Friday, April 27, 2012

ダイブ撲滅への道は険しきもの

少し前の記事なのだけど、ギャリー・ネヴィルのダイブに対する論考。論争の的にもなった、アシュリー・コールのアストン・ヴィラ戦でのダイブ疑惑に先んじるもので、恐らくイングランド人であるアンディ・キャロルがニューカッスル戦であからさまなダイブをしたあたりに、ネヴィルも思うところがあったのだと思う。

この記事が出て以降、アーセン・ヴェンゲルがネヴィルの論旨("海外からの影響でイングランド人も変わってきてしまった") に同調するコメントを出したり、メディアの中でも昨今のダイブ連発にウンザリする論調の記事がポツポツと出てきた。

そんな流れがあったもんで、そこはいっちょ、元をたどって「デイリーメール」に出ていたネヴィルのエッセイを復習しようと思った次第。




++(以下、要訳)++

僕のプロのフットボール選手としての教育の礎が始まったのは7歳の頃だったと思う。僕はマンチェスターの地域リーグでプレーしていて、何に対してでも叩くことを教え込まれたタフな地域の連中とプレーしていた。

そのイングランド北部の文化では、誰に対しても傷を見せるなと叩きこまれる。タッチラインにいる親父やコーチは立ち上がってプレーしろと叫ぶし、そうしてタックルをされても痛みを見せたり泣いたりすることのない男へと成長していく、そういうものだった。

そうした時代には、ダイブをしたり、チャージを受けた時に倒れるなんてことは夢にも思わなかった。弱っちい奴、とレッテルを貼られるくらいなら、ケガした方がマシだった。小学校時代にマンチェスター・ユナイテッドに行くと、コーチはノビー・スタイルス、ブライアン・キッド、それにエリック・ハリソンだった。ノビーの評判は言うに及ばず、エリックもハリファクスやハートプール、バロウといったクラブで500試合以上プレーしたということから理解できるだろう。だから、よりタフであれ、っていうカルチャーは一層僕らに擦り込まれて行くことになった。

それでもティーンエイジャーに なると、僕らはヨーロッパのトーナメントに出るようになって、インテルやバルセロナ、アヤックスといった偉大なクラブと対戦するようになった。試合はごく普通に始まるけど、そこで普通のタックルをすると相手は激しい苦痛で地面に身悶えするのさ。時に自分は相手に触ったとさえ思ってなくてもね。そして、次に気が付くと、スイス人のレフェリーが僕のもとにやってきて、「もうダメ!もうダメ!」と言いながらイエローカードを出すのさ。そこに立ちつくして「アイツら何してくれんだ…?」って思うわけさ。

ウチにはポール・スコールズとニッキー・バットが中盤にいたけど、相手のイタリア人やスペイン人のコーチたちや親御さんたちは、クレイ兄弟(伝説のギャング)か何かを見るようなリアクションさ。どんなチャレンジをしても、ベンチ全体が怒り爆発になってしまう。

僕たちもみんな怒ってたさ。 フラストレーションが溜まって、倒れてる相手を立たせに行くだろ?すると相手は突然、こっちが向こうを殴ったかのようなリアクション。そうしてイエローカードではなく、レッドカードになる。こうなるとチーム全体が怒り心頭さ。純粋、かつシンプルに欺きだよね。もしくは僕らがそう思っただけ。しかし、エリックにブライアン、ノビーは、「お前らいつになったら学ぶんだ?」と言うだけだった。

ほどなく、僕らはみなユナイテッドの一軍でプレーするようになった。そこが本当の「教育」が始まったところだった。1995年から99年の間、僕らは初めてのチャンピオンズリーグを制覇し、戦術的、技術的な学習をかなりした。しかし、それと同時に、このゲームの他の側面についても学んだのだ。時間を遅らせる、ゲームのテンポを落ち着かせる、戦術的なファウル、フリーキックを貰う。そういった側面だ。これらは、少しずつ我々に影を差し始めた。この流れが変わることは無い。これがグローバルなフットボールの流儀で、ベリー出身のギャリー・ネヴィルがどう考えようと、関係ないのだ。これがトップレベルでのフットボール、というわけだ。

そうして僕らの考えは少しずつ変わって行った。モラルが弱まったと言う者もいるだろう。確かに、自分が育ってきた価値観が試されていた。そして、ヨーロッパの舞台で最初の15分で ファウルをされれば、恐らく倒れてフィジオを呼び、チームに休息をもたらすだろう。コーナーキックの時にファーポストで相手フォワードの手が自分を抑えるのを感じれば、確実にフリーキックがもらえるように、やはり倒れるだろう。フォワードたちもファウルをされれば、レフェリーに気付いてもらえるように倒れるはずだ。

やがて考えるようになる。ロベール・ピレスが僕に向かって走ってきている。僕は「足を出すなよ。足を出せば、彼は何らかの形で倒れるだろう。もしそうなれば、ロッカルームに帰った時に監督は『ギャリー、運が悪かったな。お前はそこに縫い付けられちまってたからな』とは言わないだろう。彼は僕をナイーブだと言って、バカなチャレンジをしたと言って糾弾するはずだ」 と考え始めた。

こういう時こそ、僕のようなベテラン選手が若い選手にエリア内でファウルをされてもプレーを続けろ、と言うべきなのだろう。これが、ダイブなんかしたら恥ずかしくて死んだ方がマシ、と考えてた7歳の自分からの変化なのだ。だから、アンディ・キャロルがニューカッスル戦でダイブをした時は笑うしかなかった。簡単に倒れる、という文化からは守られてきたイングランドの伝統的なセンターフォワードが、突如として賢くなろうとして訳の分からないことをした典型例だ。

この出来事は、PFA会長のクラーク・カーライルからダイブについてのもう1つの論争を呼び込んだ。彼は、レフェリーたちはこれを絶対に許容すべきでなく、やった者には警告、退場を宣告すべき、と徹底的な取り締まりを主張した。コトがそれだけ簡単ならば良いと思う。ここには複雑さという要因が絡んでいて、簡単に「取り締まり」なんて言うことはできないのだ。

我々イングランドでのプレーも変わった。今ではグローバルな流儀に影響され、プレースタイルも変わった。今週末先発する選手のうち、イングランド人は35%程度だろう。そして、かつてあのイタリア人の両親たちがニッキー・バットにカッカしていたように、我々も別の文化には別の価値感があることを受け入れなければならないのだ。僕がこれをクリスティアーノ・ロナウドに話したとしたら、彼はサイドバックが彼に横からのタックルを仕掛けてきたなら、それはダイブよりも汚いと信じている、と言うだろう。 彼はケガを避けるために飛び、タックルに乗ることを選択するはずだ。彼が言うことには一理ある。「弱っちい」と言うことはできるが、ラテンの文化では、ダイブではなく、そうしたタックルこそが恥ずべきものなのだ。

ラテンの選手だけではない。リーグで最もエキサイティングな選手であるギャレス・ベイルも最近こんなことを言っている。「人々が、僕がダイブをしていると言いたければ言えば良いさ。でも僕は逃れようとしてるんだ。自分に向かって飛んで来る奴がいて、そのままそこに突っ立ってたら消されるだけさ」

もう文化は変わってしまった。今ではファウルの75%で選手は倒れていると思う。 立っていることができるのに、ファウルをされた、ということをレフェリーにアピールしたいがために倒れている、という意味だ。

今シーズンの初めに、ディミタール・ベルバトフがクリス・サンバのシャツを引っ張ると、サンバは地面に倒れた。しかし、サンバをシャツを引っ張るだけで本気で倒そうと思うなら、20トントラックが必要なはずだ。しかし、サンバもズルをしているわけではない - 彼はファウルをされたのだ。となると、どうしたらダイブの徹底取り締まりなどできるのだろうか?

先日、スウォンジーのニール・テイラーがトッテナムのペナルティ・エリアに侵入した時、ウィリアム・ギャラスはテイラーの肩に手を当てて、後ろに引き戻そうとした。テイラーはそのまま進み、PKを得ることは無かった。しかし、ルールのどこにも相手を引っ張って良いとは書いていない。ちょっと触るだけなら良いとも言っていない。あれはファウルだったのだ。

ここまで来ると、モラルが何なのか分からなくなってくる。僕自身の価値観も大きく変わってきた。そして、それを分析してみれば、時間をかけて僕は他の価値観を受け入れてきたことが分かる。僕たちは、国際的な考え方にオープンな、マルチ文化の中に生きている。20年前に僕に、ドライブスルーでラテを買って、カフェの外で飲んでるなんて言ったら大笑いだったと思うし、そもそもラテなんて知らなかった。

同じようにフットボールも変わっていて、お偉方もイングランドのアティテュードをレフェリングに組み入れようとはもはや思わないだろう。 皆がどうしてダイブに怒り狂うかは理解できるよ。僕も7歳の頃の純真さが失われて悲しい気持ちはある。ある意味、そうした時代の純粋さが僕は好きだ。でも、それはもう僕らが今プレーするフットボールではないのだ。

++++

残念だけど、その通りなんだろうな。少し前だと、加入間もなかったドログバにチェルシーのイングランド人の面々、テリーやランパードが「お前、2度とすんなよ」と後で詰め寄った、なんてエピソードも洩れ聞こえてきてたけど、今じゃキャロルのあのダイブ。確かにイングランドは外の血を取り入れるのはいつでも早かったね。


(オマケ)ユーロ2004の時の「ガーディアン」紙のCM。 この頃はまだ他国への皮肉だった・・・。

 

Tuesday, April 24, 2012

ファイナル進出のためにチェルシーがカンプノウですべきこと

1stレグでの戦いぶりからも、チェルシーが引いて守ってバルセロナが圧倒的なボール支配とともに押し込む、という図式を誰もが予想している2ndレグ。それでもバルセロナのホームカンプノウでの一戦となれば、それも一筋縄ではいかないはず。

そんな状況で、何を念頭にチェルシーは戦うべきか、についてプレミアのご意見番、アラン・ハンセンが「テレグラフ」紙に語った。


++(以下、要訳)++ 

アラン・ハンセンが、チャンピオンズリーグ準決勝の第2戦に向け、チェルシーが守るべき5つのポイントを挙げている。


マスチェラーノを狙え 

バルセロナには守備面で脆さがあり、私は長い間ハヴィエル・マスチェラーノがディフェンスラインの弱点だと考えてきた。 彼は中盤の選手で5フィート8インチしかないが、バルセロナは素晴らしいチームであり、それでもやりくり出来てきた。

リバプールにいた頃、マスチェラーノは直感的な飛び込みでしばしばボールを奪っていて、その能力は今でも高いが、センターバックのポジションでそうプレーすることはできない。 

チェルシーの1stレグでのゴールはそこがポイントだった。マスチェラーノの守備のノウハウの欠如が、カルレス・プジョルとの連携の悪さを生み、それがディディエ・ドログバのゴールにつながるラミレスのクロスを許してしまったのだ。

結果的には、マスチェラーノは自分のポジションに戻るために素早く調節することができなかったのだ。彼は最初のスローインの場面でもブラニスラフ・イヴァノビッチへの対応を誤り、先制ゴールを献上しそうだった。

彼の存在が、バルセロナの4バックに安心感をもたらすことはないだろう。 また、彼が直感的なタイプであるがために、PKを与える可能性が高いディフェンダーだとも言える。火曜のチェルシーは、彼を標的にすれば良い結果を得られるかもしれない。


空中戦を仕掛けろ

バルセロナは空中戦で脆い。これは弱点の中でもカギとなるもので、チェルシーは積極的に突くべきだ。単純に、バルセロナにはこれに適切に対処する方法がないのだ。

パス回しの早さで守備に苦しんだのなら、守備を深い位置に敷くこと、18ヤードのボックス近くまでラインを下げることで対処できるだろう。

しかし、空中戦につながるクロスやセットプレーに敏感になったとして、それらに対する欠陥をカバーする方法などないのだ。

もしペップ・グァルディオラがジェラール・ピケを復帰させるなら、それは改善だろう。彼はマスチェラーノよりもすぐれたディフェンダーだからで、重要なのは彼が6フィートを超える長身で、高さをもたらすことが可能なことだ。

しかし、ピケが入っても高さには不足があり、その弱点があってもヨーロッパを圧倒出来てしまうというのが、彼らがどんなチームであるのかを象徴している。

土曜のカンプノウで、レアル・マドリッドが2-1で勝った試合、その先制点はバルサの空中戦での弱さを際立たせたし、チェルシーは同じ方法でゴールを奪えるかもしれない。

あらゆるコーナーキック、フリーキック、スローインが、チェルシーにバルセロナの弱点を突く機会を与えるだろう。そして、残り20分になっても決着がついていなければ、それが彼らの武器となることに気づくはずだ。


形を維持すること

ポジション面での規律は、メッシへの対応と並んで決定的に重要だ。バルセロナを相手にする時に基本原則とも言えるが、口で言うのは簡単でも実行するのは難しい。

ジョゼ・モウリーニョのインター・ミランが2010年の準決勝でバルセロナを破った時、戦術は素晴らしいほどに機能した。しかし、同じことを翌年レアル・マドリッドでやろうとした時には失敗に終わった。早々に先制点を許したからだ。

レアルは追いかける展開となり、血祭りにあげられた。クリスティアーノ・ロナウドは前線で孤立してカンカンに怒るばかりだった。

単純に、チェルシーはボールを失ったらすぐにポジションに戻ることが求められる。これを先週は忠実に実行したが、同じことをカンプノウでさらに90分間やるのはより難しいことだ。それでも、すべてのフィールド・プレーヤーが可能な限り早くポジションに戻るというのは大事なことだ。

先週はそれがうまく行き、実際、3対3や4対4となった場面を私は思い出すことが出来ない。

戦術的には、ディ・マテオのさじ加減次第だ。チェルシーはイケイケでゴールを狙い、バルセロナが3点必要な場面を作りに行くことはできないが、90分間引きっ放しでは、やがてバルサに仕留められてしまうだろう。


メッシを自由にさせるな

リオネル・メッシの周りのスペースをつぶすこと。メッシにマンマークの選手を貼ることに意味はないし、ロベルト・ディ・マテオがそうしたいと思うとも考えられない。

しかし、先週水曜のスタンフォード・ブリッジでチェルシーが証明したのは、周りのスペースを消すことで、メッシの脅威は薄めることができるということだった。

彼は世界最高の選手で、彼がトップフォームにあるならばチェルシーにも止める術はほぼ無い。しかし、今の彼はベストの状態ではないし、望みはある。

バルセロナにスペースがあれば、世界のどのチームよりもボールを素早く動かすし、守備と中盤のラインの間でプレーさせれば、メッシ以上の選手はいない。

それでも1stレグでは、チェルシーは超規律ある動き(ultra-disciplined)をすることで彼の周りのスペースを埋め、メッシもバルセロナも試合を決めるようなチャンスを作り出すことはできなかった。

これはチェルシーの選手がボールを奪われると即座にポジションに戻っていたからだ。2、3秒の遅れもなくすぐに戻ることで、バルセロナとメッシは切り込むスペースを見つけることができなかった。


パフォーマンスを見せるべき守旧派

この夜は、ドログバとテリーのためにあり、チェルシーがファイナルに進出するためにある。チェルシーとしては、ディディエ・ドログバとジョン・テリーが先週と同様のプレーをすることが大事だ。

火曜の試合は、テリーのキャリアの中でも最大の大一番だろう。この6週間の彼のプレーは素晴らしく、彼が織りなすチェルシーの守備が試合の肝となる。

彼は常にディフェンス・ラインの位置を把握しているし、すべてを組織している。彼が先週バルセロナの一員であったなら、チェルシーにアドバンテージをもたらしたあの失点は生まれなかっただろう。

ドログバについては、ディ・マテオは膝の怪我が試合までに癒えることを祈っているだろう。彼の高さと強さは、先週そうだったように、相手ディフェンダーを弾き飛ばし、バルセロナにあらゆる種類の問題を引き起こすことができる。

彼が間に合わなければ、フェルナンド・トーレスを使うことになるだろうが、そこまでの自信を得ることはできないだろう。彼はもはや、かつてのようにディフェンダーを振り切ることができるようにも見えないし、ドログバのようなパワーも持ち合わせていない。

火曜の夜、バルセロナはおそらくゴールを決めるだろう。つまり、チェルシーもゴールを決める必要があるということだ。ドログバがいることで、チェルシーに対するその期待も持てるというものだ。

++++

元ディフェンダーらしく、守備の規律に論点が置かれてるけど、実際こういう展開になっちゃうのは仕方ないんだろうな。個人的には、こういう舞台でこそプレミアらしさとリーガらしさがぶつかって欲しいのだけど、程よく戦力が分散してるプレミアと、完全に二強に集中しちゃってるリーガとの対戦だと仕方ないのかな。っていうか、バルサだとこうなっちゃうのか。だとしたら、なおさら、レアル・マドリッドと対戦するチェルシーを見てみたい気もするけど。

Thursday, April 12, 2012

スパーズが失速した6つの理由

月曜の試合でノリッジにも敗れ、いよいよ失速の度合いが色濃くなってきたスパーズ。既に多くのメディアが失速の理由として、監督のハリー・レドナップが、ファビオ・カペッロの辞任によりイングランド代表の後任監督候補なってしまったことを挙げているが、他にどのような点が考えられるだろうか。「テレグラフ」紙のジェレミー・ウィルソン記者が6つのポイントに整理。


++(以下、要訳)++

トッテナム・ホットスパーは、プレミアリーグのここ8試合で僅かに1勝、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権確保に暗雲が立ちこみ始めている。ホワイト・ハート・レーンでは一体何がうまく行かなかったのだろうか?


不透明なハリー・レドナップの将来

ハリー・レドナップ本人は、トッテナムの失速とファビオ・カペッロのイングランド代表監督辞任が時を同じくしていることには何の関連もない、と頑として譲らない。正確なインパクトを定量化することはできないが、レドナップのカペッロの圧倒的な有力後任候補としての位置付けが、絶え間ない暗雲としてホワイト・ハート・レーンの上空にかかっていることに疑いの余地は無い。そして、フットボールの歴史が語るのは、選手たちは監督のいかなる種類の曖昧さにも前に向きに反応はしないということだ。トップチームのコーチングスタッフの将来もレドナップ次第であり、彼が何を言おうと、選手が将来を考える上で、監督がどうなのか、というのは切り離せない要素なのだ。ルカ・モドリッチは昨年の夏に出ていくことを考え、新たな契約がまとまったわけでもない。エマニュエル・アデバヨルのローンは夏に終わり、ギャレス・ベイルがヨーロッパのトップクラブから巨額オファーを受けるのは時間の問題だ。トッテナムは、自分たちとは関係のない場所での混乱によって困難な状況に置かれたが、彼らのシーズンが12マイル離れたウェンブリーでの突然の空位によって損なわれていることは、ますます明らかになってきている。


メンタルの強さ

トッテナムがエヴァートンに快勝し、マンチェスター・ユナイテッドに2ポイント差と迫った1月、フィル・ネヴィルはトッテナムがタイトル挑戦者に相応しいかを尋ねられた。3ヶ月後の今、彼の言葉はまさに予言だったように思える。「最大の試練は、そこまでの自信や自由を伴ってプレーすることができなくなる3月にやってくるだろう」ネヴィルはそう語っていた。「カギになるのは経験だと思うね。その段階で結果を絞り出せているかどうか、この質問には答え続けないとね」答は8試合で1勝という絶望的な流れだった。残り試合に向けてチームが一体感を取り戻せるか、が今の彼らへの精神面での試練だ。ニューカッスルには失うものがなく、チェルシーには他を大きく上回る経験値がある中、トッテナムのチームとしてのメンタリティには疑問の余地がまだある。


決定力を欠くストライカーたち

ストライカーたちのゴール数の少なさは、昨シーズンチャンピオンズリーグの出場権を逃す一因になった。エマニュエル・アデバヨルが加わりはしたが、今シーズンも歴史が繰り返してしまうかもしれない。昨シーズンのリーグ戦で唯一2ケタ得点を記録したのはラファエル・ファン・デル・ファールトだけだった。今季はアデバヨルがトップスコアラーで13ゴールを決めているが、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、ニューカッスルにはより多くのゴールを決めているストライカーたちがいる。しかし、最も危惧すべきは、クリスマス以降のストライカーたちの調子だ。クリスマス以降、4ゴール以上を決めている選手は1人もいない。ジャメイン・デフォーは実際、最高の時間当たりのゴール数を記録しているが、問題は、中盤とのつなぎにはアデバヨルを欠かすことはできず、彼が一番機能するのはファン・デル・ファールトと組んでいる時だ、ということだ。しかしながら、4位以内を死守できるかは、誰であれストライカーのひとりが残りの5試合でコンスタントにゴールを決める、ということに依存しそうだ。


フィットネスと疲れ

月曜にノリッジに敗れた後、キャプテンのレドリー・キングが「疲れ」について言及した点は見逃せない。確かにトッテナムは、同じく2日前にプレーしていたノリッジと比べて疲れて見えた。月曜の様子と、2012年に入ってからだけの結果ではトッテナムはボトムハーフにいるという事実からは、チームのフィットネスに対する疑問が湧いてくる。中心選手の何人かはケガと付き合わってきていて、FAカップ準決勝を迎える心理面と体力面での負担を考えても、今季前半にあったシャープさは無くなってしまっている。良い知らせは、スパーズは日曜のFAカップのチェルシー戦まで1週間近くあることで、残りのスケジュールの相手とは既に差が付いている。


選手層

トッテナムがプレミアリーグで6番目の給与総額でありながら、リーグのトップ近くで競い続ける選手層を作り上げた点は、大きな称賛に値すると信じている。自分たちのやり方を崩すことなく、ギャレス・ベイル、ルカ・モドリッチ、エマニュエル・アデバヨルといった面々をチームに引き付けることができているのは、彼らのスカウト戦略が成功している証しでもある。しかしながら、ここで明らかなのはチームが何人かのキープレーヤーたちに依存している、という点だ。マンチェスター・ユナイテッドに1-3で敗れた時には、負傷でベイルを欠いていた。ストークに手痛い敗戦を喫した時にはアデバヨル、そしてユナイテッド戦と月曜のノリッジ戦の両方で痛手だったのはスコット・パーカーの不在だ。また、ハムストリングの負傷でアーロン・レノンを欠いた時には、右サイドの彼のスピードが明らかに欠けていた。トッテナムにベストの11人が揃って彼らが皆フィットし、自信に満ちている時には、どこにでも勝つことができる。しかし、シーズンが進んでくると、比較的薄い選手層が露呈してきている。


試合日程

トッテナムの失速を分析してみると、その試合日程にも一定のウェイトが置けるだろう。アウェーでのマンチェスター・シティ、リバプール、アーセナル、エヴァートン、チェルシー、そしてホームでのマンチェスター・ユナイテッドとニューカッスル、これらの全てがこの9週間の間に押し寄せてきた。躓きがあるとすれば、シーズンのこのタイミングで起きる可能性が高かった。それでも、この先は残る2枠のチャンピオンズリーグを争う4チームの中では、トッテナムが一番楽な日程だ。トップハーフにいる相手は唯一フラムで、対戦は最終節のホワイト・ハート・レーンだ。ここのところの全ての困難を考慮しても、トップ4入りはトッテナム次第であることに変わりはないのだ。

++++

先月の「スパーズが3位に留まるために必要なこと」と比べてみても、みんな好き勝手言ってくれるよな、という以上の感想にはならないんだけど、冷静に考えると、大きく&たくさん取り上げられるようになったよなー、と感じる部分が大きい。

Saturday, April 7, 2012

リバプールの憂鬱を語る10の事実

カップ戦で出している結果で何とか示しがついているものの、リーグでは一向に調子が上向かず、チャンピオンズリーグ出場権は今季も夢と消えそうなリバプール。ダルグリッシュの進退に関しては大きな話は出ていないが、一体どうしてこうなっているのか。「ガーディガン」紙のマイク・アダムソン記者が10のポイントを指摘。


++++

1. もしプレミアリーグが元旦から始まっていたなら、リバプールは12試合で勝ち点8、順位表上は19位に位置していたことになる。下にはウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズがいるだけだ。

 トップ6
 マンチェスター・ユナイテッド(28)
 マンチェスター・シティ(26)
 ニューカッスル(23)
 サンダーランド(23)
 アーセナル(22)
 エヴァートン(22)

 ボトム6
 ウィガン(13)
 ストーク(12)
 QPR(11)
 アストン・ヴィラ(10)
 リバプール(8)
 ウォルヴズ(5)

2. リバプールは今季の目標としていたチャンピオンズリーグ出場権の4位から16ポイント差。むしろ彼らは降格圏に近く、18位のQPRとは14ポイント差である。

 トッテナム(58)
 リバプール(42)
 QPR(28)

3. リバプールは、リーグ戦ここ7試合で6敗している。ここまでの不調は1953-54シーズン以来で、この時は降格している。

4. 1953-54シーズンは1試合当たりの勝ち点(当時の勝利=2ポイントを現行化)でも今シーズン並みに低かった。今季ここまでの1試合当たりの勝ち点は1.35、31試合で42ポイントである。

5. リバプールの1試合当たりのゴール数は1.16、31試合で36ゴールであり、グレアム・スーネスが率いた1991-92シーズン以来の得点率の低さとなっている。

6. これまでリバプールは勝ち点、ゴール数の両方がここまで低いシーズンを送っていない。最も近いのは1923-24シーズンで、この時は42試合で41ポイント(0.98)、49ゴール(1.17)だった。

7. 今季のホームの結果は極めて悪く、15試合で僅か5勝、33%の勝率となっている。これについても降格した1953-54シーズンまで遡る必要があり、21試合で7勝しかできなかった。

8. リバプールの得失点差は+3、ここまで低いのは-6に終わった1964-65シーズン以来。

9. リーグ戦でのチーム得点王は26試合で7ゴールのルイス・スアレス。プレミア化以降、リーグ戦で2ケタ得点の選手がいなかったのは2004-05シーズンのみ、この時はミラン・バロシュの9ゴールが最高だった。

10. 2004-05シーズンはプレミア化以降唯一エヴァートンよりも下の順位でシーズンを終えている。現在エヴァートンはリバプールと1ポイント差の7位である。

++++

そういう主旨の記事だから仕方ないけど、これだとリバプールは夢もチボーも持てないな…。

Saturday, March 31, 2012

品格と共にオールド・トラフォードを去るディミタール・ベルバトフ

マンチェスター・ユナイテッドのディミタール・ベルバトフは、昨シーズン、あれだけゴールを量産しながらチャンピオンズリーグの決勝ではベンチ入りすらできず、今季はその流れそのままに不遇の時が続いている。今シーズンいっぱいでの退団やドイツへの移籍の可能性を報じる記事も出ており、またひとつのキャリアの転換点を迎えつつあるベルバトフに焦点を当てた、「ガーディアン」紙のダニエル・テイラー記者のエッセイ。


++(以下、要訳)++

先週カルロス・テヴェスについて多くのことが語られた一方で、昨シーズンのゴールデンブーツを分け合った男は全くと言って良いほど取り上げられていない。しかし、彼こそテヴェスにフットボーラーが難しい時期を迎えていても、尊敬を集め続けることができるかを教えることができるだろう。ディミタール・ベルバトフは、多くの失望に静かにかつ尊厳を以って対処しながら、この1年を消費し切ってしまった格好で、彼の代理人であるエミル・ダンチェフもマンチェスター・ユナイテッドが今季終了と共に彼をフリーで放出することを喜んで公言するようになってしまった。

その日は近付いてはいたが、実際にその日が来るとなれば、静かにやってくるだろう。恐らくクラブのウェブサイトに数行だ。そしてベルバトフは礼儀正しくコートを身にまとい、ドアへと近づいて行くだろう。ほぼ確実にビルの裏口だ。

この1年の流れは非常に変わったもので、どうしてこうなったかを解明するのは困難だ。ベルバトフは、我々を苛立たせると同時に浮つかせもした。彼のプレーは観る者の心を動かし、良い時には我々を魔法にかけ、悪い時には大いに困惑させた。しかしながら、究極的には彼がサー・アレックス・ファーガソンが買った最も高い選手であり、明白に取り返しがつかないほどに信頼を失っているという意味で、彼は失敗したと見ることを考える必要があるだろう。それでも、ベルバトフの物語は普通ではなく、単に成功か失敗かという物差しで判断をするのは難しい。

リーグ82試合に先発、24試合に交代出場して48ゴール、というのはトッテナム・ホットスパー時代と比較すると実際には改善なのだが、それでも彼が失敗作として記憶されるのはほぼ確実だろう。これらのゴールのうち20は昨シーズンのものであり、ウェイン・ルーニーを含む同僚の数名は、クラブのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに彼を推したほどだ。どんなに彼の自尊心が傷ついているとしても、今季も10試合に出場して7ゴールを記録しており、その半分は交代出場で決めている。

これらはストライカーであればふつうは大事に思う数字であるが、避けられない事実は、アレックス・ファーガソンは彼では最高レベルでは不十分と明確に判断したということだ。つまりは、ベルバトフは下位チーム相手には活躍の場を与えられるが、より緊迫した試合には使われないのだ。驚くべき数字は、彼が過去14カ月にわたってトップ6相手には先発していないということだろう。2008年の移籍市場締切日にやってきて以来、ユナイテッドのビッグゲーム -決勝や準決勝、ヨーロッパのノックアウト・ステージ、クラブ・ワールドカップ、アーセナル、チェルシー、リバプール、シティ、スパーズとのリーグ戦- 66試合のうち、41試合で外されている。

足りないのは適切な説明であり、唯一、ダンチェフによれば、ファーガソンはベルバトフに「ユナイテッドのスタイルをよりスピーディーなものにしたい」と伝えた、とされるだけだ。おそらく、過去3度のチャンピオンズリーグ決勝で2度バルセロナに敗れたことが、ユナイテッドの遺産となっているのだろう。ベルバトフのフットボールはハープでカデンツァを奏でることができるが、ユナイテッドは別のリズムでプレーをするのだ。おそらく、ゆっくりゆっくり、よりはチャ・チャ・チャなのだ。

昨シーズンの試合でも、チームメイトのひとりがベルバトフが全力で走らないことに声を上げた。ベルバトフは、それが彼のプレーしてきたスタイルで、その時は速く走る必要もなかったと反論した。「このクラブでそうするというのなら、」と返事が続き、虚辞は葬り去られた。

これらはベルバトフの、散発的にではあるが相手を恐れさせるプレーの質に誤解を生じさせた。彼のタッチが申し分ない時には、観る者にボールが彼の言うことを聞いているかのように思わせただろう。それはしばしば魔法のようですらあったが、おそらく、十分な頻度ではなかったのだろう。

べルバトフは、彼を最高レベルと認識させるために欠くひとつの要素 -大一番に自分自身を対峙させるパーソナリティ- については、そのままにしておくだろう。証拠のひとつは、昨季のFAカップ準決勝で、シティに十分な時間を与えただけだった。チャンピオンズリーグでは22試合無得点だった。彼は1946年以来、初めてリバプール戦でハットトリックを決める選手となったが、それにしても相手が順位表の底から5番目に位置していた時だ。加えて言うならば、彼と組んだ時のルーニーは、ファーガソンが期待するレベルで輝くことができなかった。2人が組んだ最初のシーズン、一方がもう一方のゴールをお膳立てしたのは1度だけだった。2人は多くの場面で輝いたが、真に一体化することは無かった。

こうした出来事を通じて、ダンチェフの言葉を借りるなら、ベルバトフがクラブからの高給を受け取り続けるのを快くなく感じているが、ダンチェフは「テヴェスのようなスキャンダルを起こすのは彼のスタイルではない」と続ける。インタビュー無し、騒ぎも無し、監督の背後を突くコメントも無し。単に上手く行くことを望み、そうはならなかった、特に昨季のチャンピオンズリーグ決勝を思い出せば明白だ。彼はユナイテッドの得点王だったが、サブにも入ることができずに悲しみに暮れ、とうとうドレッシングルームを出ることができなかった。それ以降は、ユナイテッドとの別れが決まるまでにこれだけ時間がかかっていることだけが驚きだ。

ベルバトフは果てまで彷徨い過ぎて、フットボール界の忘れ去られた男になる危機にある。先週の金曜日、ファーガソンはダンチェフが皆が想像する退団の可能性を確認した後で最初の記者会見に臨んだ。3,075万ポンドの男、ベルバトフに関するコメントは何ひとつ無かった。

++++



スパーズに声援を送る身としては、彼の退団劇には苦々しいものがあるが、一方で輝きを失って欲しくないと思っているのも人情としてはある。ユナイテッドで可能性は無いのだろうから、早く次の輝き場所を見つけて欲しいもの。

Tuesday, March 20, 2012

後進の道を開拓する先駆者となったムアンバ

FAカップのトッテナムとボルトンの試合をESPNの中継で観ていた僕には、とても重苦しい時間だった。実況のジョン・チャンピオン氏が「ムアンバに何かが起きている」と言ったと思ったら、程なくカメラは遠いアングルになった。詳細を映さないようにするためだ。背筋がゾッとした。

心停止で倒れて病院に運ばれたムアンバの治療は現在も続いていて、メディアもかなりの割合にこの話題を取り上げているが、その中で「インディペンデント」紙のサム・ウォレス記者が、今の危機的な状況ばかりに目を向けるのではなく、彼が先駆者となっている部分にも再度着目すべき、とのコラムを掲載。


++(以下、要訳)++

彼が生命の危機と闘っている今こそ、ファブリス・ムアンバが若くして既に多くを成し遂げていることを振り返る価値があるだろう。事実、そこには、あなたがプレミアリーグでプレーする23歳から想像するであろう名誉や豊かさ以上のものがあるのだ。

昨年の夏にデンマーク行われた21歳以下のヨーロッパ選手権で彼が人生について語った際、12年前に家族がコンゴ民主共和国からロンドンに渡って来た話になった。彼は自分の過去をこのように語った。「それがアフリカさ。そうだろ?そういう大陸なんだ。常にドラマと戦争やいろんな事があるんだ」

その点について彼は正しいのだが、生き抜くためにコンゴ民主共和国を後にし、ムアンバは自分の人生に多くをもたらした。英国の最新の移民世代の先駆者となり、新しい国をイングランド代表として気持ち良くプレーできるほどに受け入れた。

記者会見で寄せられる場違いな質問のひとつが昨年の夏にもあり、イングランドのU-21代表としてプレーする際に英国国歌を聞くのはどのような気分か、と尋ねられた。彼は「ただ自分がどれだけ離れた所にたどり着いたかを考える。イングランドの人々が自分を助けてくれて、自分はその一部だと感じる」と答えた。

ムアンバがプレーするのを見るといつも、- そしてこの週末の出来事のずっと前だが - 私の同僚のイアン・ハーバートが2008年の10月に行ったインタビューのことを思い返す。インタビューは人種差別に反対する「Kick It Out」の後援でのものだったが、彼は自分の人生の話をありのままにそれでも愉快にしてみせた。

彼は11歳の時にどのように国を離れてイングランドに向かったかを詳しく語った。母親と共に東ロンドンに到着した時には、"Hello, how are you?"の4語の英語を知るのみだった。この未知の土地への旅が、アフリカに残るよりもベターな選択肢だった。彼の父親が大統領のモブツに誓う忠誠が、家族を危険に曝す恐れがあったためだ。

2008年のインタビューでは、まだイングランドについてよく分からない点があることを彼も認めていた。彼は学校で少女に「自分の国に帰れ」と言われることに悩んだ。それでも彼はそれを我慢し、特にアカデミーの選手としてプレーしたアーセナルで多くのサポートがあることを知った。アーセン・ヴェンゲルには個人的にも支えられた。

彼は、トレーニング場に向かうための正しい電車の乗り方やどのようにオイスターカードを使った良いかについて悩んでいる、とヴェンゲルに打ち明けたことを思い出していた。悩みは生活する知恵がないことだったのだ。ヴェンゲルは彼にすぐに慣れるとアドバイスし、そして彼は正しかった。

アメリカと同様に「イングリッシュ・ドリーム」なるものがあるとすれば、まさにムアンバはそれを実現した。彼がやってきたのは発展途上国で、アフリカでも最も危険な地帯の1つからやってきた。そして彼は輝いたのだ。フットボーラーとして成功した彼は勉学でも優秀で、通信制の大学で数学と会計を学ぶためにどのように準備をしたのかもインタビューで答えてくれた。

キンシャサで生まれたムアンバだが、イングランドのU-21代表でプレーする決断をした。彼はそこで33試合に出場したが、これは歴代2位の記録になる。彼はコンゴ民主共和国の代表としてプレーすることは難しいと考えている。そうしたオファーは、国に彼と彼の家族を連れ戻そうという政治的な罠だと考えられるからだ。多くの意味で、彼の決断は自身の埋め合わせでもあるのだが、だからと言って彼の重要性が変わるわけではない。

国籍についての人の考え方が極めて個人的で、出生証明書に何と書かれているかよりも、個々のアイデンティティと帰属意識がどこにあるかに関わってくる。ムアンバについて素晴らしいのは、彼がフットボーラーとしてイングランドを受け入れた最初の世代であり、イングランドが彼を受け入れたことに満足していることだ。

ムアンバは「僕はこの国に養子に来たようなものさ。みんなが僕を助けてくれたし、諸手を広げて歓迎してくれて、僕に機会を与えてくれた。普通の暮らしには十分過ぎる額を稼ぎ、快適な生活を送っている。これには本当に感謝しているんだ」と昨年の夏に語っている。

これは彼がイングランドの求めに屈しただとか、才能あるアフリカ人を帰化させろだとかいう話ではない。単純に、かなりをフットボールを通じてだが、ムアンバは彼の新しい「家」に結びつきを感じているということなのだ。それぞれガーナ、セネガルで生まれたマルセル・デサイー、パトリック・ヴィエラが、1998年のワールドカップを勝ち取った多様なフランス代表チームの一員になったのと同じであろう。

ムアンバには、今後続く多くの後進たちの先例であって欲しい。既に何人かは続こうとしているのだ。18歳のサイド・ベライーノはもうひとりのイングランドの世代別代表の一員だが、彼はブルンジで生まれて、政治難民として家族で移民してきたのだ。

これがイングランド・フットボールの良さだ。他のイングランドの社会と比べても、国の顔ぶれの変化を投影するという意味では抜きん出ている。イングランドの若年世代の代表選手の名前をFAのウェブサイトでチェックし、それをひとめくりすればその通りであることに気付くはずだ。もっとも、どの家族の物語も異なっていることは言うまでもない。

ムアンバはその夏のインタビューで「僕は自分の人生についてそんなに多くは語らない。もし聞かれれば答えるし、聞かれなければそれまでだ。そんなもんだよ。僕が話をすればいつだって『何が真実なんだ?』と聞いてくる。みんなは車とかそういうものに目が行ってるんだ。他のアフリカ出身の選手たちも同じように感じてると思うよ」と語っている。

寒い12月の夜にロンドンにやってきたムアンバの話は、移民の素晴らしいサクセス・ストーリーだ。彼が生命を懸けて戦うのを待つのは家族、友人、チームメイトたちにとっては耐え難い時間だろう。それでも、彼らもムアンバが自分のやり方で、既に後進が感謝しながら続くであろう道筋の先駆者となっていることを知っておくべきだろう。

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現在のところ、ムアンバが英語、フランス語で微かに話をし始めた、というのが最新情報。僕らが直接助けることができるわけじゃないけど、何とか回復して欲しいもの。

Saturday, March 17, 2012

スパーズが3位に留まるために必要なこと

プレミア3連敗で、逆転勝利を続けるライバルのアーセナルにすぐ背後まで迫られているスパーズ。メディアには、監督のハリー・レドナップがイングランド代表監督の最有力候補として取り沙汰され、それがチームのパフォーマンスに影響している、と指摘する向きもある。スパーズがこのまま3位をキープするにはどうすべきか?「イーブニング・スタンダード」紙による特集記事のタイトルは、「落ち着け、そしてルカ・モドリッチを中央に」。


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僅か16日の間に、トッテナムはプレミアリーグのタイトル挑戦者から、来季のチャンピオンズリーグ出場権を心配する立場に変わってしまった。

ハリー・レドナップのチームは依然としてトップ4を確保できるだろうが、この3連敗でアーセナルやチェルシーに新たな希望を与えてしまっている。アーセナルがニューカッスルに勝ったことで、ノースロンドンのライバル同士のポイント差は1まで縮まっている。

ファビオ・カペッロがイングランド代表監督を辞任して以来、レドナップはその有力な後任候補として名を挙げられるようになり、以降リーグ戦は1勝3敗だ。3連敗はレドナップが指揮を執るようになってからは初めてのことだ。

本紙では、スパーズがリーグでの調子を取り戻すために監督と選手ができるであろういくつかの点に着目した。


1. ベストな選手をベストなポジションに

ルカ・モドリッチはリーグでも屈指のクリエイティブな選手であり、中央で起用されるべきだ。左で使われれば中に入ろうとしてスパーズのワイドな攻撃の脅威を半減させてしまうし、彼自身の影響力も薄まってしまう。レドナップが4-4-1-1から4-2-3-1へと変更し、モドリッチがサンドロやスコット・パーカーのようなディフェンシブな選手2枚の前でプレーできるなら、彼のスペースもオプションも制限されないはずだ。

ギャレス・ベイルについても同じことだ。シーズンの序盤、このウェールズ人に自由な役割を与えたのはレドナップの賢明な判断だったが、それでも彼の一番の持ち味は左サイドで発揮される。ベイルを彼の好みのサイドから動かしても恐さがなくなるだけだ。アーロン・レノンの負傷がチームバランスに影響しているが、結果的にモドリッチやベイルがそれに苦しむのは残念なことだ。


2. セットプレーの集中トレーニング

一体どれだけトッテナムがフリーキックやコーナーキックからゴールを生みだすだろうか?セットプレーからゴールを決められないのは、スパーズのサポーターの苛立ちのもとでしかない。ベイル、ラファエル・ファン・デル・ファールト、ベノワ・アス・エコト、そしてモドリッチ、と皆ペナルティエリア近くから狙うが、上手く行くのは極めて稀だ。

ユネス・カブールが大きく外すフリーキックは、スタンド後方のファン、カベのディフェンダー、そして広告のロゴを脅かす。チームの攻撃的なアプローチは、特にホワイト・ハート・レーンでは数多くのフリーキックを生みだす。スパーズほど才能に溢れた選手層があるのなら、もっと効率的な方法に行きつくことができるはずだ。


3. イングランドのことは忘れろ

レドナップにはほぼ不可能なことだろう。誰にでも別の職に就くチャンスを経験したことはあるだろうが、熟慮したFAの「距離を置く」という判断は、実際のところトッテナムのシーズンを不安定なものにしている。

選手たちにとっては言い訳にもならない。レドナップの将来が不透明であることは選手の会話のネタにはなるだろうが、パフォーマンスに影響するようなものではない。シーズンが終わる前にレドナップがチームを去ることなどほぼ考えられないし、選手たちも少なくともプレミアリーグが閉幕する5月13日までは、そのことを考える必要もないのだ。


4. ワントップ

チャンスを得て活き活きしているジャメイン・デフォー、そして最近ではルイ・サハには厳しいかもしれない。それでも、スパーズが今季ここまで一番良いパフォーマンスを見せていたのはエマニュエル・アデバヨルが1トップでプレーし、ベイル、レノン、ファン・デル・ファールト、そしてカイル・ウォーカーがその周りでリンクするために前へと上がっていた時だ。アデバヨルのフィニッシュがデフォーほど正確ではないことに苛立つこともあるが、彼の準備の良さとチャンスをお膳立てする能力は軽視されるべきではない。アデバヨルが良いコンディションであれば、中盤の選手がやたらと前線に走り込まなくとも大きな攻撃の脅威を与えることができるのだ。


5. 落ち着け

もしかすると、これがスパーズの追い込みには最も重要な側面かもしれない。レドナップの苛立ちは、エヴァートン戦に敗れた後のインタビューでは明白だったし、選手たちにも最近の試合では普段よりもカリカリしている様子が見て取れる。

誰もに深呼吸が必要なのだ。まるで懲らしめのような2週間だったが、パニックに陥る必要はない。残り10のプレミアリーグの試合のうち、現在の順位表で7位以上のチームとの対戦は1つ(チェルシー)だけだ。

アーセナルやチェルシーと比べると対戦相手に恵まれているのだ。落ち着いて集中力を保てば、3位は依然として彼らのものだろう。

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あのまま順調に行くのも、結果的に3位になるのも、どっちも「スパーズらしくない」と思ってから、こうしてドタバタするのはヤキモキしないで楽しんで見ることにしてるが、結果の面でここまで綺麗にブレーキがかかるとメディアは好きなことを言うよなー、と。ま、そのトーンの変わり方も含めて楽しいもの。

この「イーブニング・スタンダード」ってのは、ロンドンの無料夕刊紙で、地下鉄の駅とか出た所でいつも配ってる。普段取り上げる「テレグラフ」や「ガーディアン」、「インディペンデント」とはトーンが違うのだけど、ロンドンをベースにしてるから、ロンドンのチームの記事は比較的多いし、順位表とか見るとロンドンのチームだけ太字だったりする。

Friday, March 2, 2012

崖っぷちのヴィラス・ボアスの命運を握る5試合

チェルシーの調子がなかなか上向かない。11月に「道を誤ったチェルシーに降りかかる危機」と題した記事が出た頃から比べても、内紛めいた話が出てくるようになった最近の方が悪いくらいだろう。あわせて、監督のアンドレ・ヴィラス・ボアスの去就をめぐる話題も騒がしくなってきている。そんな記事のひとつをピックアップ。「テレグラフ」紙が予想するヴィラス・ボアスの命運を握る5試合。


++(以下、要訳)++

今やアンドレ・ヴィラス・ボアスは、チェルシーのオーナーであるロマン・アブラモビッチの支持を失ってしまったのではないかと懸念していることを認め、彼にチェルシーで残されている時間は短いのではないかとの憶測がますます広まっている。この先の試合が、彼の運命をどう左右するかを占った。

3月3日(土):ウェストブロム vs チェルシー(プレミアリーグ)

この先5試合の中では、最も勝てる可能性が高いはずだ。机上では分かりやすくチェルシーの勝利を予想できるが、ウェストブロムはサンダーランドに4-0で勝利して勢い付いている。同日にアーセナルがリバプールをアウェーで戦うことから、4位争いでのロンドンのライバルに差を付けるまたとないチャンスだ。

予想結果:勝つだろうが、AVBが称賛されることはない。
敗れた際の解任の可能性:60%。まだ大丈夫。


3月6日(火):バーミンガム vs チェルシー(FAカップ再試合)

バーミンガム相手にサボってしまったチェルシーは、先週のスタンフォード・ブリッジでの当惑を繰り返さないためには、全方位的に攻めまくる必要がある。AVBが留任するには、絶対に勝利が必要だ。

予想結果:チェルシーが準決勝に進出。
敗れた際の解任の可能性:40%。バーミンガムに敗れれば、さらにトロフィーをあきらめることになりアブラモビッチも受け入れ難いだろう。勝利はAVB留任を意味するが、プレッシャーからの解放にはさして役立たないだろう。


3月10日(土):チェルシー vs ストーク(プレミアリーグ)

AVBが解任されないないために最も重要な対戦の2つに挟まれている。ストークの調子は最近安定しないが、開幕間もない頃の対戦ではドローに持ち込んでいるし、チャンピオンズリーグの試合を視野に主力を休ませたりすれば、番狂わせが起きる可能性も出てくるだろう。

予想結果:チェルシーの辛勝
敗れた際の解任の可能性:20%。生死をかけたチャンピオンズリーグの対戦を前に、アブラモビッチが監督人事にメスを入れるとは考えにくい


3月14日(水):チェルシー vs ナポリ(チャンピオンズリーグ、1stレグはナポリが3-1で勝利)

チャンピオンズリーグに注がれている重要性を考えれば、これがAVBの最後の試合になる可能性は十分になる。ナポリは1stレグでの勝利に値したし、2ゴール分のアドバンテージがあるが、チェルシーが勝ち抜く可能性が完全になくなったわけではない。

予想結果:ナポリの勝ち抜け。
敗れた際の解任の可能性:100%。チャンピオンズリーグ敗退は、AVBの棺の最後の杭を打ち込むことになる。アブラモビッチは、一度として彼のクラブがヨーロッパのエリート大会でプレーし続ける期待を隠したことはない。AVBの運命には、他のどの結果よりも重要な試合だ。


3月19日(月):マンチェスター・シティ vs チェルシー(プレミアリーグ)

仮にAVBがまだ指揮を執っているとすれば、それはチェルシーがFAカップもチャンピオンズリーグも勝ち残っていることを意味し、彼らの調子も上向いていることになる。であれば、このポルトガル人監督は自分たちの復調を証明するためにトップ4入りを目指して戦えることに興奮しているだろう。

予想結果:スコアが入ってのドロー。
敗れた際の解任の可能性:0%。チャンピオンズリーグとFAカップでの勝ち残りはプレッシャーを和らげはするだろうが、AVBは安心できるわけではないし、この試合の結果はシティのタイトルとチェルシーのトップ4入りの双方に重要な意味を持つ。AVBにとっても見る価値はあるだろう - それがテレビであれ、ベンチからであれ。

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ということで、「テレグラフ」紙的には、チャンピオンズリーグ敗退で解任って見てるのかな。

Friday, February 24, 2012

ヴェンゲルが迎える「かつてなく重要なダービー」

昨シーズンのエミレーツでのノース・ロンドン・ダービーは、アーセナル2-0リードからの大逆転劇でスパーズがモノにして、ヴェンゲルのあの「ペットボトル叩きつけ」シーンが登場した思い出深い試合。

自分はロンドン暮らしながら授業でスタジアムには行けなかったのだけど、そもそもスパーズ側への割り当ては2,900枚で、累積ロイヤリティ・ポイントが少ない自分がチケットを取るのは厳しい情勢だった。授業中にもスコア速報を自分のPCに表示させてる教授が「いま2-1だよ」とかお茶目に教えてくれ、隣の席のナイジェリア人同級生はiPhoneでしっかり観ていて(スカイを契約していればプラス数ポンドでモバイルでも視聴可)、休み時間にカブールの3点目が入った時には意気消沈してたのは良き思い出。

順位の面で拮抗していたからこその緊迫感もあったのだけど、今シーズンは若干トーンが違う。順位差は1つながらポイントで10も離れ、ヴェンゲル周辺にも過渡期の落ち着かない雰囲気が流れている。そこでピックアップしたのが、BBCの「ヴェンゲル政権史上で最も重要なダービー」と題した特集記事。


++(以下、要訳)++

一見しただけでは、なぜ今回トッテナムがアーセナルに乗り込む日曜のダービーが、今までのノース・ロンドン・ダービー以上の重要性を持つのか分からないだろう。

激しい対抗意識を持つ地元のライバルが、プレミアリーグの3ポイントを競い合い、ひとつしかない自慢の権利を互いに渇望している。ここまでは見慣れた光景だろう。しかし、その表面をかき分けてみると、これまでとは全く異なる絵が見えてくるのだ。

元ガナーズの右サイドバックだったリー・ディクソンは「このダービーは、アーセン・ヴェンゲルのアーセナルの監督としての16年間の中で、最も重要なダービーだ。クラブの歴史の中でも、非常に苦しい時期のダービーとなってしまった」と語る。

国内のカップ戦からは全て敗れ去り、チャンピオンズリーグも敗退同然。アーセナルは無冠のシーズンを7年にのばそうとしている。

ヴェンゲルが就任して以降、一度もアーセナルより上の順位でフィニッシュしていないトッテナムに敗れれば、3位のスパーズからは残り12試合で13ポイント離されることになる。アーセナルは、チェルシー、ニューカッスル、リバプールとの4つ巴の争いを勝ち抜かない限り、15年続いたチャンピオンズリーグ出場も止まってしまうことになる。

元アーセナルのミッドフィルダーだったエマニュエル・プティは「チャンピオンズリーグに出られなかったら悪夢だよ。今までいたポジションに戻るには、アーセナルは夏にビッグネームを連れてくる必要があるが、チャンピオンズリーグに出られなければそれも叶わないだろう」

サンダーランド、ACミランに惨敗し、アーセナルはスパーズとの一戦で今シーズンの勢いを取り戻したいと考えているだろう。

この対戦は、ヴェンゲルが最初の14年間で1度しか負けていないカードだったが、全ての証拠は流れが変わっていることを示している。リーグ戦でのここ7度の対戦を見れば、アーセナルは1勝しかしておらずトッテナムより下の順位で臨むのは32度のダービーでたった4度目だ。

「スパーズはアーセナルよりも良いチームだ」とプティが認めると、ディクソンも「ここ数シーズンで決定的にパワーバランスが変わった」と付け加えた。

2000年に『The Great Divide』と題した本でトッテナムを圧倒し続けるアーセナルについて著した、作家でフットボールアナリストでもあるアレックス・フィンは、「あの時記した大きな差などもう無い。あるとすれば立場が逆だ」と語っている。ただこの考え方は、不満の声を上げることが多くなっているエミレーツの観衆には受けが良くない。

アーセナル・サポーターズ基金(AST)のスポークスマンを務めるティム・パイソンは「これは、今まで"St. Totteringham's Day"を楽しむことに慣れてきたファンたちにはカルチャー・ショックであり、警鐘だ」と言う。この"St. Totteringham's Day"というのは、アーセナルのファンが、毎年トッテナムがアーセナルよりも上の順位でフィニッシュすることができないと確定する日のことを冗談めかして名付けた日のことだ。

残念ながら、2012年にはその祝日は訪れそうになく、多くのファンは一体どうしてこんなことになってしまったのか、首を傾げるだろう。ヴェンゲルはアーセナルでの最初の9年間で7つのトロフィーを掲げたが、今やクラブ史上最も長く無冠でいる監督になりそうだ。

フィンはこう主張する。「ヴェンゲルには、彼に詰め寄るスタッフや役員が必要だった。これは彼が対処に失敗した最も重大な問題だ。他のビッグクラブはより優秀なスタッフを揃え、様々な機会に入替えを行なっている。マンチェスター・ユナイテッドを見てみればいい。ヴェンゲルは一度もそれをせずに来ていて、他のクラブは進化する中、アーセナルはそのまま、もしくは退化してしまった。何故より質の高い人材で周りを固めようとしないのか?パトリック・ヴィエラはマンチェスター・シティで何をブラブラしてるんだ?」

加えて、フィンは2007年に当時社長のデイビッド・ディーン -今でもヴェンゲルの友人だ- が退団したことが、移籍市場で他クラブに遅れをとることになった原因だ、と責めている。これは、トッテナムの会長であるダニエル・リヴィが2008年にハリー・レドナップを監督に任命して以来、スパーズがアーセナルを上回ることになった数多くの分野のひとつだ。

プティは「スパーズと言えば、10年以上に渡って野心の無いクラブの代名詞だった。しかしこの2年で多くの良い選手たちを獲得してチームに特長がもたらされ、アーセナルよりも遥かに競争力を持つチームになった」と語る。

「突然やり方が変わって、多くの金を投資するようになった。高いサラリー、経験ある代表選手たちの加入、強烈なキャラクター - 元々いたギャレス・ベイルやアーロン・レノン、ジャメイン・デフォーらに、ラファエル・ファン・デル・ファールト、エマニュエル・アデバヨルといった面々が加わった」

「今やクオリティはピカイチ、そこにメンタリティも備わってきた。アーセナルが、特にホームで彼らにどう対抗するのか興味深いね。先週起きたことを考えれば、これは重大な試練だよ」

ディクソンも続ける。「ノース・ロンドン・ダービーを控えれば、ファンだって色々な記事を目にするだろう。しかし、選手たちはそんなことは関係ない。試合当日に起きることが全てだからだ」

「より目を引くのは最近の結果であり、その意味でアーセナルは見劣りする。そのこと自体、非常に士気に影響するが、俺が現役の頃は悪い結果が続けば、次の試合は強敵とやりたいと思ったものさ。その方が、自分たちに失望し続けるより次の試合に集中できるからね」

「その意味で、これだけ多くのものが懸かった、シーズンのこのタイミングでのノース・ロンドン・ダービー以上のものは無いだろう。腕まくりをして、気合いを入れて臨むべきなんだ」

ASTは、チャンピオンズリーグ出場を逃せば4,500万ポンドを失うと見立てており、それがペイトンが「単なるノース・ロンドン・ダービー以上の意味」を感じている理由だ。勝つことができればフレッシュな希望がもたらされるが、アーセナルもヴェンゲルも、敗戦を考えることができる状況ではないだろう。

フィンもこのように語っている。「負ければボディーブローの3連発目だ。それでノックアウトだろうな」

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スパーズを応援する身としては、ダービー前はスパーズ側で書いた記事で盛り上がりたいところだけど、今回はちょうど良いのも見つからず、逆にアーセナル側でしっかり書かれたものがあったのでコレにした。前回もベルカンプのインタビューだったから、ちとアーセナルが続いちゃったな。ま、あとはこのクリップで気分を上げておきたいところ。


Saturday, February 18, 2012

デニス・ベルカンプが語るアーセナルの課題

アーセナルが大敗を喫したミラン戦を前に、アーセナルOBで現在は古巣のアヤックスでコーチを務めるデニス・ベルカンプが、同じくアーセナルOBのアラン・スミス氏のインタビューに答え、現在のアーセナルについての率直な印象を語っている。この2人、実はアーセナルの選手としてはちょうど入れ違いのタイミングで、引退するスミスの代わりにベルカンプが加入したという経緯がある。


++(以下、要訳)++

初めて私がデニス・ベルカンプに会った時、彼は私とは反対の方向に進んでいた。私が膝のケガで引退せざるを得なくなり、プレシーズン初日にアーセナルのトレーニング場に別れの挨拶をしに行った時だった。

私には感情的な時だったとすれば、私の穴埋めを期待されて加入した彼にはハッピーな時だっただろう。

「幸運を祈るよ、デニス。全てが上手くいくことを祈ってるよ」

今振り返ってみれば、この青年は良くやったと安心して言うことができる。

17年後。42歳になったベルカンプが、全てのスタートとなったアヤックスの練習施設で食堂を横切る姿からは、満足そうな様子が見て取れた。

彼の輝かしい代表およびクラブでのキャリアには、3つのプレミアリーグタイトル、4つのFAカップと数え切れない個人的な称賛を結実させた、アーセナルでの11年間も含まれている。

チャンピオンズリーグのベスト16でACミランと対戦するアーセナルは、ベルカンプが退団した2006年以降、何のタイトルも獲得できずにいる。ベルカンプは、トロフィーの枯渇についてアーセン・ヴェンゲルを責めるつもりはないが、チーム構成と選手のメンタリティに根本的な問題があると考えている。

「今のチームには似たような特徴を持つ選手が多過ぎるように感じるし、もっと多様性が必要だろう。トレーニングでも試合でもチームを前進させる強いキャラクターを持った選手が何人か必要だ」

「それに、得点を決めるという意味においても、違いをもたらす選手が何人か必要だろう。今の中盤を俺たちの時代と比べてみたらいい。フレディー・リュンベルグ、ロベール・ピレス、レイ・パーラー - ビッグネームのひとりが上手くいかなくとも、誰かがカバーできたんだ。1人や2人の選手に頼り切るのは無理だよ」

同じオランダ人のロビン・ファン・ペルシについては、1トップを務めてこれだけのゴールを挙げていることに驚いたようだ。

「正直に言えば、今でもロビンにはメインのストライカーから少し下がったところでプレーして欲しいと思っている。俺もそうだったけど、彼もその方が輝けるだろうからね。その役割の方が彼には合ってるよ。それでも、今の彼のプレーを見てたら、あそこで使う監督を責めることはできないよね」

そのファン・ペルシの英雄的な活躍をもってしても、うごめく不満を抑えることはできなかった。多くのサポーターたちは、ベルカンプの以下のような考えに同意するだろう。

「時にはパスのメンタリティよりも勝者のメンタリティが必要になるんだよ(“Sometimes you need more of a winning mentality than a passing mentality”)。今のアーセナルの選手たちにそれがあるのか、よく分からない。単にパスを回す能力よりも、アティテュードが大事になる場面においてね。イングランドらしいメンタリティが失われてきてるのかもね」

「俺たちの頃は、ディフェンスの4人には当然それがあって、『よし、この試合はもらった』と考えることができていた。今のアーセナルの試合を見ていると、いつも同じプレーの仕方で、あまりに予測可能なんだ("it’s always the same way of playing, a bit too predictable")。選手たちが皆素晴らしいのは確かで、それは認めるべきだけど、それだけじゃ足りないんだよ」

ヴェンゲルについてはどうだろうか?今のような状況で、ベルカンプは彼の元ボスがより長くエミレーツに留まることができると考えてるのだろうか?

「ああ、そう思うよ。俺が知っているヴェンゲルは、勝利者だ。放り出して出て行くなんてできないだろう。まだ終わりじゃないと考えているだろうし、終わる時には上にいたいと思うはずだ。もしくは、チームを何らかの形で再び成功に導かないとね。だから、出ていく前にはそれを達成するためにチャンスを待って、一気に実現させようとするだろうね」

「アーセンと一緒にやっていた11年間にも上り下りがあった。良い時があれば、再構築に時間を要することもあり、その後また上手くも行く。今の問題は何のトロフィーも勝ち取れていないことだ。さっきも言ったことだけど、チームを前に進めるためには、気持ちを前面に出してとにかく勝つことが必要なこともあるんだよ」

「今はそうできていないわけで、苦しんでいる原因はそこさ。それがヴェンゲルのせいだとは思わないね。かつても素晴らしい監督だったけども、今もアーセナルにはファンタスティックな存在だよ。若い選手を連れてきて、多くの資金にかえていく。財務面で考えれば本当に偉大だ」

もしかすると、この点については今のアヤックスとの比較ができるかもしれない。アーセナル同様、オランダの古豪も今季はリーグのトップ集団に付いて行けずに苦しんでいるが、歴史があり、並外れた才能を生みだしてきた。

ベルカンプの今の仕事はフランク・デブールのアシスタントだが、そこにはストライカーの育成も含まれている。もちろん、役割には責任があり、ベルカンプもそこは真剣に受け止めているが、最終的には、家に帰る時には友人でもあるデブールが背負うプレッシャーからは解放されて家族のもとに帰って行ける。そこには、引退後の生活と現場への接点との良いバランスがあるように見える。

仕事の局面では、彼の詳細にこだわる鋭い視点が活きるだろう。彼のアーセナル時代のチームメイトは良く知っているだろうが、トレーニング後に既に誰もかなわぬ一級品だったテクニックにさらに磨きをかけようとする姿は、感嘆をもって受け止められていた。現在の挑戦のひとつは、今の世代はそこまでの完璧さを求めようとするとは限らないことだ。

「それは俺たちが変えたいと思っていることのひとつだね」とユース世代の育成にも携わっているベルカンプは語る。「選手たちの関心を保つように色々努力してるんだ。おかしなことに感じるだろうけど、そういう時代なんだ。お金だとか代理人ってものの影響も大きいよね」

「俺たちがトロフィーを勝ち取ること、ベストを尽くすことをきっかけにしていたのは、多くの若い選手にとってはできるだけ多くの金を稼ぐことになってしまっている。かつてとは違うメンタリティなんだけど、それと向き合ってやり繰りしていく必要があるんだよ。若い選手たちが毎日上手くなりたいと思ってトレーニングに来て、それを楽しめるようにアイディアを絞り出しているのさ」

同様の不満をイングランドの何人かの監督たちからも聞いていたから、ある意味、私は安心した。イングランドだけの問題ではなく、ヨハン・クライフ、マルコ・ファン・バステン、フランク・ライカールト、そしてベルカンプを生みだしてきたアヤックスのような偉大なアカデミーであっても、現代の潮流を変えるのには苦心しているのだ。

アーセナルも苦しんでいる、もうひとつの厄介な問題は、育てた選手がライバルに流出していかないように維持することだ。そこが、アヤックスがヨーロッパリーグで対戦するマンチェスター・ユナイテッドのようなクラブと競い合って行くのを困難にしてもいる。

ベルカンプは「俺たちはそれは一種のボーナスみたいなものって考えてるよ」と語る。「対戦から何かを得られればラッキー。でも、今シーズンはチャンピオンズリーグでもレアル・マドリッドと対戦したけど、ウチは圧倒されたよ。レベルが数段違うよね。マンチェスター・ユナイテッドだってそのくらい手の届かない存在さ」

アヤックスに若きベルカンプがいて冷静な目でキラーパスを流し込んでいたらどうだろうか?その点で言えば、アーセナルのファンもこの「アイスマン」がチームにいて、相手が束になってかかってもかなわないとしたら、どう思うだろうか?

本人も回想しながらこう語る。

「思い返せば思い返すほど特別な時だったと思うよ。自分が素晴らしいチームの一員であることがよく分かるからね。ピッチに出れば、自分が違いをもたらすことができるんだ。『今日の俺は誰にも止められない』ってね。傲慢になっているわけじゃなくて、そう感じてたってことさ」



「ティエリ・アンリについても同じさ。ボールを彼に預けさえすれば、残りは全部やってくれるからね。若かったパトリック・ヴィエラがハーフタイムの交代出場でデビューした時のことをよく覚えてるよ。彼は自分でゲームを変えて見せたからね」

先週ヴィエラは、家族と共にベルカンプを訪ねてきたという。ベルカンプは笑ってこう言った。

「パトリックとは昔話をしたよ。本当に特別だったよ」

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スパーズを応援しつつ、ベルカンプは本当に好きな選手で、引退の時には記念のTシャツを買ってしまったくらい。よく覚えてるのは、ワールドカップ、アルゼンチン戦での神業トラップ+完璧なタイミングのシュート。大学の夏休みに長野に免許合宿に行ってる時で、早朝にテレビで見てたけど思わず「うわ、天才!」と叫んで、「これ見るべき」とか言って同部屋にいた先輩を起こして回ってた。


アーセナルでの晩年、契約更新が1年ずつで、アーセナルのクラブのポリシーがよく分かったけど、それでもあそこまでプレーを続けて、しかも「効いてた」んだから偉大だよな。