたら、どのMFが80%以上のパス成功率を持つか、簡単に調べられる」と語る。検索の結果はどうか。スティーブン・ジェラードやセスク・ファブレガスはデータが無くとも容易に想定できるが、ケヴィン・ノーランという意外な顔も出てくるのだ。これだけですぐに契約しようとは思わないだろうが、注視しようという気にはなるだろう。
他にもフレイグは、「トップ4はアタッキング・サードでのパス成功率が高い。カルロス・デヴェス、ダヴィド・シルヴァ、アダム・ジョンソン、そしてヤヤ・トゥーレの獲得後、直近の半年だけでもシティのこの値は7.7%改善も改善した」と述べている。ちなみに、シルヴァは誰よりもこの値が高い。ただし、同時にフレイグは、必ずしもデータで選手獲得が加速したわけでもない、と念を押してもいる。
PCの到来以来、データを選手の判断に使おうと試みるパイオニアは何人かいたが、それはやがてアーセナルで指揮を執る当時ASモナコのアーセン・ヴェンゲルや、ディナモ・キエフのヴァレリ・ロバノフスキといった監督たちだ。経済学の学位を持つヴェンゲルは、モナコ時代から友人が開発したTop Scoreというシステムを愛用しており、試合の翌朝はほぼ中毒状態で分析をし、エクセルにまとめていた。例えば、2002年にデニス・ベルカンプを試合終盤で交代させるようになり、これに不満を表した時のことをベルカンプはこう振り返っている。「ヴェンゲルは『見ろデニス、70分以降、君の走る距離は短くなり、スピードも落ちているだろう』って言うんだ。彼はフットボールの教授だよ」
ウェストハムの監督に就任するサム・アラーダイスは、その新石器時代的な見かけによらずデータ重視だ。アラーダイスは、選手としてフロリダのタンパ・ベイで1年間プレーしてたことがあり、ここでアメリカのスポーツがいかに科学とデータを活用しているかに魅了された。1999年にボルトンの監督になった際、彼はベストな選手を獲得することはできなかったが、良い統計専門家たちを雇った。そこでは、「1試合の間にボールはチーム間を試合に約400回行き来する」ということが分かった、とアラーダイスのもとでフットボールの分析を始め、現在はチェルシーで辣腕をふるうマイク・フォードは語る。これを受けてアラーダイスは、攻守の切替えの早さに厳格になり、ボールを失ったらすぐにディフェンスのポジションにつくことを強く求めるようになった。
より具体的な例としては、統計を分析した結果、アラーダイスはより簡単にゴールする方法に行き着いた。コーナー、スローイン、フリーキックなどのセットプレーである。同じくアラーダイスの門下生だったフレイグはボルトン時代を思い返し、「当時のボルトンはゴールの45~50%をセットプレーであげていた。リーグ平均は3分の1くらいなのに対してね。ディフェンダーがロングスローをクリアしたら、ボールはどこに行くか。我々はそれを分析して、そこに人を置いたんだ」と語っている。
2003年に出版されたマイケル・ルイスの『マネーボール』は、フットボール界のデータ革命をより推し進めることになった。これは、メジャーリーグのオークランド・アスレチックスのGM、ビリー・ビーンが統計を用いた新たな選手評価手法を描いたものだ。リバプールの新たなオーナーになった、ジョン・ヘンリーが所有するボストン・レッドソックスもこのメソッドを参考に2度ワールドシリーズを制した。
前出のマイク・フォード(元ボルトン、現チェルシーのデータ分析担当)は、ビーンの出身地であるサンディエゴで学んでいた。彼はオークランドに出向いてビーンにデータの使い方についての教えを乞うなど懇意になった。さらには、アーセン・ヴェンゲルの補佐(スカウト)をしていて、2005年にトッテナム・ホットスパーのフットボール・ディレクターに就任するダミアン・コモッリともここで出会っている。
コモッリのスパーズでの3年間は、データ革命初期の苦闘の記録でもある。英国のフットボール界は、いつだって教育された人間を疑いの目をもって見てきた。プロ経験のないフランス人がエクセルの表を片手に何を言おうと、説得するのは簡単ではなかった。実際、ルカ・モドリッチ、ディミタール・ベルバトフ、エウレーリョ・ゴメス、そして当時17歳のギャレス・ベイルを連れて来はしたが、やがて自身はクラブを追われている。
こうした例は、現場の監督自身がデータを信用したクラブ(アーセナルやボルトン)によってこの革命がリードされたことを裏付けている。ボルトンが2004年に34歳になるギャリー・スピードを雇ったのも、「年をとり過ぎているとも言われたが、フィジカルのデータが若手に匹敵していたし長年安定したパフォーマンスをしていたから」とフレイグは語る。実際、彼は38歳までプレーした。
しかし、実際にデータを分析している本人たちは、データは選手に関する決断をサポートこそすれ、決定することはできないことを理解している。2004年にヴェンゲルがパトリック・ヴィエラの後継者を探していた時、ヨーロッパの他リーグのデータをあたり、当時マルセイユに所属していた無名のティーンエイジャーで、1試合に14km走るというマシュー・フラミニを発掘した。ヴェンゲルは、それだけでは足りないと考え、実際のフットボールができるのか、正しい方向に走っているのかをよく吟味した上で、格安でフラミニを獲得した。
逆に、数字でなく直感に頼ったクラブが苦しむケースも出始めている。2003年にレアル・マドリーはクロード・マケレレを1,700万ポンドでチェルシーに売った。これは控え目な30歳のディフェンシブ・ハーフには巨額だとみなされ、会長のフロレンティーノ・ペレスは「マケレレを懐かしく思うことはない。テクニックは平均でスピードも無い。相手に渡ったボールを奪うスキルも無いし、パスの9割はバックパスかサイドへのパスで、3メートル以上のパスなんて稀だ。若手がマケレレの記憶なんて一掃するさ」と言い放った。
ペレスの批評は完全に間違っていたわけではないが、レアルは大きな過ちを犯した。マケレレはチェルシーで素晴らしい5シーズンを過ごし、『マケレレ』という新たなポジションができたほどだった。もしレアルが数字を見ていたならば、何がマケレレを際立たせていたのかを知ることができていたかもしれない。フォードは「大抵の選手は、相手ゴールに向かう時に高負荷の運動をし、反対の選手は少ない。しかし、マケレレの場合、高負荷の運動をしている時間の84パーセントは相手ボールの時であり、この数字はチームの他のメンバーの倍だった」と説明してくれた。試合を見れば、マケレレを懐かしく思うはずだ。データをみれば、彼はそこにいたのだから。
2000年代も半ばにさしかかると、これまで重視されてきたデータが使い物にならないことが分かったりもしてくる。クラブが選手を評価するのに使っていたパス、タックル、走行キロ数などは、今ではテレビでもよく目にするが、ほとんど意味を成さない。フォードはかつてキロ数を追っていたことを思い出しながら、「総走行キロ数と勝利に相関があるかと言えば、答えはいつだってノーだ」と述べている。
同じことはタックル数にも言える。典型的におかしな例が、偉大なイタリア人ディフェンダー、パオロ・マルディーニのケースだ。フォードは「彼は2試合に1度しかタックルをしなかった」としょぼくれた様子で言ったが、つまりはポジショニングが素晴らしくて、タックルをする必要が無かったのだ。
サー・アレックス・ファーガソンが、2001年の8月にヤープ・スタムを突然ラツィオに放出したのは、当時発売されたスタムの自伝が原因ではないかと言われた。真実は自伝が原因でなく、タックル数の減少というデータにも端を発していた。タックル数が減っていたため、当時29歳のスタムは衰え始めていると判断され、売られた。しかし、ファーガソンは、それが誤っていたことを後に認めている。実際のところスタム全く衰えてはおらず、ファーガソンは誤ったデータを分析していたことになる。イタリアでの数年間の素晴らしい活躍はそれを証明するものだ。それでもこの事例は、いかに移籍がデータによって決まってしまうものかを端的に語っていよう。
フォードは「ボルトンでは多くのミーティングに出た。それをいま思い返してみると『うわ、無関係なデータでチームを壊してたものだ』と思う。もっと重要なものに目を向けているべきだった」と回顧している。
同じことがまた起こり始めていて、膨大な統計が着目すべき数字を見えにくくするケースもある。しかし、統計はフットボールの世界の共通言語についての論議を呼ぶこともある。例えば、多くのクラブは総走行距離の代わりにトップスピードで走った距離に着目している。2008年に、ACミランでアスレチック・コーチを務めるダニエレ・トニャチーニは「スプリント回数と勝利には相関がある」と私に語ってくれた。
フレイグが選手の高負荷での結果を重視するのもこのためだ。彼は、「このデータは会社によって解釈が異なる。しかし、これは究極的には秒速7メートルに到達する能力を考慮していれば、ユベントスは1999年にアンリをアーセナルに売る過ちは犯していなかった。アンリにとって、秒速7メートルはお手のもの、走ればいつだってそのスピードに達していた」と語る。同様に大事なのは、繰り返しスプリントを行う能力であり、シティはカルロス・テヴェスにはこれを90分以上にわたってやれると分析している。
昨年の秋に新たに統計を重視するクラブとなったのが、リバプールだ。ボストン・レッドソックスのオーナーであるジョン・ヘンリーは、2002年にビリー・ビーンを雇おうとしたことがあるくらいだが、彼はリバプールを手中に収めると、さっそくビーンの盟友とも言えるコモッリを雇い、「サッカー版マネーボール」をさせようとしている。
アンフィールドに職を得たコモッリは、しばしば5,000キロの彼方にいるマネーボールの父と会話を交わしている。ビーンに言わせれば、「あいつ(コモッリ)にはいつでも電話できるし、メールを送れば向こうが夜中の2時だって起きている。そして返事の中では『いまアスレチックスの試合観てるよ』と言ってくる。彼はPCで観れるからなんだが、要するにコイツは眠らないんだ」ということらしい。コモッリはリバプールで大きな力を持っていて、アンディ・キャロルとルイス・スアレスを合計6,000万ポンドで獲得したのも、データに導き出された結論だという。
アスレチックスでディレクターを務めるファハーン・ザイディはMITの経済学の学位を持つが、彼は野球で起きたデータ革命がもたらしたものを理解しており、同じことがサッカーに起こると考えている。「野球の世界でも、10~15年前には考えもしなかった方法で選手を分析している」
古代の戦いにおいても、アスリートたちに最後に復讐をしたのはオタクたちであった。
Saturday, June 11, 2011
イングリッシュ・プレミアムとリバプールの補強
ジョーダン・ヘンダーソンやフィル・ジョーンズの移籍金高騰は、”イングリッシュ・プレミアム”とも言われ、FIFAによる自国重視を促す決定が、イングランド籍の若手選手の価格高騰を招いている、と「ガーディアン」紙のマット・スコット記者は指摘している。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・ユナイテッドとリバプールは、FIFAとUEFAの新ルールによって、フィル・ジョーンズとジョーダン・ヘンダーソンへのオファー価格を上げることを強いられた。10年も前であれば、2人を獲得するのにかかった1,600万ポンド、2,000万ポンドという値段は記録破りであったはずだが、今では合計3,600万ポンドでイングランド代表キャップはわずかにひとつだ。
イングランドでは、若手イングランド人選手にはプレミアムが付く。FIFAが「18人のメンバーのうち、9人は自国で育った選手でなければならない」というシステムを適用しようとしているから、というのがその説明だ。FIFAでは、この案が賛成で採決され、今はかつてのFAの会長であるジェフ・トンプソンが各国協会やクラブ協会等と話し合いを進めている。トンプソンは、「6+5コンセプト」(メンバーのうち6人は自国出身の選手を送り出す)をベースに解決策を見出そうとしていたが、これは各クラブの反対、もっと言えば、国籍で選手を規制することを認めないEUの反対で日の目を見なかった。EUとの妥協案は、「25名の登録メンバーのうち、8名を自国育成の選手とする」というものだった。
現在までのところは、FIFAによる若手選手育成のための規制は、各クラブの選手選考に大きなインパクトをもたらしてはいないが、FIFAの考える通りに議論が進むならば影響が出始めるし、数年後には運用される見込みだ。ヘンダーソンやジョーンズの値段が高騰するのも道理だろう。
次に大金でオールド・トラフォードに移るのはアシュリー・ヤングになるだろう(彼は既に25歳で15キャップを持つが)。ヤングがそれを真剣に考えているということは、今日予定されていた結婚式をキャンセルしたことからも窺い知れる。おそらく、今頃メディカル・チェックに臨んでいるのだろう。
++++
このヘンダーソンの移籍に関連して、同じ「ガーディアン」紙のアンディ・ハンター記者もリバプールの将来的な補強ポリシーが見て取れる、と指摘している。
++(以下、要訳)++
6カ月足らずの間に、5,500万ポンドもの大金が、アンディ・キャロルとジョーダン・ヘンダーソンを連れてくるために費やされた。新オーナーのフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)とフットボール・ディレクターのダミアン・コモッリの下で、高価なギャンブルをやめて原石の発掘に動き出そうとしている。
ヘンダーソンの2,000万ポンドという値段は、もうひとつの入札者であるマンチェスター・ユナイテッドには支払える額でなかったが、リバプールはフィル・ジョーンズ、アシュリー・ヤングの獲得でユナイテッドに対して劣勢である以上、支払う必要があった。
リバプールは、FSGがターゲットとする新進気鋭のイングランド人選手を引き付けるチャンピオンズリーグを戦うことができない。ジョー・コール(週給10万ポンド)やミラン・ヨヴァノビッチ(週給12万ポンド)に支払うサラリーを見れば、良い給料を払うことができることは分かるが、移籍マーケットにおいて優先権を持つクラブでないのだ。サー・アレックス・ファーガソンが言うように、80年代はリバプールの時代、今はマンチェスター・ユナイテッドの時代であり、ジョーンズやヤングの選択もそれを証明している。
FSGには、リバプールの将来について明確な戦略があるが、選手が獲得可能な時には移籍金や給料について吟味している余裕はない。近年は、この点についての曖昧なスタンスがクラブに大きなダメージを与えてきた。元監督のラファエル・ベニテスが、ネマヤ・ヴィディッチやフローラン・マルーダへのオファーを用意しながら、より高額な移籍金でそれぞれユナイテッドやチェルシーに加わっていくのを見て、当時のオーナーに対して指摘していた点でもある。
少なくとも、トム・ヒックスとジョージ・ジレットによる負債にまみれた時代を抜け、今のリバプールはFSGのもとで投資をしていく立場にある。イングランド代表のセンター・フォワードと中盤を少なくとも10年早く5,500万ポンドで獲得する方が、投資家からの感謝されるより遥かにマシなのだ。
ヘンダーソン、キャロル、そしてわずか半年で2,280万ポンドの投資の健全さを証明したウルグアイ人ストライカーのルイス・スアレスがアンフィールドにいることは、リバプールが一貫してクラブを再建し、チャンピオンズリーグの舞台に戻る考えをもっていることを示している。ジョーンズやヤングを獲得できないことは、ケニー・ダルグリッシュにとっては後退を意味するが、彼にはバーミンガム・シティのスコット・ダンやアストン・ヴィラのスチュワート・ダウニング、イプスウィッチのコナー・ウィッカム、ブラックプールのチャーリー・アダムといった代替案があり、オーナーたちもこれを支持する姿勢を見せている。
アダムへの関心が再燃する以前から、リバプールの中盤は人員過剰気味だ。クリスティアン・ポウルセンはチームへの残留を希望しているし、ユヴェントスからの600万ポンドでのアルベルト・アクィラーニへのオファーも、真剣には検討されていない。アクィラーニの代理人は、ミランからのアプローチについても否定している。リバプールは、この夏にこの両選手だけでなく多くの選手を売る必要があるだろう。それでも、こうした選手の売却が決まる前に2,000万ポンド級の選手を獲得できるようになったことが、リバプールにとってはひとつの前進なのだと言える。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・ユナイテッドとリバプールは、FIFAとUEFAの新ルールによって、フィル・ジョーンズとジョーダン・ヘンダーソンへのオファー価格を上げることを強いられた。10年も前であれば、2人を獲得するのにかかった1,600万ポンド、2,000万ポンドという値段は記録破りであったはずだが、今では合計3,600万ポンドでイングランド代表キャップはわずかにひとつだ。
イングランドでは、若手イングランド人選手にはプレミアムが付く。FIFAが「18人のメンバーのうち、9人は自国で育った選手でなければならない」というシステムを適用しようとしているから、というのがその説明だ。FIFAでは、この案が賛成で採決され、今はかつてのFAの会長であるジェフ・トンプソンが各国協会やクラブ協会等と話し合いを進めている。トンプソンは、「6+5コンセプト」(メンバーのうち6人は自国出身の選手を送り出す)をベースに解決策を見出そうとしていたが、これは各クラブの反対、もっと言えば、国籍で選手を規制することを認めないEUの反対で日の目を見なかった。EUとの妥協案は、「25名の登録メンバーのうち、8名を自国育成の選手とする」というものだった。
現在までのところは、FIFAによる若手選手育成のための規制は、各クラブの選手選考に大きなインパクトをもたらしてはいないが、FIFAの考える通りに議論が進むならば影響が出始めるし、数年後には運用される見込みだ。ヘンダーソンやジョーンズの値段が高騰するのも道理だろう。
次に大金でオールド・トラフォードに移るのはアシュリー・ヤングになるだろう(彼は既に25歳で15キャップを持つが)。ヤングがそれを真剣に考えているということは、今日予定されていた結婚式をキャンセルしたことからも窺い知れる。おそらく、今頃メディカル・チェックに臨んでいるのだろう。
++++
このヘンダーソンの移籍に関連して、同じ「ガーディアン」紙のアンディ・ハンター記者もリバプールの将来的な補強ポリシーが見て取れる、と指摘している。
++(以下、要訳)++
6カ月足らずの間に、5,500万ポンドもの大金が、アンディ・キャロルとジョーダン・ヘンダーソンを連れてくるために費やされた。新オーナーのフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)とフットボール・ディレクターのダミアン・コモッリの下で、高価なギャンブルをやめて原石の発掘に動き出そうとしている。
ヘンダーソンの2,000万ポンドという値段は、もうひとつの入札者であるマンチェスター・ユナイテッドには支払える額でなかったが、リバプールはフィル・ジョーンズ、アシュリー・ヤングの獲得でユナイテッドに対して劣勢である以上、支払う必要があった。
リバプールは、FSGがターゲットとする新進気鋭のイングランド人選手を引き付けるチャンピオンズリーグを戦うことができない。ジョー・コール(週給10万ポンド)やミラン・ヨヴァノビッチ(週給12万ポンド)に支払うサラリーを見れば、良い給料を払うことができることは分かるが、移籍マーケットにおいて優先権を持つクラブでないのだ。サー・アレックス・ファーガソンが言うように、80年代はリバプールの時代、今はマンチェスター・ユナイテッドの時代であり、ジョーンズやヤングの選択もそれを証明している。
FSGには、リバプールの将来について明確な戦略があるが、選手が獲得可能な時には移籍金や給料について吟味している余裕はない。近年は、この点についての曖昧なスタンスがクラブに大きなダメージを与えてきた。元監督のラファエル・ベニテスが、ネマヤ・ヴィディッチやフローラン・マルーダへのオファーを用意しながら、より高額な移籍金でそれぞれユナイテッドやチェルシーに加わっていくのを見て、当時のオーナーに対して指摘していた点でもある。
少なくとも、トム・ヒックスとジョージ・ジレットによる負債にまみれた時代を抜け、今のリバプールはFSGのもとで投資をしていく立場にある。イングランド代表のセンター・フォワードと中盤を少なくとも10年早く5,500万ポンドで獲得する方が、投資家からの感謝されるより遥かにマシなのだ。
ヘンダーソン、キャロル、そしてわずか半年で2,280万ポンドの投資の健全さを証明したウルグアイ人ストライカーのルイス・スアレスがアンフィールドにいることは、リバプールが一貫してクラブを再建し、チャンピオンズリーグの舞台に戻る考えをもっていることを示している。ジョーンズやヤングを獲得できないことは、ケニー・ダルグリッシュにとっては後退を意味するが、彼にはバーミンガム・シティのスコット・ダンやアストン・ヴィラのスチュワート・ダウニング、イプスウィッチのコナー・ウィッカム、ブラックプールのチャーリー・アダムといった代替案があり、オーナーたちもこれを支持する姿勢を見せている。
アダムへの関心が再燃する以前から、リバプールの中盤は人員過剰気味だ。クリスティアン・ポウルセンはチームへの残留を希望しているし、ユヴェントスからの600万ポンドでのアルベルト・アクィラーニへのオファーも、真剣には検討されていない。アクィラーニの代理人は、ミランからのアプローチについても否定している。リバプールは、この夏にこの両選手だけでなく多くの選手を売る必要があるだろう。それでも、こうした選手の売却が決まる前に2,000万ポンド級の選手を獲得できるようになったことが、リバプールにとってはひとつの前進なのだと言える。
Subscribe to:
Posts (Atom)




