年末以来、2011年のまとめ記事が出てきた(ここでは「ヘンリー・ウィンターが振り返る2011年」と「アラン・スミスが選ぶ上期のベストゲーム、ベスト10」をピックアップ)のと同様に、メディアのあちこちで2012年の予想や展望を語る記事が出てきたけど、内容的に好感が持てたBBCのフィル・マクナルティ主幹のものをピックアップ。始めと結びの「外れたって誰も気にしやしない」ってのがナイス。
++++
今年もこの時期がやってきた。ヒビだらけでまったく信用できない水晶玉にかかったクモの巣を取り払い、2012年にフットボールに何が起きるかを懸命に見入るのだ。
この世界の言葉で言えば、そんな当てにならない予想は受け手が困る「病院送りのパス」に等しいが、同僚記者のハワード・ナースがかけてくれた「気にするな。間違ってたって誰も気にしないさ」という言葉と共にやらせてもらうことにする。
実際、私が以前に「2009-10シーズンはリバプールがタイトルを獲る」なんて恥ずかしくも予想したことなど誰も覚えていないだろう。予想はかすりもせず、たった23ポイント差の7位だった。
この2012年のハイライトはポーランドとウクライナで開催されるユーロ2012だろう。ファビオ・カペッロとイングランド代表は、後に続くロンドン・オリンピックに向けて完璧なムード作りをするチャンスを与えられている。
イングランドは余裕を持って予選を通過したが、2010年の南アフリカワールドカップ、ドイツ戦での大崩壊は、イングランドへの期待値を低いままにしている。カペッロは何とか前向きなムードを作りだそうと、ここ数カ月は若手の登用に励んでいる。
そしてカペッロはスティーブン・ジェラードとジャック・ウィルシャーがコンディションを戻して中盤でコンビを組むことを望んでいて、それがグループステージ最終節の共催国ウクライナ戦で、フランス戦、スウェーデン戦に出られないウェイン・ルーニーが戻ってくるまでチームに可能性を残しておくための基盤にするつもりでいる。
アイルランドは、スペイン、イタリア、クロアチアと同居するタフな課題に直面することになるが、ここを勝ち抜く術を見出す男がいるとすれば、老将ジョヴァンニ・トラパットーニだろう。このグループに衝撃を与える能力は十分にある。
カペッロ政権は大会後に終焉を迎えるが、現実的に考えて準決勝に進出できれば、カペッロも尊厳を以って退任できるだろう。ベスト8でも何とか穏やかなムードで終えられるかもしれない。
これは、2012年にFAがこのイタリア人監督の後任を指名する必要があることを意味している。全てのフットボール界のロジックは、トッテナムの監督であるハリー・レドナップこそその男だと示している。彼の国籍、フットボール哲学、抜け目のない人心掌握術で大物選手から最高の力を引き出す能力に白羽の矢が立った格好だ。
仮にレドナップが就任するとなったら、誰がスパーズを率いるのか?その鍵を握るのは、エヴァートンの会長ビル・ケンライトが、デイビッド・モイーズを助けるための終わりなき資金繰りをどうすべきかを、いかに結論付けるかだ。
モイーズは2012年にエヴァートンを率いて10周年を迎えるが、新たな資金が無ければこれ以上チームを前進させるのは難しいだろう。彼は財務に慎重なスタンスであることも、もし監督の座が空位となるのであれば、スパーズの会長であるダニエル・リヴィにアピールするところだろうし、リヴィの取り巻きもモイーズには大きな敬意を抱いている。
予想をする必要が無くなったのは、マンチェスターの2クラブのチャンピオンズリーグでの命運だ。グループステージをたとえ勝ち抜けていたとしても、バルセロナやレアル・マドリーを向こうに回して成功を収められると考えるとしたら、よほどの楽観主義者だろう。実際のところ、2012年についてはバルセロナ以上の存在は見当たらない。
ヨーロッパリーグはそのマンチェスターの2クラブの目標 -両クラブとも最終的にタイトルを獲る大きなチャンスがある- となっているが、より優先されるのはプレミアリーグのタイトルの方だ。そして、その争いはマンチェスターの街で争われるものとなる可能性が高まっている。
このマンチェスターの覇権に待ったをかけるのは、ロンドンの別の一角のクラブ、トッテナムだ。彼らは、偉大なるホワイト・ハート・レーンの伝統に忠実な、ペース、パス、ゴールの三拍子揃ったフットボールで、このエキサイティングな争いに名乗りを上げてきた。
スパーズはマンチェスターの2強に割って入るアウトサイダーの域を出ないが、レドナップが創り出すエンタテインメントは、今シーズンを彩る要素のひとつであり、プレミアリーグのどのチームよりも観る価値がある。スパーズがタイトルを勝ち取れるか?彼らはアウトサイダーだが、その躍動感とクオリティは、流れが変わるリーグの中で、確かな存在感を示すはずだ。
私のシーズン前の予想は、ユナイテッドがシティを制してフィニッシュし、20度目のリーグタイトルを勝ち取る、というものだった。ロベルト・マンチーニのチームは、その予想を逆にさせる調子だが、エティハド・スタジアムで無視できないだけの証拠が揃うまでは、今のところは最初の予想にこだわっておこうと思う。アーセナル、チェルシー、リバプールがスパーズの背後で残りひとつのチャンピオンズリーグ枠をかけて4位の座を争うだろう。
アーセナルとチェルシーは、今やチャンピオンズリーグのイングランド代表だが、彼らがユナイテッドやシティ以上にトロフィーを勝ち取る可能性が高かったとは思わない。それぞれACミラン、ナポリとのタフな対戦を控え、その先に到達できる可能性こそあれ、優勝候補の姿には程遠い。
チャンピオンズリーグの舞台に戻るというケニー・ダルグリッシュの希望は、7,800万ポンドを費やしてルイス・スアレス、アンディ・キャロル、そしてスチュワート・ダウニングを補強してきたことからは考えにくいが、ゴール不足によって遠のいてしまっている。それでも、カップ戦では強さを発揮できそうであり、ダルグリッシュがリーグカップかFAカップでアンフィールドにタイトルをもたらす可能性は高いと見ている。
スティーブ・キーンのブラックバーンでの将来、そして彼が自チームのサポーターから受け続けるうヤジは、2011年のプレミアリーグの物語の一部だった。2012年には、あと何章分追加されるだろうか?インド系ヴェンキーズがオーナーになって以降のブラックバーンの転落は既に語り尽くされているが、この古き良きクラブがいかに騒動から脱することができるかが、プレミアリーグでの生き残りにも大きな役割を果たすことになる。
降格回避の争いには、ブラックバーン、ボルトン、ウィガンとランカスター地方の香りが漂うが、いずれのチームも数カ月のうちに簡単に安全圏へと抜けられそうにはない。
私は8月にブラックバーンとウィガンを、スウォンジーと共に降格候補に挙げた。しかし、ブレンダン・ロジャース率いるスウォンジーは、既に残留に足るだけの力があることを証明して見せた。この結果、ボルトンがもう一つの降格候補となっている。ボルトンは昨季ウェンブリーで行われたFAカップ準決勝でストークに惨敗して以降の失速に歯止めがかかっていない状態だ。
したがって、ブラックバーンとウィガンの周辺には依然として降格ラインが見え続けるだろうが、降格確定は今季も最終節までもつれると見ている。
そんなところだ。水晶玉はまた奥にしまってしまうが、ひとつだけ確かに言えることは、2012年がフットボールで記念すべき年になるだけの要素は十分に揃っているということだ。
予想について?このひと言を心に留めておいて欲しい:「外れたって誰も気にしやしない」
++++
個人的にはスパーズについての前向きなコメントが嬉しかったけど、変にカタくならず、ストレートな語り口なのが良かった。
Sunday, January 8, 2012
Monday, January 2, 2012
アラン・スミスが選ぶ上期のベストゲーム、ベスト10
スカイの実況解説やこの「テレグラフ」紙のコラムで知られるアーセナルOBのアラン・スミス氏が、今季ここまでのベストゲームを選んでいる。30日のコラムで、大晦日のマンチェスター・ユナイテッドとブラックバーンの試合とかは入ってないけど、大方、"目立った試合"ってのと差はあまり無いような気がするかな。
++(以下、要約)++
プレミアリーグ:8月28日、ホワイト・ハート・レーン
トッテナム・ホットスパー 1-5 マンチェスター・シティ
素晴らしい出来だったシティが、エディン・ジェコの4ゴールとアトレティコ・マドリーから加入したセルヒオ・アグエロのゴールでスパーズに厳しいレッスンを施した。
プレミアリーグ:8月28日、オールド・トラフォード
マンチェスター・ユナイテッド 8-2 アーセナル
マンチェスター・ユナイテッドは思いのままにアーセナルのディフェンスを切り裂き、アーセン・ヴェンゲルのチームはプレミアリーグ化以降最悪の大敗を喫した。前半の終わって3-1の時点では、アーセナルもオールド・トラフォードから何かを持ち帰ることができたかもしれないが、悪夢の6分間にアーセナルは木っ端微塵になった。
プレミアリーグ:10月23日、オールド・トラフォード
マンチェスター・ユナイテッド 1-6 マンチェスター・シティ
今季毎試合2得点以上しているシティがオールド・トラフォードに乗り込み、長年にわたって記憶に残るであろうマンチェスター・ダービーを演出した。王者ユナイテッドには残念なことに、あらゆる局面でファーガソンのチームを圧倒して賞賛を思うままにしたのは、イーストランドの喧しい隣人の方だった。
プレミアリーグ:10月23日、スタンフォード・ブリッジ
チェルシー 3-5 アーセナル
失望のシーズン序盤を経て、アーセナルが揺れる西ロンドンのチェルシーを訪れて、そこまででシーズン最高の勝利の雄叫びを上げた。チェルシーがもっとも揺らいだのは、フローラン・マルーダが送ったバックパスを受けようとしたジョン・テリーが転倒し、その日八ットリックのロビン・ファン・ペルシがボールをさらってゴールを決めた時だった。
プレミアリーグ:9月17日、イーウッド・パーク
ブラックバーン 4-3 アーセナル
オールド・トラフォードでの恥辱ほどのダメージではないだろうが、そこで見られた脆さは、今は勢いを取り戻したアーセナルが9月当時はいかに機能不全に陥っていたかを如実に物語っていた。ジェルビーニョとミケル・アルテタのゴールで2度リードしたアーセナルだったが、2度集中を失ってヤクブにゴールを許し、2度自陣のゴールネットを揺らした。信じられない。
チャンピオンズリーグ:9月27日、アリアンツ・アレナ
バイエルン・ミュンヘン 2-0 マンチェスター・シティ
破壊力溢れるカウンターで前半のうちに2ゴールを決めてシティを切り裂いたバイエルンは、シティとは格が違っていた。いずれの得点もマリオ・ゴメスが巧みさを見せ、シティの守備の対応は非常に高くついた。シティにとっては懲らしめの経験で、差を見せ付けられ、振り切られ、そしてシティには思慮が無かった。教訓のひとつだ。
チャンピオンズリーグ:12月7日、セント・ヤコブ・パーク
バーゼル 2-1 マンチェスター・ユナイテッド
マルコ・シュトレラーとアレクサンダー・フレイが、スイス・チャンピオンに相応しい勝利をもたらし、マンチェスター・ユナイテッドの方も、グループステージでの平均以下のパフォーマンスに相応しい敗退だった。単純に、彼らのパフォーマンスが十分ではなかったのだ。
プレミアリーグ:11月19日、キャロウ・ロード
ノリッジ・シティ 1-2 アーセナル
最新版のアーセン・ヴェンゲルのチームには、優美なパスと躍動感溢れるカウンター、そして知的なチームメイトと完璧なパス&ムーブのハーモニーを奏でるロビン・ファン・ペルシが揃っている。向こう見ずな素晴らしいアーセナルが戻ってきたように見え、トップ4入りへの足取りを進め始めた。
プレミアリーグ:11月27日、アンフィールド
リバプール 1-1 マンチェスター・シティ
交代出場のバロテッリが退場して10人になったシティが初黒星を喫せずに済んだのは、後半に一気に攻勢を強めたリバプールを凌いだジョー・ハートのお陰だった。テンポが速く引き込まれる試合だったが、タイトルを追い求めるロベルト・マンチーニのチームの反発力と、ケニー・ダルグリッシュの下で花開くリバプールの両方を思い出させた。
プレミアリーグ:11月19日、DWスタジアム
ウィガン 3-3 ブラックバーン・ローヴァーズ
認められるべきではないゴール、ロスタイム8分でのPK、ハーフタイムで帰ってしまうオーナーたち。よほどの試合でなければ、これをゲーム・オブ・ザ・シーズンから引きずりおろすのは難しいだろう。
++++
こう挙げてもらうと、結構見ているのだけど、個人的には終盤にくる降格争いの6ポインターとかの方がテンション上がったりすんだよね。メディアにはそういう舞台設定を盛り上げる方も頑張ってもらいたいなと思う。日本も然り。
++(以下、要約)++
プレミアリーグ:8月28日、ホワイト・ハート・レーン
トッテナム・ホットスパー 1-5 マンチェスター・シティ
素晴らしい出来だったシティが、エディン・ジェコの4ゴールとアトレティコ・マドリーから加入したセルヒオ・アグエロのゴールでスパーズに厳しいレッスンを施した。
プレミアリーグ:8月28日、オールド・トラフォード
マンチェスター・ユナイテッド 8-2 アーセナル
マンチェスター・ユナイテッドは思いのままにアーセナルのディフェンスを切り裂き、アーセン・ヴェンゲルのチームはプレミアリーグ化以降最悪の大敗を喫した。前半の終わって3-1の時点では、アーセナルもオールド・トラフォードから何かを持ち帰ることができたかもしれないが、悪夢の6分間にアーセナルは木っ端微塵になった。
プレミアリーグ:10月23日、オールド・トラフォード
マンチェスター・ユナイテッド 1-6 マンチェスター・シティ
今季毎試合2得点以上しているシティがオールド・トラフォードに乗り込み、長年にわたって記憶に残るであろうマンチェスター・ダービーを演出した。王者ユナイテッドには残念なことに、あらゆる局面でファーガソンのチームを圧倒して賞賛を思うままにしたのは、イーストランドの喧しい隣人の方だった。
プレミアリーグ:10月23日、スタンフォード・ブリッジ
チェルシー 3-5 アーセナル
失望のシーズン序盤を経て、アーセナルが揺れる西ロンドンのチェルシーを訪れて、そこまででシーズン最高の勝利の雄叫びを上げた。チェルシーがもっとも揺らいだのは、フローラン・マルーダが送ったバックパスを受けようとしたジョン・テリーが転倒し、その日八ットリックのロビン・ファン・ペルシがボールをさらってゴールを決めた時だった。
プレミアリーグ:9月17日、イーウッド・パーク
ブラックバーン 4-3 アーセナル
オールド・トラフォードでの恥辱ほどのダメージではないだろうが、そこで見られた脆さは、今は勢いを取り戻したアーセナルが9月当時はいかに機能不全に陥っていたかを如実に物語っていた。ジェルビーニョとミケル・アルテタのゴールで2度リードしたアーセナルだったが、2度集中を失ってヤクブにゴールを許し、2度自陣のゴールネットを揺らした。信じられない。
チャンピオンズリーグ:9月27日、アリアンツ・アレナ
バイエルン・ミュンヘン 2-0 マンチェスター・シティ
破壊力溢れるカウンターで前半のうちに2ゴールを決めてシティを切り裂いたバイエルンは、シティとは格が違っていた。いずれの得点もマリオ・ゴメスが巧みさを見せ、シティの守備の対応は非常に高くついた。シティにとっては懲らしめの経験で、差を見せ付けられ、振り切られ、そしてシティには思慮が無かった。教訓のひとつだ。
チャンピオンズリーグ:12月7日、セント・ヤコブ・パーク
バーゼル 2-1 マンチェスター・ユナイテッド
マルコ・シュトレラーとアレクサンダー・フレイが、スイス・チャンピオンに相応しい勝利をもたらし、マンチェスター・ユナイテッドの方も、グループステージでの平均以下のパフォーマンスに相応しい敗退だった。単純に、彼らのパフォーマンスが十分ではなかったのだ。
プレミアリーグ:11月19日、キャロウ・ロード
ノリッジ・シティ 1-2 アーセナル
最新版のアーセン・ヴェンゲルのチームには、優美なパスと躍動感溢れるカウンター、そして知的なチームメイトと完璧なパス&ムーブのハーモニーを奏でるロビン・ファン・ペルシが揃っている。向こう見ずな素晴らしいアーセナルが戻ってきたように見え、トップ4入りへの足取りを進め始めた。
プレミアリーグ:11月27日、アンフィールド
リバプール 1-1 マンチェスター・シティ
交代出場のバロテッリが退場して10人になったシティが初黒星を喫せずに済んだのは、後半に一気に攻勢を強めたリバプールを凌いだジョー・ハートのお陰だった。テンポが速く引き込まれる試合だったが、タイトルを追い求めるロベルト・マンチーニのチームの反発力と、ケニー・ダルグリッシュの下で花開くリバプールの両方を思い出させた。
プレミアリーグ:11月19日、DWスタジアム
ウィガン 3-3 ブラックバーン・ローヴァーズ
認められるべきではないゴール、ロスタイム8分でのPK、ハーフタイムで帰ってしまうオーナーたち。よほどの試合でなければ、これをゲーム・オブ・ザ・シーズンから引きずりおろすのは難しいだろう。
++++
こう挙げてもらうと、結構見ているのだけど、個人的には終盤にくる降格争いの6ポインターとかの方がテンション上がったりすんだよね。メディアにはそういう舞台設定を盛り上げる方も頑張ってもらいたいなと思う。日本も然り。
Monday, December 26, 2011
ヘンリー・ウィンターが振り返る2011年
年末の時期になって、各メディアも1年を振り返る記事を出し始めている中でピックアップしたのは「テレグラフ」紙。おなじみのヘンリー・ウィンター記者が1年を振り返った。
++(以下、要訳)++
今年一番の試合:マンチェスター・ユナイテッド 8-2 アーセナル
単純に驚いた。アーセナルは王者に瞬く間に凄まじいテンポで切り裂かれた。特にウェイン・ルーニーの破壊力は格別だった。アーセナルは従順そのもので、アンドレイ・アルシャビンとトーマス・ロシツキの最低のパフォーマンスが際立った。クラブの公式サイトであっても「アーセナルが浴びる10ゴールの恐怖」とまでは敢えて書かないだろう。これは明確な恥晒しだった。
今年一番のチーム:バルセロナ
抵抗する方法の見当たらない、ボール奪取の修行僧たちとボールを操る手品師たちの組み合わせ。歴史上最も偉大なチームで、革新的でもある。戦術的には、バルセロナはフットボールをそのプレス万華鏡のようなパス交換で別のレベルへと導いた、マンチェスター・ユナイテッドがウェンブリーでのチャンピオンズリーグ決勝で数分間でも渡り合ったのはよくやった方だと思う。
今年一番のヒーロー:リオネル・メッシ
最高のひと言。このアルゼンチン人はボールにタンゴを教え、シミーを踊りながらエリアに侵入していった。スタイルやプレー内容すべてに、メッシはさらにフットボールを愛するファンを抱えている。その天賦の才能と働きぶりで、バルセロナの魔術師たちの長として余計な駆け引きなどしない。そしてメッシはピッチ外での謙虚さで、人間としても選手としても稀な礼儀正しさを持つ男として際立たせている。
今年一番の悪党:ゼップ・ブラッター
未だにその地位にあり、未だに困惑を与え続ける。誰も老犬に新しい芸を教えられないとは言っていない。性差別に同性愛嫌悪と続き、今度は人種差別が握手で解決できるなどというバカげたコメントを出した。狂気としか思えない。FA嫌いとともに広がるブラッターの支配は、彼が2015年までは辞めないことも意味している。フットボールにスキャンダルをもたらす学校の校長が愚かなコメントと論争を出し続けるのは、あとたった4年。ゾッとする。
今年一番の小競り合い:バロテッリ対ビブス
最高のコメディ。
今年一番のツイート
「この間ハムレットを見たが、残念なことに最後にはほぼ皆死んでしまった。これだけ多くの言葉が何の意味ももたらさないのを初めて経験したが、それでも素晴らしかった。俺のインタビューみたいなもんだな」(イアン・ホロウェイ) - チャーリー・アダムについて繰り返される質問に答えて。
大事にしたい記憶
今年5月、35年の月日を経てマンチェスター・シティが遂にFAカップを獲得した時の、人々の誇りと喜び、そして信じられない、という様子。これまでの荒れた道のりと、隣のクラブからの冷やかしは、ウェンブリーでの試合終了のホイッスルと共に全て忘れ去られ、忍耐と忠誠が報いられた。
忘れたい記憶
ギャリー・スピードの死。今年一番つらい瞬間だった。彼ほどの人格者にはそう出会えないし、ミッドフィールダーとして成功し、素晴らしいプロフェッショナルで、ウェールズを若手選手たちと共に立て直していた。皆からあふれ出る悲しみは、彼がいかにポピュラーな存在であったかを物語っている。
スピードを際立たせていたのは、魅力的なフットボールをフェアにプレーするという、誰もが認める原則からだった。そして彼は信じがたいほどに落ち着いていたし、エゴの無いスターだった。彼を偲んで拍手が鳴りやんでも、悲劇はまだ続く。悲しみにくれる2人の息子たちは父無き人生を歩んでいかねばならないのだ。
10語で表す2011年
バルサを除けば当たりとは言えないが、イングランドはユーロ出場を決めた。ふう。
新年に向けて
・ルールを決める方々、ペナルティー・ボックスの設置検討を
・レフェリーたち、重要な判定についてはTVで発言を
・ウェイン・ルーニー、スタンドにいては役に立たないことに気づいて欲しい
・ロス・バークリー、引き続きデイビッド・モイーズのもとで修業を
・ラヴァエル・モリソン、大成できるのはサー・アレックス・ファーガソンに全てを捧げて、彼の言うことにしっかりと耳を傾けられればの話だ
・選手たちが疲労困憊になり、ケガでボロボロにならずに済むよう、ウィンターブレークの導入を検討すべき
++++
ということで、引用することの多かった彼の記事。こうした記事選びも、だんだんとメディア単位よりも、記者を基準に選ぶようになってくる。ある程度の数を目にしていると、目線やスタンスも分かってくるし、前回のスアレスの記事を書いてたスミス記者のような引き抜きも理解できるようになる。こういうところにも文化の違いを感じたり。
++(以下、要訳)++
今年一番の試合:マンチェスター・ユナイテッド 8-2 アーセナル
単純に驚いた。アーセナルは王者に瞬く間に凄まじいテンポで切り裂かれた。特にウェイン・ルーニーの破壊力は格別だった。アーセナルは従順そのもので、アンドレイ・アルシャビンとトーマス・ロシツキの最低のパフォーマンスが際立った。クラブの公式サイトであっても「アーセナルが浴びる10ゴールの恐怖」とまでは敢えて書かないだろう。これは明確な恥晒しだった。
抵抗する方法の見当たらない、ボール奪取の修行僧たちとボールを操る手品師たちの組み合わせ。歴史上最も偉大なチームで、革新的でもある。戦術的には、バルセロナはフットボールをそのプレス万華鏡のようなパス交換で別のレベルへと導いた、マンチェスター・ユナイテッドがウェンブリーでのチャンピオンズリーグ決勝で数分間でも渡り合ったのはよくやった方だと思う。
最高のひと言。このアルゼンチン人はボールにタンゴを教え、シミーを踊りながらエリアに侵入していった。スタイルやプレー内容すべてに、メッシはさらにフットボールを愛するファンを抱えている。その天賦の才能と働きぶりで、バルセロナの魔術師たちの長として余計な駆け引きなどしない。そしてメッシはピッチ外での謙虚さで、人間としても選手としても稀な礼儀正しさを持つ男として際立たせている。
今年一番の悪党:ゼップ・ブラッター
未だにその地位にあり、未だに困惑を与え続ける。誰も老犬に新しい芸を教えられないとは言っていない。性差別に同性愛嫌悪と続き、今度は人種差別が握手で解決できるなどというバカげたコメントを出した。狂気としか思えない。FA嫌いとともに広がるブラッターの支配は、彼が2015年までは辞めないことも意味している。フットボールにスキャンダルをもたらす学校の校長が愚かなコメントと論争を出し続けるのは、あとたった4年。ゾッとする。
今年一番の小競り合い:バロテッリ対ビブス
最高のコメディ。
今年一番のツイート
「この間ハムレットを見たが、残念なことに最後にはほぼ皆死んでしまった。これだけ多くの言葉が何の意味ももたらさないのを初めて経験したが、それでも素晴らしかった。俺のインタビューみたいなもんだな」(イアン・ホロウェイ) - チャーリー・アダムについて繰り返される質問に答えて。
大事にしたい記憶
今年5月、35年の月日を経てマンチェスター・シティが遂にFAカップを獲得した時の、人々の誇りと喜び、そして信じられない、という様子。これまでの荒れた道のりと、隣のクラブからの冷やかしは、ウェンブリーでの試合終了のホイッスルと共に全て忘れ去られ、忍耐と忠誠が報いられた。
忘れたい記憶
ギャリー・スピードの死。今年一番つらい瞬間だった。彼ほどの人格者にはそう出会えないし、ミッドフィールダーとして成功し、素晴らしいプロフェッショナルで、ウェールズを若手選手たちと共に立て直していた。皆からあふれ出る悲しみは、彼がいかにポピュラーな存在であったかを物語っている。
スピードを際立たせていたのは、魅力的なフットボールをフェアにプレーするという、誰もが認める原則からだった。そして彼は信じがたいほどに落ち着いていたし、エゴの無いスターだった。彼を偲んで拍手が鳴りやんでも、悲劇はまだ続く。悲しみにくれる2人の息子たちは父無き人生を歩んでいかねばならないのだ。
10語で表す2011年
バルサを除けば当たりとは言えないが、イングランドはユーロ出場を決めた。ふう。
新年に向けて
・ルールを決める方々、ペナルティー・ボックスの設置検討を
・レフェリーたち、重要な判定についてはTVで発言を
・ウェイン・ルーニー、スタンドにいては役に立たないことに気づいて欲しい
・ロス・バークリー、引き続きデイビッド・モイーズのもとで修業を
・ラヴァエル・モリソン、大成できるのはサー・アレックス・ファーガソンに全てを捧げて、彼の言うことにしっかりと耳を傾けられればの話だ
・選手たちが疲労困憊になり、ケガでボロボロにならずに済むよう、ウィンターブレークの導入を検討すべき
++++
ということで、引用することの多かった彼の記事。こうした記事選びも、だんだんとメディア単位よりも、記者を基準に選ぶようになってくる。ある程度の数を目にしていると、目線やスタンスも分かってくるし、前回のスアレスの記事を書いてたスミス記者のような引き抜きも理解できるようになる。こういうところにも文化の違いを感じたり。
Wednesday, December 21, 2011
ルイス・スアレス - 礼儀正しく、丁寧、繊細な男
昨日8試合の出場停止と4万ポンドの罰金との裁定が下ったユナイテッド戦でのパトリス・エヴラとのいざこざや、先日のフラム戦での相手サポーターに対する振る舞いからダーティーなイメージが付きまとうリバプールのルイス・スアレス。裁定の前のものだけど、そんな彼を別の角度から捉えようとする記事を出したのは「インディペンデント」紙のロリー・スミス記者。つい最近まで「テレグラフ」紙に在籍していたはずが、いつの間にか"移籍"していたのだが、彼の記事はいつもしっかり書かれていて好感が持てるから、どこの所属でも良いから骨太に書き続けて欲しい。
++(以下、要訳)++
レフェリーたち、対戦相手、ファン、そして敵たちの全てがルイス・スアレスのことは分かっていると考えている。スアレスはアヤックスの共食い野郎で、アフリカン・ドリームを幾度となくコケにする男だ。
直近ではフラムのファンに対して明らかな怒りの感情と共に指を立て、より深刻にはパトリス・エヴラに対する直接の人種差別的な発言を責められている。彼はイカサマ師で悪党、そして災難のもとなのだ。
しかし、彼と共に育ち、彼の人格を形成し、彼と遊び、彼とチームメイトとなり、友達となった彼をよく知る人々に話を聞いてみると、そのイメージは崩れ始める。スアレスを描写するために使われてきた、様々な軽蔑的な悪口は、ほぼ全て覆されてしまう。
ナシオナルのユース時代からの仲間で今でも親友のマティアス・カルダシオは、誰もが共感したごく初期のスーパースターだったスアレスを思い出す。子供だったスアレスをスカウトしたディレクターのアレシャンドロ・バルビは、彼がヨーロッパで「理解し難い」と形容された評判に理解を示す。2人ともスアレスは「謙虚で親切、静か」だったし、今でもそうだという点で意見が一致している。
「彼との思い出の全ては優しさに包まれたものだ」と語るのはかつてマンチェスター・ユナイテッドでプレーし、スアレスのヨーロッパで最初のクラブとなったオランダのフローニンヘンでコンビを組んでゴールを量産したエリック・ネヴランドだ。「最初はそもそも言葉ができなかったし、落ち着くまではもうひとりのウルグアイ人のブルーノ・シルバと過ごすことが多かった。彼には難しい時期だったけど、ロッカールームではいつも笑ってたよ。凄く良い意味でルイスを忘れるってのは難しいことだね」
スアレスの一番最近の騒動の場を提供してしまったフラムで監督務めるマルティン・ヨルも意見は同様だ。アヤックス時代にスアレスを守る立場だったヨルは、スアレスを「本物のキャプテン」だった、と振り返る。
スアレスと共にスタメンに名を連ねるリバプールの面々も、これには同意するだろう。スアレスは長くスタメンに定着しているが、それは単に彼のイングランドへの適応を助けた南米人の仲間がクラブにいたからではない。彼や彼の家族は確かにマキシ・ロドリゲスやルーカス・レイバ、最近加入したセバスチャン・コアテスと過ごす時間が長いが、クラブにはスティーブン・ジェラードやジェイミー・キャラガー、ペペ・レイナといったアンフィールドの影響力ある強者たちがいるのだ。ダルグリッシュが「ルイーズ」と形容するこのストライカーへの愛情は本物だ。ダルグリッシュは、スアレスが初めてメルウッドのトレーニング場を娘たちと共に訪れた時の喜びの表情をよく覚えていて、それ以来ずっと笑顔を保ち続けていると信じている。
しかし、彼は常に笑顔なわけではない。フラム戦の後には、主審のケヴィン・フレンドから適切に守られなかったことや90分間にわたって彼に向けられた野次、敗戦の痛みなどから来る苛立ちから我慢の限界を超え、手袋をした手でクレイヴン・コテージにジェスチャーを作った。
彼はエヴラに人種差別的な発言を行ったとして責められているアンフィールドでのマンチェスター・ユナイテッドとの対戦の時には、不機嫌に相手と衝突しており、笑顔ではなかった。そして、FAからの調査を受け、「スペイン語の"negrito"のニュアンス」をもって自己弁護をしようとしている時には、全く笑顔ではないだろう。
もちろん、フットボールの選手がひとたびピッチに上がるとプライベートとは全く異なる、ということに驚きは無いし、スアレス本人もそれは認めている。「妻のソフィアは、僕が家でもピッチでプレーしている時と同じだったら、もう妻ではいないつもり、って言ってるよ」と笑う。しかし、その差が大き過ぎることがより詳細な調査へとつながってしまってもいる。
前出のネヴランドは「色々な人があれこれ言っている人間と、僕がプレーしたルイスが同一人物とはちょっと思えないね」と語るが、ひとつ明確な説明が続いた。「彼にとっては勝つことこそ全てなんだ」
これは、スアレスに出会ってきた人々に共通するテーマだ。ミランにも所属したカルダシオは「ウルグアイ人は決して敗北を受け入れない。それでもルイスは誰とも違っていたよ。14歳にして失ったボールは決してあきらめずに取り返しに行ってたよ。ある試合で、俺たち21-0で勝って、ルイスは17ゴール決めたんだけど、それでも一瞬たりとも止まらなかったね。彼は勝ったとは考えないんだ。いつだってより多くを求めるんだよ」
その点にしても、エリートのスポーツマンとしては決して珍しいことではない。スアレスの際立った特質を示す唯一の方法なのだ。あるオランダ人心理学者が、昨年11月にPSVアイントホーフェンのオットマン・バッカルに噛み付いた事件を調査し、原因は敗北への失望にあるのではないかと考えた。バルビは、フラム戦でのジェスチャーと同様、彼がそれをいかに真剣に受け止めているかということ、と見ている。
バルビは続ける。「ルイスは試合を感じ取るんだよ。こんなことはウルグアイじゃ起きなかった。アイツが退場になったことだって記憶にないね。いつも礼儀正しくて丁寧な男だった。でも、ワールドカップでジダンに起きたことを見れば、最高の選手でも時には我を失うこともあり得るんだろうね」
ジダンのマテラッツィへのヘッドバットは、スアレスに突き付けられている人種差別への責めに比べれば些細なことだ。スアレスに処分が下るようであれば、彼のイメージは一気に墜ち、イングランドでのキャリアすら危ういものになるだろう。リバプールのオーナーたちも、評決がクラブの評判にもたらす影響を懸念している。
カルダシオは、「小さな頃から凄く礼儀正しいし、エヴラを侮辱するだなんて信じられないよ」と語る。バルビも考えうる一番の強い言葉でこれに同意した。「今かけられている人種差別の疑いは、決してルイスがどういう人物か、という話と同じではないと保証できる」
ひとつの懸念は、勝つためには何でもするという男であれば、そういう手段に頼ることも考えられる、ということだ。カルダシオも、スアレスの絶え間ない衝動が時として「すべきでないことをする」ことにつながることは認めている。しかし、それはむしろシミュレーション -南米人はそれを狡猾さや抜け目の無さと表現したがるが- に当てはまると考えており、スアレスがそうした差別的発言での侮辱をするとは想像できない、と言う。
しかし、スアレスを見るイングランドの観客たちにとっては、彼は腹いっぱいのシミュレーションをする悪党であり、状況が異なる。友人には謙虚で礼儀正しいと言われる男が、プレミアリーグでは手に負えない子供扱いされているのだ。このような文脈の下では、ワールドカップでああした形でガーナを下したことを喜ぶ男が、先天的な狡猾さを見せた所でスキャンダルに巻き込まれるのは簡単に想像できよう。
スアレスは、そうした評判を受けてしまった最初の選手というわけではない。エリック・カントナ、クリスティアーノ・ロナウド、ディディエ・ドログバ…、彼らは皆、スアレスに集まってしまう視線とどう対処したら良いかアドバイスできるだろう。マリオ・バロテッリはスアレスの前に注目を集めたが、彼は試合と関係ない話に関心を持たれることへの当惑を雄弁に語り、それがピッチ上での彼への視線が他の選手と異なっていることの原因だと信じている。
ネヴランドは「イングランドはまた違うところで、外国人選手にとっては馴染むのが凄く難しいこともある」と語り、バルビはやがてそれはスアレスにイングランドから出ていくこと考えさせるだろうと続けた。「彼は繊細なんだ。周りの人が彼をどう見てるか、凄く心配していると思う」
ここでも考え方は二分されるだろう。スアレスをプレミアリーグに蔓延する疫病と考える面々にとっては、彼に処分が下るなら追放する良い機会だと考えるだろうし、これに反対するのは難しい。処分が無かったとしても、彼の評判に付きまとう汚点は、彼を追い出してしまうには十分なものだ。もちろん、逆の考えで、彼が出ていくとなれば取り乱す人もいるだろうし、それは彼が熱愛するアンフィールドだけではないだろう。
そして彼の友人たちにとっては、尽きることのない無念だ。カルダシオは「俺はルイスとプレーした8年間を忘れることはないよ。俺たちにとって、アイツは最も愛されて、皆心酔してきた選手なんだ。国全体にとっての偉大なる誇りさ」 ウルグアイにおいても、"シミュレーションする手に負えない子供"とは全く異なるスアレスがいて、人々はスアレスを知っていると考えている。彼らが知っているスアレスは、我々が知るに至ったスアレスとは別人なのだ。
++++
基本的には皆メディアを通じてしか分からないことだと思うんだよな。咀嚼の仕方なんだろうけど、結局今のイングランドのメディアが一気に叩きにかかってるところを見ると、そうじゃないだろ、と感じるところも出てきて…。擁護しようとか、そういう話じゃないんだけど。
++(以下、要訳)++
レフェリーたち、対戦相手、ファン、そして敵たちの全てがルイス・スアレスのことは分かっていると考えている。スアレスはアヤックスの共食い野郎で、アフリカン・ドリームを幾度となくコケにする男だ。
直近ではフラムのファンに対して明らかな怒りの感情と共に指を立て、より深刻にはパトリス・エヴラに対する直接の人種差別的な発言を責められている。彼はイカサマ師で悪党、そして災難のもとなのだ。
しかし、彼と共に育ち、彼の人格を形成し、彼と遊び、彼とチームメイトとなり、友達となった彼をよく知る人々に話を聞いてみると、そのイメージは崩れ始める。スアレスを描写するために使われてきた、様々な軽蔑的な悪口は、ほぼ全て覆されてしまう。
ナシオナルのユース時代からの仲間で今でも親友のマティアス・カルダシオは、誰もが共感したごく初期のスーパースターだったスアレスを思い出す。子供だったスアレスをスカウトしたディレクターのアレシャンドロ・バルビは、彼がヨーロッパで「理解し難い」と形容された評判に理解を示す。2人ともスアレスは「謙虚で親切、静か」だったし、今でもそうだという点で意見が一致している。
「彼との思い出の全ては優しさに包まれたものだ」と語るのはかつてマンチェスター・ユナイテッドでプレーし、スアレスのヨーロッパで最初のクラブとなったオランダのフローニンヘンでコンビを組んでゴールを量産したエリック・ネヴランドだ。「最初はそもそも言葉ができなかったし、落ち着くまではもうひとりのウルグアイ人のブルーノ・シルバと過ごすことが多かった。彼には難しい時期だったけど、ロッカールームではいつも笑ってたよ。凄く良い意味でルイスを忘れるってのは難しいことだね」
スアレスの一番最近の騒動の場を提供してしまったフラムで監督務めるマルティン・ヨルも意見は同様だ。アヤックス時代にスアレスを守る立場だったヨルは、スアレスを「本物のキャプテン」だった、と振り返る。
スアレスと共にスタメンに名を連ねるリバプールの面々も、これには同意するだろう。スアレスは長くスタメンに定着しているが、それは単に彼のイングランドへの適応を助けた南米人の仲間がクラブにいたからではない。彼や彼の家族は確かにマキシ・ロドリゲスやルーカス・レイバ、最近加入したセバスチャン・コアテスと過ごす時間が長いが、クラブにはスティーブン・ジェラードやジェイミー・キャラガー、ペペ・レイナといったアンフィールドの影響力ある強者たちがいるのだ。ダルグリッシュが「ルイーズ」と形容するこのストライカーへの愛情は本物だ。ダルグリッシュは、スアレスが初めてメルウッドのトレーニング場を娘たちと共に訪れた時の喜びの表情をよく覚えていて、それ以来ずっと笑顔を保ち続けていると信じている。
しかし、彼は常に笑顔なわけではない。フラム戦の後には、主審のケヴィン・フレンドから適切に守られなかったことや90分間にわたって彼に向けられた野次、敗戦の痛みなどから来る苛立ちから我慢の限界を超え、手袋をした手でクレイヴン・コテージにジェスチャーを作った。
彼はエヴラに人種差別的な発言を行ったとして責められているアンフィールドでのマンチェスター・ユナイテッドとの対戦の時には、不機嫌に相手と衝突しており、笑顔ではなかった。そして、FAからの調査を受け、「スペイン語の"negrito"のニュアンス」をもって自己弁護をしようとしている時には、全く笑顔ではないだろう。
もちろん、フットボールの選手がひとたびピッチに上がるとプライベートとは全く異なる、ということに驚きは無いし、スアレス本人もそれは認めている。「妻のソフィアは、僕が家でもピッチでプレーしている時と同じだったら、もう妻ではいないつもり、って言ってるよ」と笑う。しかし、その差が大き過ぎることがより詳細な調査へとつながってしまってもいる。
前出のネヴランドは「色々な人があれこれ言っている人間と、僕がプレーしたルイスが同一人物とはちょっと思えないね」と語るが、ひとつ明確な説明が続いた。「彼にとっては勝つことこそ全てなんだ」
これは、スアレスに出会ってきた人々に共通するテーマだ。ミランにも所属したカルダシオは「ウルグアイ人は決して敗北を受け入れない。それでもルイスは誰とも違っていたよ。14歳にして失ったボールは決してあきらめずに取り返しに行ってたよ。ある試合で、俺たち21-0で勝って、ルイスは17ゴール決めたんだけど、それでも一瞬たりとも止まらなかったね。彼は勝ったとは考えないんだ。いつだってより多くを求めるんだよ」
その点にしても、エリートのスポーツマンとしては決して珍しいことではない。スアレスの際立った特質を示す唯一の方法なのだ。あるオランダ人心理学者が、昨年11月にPSVアイントホーフェンのオットマン・バッカルに噛み付いた事件を調査し、原因は敗北への失望にあるのではないかと考えた。バルビは、フラム戦でのジェスチャーと同様、彼がそれをいかに真剣に受け止めているかということ、と見ている。
バルビは続ける。「ルイスは試合を感じ取るんだよ。こんなことはウルグアイじゃ起きなかった。アイツが退場になったことだって記憶にないね。いつも礼儀正しくて丁寧な男だった。でも、ワールドカップでジダンに起きたことを見れば、最高の選手でも時には我を失うこともあり得るんだろうね」
ジダンのマテラッツィへのヘッドバットは、スアレスに突き付けられている人種差別への責めに比べれば些細なことだ。スアレスに処分が下るようであれば、彼のイメージは一気に墜ち、イングランドでのキャリアすら危ういものになるだろう。リバプールのオーナーたちも、評決がクラブの評判にもたらす影響を懸念している。
カルダシオは、「小さな頃から凄く礼儀正しいし、エヴラを侮辱するだなんて信じられないよ」と語る。バルビも考えうる一番の強い言葉でこれに同意した。「今かけられている人種差別の疑いは、決してルイスがどういう人物か、という話と同じではないと保証できる」
ひとつの懸念は、勝つためには何でもするという男であれば、そういう手段に頼ることも考えられる、ということだ。カルダシオも、スアレスの絶え間ない衝動が時として「すべきでないことをする」ことにつながることは認めている。しかし、それはむしろシミュレーション -南米人はそれを狡猾さや抜け目の無さと表現したがるが- に当てはまると考えており、スアレスがそうした差別的発言での侮辱をするとは想像できない、と言う。
しかし、スアレスを見るイングランドの観客たちにとっては、彼は腹いっぱいのシミュレーションをする悪党であり、状況が異なる。友人には謙虚で礼儀正しいと言われる男が、プレミアリーグでは手に負えない子供扱いされているのだ。このような文脈の下では、ワールドカップでああした形でガーナを下したことを喜ぶ男が、先天的な狡猾さを見せた所でスキャンダルに巻き込まれるのは簡単に想像できよう。
スアレスは、そうした評判を受けてしまった最初の選手というわけではない。エリック・カントナ、クリスティアーノ・ロナウド、ディディエ・ドログバ…、彼らは皆、スアレスに集まってしまう視線とどう対処したら良いかアドバイスできるだろう。マリオ・バロテッリはスアレスの前に注目を集めたが、彼は試合と関係ない話に関心を持たれることへの当惑を雄弁に語り、それがピッチ上での彼への視線が他の選手と異なっていることの原因だと信じている。
ネヴランドは「イングランドはまた違うところで、外国人選手にとっては馴染むのが凄く難しいこともある」と語り、バルビはやがてそれはスアレスにイングランドから出ていくこと考えさせるだろうと続けた。「彼は繊細なんだ。周りの人が彼をどう見てるか、凄く心配していると思う」
ここでも考え方は二分されるだろう。スアレスをプレミアリーグに蔓延する疫病と考える面々にとっては、彼に処分が下るなら追放する良い機会だと考えるだろうし、これに反対するのは難しい。処分が無かったとしても、彼の評判に付きまとう汚点は、彼を追い出してしまうには十分なものだ。もちろん、逆の考えで、彼が出ていくとなれば取り乱す人もいるだろうし、それは彼が熱愛するアンフィールドだけではないだろう。
そして彼の友人たちにとっては、尽きることのない無念だ。カルダシオは「俺はルイスとプレーした8年間を忘れることはないよ。俺たちにとって、アイツは最も愛されて、皆心酔してきた選手なんだ。国全体にとっての偉大なる誇りさ」 ウルグアイにおいても、"シミュレーションする手に負えない子供"とは全く異なるスアレスがいて、人々はスアレスを知っていると考えている。彼らが知っているスアレスは、我々が知るに至ったスアレスとは別人なのだ。
++++
基本的には皆メディアを通じてしか分からないことだと思うんだよな。咀嚼の仕方なんだろうけど、結局今のイングランドのメディアが一気に叩きにかかってるところを見ると、そうじゃないだろ、と感じるところも出てきて…。擁護しようとか、そういう話じゃないんだけど。
Friday, December 16, 2011
アーセナルのレジェンドとなったティエリ・アンリと涙
先週のエヴァートン戦前に、アーセナルのエミレーツ・スタジアム横でご披露目となったティエリ・アンリの銅像。本人は自分の銅像を目にして涙を浮かべつつスピーチをした。
++(以下、要訳)++
自分の人生とも言えるクラブのスタジアムの外で、銅像として不滅の存在になること。それは夢にも思わなかったことだ、とアンリは語る。
「心の底からアーセナルには感謝したい。今までにも言ってきたことだが、『ひとたびグーナー(Gooner)となれば、生涯グーナー』とこれからも言い続けるよ」と言うアンリの声は詰まっていた。
アンリの像は、アーセナルに最も多大な影響を与えた3人 - アンリ、トニー・アダムス、ハーバート・チャップマン - の銅像のひとつであり、クラブの創設125周年を祝う一環で建てられた。アンリにとっては、自分が常にクラブに対して感じてきたものを体現するものに感じられた。
重さ200kgの記念碑は、アンリがアーセナルにもたらした驚くべき226ゴールの中でも伝説的な、2002年11月のハイバリーでのスパーズ戦でのゴールを祝うポーズで、膝をついたスライディングで喜びを見せている。「これは僕がいかにアーセナルを愛しているかを示す完璧な例だよ。膝立ちをしてエミレーツ・スタジアムを向いてる - 僕のすぐ後ろ側にはハイバリー - とは驚きだよ」
最初にこの名誉について聞かされた時にはからかわれているのだと感じた。125年の歴史を彩った偉大な選手たちを差し置いて?おい、冗談だろ?と代理人のダレン・ディーンに聞いたが、答はそうではなかった。
そして、会長のピーター・ヒルウッドが銅像を覆っていた赤い布を取り払うボタンを押すと、数百人の熱きファンたちが拍手と共に歌い始め、アンリの表情は子供のようなはにかみに変わった。確信を得るために、アンリは愛娘のティーを連れて、スタジアムの南東に立つその記念碑の周りを歩いてみた。
「僕はキャリアの中で様々なものを勝ち取る幸運に恵まれてきたけど、これはその中でもトップだ。現実なんだと思うと圧倒されそうだよ」ヒルウッドが、気に入ってくれたか、とすかさず聞くと、アンリは「ああ、もちろん」と会長に断言した。
もしかすると、アーセン・ヴェンゲルも認めるクラブ史上最も偉大で博識な監督だったチャップマンや驚くべきキャプテンだったアダムスと並び立つという超然たる事実が、アンリに涙を流させたのかもしれない。
しかし、34歳にしてアンリは現在もニューヨークでゴールを量産しており、マーティン・キーオンが先月、ローン加入で仕事ができるのではないかと語っていたくらいだ。生きた伝説となることについてアンリは次のように語った。「前にここまで感情的になったのはアーセナルを去ったときだった。涙が出たけど誰にも気付かれはしなかった。それでも僕はアーセナルを愛しているし試合も観る。負けるた時にはいつだって痛みを感じるよ。いつだって僕は自分の人生のクラブに戻ってくるさ。一番良いのはすべての偉大な選手たちの一部を集めてひとつの銅像にできることなんだけどね。選ばれたことは本当に名誉に感じているよ」
ヴェンゲルが群衆になぜアンリでなければならなかったのかを説明した。「彼のセンセーショナルなキャリアは単純にアンリ本人が持っていた違いによるものだ。彼には、選手であれば誰もが持ちたいと夢見るもの - フィジカル能力、技術レベル、優れた知性と献身 - の全てを持ち合わせていた。この世界で勝者となるために必要な全てを備えていたのだ」
そして、彼がモナコで最初にティーンエイジャーとして育て始めたアンリに向かってこう言った。「ティエリ、よくやったよ。おめでとう。君は本当にスペシャルだった」全くもってスペシャルだった。そしてスペシャルだっただけにいつの日かエミレーツに監督として戻ることがあるか、という疑問が湧いてくる。展望を聞かれたアンリは、ヴェンゲルの横で笑って答えた。「いつかはね。でもいつ彼が辞めるって言うんだい?」
ヴェンゲルも「まずは、彼を選手として見ようじゃないか。彼のキャリアは終わってないのだしね。しかし、私の下にいた多くの選手、例えばティエリやパトリック・ヴィエラには監督になる資質があると思っている、というべきだろう」と返した。
ヴェンゲルはアーセナルでアンリにコーチ修行をさせるだろうか?「もちろん。だが彼は急がないとね。私も決して若くはないから」その通りだ。そして、それはもうひとつの銅像がやがてこの3つに加わるはずであることを思い出させる。以前、ヴェンゲルの半身像が幹部向けの入口に作られた時、彼は「あれは誰だ?まるでもう死んだみたいだな」と語っていたことがある。
アンリはエミレーツのアーセン・ヴェンゲル・スタンドに座ることについては、「ああ、このエヴァートン戦で勝つためにね」と完璧な答えをヴェンゲルに返した。ヴェンゲルの銅像がアンリの横に並び立つ日はまだ先で良さそうだ。
++++
いい話。選手にとっても、心のクラブをこうして持てることは幸せなことだと思う。
++(以下、要訳)++
赤と白のスカーフを首に巻いたティエリ・アンリは、救世主的とも言えるポーズの自らのブロンズの像を凝視して家族やファンに目を向けると、次第に涙が浮かんできて視線を反らさざるを得なくなった。
前にこれに似た感情を味わったのは、2007年にアーセナルを去った時だとアンリは断言した。その時には、誰も彼の涙など目にしなかったが、彼はここに戻って来た。そして今回の涙は全く恥ずべきものではないし、誰もがそれを注視した。
自分の人生とも言えるクラブのスタジアムの外で、銅像として不滅の存在になること。それは夢にも思わなかったことだ、とアンリは語る。
「心の底からアーセナルには感謝したい。今までにも言ってきたことだが、『ひとたびグーナー(Gooner)となれば、生涯グーナー』とこれからも言い続けるよ」と言うアンリの声は詰まっていた。
アンリの像は、アーセナルに最も多大な影響を与えた3人 - アンリ、トニー・アダムス、ハーバート・チャップマン - の銅像のひとつであり、クラブの創設125周年を祝う一環で建てられた。アンリにとっては、自分が常にクラブに対して感じてきたものを体現するものに感じられた。
重さ200kgの記念碑は、アンリがアーセナルにもたらした驚くべき226ゴールの中でも伝説的な、2002年11月のハイバリーでのスパーズ戦でのゴールを祝うポーズで、膝をついたスライディングで喜びを見せている。「これは僕がいかにアーセナルを愛しているかを示す完璧な例だよ。膝立ちをしてエミレーツ・スタジアムを向いてる - 僕のすぐ後ろ側にはハイバリー - とは驚きだよ」
※このトップ25ゴールの中では第5位がそのスパーズ戦のもの。
最初にこの名誉について聞かされた時にはからかわれているのだと感じた。125年の歴史を彩った偉大な選手たちを差し置いて?おい、冗談だろ?と代理人のダレン・ディーンに聞いたが、答はそうではなかった。
そして、会長のピーター・ヒルウッドが銅像を覆っていた赤い布を取り払うボタンを押すと、数百人の熱きファンたちが拍手と共に歌い始め、アンリの表情は子供のようなはにかみに変わった。確信を得るために、アンリは愛娘のティーを連れて、スタジアムの南東に立つその記念碑の周りを歩いてみた。
「僕はキャリアの中で様々なものを勝ち取る幸運に恵まれてきたけど、これはその中でもトップだ。現実なんだと思うと圧倒されそうだよ」ヒルウッドが、気に入ってくれたか、とすかさず聞くと、アンリは「ああ、もちろん」と会長に断言した。
もしかすると、アーセン・ヴェンゲルも認めるクラブ史上最も偉大で博識な監督だったチャップマンや驚くべきキャプテンだったアダムスと並び立つという超然たる事実が、アンリに涙を流させたのかもしれない。
しかし、34歳にしてアンリは現在もニューヨークでゴールを量産しており、マーティン・キーオンが先月、ローン加入で仕事ができるのではないかと語っていたくらいだ。生きた伝説となることについてアンリは次のように語った。「前にここまで感情的になったのはアーセナルを去ったときだった。涙が出たけど誰にも気付かれはしなかった。それでも僕はアーセナルを愛しているし試合も観る。負けるた時にはいつだって痛みを感じるよ。いつだって僕は自分の人生のクラブに戻ってくるさ。一番良いのはすべての偉大な選手たちの一部を集めてひとつの銅像にできることなんだけどね。選ばれたことは本当に名誉に感じているよ」
ヴェンゲルが群衆になぜアンリでなければならなかったのかを説明した。「彼のセンセーショナルなキャリアは単純にアンリ本人が持っていた違いによるものだ。彼には、選手であれば誰もが持ちたいと夢見るもの - フィジカル能力、技術レベル、優れた知性と献身 - の全てを持ち合わせていた。この世界で勝者となるために必要な全てを備えていたのだ」
そして、彼がモナコで最初にティーンエイジャーとして育て始めたアンリに向かってこう言った。「ティエリ、よくやったよ。おめでとう。君は本当にスペシャルだった」全くもってスペシャルだった。そしてスペシャルだっただけにいつの日かエミレーツに監督として戻ることがあるか、という疑問が湧いてくる。展望を聞かれたアンリは、ヴェンゲルの横で笑って答えた。「いつかはね。でもいつ彼が辞めるって言うんだい?」
ヴェンゲルも「まずは、彼を選手として見ようじゃないか。彼のキャリアは終わってないのだしね。しかし、私の下にいた多くの選手、例えばティエリやパトリック・ヴィエラには監督になる資質があると思っている、というべきだろう」と返した。
ヴェンゲルはアーセナルでアンリにコーチ修行をさせるだろうか?「もちろん。だが彼は急がないとね。私も決して若くはないから」その通りだ。そして、それはもうひとつの銅像がやがてこの3つに加わるはずであることを思い出させる。以前、ヴェンゲルの半身像が幹部向けの入口に作られた時、彼は「あれは誰だ?まるでもう死んだみたいだな」と語っていたことがある。
アンリはエミレーツのアーセン・ヴェンゲル・スタンドに座ることについては、「ああ、このエヴァートン戦で勝つためにね」と完璧な答えをヴェンゲルに返した。ヴェンゲルの銅像がアンリの横に並び立つ日はまだ先で良さそうだ。
++++
いい話。選手にとっても、心のクラブをこうして持てることは幸せなことだと思う。
Friday, December 9, 2011
ただいま最高潮のスパーズ
2回続けてのスパーズ関連。今回はアメリカの経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」に出てきたスパーズの好調ぶりに関する記事。こんなメディアにまで出てくる、ってくらい、今の好調さが際立っているのだと思う。前回のキングのインタビュー記事が内側からの洞察とすれば、これは外側からの目だけど、語られてる論点はメンバー固定のメリットとリスク。※記事は先週末のボルトン戦の前のもの。
++(以下、要訳)++
シーズンも4カ月目に入り、否定し難い驚くべきコンセプトがここにはある。トッテナム・ホットスパーは、プレミアリーグのタイトル挑戦者のペースに食らいついているだけではなく、彼ら自身がその一員となっているのだ。
いまトッテナムはイングランドで最も熱いチームだ。スパーズはここ10試合で9勝1分け、30ポイントのうち、実に28ポイントを稼ぎ出しているのだ。チームは現在1試合消化が少ないながら、マンチェスター・シティと7差、マンチェスター・ユナイテッドと2差の3位につけている。
伝統的なスタイルを採るハリー・レドナップと、両ウィングのスピードを活かしたワイドな戦い方で、スパーズは全てのクラブが2枚の快速ウィングを置いてタッチライン沿いを駆け上がり、相手ディフェンダーを舞うように交わしてエリアをクロスで切り裂いていた時代へと先祖返りをしている。
この驚くべき快進撃に、ファンたちもスパーズが史上初となるリーグ優勝とFAカップの2冠を成し遂げた栄光の1960年代と今のチームを並べているくらいだ。しかし、それは今のスパーズを古い時代になぞらえる唯一の理由というわけではない。スパーズの今季ここまでの台頭は、同様に古い哲学とも言える「勝っているチームをいじるな」という哲学によって成し遂げられている。
他のチームのスタメンの選び方など気にしない。プレミアリーグへのメンバー登録が締め切られた8月31日以来、トッテナムは10試合で15人の選手しか先発で起用しなかった。同じ期間で比較すると、スウォンジーと並んでリーグ最少の数字だ。全試合で先発したのは7人、1試合を除けば9人、というのは20チーム中最高の数字になる。対照的にマンチェスター・ユナイテッドは22人、チェルシーとアーセナルは20人を先発で起用している。
今はスピードと激しさが特徴の現代サッカーでは試合数も多く、強豪チームの多くにとってはローテーションの採用が最もトレンディな戦い方だ。そんな時代だけに、トッテナムが成し遂げていることは特筆すべきなのだ。
同じ11人を毎週土曜日に起用し続けて、チームをタイトルへと導くなどというのは、もはや古めかしささえ漂う戦い方であり、逆に革命的なものとしても通用しそうなくらいだ。レドナップは、「だからこそ、我々はいまリーグで上手くやっているんだ。そんなに沢山代えていたら難しいと思うね」と語っている。
勝ちチームを変えない、というのがいつも急進的な考え方だったわけではない。1981年にアストン・ヴィラがタイトルを勝ち取った時に、当時の指揮官ロン・サンダースはシーズンを通じて14人の選手しか起用しなかった。リバプールは1984-85シーズンにリーグとヨーロッパのカップを勝ち取るのに15人の選手しか必要としなかった。
しかし、時代が変わって年中連戦続きとなると、トップクラブの監督たちは皆おせっかいをするようになった。昨シーズンタイトルを勝ち取ったマンチェスター・ユナイテッドは、2試合続けて同じスタメンで臨んだのは僅かに4度だった。かつてリバプールを率いたラファエル・ベニテスは、99試合連続で異なるスタメンを並べた。
「どこであれトップチームにはメンバーが揃っていて、8人、9人、10人と選手を入れ替えることができる。シーズンは厳しいものだし、ごく普通のことだろう」と、今季既に19人をスタメンで起用しているマンチェスター・シティのロベルト・マンチーニは語る。
しかし、スパーズは安定したメンバーでも勝てると言うことを証明したといえる。スパーズはここ5試合を見てもスタメン変更は3人だけで、原因は全てケガだ。そしてメンバー選択でのこの継続性によって、輝かしい成績を現在残しているのだ。
レドリー・キングとユネス・カブールは中央の守備で強固な連係を見せており、過去10試合中9試合で共に先発、この間スパーズは僅かに7失点だ。ピッチの反対側では、ラファエル・ファン・デル・ファールトとエマニュエル・アデバヨルが2人で13ゴールを挙げ、中盤の軸となっているスコット・パーカーとルカ・モドリッチがスパーズのボール支配率に貢献している。
無論トッテナムの連勝には、単に同じメンバーをピッチに送り出していること以上の理由がある。そのうちの多くは、現在絶好調のギャレス・ベイルのパフォーマンスにあるだろう。このウェールズ人ウィングは、強さ、スピード、ワイドな位置からの正確なクロスによって、ヨーロッパのサッカー界で最も欲しがられる存在となっている。
加えて、スパーズは今季のチャンピオンリーグ出場を逃し、グループリーグ敗退寸前のヨーロッパリーグにはメンバーを落として臨んでいる。タイトルを狙う他のチームが週の半ばにヨーロッパの強豪と相まみえている間、トッテナムのスタメンの面々は毎週1試合ずつこなすだけで済んできた。
トッテナムが上昇傾向にあるとしても、これだけ少人数の選手に頼ってタイトル争いに残り続けられるか、という疑念はある。シーズンの疲れが積み上がり始めれば、ケガでカギとなるメンバーが出場できないケースも出てくるだろうし、その時に頼るのはそれまで出場時間の少ない選手だ。3-1で勝利したウェストブロミッジ戦では、モドリッチとファン・デル・ファールトを欠いたが、やはりそれまでの流暢なプレーは鳴りを潜めた。
そして10数人の選手だけが先発するとしたら、25人のメンバーの間での不満噴出をどう避けるのかという問題が出てくる。ウェストブロム戦では、ジャメイン・デフォーがファン・デル・ファールトの代わりにプレーしてスパーズの2点目を決めもしたが、彼自身、サブという立場を受け入れるのには難しさを感じていると語っている。
それでも、大半の選手たちはチームが勝ち続けている限りにおいて、ベンチにいることも受け入れると語っている。ディフェンダーのウィリアム・ギャラスはこう語った。「ウチには俺みたいに毎試合プレーしたと思ってる強力なメンバーが揃ってる。時に受け入れることは難しいし、挫折感も味わうが、やがてそれは受け入れるようになるんだ。より重要なことはチームが勝っているということだからな」
++++
記事の言う通り、ここにきてキングが欠場し始めてるのは気になるところだけど、そんな時に最後のところでコメントしてるギャラスが穴を埋めているのは心強い。年末年始の過密日程と未消化のエヴァートン戦をこなしたところでどの位置にいるか、楽しみなところ。
++(以下、要訳)++
シーズンも4カ月目に入り、否定し難い驚くべきコンセプトがここにはある。トッテナム・ホットスパーは、プレミアリーグのタイトル挑戦者のペースに食らいついているだけではなく、彼ら自身がその一員となっているのだ。
いまトッテナムはイングランドで最も熱いチームだ。スパーズはここ10試合で9勝1分け、30ポイントのうち、実に28ポイントを稼ぎ出しているのだ。チームは現在1試合消化が少ないながら、マンチェスター・シティと7差、マンチェスター・ユナイテッドと2差の3位につけている。
伝統的なスタイルを採るハリー・レドナップと、両ウィングのスピードを活かしたワイドな戦い方で、スパーズは全てのクラブが2枚の快速ウィングを置いてタッチライン沿いを駆け上がり、相手ディフェンダーを舞うように交わしてエリアをクロスで切り裂いていた時代へと先祖返りをしている。
この驚くべき快進撃に、ファンたちもスパーズが史上初となるリーグ優勝とFAカップの2冠を成し遂げた栄光の1960年代と今のチームを並べているくらいだ。しかし、それは今のスパーズを古い時代になぞらえる唯一の理由というわけではない。スパーズの今季ここまでの台頭は、同様に古い哲学とも言える「勝っているチームをいじるな」という哲学によって成し遂げられている。
他のチームのスタメンの選び方など気にしない。プレミアリーグへのメンバー登録が締め切られた8月31日以来、トッテナムは10試合で15人の選手しか先発で起用しなかった。同じ期間で比較すると、スウォンジーと並んでリーグ最少の数字だ。全試合で先発したのは7人、1試合を除けば9人、というのは20チーム中最高の数字になる。対照的にマンチェスター・ユナイテッドは22人、チェルシーとアーセナルは20人を先発で起用している。
今はスピードと激しさが特徴の現代サッカーでは試合数も多く、強豪チームの多くにとってはローテーションの採用が最もトレンディな戦い方だ。そんな時代だけに、トッテナムが成し遂げていることは特筆すべきなのだ。
同じ11人を毎週土曜日に起用し続けて、チームをタイトルへと導くなどというのは、もはや古めかしささえ漂う戦い方であり、逆に革命的なものとしても通用しそうなくらいだ。レドナップは、「だからこそ、我々はいまリーグで上手くやっているんだ。そんなに沢山代えていたら難しいと思うね」と語っている。
勝ちチームを変えない、というのがいつも急進的な考え方だったわけではない。1981年にアストン・ヴィラがタイトルを勝ち取った時に、当時の指揮官ロン・サンダースはシーズンを通じて14人の選手しか起用しなかった。リバプールは1984-85シーズンにリーグとヨーロッパのカップを勝ち取るのに15人の選手しか必要としなかった。
しかし、時代が変わって年中連戦続きとなると、トップクラブの監督たちは皆おせっかいをするようになった。昨シーズンタイトルを勝ち取ったマンチェスター・ユナイテッドは、2試合続けて同じスタメンで臨んだのは僅かに4度だった。かつてリバプールを率いたラファエル・ベニテスは、99試合連続で異なるスタメンを並べた。
「どこであれトップチームにはメンバーが揃っていて、8人、9人、10人と選手を入れ替えることができる。シーズンは厳しいものだし、ごく普通のことだろう」と、今季既に19人をスタメンで起用しているマンチェスター・シティのロベルト・マンチーニは語る。
しかし、スパーズは安定したメンバーでも勝てると言うことを証明したといえる。スパーズはここ5試合を見てもスタメン変更は3人だけで、原因は全てケガだ。そしてメンバー選択でのこの継続性によって、輝かしい成績を現在残しているのだ。
レドリー・キングとユネス・カブールは中央の守備で強固な連係を見せており、過去10試合中9試合で共に先発、この間スパーズは僅かに7失点だ。ピッチの反対側では、ラファエル・ファン・デル・ファールトとエマニュエル・アデバヨルが2人で13ゴールを挙げ、中盤の軸となっているスコット・パーカーとルカ・モドリッチがスパーズのボール支配率に貢献している。
無論トッテナムの連勝には、単に同じメンバーをピッチに送り出していること以上の理由がある。そのうちの多くは、現在絶好調のギャレス・ベイルのパフォーマンスにあるだろう。このウェールズ人ウィングは、強さ、スピード、ワイドな位置からの正確なクロスによって、ヨーロッパのサッカー界で最も欲しがられる存在となっている。
加えて、スパーズは今季のチャンピオンリーグ出場を逃し、グループリーグ敗退寸前のヨーロッパリーグにはメンバーを落として臨んでいる。タイトルを狙う他のチームが週の半ばにヨーロッパの強豪と相まみえている間、トッテナムのスタメンの面々は毎週1試合ずつこなすだけで済んできた。
トッテナムが上昇傾向にあるとしても、これだけ少人数の選手に頼ってタイトル争いに残り続けられるか、という疑念はある。シーズンの疲れが積み上がり始めれば、ケガでカギとなるメンバーが出場できないケースも出てくるだろうし、その時に頼るのはそれまで出場時間の少ない選手だ。3-1で勝利したウェストブロミッジ戦では、モドリッチとファン・デル・ファールトを欠いたが、やはりそれまでの流暢なプレーは鳴りを潜めた。
そして10数人の選手だけが先発するとしたら、25人のメンバーの間での不満噴出をどう避けるのかという問題が出てくる。ウェストブロム戦では、ジャメイン・デフォーがファン・デル・ファールトの代わりにプレーしてスパーズの2点目を決めもしたが、彼自身、サブという立場を受け入れるのには難しさを感じていると語っている。
それでも、大半の選手たちはチームが勝ち続けている限りにおいて、ベンチにいることも受け入れると語っている。ディフェンダーのウィリアム・ギャラスはこう語った。「ウチには俺みたいに毎試合プレーしたと思ってる強力なメンバーが揃ってる。時に受け入れることは難しいし、挫折感も味わうが、やがてそれは受け入れるようになるんだ。より重要なことはチームが勝っているということだからな」
++++
記事の言う通り、ここにきてキングが欠場し始めてるのは気になるところだけど、そんな時に最後のところでコメントしてるギャラスが穴を埋めているのは心強い。年末年始の過密日程と未消化のエヴァートン戦をこなしたところでどの位置にいるか、楽しみなところ。
Wednesday, November 30, 2011
レドリー・キングが見据えるスパーズの新たな地平線
今回ピックアップしたのは、地元の復興に力を貸すスパーズのレドリー・キングが、地元の人々向けに講演した話から始まる「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター氏の記事。少し前の記事なのだけど、スパーズというチームの描写に深みが出てて面白い。
++(以下、要訳)++
夏にロンドンで暴動が起きた時、それはまずトッテナムから始まり、より激しくなっていった。石油爆弾が投げ込まれ、略奪が横行し、警察が行く手を阻む期間が長く続いた。
その暗黒の8月以来、コミュニティのどのセクションも再建に忙しくしているが、それは街の中心でもあるトッテナム・ホットスパーも同じだ。
スパーズのキャプテンであるレドリー・キングは、「暴動はこのエリアに大きなダメージを与えたね。何の罪もない数多くの人々が影響を受けたんだ。クラブがここでそうした人へのサポートをするのは大事なことで、選手たちもコミュニティでできることをしているんだ。僕自身、地元だからね」
キングはピッチでそうであるのと同じように、周囲の手本となっている。トッテナム・ホットスパー基金とプレミアリーグ・グローバル起業家週間をサポートして、地元の人々が自ら起業するのを支援しているのだ。「新しいビジネスを始めてみよう、って話さ。困難に負けて諦めるんじゃなくて、それを跳ね返すのさ」そうキングは説明した。
起業家のアラン・シュガーのようになりたいと願ってホワイト・ハート・レーンの会議場に集まった聴衆たちに、キングはフットボールを例えに語りかけた。「業界」の特色や発見、チームとして働くこと。スパーズには間違いなくこれらの特性を見て取ることができる。
月曜日のアストン・ヴィラ戦を前に、ハリー・レドナップのチームはブラッド・フリーデルやスコット・パーカー、エマニュエル・アデバヨルといった抜け目なく補強された選手たちと共に活気に満ちていた。「ブラッドの経験には言葉で言い表せない価値がある。皆を落ち着かせられるんだ」キングはそう語った。
「スコットには驚かされるよ。この間フィットネスのコーチと、ある試合で俺の運動量が40%も落ちた話で冗談を言ってたんだ。俺は『そりゃスコットのせいだ』って言ったよ。アイツがヘトヘトになってピッチから下がってるのに、俺はピンピンしてたんだからな!」
「スコットは最高の形でディフェンスラインの4人を守ってくれるんだ。ダヴィド・シルバやロビン・ファンペルシはディフェンスと中盤の嫌な場所を狙ってプレーしてくるだろ?ディフェンダーにはやりづらいんだ。それでも俺が1、2秒時間を稼げれば、スコットはいつだって戻って来てくれて、俺がポジションを大きく崩す前にボールを奪いに行ってくれる。全然戻ってこない選手だっているけど、スコットは違うんだよ」
「それにスコットはロッカールームでも最高だよ。静かなヤツなんだけど、ヤツが話す時はみんな聞くんだ」
キングはアデバヨルに対しても同様の印象を持っている。「シティから来たとなれば、何か突っかかって来るのか、意気消沈してるかと思う人間もいるだろう。でもマヌは初日から凄くはしゃいでたんだ。トレーニングに来ればいつだって一生懸命だし、チームに活気をもたらしてくれるんだ」
スパーズのゴールが生まれるのはそこからだけではない。「30ヤードの距離なら、ジャメイン(デフォー)がイングランドで一番だね。ボールをちょっと動かしてズドンさ。深く考えてない時が一番良いんだよ。信じられないレベルのフィニッシャーだし、いつだってゴールを上げることだけを考えているからね」
「彼も29歳で年齢を重ねてきてるけど、子供みたいなんだ。トレーニングが終われば『さっきの俺のハットトリック見た?』なんて言ってきてね。自分がどれだけ凄いか示したいだけなんだけどさ」
スパーズは、デフォー、アデバヨル、ルカ・モドリッチ、ラファエル・ファン・デル・ファールト、ギャレス・ベイル、そしてアーロン・レノン、と皆攻める気持ちを持っている。
「トレーニングで彼らが小さなトライアングルでプレーするのを見れば、そこにあるのは試合で見るあのテンポさ。マヌ、ルカ、ファン・デル・ファールトのような選手とウィングのあの速さを考えれば、このメンバーは俺がトッテナムでプレーしてきた中でも最強だよ」
キングはクラブがモドリッチをチェルシーに奪われずにキープしたことに喜びを見せる。
「チームとしては、俺らが皆彼に残って欲しい、一緒に戦って最高のシーズンにしたいと思ってる、と伝えたよ。ルカは本当にいいヤツで、クラブの誰とも上手くやってるよ。凄く難しい立場にあったと思うけど、やるべきことに集中して最高のフットボールを見せている。もう終わったことだと思いたいけど、結局は僕らが今シーズンをどう戦うかに懸かってるんだ。良い選手がいれば、他のクラブへの噂話に巻き込まれるのは避けられないし、次はギャレスに同じことが起きると思っている」
「長距離だったらギャレスはクラブで一番の早さだよ。10mから15mの初速だったらアーロンの方が速いと思うけど、ギャレスほどコンスタントにペースを維持できる奴を見たことがないね。ピッチの長い距離を同じ速さで走り続けられるんだ。フットボーラーには稀有な能力だよ。普通は瞬間的だからね」
「ギャレスは俺が見てきた中で一番のアスリートさ。フィットしてるし、速くてあの左足は魔法だね。完璧な選手を作りたいと思えば、ギャレスがそこにかなり近いと思う」
「ウチには本物のスピードがあると思う。バックラインを見てみろよ。カイル(ウォーカー)、ユネス(カブール)にベノワ(アス・エコト)。俺が一番遅いな!昔は一番スピードがあったのに!カイルも最高のアスリートで素晴らしいディフェンダーだと思う。ポジション面でも随分改善してきてるしね。アイツは前に行くのが好きなんだよ」
「そういうタイプの選手に多いのは、逆サイドで待ってるだけ、ってパターンなんだけど、今季の彼は適切なポジションが取れている。カバーも凄く良いんだ。ユーロの頃には、イングランド代表のレギュラーになっていると思うね」
レドナップはこうした才能を見事にブレンドしている。「中には難しい性格で知られる選手もいるけど、彼らも皆ハリーのためにプレーできるのさ。ハリーは人の心を掴むのが本当に上手いね。ハリーはたまに俺達がいかに凄いかを思い出させてくれる。素晴らしいチームで、どんな相手にでも勝てるんだ、とね」
「俺達が8試合無敗をキープできてるのは、俺達には本当に良いメンバーが揃ってる、と信じられるようになったからさ。ベストメンバーが組んだら、どこにだって肩を並べられるはずだ」
レドナップはキングを上手に起用している。膝への負担を考慮してトレーニングを免除することもある。そしてキングはファビオ・カペッロも同様の理由で称賛する。
「ワールドカップでファビオとは素晴らしい関係を築けたと思う。ファビオは俺がトッテナムでしているのと同じようにさせてくれたんだ。別に隔離されたわけじゃなくて、話し合ったんだ。俺には本当に良くしてくれて、色々助けてくれようとしてね。ケガをしてしまったのは本当に不運だったけど、それはよくあることさ」
アメリカ戦でグロインを痛めたキングは、それ以来代表でプレーしていない。「俺にとっても代表にとっても難しい問題だよ。もちろん気持ちは今でも持っているけど、どんどん遠ざかってはいるね。代表について言えば、俺にはピッチで馴染む時間が必要だ。もし俺がジム通いでチームのみんなと一緒にいないのだったら、ますます難しい。ワールドカップでやってみたけど、タフな経験だった」
「毎試合ピッチに出ては、怪我をしなかったことに安心する。痛みは感じてないけど、いつも違和感と制約を感じながらプレーしているんだ。もうそれには慣れる方法を学んだけどね。そんなには走らないし、前にもできるだけ出ない。俺、ピラティスやってるんだ」
ケガに対する苛立ちは、ピッチ外での軽率な行動にもつながった。既に謝罪をしていることだが、2009年にはロンドンのナイトクラブで不祥事を起こしている。
「この4年間は人生の中でも一番の試練の期間だった。落ち込んだよ。誰もがするように、俺だって過ちを犯した。ネガティブなことがこの4年間に起こっていて、それらは普段の練習ができずに、チームのみんなといられなかったことも原因だった。俺は強くならなきゃいけなかった」
31歳となったキングは、息子のコビーが草サッカーをしたがることに当惑することがある。
「時には膝に負担をかけられないから一緒にできない、と言うこともある。俺がゴールキーパーを務めることもね。息子は分かってくれるよ。この膝と共に育ったようなものだからね。俺のことを誇りに思ってくれてると思うし、俺がプレーしてたことを忘れないように、できるだけ長くプレーしたいと思っているよ」
「アイツ、俺にレノンのシャツをくれって言ってきたんだ。あげようかどうか迷ったね。キングのシャツは既に大量に持ってるよ。フットボールが大好きなんだ。トッテナムと同じくらいマンチェスター・ユナイテッドが好きなんだけどね…」
スパーズ一筋のキングも契約が来年の夏で切れるが、本人はここで続けたいと考えている。
「来シーズンだってプレーできるさ。どんな選手だって、自分の体のことは分かってるし、いつが辞め時かも理解している。俺の場合はそれはまだ、ってことさ。コーチの講習は受けてるけどね」
「バルセロナがトレーニングをしているのを見るのは楽しいよ。自分のプラスになるからね。もちろん、いつの日か監督かコーチになってみたいと思っている。でも俺にはまだまだこなせる試合が残ってるからね」
++++
ということで、チームメイトのことから自分のことまで、幅広くキングが語った記事。こんな選手がキャプテンやっててくれるのは嬉しいし、何より今シーズンはちゃんと試合に出て、しっかり守備を締めてくれている。来シーズン以降もドーンと構えてて欲しいところ。
++(以下、要訳)++
夏にロンドンで暴動が起きた時、それはまずトッテナムから始まり、より激しくなっていった。石油爆弾が投げ込まれ、略奪が横行し、警察が行く手を阻む期間が長く続いた。
その暗黒の8月以来、コミュニティのどのセクションも再建に忙しくしているが、それは街の中心でもあるトッテナム・ホットスパーも同じだ。
スパーズのキャプテンであるレドリー・キングは、「暴動はこのエリアに大きなダメージを与えたね。何の罪もない数多くの人々が影響を受けたんだ。クラブがここでそうした人へのサポートをするのは大事なことで、選手たちもコミュニティでできることをしているんだ。僕自身、地元だからね」
キングはピッチでそうであるのと同じように、周囲の手本となっている。トッテナム・ホットスパー基金とプレミアリーグ・グローバル起業家週間をサポートして、地元の人々が自ら起業するのを支援しているのだ。「新しいビジネスを始めてみよう、って話さ。困難に負けて諦めるんじゃなくて、それを跳ね返すのさ」そうキングは説明した。
起業家のアラン・シュガーのようになりたいと願ってホワイト・ハート・レーンの会議場に集まった聴衆たちに、キングはフットボールを例えに語りかけた。「業界」の特色や発見、チームとして働くこと。スパーズには間違いなくこれらの特性を見て取ることができる。
月曜日のアストン・ヴィラ戦を前に、ハリー・レドナップのチームはブラッド・フリーデルやスコット・パーカー、エマニュエル・アデバヨルといった抜け目なく補強された選手たちと共に活気に満ちていた。「ブラッドの経験には言葉で言い表せない価値がある。皆を落ち着かせられるんだ」キングはそう語った。
「スコットには驚かされるよ。この間フィットネスのコーチと、ある試合で俺の運動量が40%も落ちた話で冗談を言ってたんだ。俺は『そりゃスコットのせいだ』って言ったよ。アイツがヘトヘトになってピッチから下がってるのに、俺はピンピンしてたんだからな!」
「スコットは最高の形でディフェンスラインの4人を守ってくれるんだ。ダヴィド・シルバやロビン・ファンペルシはディフェンスと中盤の嫌な場所を狙ってプレーしてくるだろ?ディフェンダーにはやりづらいんだ。それでも俺が1、2秒時間を稼げれば、スコットはいつだって戻って来てくれて、俺がポジションを大きく崩す前にボールを奪いに行ってくれる。全然戻ってこない選手だっているけど、スコットは違うんだよ」
「それにスコットはロッカールームでも最高だよ。静かなヤツなんだけど、ヤツが話す時はみんな聞くんだ」
キングはアデバヨルに対しても同様の印象を持っている。「シティから来たとなれば、何か突っかかって来るのか、意気消沈してるかと思う人間もいるだろう。でもマヌは初日から凄くはしゃいでたんだ。トレーニングに来ればいつだって一生懸命だし、チームに活気をもたらしてくれるんだ」
スパーズのゴールが生まれるのはそこからだけではない。「30ヤードの距離なら、ジャメイン(デフォー)がイングランドで一番だね。ボールをちょっと動かしてズドンさ。深く考えてない時が一番良いんだよ。信じられないレベルのフィニッシャーだし、いつだってゴールを上げることだけを考えているからね」
「彼も29歳で年齢を重ねてきてるけど、子供みたいなんだ。トレーニングが終われば『さっきの俺のハットトリック見た?』なんて言ってきてね。自分がどれだけ凄いか示したいだけなんだけどさ」
スパーズは、デフォー、アデバヨル、ルカ・モドリッチ、ラファエル・ファン・デル・ファールト、ギャレス・ベイル、そしてアーロン・レノン、と皆攻める気持ちを持っている。
「トレーニングで彼らが小さなトライアングルでプレーするのを見れば、そこにあるのは試合で見るあのテンポさ。マヌ、ルカ、ファン・デル・ファールトのような選手とウィングのあの速さを考えれば、このメンバーは俺がトッテナムでプレーしてきた中でも最強だよ」
キングはクラブがモドリッチをチェルシーに奪われずにキープしたことに喜びを見せる。
「チームとしては、俺らが皆彼に残って欲しい、一緒に戦って最高のシーズンにしたいと思ってる、と伝えたよ。ルカは本当にいいヤツで、クラブの誰とも上手くやってるよ。凄く難しい立場にあったと思うけど、やるべきことに集中して最高のフットボールを見せている。もう終わったことだと思いたいけど、結局は僕らが今シーズンをどう戦うかに懸かってるんだ。良い選手がいれば、他のクラブへの噂話に巻き込まれるのは避けられないし、次はギャレスに同じことが起きると思っている」
「長距離だったらギャレスはクラブで一番の早さだよ。10mから15mの初速だったらアーロンの方が速いと思うけど、ギャレスほどコンスタントにペースを維持できる奴を見たことがないね。ピッチの長い距離を同じ速さで走り続けられるんだ。フットボーラーには稀有な能力だよ。普通は瞬間的だからね」
「ギャレスは俺が見てきた中で一番のアスリートさ。フィットしてるし、速くてあの左足は魔法だね。完璧な選手を作りたいと思えば、ギャレスがそこにかなり近いと思う」
「ウチには本物のスピードがあると思う。バックラインを見てみろよ。カイル(ウォーカー)、ユネス(カブール)にベノワ(アス・エコト)。俺が一番遅いな!昔は一番スピードがあったのに!カイルも最高のアスリートで素晴らしいディフェンダーだと思う。ポジション面でも随分改善してきてるしね。アイツは前に行くのが好きなんだよ」
「そういうタイプの選手に多いのは、逆サイドで待ってるだけ、ってパターンなんだけど、今季の彼は適切なポジションが取れている。カバーも凄く良いんだ。ユーロの頃には、イングランド代表のレギュラーになっていると思うね」
レドナップはこうした才能を見事にブレンドしている。「中には難しい性格で知られる選手もいるけど、彼らも皆ハリーのためにプレーできるのさ。ハリーは人の心を掴むのが本当に上手いね。ハリーはたまに俺達がいかに凄いかを思い出させてくれる。素晴らしいチームで、どんな相手にでも勝てるんだ、とね」
「俺達が8試合無敗をキープできてるのは、俺達には本当に良いメンバーが揃ってる、と信じられるようになったからさ。ベストメンバーが組んだら、どこにだって肩を並べられるはずだ」
レドナップはキングを上手に起用している。膝への負担を考慮してトレーニングを免除することもある。そしてキングはファビオ・カペッロも同様の理由で称賛する。
「ワールドカップでファビオとは素晴らしい関係を築けたと思う。ファビオは俺がトッテナムでしているのと同じようにさせてくれたんだ。別に隔離されたわけじゃなくて、話し合ったんだ。俺には本当に良くしてくれて、色々助けてくれようとしてね。ケガをしてしまったのは本当に不運だったけど、それはよくあることさ」
アメリカ戦でグロインを痛めたキングは、それ以来代表でプレーしていない。「俺にとっても代表にとっても難しい問題だよ。もちろん気持ちは今でも持っているけど、どんどん遠ざかってはいるね。代表について言えば、俺にはピッチで馴染む時間が必要だ。もし俺がジム通いでチームのみんなと一緒にいないのだったら、ますます難しい。ワールドカップでやってみたけど、タフな経験だった」
「毎試合ピッチに出ては、怪我をしなかったことに安心する。痛みは感じてないけど、いつも違和感と制約を感じながらプレーしているんだ。もうそれには慣れる方法を学んだけどね。そんなには走らないし、前にもできるだけ出ない。俺、ピラティスやってるんだ」
ケガに対する苛立ちは、ピッチ外での軽率な行動にもつながった。既に謝罪をしていることだが、2009年にはロンドンのナイトクラブで不祥事を起こしている。
「この4年間は人生の中でも一番の試練の期間だった。落ち込んだよ。誰もがするように、俺だって過ちを犯した。ネガティブなことがこの4年間に起こっていて、それらは普段の練習ができずに、チームのみんなといられなかったことも原因だった。俺は強くならなきゃいけなかった」
31歳となったキングは、息子のコビーが草サッカーをしたがることに当惑することがある。
「時には膝に負担をかけられないから一緒にできない、と言うこともある。俺がゴールキーパーを務めることもね。息子は分かってくれるよ。この膝と共に育ったようなものだからね。俺のことを誇りに思ってくれてると思うし、俺がプレーしてたことを忘れないように、できるだけ長くプレーしたいと思っているよ」
「アイツ、俺にレノンのシャツをくれって言ってきたんだ。あげようかどうか迷ったね。キングのシャツは既に大量に持ってるよ。フットボールが大好きなんだ。トッテナムと同じくらいマンチェスター・ユナイテッドが好きなんだけどね…」
スパーズ一筋のキングも契約が来年の夏で切れるが、本人はここで続けたいと考えている。
「来シーズンだってプレーできるさ。どんな選手だって、自分の体のことは分かってるし、いつが辞め時かも理解している。俺の場合はそれはまだ、ってことさ。コーチの講習は受けてるけどね」
「バルセロナがトレーニングをしているのを見るのは楽しいよ。自分のプラスになるからね。もちろん、いつの日か監督かコーチになってみたいと思っている。でも俺にはまだまだこなせる試合が残ってるからね」
++++
ということで、チームメイトのことから自分のことまで、幅広くキングが語った記事。こんな選手がキャプテンやっててくれるのは嬉しいし、何より今シーズンはちゃんと試合に出て、しっかり守備を締めてくれている。来シーズン以降もドーンと構えてて欲しいところ。
Saturday, November 26, 2011
道を誤ったチェルシーに降りかかる危機
ホームでアーセナル、リバプールに連敗、不安定なディフェンスと噛み合わない戦術からチェルシーのアンドレ・ヴィラス・ボアスに吹き付ける逆風が一気に強まっている印象。これを「テレグラフ」紙のジェイソン・バート記者が各ポイントごとに指摘。さて、アブラノビッチの思いは…。
++(以下、要訳)++
不発気味のストライカーに規律の無さ、監督交代、チームの高齢化。チェルシーは下降期に直面していて、ここ7試合で4敗を喫している。
チーム
チェルシーは高齢化している。言い方を変えるなら、依然としてチームの核を30歳を超えるベテランに依存していて、その中には急速な衰えを見せている選手もいる。そして、それはモウリーニョ時代に「アンタッチャブル」で、今もチームに残って根幹を形成している選手たちに起きているのだ。
彼らは、当時以来そのままクラブに残っているが、時間の経過は世代と共に進み、アシュリー・コールやペトル・チェフにも衰えは出始めているのだ。例えば、存在感を下げているフランク・ランパードをどう使っていくか、出ていくであろうニコラ・アネルカやディディエ・ドログバの場合はどうか、そういう問題だ。
問題のひとつは、30代の選手たちが依然として大型契約で居座っていることだ。彼らはロンドンが大好きで、それを変えるのが難しいことはこの夏に実証済みだ。
ティボ・クルトワ、オリオール・ロメウ、ロメル・ルカクといった若い選手たちが加入し、監督はプロセスを加速させることを求められている。しかし、このうち何人がトップで通用するだろうか?この問題はカルロ・アンチェロッティが指摘した点で、23~27歳という世代に主力選手がいないことを個人的に懸念していた。
チェルシーは、フェルナンド・トーレスやダヴィド・ルイスの獲得によってこのギャップを埋めようとしたもの、今のところ機能してるとは言えず、ルカ・モドリッチやアルバロ・ペレイラについては獲得に失敗した。ベテランへの依存度を下げるには、この冬と来夏にまたトライする必要がある。
フェルナンド・トーレス
チェルシーの問題点を議論する時にトーレス個人を上げるのはアンフェアに感じられるが、彼の苦悩と5,000万ポンドの値札がクラブへのインパクトに直結し、ヴィラス・ボアスの首すら左右しかねない状況だ。同時に、クラブの無計画さをそのまま示してもいる。
ロマン・アブラモビッチは、それほど長くフェルナンド・トーレスを追っていたわけではなく、失敗を派手に帳消しにするために、あれだけの大金をつぎ込んだのだ。チェルシーの監督を誰が務めるにせよ、このスペイン人ストライカーのベストを引き出さねばならず、少なくともその努力をしなければならない。
フアン・マタがやって来て、彼が活きる形のフットボールを展開し始めてはいるものの、トーレスは未だに居心地悪そうに見える。トーレスに合わせるというのは、チェルシーの取っては磨耗の大きいプロセスで、トーレスの調子が監督の未来を左右してしまうのだ。
移籍
金を使ってくれない、とアブラモビッチを責める者はチェルシーにはいないだろう。しかし、アプローチはしばしば場当たり的で、お祭りだったり大飢饉だったり不可解なものだ。むしろ、クラブの真ん中に、戦略の重大な欠陥があるのだろう。そして、クラウディオ・ラニエリの時代以来、一体誰がどういう理由で選手を獲得しているのか、良く分からないのだ。
確かにヴィラス・ボアスには前任者よりも強い権限があると言われているが、結果的には優柔不断のレッテルを貼られているし、そもそもこれまでチェルシーには、アブラモビッチ買収時のティエリ・アンリに始まり、この夏のルカ・モドリッチに至るまで、本命を獲得できないという認めたくない現実がある。
規律
今季のチェルシーは、イエローカードとレッドカードで苦しんでいる。昨季はリーグで4番目にクリーンなチームだった(イエローとレッド計59枚)が、今季は5枚のレッドカードを含め、最もダーティーなクラブとなってしまった。そして、ヴィラス・ボアス自身も、レフェリーについてのコメントでFAから罰則を受け、それに抗議しているところだ。
戦術
当時のCEOだったピーター・ケニオンが言ってから誰もが知るように、アブラモビッチは、ペナルティエリアの角からのスペクタクルなボレーシュートが決まって5-0で勝つような、ファンタジー溢れるフットボールを観たがっている。
アブラモビッチはスリルとゴール、トロフィーを望んでいる。モウリーニョが勝っている間は彼を気に入っていたが、トロフィーを勝ち取れなくなると、フットボールが仰々しいものになった。
ヴィラス・ボアスが持ち込んだのは、まったく新しい一面だ。しかし、これまでのところ、彼は「新しい」エキサイティングな何かを築くのに必要な骨格を作れていない。彼は守備陣に、より厳しいプレスとボールを奪ってのカウンター攻撃をするために高いラインを敷くように要求している。
その結果、これまで12試合で17失点、アラン・ハンセンには「ナイーブ」との批判を受け、これを続けられるのか、疑問符を付けられた。今のところ、ヴィラス・ボアスはそれを続けている。
監督
弱冠34歳、ヴィラス・ボアスは、アブラモビッチが魅力に感じるであろう監督の基準を満たしている。彼は昨季ポルトで全てを勝ち取り、新しいモウリーニョのようだった。ただ、自信の持ち方は共通していても、気性やアプローチは異なっている。
アブラモビッチが望んでいたのは、勝者のメンタリティを持ちつつ、対立的な側面が薄らいだモウリーニョであり、その気持ちから、来夏まで待てばフリーであったにも関わらず、ヴィラス・ボアスを監督として引き抜くために1,330万ポンドの違約金を支払ったのだ。
ヴィラス・ボアスには厳しい職業倫理がある。時に練習場で眠るほど良く働き、完璧な英語を話し、優れたコミュニケーターとして選手たちとも「良好な関係」を築いている。と同時に、彼が取るのはバルセロナのペップ・グァルディオラをモデルにした単一のアプローチであり、また常に几帳面なほどにフェアに見られようとしている。考えてみれば、全ての決断が選手たちに説明されてきたわけではなく、何人かの選手たちは良い気分ではないようだ。
オーナー
アブラモビッチ体制下で成功できる監督はいるだろうか?いや、長く成功できる監督はいるだろうか?彼は、誰とでも上手くやっているかと思えば、長期間不在になり、時には異常にクラブに厳しく関わってくる。
判断はしばしば迅速に下される。
朝起きた時に、単純に変化が必要だ、と考えることもあるだろう。周囲の人間たちともすぐに仲良くなったと思えば対立し、驚くほどグループの仲間に影響されたりもする。
アブラモビッチの「黄金のサークル」が全てを握っている限り、アブラモビッチのチームの監督が誰であれ、その監督の助けにはならないだろう。
++++
開幕前にスパーズがトップ4に返り咲くにはどうなれば良いのだろうと考えていた時に、一番イメージしやすかったのが、チェルシーがコケることだった。やっぱ新監督って難しいのよね。
++(以下、要訳)++
不発気味のストライカーに規律の無さ、監督交代、チームの高齢化。チェルシーは下降期に直面していて、ここ7試合で4敗を喫している。
チーム
チェルシーは高齢化している。言い方を変えるなら、依然としてチームの核を30歳を超えるベテランに依存していて、その中には急速な衰えを見せている選手もいる。そして、それはモウリーニョ時代に「アンタッチャブル」で、今もチームに残って根幹を形成している選手たちに起きているのだ。
彼らは、当時以来そのままクラブに残っているが、時間の経過は世代と共に進み、アシュリー・コールやペトル・チェフにも衰えは出始めているのだ。例えば、存在感を下げているフランク・ランパードをどう使っていくか、出ていくであろうニコラ・アネルカやディディエ・ドログバの場合はどうか、そういう問題だ。
問題のひとつは、30代の選手たちが依然として大型契約で居座っていることだ。彼らはロンドンが大好きで、それを変えるのが難しいことはこの夏に実証済みだ。
ティボ・クルトワ、オリオール・ロメウ、ロメル・ルカクといった若い選手たちが加入し、監督はプロセスを加速させることを求められている。しかし、このうち何人がトップで通用するだろうか?この問題はカルロ・アンチェロッティが指摘した点で、23~27歳という世代に主力選手がいないことを個人的に懸念していた。
チェルシーは、フェルナンド・トーレスやダヴィド・ルイスの獲得によってこのギャップを埋めようとしたもの、今のところ機能してるとは言えず、ルカ・モドリッチやアルバロ・ペレイラについては獲得に失敗した。ベテランへの依存度を下げるには、この冬と来夏にまたトライする必要がある。
フェルナンド・トーレス
チェルシーの問題点を議論する時にトーレス個人を上げるのはアンフェアに感じられるが、彼の苦悩と5,000万ポンドの値札がクラブへのインパクトに直結し、ヴィラス・ボアスの首すら左右しかねない状況だ。同時に、クラブの無計画さをそのまま示してもいる。
ロマン・アブラモビッチは、それほど長くフェルナンド・トーレスを追っていたわけではなく、失敗を派手に帳消しにするために、あれだけの大金をつぎ込んだのだ。チェルシーの監督を誰が務めるにせよ、このスペイン人ストライカーのベストを引き出さねばならず、少なくともその努力をしなければならない。
フアン・マタがやって来て、彼が活きる形のフットボールを展開し始めてはいるものの、トーレスは未だに居心地悪そうに見える。トーレスに合わせるというのは、チェルシーの取っては磨耗の大きいプロセスで、トーレスの調子が監督の未来を左右してしまうのだ。
移籍
金を使ってくれない、とアブラモビッチを責める者はチェルシーにはいないだろう。しかし、アプローチはしばしば場当たり的で、お祭りだったり大飢饉だったり不可解なものだ。むしろ、クラブの真ん中に、戦略の重大な欠陥があるのだろう。そして、クラウディオ・ラニエリの時代以来、一体誰がどういう理由で選手を獲得しているのか、良く分からないのだ。
確かにヴィラス・ボアスには前任者よりも強い権限があると言われているが、結果的には優柔不断のレッテルを貼られているし、そもそもこれまでチェルシーには、アブラモビッチ買収時のティエリ・アンリに始まり、この夏のルカ・モドリッチに至るまで、本命を獲得できないという認めたくない現実がある。
規律
今季のチェルシーは、イエローカードとレッドカードで苦しんでいる。昨季はリーグで4番目にクリーンなチームだった(イエローとレッド計59枚)が、今季は5枚のレッドカードを含め、最もダーティーなクラブとなってしまった。そして、ヴィラス・ボアス自身も、レフェリーについてのコメントでFAから罰則を受け、それに抗議しているところだ。
戦術
当時のCEOだったピーター・ケニオンが言ってから誰もが知るように、アブラモビッチは、ペナルティエリアの角からのスペクタクルなボレーシュートが決まって5-0で勝つような、ファンタジー溢れるフットボールを観たがっている。
アブラモビッチはスリルとゴール、トロフィーを望んでいる。モウリーニョが勝っている間は彼を気に入っていたが、トロフィーを勝ち取れなくなると、フットボールが仰々しいものになった。
ヴィラス・ボアスが持ち込んだのは、まったく新しい一面だ。しかし、これまでのところ、彼は「新しい」エキサイティングな何かを築くのに必要な骨格を作れていない。彼は守備陣に、より厳しいプレスとボールを奪ってのカウンター攻撃をするために高いラインを敷くように要求している。
その結果、これまで12試合で17失点、アラン・ハンセンには「ナイーブ」との批判を受け、これを続けられるのか、疑問符を付けられた。今のところ、ヴィラス・ボアスはそれを続けている。
監督
弱冠34歳、ヴィラス・ボアスは、アブラモビッチが魅力に感じるであろう監督の基準を満たしている。彼は昨季ポルトで全てを勝ち取り、新しいモウリーニョのようだった。ただ、自信の持ち方は共通していても、気性やアプローチは異なっている。
アブラモビッチが望んでいたのは、勝者のメンタリティを持ちつつ、対立的な側面が薄らいだモウリーニョであり、その気持ちから、来夏まで待てばフリーであったにも関わらず、ヴィラス・ボアスを監督として引き抜くために1,330万ポンドの違約金を支払ったのだ。
ヴィラス・ボアスには厳しい職業倫理がある。時に練習場で眠るほど良く働き、完璧な英語を話し、優れたコミュニケーターとして選手たちとも「良好な関係」を築いている。と同時に、彼が取るのはバルセロナのペップ・グァルディオラをモデルにした単一のアプローチであり、また常に几帳面なほどにフェアに見られようとしている。考えてみれば、全ての決断が選手たちに説明されてきたわけではなく、何人かの選手たちは良い気分ではないようだ。
オーナー
アブラモビッチ体制下で成功できる監督はいるだろうか?いや、長く成功できる監督はいるだろうか?彼は、誰とでも上手くやっているかと思えば、長期間不在になり、時には異常にクラブに厳しく関わってくる。
判断はしばしば迅速に下される。
朝起きた時に、単純に変化が必要だ、と考えることもあるだろう。周囲の人間たちともすぐに仲良くなったと思えば対立し、驚くほどグループの仲間に影響されたりもする。
アブラモビッチの「黄金のサークル」が全てを握っている限り、アブラモビッチのチームの監督が誰であれ、その監督の助けにはならないだろう。
++++
開幕前にスパーズがトップ4に返り咲くにはどうなれば良いのだろうと考えていた時に、一番イメージしやすかったのが、チェルシーがコケることだった。やっぱ新監督って難しいのよね。
Saturday, November 12, 2011
サー・アレックス・ファーガソンが四半世紀で築き上げたもの
アレックス・ファーガソンの就任25周年については多くの記事が出た。今回選んだのは、「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター記者によるもの。ウィンター氏は今回、このメインの記事だけでなく、データや過去の名試合の特集などにも関わっていて、思い入れも強いのかもしれないと感じた。しかし25年、本当に凄い。
++(以下、要訳)++
25年の時を経た今でさえ、サー・アレックス・ファーガソンは屈辱を忘れてはいない。37のトロフィーを獲っても記憶には残るのだ。
「もちろん最初の日のことは憶えている。我々は負けたんだ、0-2でね」
オックスフォード・ユナイテッド戦の敗戦は、ファーガソンが1986年の11月6日にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任してほどなく訪れた。当時のチームは、現在の格調には程遠かった。
ファーガソンはこの時、「なんてこった。私はこの仕事を求めていたんだ」とつぶやいた。
それが、ファーガソンの最初の敗北に対する決意であり、この後、チームに蔓延していた酒飲みの習慣を改めてフィットネスを上げ、スティーブ・ブルースのようなリーダーを連れてきて、ベッカム世代のような自家育成に着手した。それらは皆、現在の彼が勝ちとった地位へとつながって行った。
指揮を執った1,409試合のうち、勝ったのが843、引き分けが314、敗戦は252、2,578ゴールを決め、失点は1,189だ。
彼のライバルたちを悩ませるのは、彼がまだまだ健在で引退する気配もないことだ。彼は次の世代、次の25年のために熱心に働いている。
カーリントンのアカデミーのビルの椅子に腰かけながら、ファーガソンはティーンエイジャーだったデイビッド・ベッカムやライアン・ギッグス、ニッキー・バット、ポール・スコールズらの写真に目をやった。そこにはロビー・サヴェージすらいた。サヴェージはトップに上がれなかったが、この若き収穫物たちは、ファーガソンのために重要な働きをして見せた。
「一回きりのものだったか?答はノーだ。これはまた起きるもので、マンチェスター・ユナイテッドにはひとサイクル分の人材しかいないとは考えられないだろう。我々は常に夢を追い続けるし、この先何度でもそれを実現する。そうしなければいけないんだよ」
「アカデミーがあるべき姿になれば、また一度に5、6人上がってくることだってあるだろう。その意味では前進が見られる。2011年という時代に、オールド・トラフォードから1時間~1時間半以内の場所の少年しか指導できないなんてバカげた話だ。実にバカげている。バルセロナを見てみろ。中国から一人、日本からも一人、アカデミーに連れてきた。それが全てを物語っている」
若き才能の荒野の中で、ファーガソンは今も黄金を探し続けている。今もひとつの宝石、まだ原石のラヴェル・モリソンがいる。モリソンは才能溢れる選手だが、我儘なキャラクターが成長を妨げてもきた。
彼を一人前に仕立てられるのはファーガソンしかいないだろう。選手たちはみな彼のオーラにインスパイアされ、彼のためにプレーしたいと考えるのだ。
中には彼の申し出を断った面々もいる。グレン・ヒーセン、ポール・ガスコイン、ジョン・バーンズ、アラン・シアラーそしてウェスリー・スナイデルがこれにあたり、ファーガソン自身も移籍市場では過ちを犯してきた。
期待外れに終わったエリック・ジェンバ・ジェンバのような選手がいる一方で、ピーター・シュマイケルを50万ポンド、エリック・カントナを100万ポンド、クリスティアーノ・ロナウドを1,200万ポンド(売値は8,000万ポンドだった)、スティーブ・ブルースにしても80万ポンドで連れてきた。
土曜日にサンダーランドを率いてオールド・トラフォードに戻るスティーブ・ブルースは、ファーガソンにノリッジから引き抜いたこのセンターバックがいかに重要な役割を果たしたかを思い出させるだろう。
「スティーブがメディカル・チェックを受けた時、ドクターは彼を通すか迷っていた。私はリザーブチームを見ながらその結果を待っていたが、やがてマーティン・エドワーズがディレクターズ・ボックスにやってきて『アイツの膝は思ったより悪いぞ』と言ってきた」
「私は『頼むよ。アイツは5年間休まずプレーできてたはずだ』と言ったんだ。時にこうしたメディカルチェックの結果は無視すべき時もあるんだ」
ブルースはリーダーであり、チームメイトに最高のパフォーマンスを求め続けたが、厳しい逆境の風が吹くこともしばしばあった。それでも、ブルースにとって痛みとは敗者のコンセプトだった。
「彼はよく膝をケガしたままプレーしてたし、リバプールに試合に行った時には前の週にハムストリングをやっていた。練習場で金曜日にチームのメンバーを決めようという時に、あいつが駆け寄って来て言うんだ、『大丈夫だから』とね」
「私は『バカを言うんじゃない。どう考えてもそれじゃ無理だろう』と言っても、彼は『こんなの平気です。気にしないでください、プレーしますから』と言って、結局そのアンフィールドでのリバプール戦はハムストリングのケガを抱えたままプレーした。本当に驚きだった。そういうキャラクターが、他のメンバーよりも彼を際立たせるんだよ」
ファーガソンはこうした強烈なキャラクターを尊重した。後に、ファーガソンはサー・ボビー・ロブソンを監督のアイコンとして持ち上げるようになるが、これはロブソンのフットボールへの情熱からだ。
「フットボールに注ぐ愛情を見れば、ボビーが実に素晴らしい人間であることが分かる。長い間健康に問題を抱えながら、それが彼を止めることは無かった。ガンによる発作も何度かあったしね。大抵の人はそれを克服して安らかな生活が送れれば満足だが、ボビーは最後の最後まで監督業の現場に戻りたがっていた」
「ニューカッスルでの仕事が終わっても、彼は現場に戻りたいと思っていたが、その情熱は信じられないほどで、天賦の才とも言える。みんな、70になってもあの情熱を持って努力するのが簡単でないことを分かっていないと思う」
来月70歳を迎えるファーガソンは、その意欲を失ってはいない。彼は心臓の手術を終えたばかりの64歳のハリー・レドナップを称賛している。「何試合か勝ってるうちにすっかり元気になって、また鼻歌でも歌ってるさ。心配することはない」と笑った。「私は健康に恵まれたと思っているし、長年に渡って幸運だった。いつだってエネルギーに満ち溢れてるというのは、監督として重要なことだ」
記者としてこれまで何度となくインタビューをしてきて、ファーガソンのエネルギッシュさには驚くばかりだった。5つの小さな思い出のスナップショットが、様々な色合いを持つこの男のちょっとしたイメージを描き出せよう。
1つ目、マンチェスター空港の駐車場から一緒に歩いていた時。あとでイーベイで売るためのサインをねらう中年の男たちの集団に近づくと、歩くペースが上がるのが分かった。ファーガソンは走らんばかりの早さで彼らを振り切った。彼らはこれで金を稼ぐことはできなかっただろう。ノーチャンスだ。
2つ目、1999年にライアン・ギッグスのアーセナル戦でのスラロームのような華麗なドリブルについて話していた時。FAカップ準決勝再試合でのこのゴールを、彼は興奮しながらディエゴ・マラドーナのイングランド戦のドリブルになぞらえた。ファーガソンがフットボールの魔法使いに抱く愛情はいつだって輝いていた。
3つ目、本の前書きについて議論するために朝7時に電話を貰った時。仕事に行こうとバタバタしてる時に、ファーガソンの電話と雲雀のさえずりのゴールは写真判定モノだった。
4つ目、子供たちと行くためにグラスゴーでお勧めの博物館を3つ尋ねた時。ファーガソンはそのうち2つに寄付をしていた。フットボールに限らず、彼の好奇心は無限大だ。
5つ目、メスタージャでキックオフ90分前にアウェー側ロッカールームの外で出くわした時。「先発メンバーを当ててみろ」と挑戦された。8つしか当てられず、「俺の気持ちを読もうなんて向こう見ず」と散々バカにされた。
ファーガソンは複雑だ。彼はレフェリーを信じ、メディアは彼の失墜を書き立てるが、それでも何かあれば彼らが一番に電話をするのもファーガソンだ。彼は怒りっぽく、気前がよく、頑固で愛想がよい。総じて言うならば、彼は勝利者なのだ。
リバプールからリーズ・ユナイテッド、ブラックバーン・ローバーズ、そしてアーセナルとチェルシー、マンチェスター・シティ。この25年に受けてきた挑戦の数々を振り返って熟考しながらファーガソンは肩をすくめた。
「ここにいれば挑戦はいつだってある。誰を相手にしているかの問題ではない」
かかって来い。ファーガソンは十分に話した。
「よし、またな」彼はそう言って立ち上がった。トレーニングの時間だ。勝ち取るべきトロフィーもまだある。あの日オックスフォードに流れたブルースの余韻は今も残っている。
++++
ファーガソンのインタビューはいつも聞きとるのが大変。
このサンダーランド戦の前の会見では、あまり自分を褒めないファーガソンが「おとぎ話のようだ」と語って、普段彼の言葉を聞くメディアを驚かせたというけど、25年を振り返ってそう言えることを成し遂げたんだから、ある意味重みのあるおとぎ話だよな。
++(以下、要訳)++
25年の時を経た今でさえ、サー・アレックス・ファーガソンは屈辱を忘れてはいない。37のトロフィーを獲っても記憶には残るのだ。
「もちろん最初の日のことは憶えている。我々は負けたんだ、0-2でね」
オックスフォード・ユナイテッド戦の敗戦は、ファーガソンが1986年の11月6日にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任してほどなく訪れた。当時のチームは、現在の格調には程遠かった。
ファーガソンはこの時、「なんてこった。私はこの仕事を求めていたんだ」とつぶやいた。
それが、ファーガソンの最初の敗北に対する決意であり、この後、チームに蔓延していた酒飲みの習慣を改めてフィットネスを上げ、スティーブ・ブルースのようなリーダーを連れてきて、ベッカム世代のような自家育成に着手した。それらは皆、現在の彼が勝ちとった地位へとつながって行った。
指揮を執った1,409試合のうち、勝ったのが843、引き分けが314、敗戦は252、2,578ゴールを決め、失点は1,189だ。
彼のライバルたちを悩ませるのは、彼がまだまだ健在で引退する気配もないことだ。彼は次の世代、次の25年のために熱心に働いている。
カーリントンのアカデミーのビルの椅子に腰かけながら、ファーガソンはティーンエイジャーだったデイビッド・ベッカムやライアン・ギッグス、ニッキー・バット、ポール・スコールズらの写真に目をやった。そこにはロビー・サヴェージすらいた。サヴェージはトップに上がれなかったが、この若き収穫物たちは、ファーガソンのために重要な働きをして見せた。
「一回きりのものだったか?答はノーだ。これはまた起きるもので、マンチェスター・ユナイテッドにはひとサイクル分の人材しかいないとは考えられないだろう。我々は常に夢を追い続けるし、この先何度でもそれを実現する。そうしなければいけないんだよ」
「アカデミーがあるべき姿になれば、また一度に5、6人上がってくることだってあるだろう。その意味では前進が見られる。2011年という時代に、オールド・トラフォードから1時間~1時間半以内の場所の少年しか指導できないなんてバカげた話だ。実にバカげている。バルセロナを見てみろ。中国から一人、日本からも一人、アカデミーに連れてきた。それが全てを物語っている」
若き才能の荒野の中で、ファーガソンは今も黄金を探し続けている。今もひとつの宝石、まだ原石のラヴェル・モリソンがいる。モリソンは才能溢れる選手だが、我儘なキャラクターが成長を妨げてもきた。
彼を一人前に仕立てられるのはファーガソンしかいないだろう。選手たちはみな彼のオーラにインスパイアされ、彼のためにプレーしたいと考えるのだ。
中には彼の申し出を断った面々もいる。グレン・ヒーセン、ポール・ガスコイン、ジョン・バーンズ、アラン・シアラーそしてウェスリー・スナイデルがこれにあたり、ファーガソン自身も移籍市場では過ちを犯してきた。
期待外れに終わったエリック・ジェンバ・ジェンバのような選手がいる一方で、ピーター・シュマイケルを50万ポンド、エリック・カントナを100万ポンド、クリスティアーノ・ロナウドを1,200万ポンド(売値は8,000万ポンドだった)、スティーブ・ブルースにしても80万ポンドで連れてきた。
土曜日にサンダーランドを率いてオールド・トラフォードに戻るスティーブ・ブルースは、ファーガソンにノリッジから引き抜いたこのセンターバックがいかに重要な役割を果たしたかを思い出させるだろう。
「スティーブがメディカル・チェックを受けた時、ドクターは彼を通すか迷っていた。私はリザーブチームを見ながらその結果を待っていたが、やがてマーティン・エドワーズがディレクターズ・ボックスにやってきて『アイツの膝は思ったより悪いぞ』と言ってきた」
「私は『頼むよ。アイツは5年間休まずプレーできてたはずだ』と言ったんだ。時にこうしたメディカルチェックの結果は無視すべき時もあるんだ」
ブルースはリーダーであり、チームメイトに最高のパフォーマンスを求め続けたが、厳しい逆境の風が吹くこともしばしばあった。それでも、ブルースにとって痛みとは敗者のコンセプトだった。
「彼はよく膝をケガしたままプレーしてたし、リバプールに試合に行った時には前の週にハムストリングをやっていた。練習場で金曜日にチームのメンバーを決めようという時に、あいつが駆け寄って来て言うんだ、『大丈夫だから』とね」
「私は『バカを言うんじゃない。どう考えてもそれじゃ無理だろう』と言っても、彼は『こんなの平気です。気にしないでください、プレーしますから』と言って、結局そのアンフィールドでのリバプール戦はハムストリングのケガを抱えたままプレーした。本当に驚きだった。そういうキャラクターが、他のメンバーよりも彼を際立たせるんだよ」
ファーガソンはこうした強烈なキャラクターを尊重した。後に、ファーガソンはサー・ボビー・ロブソンを監督のアイコンとして持ち上げるようになるが、これはロブソンのフットボールへの情熱からだ。
「フットボールに注ぐ愛情を見れば、ボビーが実に素晴らしい人間であることが分かる。長い間健康に問題を抱えながら、それが彼を止めることは無かった。ガンによる発作も何度かあったしね。大抵の人はそれを克服して安らかな生活が送れれば満足だが、ボビーは最後の最後まで監督業の現場に戻りたがっていた」
「ニューカッスルでの仕事が終わっても、彼は現場に戻りたいと思っていたが、その情熱は信じられないほどで、天賦の才とも言える。みんな、70になってもあの情熱を持って努力するのが簡単でないことを分かっていないと思う」
来月70歳を迎えるファーガソンは、その意欲を失ってはいない。彼は心臓の手術を終えたばかりの64歳のハリー・レドナップを称賛している。「何試合か勝ってるうちにすっかり元気になって、また鼻歌でも歌ってるさ。心配することはない」と笑った。「私は健康に恵まれたと思っているし、長年に渡って幸運だった。いつだってエネルギーに満ち溢れてるというのは、監督として重要なことだ」
記者としてこれまで何度となくインタビューをしてきて、ファーガソンのエネルギッシュさには驚くばかりだった。5つの小さな思い出のスナップショットが、様々な色合いを持つこの男のちょっとしたイメージを描き出せよう。
1つ目、マンチェスター空港の駐車場から一緒に歩いていた時。あとでイーベイで売るためのサインをねらう中年の男たちの集団に近づくと、歩くペースが上がるのが分かった。ファーガソンは走らんばかりの早さで彼らを振り切った。彼らはこれで金を稼ぐことはできなかっただろう。ノーチャンスだ。
2つ目、1999年にライアン・ギッグスのアーセナル戦でのスラロームのような華麗なドリブルについて話していた時。FAカップ準決勝再試合でのこのゴールを、彼は興奮しながらディエゴ・マラドーナのイングランド戦のドリブルになぞらえた。ファーガソンがフットボールの魔法使いに抱く愛情はいつだって輝いていた。
3つ目、本の前書きについて議論するために朝7時に電話を貰った時。仕事に行こうとバタバタしてる時に、ファーガソンの電話と雲雀のさえずりのゴールは写真判定モノだった。
4つ目、子供たちと行くためにグラスゴーでお勧めの博物館を3つ尋ねた時。ファーガソンはそのうち2つに寄付をしていた。フットボールに限らず、彼の好奇心は無限大だ。
5つ目、メスタージャでキックオフ90分前にアウェー側ロッカールームの外で出くわした時。「先発メンバーを当ててみろ」と挑戦された。8つしか当てられず、「俺の気持ちを読もうなんて向こう見ず」と散々バカにされた。
ファーガソンは複雑だ。彼はレフェリーを信じ、メディアは彼の失墜を書き立てるが、それでも何かあれば彼らが一番に電話をするのもファーガソンだ。彼は怒りっぽく、気前がよく、頑固で愛想がよい。総じて言うならば、彼は勝利者なのだ。
リバプールからリーズ・ユナイテッド、ブラックバーン・ローバーズ、そしてアーセナルとチェルシー、マンチェスター・シティ。この25年に受けてきた挑戦の数々を振り返って熟考しながらファーガソンは肩をすくめた。
「ここにいれば挑戦はいつだってある。誰を相手にしているかの問題ではない」
かかって来い。ファーガソンは十分に話した。
「よし、またな」彼はそう言って立ち上がった。トレーニングの時間だ。勝ち取るべきトロフィーもまだある。あの日オックスフォードに流れたブルースの余韻は今も残っている。
++++
ファーガソンのインタビューはいつも聞きとるのが大変。
このサンダーランド戦の前の会見では、あまり自分を褒めないファーガソンが「おとぎ話のようだ」と語って、普段彼の言葉を聞くメディアを驚かせたというけど、25年を振り返ってそう言えることを成し遂げたんだから、ある意味重みのあるおとぎ話だよな。
Tuesday, November 1, 2011
リールでの生活を謳歌するジョー・コール
移籍市場の締切間際にリバプールからフランスのリールにローン移籍したジョー・コールは、リーグ・アンとチャンピオンズリーグでの活躍でイングランド代表に返り咲くことを夢見ている。一時はロンドンからの電車通勤が噂されたが、本人はしっかりとフランスに根を下ろして新しい生活を満喫している様子。チャンピオンズリーグでは、かつての指揮官でもあるクラウディオ・ラニエリが率いるインテルとの対戦を控えている。
++(以下、要訳)++
ジョー・コールはフランスに移り、生きる喜びを再発見して人生を謳歌している。それは学校に通ってフランス語を学ぶ気になるほど充実したものだ。この日の午後はトレーニングがあり、その後、彼と妻のカーリーは学生時代以来のフランス語のレッスンに通っている。
「こっちに来てからなかなか落ち着かなかったけど、ゆっくりだけど少しずつ慣れてきてるよ。学校通いもそのひとつさ。時間がある時にいはカフェに座って『レキップ』(フランスの新聞)を読んでるんだ。綺麗な街でね。何を期待したら良いのか分からずに来たけど、ここでの生活は悪くないよ。ここでは『北フランスに来たら人は泣く。しかし、そこを去る時にはいっそう泣く』って諺があるくらい、みんなこの場所と仲間意識を愛してるんだ。良かったと思うね」
コールがここまでポジティブでいるのを見るのは新鮮だ。この29歳のキャリアは航路を外れたかのように見えた。チェルシーとの契約が2010年に切れた時には、南アフリカで不名誉なワールドカップを戦うイングランド代表の一員に何とか踏みとどまっていた。リバプールへの移籍金無しでの移籍はキャリアを蘇らせるきっかけになるはずで、当初はリバプールに馴染むかに見えた。しかし、退場や数々の小さなケガ、監督の交代や経営陣の混乱が次第に彼を蚊帳の外へと追いやって行った。しかし本当の驚きは、それが代表クラスとしては22年前にクリス・ワドルがマルセイユに移籍した時以来となるリーグ・アンへのクラブへのローン移籍へとつながったことだった。
リールでプレーした国内リーグの数試合で、コールは既に称賛を浴びている。このインタビューの最中も、サインを求める多くの人々が我々の会話を遮り、「サンキュー」も言わずに去っていく。シミー(ダンスの一種)とダーツ、交代出場でデビューしたサンテティエンヌ戦のアシストが、コールのリズムを作り出している。それが本格化したのは、25ヤードのシュートでロリアンのファビアン・オダールを抜いた時だった。チームは潤沢な資金で大型補強をしたパリ・サンジェルマンから6ポイント差の3位、火曜日にはチェルシー時代のコールの指揮官だったクラウディオ・ラニエリ率いるインテルとチャンピオンズリーグで対戦する。リールはヨーロッパで最もテクニックに秀でたリーグのひとつであるリーグ・アンで輝き、来年の夏には55,000人収容のスタジアムに居を移すクラブである。コールが運が自分に向いてきたと感じるには理由があるのだ。
「イングランド人が海外に行くと言うと、ビールを10パイント飲んでカラオケを壊しているイメージだろうが、フットボールとは関係なく、僕と妻にとっては違う国に住むチャンスだった。僕はカムデン・タウン(ロンドン北部)の出身で、フランスに住んだり、フランスでフットボールをする機会に恵まれるとは夢にも思わなかった。イングランドの選手には海外に行かない、とネガティブなイメージがある。僕は自分がその認識を変える助けになれると思いたいね。自分を試しているようなものさ。僕は多くの外国人がイングランドにやってきて皆と交わり、チームメイトと夜な夜な出かけてイングランドのメンタリティに馴染んでいったのを見てきたし、逆にためらいがちだったり、シャイで苦しむ奴らもね。だから、僕もできるだけ自分から溶け込もうとして
そのひとつ。水晶玉で未来を予期でいていたら、学生の頃のフランス語の授業をもっと頑張ったけど、その頃は単に興味がなかった。今はセロから始めてるようなものさ。ミシェル・トーマスのオーディオ・ブックを聞いて、毎週クラスでのレッスンにも行ってるよ。自分でコーヒーや水くらいはオーダーできるし、小さなことを少しずつ覚えているところだね。今日は。『練習は何時から?』ってチームメイトに聞いて『午後からだよ』と教わった。そういうところからね」
「9カ月で流暢に話すのは難しいだろうけど、うまくやって行きたいんだ。すこし大きな文脈で考える必要があるね。ウェストハムではリチャード・ガルシアと育ったけど、彼は15歳でオーストラリアからイングランドにやってきた。それは本当に国を出る、ということだ。僕のキャリアは、と言えば、東ロンドンから西ロンドン、そしてリバプール。今だってユーロスターに乗ればすぐにロンドンに行ける。まぁ、もうイングランドに家は無いし、滅多にしないけどね。時に自分の地平線を拡げる必要があるってことさ。今までと違う経験をしてね。この間、初めてカエルの足を食べたけど、脂の乗ったチキンみたいで本当に美味しかった。素晴らしいよ。街の真ん中に店があるから行ってみなよ」
そう含み笑いで言ったが、コールはこうして新しい生活にピッチの内外で挑戦している。いまリールで見せているプレーは、彼の才能を垣間見せているだけだったのかもしれないとリバプールのファンを苛立たせるかもしれない。
「単に十分なプレーができなかったんだ。退場になったし、戻ってきてもチームはロイと共に難しい時期にあった。戦術も僕には合わなかったしね。ロイは凄く難しい仕事に直面してたし、彼を批判しようとは思わない。でも、チームのプレーが良くなければ、最初に外されるのは若い選手や感覚でプレーする選手なのさ。そういうものなんだ」
「監督がケニーに代わってからは、僕がケガをしている間にチームが固まっていた。ウェストハムやチェルシーにいた頃はパッと入ってすぐにインパクトを残して、そのままチームに居座れた。リバプールではまた若手の一人に戻った感覚で、チャンスを掴むにはいつも何か特別なことをする必要があった。そしてそれが起こることは無かった。リバプールが好きだし、誰を批判するつもりもない。クラブの考えがあることも分かるよ。でも、僕はここにきて再びプレーする必要があった。今まで、選手が新しい国に来れば慣れるのには時間が掛かった。ルイス・スアレスみたいにすぐにインパクトを残せるのは稀だよ。僕には慣れている時間は無い。4年契約で来たわけじゃなく、ここに9ヶ月の予定で来た」
インパクトのあるデビューは、レフェリーがプレミアリーグよりも選手を守るリーグ・アンが彼に向いていることを示唆している。試合のペースも大慌てというよりは正確だ。リュディ・ガルシア率いる攻撃的なリールはコールにも合っているし、彼の横には才能溢れるエデン・アザールもいる。唯一ショッキングだったことと言えば、自分のスパイクを自分で磨く必要があったことだ。「イングランドじゃ一度プロになったら全部放ったらかしさ」とコールは語る。「国内の試合は、戦術的にはチャンピオンズリーグの試合をやってる感じだよ。今まで対戦した相手は、みんなしっかりしたフットボールをプレーしようとするし、ヨーロッパのレフェリーはテクニカルな選手を輝かせようとしてくれるね」
「アタッキング・サードまで行けばディフェンスもしっかり詰めてくるし、テンポは変わらない。でも、いったん引けば我慢強くビルドアップする時間もある。クレバーに動く必要があるよ。今まで必要のない動きも沢山してきたし、プレミアリーグじゃサイドバックにプレッシャーを掛けにも行ってた。イングランドじゃ、「前から行け」って後ろから叫び声がするからね。でも、ここでそうやって後ろを見てみると、「何やってんだ、力を残しておけ」って言われるんだ。学んでる最中だけど、これは予想していたことさ。学ぶのをやめたらプレーする意味は無いからね。マスターした気になるかもしれないけど、フットボールをマスターした奴なんて一人もいないよ」
この序盤の高まりを維持できるなら、フランスでの長い将来が訪れ、ワドルと並ぶカルト的な人気を勝ち取るかもしれない。リーグの上位とヨーロッパでの活躍が、ファビオ・カペッロにあのドイツ戦で今のところ最後となる56キャップ目を刻んだ選手がいることを思い出させることは確かだ。「代表でのプレーは懐かしいよ。10年レギュラーを張ってきて、そこにいるのが当たり枚に感じていたのかもしれない。いまこうして1年も呼ばれなくなって、11月には30歳になる。若手もどんどん入ってきているから、まだ僕のことを見てくれてるのかな、って気にはなるよね」
「気付いてもらえたらいいと思ってるよ。イングランドの人々の多くは、何で僕がフランスに来たのか不思議に思っているし、きっと忘れてしまうだろう。まだ完全には終わってないと思ってくれているかもしれない。彼らが間違っていることを証明したいわけじゃないんだ。それは誤ったモチベーションだよ。でも、僕は自分がまだトップクラスの選手だと証明したい。今の環境ならそれができると思ってるんだ。この間、ジョン・テリーが、僕と南アフリカでサメと泳ぎに行きたがった、って話をしていたのを見たよ。カゴに入ってるんだよ、もちろん。結局ダメって言われたけど、僕はそうして違ったことを試してみたいんだ。サメと泳いだりね。フランスに住むってのもそういうことさ」
このイングランド人は、海外ですっかり我が家の気分を味わっている。
++++
ロンドンに住んでた頃、他の留学生と「地元の奴らはチャレンジしないよな。旅行に行っても結局フィッシュ・アンド・チップかマクドナルド探してるし」って話してたのを思い出した。僕らが思ってる以上に内向き志向なんだよな。
++(以下、要訳)++
ジョー・コールはフランスに移り、生きる喜びを再発見して人生を謳歌している。それは学校に通ってフランス語を学ぶ気になるほど充実したものだ。この日の午後はトレーニングがあり、その後、彼と妻のカーリーは学生時代以来のフランス語のレッスンに通っている。
「こっちに来てからなかなか落ち着かなかったけど、ゆっくりだけど少しずつ慣れてきてるよ。学校通いもそのひとつさ。時間がある時にいはカフェに座って『レキップ』(フランスの新聞)を読んでるんだ。綺麗な街でね。何を期待したら良いのか分からずに来たけど、ここでの生活は悪くないよ。ここでは『北フランスに来たら人は泣く。しかし、そこを去る時にはいっそう泣く』って諺があるくらい、みんなこの場所と仲間意識を愛してるんだ。良かったと思うね」
コールがここまでポジティブでいるのを見るのは新鮮だ。この29歳のキャリアは航路を外れたかのように見えた。チェルシーとの契約が2010年に切れた時には、南アフリカで不名誉なワールドカップを戦うイングランド代表の一員に何とか踏みとどまっていた。リバプールへの移籍金無しでの移籍はキャリアを蘇らせるきっかけになるはずで、当初はリバプールに馴染むかに見えた。しかし、退場や数々の小さなケガ、監督の交代や経営陣の混乱が次第に彼を蚊帳の外へと追いやって行った。しかし本当の驚きは、それが代表クラスとしては22年前にクリス・ワドルがマルセイユに移籍した時以来となるリーグ・アンへのクラブへのローン移籍へとつながったことだった。
リールでプレーした国内リーグの数試合で、コールは既に称賛を浴びている。このインタビューの最中も、サインを求める多くの人々が我々の会話を遮り、「サンキュー」も言わずに去っていく。シミー(ダンスの一種)とダーツ、交代出場でデビューしたサンテティエンヌ戦のアシストが、コールのリズムを作り出している。それが本格化したのは、25ヤードのシュートでロリアンのファビアン・オダールを抜いた時だった。チームは潤沢な資金で大型補強をしたパリ・サンジェルマンから6ポイント差の3位、火曜日にはチェルシー時代のコールの指揮官だったクラウディオ・ラニエリ率いるインテルとチャンピオンズリーグで対戦する。リールはヨーロッパで最もテクニックに秀でたリーグのひとつであるリーグ・アンで輝き、来年の夏には55,000人収容のスタジアムに居を移すクラブである。コールが運が自分に向いてきたと感じるには理由があるのだ。
「イングランド人が海外に行くと言うと、ビールを10パイント飲んでカラオケを壊しているイメージだろうが、フットボールとは関係なく、僕と妻にとっては違う国に住むチャンスだった。僕はカムデン・タウン(ロンドン北部)の出身で、フランスに住んだり、フランスでフットボールをする機会に恵まれるとは夢にも思わなかった。イングランドの選手には海外に行かない、とネガティブなイメージがある。僕は自分がその認識を変える助けになれると思いたいね。自分を試しているようなものさ。僕は多くの外国人がイングランドにやってきて皆と交わり、チームメイトと夜な夜な出かけてイングランドのメンタリティに馴染んでいったのを見てきたし、逆にためらいがちだったり、シャイで苦しむ奴らもね。だから、僕もできるだけ自分から溶け込もうとして
そのひとつ。水晶玉で未来を予期でいていたら、学生の頃のフランス語の授業をもっと頑張ったけど、その頃は単に興味がなかった。今はセロから始めてるようなものさ。ミシェル・トーマスのオーディオ・ブックを聞いて、毎週クラスでのレッスンにも行ってるよ。自分でコーヒーや水くらいはオーダーできるし、小さなことを少しずつ覚えているところだね。今日は。『練習は何時から?』ってチームメイトに聞いて『午後からだよ』と教わった。そういうところからね」
「9カ月で流暢に話すのは難しいだろうけど、うまくやって行きたいんだ。すこし大きな文脈で考える必要があるね。ウェストハムではリチャード・ガルシアと育ったけど、彼は15歳でオーストラリアからイングランドにやってきた。それは本当に国を出る、ということだ。僕のキャリアは、と言えば、東ロンドンから西ロンドン、そしてリバプール。今だってユーロスターに乗ればすぐにロンドンに行ける。まぁ、もうイングランドに家は無いし、滅多にしないけどね。時に自分の地平線を拡げる必要があるってことさ。今までと違う経験をしてね。この間、初めてカエルの足を食べたけど、脂の乗ったチキンみたいで本当に美味しかった。素晴らしいよ。街の真ん中に店があるから行ってみなよ」
そう含み笑いで言ったが、コールはこうして新しい生活にピッチの内外で挑戦している。いまリールで見せているプレーは、彼の才能を垣間見せているだけだったのかもしれないとリバプールのファンを苛立たせるかもしれない。
「単に十分なプレーができなかったんだ。退場になったし、戻ってきてもチームはロイと共に難しい時期にあった。戦術も僕には合わなかったしね。ロイは凄く難しい仕事に直面してたし、彼を批判しようとは思わない。でも、チームのプレーが良くなければ、最初に外されるのは若い選手や感覚でプレーする選手なのさ。そういうものなんだ」
「監督がケニーに代わってからは、僕がケガをしている間にチームが固まっていた。ウェストハムやチェルシーにいた頃はパッと入ってすぐにインパクトを残して、そのままチームに居座れた。リバプールではまた若手の一人に戻った感覚で、チャンスを掴むにはいつも何か特別なことをする必要があった。そしてそれが起こることは無かった。リバプールが好きだし、誰を批判するつもりもない。クラブの考えがあることも分かるよ。でも、僕はここにきて再びプレーする必要があった。今まで、選手が新しい国に来れば慣れるのには時間が掛かった。ルイス・スアレスみたいにすぐにインパクトを残せるのは稀だよ。僕には慣れている時間は無い。4年契約で来たわけじゃなく、ここに9ヶ月の予定で来た」
インパクトのあるデビューは、レフェリーがプレミアリーグよりも選手を守るリーグ・アンが彼に向いていることを示唆している。試合のペースも大慌てというよりは正確だ。リュディ・ガルシア率いる攻撃的なリールはコールにも合っているし、彼の横には才能溢れるエデン・アザールもいる。唯一ショッキングだったことと言えば、自分のスパイクを自分で磨く必要があったことだ。「イングランドじゃ一度プロになったら全部放ったらかしさ」とコールは語る。「国内の試合は、戦術的にはチャンピオンズリーグの試合をやってる感じだよ。今まで対戦した相手は、みんなしっかりしたフットボールをプレーしようとするし、ヨーロッパのレフェリーはテクニカルな選手を輝かせようとしてくれるね」
「アタッキング・サードまで行けばディフェンスもしっかり詰めてくるし、テンポは変わらない。でも、いったん引けば我慢強くビルドアップする時間もある。クレバーに動く必要があるよ。今まで必要のない動きも沢山してきたし、プレミアリーグじゃサイドバックにプレッシャーを掛けにも行ってた。イングランドじゃ、「前から行け」って後ろから叫び声がするからね。でも、ここでそうやって後ろを見てみると、「何やってんだ、力を残しておけ」って言われるんだ。学んでる最中だけど、これは予想していたことさ。学ぶのをやめたらプレーする意味は無いからね。マスターした気になるかもしれないけど、フットボールをマスターした奴なんて一人もいないよ」
この序盤の高まりを維持できるなら、フランスでの長い将来が訪れ、ワドルと並ぶカルト的な人気を勝ち取るかもしれない。リーグの上位とヨーロッパでの活躍が、ファビオ・カペッロにあのドイツ戦で今のところ最後となる56キャップ目を刻んだ選手がいることを思い出させることは確かだ。「代表でのプレーは懐かしいよ。10年レギュラーを張ってきて、そこにいるのが当たり枚に感じていたのかもしれない。いまこうして1年も呼ばれなくなって、11月には30歳になる。若手もどんどん入ってきているから、まだ僕のことを見てくれてるのかな、って気にはなるよね」
「気付いてもらえたらいいと思ってるよ。イングランドの人々の多くは、何で僕がフランスに来たのか不思議に思っているし、きっと忘れてしまうだろう。まだ完全には終わってないと思ってくれているかもしれない。彼らが間違っていることを証明したいわけじゃないんだ。それは誤ったモチベーションだよ。でも、僕は自分がまだトップクラスの選手だと証明したい。今の環境ならそれができると思ってるんだ。この間、ジョン・テリーが、僕と南アフリカでサメと泳ぎに行きたがった、って話をしていたのを見たよ。カゴに入ってるんだよ、もちろん。結局ダメって言われたけど、僕はそうして違ったことを試してみたいんだ。サメと泳いだりね。フランスに住むってのもそういうことさ」
このイングランド人は、海外ですっかり我が家の気分を味わっている。
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ロンドンに住んでた頃、他の留学生と「地元の奴らはチャレンジしないよな。旅行に行っても結局フィッシュ・アンド・チップかマクドナルド探してるし」って話してたのを思い出した。僕らが思ってる以上に内向き志向なんだよな。
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