Friday, February 10, 2012

イングランドとイタリアのメディアが伝えたカペッロ辞任

世界を驚かせたファビオ・カペッロのイングランド代表辞任劇。イギリスとイタリアのメディアがどのように伝えたのかを、「テレグラフ」紙がまとめてくれている。イタリアのメディアは若干せいせいしたって感もあるのかな。


++(以下、要訳)++

「サン」紙は、一面を大きく「Arryvederci(アリベデルチ:イタリア語で『さようなら』)」で飾ったのをはじめ、イギリスとイタリアのメディアの多くがこの件を一面もしくは最終面で大きく扱っている。

アリベデルチ/さよなら(サン)

4年間の間に計2,400万ポンドのサラリーを支払って、ファビオ・カペッロは言葉を学んで帰ったと思うだろう。しかし、彼にはそれすらできなかった。南アフリカのベンチに座って、品の無い言葉を選手たちに向けて叫ぶことはできたとしてもだ。彼が脱線しているという明らかなサインが出ていた。彼は眼鏡の奥から選手たちを見つめながら、何をすべきなのか分からず、近眼のマグーのように世界を見渡していたのだ。


さよなら、ファビオ(ガーディアン)

ファビオ・カペッロは英語を勉強する気などなく、イングランドにもさして興味はなかった。彼に支払われた年間600万ポンドのサラリーも、自分がそのメジャー大会での復権のために雇われた競技の母国の文化に興味を持たせるには十分ではなかった。


イングランドの期待(タイムズ)

ハリー・レドナップは前日は自分が牢獄行きになるかを懸念しながら目覚めただろうが、今度は自分がイングランド代表監督になるかと思案しながら眠りに就いたはずだ。フットボールという云々よりは、驚きでしかない。フットボールというのは、ピッチ上でボールが動いている時がいつもそうであるように、ピッチの外も奇妙に予測不可能になった。


苦き終焉(デイリーメール)

一体どうしてレドナップがこのカオスを歓迎するというのか?ここ最近の彼の状況を考えて、一体どうして彼がFAを適切な雇用者と考えるだろうか?レドナップは5年にわたる調査を耐え抜き、脱税に関する極めてプライベートな裁判を終えたところだ。全ての疑念が晴れて無罪放免となり、サザーク刑事裁判所の階段に立って、トッテナム・ホットスパーの重役に惜しみない感謝の意を評したばかりなのだ。


・・・一方のイタリアでは。


さよなら、イングランド(レバッブリカ)

イングランド人はもはや彼に我慢できなくなり、彼はイングランド人に我慢がならなくなった。とうとう上手く行くことの無かったこの婚姻関係の終焉には政治的に正しい理屈が必要で、テリーの一件は渡りに船だった。


カペッロ、衝撃の辞任(ガゼッタ・デロ・スポルト)

戦術家カペッロはFAに裏切られたと感じた。彼は2007年から4年間監督の座におり、ユーロ2012の4カ月前に辞任することになった。それでも新たな職を見つけるのに苦労をすることはないだろう。


驚きの冷遇(レパッブリカ)

フットボールを発明した国は(エリザベス女王が若き女性だった頃以降ワールドカップを勝ち取っていないが)、成功を収めて歴史を書き替える方法を知っているのなら、このイタリア人監督を支援していたはずだ。しかし、彼の選択はほぼ悲劇に等しく、そこにあったのは身の毛のよだつ南アフリカワールドカップでの記憶、そして同じ憂鬱なパフォーマンスユーロで繰り返されるという恐怖感だった。彼らは、手遅れになる前に自分たちを障害物から解放する必要があったのだ。


++++

ま、いろいろ見ていると、カペッロ自身も辞める口実を探していた、FAもいい加減テリーの擁護が厳しくなってきたってとこも見え隠れしてて、イタリアの「コリエレ・デラ・セラ」紙が『秀逸なソープオペラ』と書いたのもあながち外れてないのかも、と思ってみたり。

Saturday, February 4, 2012

タイトル争いに僅かな差をもたらす4つの要素

いよいよ勝ち点で並び、シーズンの終盤にかけてテンションも上がってきたマンチェスター勢でのタイトル争い。雌雄を決する4つポイントについて、スカイで実況解説を務めるアラン・スミス氏が「テレグラフ」紙に寄せたコラム。コラム自体はシティがエヴァートンに敗れる前のものだけど、依然として当てはまる部分も多いから、そのままピックアップ。


++(以下、要訳)++

ロベルト・マンチーニがタイトル争いでサー・アレックス・ファーガソンの先手を行くのは今回が初めてだが、強固なチームの選手層や比較的有利な対戦相手は、ブルーのマンチェスターに僅差でタイトルをもたらすことになりそうだ。


ケガ人と出場停止

通常あまりないことだが、マンチェスター・シティは、ケガよりも出場停止やアフリカ・ネーションズ・カップで選手を失うことで苦しんでいる。ヴァンサン・コンパニとヤヤ・トゥーレがここまで最も高くついた不在だ。マリオ・バロテッリの現在の出場停止の方が、まだカバーしやすいだろう。

しかし、もしダヴィド・シルバを1カ月もしくはそれ以上ケガで欠くことになったらどうだろうか?これまでも数回シルバ抜きだったことはあるが、チームが同じとはとても言えない状況となった。このスペイン人のパスの視野と創造性は、特に試合がタイトになるほど代えが利かないのだ。

若干理由は異なるとはいえ、それは街の反対側でも同じだ。マンチェスター・ユナイテッドがウェイン・ルーニーを欠けば、機動力を欠いてしまうし、彼の勝利への意欲、そして言うまでもないが、フィニッシュの場面での彼の能力を必要としているのだ。

他の面に目を向けると、ユナイテッドはここまでケガ人の波に襲われても何とか凌いできている。特にディフェンスラインの4人については、あらゆる変更を強いられてきており、ロベルト・マンチーニが持つような強固な継続性を持ち合わせてはいない。

この先については、運もカギを握るようになってくる。チームのベストプレーヤーをピッチに残せる方が、より大きなアドバンテージを持つはずだ。


チームの選手層

当然、上で述べた話とつながってくる。抱える戦力を最大限活用しながら、この挑戦を抜け目なくやり繰りしていけるのはどちらのクラブか?

ケガと出場停止を別にして、調子の下降や特にヨーロッパリーグが再開することから休養の必要など、シーズンの残り期間の間には変化が必要な時が来るだろう。

ユナイテッドはネマニャ・ヴィディッチが長期間欠場しているにもかかわらず、守備が大きく破綻しているわけではない。パトリス・エヴラが負傷しない限り、サー・アレックス・ファーガソンは5月に見込まれる復帰までやり繰りするはずだ。

しかしながら、中盤については、ライアン・ギッグスとポール・スコールズという2人のベテランに頼っていることから、もう少し脆さがある。ファーガソンが最もケガ人を出したくないポジションがここだろう。

最近のステファン・サヴィッチのプレーから考えるに、シティにとってのそうした急所はセンターバックだろう。ヤヤとコロのトゥーレ兄弟は、アフリカからすぐには戻ってこなそうだ。

このポジションを除けば、マンチーニはチームをフレッシュに保つための十分な質がある。これだけ資金を費やせば、あらためて驚くことではないが。


精神的な図太さ

これは監督だけでなく選手たちにも当てはまる部分で、ユナイテッドにアドバンテージがある。ファーガソンは当然これまでに全てを分かっている。彼は、何をいつ言ったら良いかを分かっているし、プレッシャーが高まってきた時に誰を信頼すべきかも知っている。これまでに起きてきたこと、決断してきたことで、現在の状況も経験済みだ、というのは大きい。多くのタイトルを勝ち取ってくると、どのように寝床を準備したら良いかは分かっているのだ。

対照的にマンチーニのチームの選手たちの大半にとっては、少なくともイングランドでは未経験のステージであり、いざという時になれば、神経が張り詰めるはずだ。ゴールが見えてきた時に、緊張感で普段のパフォーマンスが発揮できない者も出てくるだろう。

となると、ここでマンチーニの役割がモノを言うことになる。監督としてセリエAで3つのタイトル、このイタリア人はトラックのホームストレートに差し掛かった時に何が必要かを知っているはずだ。適切な態度をチームの内外で示すこともここには含まれてくる。緊張感溢れる姿など選手は見たいと思わないし、ロッカールームでの自信には何の役にも立たない。


残り試合

誰もが知るように、フットボールは机上の話ではない。仮にそうであれば、もうタフなアウェー戦がアーセナルくらいしか残っていないシティには、今すぐにでもプレミアリーグのトロフィーが手渡されるだろう。確かにチェルシーとユナイテッドはまだエティハド・スタジアムに乗り込んでくるが、シティが今のホームの戦いぶりにいくらかでも近いパフォーマンスができるとすれば、タイトルは手が届くところまできているように思える。

事実、4月28日には、シティのファンによって「D-Day(ノルマンディー上陸の日)」として印がつけられている。ここで地元のライバルを叩けば、優勝がほぼ決まるという目算だ。この楽観主義の一部は、ライバルがこの日曜にチェルシー、1ヶ月後にはトッテナムに乗り込まなければならないことから来ている。シティはそれぞれフラム、ボルトンと対戦する時にだ。

結局のところ、ここは我々にもまだ分からない。それでも確かなのは、シティが残りの日程をユナイテッドと交換したいとは考えないであろうことだ。


判定

シーズンの終わりにその大きなカップからシャンペンをすすりながら、タイトル獲得に向けて大きな違いをもたらした試合、決定的な瞬間をいくつか振り返るだろう。ラッキーなボールのバウンド、レフェリーの判定や仲間のひとりの魔法のようなプレーかもしれない。何が起きるにせよ、シティはそのひとつを試合終盤で勝利を掴み、エティハドを興奮させたスパーズ戦で得た。2点差を追いつかれながら試合をモノにするという、今年は行けると人々に思わせる勝利だった。

この点から考えても、シティの選手たちはこの先の困難に立ち向かっていく必要がある。そして、私はそれができると思う。2試合を残して。

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最後の「2試合残して」、ってのは、後ろから3試合目の直接対決に勝って、って意味なんだけど、個人的にはその試合の結果ますます分からない、って展開の方が面白いなー。そんくらいの混戦の方がスパーズにもチャンスがあると願いたいし。

Friday, February 3, 2012

目を覚ました各クラブ、静かな移籍市場は必然か

結局大きな動きの無いまま終了した1月の移籍マーケット。トーレス、キャロルが動いた去年と比べるとインパクトも小さいが、こうなった要因はFFPの導入が迫っていること以外にもあるのでは、という「ガーディアン」紙のデイビッド・コン記者の見方。


++(以下、要訳)++

かつても動きの少ない移籍市場(トランスファー・ウィンドウ)は以前にもあったが、今回はUEFAが示すファイナンシャル・フェアプレー(FFP)のガイドラインが、クラブの支出に影響を与えている。

1月の移籍市場ででたらめな賭けをしてフットボールの健全な未来を占おうとしても、それはいかがわしい詐欺に満ちたものになるだろう。移籍締切日のランチタイムになっても、大きな話がまとまる雰囲気はない。今年の動向について言おうとするなら、2011年に史上最大となる2.25億ポンドが投じられた移籍締切日の浪費や見出しを飾る大型移籍は、とても起こりそうにないということだ。息が詰まっていたプレミアリーグにも、空気の入れ替えが必要なのだ。

この慎重さの要因が、UEFAが赤字でも出費を続けるクラブに対して、収支のバランスを取らなければ罰則の対象になると定めたファイナンシャル・フェアプレー(FFP)であることは明らかだ。直近の決算でも1.97億ポンドの損失を計上しているマンチェスター・シティや同じく7,800万ポンドの損失となったチェルシーは、富豪オーナーたちが過度な出費を続けていくと、最悪の場合チャンピオンズリーグの出場権を剥奪されることになる。

当然そこには何らかの狙いがある。かつてはFFPをヨーロッパ的で、ミシェル・プラティニがイングランドの資金力に対抗するために騒いでいる謀略だと考えてきたプレミアリーグの各クラブも、損失を圧縮し、選手の給料を抑えることも悪くないのではないか、と気付き始めている。クラブの役員たちはUEFAのルールにインパクトがあることを理解し、クラブには代理人や選手たちからの要求に抵抗するためのエクスキューズが用意された。オーナーたちも、給料や移籍金が跳ね上がるスパイラルに陥り、大幅な損失を計上することになるため、制約の無いマーケットを持つことは本意ではないと考えるはずだ。

それでも、先週のUEFAが改めてこのFFPの目的を明確にした点からは、各クラブが即座に「長期的視野と持続性」に移っているとは言えない側面も見てとれる。2年前、2010年1月の移籍市場も緊縮されたもので、各クラブで合計3,000万ポンドしか使われなかった。当時シティの監督だったマーク・ヒューズは、4人の選手に5,000万ポンドを投じた後で、ここでは700万ポンドでアダム・ジョンソンを獲得するに止まっていた。FFPの概要が明らかになりつつある頃で、皆が現実的になっていたのだ。その1年後、昨年はヒューズの後任であるロベルト・マンチーニが、長らく追っていたエディン・ジェコを2,700万ポンドで獲得し、アストン・ヴィラはダレン・ベントの獲得に1,800万ポンド、ロマン・アブラモビッチはチェルシーには2,650万ポンドをかけてもダヴィド・ルイスが必要だと判断し、リバプールはルイス・スアレスに2,280万ポンドを費やした。そしてのその眩いばかりの移籍最終日にアブラモビッチはリバプールからフェルナンド・トーレスを買うために5,000万ポンドの出費を認め、リバプールのオーナー、フェンウェイ・スポーツ・グループもアンディ・キャロル獲得のために3,500万ポンドをニューカッスルに振り向けた。世界はフットボールはまた常軌を逸したと考えた。

プレミアリーグのクラブの中には、この騒動の結果、特にトーレスとキャロルの不調が計8,500万ポンドのほんの一部も正当化できない現状が、今季の慎重さを生みだしていると考えるところもある。サー・アレックス・ファーガソンがいつも言うように、1月の移籍市場は問題があるウィンドウだとも言われてきている。選手を買う必要があるクラブはどこも必死であるため値段が高騰する一方、加入する選手たちはシーズン途中の加入でフィットするのが容易ではない。

アブラモビッチは2011年の散財が何のタイトルにも結び付かず監督をまた一人解任したこともあり、今年は静かだ。シティは、UEFAにFFP正式導入の2014-15シーズンを前に、収支をチェックされる2012年、2013年の会計がどうなるかを懸念している。この移行期間の間も、オーナーがそれをカバーするのであれば、4,500万ポンドまでの損失しか認められていない。オーナーのアブ・ダビは、カルロス・テヴェスとの衝突があったにせよ、マンチーニはシェイク・マンスールが買収以来3年半の間に投じてきた8億ポンドの投資でリーグタイトルを勝ち取るべきだ、と判断した。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リバプールは、利益を上げようとするアメリカ人オーナーが保有しており、トロフィーによる自らのアドレナリンのために資材を投じたりはしないことから、彼らが出費を抑えているのは驚きではない。フェンウェイのオーナーであるジョン・ヘンリーは、キャロル獲得のためにニューカッスルに支払った金額は、トーレスの移籍金で得た金額に紐付いている、と語った。多くの出費をしながら、リバプールの収支はトントンだった。

こうしたメガクラブを除けば、プレミアリーグは以前に比べて安定化の傾向が強まっている。トッテナム・ホットスパー、ニューカッスル・ユナイテッド、ストーク・シティ、アストン・ヴィラ、サンダーランド、フラム、ウォルバーハンプトン・ワンダラーズなどは、資金力のあるオーナーの下でも、慎重に資金を使い、湯水のような出費には断固とした姿勢をとっている。デイビッド・モイーズが嘆くようにエヴァートンには使う資金は無く、降格圏内に沈むクラブがパニックに陥っての出費も少なくなってきた。

UEFAは、FFPが既に移籍金の高騰を抑えると言う目的のために機能し始めていると考えており、各クラブにも徹底を奨励している。選手にかけるコストについて、新たな慎重なアプローチができてきてはいるが、比較的静かだった移籍市場の動きだけで判断するのは早計だろう。絶え間のない野望や、金持ちの我慢弱さ、苦闘する者の必死さが実際の価値以上に金を使わせることは、穏やかになることはあってもなくなることはないからだ。

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スパーズの名前もチラリと出てきたけど、スパーズの場合は監督交代のサイクルがやってくる可能性があることも影響してるかな、と。今は脱税の件で裁判中だけど、本当に代表監督になれば、後任監督が好みの選手を獲るための資金はプールしておく必要がある。ベテランのレンタルが多いのもそういうことなんだな、と。

Friday, January 20, 2012

ロンドンのクラブはまだ死んじゃいない

いつもはどちらかというと「賞味期限」の長い記事を選んでるのだけど、今回はその意味では凄く短いもの。週末、奇しくもロンドン対マンチェスターの構図となった日曜の2試合に焦点を当てた、アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記事。


++(以下、要訳)++

少なくとも、2012年のイングランドのプレミアリーグは、2つの大都市、ロンドンとマンチェスターに2分されたライバル関係として記憶されることになるだろう。両都市のトップクラブたちは、どのようにしてこのフットボールというゲームを勝つかについて、次第に異なる考えを見せ始めているようだ。

このあまり紳士的とも思えない論争は1990年代から大きくなり続けているが、日曜日の2つの試合によって、あらためて焦点が当たるだろう。この2試合は、2つの都市を象徴し、各チーム同様に世界で最もポピュラーになったリーグの現状を表すものになるはずだ。

このプレミアリーグの覇権が懸かった舞台は、トッテナム・ホットスパー対マンチェスター・シティ、そしてアーセナル対マンチェスター・ユナイテッドの対戦で、ちょうど伝統的な労働者階級の北部と、金銭的に豊かな南部との戦いの構図だ。同時に、今さかんに言われている美しいフットボールをプレーするための「正しい方法」についての危機を象徴してもいる。彼らはそれぞれ、今起こっている財力と脳力との戦いを端的に示しているのだ。

リバプール出身の作家であるロジャー・ベネットは「これは国の中での栄光を掛けた戦いだが、それはパニックと恐怖に満ちている」と語った。

1980年代には、そうした地域間の戦いは殆ど注目されなかった。スタジアムのチケットの売上への悪影響を懸念したFAは毎週のハイライトとFAカップくらいしかテレビ中継をしなかった。

それが変わったのが1992年のプレミアリーグの誕生で、新たなテレビ放映権販売によって、ファンはいつでも労働者階級の北部のチームが、ロンドンを中心とした南部のチームと対戦するのを観ることができるようになった。都市内のダービーマッチに頭がいっぱいだった人々は、ユナイテッド対アーセナル、リバプール対チェルシーといった対戦にもいちいち気を留めるようになった。

それでも、10カ月に及ぶプレミアリーグのシーズンが始まった8月に、イングランド中が思いもしなかった特別な注目を浴びた試合があった。

8月28日、トッテナムと今季最初の対戦をしたマンチェスター・シティは5-1彼らをで叩きのめし、ユナイテッドは、アーセナルを彼らにとって過去114年で最悪となる8-2で打ち負かし、アーセナルの低調な開幕を際立たせた。

世界でも有数のサラリーを受け取る選手たちが揃うマンチェスターの2チームは優勢に見えた。5ヵ月が経ち、彼らはリーグの上位2席を不安定に占めている。ユナイテッドは続出するケガ人に悩まされ、シティのシーズンは毎週栄光に満ちた行進から不条理な演目へと姿を変えて行っている。

マンチェスター・シティのスター選手の一人であるカルロス・テヴェスは、後に誤解があったと釈明したものの、バイエルン・ミュンヘンとの試合に交代選手として出場する明白な侮辱を拒み、チームから追放された。21歳のチームメイト、マリオ・バロテッリは、不注意にピッチでイエローカードを集め続け、マンションでの花火遊びや、自分のアウディA8で交通事故を起こして見出しを飾っている。先月、マンチェスターの両チームはチャンピオンズリーグから敗退した。

その一方で、悲惨な開幕から復調したアーセナルは、10月の半ばから9勝1敗2分、この間25得点10失点で乗り切って来ていた。アーセナル(とロンドンのライバルであるチェルシー)がチャンピオンズリーグに残っている一方、最近のフラムとスウォンジー・シティに対する2つの敗戦は、アーセン・ヴェンゲルをしてチームに覚醒を促させている。

トッテナムも同様にマンチェスター勢への敗戦から立ち直ってきた。日曜にシティに勝つことができるなら、圧倒的に小規模な給与水準のスパーズが、首位に2ポイント差まで詰め寄ることになる。1961年以来リーグタイトルを勝ち取っていないチームとしては大きな達成と言えよう。「彼らは恐らくリーグの中で他のどのチームよりも素晴らしいフットボールを展開している」と元ウェストハムのゴールキーパーだったシャカ・ヒスロップも語っている。

マンチェスターの両チームは、その分厚い選手層を活かしてライバルを圧倒しようとしている。ディフェンスは安定していて、ラインのキープを第一の目的とし、攻撃陣は、バルセロナのようにポゼッションをし、短いパスをつなぎつつ、ダイレクトパスをアタキング・サードにいち早く入れる展開を好む。

ヴェンゲルの下でのアーセナルは、決して重厚な守備で称賛されてはいない。しかし、プレミアリーグにおいて、その美しくテンポの速いパスゲームでバルセロナに最も近づき、バレエのようなゴールを決めている。そのゴールの大半は、ストライカーで、現在18得点とリーグ得点王であるロビン・ファン・ペルシの魔法の左足から生まれている。

トッテナムの進歩は、オランダ風の「トータル・フットボール」の実践から来ており、選手たちは上下のオーバーラップを繰り返し、ペナルティ・エリアに次々とクロスが送られる。この戦術は、ここまで20試合で6得点と好調なウェールズ人ウィンガーであるギャレス・ベイルを、リーグで最も恐れられる選手へと成長させた。ベイルは試合の間でも左から右、中盤へとポジションを変え、サイドにボールを展開させさえする。

評論家で元イングランド代表のクリス・ワドルは、「誰だってギャレス・ベイルのことは知っているが、アーロン・レノンがいることで両サイドにスピードが生まれ、非常に危険な攻撃を展開できる」と語っている。

日曜のマンチェスター・シティとトッテナムの今季2戦目は、トッテナムの監督であるハリー・レドナップの創意工夫が、シティのオーナーであるアブ・ダビのシェイク・マンスールによって3.1億ポンドをかけて集められたタレント集団を打ち負かすことができるか、という試練だ。

レドナップのチームはあまりメンバーをいじらず、8月のマンチェスター勢への敗戦以降は1敗しかしていないが、このチームを作るのにかかったコストは8,300万ポンドだ。レドナップはクラブのタイトルについて、以下のように語っている。「不可能じゃないさ。難しい注文であり、我々はアウトサイダーのひとつにすぎないが、不可能じゃあない」

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とまぁ、日曜の2試合を前に、各チームをバランス良く紹介した格好。我らがスパーズを良く書いてくれるのは嬉しいけど、「トータル・フットボール」とはね。ぐふふ。

Sunday, January 8, 2012

心許ない2012年の予測

年末以来、2011年のまとめ記事が出てきた(ここでは「ヘンリー・ウィンターが振り返る2011年」と「アラン・スミスが選ぶ上期のベストゲーム、ベスト10」をピックアップ)のと同様に、メディアのあちこちで2012年の予想や展望を語る記事が出てきたけど、内容的に好感が持てたBBCのフィル・マクナルティ主幹のものをピックアップ。始めと結びの「外れたって誰も気にしやしない」ってのがナイス。


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今年もこの時期がやってきた。ヒビだらけでまったく信用できない水晶玉にかかったクモの巣を取り払い、2012年にフットボールに何が起きるかを懸命に見入るのだ。

この世界の言葉で言えば、そんな当てにならない予想は受け手が困る「病院送りのパス」に等しいが、同僚記者のハワード・ナースがかけてくれた「気にするな。間違ってたって誰も気にしないさ」という言葉と共にやらせてもらうことにする。

実際、私が以前に「2009-10シーズンはリバプールがタイトルを獲る」なんて恥ずかしくも予想したことなど誰も覚えていないだろう。予想はかすりもせず、たった23ポイント差の7位だった。

この2012年のハイライトはポーランドとウクライナで開催されるユーロ2012だろう。ファビオ・カペッロとイングランド代表は、後に続くロンドン・オリンピックに向けて完璧なムード作りをするチャンスを与えられている。

イングランドは余裕を持って予選を通過したが、2010年の南アフリカワールドカップ、ドイツ戦での大崩壊は、イングランドへの期待値を低いままにしている。カペッロは何とか前向きなムードを作りだそうと、ここ数カ月は若手の登用に励んでいる。

そしてカペッロはスティーブン・ジェラードとジャック・ウィルシャーがコンディションを戻して中盤でコンビを組むことを望んでいて、それがグループステージ最終節の共催国ウクライナ戦で、フランス戦、スウェーデン戦に出られないウェイン・ルーニーが戻ってくるまでチームに可能性を残しておくための基盤にするつもりでいる。

アイルランドは、スペイン、イタリア、クロアチアと同居するタフな課題に直面することになるが、ここを勝ち抜く術を見出す男がいるとすれば、老将ジョヴァンニ・トラパットーニだろう。このグループに衝撃を与える能力は十分にある。

カペッロ政権は大会後に終焉を迎えるが、現実的に考えて準決勝に進出できれば、カペッロも尊厳を以って退任できるだろう。ベスト8でも何とか穏やかなムードで終えられるかもしれない。

これは、2012年にFAがこのイタリア人監督の後任を指名する必要があることを意味している。全てのフットボール界のロジックは、トッテナムの監督であるハリー・レドナップこそその男だと示している。彼の国籍、フットボール哲学、抜け目のない人心掌握術で大物選手から最高の力を引き出す能力に白羽の矢が立った格好だ。

仮にレドナップが就任するとなったら、誰がスパーズを率いるのか?その鍵を握るのは、エヴァートンの会長ビル・ケンライトが、デイビッド・モイーズを助けるための終わりなき資金繰りをどうすべきかを、いかに結論付けるかだ。

モイーズは2012年にエヴァートンを率いて10周年を迎えるが、新たな資金が無ければこれ以上チームを前進させるのは難しいだろう。彼は財務に慎重なスタンスであることも、もし監督の座が空位となるのであれば、スパーズの会長であるダニエル・リヴィにアピールするところだろうし、リヴィの取り巻きもモイーズには大きな敬意を抱いている。

予想をする必要が無くなったのは、マンチェスターの2クラブのチャンピオンズリーグでの命運だ。グループステージをたとえ勝ち抜けていたとしても、バルセロナやレアル・マドリーを向こうに回して成功を収められると考えるとしたら、よほどの楽観主義者だろう。実際のところ、2012年についてはバルセロナ以上の存在は見当たらない。

ヨーロッパリーグはそのマンチェスターの2クラブの目標 -両クラブとも最終的にタイトルを獲る大きなチャンスがある- となっているが、より優先されるのはプレミアリーグのタイトルの方だ。そして、その争いはマンチェスターの街で争われるものとなる可能性が高まっている。

このマンチェスターの覇権に待ったをかけるのは、ロンドンの別の一角のクラブ、トッテナムだ。彼らは、偉大なるホワイト・ハート・レーンの伝統に忠実な、ペース、パス、ゴールの三拍子揃ったフットボールで、このエキサイティングな争いに名乗りを上げてきた。

スパーズはマンチェスターの2強に割って入るアウトサイダーの域を出ないが、レドナップが創り出すエンタテインメントは、今シーズンを彩る要素のひとつであり、プレミアリーグのどのチームよりも観る価値がある。スパーズがタイトルを勝ち取れるか?彼らはアウトサイダーだが、その躍動感とクオリティは、流れが変わるリーグの中で、確かな存在感を示すはずだ。

私のシーズン前の予想は、ユナイテッドがシティを制してフィニッシュし、20度目のリーグタイトルを勝ち取る、というものだった。ロベルト・マンチーニのチームは、その予想を逆にさせる調子だが、エティハド・スタジアムで無視できないだけの証拠が揃うまでは、今のところは最初の予想にこだわっておこうと思う。アーセナル、チェルシー、リバプールがスパーズの背後で残りひとつのチャンピオンズリーグ枠をかけて4位の座を争うだろう。

アーセナルとチェルシーは、今やチャンピオンズリーグのイングランド代表だが、彼らがユナイテッドやシティ以上にトロフィーを勝ち取る可能性が高かったとは思わない。それぞれACミラン、ナポリとのタフな対戦を控え、その先に到達できる可能性こそあれ、優勝候補の姿には程遠い。

チャンピオンズリーグの舞台に戻るというケニー・ダルグリッシュの希望は、7,800万ポンドを費やしてルイス・スアレス、アンディ・キャロル、そしてスチュワート・ダウニングを補強してきたことからは考えにくいが、ゴール不足によって遠のいてしまっている。それでも、カップ戦では強さを発揮できそうであり、ダルグリッシュがリーグカップかFAカップでアンフィールドにタイトルをもたらす可能性は高いと見ている。

スティーブ・キーンのブラックバーンでの将来、そして彼が自チームのサポーターから受け続けるうヤジは、2011年のプレミアリーグの物語の一部だった。2012年には、あと何章分追加されるだろうか?インド系ヴェンキーズがオーナーになって以降のブラックバーンの転落は既に語り尽くされているが、この古き良きクラブがいかに騒動から脱することができるかが、プレミアリーグでの生き残りにも大きな役割を果たすことになる。

降格回避の争いには、ブラックバーン、ボルトン、ウィガンとランカスター地方の香りが漂うが、いずれのチームも数カ月のうちに簡単に安全圏へと抜けられそうにはない。

私は8月にブラックバーンとウィガンを、スウォンジーと共に降格候補に挙げた。しかし、ブレンダン・ロジャース率いるスウォンジーは、既に残留に足るだけの力があることを証明して見せた。この結果、ボルトンがもう一つの降格候補となっている。ボルトンは昨季ウェンブリーで行われたFAカップ準決勝でストークに惨敗して以降の失速に歯止めがかかっていない状態だ。

したがって、ブラックバーンとウィガンの周辺には依然として降格ラインが見え続けるだろうが、降格確定は今季も最終節までもつれると見ている。

そんなところだ。水晶玉はまた奥にしまってしまうが、ひとつだけ確かに言えることは、2012年がフットボールで記念すべき年になるだけの要素は十分に揃っているということだ。

予想について?このひと言を心に留めておいて欲しい:「外れたって誰も気にしやしない」

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個人的にはスパーズについての前向きなコメントが嬉しかったけど、変にカタくならず、ストレートな語り口なのが良かった。

Monday, January 2, 2012

アラン・スミスが選ぶ上期のベストゲーム、ベスト10

スカイの実況解説やこの「テレグラフ」紙のコラムで知られるアーセナルOBのアラン・スミス氏が、今季ここまでのベストゲームを選んでいる。30日のコラムで、大晦日のマンチェスター・ユナイテッドとブラックバーンの試合とかは入ってないけど、大方、"目立った試合"ってのと差はあまり無いような気がするかな。



++(以下、要約)++

プレミアリーグ:8月28日、ホワイト・ハート・レーン
トッテナム・ホットスパー 1-5 マンチェスター・シティ

素晴らしい出来だったシティが、エディン・ジェコの4ゴールとアトレティコ・マドリーから加入したセルヒオ・アグエロのゴールでスパーズに厳しいレッスンを施した。



プレミアリーグ:8月28日、オールド・トラフォード
マンチェスター・ユナイテッド 8-2 アーセナル

マンチェスター・ユナイテッドは思いのままにアーセナルのディフェンスを切り裂き、アーセン・ヴェンゲルのチームはプレミアリーグ化以降最悪の大敗を喫した。前半の終わって3-1の時点では、アーセナルもオールド・トラフォードから何かを持ち帰ることができたかもしれないが、悪夢の6分間にアーセナルは木っ端微塵になった。



プレミアリーグ:10月23日、オールド・トラフォード
マンチェスター・ユナイテッド 1-6 マンチェスター・シティ

今季毎試合2得点以上しているシティがオールド・トラフォードに乗り込み、長年にわたって記憶に残るであろうマンチェスター・ダービーを演出した。王者ユナイテッドには残念なことに、あらゆる局面でファーガソンのチームを圧倒して賞賛を思うままにしたのは、イーストランドの喧しい隣人の方だった。




プレミアリーグ:10月23日、スタンフォード・ブリッジ
チェルシー 3-5 アーセナル

失望のシーズン序盤を経て、アーセナルが揺れる西ロンドンのチェルシーを訪れて、そこまででシーズン最高の勝利の雄叫びを上げた。チェルシーがもっとも揺らいだのは、フローラン・マルーダが送ったバックパスを受けようとしたジョン・テリーが転倒し、その日八ットリックのロビン・ファン・ペルシがボールをさらってゴールを決めた時だった。




プレミアリーグ:9月17日、イーウッド・パーク
ブラックバーン 4-3 アーセナル

オールド・トラフォードでの恥辱ほどのダメージではないだろうが、そこで見られた脆さは、今は勢いを取り戻したアーセナルが9月当時はいかに機能不全に陥っていたかを如実に物語っていた。ジェルビーニョとミケル・アルテタのゴールで2度リードしたアーセナルだったが、2度集中を失ってヤクブにゴールを許し、2度自陣のゴールネットを揺らした。信じられない。




チャンピオンズリーグ:9月27日、アリアンツ・アレナ
バイエルン・ミュンヘン 2-0 マンチェスター・シティ

破壊力溢れるカウンターで前半のうちに2ゴールを決めてシティを切り裂いたバイエルンは、シティとは格が違っていた。いずれの得点もマリオ・ゴメスが巧みさを見せ、シティの守備の対応は非常に高くついた。シティにとっては懲らしめの経験で、差を見せ付けられ、振り切られ、そしてシティには思慮が無かった。教訓のひとつだ。




チャンピオンズリーグ:12月7日、セント・ヤコブ・パーク
バーゼル 2-1 マンチェスター・ユナイテッド

マルコ・シュトレラーとアレクサンダー・フレイが、スイス・チャンピオンに相応しい勝利をもたらし、マンチェスター・ユナイテッドの方も、グループステージでの平均以下のパフォーマンスに相応しい敗退だった。単純に、彼らのパフォーマンスが十分ではなかったのだ。


プレミアリーグ:11月19日、キャロウ・ロード
ノリッジ・シティ 1-2 アーセナル

最新版のアーセン・ヴェンゲルのチームには、優美なパスと躍動感溢れるカウンター、そして知的なチームメイトと完璧なパス&ムーブのハーモニーを奏でるロビン・ファン・ペルシが揃っている。向こう見ずな素晴らしいアーセナルが戻ってきたように見え、トップ4入りへの足取りを進め始めた。



プレミアリーグ:11月27日、アンフィールド
リバプール 1-1 マンチェスター・シティ

交代出場のバロテッリが退場して10人になったシティが初黒星を喫せずに済んだのは、後半に一気に攻勢を強めたリバプールを凌いだジョー・ハートのお陰だった。テンポが速く引き込まれる試合だったが、タイトルを追い求めるロベルト・マンチーニのチームの反発力と、ケニー・ダルグリッシュの下で花開くリバプールの両方を思い出させた。



プレミアリーグ:11月19日、DWスタジアム
ウィガン 3-3 ブラックバーン・ローヴァーズ

認められるべきではないゴール、ロスタイム8分でのPK、ハーフタイムで帰ってしまうオーナーたち。よほどの試合でなければ、これをゲーム・オブ・ザ・シーズンから引きずりおろすのは難しいだろう。



++++

こう挙げてもらうと、結構見ているのだけど、個人的には終盤にくる降格争いの6ポインターとかの方がテンション上がったりすんだよね。メディアにはそういう舞台設定を盛り上げる方も頑張ってもらいたいなと思う。日本も然り。

Monday, December 26, 2011

ヘンリー・ウィンターが振り返る2011年

年末の時期になって、各メディアも1年を振り返る記事を出し始めている中でピックアップしたのは「テレグラフ」紙。おなじみのヘンリー・ウィンター記者が1年を振り返った。


++(以下、要訳)++

今年一番の試合:マンチェスター・ユナイテッド 8-2 アーセナル

単純に驚いた。アーセナルは王者に瞬く間に凄まじいテンポで切り裂かれた。特にウェイン・ルーニーの破壊力は格別だった。アーセナルは従順そのもので、アンドレイ・アルシャビンとトーマス・ロシツキの最低のパフォーマンスが際立った。クラブの公式サイトであっても「アーセナルが浴びる10ゴールの恐怖」とまでは敢えて書かないだろう。これは明確な恥晒しだった。



今年一番のチーム:バルセロナ

抵抗する方法の見当たらない、ボール奪取の修行僧たちとボールを操る手品師たちの組み合わせ。歴史上最も偉大なチームで、革新的でもある。戦術的には、バルセロナはフットボールをそのプレス万華鏡のようなパス交換で別のレベルへと導いた、マンチェスター・ユナイテッドがウェンブリーでのチャンピオンズリーグ決勝で数分間でも渡り合ったのはよくやった方だと思う。


今年一番のヒーロー:リオネル・メッシ

最高のひと言。このアルゼンチン人はボールにタンゴを教え、シミーを踊りながらエリアに侵入していった。スタイルやプレー内容すべてに、メッシはさらにフットボールを愛するファンを抱えている。その天賦の才能と働きぶりで、バルセロナの魔術師たちの長として余計な駆け引きなどしない。そしてメッシはピッチ外での謙虚さで、人間としても選手としても稀な礼儀正しさを持つ男として際立たせている。

今年一番の悪党:ゼップ・ブラッター

未だにその地位にあり、未だに困惑を与え続ける。誰も老犬に新しい芸を教えられないとは言っていない。性差別に同性愛嫌悪と続き、今度は人種差別が握手で解決できるなどというバカげたコメントを出した。狂気としか思えない。FA嫌いとともに広がるブラッターの支配は、彼が2015年までは辞めないことも意味している。フットボールにスキャンダルをもたらす学校の校長が愚かなコメントと論争を出し続けるのは、あとたった4年。ゾッとする。

今年一番の小競り合い:バロテッリ対ビブス

最高のコメディ。


今年一番のツイート

「この間ハムレットを見たが、残念なことに最後にはほぼ皆死んでしまった。これだけ多くの言葉が何の意味ももたらさないのを初めて経験したが、それでも素晴らしかった。俺のインタビューみたいなもんだな」(イアン・ホロウェイ) - チャーリー・アダムについて繰り返される質問に答えて。

大事にしたい記憶

今年5月、35年の月日を経てマンチェスター・シティが遂にFAカップを獲得した時の、人々の誇りと喜び、そして信じられない、という様子。これまでの荒れた道のりと、隣のクラブからの冷やかしは、ウェンブリーでの試合終了のホイッスルと共に全て忘れ去られ、忍耐と忠誠が報いられた。

忘れたい記憶

ギャリー・スピードの死。今年一番つらい瞬間だった。彼ほどの人格者にはそう出会えないし、ミッドフィールダーとして成功し、素晴らしいプロフェッショナルで、ウェールズを若手選手たちと共に立て直していた。皆からあふれ出る悲しみは、彼がいかにポピュラーな存在であったかを物語っている。



スピードを際立たせていたのは、魅力的なフットボールをフェアにプレーするという、誰もが認める原則からだった。そして彼は信じがたいほどに落ち着いていたし、エゴの無いスターだった。彼を偲んで拍手が鳴りやんでも、悲劇はまだ続く。悲しみにくれる2人の息子たちは父無き人生を歩んでいかねばならないのだ。

10語で表す2011年

バルサを除けば当たりとは言えないが、イングランドはユーロ出場を決めた。ふう。

新年に向けて

・ルールを決める方々、ペナルティー・ボックスの設置検討を
・レフェリーたち、重要な判定についてはTVで発言を
・ウェイン・ルーニー、スタンドにいては役に立たないことに気づいて欲しい
・ロス・バークリー、引き続きデイビッド・モイーズのもとで修業を
・ラヴァエル・モリソン、大成できるのはサー・アレックス・ファーガソンに全てを捧げて、彼の言うことにしっかりと耳を傾けられればの話だ
・選手たちが疲労困憊になり、ケガでボロボロにならずに済むよう、ウィンターブレークの導入を検討すべき

++++

ということで、引用することの多かった彼の記事。こうした記事選びも、だんだんとメディア単位よりも、記者を基準に選ぶようになってくる。ある程度の数を目にしていると、目線やスタンスも分かってくるし、前回のスアレスの記事を書いてたスミス記者のような引き抜きも理解できるようになる。こういうところにも文化の違いを感じたり。

Wednesday, December 21, 2011

ルイス・スアレス - 礼儀正しく、丁寧、繊細な男

昨日8試合の出場停止と4万ポンドの罰金との裁定が下ったユナイテッド戦でのパトリス・エヴラとのいざこざや、先日のフラム戦での相手サポーターに対する振る舞いからダーティーなイメージが付きまとうリバプールのルイス・スアレス。裁定の前のものだけど、そんな彼を別の角度から捉えようとする記事を出したのは「インディペンデント」紙のロリー・スミス記者。つい最近まで「テレグラフ」紙に在籍していたはずが、いつの間にか"移籍"していたのだが、彼の記事はいつもしっかり書かれていて好感が持てるから、どこの所属でも良いから骨太に書き続けて欲しい。


++(以下、要訳)++

レフェリーたち、対戦相手、ファン、そして敵たちの全てがルイス・スアレスのことは分かっていると考えている。スアレスはアヤックスの共食い野郎で、アフリカン・ドリームを幾度となくコケにする男だ。

直近ではフラムのファンに対して明らかな怒りの感情と共に指を立て、より深刻にはパトリス・エヴラに対する直接の人種差別的な発言を責められている。彼はイカサマ師で悪党、そして災難のもとなのだ。

しかし、彼と共に育ち、彼の人格を形成し、彼と遊び、彼とチームメイトとなり、友達となった彼をよく知る人々に話を聞いてみると、そのイメージは崩れ始める。スアレスを描写するために使われてきた、様々な軽蔑的な悪口は、ほぼ全て覆されてしまう。

ナシオナルのユース時代からの仲間で今でも親友のマティアス・カルダシオは、誰もが共感したごく初期のスーパースターだったスアレスを思い出す。子供だったスアレスをスカウトしたディレクターのアレシャンドロ・バルビは、彼がヨーロッパで「理解し難い」と形容された評判に理解を示す。2人ともスアレスは「謙虚で親切、静か」だったし、今でもそうだという点で意見が一致している。

「彼との思い出の全ては優しさに包まれたものだ」と語るのはかつてマンチェスター・ユナイテッドでプレーし、スアレスのヨーロッパで最初のクラブとなったオランダのフローニンヘンでコンビを組んでゴールを量産したエリック・ネヴランドだ。「最初はそもそも言葉ができなかったし、落ち着くまではもうひとりのウルグアイ人のブルーノ・シルバと過ごすことが多かった。彼には難しい時期だったけど、ロッカールームではいつも笑ってたよ。凄く良い意味でルイスを忘れるってのは難しいことだね」

スアレスの一番最近の騒動の場を提供してしまったフラムで監督務めるマルティン・ヨルも意見は同様だ。アヤックス時代にスアレスを守る立場だったヨルは、スアレスを「本物のキャプテン」だった、と振り返る。

スアレスと共にスタメンに名を連ねるリバプールの面々も、これには同意するだろう。スアレスは長くスタメンに定着しているが、それは単に彼のイングランドへの適応を助けた南米人の仲間がクラブにいたからではない。彼や彼の家族は確かにマキシ・ロドリゲスやルーカス・レイバ、最近加入したセバスチャン・コアテスと過ごす時間が長いが、クラブにはスティーブン・ジェラードやジェイミー・キャラガー、ペペ・レイナといったアンフィールドの影響力ある強者たちがいるのだ。ダルグリッシュが「ルイーズ」と形容するこのストライカーへの愛情は本物だ。ダルグリッシュは、スアレスが初めてメルウッドのトレーニング場を娘たちと共に訪れた時の喜びの表情をよく覚えていて、それ以来ずっと笑顔を保ち続けていると信じている。

しかし、彼は常に笑顔なわけではない。フラム戦の後には、主審のケヴィン・フレンドから適切に守られなかったことや90分間にわたって彼に向けられた野次、敗戦の痛みなどから来る苛立ちから我慢の限界を超え、手袋をした手でクレイヴン・コテージにジェスチャーを作った。

彼はエヴラに人種差別的な発言を行ったとして責められているアンフィールドでのマンチェスター・ユナイテッドとの対戦の時には、不機嫌に相手と衝突しており、笑顔ではなかった。そして、FAからの調査を受け、「スペイン語の"negrito"のニュアンス」をもって自己弁護をしようとしている時には、全く笑顔ではないだろう。

もちろん、フットボールの選手がひとたびピッチに上がるとプライベートとは全く異なる、ということに驚きは無いし、スアレス本人もそれは認めている。「妻のソフィアは、僕が家でもピッチでプレーしている時と同じだったら、もう妻ではいないつもり、って言ってるよ」と笑う。しかし、その差が大き過ぎることがより詳細な調査へとつながってしまってもいる。

前出のネヴランドは「色々な人があれこれ言っている人間と、僕がプレーしたルイスが同一人物とはちょっと思えないね」と語るが、ひとつ明確な説明が続いた。「彼にとっては勝つことこそ全てなんだ」

これは、スアレスに出会ってきた人々に共通するテーマだ。ミランにも所属したカルダシオは「ウルグアイ人は決して敗北を受け入れない。それでもルイスは誰とも違っていたよ。14歳にして失ったボールは決してあきらめずに取り返しに行ってたよ。ある試合で、俺たち21-0で勝って、ルイスは17ゴール決めたんだけど、それでも一瞬たりとも止まらなかったね。彼は勝ったとは考えないんだ。いつだってより多くを求めるんだよ」

その点にしても、エリートのスポーツマンとしては決して珍しいことではない。スアレスの際立った特質を示す唯一の方法なのだ。あるオランダ人心理学者が、昨年11月にPSVアイントホーフェンのオットマン・バッカルに噛み付いた事件を調査し、原因は敗北への失望にあるのではないかと考えた。バルビは、フラム戦でのジェスチャーと同様、彼がそれをいかに真剣に受け止めているかということ、と見ている。

バルビは続ける。「ルイスは試合を感じ取るんだよ。こんなことはウルグアイじゃ起きなかった。アイツが退場になったことだって記憶にないね。いつも礼儀正しくて丁寧な男だった。でも、ワールドカップでジダンに起きたことを見れば、最高の選手でも時には我を失うこともあり得るんだろうね」

ジダンのマテラッツィへのヘッドバットは、スアレスに突き付けられている人種差別への責めに比べれば些細なことだ。スアレスに処分が下るようであれば、彼のイメージは一気に墜ち、イングランドでのキャリアすら危ういものになるだろう。リバプールのオーナーたちも、評決がクラブの評判にもたらす影響を懸念している。

カルダシオは、「小さな頃から凄く礼儀正しいし、エヴラを侮辱するだなんて信じられないよ」と語る。バルビも考えうる一番の強い言葉でこれに同意した。「今かけられている人種差別の疑いは、決してルイスがどういう人物か、という話と同じではないと保証できる」

ひとつの懸念は、勝つためには何でもするという男であれば、そういう手段に頼ることも考えられる、ということだ。カルダシオも、スアレスの絶え間ない衝動が時として「すべきでないことをする」ことにつながることは認めている。しかし、それはむしろシミュレーション -南米人はそれを狡猾さや抜け目の無さと表現したがるが- に当てはまると考えており、スアレスがそうした差別的発言での侮辱をするとは想像できない、と言う。

しかし、スアレスを見るイングランドの観客たちにとっては、彼は腹いっぱいのシミュレーションをする悪党であり、状況が異なる。友人には謙虚で礼儀正しいと言われる男が、プレミアリーグでは手に負えない子供扱いされているのだ。このような文脈の下では、ワールドカップでああした形でガーナを下したことを喜ぶ男が、先天的な狡猾さを見せた所でスキャンダルに巻き込まれるのは簡単に想像できよう。

スアレスは、そうした評判を受けてしまった最初の選手というわけではない。エリック・カントナ、クリスティアーノ・ロナウド、ディディエ・ドログバ…、彼らは皆、スアレスに集まってしまう視線とどう対処したら良いかアドバイスできるだろう。マリオ・バロテッリはスアレスの前に注目を集めたが、彼は試合と関係ない話に関心を持たれることへの当惑を雄弁に語り、それがピッチ上での彼への視線が他の選手と異なっていることの原因だと信じている。

ネヴランドは「イングランドはまた違うところで、外国人選手にとっては馴染むのが凄く難しいこともある」と語り、バルビはやがてそれはスアレスにイングランドから出ていくこと考えさせるだろうと続けた。「彼は繊細なんだ。周りの人が彼をどう見てるか、凄く心配していると思う」

ここでも考え方は二分されるだろう。スアレスをプレミアリーグに蔓延する疫病と考える面々にとっては、彼に処分が下るなら追放する良い機会だと考えるだろうし、これに反対するのは難しい。処分が無かったとしても、彼の評判に付きまとう汚点は、彼を追い出してしまうには十分なものだ。もちろん、逆の考えで、彼が出ていくとなれば取り乱す人もいるだろうし、それは彼が熱愛するアンフィールドだけではないだろう。

そして彼の友人たちにとっては、尽きることのない無念だ。カルダシオは「俺はルイスとプレーした8年間を忘れることはないよ。俺たちにとって、アイツは最も愛されて、皆心酔してきた選手なんだ。国全体にとっての偉大なる誇りさ」 ウルグアイにおいても、"シミュレーションする手に負えない子供"とは全く異なるスアレスがいて、人々はスアレスを知っていると考えている。彼らが知っているスアレスは、我々が知るに至ったスアレスとは別人なのだ。

++++

基本的には皆メディアを通じてしか分からないことだと思うんだよな。咀嚼の仕方なんだろうけど、結局今のイングランドのメディアが一気に叩きにかかってるところを見ると、そうじゃないだろ、と感じるところも出てきて…。擁護しようとか、そういう話じゃないんだけど。

Friday, December 16, 2011

アーセナルのレジェンドとなったティエリ・アンリと涙

先週のエヴァートン戦前に、アーセナルのエミレーツ・スタジアム横でご披露目となったティエリ・アンリの銅像。本人は自分の銅像を目にして涙を浮かべつつスピーチをした。


++(以下、要訳)++

赤と白のスカーフを首に巻いたティエリ・アンリは、救世主的とも言えるポーズの自らのブロンズの像を凝視して家族やファンに目を向けると、次第に涙が浮かんできて視線を反らさざるを得なくなった。



前にこれに似た感情を味わったのは、2007年にアーセナルを去った時だとアンリは断言した。その時には、誰も彼の涙など目にしなかったが、彼はここに戻って来た。そして今回の涙は全く恥ずべきものではないし、誰もがそれを注視した。

自分の人生とも言えるクラブのスタジアムの外で、銅像として不滅の存在になること。それは夢にも思わなかったことだ、とアンリは語る。

「心の底からアーセナルには感謝したい。今までにも言ってきたことだが、『ひとたびグーナー(Gooner)となれば、生涯グーナー』とこれからも言い続けるよ」と言うアンリの声は詰まっていた。

アンリの像は、アーセナルに最も多大な影響を与えた3人 - アンリ、トニー・アダムス、ハーバート・チャップマン - の銅像のひとつであり、クラブの創設125周年を祝う一環で建てられた。アンリにとっては、自分が常にクラブに対して感じてきたものを体現するものに感じられた。

重さ200kgの記念碑は、アンリがアーセナルにもたらした驚くべき226ゴールの中でも伝説的な、2002年11月のハイバリーでのスパーズ戦でのゴールを祝うポーズで、膝をついたスライディングで喜びを見せている。「これは僕がいかにアーセナルを愛しているかを示す完璧な例だよ。膝立ちをしてエミレーツ・スタジアムを向いてる - 僕のすぐ後ろ側にはハイバリー - とは驚きだよ」

※このトップ25ゴールの中では第5位がそのスパーズ戦のもの。

最初にこの名誉について聞かされた時にはからかわれているのだと感じた。125年の歴史を彩った偉大な選手たちを差し置いて?おい、冗談だろ?と代理人のダレン・ディーンに聞いたが、答はそうではなかった。

そして、会長のピーター・ヒルウッドが銅像を覆っていた赤い布を取り払うボタンを押すと、数百人の熱きファンたちが拍手と共に歌い始め、アンリの表情は子供のようなはにかみに変わった。確信を得るために、アンリは愛娘のティーを連れて、スタジアムの南東に立つその記念碑の周りを歩いてみた。

「僕はキャリアの中で様々なものを勝ち取る幸運に恵まれてきたけど、これはその中でもトップだ。現実なんだと思うと圧倒されそうだよ」ヒルウッドが、気に入ってくれたか、とすかさず聞くと、アンリは「ああ、もちろん」と会長に断言した。

もしかすると、アーセン・ヴェンゲルも認めるクラブ史上最も偉大で博識な監督だったチャップマンや驚くべきキャプテンだったアダムスと並び立つという超然たる事実が、アンリに涙を流させたのかもしれない。

しかし、34歳にしてアンリは現在もニューヨークでゴールを量産しており、マーティン・キーオンが先月、ローン加入で仕事ができるのではないかと語っていたくらいだ。生きた伝説となることについてアンリは次のように語った。「前にここまで感情的になったのはアーセナルを去ったときだった。涙が出たけど誰にも気付かれはしなかった。それでも僕はアーセナルを愛しているし試合も観る。負けるた時にはいつだって痛みを感じるよ。いつだって僕は自分の人生のクラブに戻ってくるさ。一番良いのはすべての偉大な選手たちの一部を集めてひとつの銅像にできることなんだけどね。選ばれたことは本当に名誉に感じているよ」

ヴェンゲルが群衆になぜアンリでなければならなかったのかを説明した。「彼のセンセーショナルなキャリアは単純にアンリ本人が持っていた違いによるものだ。彼には、選手であれば誰もが持ちたいと夢見るもの - フィジカル能力、技術レベル、優れた知性と献身 - の全てを持ち合わせていた。この世界で勝者となるために必要な全てを備えていたのだ」

そして、彼がモナコで最初にティーンエイジャーとして育て始めたアンリに向かってこう言った。「ティエリ、よくやったよ。おめでとう。君は本当にスペシャルだった」全くもってスペシャルだった。そしてスペシャルだっただけにいつの日かエミレーツに監督として戻ることがあるか、という疑問が湧いてくる。展望を聞かれたアンリは、ヴェンゲルの横で笑って答えた。「いつかはね。でもいつ彼が辞めるって言うんだい?」

ヴェンゲルも「まずは、彼を選手として見ようじゃないか。彼のキャリアは終わってないのだしね。しかし、私の下にいた多くの選手、例えばティエリやパトリック・ヴィエラには監督になる資質があると思っている、というべきだろう」と返した。

ヴェンゲルはアーセナルでアンリにコーチ修行をさせるだろうか?「もちろん。だが彼は急がないとね。私も決して若くはないから」その通りだ。そして、それはもうひとつの銅像がやがてこの3つに加わるはずであることを思い出させる。以前、ヴェンゲルの半身像が幹部向けの入口に作られた時、彼は「あれは誰だ?まるでもう死んだみたいだな」と語っていたことがある。

アンリはエミレーツのアーセン・ヴェンゲル・スタンドに座ることについては、「ああ、このエヴァートン戦で勝つためにね」と完璧な答えをヴェンゲルに返した。ヴェンゲルの銅像がアンリの横に並び立つ日はまだ先で良さそうだ。

++++

いい話。選手にとっても、心のクラブをこうして持てることは幸せなことだと思う。

Friday, December 9, 2011

ただいま最高潮のスパーズ

2回続けてのスパーズ関連。今回はアメリカの経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」に出てきたスパーズの好調ぶりに関する記事。こんなメディアにまで出てくる、ってくらい、今の好調さが際立っているのだと思う。前回のキングのインタビュー記事が内側からの洞察とすれば、これは外側からの目だけど、語られてる論点はメンバー固定のメリットとリスク。※記事は先週末のボルトン戦の前のもの。


++(以下、要訳)++

シーズンも4カ月目に入り、否定し難い驚くべきコンセプトがここにはある。トッテナム・ホットスパーは、プレミアリーグのタイトル挑戦者のペースに食らいついているだけではなく、彼ら自身がその一員となっているのだ。

いまトッテナムはイングランドで最も熱いチームだ。スパーズはここ10試合で9勝1分け、30ポイントのうち、実に28ポイントを稼ぎ出しているのだ。チームは現在1試合消化が少ないながら、マンチェスター・シティと7差、マンチェスター・ユナイテッドと2差の3位につけている。

伝統的なスタイルを採るハリー・レドナップと、両ウィングのスピードを活かしたワイドな戦い方で、スパーズは全てのクラブが2枚の快速ウィングを置いてタッチライン沿いを駆け上がり、相手ディフェンダーを舞うように交わしてエリアをクロスで切り裂いていた時代へと先祖返りをしている。

この驚くべき快進撃に、ファンたちもスパーズが史上初となるリーグ優勝とFAカップの2冠を成し遂げた栄光の1960年代と今のチームを並べているくらいだ。しかし、それは今のスパーズを古い時代になぞらえる唯一の理由というわけではない。スパーズの今季ここまでの台頭は、同様に古い哲学とも言える「勝っているチームをいじるな」という哲学によって成し遂げられている。

他のチームのスタメンの選び方など気にしない。プレミアリーグへのメンバー登録が締め切られた8月31日以来、トッテナムは10試合で15人の選手しか先発で起用しなかった。同じ期間で比較すると、スウォンジーと並んでリーグ最少の数字だ。全試合で先発したのは7人、1試合を除けば9人、というのは20チーム中最高の数字になる。対照的にマンチェスター・ユナイテッドは22人、チェルシーとアーセナルは20人を先発で起用している。

今はスピードと激しさが特徴の現代サッカーでは試合数も多く、強豪チームの多くにとってはローテーションの採用が最もトレンディな戦い方だ。そんな時代だけに、トッテナムが成し遂げていることは特筆すべきなのだ。

同じ11人を毎週土曜日に起用し続けて、チームをタイトルへと導くなどというのは、もはや古めかしささえ漂う戦い方であり、逆に革命的なものとしても通用しそうなくらいだ。レドナップは、「だからこそ、我々はいまリーグで上手くやっているんだ。そんなに沢山代えていたら難しいと思うね」と語っている。

勝ちチームを変えない、というのがいつも急進的な考え方だったわけではない。1981年にアストン・ヴィラがタイトルを勝ち取った時に、当時の指揮官ロン・サンダースはシーズンを通じて14人の選手しか起用しなかった。リバプールは1984-85シーズンにリーグとヨーロッパのカップを勝ち取るのに15人の選手しか必要としなかった。

しかし、時代が変わって年中連戦続きとなると、トップクラブの監督たちは皆おせっかいをするようになった。昨シーズンタイトルを勝ち取ったマンチェスター・ユナイテッドは、2試合続けて同じスタメンで臨んだのは僅かに4度だった。かつてリバプールを率いたラファエル・ベニテスは、99試合連続で異なるスタメンを並べた。

「どこであれトップチームにはメンバーが揃っていて、8人、9人、10人と選手を入れ替えることができる。シーズンは厳しいものだし、ごく普通のことだろう」と、今季既に19人をスタメンで起用しているマンチェスター・シティのロベルト・マンチーニは語る。

しかし、スパーズは安定したメンバーでも勝てると言うことを証明したといえる。スパーズはここ5試合を見てもスタメン変更は3人だけで、原因は全てケガだ。そしてメンバー選択でのこの継続性によって、輝かしい成績を現在残しているのだ。

レドリー・キングとユネス・カブールは中央の守備で強固な連係を見せており、過去10試合中9試合で共に先発、この間スパーズは僅かに7失点だ。ピッチの反対側では、ラファエル・ファン・デル・ファールトとエマニュエル・アデバヨルが2人で13ゴールを挙げ、中盤の軸となっているスコット・パーカーとルカ・モドリッチがスパーズのボール支配率に貢献している。

無論トッテナムの連勝には、単に同じメンバーをピッチに送り出していること以上の理由がある。そのうちの多くは、現在絶好調のギャレス・ベイルのパフォーマンスにあるだろう。このウェールズ人ウィングは、強さ、スピード、ワイドな位置からの正確なクロスによって、ヨーロッパのサッカー界で最も欲しがられる存在となっている。

加えて、スパーズは今季のチャンピオンリーグ出場を逃し、グループリーグ敗退寸前のヨーロッパリーグにはメンバーを落として臨んでいる。タイトルを狙う他のチームが週の半ばにヨーロッパの強豪と相まみえている間、トッテナムのスタメンの面々は毎週1試合ずつこなすだけで済んできた。

トッテナムが上昇傾向にあるとしても、これだけ少人数の選手に頼ってタイトル争いに残り続けられるか、という疑念はある。シーズンの疲れが積み上がり始めれば、ケガでカギとなるメンバーが出場できないケースも出てくるだろうし、その時に頼るのはそれまで出場時間の少ない選手だ。3-1で勝利したウェストブロミッジ戦では、モドリッチとファン・デル・ファールトを欠いたが、やはりそれまでの流暢なプレーは鳴りを潜めた。

そして10数人の選手だけが先発するとしたら、25人のメンバーの間での不満噴出をどう避けるのかという問題が出てくる。ウェストブロム戦では、ジャメイン・デフォーがファン・デル・ファールトの代わりにプレーしてスパーズの2点目を決めもしたが、彼自身、サブという立場を受け入れるのには難しさを感じていると語っている。

それでも、大半の選手たちはチームが勝ち続けている限りにおいて、ベンチにいることも受け入れると語っている。ディフェンダーのウィリアム・ギャラスはこう語った。「ウチには俺みたいに毎試合プレーしたと思ってる強力なメンバーが揃ってる。時に受け入れることは難しいし、挫折感も味わうが、やがてそれは受け入れるようになるんだ。より重要なことはチームが勝っているということだからな」

++++

記事の言う通り、ここにきてキングが欠場し始めてるのは気になるところだけど、そんな時に最後のところでコメントしてるギャラスが穴を埋めているのは心強い。年末年始の過密日程と未消化のエヴァートン戦をこなしたところでどの位置にいるか、楽しみなところ。