今回ピックアップしたのは、地元の復興に力を貸すスパーズのレドリー・キングが、地元の人々向けに講演した話から始まる「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター氏の記事。少し前の記事なのだけど、スパーズというチームの描写に深みが出てて面白い。
++(以下、要訳)++
夏にロンドンで暴動が起きた時、それはまずトッテナムから始まり、より激しくなっていった。石油爆弾が投げ込まれ、略奪が横行し、警察が行く手を阻む期間が長く続いた。
その暗黒の8月以来、コミュニティのどのセクションも再建に忙しくしているが、それは街の中心でもあるトッテナム・ホットスパーも同じだ。
スパーズのキャプテンであるレドリー・キングは、「暴動はこのエリアに大きなダメージを与えたね。何の罪もない数多くの人々が影響を受けたんだ。クラブがここでそうした人へのサポートをするのは大事なことで、選手たちもコミュニティでできることをしているんだ。僕自身、地元だからね」
キングはピッチでそうであるのと同じように、周囲の手本となっている。トッテナム・ホットスパー基金とプレミアリーグ・グローバル起業家週間をサポートして、地元の人々が自ら起業するのを支援しているのだ。「新しいビジネスを始めてみよう、って話さ。困難に負けて諦めるんじゃなくて、それを跳ね返すのさ」そうキングは説明した。
起業家のアラン・シュガーのようになりたいと願ってホワイト・ハート・レーンの会議場に集まった聴衆たちに、キングはフットボールを例えに語りかけた。「業界」の特色や発見、チームとして働くこと。スパーズには間違いなくこれらの特性を見て取ることができる。
月曜日のアストン・ヴィラ戦を前に、ハリー・レドナップのチームはブラッド・フリーデルやスコット・パーカー、エマニュエル・アデバヨルといった抜け目なく補強された選手たちと共に活気に満ちていた。「ブラッドの経験には言葉で言い表せない価値がある。皆を落ち着かせられるんだ」キングはそう語った。
「スコットには驚かされるよ。この間フィットネスのコーチと、ある試合で俺の運動量が40%も落ちた話で冗談を言ってたんだ。俺は『そりゃスコットのせいだ』って言ったよ。アイツがヘトヘトになってピッチから下がってるのに、俺はピンピンしてたんだからな!」
「スコットは最高の形でディフェンスラインの4人を守ってくれるんだ。ダヴィド・シルバやロビン・ファンペルシはディフェンスと中盤の嫌な場所を狙ってプレーしてくるだろ?ディフェンダーにはやりづらいんだ。それでも俺が1、2秒時間を稼げれば、スコットはいつだって戻って来てくれて、俺がポジションを大きく崩す前にボールを奪いに行ってくれる。全然戻ってこない選手だっているけど、スコットは違うんだよ」
「それにスコットはロッカールームでも最高だよ。静かなヤツなんだけど、ヤツが話す時はみんな聞くんだ」
キングはアデバヨルに対しても同様の印象を持っている。「シティから来たとなれば、何か突っかかって来るのか、意気消沈してるかと思う人間もいるだろう。でもマヌは初日から凄くはしゃいでたんだ。トレーニングに来ればいつだって一生懸命だし、チームに活気をもたらしてくれるんだ」
スパーズのゴールが生まれるのはそこからだけではない。「30ヤードの距離なら、ジャメイン(デフォー)がイングランドで一番だね。ボールをちょっと動かしてズドンさ。深く考えてない時が一番良いんだよ。信じられないレベルのフィニッシャーだし、いつだってゴールを上げることだけを考えているからね」
「彼も29歳で年齢を重ねてきてるけど、子供みたいなんだ。トレーニングが終われば『さっきの俺のハットトリック見た?』なんて言ってきてね。自分がどれだけ凄いか示したいだけなんだけどさ」
スパーズは、デフォー、アデバヨル、ルカ・モドリッチ、ラファエル・ファン・デル・ファールト、ギャレス・ベイル、そしてアーロン・レノン、と皆攻める気持ちを持っている。
「トレーニングで彼らが小さなトライアングルでプレーするのを見れば、そこにあるのは試合で見るあのテンポさ。マヌ、ルカ、ファン・デル・ファールトのような選手とウィングのあの速さを考えれば、このメンバーは俺がトッテナムでプレーしてきた中でも最強だよ」
キングはクラブがモドリッチをチェルシーに奪われずにキープしたことに喜びを見せる。
「チームとしては、俺らが皆彼に残って欲しい、一緒に戦って最高のシーズンにしたいと思ってる、と伝えたよ。ルカは本当にいいヤツで、クラブの誰とも上手くやってるよ。凄く難しい立場にあったと思うけど、やるべきことに集中して最高のフットボールを見せている。もう終わったことだと思いたいけど、結局は僕らが今シーズンをどう戦うかに懸かってるんだ。良い選手がいれば、他のクラブへの噂話に巻き込まれるのは避けられないし、次はギャレスに同じことが起きると思っている」
「長距離だったらギャレスはクラブで一番の早さだよ。10mから15mの初速だったらアーロンの方が速いと思うけど、ギャレスほどコンスタントにペースを維持できる奴を見たことがないね。ピッチの長い距離を同じ速さで走り続けられるんだ。フットボーラーには稀有な能力だよ。普通は瞬間的だからね」
「ギャレスは俺が見てきた中で一番のアスリートさ。フィットしてるし、速くてあの左足は魔法だね。完璧な選手を作りたいと思えば、ギャレスがそこにかなり近いと思う」
「ウチには本物のスピードがあると思う。バックラインを見てみろよ。カイル(ウォーカー)、ユネス(カブール)にベノワ(アス・エコト)。俺が一番遅いな!昔は一番スピードがあったのに!カイルも最高のアスリートで素晴らしいディフェンダーだと思う。ポジション面でも随分改善してきてるしね。アイツは前に行くのが好きなんだよ」
「そういうタイプの選手に多いのは、逆サイドで待ってるだけ、ってパターンなんだけど、今季の彼は適切なポジションが取れている。カバーも凄く良いんだ。ユーロの頃には、イングランド代表のレギュラーになっていると思うね」
レドナップはこうした才能を見事にブレンドしている。「中には難しい性格で知られる選手もいるけど、彼らも皆ハリーのためにプレーできるのさ。ハリーは人の心を掴むのが本当に上手いね。ハリーはたまに俺達がいかに凄いかを思い出させてくれる。素晴らしいチームで、どんな相手にでも勝てるんだ、とね」
「俺達が8試合無敗をキープできてるのは、俺達には本当に良いメンバーが揃ってる、と信じられるようになったからさ。ベストメンバーが組んだら、どこにだって肩を並べられるはずだ」
レドナップはキングを上手に起用している。膝への負担を考慮してトレーニングを免除することもある。そしてキングはファビオ・カペッロも同様の理由で称賛する。
「ワールドカップでファビオとは素晴らしい関係を築けたと思う。ファビオは俺がトッテナムでしているのと同じようにさせてくれたんだ。別に隔離されたわけじゃなくて、話し合ったんだ。俺には本当に良くしてくれて、色々助けてくれようとしてね。ケガをしてしまったのは本当に不運だったけど、それはよくあることさ」
アメリカ戦でグロインを痛めたキングは、それ以来代表でプレーしていない。「俺にとっても代表にとっても難しい問題だよ。もちろん気持ちは今でも持っているけど、どんどん遠ざかってはいるね。代表について言えば、俺にはピッチで馴染む時間が必要だ。もし俺がジム通いでチームのみんなと一緒にいないのだったら、ますます難しい。ワールドカップでやってみたけど、タフな経験だった」
「毎試合ピッチに出ては、怪我をしなかったことに安心する。痛みは感じてないけど、いつも違和感と制約を感じながらプレーしているんだ。もうそれには慣れる方法を学んだけどね。そんなには走らないし、前にもできるだけ出ない。俺、ピラティスやってるんだ」
ケガに対する苛立ちは、ピッチ外での軽率な行動にもつながった。既に謝罪をしていることだが、2009年にはロンドンのナイトクラブで不祥事を起こしている。
「この4年間は人生の中でも一番の試練の期間だった。落ち込んだよ。誰もがするように、俺だって過ちを犯した。ネガティブなことがこの4年間に起こっていて、それらは普段の練習ができずに、チームのみんなといられなかったことも原因だった。俺は強くならなきゃいけなかった」
31歳となったキングは、息子のコビーが草サッカーをしたがることに当惑することがある。
「時には膝に負担をかけられないから一緒にできない、と言うこともある。俺がゴールキーパーを務めることもね。息子は分かってくれるよ。この膝と共に育ったようなものだからね。俺のことを誇りに思ってくれてると思うし、俺がプレーしてたことを忘れないように、できるだけ長くプレーしたいと思っているよ」
「アイツ、俺にレノンのシャツをくれって言ってきたんだ。あげようかどうか迷ったね。キングのシャツは既に大量に持ってるよ。フットボールが大好きなんだ。トッテナムと同じくらいマンチェスター・ユナイテッドが好きなんだけどね…」
スパーズ一筋のキングも契約が来年の夏で切れるが、本人はここで続けたいと考えている。
「来シーズンだってプレーできるさ。どんな選手だって、自分の体のことは分かってるし、いつが辞め時かも理解している。俺の場合はそれはまだ、ってことさ。コーチの講習は受けてるけどね」
「バルセロナがトレーニングをしているのを見るのは楽しいよ。自分のプラスになるからね。もちろん、いつの日か監督かコーチになってみたいと思っている。でも俺にはまだまだこなせる試合が残ってるからね」
++++
ということで、チームメイトのことから自分のことまで、幅広くキングが語った記事。こんな選手がキャプテンやっててくれるのは嬉しいし、何より今シーズンはちゃんと試合に出て、しっかり守備を締めてくれている。来シーズン以降もドーンと構えてて欲しいところ。
Wednesday, November 30, 2011
Saturday, November 26, 2011
道を誤ったチェルシーに降りかかる危機
ホームでアーセナル、リバプールに連敗、不安定なディフェンスと噛み合わない戦術からチェルシーのアンドレ・ヴィラス・ボアスに吹き付ける逆風が一気に強まっている印象。これを「テレグラフ」紙のジェイソン・バート記者が各ポイントごとに指摘。さて、アブラノビッチの思いは…。
++(以下、要訳)++
不発気味のストライカーに規律の無さ、監督交代、チームの高齢化。チェルシーは下降期に直面していて、ここ7試合で4敗を喫している。
チーム
チェルシーは高齢化している。言い方を変えるなら、依然としてチームの核を30歳を超えるベテランに依存していて、その中には急速な衰えを見せている選手もいる。そして、それはモウリーニョ時代に「アンタッチャブル」で、今もチームに残って根幹を形成している選手たちに起きているのだ。
彼らは、当時以来そのままクラブに残っているが、時間の経過は世代と共に進み、アシュリー・コールやペトル・チェフにも衰えは出始めているのだ。例えば、存在感を下げているフランク・ランパードをどう使っていくか、出ていくであろうニコラ・アネルカやディディエ・ドログバの場合はどうか、そういう問題だ。
問題のひとつは、30代の選手たちが依然として大型契約で居座っていることだ。彼らはロンドンが大好きで、それを変えるのが難しいことはこの夏に実証済みだ。
ティボ・クルトワ、オリオール・ロメウ、ロメル・ルカクといった若い選手たちが加入し、監督はプロセスを加速させることを求められている。しかし、このうち何人がトップで通用するだろうか?この問題はカルロ・アンチェロッティが指摘した点で、23~27歳という世代に主力選手がいないことを個人的に懸念していた。
チェルシーは、フェルナンド・トーレスやダヴィド・ルイスの獲得によってこのギャップを埋めようとしたもの、今のところ機能してるとは言えず、ルカ・モドリッチやアルバロ・ペレイラについては獲得に失敗した。ベテランへの依存度を下げるには、この冬と来夏にまたトライする必要がある。
フェルナンド・トーレス
チェルシーの問題点を議論する時にトーレス個人を上げるのはアンフェアに感じられるが、彼の苦悩と5,000万ポンドの値札がクラブへのインパクトに直結し、ヴィラス・ボアスの首すら左右しかねない状況だ。同時に、クラブの無計画さをそのまま示してもいる。
ロマン・アブラモビッチは、それほど長くフェルナンド・トーレスを追っていたわけではなく、失敗を派手に帳消しにするために、あれだけの大金をつぎ込んだのだ。チェルシーの監督を誰が務めるにせよ、このスペイン人ストライカーのベストを引き出さねばならず、少なくともその努力をしなければならない。
フアン・マタがやって来て、彼が活きる形のフットボールを展開し始めてはいるものの、トーレスは未だに居心地悪そうに見える。トーレスに合わせるというのは、チェルシーの取っては磨耗の大きいプロセスで、トーレスの調子が監督の未来を左右してしまうのだ。
移籍
金を使ってくれない、とアブラモビッチを責める者はチェルシーにはいないだろう。しかし、アプローチはしばしば場当たり的で、お祭りだったり大飢饉だったり不可解なものだ。むしろ、クラブの真ん中に、戦略の重大な欠陥があるのだろう。そして、クラウディオ・ラニエリの時代以来、一体誰がどういう理由で選手を獲得しているのか、良く分からないのだ。
確かにヴィラス・ボアスには前任者よりも強い権限があると言われているが、結果的には優柔不断のレッテルを貼られているし、そもそもこれまでチェルシーには、アブラモビッチ買収時のティエリ・アンリに始まり、この夏のルカ・モドリッチに至るまで、本命を獲得できないという認めたくない現実がある。
規律
今季のチェルシーは、イエローカードとレッドカードで苦しんでいる。昨季はリーグで4番目にクリーンなチームだった(イエローとレッド計59枚)が、今季は5枚のレッドカードを含め、最もダーティーなクラブとなってしまった。そして、ヴィラス・ボアス自身も、レフェリーについてのコメントでFAから罰則を受け、それに抗議しているところだ。
戦術
当時のCEOだったピーター・ケニオンが言ってから誰もが知るように、アブラモビッチは、ペナルティエリアの角からのスペクタクルなボレーシュートが決まって5-0で勝つような、ファンタジー溢れるフットボールを観たがっている。
アブラモビッチはスリルとゴール、トロフィーを望んでいる。モウリーニョが勝っている間は彼を気に入っていたが、トロフィーを勝ち取れなくなると、フットボールが仰々しいものになった。
ヴィラス・ボアスが持ち込んだのは、まったく新しい一面だ。しかし、これまでのところ、彼は「新しい」エキサイティングな何かを築くのに必要な骨格を作れていない。彼は守備陣に、より厳しいプレスとボールを奪ってのカウンター攻撃をするために高いラインを敷くように要求している。
その結果、これまで12試合で17失点、アラン・ハンセンには「ナイーブ」との批判を受け、これを続けられるのか、疑問符を付けられた。今のところ、ヴィラス・ボアスはそれを続けている。
監督
弱冠34歳、ヴィラス・ボアスは、アブラモビッチが魅力に感じるであろう監督の基準を満たしている。彼は昨季ポルトで全てを勝ち取り、新しいモウリーニョのようだった。ただ、自信の持ち方は共通していても、気性やアプローチは異なっている。
アブラモビッチが望んでいたのは、勝者のメンタリティを持ちつつ、対立的な側面が薄らいだモウリーニョであり、その気持ちから、来夏まで待てばフリーであったにも関わらず、ヴィラス・ボアスを監督として引き抜くために1,330万ポンドの違約金を支払ったのだ。
ヴィラス・ボアスには厳しい職業倫理がある。時に練習場で眠るほど良く働き、完璧な英語を話し、優れたコミュニケーターとして選手たちとも「良好な関係」を築いている。と同時に、彼が取るのはバルセロナのペップ・グァルディオラをモデルにした単一のアプローチであり、また常に几帳面なほどにフェアに見られようとしている。考えてみれば、全ての決断が選手たちに説明されてきたわけではなく、何人かの選手たちは良い気分ではないようだ。
オーナー
アブラモビッチ体制下で成功できる監督はいるだろうか?いや、長く成功できる監督はいるだろうか?彼は、誰とでも上手くやっているかと思えば、長期間不在になり、時には異常にクラブに厳しく関わってくる。
判断はしばしば迅速に下される。
朝起きた時に、単純に変化が必要だ、と考えることもあるだろう。周囲の人間たちともすぐに仲良くなったと思えば対立し、驚くほどグループの仲間に影響されたりもする。
アブラモビッチの「黄金のサークル」が全てを握っている限り、アブラモビッチのチームの監督が誰であれ、その監督の助けにはならないだろう。
++++
開幕前にスパーズがトップ4に返り咲くにはどうなれば良いのだろうと考えていた時に、一番イメージしやすかったのが、チェルシーがコケることだった。やっぱ新監督って難しいのよね。
++(以下、要訳)++
不発気味のストライカーに規律の無さ、監督交代、チームの高齢化。チェルシーは下降期に直面していて、ここ7試合で4敗を喫している。
チーム
チェルシーは高齢化している。言い方を変えるなら、依然としてチームの核を30歳を超えるベテランに依存していて、その中には急速な衰えを見せている選手もいる。そして、それはモウリーニョ時代に「アンタッチャブル」で、今もチームに残って根幹を形成している選手たちに起きているのだ。
彼らは、当時以来そのままクラブに残っているが、時間の経過は世代と共に進み、アシュリー・コールやペトル・チェフにも衰えは出始めているのだ。例えば、存在感を下げているフランク・ランパードをどう使っていくか、出ていくであろうニコラ・アネルカやディディエ・ドログバの場合はどうか、そういう問題だ。
問題のひとつは、30代の選手たちが依然として大型契約で居座っていることだ。彼らはロンドンが大好きで、それを変えるのが難しいことはこの夏に実証済みだ。
ティボ・クルトワ、オリオール・ロメウ、ロメル・ルカクといった若い選手たちが加入し、監督はプロセスを加速させることを求められている。しかし、このうち何人がトップで通用するだろうか?この問題はカルロ・アンチェロッティが指摘した点で、23~27歳という世代に主力選手がいないことを個人的に懸念していた。
チェルシーは、フェルナンド・トーレスやダヴィド・ルイスの獲得によってこのギャップを埋めようとしたもの、今のところ機能してるとは言えず、ルカ・モドリッチやアルバロ・ペレイラについては獲得に失敗した。ベテランへの依存度を下げるには、この冬と来夏にまたトライする必要がある。
フェルナンド・トーレス
チェルシーの問題点を議論する時にトーレス個人を上げるのはアンフェアに感じられるが、彼の苦悩と5,000万ポンドの値札がクラブへのインパクトに直結し、ヴィラス・ボアスの首すら左右しかねない状況だ。同時に、クラブの無計画さをそのまま示してもいる。
ロマン・アブラモビッチは、それほど長くフェルナンド・トーレスを追っていたわけではなく、失敗を派手に帳消しにするために、あれだけの大金をつぎ込んだのだ。チェルシーの監督を誰が務めるにせよ、このスペイン人ストライカーのベストを引き出さねばならず、少なくともその努力をしなければならない。
フアン・マタがやって来て、彼が活きる形のフットボールを展開し始めてはいるものの、トーレスは未だに居心地悪そうに見える。トーレスに合わせるというのは、チェルシーの取っては磨耗の大きいプロセスで、トーレスの調子が監督の未来を左右してしまうのだ。
移籍
金を使ってくれない、とアブラモビッチを責める者はチェルシーにはいないだろう。しかし、アプローチはしばしば場当たり的で、お祭りだったり大飢饉だったり不可解なものだ。むしろ、クラブの真ん中に、戦略の重大な欠陥があるのだろう。そして、クラウディオ・ラニエリの時代以来、一体誰がどういう理由で選手を獲得しているのか、良く分からないのだ。
確かにヴィラス・ボアスには前任者よりも強い権限があると言われているが、結果的には優柔不断のレッテルを貼られているし、そもそもこれまでチェルシーには、アブラモビッチ買収時のティエリ・アンリに始まり、この夏のルカ・モドリッチに至るまで、本命を獲得できないという認めたくない現実がある。
規律
今季のチェルシーは、イエローカードとレッドカードで苦しんでいる。昨季はリーグで4番目にクリーンなチームだった(イエローとレッド計59枚)が、今季は5枚のレッドカードを含め、最もダーティーなクラブとなってしまった。そして、ヴィラス・ボアス自身も、レフェリーについてのコメントでFAから罰則を受け、それに抗議しているところだ。
戦術
当時のCEOだったピーター・ケニオンが言ってから誰もが知るように、アブラモビッチは、ペナルティエリアの角からのスペクタクルなボレーシュートが決まって5-0で勝つような、ファンタジー溢れるフットボールを観たがっている。
アブラモビッチはスリルとゴール、トロフィーを望んでいる。モウリーニョが勝っている間は彼を気に入っていたが、トロフィーを勝ち取れなくなると、フットボールが仰々しいものになった。
ヴィラス・ボアスが持ち込んだのは、まったく新しい一面だ。しかし、これまでのところ、彼は「新しい」エキサイティングな何かを築くのに必要な骨格を作れていない。彼は守備陣に、より厳しいプレスとボールを奪ってのカウンター攻撃をするために高いラインを敷くように要求している。
その結果、これまで12試合で17失点、アラン・ハンセンには「ナイーブ」との批判を受け、これを続けられるのか、疑問符を付けられた。今のところ、ヴィラス・ボアスはそれを続けている。
監督
弱冠34歳、ヴィラス・ボアスは、アブラモビッチが魅力に感じるであろう監督の基準を満たしている。彼は昨季ポルトで全てを勝ち取り、新しいモウリーニョのようだった。ただ、自信の持ち方は共通していても、気性やアプローチは異なっている。
アブラモビッチが望んでいたのは、勝者のメンタリティを持ちつつ、対立的な側面が薄らいだモウリーニョであり、その気持ちから、来夏まで待てばフリーであったにも関わらず、ヴィラス・ボアスを監督として引き抜くために1,330万ポンドの違約金を支払ったのだ。
ヴィラス・ボアスには厳しい職業倫理がある。時に練習場で眠るほど良く働き、完璧な英語を話し、優れたコミュニケーターとして選手たちとも「良好な関係」を築いている。と同時に、彼が取るのはバルセロナのペップ・グァルディオラをモデルにした単一のアプローチであり、また常に几帳面なほどにフェアに見られようとしている。考えてみれば、全ての決断が選手たちに説明されてきたわけではなく、何人かの選手たちは良い気分ではないようだ。
オーナー
アブラモビッチ体制下で成功できる監督はいるだろうか?いや、長く成功できる監督はいるだろうか?彼は、誰とでも上手くやっているかと思えば、長期間不在になり、時には異常にクラブに厳しく関わってくる。
判断はしばしば迅速に下される。
朝起きた時に、単純に変化が必要だ、と考えることもあるだろう。周囲の人間たちともすぐに仲良くなったと思えば対立し、驚くほどグループの仲間に影響されたりもする。
アブラモビッチの「黄金のサークル」が全てを握っている限り、アブラモビッチのチームの監督が誰であれ、その監督の助けにはならないだろう。
++++
開幕前にスパーズがトップ4に返り咲くにはどうなれば良いのだろうと考えていた時に、一番イメージしやすかったのが、チェルシーがコケることだった。やっぱ新監督って難しいのよね。
Saturday, November 12, 2011
サー・アレックス・ファーガソンが四半世紀で築き上げたもの
アレックス・ファーガソンの就任25周年については多くの記事が出た。今回選んだのは、「テレグラフ」紙のヘンリー・ウィンター記者によるもの。ウィンター氏は今回、このメインの記事だけでなく、データや過去の名試合の特集などにも関わっていて、思い入れも強いのかもしれないと感じた。しかし25年、本当に凄い。
++(以下、要訳)++
25年の時を経た今でさえ、サー・アレックス・ファーガソンは屈辱を忘れてはいない。37のトロフィーを獲っても記憶には残るのだ。
「もちろん最初の日のことは憶えている。我々は負けたんだ、0-2でね」
オックスフォード・ユナイテッド戦の敗戦は、ファーガソンが1986年の11月6日にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任してほどなく訪れた。当時のチームは、現在の格調には程遠かった。
ファーガソンはこの時、「なんてこった。私はこの仕事を求めていたんだ」とつぶやいた。
それが、ファーガソンの最初の敗北に対する決意であり、この後、チームに蔓延していた酒飲みの習慣を改めてフィットネスを上げ、スティーブ・ブルースのようなリーダーを連れてきて、ベッカム世代のような自家育成に着手した。それらは皆、現在の彼が勝ちとった地位へとつながって行った。
指揮を執った1,409試合のうち、勝ったのが843、引き分けが314、敗戦は252、2,578ゴールを決め、失点は1,189だ。
彼のライバルたちを悩ませるのは、彼がまだまだ健在で引退する気配もないことだ。彼は次の世代、次の25年のために熱心に働いている。
カーリントンのアカデミーのビルの椅子に腰かけながら、ファーガソンはティーンエイジャーだったデイビッド・ベッカムやライアン・ギッグス、ニッキー・バット、ポール・スコールズらの写真に目をやった。そこにはロビー・サヴェージすらいた。サヴェージはトップに上がれなかったが、この若き収穫物たちは、ファーガソンのために重要な働きをして見せた。
「一回きりのものだったか?答はノーだ。これはまた起きるもので、マンチェスター・ユナイテッドにはひとサイクル分の人材しかいないとは考えられないだろう。我々は常に夢を追い続けるし、この先何度でもそれを実現する。そうしなければいけないんだよ」
「アカデミーがあるべき姿になれば、また一度に5、6人上がってくることだってあるだろう。その意味では前進が見られる。2011年という時代に、オールド・トラフォードから1時間~1時間半以内の場所の少年しか指導できないなんてバカげた話だ。実にバカげている。バルセロナを見てみろ。中国から一人、日本からも一人、アカデミーに連れてきた。それが全てを物語っている」
若き才能の荒野の中で、ファーガソンは今も黄金を探し続けている。今もひとつの宝石、まだ原石のラヴェル・モリソンがいる。モリソンは才能溢れる選手だが、我儘なキャラクターが成長を妨げてもきた。
彼を一人前に仕立てられるのはファーガソンしかいないだろう。選手たちはみな彼のオーラにインスパイアされ、彼のためにプレーしたいと考えるのだ。
中には彼の申し出を断った面々もいる。グレン・ヒーセン、ポール・ガスコイン、ジョン・バーンズ、アラン・シアラーそしてウェスリー・スナイデルがこれにあたり、ファーガソン自身も移籍市場では過ちを犯してきた。
期待外れに終わったエリック・ジェンバ・ジェンバのような選手がいる一方で、ピーター・シュマイケルを50万ポンド、エリック・カントナを100万ポンド、クリスティアーノ・ロナウドを1,200万ポンド(売値は8,000万ポンドだった)、スティーブ・ブルースにしても80万ポンドで連れてきた。
土曜日にサンダーランドを率いてオールド・トラフォードに戻るスティーブ・ブルースは、ファーガソンにノリッジから引き抜いたこのセンターバックがいかに重要な役割を果たしたかを思い出させるだろう。
「スティーブがメディカル・チェックを受けた時、ドクターは彼を通すか迷っていた。私はリザーブチームを見ながらその結果を待っていたが、やがてマーティン・エドワーズがディレクターズ・ボックスにやってきて『アイツの膝は思ったより悪いぞ』と言ってきた」
「私は『頼むよ。アイツは5年間休まずプレーできてたはずだ』と言ったんだ。時にこうしたメディカルチェックの結果は無視すべき時もあるんだ」
ブルースはリーダーであり、チームメイトに最高のパフォーマンスを求め続けたが、厳しい逆境の風が吹くこともしばしばあった。それでも、ブルースにとって痛みとは敗者のコンセプトだった。
「彼はよく膝をケガしたままプレーしてたし、リバプールに試合に行った時には前の週にハムストリングをやっていた。練習場で金曜日にチームのメンバーを決めようという時に、あいつが駆け寄って来て言うんだ、『大丈夫だから』とね」
「私は『バカを言うんじゃない。どう考えてもそれじゃ無理だろう』と言っても、彼は『こんなの平気です。気にしないでください、プレーしますから』と言って、結局そのアンフィールドでのリバプール戦はハムストリングのケガを抱えたままプレーした。本当に驚きだった。そういうキャラクターが、他のメンバーよりも彼を際立たせるんだよ」
ファーガソンはこうした強烈なキャラクターを尊重した。後に、ファーガソンはサー・ボビー・ロブソンを監督のアイコンとして持ち上げるようになるが、これはロブソンのフットボールへの情熱からだ。
「フットボールに注ぐ愛情を見れば、ボビーが実に素晴らしい人間であることが分かる。長い間健康に問題を抱えながら、それが彼を止めることは無かった。ガンによる発作も何度かあったしね。大抵の人はそれを克服して安らかな生活が送れれば満足だが、ボビーは最後の最後まで監督業の現場に戻りたがっていた」
「ニューカッスルでの仕事が終わっても、彼は現場に戻りたいと思っていたが、その情熱は信じられないほどで、天賦の才とも言える。みんな、70になってもあの情熱を持って努力するのが簡単でないことを分かっていないと思う」
来月70歳を迎えるファーガソンは、その意欲を失ってはいない。彼は心臓の手術を終えたばかりの64歳のハリー・レドナップを称賛している。「何試合か勝ってるうちにすっかり元気になって、また鼻歌でも歌ってるさ。心配することはない」と笑った。「私は健康に恵まれたと思っているし、長年に渡って幸運だった。いつだってエネルギーに満ち溢れてるというのは、監督として重要なことだ」
記者としてこれまで何度となくインタビューをしてきて、ファーガソンのエネルギッシュさには驚くばかりだった。5つの小さな思い出のスナップショットが、様々な色合いを持つこの男のちょっとしたイメージを描き出せよう。
1つ目、マンチェスター空港の駐車場から一緒に歩いていた時。あとでイーベイで売るためのサインをねらう中年の男たちの集団に近づくと、歩くペースが上がるのが分かった。ファーガソンは走らんばかりの早さで彼らを振り切った。彼らはこれで金を稼ぐことはできなかっただろう。ノーチャンスだ。
2つ目、1999年にライアン・ギッグスのアーセナル戦でのスラロームのような華麗なドリブルについて話していた時。FAカップ準決勝再試合でのこのゴールを、彼は興奮しながらディエゴ・マラドーナのイングランド戦のドリブルになぞらえた。ファーガソンがフットボールの魔法使いに抱く愛情はいつだって輝いていた。
3つ目、本の前書きについて議論するために朝7時に電話を貰った時。仕事に行こうとバタバタしてる時に、ファーガソンの電話と雲雀のさえずりのゴールは写真判定モノだった。
4つ目、子供たちと行くためにグラスゴーでお勧めの博物館を3つ尋ねた時。ファーガソンはそのうち2つに寄付をしていた。フットボールに限らず、彼の好奇心は無限大だ。
5つ目、メスタージャでキックオフ90分前にアウェー側ロッカールームの外で出くわした時。「先発メンバーを当ててみろ」と挑戦された。8つしか当てられず、「俺の気持ちを読もうなんて向こう見ず」と散々バカにされた。
ファーガソンは複雑だ。彼はレフェリーを信じ、メディアは彼の失墜を書き立てるが、それでも何かあれば彼らが一番に電話をするのもファーガソンだ。彼は怒りっぽく、気前がよく、頑固で愛想がよい。総じて言うならば、彼は勝利者なのだ。
リバプールからリーズ・ユナイテッド、ブラックバーン・ローバーズ、そしてアーセナルとチェルシー、マンチェスター・シティ。この25年に受けてきた挑戦の数々を振り返って熟考しながらファーガソンは肩をすくめた。
「ここにいれば挑戦はいつだってある。誰を相手にしているかの問題ではない」
かかって来い。ファーガソンは十分に話した。
「よし、またな」彼はそう言って立ち上がった。トレーニングの時間だ。勝ち取るべきトロフィーもまだある。あの日オックスフォードに流れたブルースの余韻は今も残っている。
++++
ファーガソンのインタビューはいつも聞きとるのが大変。
このサンダーランド戦の前の会見では、あまり自分を褒めないファーガソンが「おとぎ話のようだ」と語って、普段彼の言葉を聞くメディアを驚かせたというけど、25年を振り返ってそう言えることを成し遂げたんだから、ある意味重みのあるおとぎ話だよな。
++(以下、要訳)++
25年の時を経た今でさえ、サー・アレックス・ファーガソンは屈辱を忘れてはいない。37のトロフィーを獲っても記憶には残るのだ。
「もちろん最初の日のことは憶えている。我々は負けたんだ、0-2でね」
オックスフォード・ユナイテッド戦の敗戦は、ファーガソンが1986年の11月6日にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任してほどなく訪れた。当時のチームは、現在の格調には程遠かった。
ファーガソンはこの時、「なんてこった。私はこの仕事を求めていたんだ」とつぶやいた。
それが、ファーガソンの最初の敗北に対する決意であり、この後、チームに蔓延していた酒飲みの習慣を改めてフィットネスを上げ、スティーブ・ブルースのようなリーダーを連れてきて、ベッカム世代のような自家育成に着手した。それらは皆、現在の彼が勝ちとった地位へとつながって行った。
指揮を執った1,409試合のうち、勝ったのが843、引き分けが314、敗戦は252、2,578ゴールを決め、失点は1,189だ。
彼のライバルたちを悩ませるのは、彼がまだまだ健在で引退する気配もないことだ。彼は次の世代、次の25年のために熱心に働いている。
カーリントンのアカデミーのビルの椅子に腰かけながら、ファーガソンはティーンエイジャーだったデイビッド・ベッカムやライアン・ギッグス、ニッキー・バット、ポール・スコールズらの写真に目をやった。そこにはロビー・サヴェージすらいた。サヴェージはトップに上がれなかったが、この若き収穫物たちは、ファーガソンのために重要な働きをして見せた。
「一回きりのものだったか?答はノーだ。これはまた起きるもので、マンチェスター・ユナイテッドにはひとサイクル分の人材しかいないとは考えられないだろう。我々は常に夢を追い続けるし、この先何度でもそれを実現する。そうしなければいけないんだよ」
「アカデミーがあるべき姿になれば、また一度に5、6人上がってくることだってあるだろう。その意味では前進が見られる。2011年という時代に、オールド・トラフォードから1時間~1時間半以内の場所の少年しか指導できないなんてバカげた話だ。実にバカげている。バルセロナを見てみろ。中国から一人、日本からも一人、アカデミーに連れてきた。それが全てを物語っている」
若き才能の荒野の中で、ファーガソンは今も黄金を探し続けている。今もひとつの宝石、まだ原石のラヴェル・モリソンがいる。モリソンは才能溢れる選手だが、我儘なキャラクターが成長を妨げてもきた。
彼を一人前に仕立てられるのはファーガソンしかいないだろう。選手たちはみな彼のオーラにインスパイアされ、彼のためにプレーしたいと考えるのだ。
中には彼の申し出を断った面々もいる。グレン・ヒーセン、ポール・ガスコイン、ジョン・バーンズ、アラン・シアラーそしてウェスリー・スナイデルがこれにあたり、ファーガソン自身も移籍市場では過ちを犯してきた。
期待外れに終わったエリック・ジェンバ・ジェンバのような選手がいる一方で、ピーター・シュマイケルを50万ポンド、エリック・カントナを100万ポンド、クリスティアーノ・ロナウドを1,200万ポンド(売値は8,000万ポンドだった)、スティーブ・ブルースにしても80万ポンドで連れてきた。
土曜日にサンダーランドを率いてオールド・トラフォードに戻るスティーブ・ブルースは、ファーガソンにノリッジから引き抜いたこのセンターバックがいかに重要な役割を果たしたかを思い出させるだろう。
「スティーブがメディカル・チェックを受けた時、ドクターは彼を通すか迷っていた。私はリザーブチームを見ながらその結果を待っていたが、やがてマーティン・エドワーズがディレクターズ・ボックスにやってきて『アイツの膝は思ったより悪いぞ』と言ってきた」
「私は『頼むよ。アイツは5年間休まずプレーできてたはずだ』と言ったんだ。時にこうしたメディカルチェックの結果は無視すべき時もあるんだ」
ブルースはリーダーであり、チームメイトに最高のパフォーマンスを求め続けたが、厳しい逆境の風が吹くこともしばしばあった。それでも、ブルースにとって痛みとは敗者のコンセプトだった。
「彼はよく膝をケガしたままプレーしてたし、リバプールに試合に行った時には前の週にハムストリングをやっていた。練習場で金曜日にチームのメンバーを決めようという時に、あいつが駆け寄って来て言うんだ、『大丈夫だから』とね」
「私は『バカを言うんじゃない。どう考えてもそれじゃ無理だろう』と言っても、彼は『こんなの平気です。気にしないでください、プレーしますから』と言って、結局そのアンフィールドでのリバプール戦はハムストリングのケガを抱えたままプレーした。本当に驚きだった。そういうキャラクターが、他のメンバーよりも彼を際立たせるんだよ」
ファーガソンはこうした強烈なキャラクターを尊重した。後に、ファーガソンはサー・ボビー・ロブソンを監督のアイコンとして持ち上げるようになるが、これはロブソンのフットボールへの情熱からだ。
「フットボールに注ぐ愛情を見れば、ボビーが実に素晴らしい人間であることが分かる。長い間健康に問題を抱えながら、それが彼を止めることは無かった。ガンによる発作も何度かあったしね。大抵の人はそれを克服して安らかな生活が送れれば満足だが、ボビーは最後の最後まで監督業の現場に戻りたがっていた」
「ニューカッスルでの仕事が終わっても、彼は現場に戻りたいと思っていたが、その情熱は信じられないほどで、天賦の才とも言える。みんな、70になってもあの情熱を持って努力するのが簡単でないことを分かっていないと思う」
来月70歳を迎えるファーガソンは、その意欲を失ってはいない。彼は心臓の手術を終えたばかりの64歳のハリー・レドナップを称賛している。「何試合か勝ってるうちにすっかり元気になって、また鼻歌でも歌ってるさ。心配することはない」と笑った。「私は健康に恵まれたと思っているし、長年に渡って幸運だった。いつだってエネルギーに満ち溢れてるというのは、監督として重要なことだ」
記者としてこれまで何度となくインタビューをしてきて、ファーガソンのエネルギッシュさには驚くばかりだった。5つの小さな思い出のスナップショットが、様々な色合いを持つこの男のちょっとしたイメージを描き出せよう。
1つ目、マンチェスター空港の駐車場から一緒に歩いていた時。あとでイーベイで売るためのサインをねらう中年の男たちの集団に近づくと、歩くペースが上がるのが分かった。ファーガソンは走らんばかりの早さで彼らを振り切った。彼らはこれで金を稼ぐことはできなかっただろう。ノーチャンスだ。
2つ目、1999年にライアン・ギッグスのアーセナル戦でのスラロームのような華麗なドリブルについて話していた時。FAカップ準決勝再試合でのこのゴールを、彼は興奮しながらディエゴ・マラドーナのイングランド戦のドリブルになぞらえた。ファーガソンがフットボールの魔法使いに抱く愛情はいつだって輝いていた。
3つ目、本の前書きについて議論するために朝7時に電話を貰った時。仕事に行こうとバタバタしてる時に、ファーガソンの電話と雲雀のさえずりのゴールは写真判定モノだった。
4つ目、子供たちと行くためにグラスゴーでお勧めの博物館を3つ尋ねた時。ファーガソンはそのうち2つに寄付をしていた。フットボールに限らず、彼の好奇心は無限大だ。
5つ目、メスタージャでキックオフ90分前にアウェー側ロッカールームの外で出くわした時。「先発メンバーを当ててみろ」と挑戦された。8つしか当てられず、「俺の気持ちを読もうなんて向こう見ず」と散々バカにされた。
ファーガソンは複雑だ。彼はレフェリーを信じ、メディアは彼の失墜を書き立てるが、それでも何かあれば彼らが一番に電話をするのもファーガソンだ。彼は怒りっぽく、気前がよく、頑固で愛想がよい。総じて言うならば、彼は勝利者なのだ。
リバプールからリーズ・ユナイテッド、ブラックバーン・ローバーズ、そしてアーセナルとチェルシー、マンチェスター・シティ。この25年に受けてきた挑戦の数々を振り返って熟考しながらファーガソンは肩をすくめた。
「ここにいれば挑戦はいつだってある。誰を相手にしているかの問題ではない」
かかって来い。ファーガソンは十分に話した。
「よし、またな」彼はそう言って立ち上がった。トレーニングの時間だ。勝ち取るべきトロフィーもまだある。あの日オックスフォードに流れたブルースの余韻は今も残っている。
++++
ファーガソンのインタビューはいつも聞きとるのが大変。
このサンダーランド戦の前の会見では、あまり自分を褒めないファーガソンが「おとぎ話のようだ」と語って、普段彼の言葉を聞くメディアを驚かせたというけど、25年を振り返ってそう言えることを成し遂げたんだから、ある意味重みのあるおとぎ話だよな。
Tuesday, November 1, 2011
リールでの生活を謳歌するジョー・コール
移籍市場の締切間際にリバプールからフランスのリールにローン移籍したジョー・コールは、リーグ・アンとチャンピオンズリーグでの活躍でイングランド代表に返り咲くことを夢見ている。一時はロンドンからの電車通勤が噂されたが、本人はしっかりとフランスに根を下ろして新しい生活を満喫している様子。チャンピオンズリーグでは、かつての指揮官でもあるクラウディオ・ラニエリが率いるインテルとの対戦を控えている。
++(以下、要訳)++
ジョー・コールはフランスに移り、生きる喜びを再発見して人生を謳歌している。それは学校に通ってフランス語を学ぶ気になるほど充実したものだ。この日の午後はトレーニングがあり、その後、彼と妻のカーリーは学生時代以来のフランス語のレッスンに通っている。
「こっちに来てからなかなか落ち着かなかったけど、ゆっくりだけど少しずつ慣れてきてるよ。学校通いもそのひとつさ。時間がある時にいはカフェに座って『レキップ』(フランスの新聞)を読んでるんだ。綺麗な街でね。何を期待したら良いのか分からずに来たけど、ここでの生活は悪くないよ。ここでは『北フランスに来たら人は泣く。しかし、そこを去る時にはいっそう泣く』って諺があるくらい、みんなこの場所と仲間意識を愛してるんだ。良かったと思うね」
コールがここまでポジティブでいるのを見るのは新鮮だ。この29歳のキャリアは航路を外れたかのように見えた。チェルシーとの契約が2010年に切れた時には、南アフリカで不名誉なワールドカップを戦うイングランド代表の一員に何とか踏みとどまっていた。リバプールへの移籍金無しでの移籍はキャリアを蘇らせるきっかけになるはずで、当初はリバプールに馴染むかに見えた。しかし、退場や数々の小さなケガ、監督の交代や経営陣の混乱が次第に彼を蚊帳の外へと追いやって行った。しかし本当の驚きは、それが代表クラスとしては22年前にクリス・ワドルがマルセイユに移籍した時以来となるリーグ・アンへのクラブへのローン移籍へとつながったことだった。
リールでプレーした国内リーグの数試合で、コールは既に称賛を浴びている。このインタビューの最中も、サインを求める多くの人々が我々の会話を遮り、「サンキュー」も言わずに去っていく。シミー(ダンスの一種)とダーツ、交代出場でデビューしたサンテティエンヌ戦のアシストが、コールのリズムを作り出している。それが本格化したのは、25ヤードのシュートでロリアンのファビアン・オダールを抜いた時だった。チームは潤沢な資金で大型補強をしたパリ・サンジェルマンから6ポイント差の3位、火曜日にはチェルシー時代のコールの指揮官だったクラウディオ・ラニエリ率いるインテルとチャンピオンズリーグで対戦する。リールはヨーロッパで最もテクニックに秀でたリーグのひとつであるリーグ・アンで輝き、来年の夏には55,000人収容のスタジアムに居を移すクラブである。コールが運が自分に向いてきたと感じるには理由があるのだ。
「イングランド人が海外に行くと言うと、ビールを10パイント飲んでカラオケを壊しているイメージだろうが、フットボールとは関係なく、僕と妻にとっては違う国に住むチャンスだった。僕はカムデン・タウン(ロンドン北部)の出身で、フランスに住んだり、フランスでフットボールをする機会に恵まれるとは夢にも思わなかった。イングランドの選手には海外に行かない、とネガティブなイメージがある。僕は自分がその認識を変える助けになれると思いたいね。自分を試しているようなものさ。僕は多くの外国人がイングランドにやってきて皆と交わり、チームメイトと夜な夜な出かけてイングランドのメンタリティに馴染んでいったのを見てきたし、逆にためらいがちだったり、シャイで苦しむ奴らもね。だから、僕もできるだけ自分から溶け込もうとして
そのひとつ。水晶玉で未来を予期でいていたら、学生の頃のフランス語の授業をもっと頑張ったけど、その頃は単に興味がなかった。今はセロから始めてるようなものさ。ミシェル・トーマスのオーディオ・ブックを聞いて、毎週クラスでのレッスンにも行ってるよ。自分でコーヒーや水くらいはオーダーできるし、小さなことを少しずつ覚えているところだね。今日は。『練習は何時から?』ってチームメイトに聞いて『午後からだよ』と教わった。そういうところからね」
「9カ月で流暢に話すのは難しいだろうけど、うまくやって行きたいんだ。すこし大きな文脈で考える必要があるね。ウェストハムではリチャード・ガルシアと育ったけど、彼は15歳でオーストラリアからイングランドにやってきた。それは本当に国を出る、ということだ。僕のキャリアは、と言えば、東ロンドンから西ロンドン、そしてリバプール。今だってユーロスターに乗ればすぐにロンドンに行ける。まぁ、もうイングランドに家は無いし、滅多にしないけどね。時に自分の地平線を拡げる必要があるってことさ。今までと違う経験をしてね。この間、初めてカエルの足を食べたけど、脂の乗ったチキンみたいで本当に美味しかった。素晴らしいよ。街の真ん中に店があるから行ってみなよ」
そう含み笑いで言ったが、コールはこうして新しい生活にピッチの内外で挑戦している。いまリールで見せているプレーは、彼の才能を垣間見せているだけだったのかもしれないとリバプールのファンを苛立たせるかもしれない。
「単に十分なプレーができなかったんだ。退場になったし、戻ってきてもチームはロイと共に難しい時期にあった。戦術も僕には合わなかったしね。ロイは凄く難しい仕事に直面してたし、彼を批判しようとは思わない。でも、チームのプレーが良くなければ、最初に外されるのは若い選手や感覚でプレーする選手なのさ。そういうものなんだ」
「監督がケニーに代わってからは、僕がケガをしている間にチームが固まっていた。ウェストハムやチェルシーにいた頃はパッと入ってすぐにインパクトを残して、そのままチームに居座れた。リバプールではまた若手の一人に戻った感覚で、チャンスを掴むにはいつも何か特別なことをする必要があった。そしてそれが起こることは無かった。リバプールが好きだし、誰を批判するつもりもない。クラブの考えがあることも分かるよ。でも、僕はここにきて再びプレーする必要があった。今まで、選手が新しい国に来れば慣れるのには時間が掛かった。ルイス・スアレスみたいにすぐにインパクトを残せるのは稀だよ。僕には慣れている時間は無い。4年契約で来たわけじゃなく、ここに9ヶ月の予定で来た」
インパクトのあるデビューは、レフェリーがプレミアリーグよりも選手を守るリーグ・アンが彼に向いていることを示唆している。試合のペースも大慌てというよりは正確だ。リュディ・ガルシア率いる攻撃的なリールはコールにも合っているし、彼の横には才能溢れるエデン・アザールもいる。唯一ショッキングだったことと言えば、自分のスパイクを自分で磨く必要があったことだ。「イングランドじゃ一度プロになったら全部放ったらかしさ」とコールは語る。「国内の試合は、戦術的にはチャンピオンズリーグの試合をやってる感じだよ。今まで対戦した相手は、みんなしっかりしたフットボールをプレーしようとするし、ヨーロッパのレフェリーはテクニカルな選手を輝かせようとしてくれるね」
「アタッキング・サードまで行けばディフェンスもしっかり詰めてくるし、テンポは変わらない。でも、いったん引けば我慢強くビルドアップする時間もある。クレバーに動く必要があるよ。今まで必要のない動きも沢山してきたし、プレミアリーグじゃサイドバックにプレッシャーを掛けにも行ってた。イングランドじゃ、「前から行け」って後ろから叫び声がするからね。でも、ここでそうやって後ろを見てみると、「何やってんだ、力を残しておけ」って言われるんだ。学んでる最中だけど、これは予想していたことさ。学ぶのをやめたらプレーする意味は無いからね。マスターした気になるかもしれないけど、フットボールをマスターした奴なんて一人もいないよ」
この序盤の高まりを維持できるなら、フランスでの長い将来が訪れ、ワドルと並ぶカルト的な人気を勝ち取るかもしれない。リーグの上位とヨーロッパでの活躍が、ファビオ・カペッロにあのドイツ戦で今のところ最後となる56キャップ目を刻んだ選手がいることを思い出させることは確かだ。「代表でのプレーは懐かしいよ。10年レギュラーを張ってきて、そこにいるのが当たり枚に感じていたのかもしれない。いまこうして1年も呼ばれなくなって、11月には30歳になる。若手もどんどん入ってきているから、まだ僕のことを見てくれてるのかな、って気にはなるよね」
「気付いてもらえたらいいと思ってるよ。イングランドの人々の多くは、何で僕がフランスに来たのか不思議に思っているし、きっと忘れてしまうだろう。まだ完全には終わってないと思ってくれているかもしれない。彼らが間違っていることを証明したいわけじゃないんだ。それは誤ったモチベーションだよ。でも、僕は自分がまだトップクラスの選手だと証明したい。今の環境ならそれができると思ってるんだ。この間、ジョン・テリーが、僕と南アフリカでサメと泳ぎに行きたがった、って話をしていたのを見たよ。カゴに入ってるんだよ、もちろん。結局ダメって言われたけど、僕はそうして違ったことを試してみたいんだ。サメと泳いだりね。フランスに住むってのもそういうことさ」
このイングランド人は、海外ですっかり我が家の気分を味わっている。
++++
ロンドンに住んでた頃、他の留学生と「地元の奴らはチャレンジしないよな。旅行に行っても結局フィッシュ・アンド・チップかマクドナルド探してるし」って話してたのを思い出した。僕らが思ってる以上に内向き志向なんだよな。
++(以下、要訳)++
ジョー・コールはフランスに移り、生きる喜びを再発見して人生を謳歌している。それは学校に通ってフランス語を学ぶ気になるほど充実したものだ。この日の午後はトレーニングがあり、その後、彼と妻のカーリーは学生時代以来のフランス語のレッスンに通っている。
「こっちに来てからなかなか落ち着かなかったけど、ゆっくりだけど少しずつ慣れてきてるよ。学校通いもそのひとつさ。時間がある時にいはカフェに座って『レキップ』(フランスの新聞)を読んでるんだ。綺麗な街でね。何を期待したら良いのか分からずに来たけど、ここでの生活は悪くないよ。ここでは『北フランスに来たら人は泣く。しかし、そこを去る時にはいっそう泣く』って諺があるくらい、みんなこの場所と仲間意識を愛してるんだ。良かったと思うね」
コールがここまでポジティブでいるのを見るのは新鮮だ。この29歳のキャリアは航路を外れたかのように見えた。チェルシーとの契約が2010年に切れた時には、南アフリカで不名誉なワールドカップを戦うイングランド代表の一員に何とか踏みとどまっていた。リバプールへの移籍金無しでの移籍はキャリアを蘇らせるきっかけになるはずで、当初はリバプールに馴染むかに見えた。しかし、退場や数々の小さなケガ、監督の交代や経営陣の混乱が次第に彼を蚊帳の外へと追いやって行った。しかし本当の驚きは、それが代表クラスとしては22年前にクリス・ワドルがマルセイユに移籍した時以来となるリーグ・アンへのクラブへのローン移籍へとつながったことだった。
リールでプレーした国内リーグの数試合で、コールは既に称賛を浴びている。このインタビューの最中も、サインを求める多くの人々が我々の会話を遮り、「サンキュー」も言わずに去っていく。シミー(ダンスの一種)とダーツ、交代出場でデビューしたサンテティエンヌ戦のアシストが、コールのリズムを作り出している。それが本格化したのは、25ヤードのシュートでロリアンのファビアン・オダールを抜いた時だった。チームは潤沢な資金で大型補強をしたパリ・サンジェルマンから6ポイント差の3位、火曜日にはチェルシー時代のコールの指揮官だったクラウディオ・ラニエリ率いるインテルとチャンピオンズリーグで対戦する。リールはヨーロッパで最もテクニックに秀でたリーグのひとつであるリーグ・アンで輝き、来年の夏には55,000人収容のスタジアムに居を移すクラブである。コールが運が自分に向いてきたと感じるには理由があるのだ。
「イングランド人が海外に行くと言うと、ビールを10パイント飲んでカラオケを壊しているイメージだろうが、フットボールとは関係なく、僕と妻にとっては違う国に住むチャンスだった。僕はカムデン・タウン(ロンドン北部)の出身で、フランスに住んだり、フランスでフットボールをする機会に恵まれるとは夢にも思わなかった。イングランドの選手には海外に行かない、とネガティブなイメージがある。僕は自分がその認識を変える助けになれると思いたいね。自分を試しているようなものさ。僕は多くの外国人がイングランドにやってきて皆と交わり、チームメイトと夜な夜な出かけてイングランドのメンタリティに馴染んでいったのを見てきたし、逆にためらいがちだったり、シャイで苦しむ奴らもね。だから、僕もできるだけ自分から溶け込もうとして
そのひとつ。水晶玉で未来を予期でいていたら、学生の頃のフランス語の授業をもっと頑張ったけど、その頃は単に興味がなかった。今はセロから始めてるようなものさ。ミシェル・トーマスのオーディオ・ブックを聞いて、毎週クラスでのレッスンにも行ってるよ。自分でコーヒーや水くらいはオーダーできるし、小さなことを少しずつ覚えているところだね。今日は。『練習は何時から?』ってチームメイトに聞いて『午後からだよ』と教わった。そういうところからね」
「9カ月で流暢に話すのは難しいだろうけど、うまくやって行きたいんだ。すこし大きな文脈で考える必要があるね。ウェストハムではリチャード・ガルシアと育ったけど、彼は15歳でオーストラリアからイングランドにやってきた。それは本当に国を出る、ということだ。僕のキャリアは、と言えば、東ロンドンから西ロンドン、そしてリバプール。今だってユーロスターに乗ればすぐにロンドンに行ける。まぁ、もうイングランドに家は無いし、滅多にしないけどね。時に自分の地平線を拡げる必要があるってことさ。今までと違う経験をしてね。この間、初めてカエルの足を食べたけど、脂の乗ったチキンみたいで本当に美味しかった。素晴らしいよ。街の真ん中に店があるから行ってみなよ」
そう含み笑いで言ったが、コールはこうして新しい生活にピッチの内外で挑戦している。いまリールで見せているプレーは、彼の才能を垣間見せているだけだったのかもしれないとリバプールのファンを苛立たせるかもしれない。
「単に十分なプレーができなかったんだ。退場になったし、戻ってきてもチームはロイと共に難しい時期にあった。戦術も僕には合わなかったしね。ロイは凄く難しい仕事に直面してたし、彼を批判しようとは思わない。でも、チームのプレーが良くなければ、最初に外されるのは若い選手や感覚でプレーする選手なのさ。そういうものなんだ」
「監督がケニーに代わってからは、僕がケガをしている間にチームが固まっていた。ウェストハムやチェルシーにいた頃はパッと入ってすぐにインパクトを残して、そのままチームに居座れた。リバプールではまた若手の一人に戻った感覚で、チャンスを掴むにはいつも何か特別なことをする必要があった。そしてそれが起こることは無かった。リバプールが好きだし、誰を批判するつもりもない。クラブの考えがあることも分かるよ。でも、僕はここにきて再びプレーする必要があった。今まで、選手が新しい国に来れば慣れるのには時間が掛かった。ルイス・スアレスみたいにすぐにインパクトを残せるのは稀だよ。僕には慣れている時間は無い。4年契約で来たわけじゃなく、ここに9ヶ月の予定で来た」
インパクトのあるデビューは、レフェリーがプレミアリーグよりも選手を守るリーグ・アンが彼に向いていることを示唆している。試合のペースも大慌てというよりは正確だ。リュディ・ガルシア率いる攻撃的なリールはコールにも合っているし、彼の横には才能溢れるエデン・アザールもいる。唯一ショッキングだったことと言えば、自分のスパイクを自分で磨く必要があったことだ。「イングランドじゃ一度プロになったら全部放ったらかしさ」とコールは語る。「国内の試合は、戦術的にはチャンピオンズリーグの試合をやってる感じだよ。今まで対戦した相手は、みんなしっかりしたフットボールをプレーしようとするし、ヨーロッパのレフェリーはテクニカルな選手を輝かせようとしてくれるね」
「アタッキング・サードまで行けばディフェンスもしっかり詰めてくるし、テンポは変わらない。でも、いったん引けば我慢強くビルドアップする時間もある。クレバーに動く必要があるよ。今まで必要のない動きも沢山してきたし、プレミアリーグじゃサイドバックにプレッシャーを掛けにも行ってた。イングランドじゃ、「前から行け」って後ろから叫び声がするからね。でも、ここでそうやって後ろを見てみると、「何やってんだ、力を残しておけ」って言われるんだ。学んでる最中だけど、これは予想していたことさ。学ぶのをやめたらプレーする意味は無いからね。マスターした気になるかもしれないけど、フットボールをマスターした奴なんて一人もいないよ」
この序盤の高まりを維持できるなら、フランスでの長い将来が訪れ、ワドルと並ぶカルト的な人気を勝ち取るかもしれない。リーグの上位とヨーロッパでの活躍が、ファビオ・カペッロにあのドイツ戦で今のところ最後となる56キャップ目を刻んだ選手がいることを思い出させることは確かだ。「代表でのプレーは懐かしいよ。10年レギュラーを張ってきて、そこにいるのが当たり枚に感じていたのかもしれない。いまこうして1年も呼ばれなくなって、11月には30歳になる。若手もどんどん入ってきているから、まだ僕のことを見てくれてるのかな、って気にはなるよね」
「気付いてもらえたらいいと思ってるよ。イングランドの人々の多くは、何で僕がフランスに来たのか不思議に思っているし、きっと忘れてしまうだろう。まだ完全には終わってないと思ってくれているかもしれない。彼らが間違っていることを証明したいわけじゃないんだ。それは誤ったモチベーションだよ。でも、僕は自分がまだトップクラスの選手だと証明したい。今の環境ならそれができると思ってるんだ。この間、ジョン・テリーが、僕と南アフリカでサメと泳ぎに行きたがった、って話をしていたのを見たよ。カゴに入ってるんだよ、もちろん。結局ダメって言われたけど、僕はそうして違ったことを試してみたいんだ。サメと泳いだりね。フランスに住むってのもそういうことさ」
このイングランド人は、海外ですっかり我が家の気分を味わっている。
++++
ロンドンに住んでた頃、他の留学生と「地元の奴らはチャレンジしないよな。旅行に行っても結局フィッシュ・アンド・チップかマクドナルド探してるし」って話してたのを思い出した。僕らが思ってる以上に内向き志向なんだよな。
Wednesday, October 26, 2011
オールド・トラフォードの午後から分かったこと
衝撃的な結果となったオールド・トラフォードでのマンチェスター・ダービー。「この試合から分かった5つのこと」をさっそくコラムとして「テレグラフ」紙にアップしたのはアーセナルのOBでスカイの実況解説者としても知られるアラン・スミス氏。しかしこの記事の写真のマンチーニの表情…。
++(以下、要訳)++
1. マンチーニは良いメンバーを選択した
このダービーに向けて、ロベルト・マンチーニはいくつかのアプローチを取ることができた。トップにエディン・ジェコを置き、ジェームス・ミルナーの代わりにサミ・ナスリを使うこともできた。そして、マイカ・リチャーズでなく、パブロ・サバレタで守備を厚くすることもできただろう。しかしそうはしなかった。マンチーニは自分の本能を信じ、それが正しいことが証明された。ミルナーとリチャーズは出色の出来だった。そして、無鉄砲なマリオ・バロテッリについて言えば、指揮官の信頼に応えるのにこれ以上はできないほどだった。
2. サー・アレックス・ファーガソンも人間だ
ここで言っているのはメンバーの選択のことだ。中盤が強力な相手に対して備えをしないのは珍しいことだったからだ。シティは、ダヴィド・シルバが中に流れてくると、ミルナーも同様にギャレス・バリーとヤヤ・トゥーレに加わる。結果的にアンデルソンとダレン・フレッチャーは対処できなくなるだけだ。ユナイテッドはエヴァンスが退場になる前から数的にも完全にシティに裏をかかれていた。
3. ユナイテッドのディフェンスには安定感が必要だ
彼らにはネマヤ・ヴィディッチと固定されたパートナーが必要だ。ユナイテッドがケガで台所事情が苦しいことは理解しているが、ジョニー・エヴァンスはそのレベルにはまだ少々足りていないことを露呈した。バロテッリを止めるには、ああしてファウルをせずにもっと気を利かせる必要があった。あれではレフェリーは退場させざるを得ない。あれは起こしてはいけないミスだったし、強力なセンターバックがいる守備陣なら犯さない類のものだ。
4. 選手層の厚さ
シティにはユナイテッドを上回る選手層がある。大げさな言い方はすべきではなく、今日の試合はひとつの結果に過ぎない。シティはまず、覇権の移行が正しい焦点を当てられる前に、彼らが一体どこまで行けるのかを証明する必要があるだろう。それでもなお、シティが手にしている戦力に注目すれば、ジョー・ハート、ヴァンサン・コンパニ、ヤヤ・トゥーレ、シルバ、ナスリにセルヒオ・アグエロ、誰がユナイテッドに行ってもポジションを奪えるはずだ。同意するしないに関わらず、選手層というのはそうした側面から議論されるべきだ。
5. ついにやってきたシティ
彼らは本物のタイトル挑戦者だ。これまで我々は散々疑問の目を向けてきたが、この勝利はそれを打ち砕いて見せた。もはや誰もマンチーニのチームに十分なメンバーが揃い、ユナイテッドやチェルシーを押しのけるのに十分なレベルにあることに疑いは持てない。重要なことは、自信がその屋根を突き破って舞い上がったことだ。最初の15分間、シティは自分たちに確信を持てないプレーをしていたが、もはやそれさえ歴史とみなされるべきだ。
++++
…というコラムをアップしてすぐに、このスミス氏はユナイテッドが抱える懸念を3つに分けて解説している。「中盤」「センターバック」「サイドバック」の3ヶ所が議論のポイント。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・ユナイテッドの破綻の原因は、中盤とディフェンスにある。
中盤
ファーガソンが選んだスタメンには非常に驚いた。相手が中盤を厚くしてくる場合には、通常自分たちの形を変えて数的不利に陥らないようにするからだ。過去のアーセナルやチェルシーとの対戦を思い出せば、両チームとも3人を中盤に置いていた。
ユナイテッドは4-4-2にこだわるケースというのはあまり多くなく、ヨーロッパの舞台でそうすることが多いように、4-3-3を採用してパク・チソンを入れ、彼の運動量と規律で中盤を堅く締めてくるのだ。
それが毎回必ずしも機能するわけではないにしろ、少なくともこの日のようにダレン・フレッチャーとアンデルソンが救いようなく人数で圧倒され、シティに出し抜かれ続けることは無かったはずだ。ダヴィド・シルバとジェームス・ミルナーは中に入り続けてギャレス・バリーとヤヤ・トゥーレに加勢し、フレッチャーとアンデルソンの裏のスペースを突き続けた。
シティの4人の中盤は遥かに綿密なゲームを挑んでいた。序盤こそ不安定であったが、やがて試合を支配すべきポジションを見つけた。シンプルに聞こえるかもしれないが、これを実現するには自分が前に出る脅威を持ちつつ、ウィングを動かせるような強力なサイドバックが必要だ。
この日、マイカ・リチャーズとガエル・クリシーはそれを最高の形でやってのけた。アシュリー・ヤングとナニはサイドに張り続けていたが、開始後しばらくの良い時間以降はシティを押し込めなくなってしまった。
無論中盤の質も問題となる。ユナイテッドの中盤にはシティのシルバのようなレベルの創造性が必要だ。
センターバック
ケガが主たる原因ではあるが、ファーガソンのディフェンスラインには継続性が欠けている。開幕のウェストブロム戦でリオ・ファーディナンドとネマヤ・ヴィディッチの両方が負傷して以降、6種類の異なるペアがセンターバックに起用されている。右サイドバックにしても4人だ。
こんなディフェンスの回し方はできない。本人が悪いわけではないが、フォーディナンドが一番の問題だ。衰えが出始める年齢に到達し、この燃費の良かった32歳も毎試合はプレーできない。結果的にファーガソンは数週間ごとに他をあたらなければいけなくなっている。
ファーガソン本人は、ファーディナンドの経験を捨て去るのは惜しいが、同時にセンターバックのポジションを入れ替え続けることもしたくない、という微妙な気持ちを抱いている。週末の試合にヴィディッチは間に合うだろう。もしかすると、フィル・ジョーンズかクリス・スモーリングにキャプテンの横でプレーする機会を与える時なのかもしれない。
なぜならば、長期的にはジョーンズもスモーリングも、シティ戦で基準に達していないところ見せたジョニー・エヴァンスよりは確かな選択になるはずだからだ。退場の場面、エヴァンスのポジショニングが悪かったわけではないが、セルヒオ・アグエロのスルーパスへの反応は遅過ぎ、マリオ・バロテッリを追うのにも誤った方向に反転していた。
このミスは避けられるものであったことが、代償の手痛さを倍増させる結果となった。
両サイドバック
残り10分でスコアは1-3。エヴラと代役で右サイドバックに入ったダレン・フレッチャーは前へ出続け、ファーガソンを当惑させていた。敗れるとしても戦い続ける、と言ってもそこには限界がある。
時には守備に専念し、脅威を取りはらう必要があるのだ。特にエヴラについては、今季その面では素晴らしい出来とは言い難い。ポジショニングで勝負するタイプではないが、普段はスピードと技術で十分凌いできた。
しかしながら、最近のエヴラは脆さを露呈し始め、この日も3ゴールは彼のサイドを破られて生まれている。これをユナイテッド他の問題と重ね合わせれば、今季のプレミアリーグでユナイテッドが他のどのチームよりも被シュート数が多いという事実にはさほど驚かないだろう。
++++
2本のコラムを並べたから若干の重複はあるけど、他の評論家も含めて、ユナイテッドのスタメンの中盤の並びに疑問を呈する意見は多い気がする。ま、後からは何とでも言えるんだけど、実際シティの2トップを予想するメディアは少なかったし、ユナイテッドが対処できなかったのも事実なんだろうな。でも、後半早々ひとり少なくなった試合で色々結論付けるのは難しいと思う。
++(以下、要訳)++
1. マンチーニは良いメンバーを選択した
このダービーに向けて、ロベルト・マンチーニはいくつかのアプローチを取ることができた。トップにエディン・ジェコを置き、ジェームス・ミルナーの代わりにサミ・ナスリを使うこともできた。そして、マイカ・リチャーズでなく、パブロ・サバレタで守備を厚くすることもできただろう。しかしそうはしなかった。マンチーニは自分の本能を信じ、それが正しいことが証明された。ミルナーとリチャーズは出色の出来だった。そして、無鉄砲なマリオ・バロテッリについて言えば、指揮官の信頼に応えるのにこれ以上はできないほどだった。
2. サー・アレックス・ファーガソンも人間だ
ここで言っているのはメンバーの選択のことだ。中盤が強力な相手に対して備えをしないのは珍しいことだったからだ。シティは、ダヴィド・シルバが中に流れてくると、ミルナーも同様にギャレス・バリーとヤヤ・トゥーレに加わる。結果的にアンデルソンとダレン・フレッチャーは対処できなくなるだけだ。ユナイテッドはエヴァンスが退場になる前から数的にも完全にシティに裏をかかれていた。
3. ユナイテッドのディフェンスには安定感が必要だ
彼らにはネマヤ・ヴィディッチと固定されたパートナーが必要だ。ユナイテッドがケガで台所事情が苦しいことは理解しているが、ジョニー・エヴァンスはそのレベルにはまだ少々足りていないことを露呈した。バロテッリを止めるには、ああしてファウルをせずにもっと気を利かせる必要があった。あれではレフェリーは退場させざるを得ない。あれは起こしてはいけないミスだったし、強力なセンターバックがいる守備陣なら犯さない類のものだ。
4. 選手層の厚さ
シティにはユナイテッドを上回る選手層がある。大げさな言い方はすべきではなく、今日の試合はひとつの結果に過ぎない。シティはまず、覇権の移行が正しい焦点を当てられる前に、彼らが一体どこまで行けるのかを証明する必要があるだろう。それでもなお、シティが手にしている戦力に注目すれば、ジョー・ハート、ヴァンサン・コンパニ、ヤヤ・トゥーレ、シルバ、ナスリにセルヒオ・アグエロ、誰がユナイテッドに行ってもポジションを奪えるはずだ。同意するしないに関わらず、選手層というのはそうした側面から議論されるべきだ。
5. ついにやってきたシティ
彼らは本物のタイトル挑戦者だ。これまで我々は散々疑問の目を向けてきたが、この勝利はそれを打ち砕いて見せた。もはや誰もマンチーニのチームに十分なメンバーが揃い、ユナイテッドやチェルシーを押しのけるのに十分なレベルにあることに疑いは持てない。重要なことは、自信がその屋根を突き破って舞い上がったことだ。最初の15分間、シティは自分たちに確信を持てないプレーをしていたが、もはやそれさえ歴史とみなされるべきだ。
++++
…というコラムをアップしてすぐに、このスミス氏はユナイテッドが抱える懸念を3つに分けて解説している。「中盤」「センターバック」「サイドバック」の3ヶ所が議論のポイント。
++(以下、要訳)++
マンチェスター・ユナイテッドの破綻の原因は、中盤とディフェンスにある。
中盤
ファーガソンが選んだスタメンには非常に驚いた。相手が中盤を厚くしてくる場合には、通常自分たちの形を変えて数的不利に陥らないようにするからだ。過去のアーセナルやチェルシーとの対戦を思い出せば、両チームとも3人を中盤に置いていた。
ユナイテッドは4-4-2にこだわるケースというのはあまり多くなく、ヨーロッパの舞台でそうすることが多いように、4-3-3を採用してパク・チソンを入れ、彼の運動量と規律で中盤を堅く締めてくるのだ。
それが毎回必ずしも機能するわけではないにしろ、少なくともこの日のようにダレン・フレッチャーとアンデルソンが救いようなく人数で圧倒され、シティに出し抜かれ続けることは無かったはずだ。ダヴィド・シルバとジェームス・ミルナーは中に入り続けてギャレス・バリーとヤヤ・トゥーレに加勢し、フレッチャーとアンデルソンの裏のスペースを突き続けた。
シティの4人の中盤は遥かに綿密なゲームを挑んでいた。序盤こそ不安定であったが、やがて試合を支配すべきポジションを見つけた。シンプルに聞こえるかもしれないが、これを実現するには自分が前に出る脅威を持ちつつ、ウィングを動かせるような強力なサイドバックが必要だ。
この日、マイカ・リチャーズとガエル・クリシーはそれを最高の形でやってのけた。アシュリー・ヤングとナニはサイドに張り続けていたが、開始後しばらくの良い時間以降はシティを押し込めなくなってしまった。
無論中盤の質も問題となる。ユナイテッドの中盤にはシティのシルバのようなレベルの創造性が必要だ。
センターバック
ケガが主たる原因ではあるが、ファーガソンのディフェンスラインには継続性が欠けている。開幕のウェストブロム戦でリオ・ファーディナンドとネマヤ・ヴィディッチの両方が負傷して以降、6種類の異なるペアがセンターバックに起用されている。右サイドバックにしても4人だ。
こんなディフェンスの回し方はできない。本人が悪いわけではないが、フォーディナンドが一番の問題だ。衰えが出始める年齢に到達し、この燃費の良かった32歳も毎試合はプレーできない。結果的にファーガソンは数週間ごとに他をあたらなければいけなくなっている。
ファーガソン本人は、ファーディナンドの経験を捨て去るのは惜しいが、同時にセンターバックのポジションを入れ替え続けることもしたくない、という微妙な気持ちを抱いている。週末の試合にヴィディッチは間に合うだろう。もしかすると、フィル・ジョーンズかクリス・スモーリングにキャプテンの横でプレーする機会を与える時なのかもしれない。
なぜならば、長期的にはジョーンズもスモーリングも、シティ戦で基準に達していないところ見せたジョニー・エヴァンスよりは確かな選択になるはずだからだ。退場の場面、エヴァンスのポジショニングが悪かったわけではないが、セルヒオ・アグエロのスルーパスへの反応は遅過ぎ、マリオ・バロテッリを追うのにも誤った方向に反転していた。
このミスは避けられるものであったことが、代償の手痛さを倍増させる結果となった。
両サイドバック
残り10分でスコアは1-3。エヴラと代役で右サイドバックに入ったダレン・フレッチャーは前へ出続け、ファーガソンを当惑させていた。敗れるとしても戦い続ける、と言ってもそこには限界がある。
時には守備に専念し、脅威を取りはらう必要があるのだ。特にエヴラについては、今季その面では素晴らしい出来とは言い難い。ポジショニングで勝負するタイプではないが、普段はスピードと技術で十分凌いできた。
しかしながら、最近のエヴラは脆さを露呈し始め、この日も3ゴールは彼のサイドを破られて生まれている。これをユナイテッド他の問題と重ね合わせれば、今季のプレミアリーグでユナイテッドが他のどのチームよりも被シュート数が多いという事実にはさほど驚かないだろう。
++++
2本のコラムを並べたから若干の重複はあるけど、他の評論家も含めて、ユナイテッドのスタメンの中盤の並びに疑問を呈する意見は多い気がする。ま、後からは何とでも言えるんだけど、実際シティの2トップを予想するメディアは少なかったし、ユナイテッドが対処できなかったのも事実なんだろうな。でも、後半早々ひとり少なくなった試合で色々結論付けるのは難しいと思う。
Thursday, October 20, 2011
フットボールへの誠実さを貫くハリー・レドナップ
「テレグラフ」紙のオリヴァー・ブラウン記者による、スパーズの監督ハリー・レドナップへのインタビュー記事。フットボール好きのオッサン、という側面を上手く浮き上がらせている。
++(以下、要訳)++
バークシャーのデ・ヴィア・ウォークフィールド・パーク・ホテルで、彼はスタッフに気軽に冗談を言い、妻のサンドラが彼に坐骨神経痛の治療を兼ねていかにヨガを始めさせたかを説明していた。しかし、並外れた賢明さと献身で偉業を成し遂げてきたこの男のキャリアの中で初めて疲労の色が見え始めている。この64歳には滅多に見られなかった兆候だが、イングランドの歴史の中でも最も屈強で長寿の部類に入るハリー・レドナップも疲れを感じ初めているのだ。
素晴らしい1時間の会話の話題は、デイビッド・ベッカムからキャニング・タウンの学校でのコーチ業の記憶にまで多岐に及んだが、忍び寄る疲労についても告白した。ドーセット海岸近くのサンドバンクスの牧場からトッテナムのチグウェルの練習場までの明け方のドライブにいよいよくじけそうになってきた。「情熱が衰えてるわけじゃないんだが、疲れを感じるようになっていないと言えば嘘になるだろう。単純に年齢の問題だ。だんだん効いてきているよ」
「そりゃキツいさ。朝の3時に家を出て、5時にはトレーニング場に着くが、そこが開くのは7時から。そこに座ってラジオを聞いて待つんだ。健康に影響は出るさ。結局ロンドンに泊まることが増えたよ。昔は毎日車で通ったものだけどね。1日に6時間運転する計算だ。それでも私は今でも変わらぬ情熱を持っている。良い選手たちと一緒に仕事をするのは大好きだし、彼らのボールさばきをトレーニングで見るもの好きだ。その分、下手くそな選手と仕事をするのはキビしくなったな。ウチの選手たちは見ていて本当に素晴らしいと思うよ」
レドナップの宿命的な視点は、代理人たちの強欲やプレミア各クラブと地元コミュニティの断絶ぶりではなく、彼をフットボールの単純な喜びにぞっこん惚れ込んだままにし続けている。
だからこそ、ニューカッスルへの遠征の前日でもブラックバーンを迎えるQPRの試合を観に行き、ロフタス・ロードの雰囲気に酔いしれるのだ。トラック付きのピッチにはひと言ある。ウェストハムによるストラトフォードのオリンピック・スタジアムへの入札が差し戻される週には、この老いた伝統主義者は、執念深く自分の古巣の移転に反対していた。
「陸上用トラックのあるスタジアムはフットボールを殺してしまう。私は我々がホワイト・ハート・レーンで作りだしているような雰囲気、もしくはかつてウェストハムがアップトン・パークで持っていた雰囲気に身を置くのが大好きなんだ。トラックがあって遠くに座っていたら、そんな雰囲気は作れやしないよ。そういう時代じゃないんだ。ウェストハムのサポーターがそれを喜ぶとはとても思えないね」
レドナップはファンの視点に敏感に思慮を働かせていて、昨シーズンのチャンピオンズリーグ出場でトッテナムに生まれた楽観を維持する方法を模索している。
2月にデイビッド・ベッカムがトレーニングに参加したことは、彼が練習のみにしか参加できなくとも、トッテナムに明らかなアドレナリンをもたらした。レドナップは36歳になるベッカムのギャラクシーとの契約が来月切れた際に、再びトッテナムにやってくる可能性も完全には否定しない。
「人間、そして選手としてのデイビッドに本当に感銘を受けたよ。クラブにいてくれたのは素晴らしいことだし、彼は一級品だ。彼を目にする若手たちには最高のロールモデルだ」
「問題があるとすれば、デイビッドが定期的にプレーしたいと考える一方で、私が彼に出番を保証できないことだ。難しいよ。アーロン・レノンは戻ってくるし、ラファエル・ファン・デル・ファールトも右ができる。私には既に多くのオプションがある。両サイドをギャレス・ベイルとルカ・モドリッチにすることもできる。サンドロがトップクラスの選手になろうとしていて、そしてスコット・パーカーもやってきた。デイビッドを連れてきたのにプレーさせられないのは問題だろう」
メンバー選びの贅沢な悩みは、トッテナムの忌まわしい開幕には考えられなかったことだ。オールド・トラフォードでは0-3で屈辱を味わい、ホームではマンチェスター・シティに1-5で粉砕された。アーセナル相手の勝利を含むその後の4連勝はまったく約束などされていなかった。
当初の中盤ではニコ・クラニチャルとジェイク・リバモアがペアを組み、危険なほどの未熟さがそこにあったが、トム・ハドルストンの足首の手術からの回復も含めれば、今はチャンピオンズリーグへの正当な挑戦者としての自信が感じられるようになった。
彼を錬金術師ハリーと呼んでも良いかもしれない。たとえ、彼が自分の道程を振り返って、今の業界が向かっている方向を嘆いているとしてもだ。レドナップは代理人たちの台頭に冷笑して「彼らは監督よりも会長に電話をするし、自分の抱える選手たちには皆スーパースターだと吹き込んでいる」と語るが、むしろ今の選手たちの住む世界がこれまでとは随分違うことに懸念を抱いている。
「今まで自分も一員だと思っていたが、その時代はもう終わってしまった。そういう時代が帰ってくるかも分からない。選手たちはもはやボートの漕ぎ手ではなく、給料を払っている雇い主に対しても十分な時間を与えてはくれない」
「私がウェストハムにいた頃は、みな午後は学校に行って子供たちのコーチをしていた。最高の時間だったよ。キャニング・タウンの学校で週に5日、私とフランク・ランパード・シニアとね。トレヴァー・ブルッキングはよくサン・ボナヴェントゥラで教えていた。3時間教えて皆2.5ポンド貰っていた。最高だったよ。今の選手たちは、自分たちの輪に閉じこもってしまう。ちょっと政治家みたいな感じだ。道行く人々とは交わらないんだ」
レドナップ自身は、自分が愛されていたと感じている。「我々は良い仕事をしてきていると思うよ。昨日の夜は航空救急隊とディナーに行ったが、みなトッテナムのファンで、今のスパーズに起きていることを本当に喜んでくれていた。もはやアーセナルとの差が無くなったという事実が嬉しいんだ」
この相思相愛の関係に潜む危険は、レドナップが依然としてユーロ2012後にファビオ・カペッロが退任した後のイングランド代表の有力候補であることだ。レドナップのスパーズでの地位は安泰だが、本人は基本的にはこの見方を喜んでいて、実際のところこの状況を楽観視している。
「この話は断るのは難しいタイプのものだ。特にイングランド人ならね。ただ、私はプレミアリーグをエンジョイしていて、毎週毎週の監督業も楽しんでいるよ。私は毎日関わりを持っていたいし、それが私を駆り立てているんだ」
++++
珍しいハリー単独特集の記事。しかし、マイカー往復6時間の通勤をしてトッテナムまで通ってたとは凄い。
++(以下、要訳)++
バークシャーのデ・ヴィア・ウォークフィールド・パーク・ホテルで、彼はスタッフに気軽に冗談を言い、妻のサンドラが彼に坐骨神経痛の治療を兼ねていかにヨガを始めさせたかを説明していた。しかし、並外れた賢明さと献身で偉業を成し遂げてきたこの男のキャリアの中で初めて疲労の色が見え始めている。この64歳には滅多に見られなかった兆候だが、イングランドの歴史の中でも最も屈強で長寿の部類に入るハリー・レドナップも疲れを感じ初めているのだ。
素晴らしい1時間の会話の話題は、デイビッド・ベッカムからキャニング・タウンの学校でのコーチ業の記憶にまで多岐に及んだが、忍び寄る疲労についても告白した。ドーセット海岸近くのサンドバンクスの牧場からトッテナムのチグウェルの練習場までの明け方のドライブにいよいよくじけそうになってきた。「情熱が衰えてるわけじゃないんだが、疲れを感じるようになっていないと言えば嘘になるだろう。単純に年齢の問題だ。だんだん効いてきているよ」
「そりゃキツいさ。朝の3時に家を出て、5時にはトレーニング場に着くが、そこが開くのは7時から。そこに座ってラジオを聞いて待つんだ。健康に影響は出るさ。結局ロンドンに泊まることが増えたよ。昔は毎日車で通ったものだけどね。1日に6時間運転する計算だ。それでも私は今でも変わらぬ情熱を持っている。良い選手たちと一緒に仕事をするのは大好きだし、彼らのボールさばきをトレーニングで見るもの好きだ。その分、下手くそな選手と仕事をするのはキビしくなったな。ウチの選手たちは見ていて本当に素晴らしいと思うよ」
レドナップの宿命的な視点は、代理人たちの強欲やプレミア各クラブと地元コミュニティの断絶ぶりではなく、彼をフットボールの単純な喜びにぞっこん惚れ込んだままにし続けている。
だからこそ、ニューカッスルへの遠征の前日でもブラックバーンを迎えるQPRの試合を観に行き、ロフタス・ロードの雰囲気に酔いしれるのだ。トラック付きのピッチにはひと言ある。ウェストハムによるストラトフォードのオリンピック・スタジアムへの入札が差し戻される週には、この老いた伝統主義者は、執念深く自分の古巣の移転に反対していた。
「陸上用トラックのあるスタジアムはフットボールを殺してしまう。私は我々がホワイト・ハート・レーンで作りだしているような雰囲気、もしくはかつてウェストハムがアップトン・パークで持っていた雰囲気に身を置くのが大好きなんだ。トラックがあって遠くに座っていたら、そんな雰囲気は作れやしないよ。そういう時代じゃないんだ。ウェストハムのサポーターがそれを喜ぶとはとても思えないね」
レドナップはファンの視点に敏感に思慮を働かせていて、昨シーズンのチャンピオンズリーグ出場でトッテナムに生まれた楽観を維持する方法を模索している。
2月にデイビッド・ベッカムがトレーニングに参加したことは、彼が練習のみにしか参加できなくとも、トッテナムに明らかなアドレナリンをもたらした。レドナップは36歳になるベッカムのギャラクシーとの契約が来月切れた際に、再びトッテナムにやってくる可能性も完全には否定しない。
「人間、そして選手としてのデイビッドに本当に感銘を受けたよ。クラブにいてくれたのは素晴らしいことだし、彼は一級品だ。彼を目にする若手たちには最高のロールモデルだ」
「問題があるとすれば、デイビッドが定期的にプレーしたいと考える一方で、私が彼に出番を保証できないことだ。難しいよ。アーロン・レノンは戻ってくるし、ラファエル・ファン・デル・ファールトも右ができる。私には既に多くのオプションがある。両サイドをギャレス・ベイルとルカ・モドリッチにすることもできる。サンドロがトップクラスの選手になろうとしていて、そしてスコット・パーカーもやってきた。デイビッドを連れてきたのにプレーさせられないのは問題だろう」
メンバー選びの贅沢な悩みは、トッテナムの忌まわしい開幕には考えられなかったことだ。オールド・トラフォードでは0-3で屈辱を味わい、ホームではマンチェスター・シティに1-5で粉砕された。アーセナル相手の勝利を含むその後の4連勝はまったく約束などされていなかった。
当初の中盤ではニコ・クラニチャルとジェイク・リバモアがペアを組み、危険なほどの未熟さがそこにあったが、トム・ハドルストンの足首の手術からの回復も含めれば、今はチャンピオンズリーグへの正当な挑戦者としての自信が感じられるようになった。
彼を錬金術師ハリーと呼んでも良いかもしれない。たとえ、彼が自分の道程を振り返って、今の業界が向かっている方向を嘆いているとしてもだ。レドナップは代理人たちの台頭に冷笑して「彼らは監督よりも会長に電話をするし、自分の抱える選手たちには皆スーパースターだと吹き込んでいる」と語るが、むしろ今の選手たちの住む世界がこれまでとは随分違うことに懸念を抱いている。
「今まで自分も一員だと思っていたが、その時代はもう終わってしまった。そういう時代が帰ってくるかも分からない。選手たちはもはやボートの漕ぎ手ではなく、給料を払っている雇い主に対しても十分な時間を与えてはくれない」
「私がウェストハムにいた頃は、みな午後は学校に行って子供たちのコーチをしていた。最高の時間だったよ。キャニング・タウンの学校で週に5日、私とフランク・ランパード・シニアとね。トレヴァー・ブルッキングはよくサン・ボナヴェントゥラで教えていた。3時間教えて皆2.5ポンド貰っていた。最高だったよ。今の選手たちは、自分たちの輪に閉じこもってしまう。ちょっと政治家みたいな感じだ。道行く人々とは交わらないんだ」
レドナップ自身は、自分が愛されていたと感じている。「我々は良い仕事をしてきていると思うよ。昨日の夜は航空救急隊とディナーに行ったが、みなトッテナムのファンで、今のスパーズに起きていることを本当に喜んでくれていた。もはやアーセナルとの差が無くなったという事実が嬉しいんだ」
この相思相愛の関係に潜む危険は、レドナップが依然としてユーロ2012後にファビオ・カペッロが退任した後のイングランド代表の有力候補であることだ。レドナップのスパーズでの地位は安泰だが、本人は基本的にはこの見方を喜んでいて、実際のところこの状況を楽観視している。
「この話は断るのは難しいタイプのものだ。特にイングランド人ならね。ただ、私はプレミアリーグをエンジョイしていて、毎週毎週の監督業も楽しんでいるよ。私は毎日関わりを持っていたいし、それが私を駆り立てているんだ」
++++
珍しいハリー単独特集の記事。しかし、マイカー往復6時間の通勤をしてトッテナムまで通ってたとは凄い。
Tuesday, October 18, 2011
チャンピオンズリーグとバルセロナに挑戦する面々
今週はチャンピオンズリーグの試合が入るってことで、この間出ていたサイモン・クーパーのコラム。以前ブラジルサッカーについて書かれたコラムが出ていた謎のポータルサイト「AskMen」に出ていたもの。バルセロナに挑戦するのは誰か?という主旨で、モウリーニョ率いるレアル・マドリー、マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘンなどの可能性に触れつつ、結局のところバルサ?という展開。
++(以下、要訳)++
灼熱のマドリードの夏、レアル・マドリーの練習に訪れた人々は同じトレーニングを目にしていた。今やほぼクラブの全権を勝ち取ったジョゼ・モウリーニョは、ディフェンスから相手陣内へできるだけ早く運ぶ動きを何度も何度も選手たちに叩きこんでいた。9月27日のチャンピオンズリーグアヤックス戦のゴールは、正にこの手法を発揮することで生まれていた。
3秒ルール
モダンサッカーにおいて得点の可能性が最も高いのはボールを奪った3秒後だ。それは相手が依然として当惑にあって、ディフェンスのポジションに戻っていない時間だ。しかし、この3秒ルールが問題になるのはバルセロナが相手の時くらいで、モウリーニョの向こう数カ月の目的は、8月にアシスタントのティト・ヴィラノバに食らわした(本当の意味での)目潰しを、バルセロナに食らわせることにある。このレアルのスピード重視の練習は、今季のヨーロッパについて回る「人はどうしたらバルサを打ち負かせるか」という問いへのベストアンサーとなるかもしれない。
新しいバルセロナを目にすれば、相手はただ諦めたいと思うに違いない。バルセロナのプレーメーカーであるシャビは、「チームは一段と良くなった。より多くをもたらせる選手たちを迎えたからね」と語る。その通りで、チリ人のアレクシス・サンチェスはバルサに伝統的なウィンガーとしてプレーするオプションをもたらし、今季最初の6試合で6ゴールを決めているセスク・ファブレガスの存在は、シャビとアンドレス・イニエスタがアンタッチャブルではないことを意味する。
1つの値段で2つ
恐ろしいことに、バルセロナは2つの素晴らしいフォーメーションでプレーすることができる。長年にわたってチームは4-3-3でプレーしてきたが、9月に3-4-3を使ってオサスナを8-0で粉砕した。もはや彼らは、ボールを奪っては必ずボールを戻してポジションを確認し、相手に「行くぞ!」と言って、まるで小人たちクロスワードパズルを埋めるようにパスを縦横無尽に回すという、フットボール界で最も予測可能なチームではない。監督のペップ・グアルディオラは、過去最高と言われたチームの更なる改善に情熱を燃やしている。
もちろん、それでも多くはバルセロナで替えの利かないリオネル・メッシに依存している。世界王者のスペインというのは、バルセロナからメッシを引いたものだ。そして、昨年のワールドカップで、10人で守ったスイスやパラグアイ、オランダは、スペインが必ずしも完全無欠ではないことを示して見せた。もしメッシがケガをすれば-2006年にモウリーニョ率いるチェルシーは彼を潰しにかかった-、ヨーロッパのタイトルは他クラブにも獲得可能なものになる。ただ、メッシほどレフェリーたちに守られている選手は他にはいない。
天才モウリーニョ
それでもメッシがいるバルセロナにもスキはある。過去3シーズンでそれを突いた唯一の監督がモウリーニョだ。2010年、当時インテルを率いていたモウリーニョはチャンピオンズリーグの準決勝を前に終わりなきDVD分析からカタルーニャの弱点を見出した。チームメイトがいつもシャビにボールを預けられるのは、彼が必ずしも常にディフェンスをケアしなくとも良いからだった。これはモダンサッカーでは非常に稀少な特権だ。更に、バルセロナの両サイドバックは非常に高い位置で守備をし、背後に広大なスペースがあった。インテルは自陣ペナルティエリアのすぐ外側まで引いて辛抱強く守り、モウリーニョが見出したスペースを狙ったカウンターでバルセロナを仕留めた。
奇妙なことに、モウリーニョはレアルの監督を引き継ぐとこの勝利の法則を捨て去った。昨年の11月のカンプ・ノウでの試合では、ハーフウェー・ライン近くで守備をしていた。おそらく彼は、バルセロナを破る1つでなく2つの方法を見せることで自分の天才ぶりを知らしめたかったのだろう。レアルは0-5で敗れた。それ以降、モウリーニョはカウンターに戻した。昨季の国宝杯決勝でバルセロナを破り、ゴンサロ・イグアインのカウンターからのゴールが不当に取り消されなければ、チャンピオンズリーグの準決勝でもそれを成し遂げかけた。
スタンドからこのレアルの計算しつくされたディフェンスに目をやり、85歳になるレアルのレジェンドであるアルフレド・ディ・ステファノは、「バルセロナがライオンでマドリーはネズミ」と不満をこぼした。レアル伝統のスタイルは攻撃だ。モウリーニョは気にかけないだろう。会長のフロレンティーノ・ペレスが、モウリーニョと対立していた攻撃サッカーの信奉者であるテクニカル・ディレクターのホルヘ・バルダーノを解任し、このポルトガル人監督は自分の好きなようにできる。
イングランド流
バルセロナを倒すのは、イングランドのクラブよりもモウリーニョのチームの方が可能性が高そうだ。分厚い守備にカウンターというのは単純にイングランドのスタイルではないのだ。イングランドのファンはそんなものに我慢できない。5月にウェンブリーで行われたチャンピオンズリーグの決勝で、マンチェスター・ユナイテッドはバルセロナのディフェンスにプレッシャーをかけようと試みた。それが持続したのは僅かに10分、早々に疲弊してしまった。ユナイテッドの守備陣が押し上げに一生懸命では無かったことも一因ではあるが。いずれにしても、ここ最近は平均23歳程度の布陣で試合に臨んでいるユナイテッドは、成熟を語るには程遠い。逆にチェルシーは成熟し切ってしまった。
ここのところ、フランク・ランパード、ニコラ・アネルカ、そしてディディエ・ドログバといったここ数年間のクラブの繁栄を気付いてきた選手たちが話題に上るが、チーム写真に映る新顔のひとりが33歳の青年監督、アンドレ・ヴィラス・ボアスであるならば、問題があることには気づくだろう。
過去の過ちの克服
新聞上ではマンチェスター・シティがイングランド史上最強の挑戦者ということになっているようだ。このクラブは全てのポジションに実力を証明した選手たちを揃え、しかもほぼ全員が全盛期にある。
バイエルン・ミュンヘン相手の敗戦から明瞭に分かるシティのチーム・スピリットの問題 -カルロス・テヴェスの出場拒否、交代時のエディン・ジェコの怒り、ロベルト・マンチーニとパブロ・サバレタの口論- は、大事には至らないだろう。トップクラスの選手は互いに仲良しである必要は無いし、ましてやクラブを愛する必要などまったくない。彼らは非常に任務中心の人間で、自分の役割をこなすのだ。いかにも、テヴェスは90分間自分の全てを捧げるという自分の任務をマンチーニに邪魔された時、大きな怒りを抱いたのだろう。これは昨年ウェイン・ルーニーが突然マンチェスター・ユナイテッドを出てマンチェスター・シティに行きたい、と言った時のように、早々に忘れられる騒動のひとつに過ぎない。それでも、ナポリとバイエルンと対戦し、2試合で1ポイントというチャンピオンズリーグでの戦いぶりはあまり縁起の良いものではない。
この夏にマンチェスター・シティからバイエルン・ミュンヘンに加わったジェローム・ボアテングは、ミュンヘンでの勝利の後に「シティが決勝に進めるとは思えない。他に良いチームがある。例えばウチがそうさ」と語った。その通り、この素晴らしいバイエルンは来る5月のミュンヘンでのファイナルの気品高いホストになることだけを望んでいるわけではない。バイエルンは、既に昨年のドイツのチャンピオンであるボルシア・ドルトムントを遥か後方へと押しやった。バイエルンの前監督であるルイス・ファン・ハールはディフェンスをあまり気に掛けなかった。10月3日現在で、後任であるユップ・ハインケスのチームは11試合無失点だ。
警戒すべきバイエルン
歴史的にはバイエルンはドイツ・サッカーが強い時に繁栄する。クラブが1974年から76年に3つのヨーロッパカップを勝ち取ったのを覚えているだろうか?そして現在のチームは、ここ20年でベストの世代が中心になっている。マヌエル・ノイアー(彼が何もしなくて良いというわけではないが)、フィリップ・ラーム、ホルガー・バトシュトゥバー、バスティアン・シュバインシュタイガー、トニ・クロース、そしてマリオ・ゴメス。バイエルンに住むフランス人、フランク・リベリーはケガとセックス・スキャンダル、出て行ったファン・ハールとの対立で乗り遅れてしまった。他の外国人、オランダ人の「ガラスの男」アリエン・ロッベンは再び負傷したが、バイエルンがすぐに彼を必要としているようにも見えない。個のチームは彼無しでもブンデスリーガを制する力がある。ロッベンが必要となるのはゲームを決める顔見せか、次の春のチャンピオンズリーグだ。バイヤー・レヴァークーゼンでスポーツ・ディレクターを務めるルディ・フェラーは、「バイエルンはバルセロナやレアル・マドリーのレベルにある」と警告する。
もしバイエルンがファイナルに到達すれば、ホーム・アドバンテージがプラスに働くはずだ。それでもなお、来年5月19日にシャビやイニエスタ、ファブレガスよりも背の高い大男たちがビッグイヤーを掲げるとは、理性ある人なら誰も予想しないだろう。
++++
インテル時代のモウリーニョが取ったあの戦術じゃないとバルサは倒せない、とモウリーニョ自身がレアルで再確認しちまった感じだなー。
++(以下、要訳)++
灼熱のマドリードの夏、レアル・マドリーの練習に訪れた人々は同じトレーニングを目にしていた。今やほぼクラブの全権を勝ち取ったジョゼ・モウリーニョは、ディフェンスから相手陣内へできるだけ早く運ぶ動きを何度も何度も選手たちに叩きこんでいた。9月27日のチャンピオンズリーグアヤックス戦のゴールは、正にこの手法を発揮することで生まれていた。
3秒ルール
モダンサッカーにおいて得点の可能性が最も高いのはボールを奪った3秒後だ。それは相手が依然として当惑にあって、ディフェンスのポジションに戻っていない時間だ。しかし、この3秒ルールが問題になるのはバルセロナが相手の時くらいで、モウリーニョの向こう数カ月の目的は、8月にアシスタントのティト・ヴィラノバに食らわした(本当の意味での)目潰しを、バルセロナに食らわせることにある。このレアルのスピード重視の練習は、今季のヨーロッパについて回る「人はどうしたらバルサを打ち負かせるか」という問いへのベストアンサーとなるかもしれない。
新しいバルセロナを目にすれば、相手はただ諦めたいと思うに違いない。バルセロナのプレーメーカーであるシャビは、「チームは一段と良くなった。より多くをもたらせる選手たちを迎えたからね」と語る。その通りで、チリ人のアレクシス・サンチェスはバルサに伝統的なウィンガーとしてプレーするオプションをもたらし、今季最初の6試合で6ゴールを決めているセスク・ファブレガスの存在は、シャビとアンドレス・イニエスタがアンタッチャブルではないことを意味する。
1つの値段で2つ
恐ろしいことに、バルセロナは2つの素晴らしいフォーメーションでプレーすることができる。長年にわたってチームは4-3-3でプレーしてきたが、9月に3-4-3を使ってオサスナを8-0で粉砕した。もはや彼らは、ボールを奪っては必ずボールを戻してポジションを確認し、相手に「行くぞ!」と言って、まるで小人たちクロスワードパズルを埋めるようにパスを縦横無尽に回すという、フットボール界で最も予測可能なチームではない。監督のペップ・グアルディオラは、過去最高と言われたチームの更なる改善に情熱を燃やしている。
もちろん、それでも多くはバルセロナで替えの利かないリオネル・メッシに依存している。世界王者のスペインというのは、バルセロナからメッシを引いたものだ。そして、昨年のワールドカップで、10人で守ったスイスやパラグアイ、オランダは、スペインが必ずしも完全無欠ではないことを示して見せた。もしメッシがケガをすれば-2006年にモウリーニョ率いるチェルシーは彼を潰しにかかった-、ヨーロッパのタイトルは他クラブにも獲得可能なものになる。ただ、メッシほどレフェリーたちに守られている選手は他にはいない。
天才モウリーニョ
それでもメッシがいるバルセロナにもスキはある。過去3シーズンでそれを突いた唯一の監督がモウリーニョだ。2010年、当時インテルを率いていたモウリーニョはチャンピオンズリーグの準決勝を前に終わりなきDVD分析からカタルーニャの弱点を見出した。チームメイトがいつもシャビにボールを預けられるのは、彼が必ずしも常にディフェンスをケアしなくとも良いからだった。これはモダンサッカーでは非常に稀少な特権だ。更に、バルセロナの両サイドバックは非常に高い位置で守備をし、背後に広大なスペースがあった。インテルは自陣ペナルティエリアのすぐ外側まで引いて辛抱強く守り、モウリーニョが見出したスペースを狙ったカウンターでバルセロナを仕留めた。
奇妙なことに、モウリーニョはレアルの監督を引き継ぐとこの勝利の法則を捨て去った。昨年の11月のカンプ・ノウでの試合では、ハーフウェー・ライン近くで守備をしていた。おそらく彼は、バルセロナを破る1つでなく2つの方法を見せることで自分の天才ぶりを知らしめたかったのだろう。レアルは0-5で敗れた。それ以降、モウリーニョはカウンターに戻した。昨季の国宝杯決勝でバルセロナを破り、ゴンサロ・イグアインのカウンターからのゴールが不当に取り消されなければ、チャンピオンズリーグの準決勝でもそれを成し遂げかけた。
スタンドからこのレアルの計算しつくされたディフェンスに目をやり、85歳になるレアルのレジェンドであるアルフレド・ディ・ステファノは、「バルセロナがライオンでマドリーはネズミ」と不満をこぼした。レアル伝統のスタイルは攻撃だ。モウリーニョは気にかけないだろう。会長のフロレンティーノ・ペレスが、モウリーニョと対立していた攻撃サッカーの信奉者であるテクニカル・ディレクターのホルヘ・バルダーノを解任し、このポルトガル人監督は自分の好きなようにできる。
イングランド流
バルセロナを倒すのは、イングランドのクラブよりもモウリーニョのチームの方が可能性が高そうだ。分厚い守備にカウンターというのは単純にイングランドのスタイルではないのだ。イングランドのファンはそんなものに我慢できない。5月にウェンブリーで行われたチャンピオンズリーグの決勝で、マンチェスター・ユナイテッドはバルセロナのディフェンスにプレッシャーをかけようと試みた。それが持続したのは僅かに10分、早々に疲弊してしまった。ユナイテッドの守備陣が押し上げに一生懸命では無かったことも一因ではあるが。いずれにしても、ここ最近は平均23歳程度の布陣で試合に臨んでいるユナイテッドは、成熟を語るには程遠い。逆にチェルシーは成熟し切ってしまった。
ここのところ、フランク・ランパード、ニコラ・アネルカ、そしてディディエ・ドログバといったここ数年間のクラブの繁栄を気付いてきた選手たちが話題に上るが、チーム写真に映る新顔のひとりが33歳の青年監督、アンドレ・ヴィラス・ボアスであるならば、問題があることには気づくだろう。
過去の過ちの克服
新聞上ではマンチェスター・シティがイングランド史上最強の挑戦者ということになっているようだ。このクラブは全てのポジションに実力を証明した選手たちを揃え、しかもほぼ全員が全盛期にある。
バイエルン・ミュンヘン相手の敗戦から明瞭に分かるシティのチーム・スピリットの問題 -カルロス・テヴェスの出場拒否、交代時のエディン・ジェコの怒り、ロベルト・マンチーニとパブロ・サバレタの口論- は、大事には至らないだろう。トップクラスの選手は互いに仲良しである必要は無いし、ましてやクラブを愛する必要などまったくない。彼らは非常に任務中心の人間で、自分の役割をこなすのだ。いかにも、テヴェスは90分間自分の全てを捧げるという自分の任務をマンチーニに邪魔された時、大きな怒りを抱いたのだろう。これは昨年ウェイン・ルーニーが突然マンチェスター・ユナイテッドを出てマンチェスター・シティに行きたい、と言った時のように、早々に忘れられる騒動のひとつに過ぎない。それでも、ナポリとバイエルンと対戦し、2試合で1ポイントというチャンピオンズリーグでの戦いぶりはあまり縁起の良いものではない。
この夏にマンチェスター・シティからバイエルン・ミュンヘンに加わったジェローム・ボアテングは、ミュンヘンでの勝利の後に「シティが決勝に進めるとは思えない。他に良いチームがある。例えばウチがそうさ」と語った。その通り、この素晴らしいバイエルンは来る5月のミュンヘンでのファイナルの気品高いホストになることだけを望んでいるわけではない。バイエルンは、既に昨年のドイツのチャンピオンであるボルシア・ドルトムントを遥か後方へと押しやった。バイエルンの前監督であるルイス・ファン・ハールはディフェンスをあまり気に掛けなかった。10月3日現在で、後任であるユップ・ハインケスのチームは11試合無失点だ。
警戒すべきバイエルン
歴史的にはバイエルンはドイツ・サッカーが強い時に繁栄する。クラブが1974年から76年に3つのヨーロッパカップを勝ち取ったのを覚えているだろうか?そして現在のチームは、ここ20年でベストの世代が中心になっている。マヌエル・ノイアー(彼が何もしなくて良いというわけではないが)、フィリップ・ラーム、ホルガー・バトシュトゥバー、バスティアン・シュバインシュタイガー、トニ・クロース、そしてマリオ・ゴメス。バイエルンに住むフランス人、フランク・リベリーはケガとセックス・スキャンダル、出て行ったファン・ハールとの対立で乗り遅れてしまった。他の外国人、オランダ人の「ガラスの男」アリエン・ロッベンは再び負傷したが、バイエルンがすぐに彼を必要としているようにも見えない。個のチームは彼無しでもブンデスリーガを制する力がある。ロッベンが必要となるのはゲームを決める顔見せか、次の春のチャンピオンズリーグだ。バイヤー・レヴァークーゼンでスポーツ・ディレクターを務めるルディ・フェラーは、「バイエルンはバルセロナやレアル・マドリーのレベルにある」と警告する。
もしバイエルンがファイナルに到達すれば、ホーム・アドバンテージがプラスに働くはずだ。それでもなお、来年5月19日にシャビやイニエスタ、ファブレガスよりも背の高い大男たちがビッグイヤーを掲げるとは、理性ある人なら誰も予想しないだろう。
++++
インテル時代のモウリーニョが取ったあの戦術じゃないとバルサは倒せない、とモウリーニョ自身がレアルで再確認しちまった感じだなー。
Saturday, October 15, 2011
リバプールを数字から変えるダミアン・コモッリ
大型補強で話題を呼んだリバプールを裏から取り仕切るのがフットボール・ディレクターのダミアン・コモッリ。データを重視するポリシーやこれまでの経緯、ケニー・ダルグリッシュとの関係などに触れるコラム。これが出たのはイギリスではなくアメリカのスポーツ雑誌『スポーツ・イラストレイテッド』。
++(以下、要訳)++
イギリスのフットボール雑誌である『Four Four Two』が毎年恒例のフットボール長者番付を発表したが、そこでリバプールを所有するフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)のオーナー、ジョン・W・ヘンリーは20位にランクされた。そして記事は、これまでに獲得した勝ち点と費やした金額から、勝ち点1あたりの金額を750万ポンドと算出した。
この計算がいい加減なのもので、ちょっとした遊びであることは『Four Four Two』も認めているが、『マネーボール』もしくは『サッカーノミクス』の具体的な適用例としては興味深いだろう。『マネーボール』はブラッド・ピット主演で映画化されたマイケル・ルイスの本で、オークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンが統計を駆使して評価を軽んじられてきた選手たちを発掘し、チームがチャンピオンになるのを助けた、という話だ。サイモン・クーパーらが著した『サッカーノミクス』は、フットボール版のそれとも言えるもので、データの分析がチームに競争力と違いをもたらすという話で、これは選手のスカウトだけでなく、契約管理からPK、ケガの予防まで着眼点は多岐にわたっている。
『Four Four Two』がデータが示すもの全てが役に立つわけではないと言っている、この点にはリバプールでディレクターを務めるダミアン・コモッリが反論するはずだ。
彼はフットボールにおけるデータの活用の福音的存在で、クラブにおける重要な決断が数字を見ずに行われることはもはや無い、と語っている。これが上手く機能する時には、大きな成功につながる。アンフィールドの新たな英雄となったルイス・スアレスの移籍金2,300万ポンドは、今ではバーゲン価格として広く認知されている。
今年初め、コモッリは『フランス・フットボール』誌に以下のように語っていた。「ルイスについては、過去3年間の数字に着目した。特に何試合プレーしたかという点が重要だった。怪我をしない選手を獲得したいからだ。それに、アシスト数やビッグクラブ相手のパフォーマンス、小さなクラブ相手のパフォーマンス、ヨーロッパでの戦いぶり、ホームとアウェーでのゴール数の違いなども考慮する」
左サイドバックのホセ・エンリケもデータで獲得を決めた例のひとつだ。リバプールはガエル・クリシー(カンヌで何試合か経験したのみの17歳当時の彼を発掘し、アーセナルに推薦したのは他ならぬコモッリだ)の獲得に失敗した後、コモッリがリストの選手をチェックしていた時にホセ・エンリケの数字がレポートの内容以上に印象的であることに気付いた。そして移籍金や給与の面でもクリシーより安かった。今季ここまで、ホセ・エンリケがリバプールで際立ったパフォーマンスを見せているひとりであることは、コモッリの手法が機能している更なる証左だろう。
話がそんなに簡単であれば良いのだが、そうでないケースもある。少なくとも現在のところは、1月に3,500万ポンドを費やしたアンディ・キャロルの例がそうだと言わざるを得ないだろう。加入以来17試合で4ゴールという数字で、全てが批判にさらされる。元々はキャロルでなくフェルナンド・トーレスをスアレスと並べてプレーさせることを想定していたコモッリは、この文脈からキャロルについて言及されることには大分苛立っているようだ。問題は、ある選手で上手く行くことが、他の選手ではそうとは限らない、ということだ。
さる5月に行われたインタビューでのコモッリの言葉を拾ってみよう。「これまで我々が着目してきたのは才能で、それ以上のものではなかった。しかし、我々が欲しいのは才能に正しい態度と知性が伴っている選手だ。彼はチームプレーができるか?チームに献身するための知性を兼ね備えているか?我々は、心理的な側面、つまり態度やメンタリティについても、これまで以上に着目する必要がある」。これがスアレスを獲得した理由を説明するとすれば、他クラブのスカウトが獲得を見送った理由として「態度とメンタリティ」を挙げているキャロルの獲得は若干の驚きだ。
オーナーのヘンリーは、キャロルの価値についてトーレス(5,000万ポンド)マイナス1,500万ポンドと見積もっており、コモッリを支持する面々も、スアレスとキャロルを獲得するのにかかったコストは、トーレスとライアン・バベルの放出で得た資金と同じだ、と尤もらしい擁護をする。しかし、これは一貫性に欠けかねない話だ。チェルシーが2,500万ポンドでトーレスを獲得したとしても、ニューカッスルは1,000万ポンドではキャロルを放出しなかっただろう。
ここでの魔法の言葉は「価値(value)」だ。「全ての原理原則は、価値を創り出すことであり、統計と比較して価値が軽んじられている選手たちを見つけ続けることだ」とコモッリはフランスの「ル・スペシャリテ」紙に話していたが、「テレグラフ」紙のポール・ケスコ主幹は「1月の移籍市場締切日にセンターフォワードを買おうとしている時には、そんな価値を明確に見出せるわけではない」と指摘する。
しかし、『マネーボール』の理論においても、巨額の投資を除外してはいない点にも着目すべきだろう(同じくヘンリーが所有するボストン・レッドソックスは、過去10年MLBの中で2番目に多くの資金を費やしている)。コモッリがキャロルとの契約にゴーサインを出したのは、22歳という年齢、イングランド籍、滅多にないフィジカルの強さから、既に重要なターゲットとして狙いを定めていたからだ。
コモッリ本人は、プロの選手としては実績を残せなかった。モナコのユースチームに在籍していたが、その将来はリリアン・テュラムやエマニュエル・プティらによって阻まれた。19歳にしてモナコのU-16のチームを指導し始め、その後当時名古屋グランパスエイトで指揮をとっていたアーセン・ヴェンゲルに説得され、名古屋のU-18でゴールキーパーの指導にあたった。1年後、コモッリはアーセナルでヴェンゲルに仕えることになり、ヨーロッパをカバーするスカウトとなった。
コモッリの統計への情熱に火をつけたのは、他ならぬヴェンゲルだった。ヴェンゲルがマンチェスター・ユナイテッドが相手陣内で一番のパス成功率を誇り、ロイ・キーンがプレミアで一番の1対1で勝てる選手であることに気付くと、コモッリに「それがどうしてか、お前なら分かるだろう」と伝えた。
「答えは『マネーボール』にあった。まさに全てはそこにつながっていた」と『フランス・フットボール』誌に語った。「知人のお陰で、その本のヒーローであるビリー・ビーンとも友人になり、2005年以降はまさにこの仕事にどっぷりだ」ビーンとの友情が深まる中、2005年9月にコモッリはスパーズのフットボール・ディレクターに就任した。ホワイト・ハート・レーンでの3年間でコモッリは26人の選手を獲得し、そのうち8人は現在もスパーズにいる。この成功例には、ギャレス・ベイル、ルカ・モドリッチ、ベノワ・アス・エコトが含まれ、失敗と言えそうなのは、デイビッド・ベントリー、ジルベルト、そしてホッサム・ガリーなどだ。
『Pay as You Play』の著者であるポール・トムキンスは、著書の中でスパーズでのコモッリの選手獲得を分析し、30%が大きな利益を生み、25%は大損、残りはその中間と結論付け、「全体として2,650万ポンドの純利益を生んだ」と見ている。このコモッリのホワイト・ハート・レーンでの実績と、ビーン本人からの推薦で、ヘンリーは彼を雇うことに確信を得た。
『サッカーノミクス』の著者であるサイモン・クーパーは、監督のケニー・ダルグリッシュとの間に軋轢があると指摘するが、これをコモッリは否定している。クーパーは先週『The Score』誌に「コモッリはビーンに非常に近く、マネーボールをフットボールの世界に持ち込んでいるが、ダルグリッシュは直感に優れた監督だ」と述べている。
当然ながら、コモッリは2人の関係が悪ければこの夏の選手獲得はほとんど実現しなかったハズだ、と主張している。選手たちを獲得した上で、リバプールは14人を売却し、9人をローンに出した。クリスティアン・ポウルセンやミラン・ヨバノビッチのように保有権を手放したケースも、ジョー・コールのように依然として給与を支払っている場合もある。
コモッリをよく知るフランスの記者は、この夏の契約は高価な妥協だと見ている。コモッリは価値の向上が見込める若い選手が欲しかった一方で、ダルグリッシュは英国籍の選手を望んだ。結果はおよそ5,000万ポンドをジョーダン・ヘンダーソン、チャーリー・アダム、スチュワート・ダウニングに費やすことになった。
いずれにしても、コモッリは権力的な苦しみは理解している。以前のサンテティエンヌでの仕事でも、コモッリは共同オーナーたちの間に挟まって身動きが取れなくなった。ベルナール・カイアッゾは有名選手を呼ぶことで集まる注目を喜ぶビジネスマン、ローラン・ロメイエは努力を惜しまない選手が好みで、サポーターのような口ぶりで裏方に徹するタイプだった。2人は口論を続け、危うく降格するところまで落ちてしまった。コモッリが去った後にクラブは体制を改め、結果も改善していった。
トッテナム・ホットスパーの監督だったマルティン・ヨルも彼のスパーズでの失敗はコモッリのせいだと糾弾している。「責任はコモッリにあり、フットボールに関する大半の権限は彼が握っていた」フラムの監督に就任する際の会見でヨルはこう述べていた。ヨルの意思に反してコモッリがダレン・ベントやディエィエ・ゾコラを買ったのは事実だが、クラブはそれでも2シーズン続けて5位で終えた。2007年の10月にヨルが解任されたのは、ディミタール・ベルバトフと騒動になり、開幕10試合で1勝という過去19年で最低のスタートの後だ。コモッリが後任に選んだのはファンデ・ラモス(ヨル時代のスパーズで苦しんでいたフレデリック・カヌーテをセビージャに呼んだ過去がある)で、カーリングカップのタイトルを獲りはしたものの、13ヶ月後にラモスもコモッリもクラブを去った。
もうひとつの教訓はヴェンゲル時代のもので、同じく「サッカーノミクス」に関わるものだ。それは、ベストな選手は、その選手がいる間に代わりを連れてくる、というものだ(実際、ヴェンゲルはティエリ・アンリが去る前にエマニュエル・アデバヨル、デニス・ベルカンプが去る前にロビン・ファン・ペルシ、パトリック・ヴィエラが去る前にマシュー・フラミニを獲得した。同様にセスク・ファブレガスが出て行く前に、ジャック・ウィルシャーを起用し始めた)。トーレスの放出はその意味で早過ぎたが、ヘンダーソンがスティーブン・ジェラードの、セバスチャン・コアテスがジェイミー・キャラガーの後釜になれるかは、これから次第だろう。
仮にスチュワート・ダウニングを成功例としてスアレスやホセ・エンリケに加えるなら、失敗例としてキャロルの話を持ち出される毎のコモッリの反応には同情を覚えるだろう。しかし、彼が好む好まざるに関わらず、失敗で記憶に残ってしまうのがスポーツ・ディレクターの運命であることはコモッリ自身も分かっている。
そしてたとえキャロルが実力を証明するのに苦しんでいるとしても、コモッリはピッチの内外でリバプールに利益をもたらしている。FSGがクラブを買収して1年となるこの土曜日、リバプールはアンフィールドにマンチェスター・ユナイテッドを迎える。1年が過ぎ、クラブのムードは改善し、メンバーは整備され、将来は明るい。コモッリは彼の役割を果たしているのだ。
++++
前にサイモン・クーパーの似たような記事をピックアップしてたんだけど、コモッリに焦点が当たってるのも面白いと思って、ユナイテッド戦前にガガっとまとめ。彼がヴェンゲルに呼ばれて日本にいたのは知らなかった。
++(以下、要訳)++
イギリスのフットボール雑誌である『Four Four Two』が毎年恒例のフットボール長者番付を発表したが、そこでリバプールを所有するフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)のオーナー、ジョン・W・ヘンリーは20位にランクされた。そして記事は、これまでに獲得した勝ち点と費やした金額から、勝ち点1あたりの金額を750万ポンドと算出した。
この計算がいい加減なのもので、ちょっとした遊びであることは『Four Four Two』も認めているが、『マネーボール』もしくは『サッカーノミクス』の具体的な適用例としては興味深いだろう。『マネーボール』はブラッド・ピット主演で映画化されたマイケル・ルイスの本で、オークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンが統計を駆使して評価を軽んじられてきた選手たちを発掘し、チームがチャンピオンになるのを助けた、という話だ。サイモン・クーパーらが著した『サッカーノミクス』は、フットボール版のそれとも言えるもので、データの分析がチームに競争力と違いをもたらすという話で、これは選手のスカウトだけでなく、契約管理からPK、ケガの予防まで着眼点は多岐にわたっている。
『Four Four Two』がデータが示すもの全てが役に立つわけではないと言っている、この点にはリバプールでディレクターを務めるダミアン・コモッリが反論するはずだ。
彼はフットボールにおけるデータの活用の福音的存在で、クラブにおける重要な決断が数字を見ずに行われることはもはや無い、と語っている。これが上手く機能する時には、大きな成功につながる。アンフィールドの新たな英雄となったルイス・スアレスの移籍金2,300万ポンドは、今ではバーゲン価格として広く認知されている。
今年初め、コモッリは『フランス・フットボール』誌に以下のように語っていた。「ルイスについては、過去3年間の数字に着目した。特に何試合プレーしたかという点が重要だった。怪我をしない選手を獲得したいからだ。それに、アシスト数やビッグクラブ相手のパフォーマンス、小さなクラブ相手のパフォーマンス、ヨーロッパでの戦いぶり、ホームとアウェーでのゴール数の違いなども考慮する」
左サイドバックのホセ・エンリケもデータで獲得を決めた例のひとつだ。リバプールはガエル・クリシー(カンヌで何試合か経験したのみの17歳当時の彼を発掘し、アーセナルに推薦したのは他ならぬコモッリだ)の獲得に失敗した後、コモッリがリストの選手をチェックしていた時にホセ・エンリケの数字がレポートの内容以上に印象的であることに気付いた。そして移籍金や給与の面でもクリシーより安かった。今季ここまで、ホセ・エンリケがリバプールで際立ったパフォーマンスを見せているひとりであることは、コモッリの手法が機能している更なる証左だろう。
話がそんなに簡単であれば良いのだが、そうでないケースもある。少なくとも現在のところは、1月に3,500万ポンドを費やしたアンディ・キャロルの例がそうだと言わざるを得ないだろう。加入以来17試合で4ゴールという数字で、全てが批判にさらされる。元々はキャロルでなくフェルナンド・トーレスをスアレスと並べてプレーさせることを想定していたコモッリは、この文脈からキャロルについて言及されることには大分苛立っているようだ。問題は、ある選手で上手く行くことが、他の選手ではそうとは限らない、ということだ。
さる5月に行われたインタビューでのコモッリの言葉を拾ってみよう。「これまで我々が着目してきたのは才能で、それ以上のものではなかった。しかし、我々が欲しいのは才能に正しい態度と知性が伴っている選手だ。彼はチームプレーができるか?チームに献身するための知性を兼ね備えているか?我々は、心理的な側面、つまり態度やメンタリティについても、これまで以上に着目する必要がある」。これがスアレスを獲得した理由を説明するとすれば、他クラブのスカウトが獲得を見送った理由として「態度とメンタリティ」を挙げているキャロルの獲得は若干の驚きだ。
オーナーのヘンリーは、キャロルの価値についてトーレス(5,000万ポンド)マイナス1,500万ポンドと見積もっており、コモッリを支持する面々も、スアレスとキャロルを獲得するのにかかったコストは、トーレスとライアン・バベルの放出で得た資金と同じだ、と尤もらしい擁護をする。しかし、これは一貫性に欠けかねない話だ。チェルシーが2,500万ポンドでトーレスを獲得したとしても、ニューカッスルは1,000万ポンドではキャロルを放出しなかっただろう。
ここでの魔法の言葉は「価値(value)」だ。「全ての原理原則は、価値を創り出すことであり、統計と比較して価値が軽んじられている選手たちを見つけ続けることだ」とコモッリはフランスの「ル・スペシャリテ」紙に話していたが、「テレグラフ」紙のポール・ケスコ主幹は「1月の移籍市場締切日にセンターフォワードを買おうとしている時には、そんな価値を明確に見出せるわけではない」と指摘する。
しかし、『マネーボール』の理論においても、巨額の投資を除外してはいない点にも着目すべきだろう(同じくヘンリーが所有するボストン・レッドソックスは、過去10年MLBの中で2番目に多くの資金を費やしている)。コモッリがキャロルとの契約にゴーサインを出したのは、22歳という年齢、イングランド籍、滅多にないフィジカルの強さから、既に重要なターゲットとして狙いを定めていたからだ。
コモッリ本人は、プロの選手としては実績を残せなかった。モナコのユースチームに在籍していたが、その将来はリリアン・テュラムやエマニュエル・プティらによって阻まれた。19歳にしてモナコのU-16のチームを指導し始め、その後当時名古屋グランパスエイトで指揮をとっていたアーセン・ヴェンゲルに説得され、名古屋のU-18でゴールキーパーの指導にあたった。1年後、コモッリはアーセナルでヴェンゲルに仕えることになり、ヨーロッパをカバーするスカウトとなった。
コモッリの統計への情熱に火をつけたのは、他ならぬヴェンゲルだった。ヴェンゲルがマンチェスター・ユナイテッドが相手陣内で一番のパス成功率を誇り、ロイ・キーンがプレミアで一番の1対1で勝てる選手であることに気付くと、コモッリに「それがどうしてか、お前なら分かるだろう」と伝えた。
「答えは『マネーボール』にあった。まさに全てはそこにつながっていた」と『フランス・フットボール』誌に語った。「知人のお陰で、その本のヒーローであるビリー・ビーンとも友人になり、2005年以降はまさにこの仕事にどっぷりだ」ビーンとの友情が深まる中、2005年9月にコモッリはスパーズのフットボール・ディレクターに就任した。ホワイト・ハート・レーンでの3年間でコモッリは26人の選手を獲得し、そのうち8人は現在もスパーズにいる。この成功例には、ギャレス・ベイル、ルカ・モドリッチ、ベノワ・アス・エコトが含まれ、失敗と言えそうなのは、デイビッド・ベントリー、ジルベルト、そしてホッサム・ガリーなどだ。
『Pay as You Play』の著者であるポール・トムキンスは、著書の中でスパーズでのコモッリの選手獲得を分析し、30%が大きな利益を生み、25%は大損、残りはその中間と結論付け、「全体として2,650万ポンドの純利益を生んだ」と見ている。このコモッリのホワイト・ハート・レーンでの実績と、ビーン本人からの推薦で、ヘンリーは彼を雇うことに確信を得た。
『サッカーノミクス』の著者であるサイモン・クーパーは、監督のケニー・ダルグリッシュとの間に軋轢があると指摘するが、これをコモッリは否定している。クーパーは先週『The Score』誌に「コモッリはビーンに非常に近く、マネーボールをフットボールの世界に持ち込んでいるが、ダルグリッシュは直感に優れた監督だ」と述べている。
当然ながら、コモッリは2人の関係が悪ければこの夏の選手獲得はほとんど実現しなかったハズだ、と主張している。選手たちを獲得した上で、リバプールは14人を売却し、9人をローンに出した。クリスティアン・ポウルセンやミラン・ヨバノビッチのように保有権を手放したケースも、ジョー・コールのように依然として給与を支払っている場合もある。
コモッリをよく知るフランスの記者は、この夏の契約は高価な妥協だと見ている。コモッリは価値の向上が見込める若い選手が欲しかった一方で、ダルグリッシュは英国籍の選手を望んだ。結果はおよそ5,000万ポンドをジョーダン・ヘンダーソン、チャーリー・アダム、スチュワート・ダウニングに費やすことになった。
いずれにしても、コモッリは権力的な苦しみは理解している。以前のサンテティエンヌでの仕事でも、コモッリは共同オーナーたちの間に挟まって身動きが取れなくなった。ベルナール・カイアッゾは有名選手を呼ぶことで集まる注目を喜ぶビジネスマン、ローラン・ロメイエは努力を惜しまない選手が好みで、サポーターのような口ぶりで裏方に徹するタイプだった。2人は口論を続け、危うく降格するところまで落ちてしまった。コモッリが去った後にクラブは体制を改め、結果も改善していった。
トッテナム・ホットスパーの監督だったマルティン・ヨルも彼のスパーズでの失敗はコモッリのせいだと糾弾している。「責任はコモッリにあり、フットボールに関する大半の権限は彼が握っていた」フラムの監督に就任する際の会見でヨルはこう述べていた。ヨルの意思に反してコモッリがダレン・ベントやディエィエ・ゾコラを買ったのは事実だが、クラブはそれでも2シーズン続けて5位で終えた。2007年の10月にヨルが解任されたのは、ディミタール・ベルバトフと騒動になり、開幕10試合で1勝という過去19年で最低のスタートの後だ。コモッリが後任に選んだのはファンデ・ラモス(ヨル時代のスパーズで苦しんでいたフレデリック・カヌーテをセビージャに呼んだ過去がある)で、カーリングカップのタイトルを獲りはしたものの、13ヶ月後にラモスもコモッリもクラブを去った。
もうひとつの教訓はヴェンゲル時代のもので、同じく「サッカーノミクス」に関わるものだ。それは、ベストな選手は、その選手がいる間に代わりを連れてくる、というものだ(実際、ヴェンゲルはティエリ・アンリが去る前にエマニュエル・アデバヨル、デニス・ベルカンプが去る前にロビン・ファン・ペルシ、パトリック・ヴィエラが去る前にマシュー・フラミニを獲得した。同様にセスク・ファブレガスが出て行く前に、ジャック・ウィルシャーを起用し始めた)。トーレスの放出はその意味で早過ぎたが、ヘンダーソンがスティーブン・ジェラードの、セバスチャン・コアテスがジェイミー・キャラガーの後釜になれるかは、これから次第だろう。
仮にスチュワート・ダウニングを成功例としてスアレスやホセ・エンリケに加えるなら、失敗例としてキャロルの話を持ち出される毎のコモッリの反応には同情を覚えるだろう。しかし、彼が好む好まざるに関わらず、失敗で記憶に残ってしまうのがスポーツ・ディレクターの運命であることはコモッリ自身も分かっている。
そしてたとえキャロルが実力を証明するのに苦しんでいるとしても、コモッリはピッチの内外でリバプールに利益をもたらしている。FSGがクラブを買収して1年となるこの土曜日、リバプールはアンフィールドにマンチェスター・ユナイテッドを迎える。1年が過ぎ、クラブのムードは改善し、メンバーは整備され、将来は明るい。コモッリは彼の役割を果たしているのだ。
++++
前にサイモン・クーパーの似たような記事をピックアップしてたんだけど、コモッリに焦点が当たってるのも面白いと思って、ユナイテッド戦前にガガっとまとめ。彼がヴェンゲルに呼ばれて日本にいたのは知らなかった。
Monday, October 10, 2011
プレッシャーに苛まれる5人の監督たち
どのリーグでも起きる序盤戦の不振からの監督交代。ここまでプレミアリーグでは無風が続くが、インターナショナル・ウィークを挟むことから動きのあるクラブも出てくる可能性も指摘されている。それを具体的に5人の候補に絞って焦点を当てたのが「ガーディアン」紙のルイーズ・テイラー記者。
++(以下、要訳)++
代表の試合が組まれるインターナショナル・ウィークは、苦戦している監督たちにとっては危険な時期だ。国内の日程が小休止となり、クラブの会長たちは今の監督を更迭しても後任の救世主的な監督にスムーズに引き継げるからだ。その脅威は、クラブが特に名の通った有益な監督を求めているなら、尚更であろう。もしマーク・ヒューズやマーティン・オニールがどのクラブでも話題に上がっていないとしたら驚きだ。
プレミアリーグが第7節まで終了したものの、まだシーズンの先が長い現在であれば、この中断期間は何らかの変更を加えるにはちょうど良い時期だ。そしてクラブによってはファンが既に変化を求めているところもある。自分の首が飛ぶ可能性すらある流れでは、監督たちは彼らの関与を無視するわけにはいかない。かつてケヴィン・キーガンはこう語っていた。「監督になればいつだって銃口を頭に突き付けられている。問題はそこに弾丸が装填されているかどうかだ」
スティーブ・キーン(ブラックバーン・ローバーズ)
解任のシナリオ:絶え間なく前向きな発言を繰り返す姿は、彼をフットボールの監督版のデイビッド・ブレント(TVドラマ『The Office』)にし、もはや実際にブラックバーンの面々のモチベーションを成功裏に高めているとは思えない。プレミアリーグ21試合でわずかに3勝、イーウッド・パークの観衆たちは敵対心をもつようになり、次第に毒気を帯びてきた雰囲気が良い結果につながることは無い。キーンのこれまでの監督経験の無さは、そもそも彼がアラーダイスの後任に指名されるべきではなかったことを示唆している。
続投のシナリオ:キーンが今週のインドへのミニ・ツアーを率いていることから、彼が即座に解任されることは考えにくい。ブラックバーンのオーナーであるヴェンキーズは彼の監督能力に信頼を寄せていて、彼をサポートするフットボール・ディレクターを呼ぶことで、最大限の結果を得ようとするだろう。ロナウジーニョを獲得する、というような派手な素振りをしてきたが、実際はキーンはフィル・ジョーンズのような主力を失い、移籍市場のバーゲン品での補強を強いられている。
最初の解任劇となるオッズ:4-9(1.44倍)
スティーブ・ブルース(サンダーランド)
解任のシナリオ:元旦から数えてここまでホームで2勝。ローンも含めて2年間で30人の選手を獲得してきた監督としては切れ味に欠ける結果と言える。疑問符が付けられている点は、彼の戦術面での知性と選手交代策、頻繁に起こる選手との衝突、怪我の選手の復帰を急ぐ傾向、21世紀型の監督方法への適応力、そして論争を呼びがちなイングランド北東部に対する偏見とプレッシャーなど、多岐にわたる。
続投のシナリオ:ブルースは条件の良い延長契約を2月に結んだばかりであり、彼を解任するのは非常に費用がかさむ。この夏には10人の選手を補強したが、彼らが馴染むには時間も必要だ。サンダーランドのオーナーであるエリス・ショートは、ブルースがチームのミッシング・リンクと考えていた左ウィングにチャールズ・エンゾグビアを買うことを許さなかった。ダレン・ベント、ジョーダン・ヘンダーソン、ケンウィン・ジョーンズと失ってきたブルースは、移籍市場でも難しい時期を過ごしている。
最初の解任劇となるオッズ:7-2(4.5倍)
アーセン・ヴェンゲル(アーセナル)
解任のシナリオ:プレミア第7節まで終えて、2勝4敗1分け。アーセナルのようなクラブではこの数字は危機以外の何物でもなく、この15シーズンで初めてチャンピオンズリーグに出場できない恐れがでてきた。誰ひとりとして、ベンゲルであっても、代えの利かない人間などおらず、6シーズン続いた無冠にセスク・ファブレガスとサミ・ナスリの代役を見つけられなかった失態で、ヴェンゲルは長居をしているように映る。明白になったディフェンス面でのコーチング不足は若手とベテランのバランスの悪さで一層際立っている。
続投のシナリオ:チーム全体が悪い日に遭遇してしまったとみなすなら、特に、チームの倹約的なやりくりが上手く行っていることが分かった後であるだけに、ヴェンゲルにはもうひとシーズンチャンスがあるだろう。加えて言うならば、一体誰がヴェンゲルの後を継ぐのか?アーセナルは自分たちが何を望んでいるかについて、注意深くなる必要がある。
最初の解任劇となるオッズ:12-1(13倍)
オーウェン・コイル(ボルトン・ワンダラーズ)
解任のシナリオ:現在順位表の一番底。その脆い守備でイースター以来リーグ戦はここ12試合で11敗。ホーム6連敗はここ109年で最悪となる開幕での躓きを加速させ、ファンの中にはあのギャリー・メグソン時代にノスタルジアを感じ始める者もいる。昨シーズンの攻撃面での素晴らしさが守備の脆さを覆い隠していただけだったのだ、と。
続投のシナリオ:以上のことを考慮しても、コイルのここ10年のキャリアは上向きのものであった。ボルトンの幹部は、依然として人気のある元クラブの元ストライカーでもあるコイルに時間の猶予を与える余裕を持つべきだろう。ヨアン・エルマンデルやダニエル・スタルリッジのようなストライカーの代役を連れてこられなかったのはコイルの責任ではない。重要な中盤の駒であるスチュワート・ホウルデンが膝のケガで3月まで使えないことについても同様だ。
最初の解任劇となるオッズ:16-1(17倍)
ロベルト・マルチネス(ウィガン・アスレチック)
解任のシナリオ:リーグとカップ合わせて5連敗は、マルティネスが言っているほど良いフットボールが展開されていないことの証明だ。ディフェンスはしばしばナイーブであり、精神的にも脆い。明らかなのは二部のチャンピオンシップに向かって滑り落ちていっているということだ。マルティネスが非常に良い監督であったとしても、やはりウィガンにはマッチしていない。
続投のシナリオ:かつてウィガンのミッドフィルダーとしてプレーしたマルティネスの気高い忠誠心がオフのアストン・ヴィラからのオファーを断った、という話は相応に報いられるべきだろう。アストン・ヴィラに移籍したチャールズ・エンゾグビアやマンチェスター・ユナイテッドに復帰したトム・クレバリの代役はまだ十分ではない。マルティネスが追い求める哲学は魅力溢れるフットボールを生んでいるが、会長のデイブ・ウィーランはマルティネスの総合力と知性に比肩する後継者を見つけるのには苦労するだろう。
最初の解任劇となるオッズ:33-1(34倍)
++++
このインターバルの間に出てきたのは「マーティン・オニールがブルースの後任に、との打診を受けた」という記事。それに合わせて、ブルースのオッズが下がるといういかにもな展開。現実的にはもう少し様子を見ると思うけど…。
++(以下、要訳)++
代表の試合が組まれるインターナショナル・ウィークは、苦戦している監督たちにとっては危険な時期だ。国内の日程が小休止となり、クラブの会長たちは今の監督を更迭しても後任の救世主的な監督にスムーズに引き継げるからだ。その脅威は、クラブが特に名の通った有益な監督を求めているなら、尚更であろう。もしマーク・ヒューズやマーティン・オニールがどのクラブでも話題に上がっていないとしたら驚きだ。
プレミアリーグが第7節まで終了したものの、まだシーズンの先が長い現在であれば、この中断期間は何らかの変更を加えるにはちょうど良い時期だ。そしてクラブによってはファンが既に変化を求めているところもある。自分の首が飛ぶ可能性すらある流れでは、監督たちは彼らの関与を無視するわけにはいかない。かつてケヴィン・キーガンはこう語っていた。「監督になればいつだって銃口を頭に突き付けられている。問題はそこに弾丸が装填されているかどうかだ」
スティーブ・キーン(ブラックバーン・ローバーズ)
解任のシナリオ:絶え間なく前向きな発言を繰り返す姿は、彼をフットボールの監督版のデイビッド・ブレント(TVドラマ『The Office』)にし、もはや実際にブラックバーンの面々のモチベーションを成功裏に高めているとは思えない。プレミアリーグ21試合でわずかに3勝、イーウッド・パークの観衆たちは敵対心をもつようになり、次第に毒気を帯びてきた雰囲気が良い結果につながることは無い。キーンのこれまでの監督経験の無さは、そもそも彼がアラーダイスの後任に指名されるべきではなかったことを示唆している。
続投のシナリオ:キーンが今週のインドへのミニ・ツアーを率いていることから、彼が即座に解任されることは考えにくい。ブラックバーンのオーナーであるヴェンキーズは彼の監督能力に信頼を寄せていて、彼をサポートするフットボール・ディレクターを呼ぶことで、最大限の結果を得ようとするだろう。ロナウジーニョを獲得する、というような派手な素振りをしてきたが、実際はキーンはフィル・ジョーンズのような主力を失い、移籍市場のバーゲン品での補強を強いられている。
最初の解任劇となるオッズ:4-9(1.44倍)
スティーブ・ブルース(サンダーランド)
解任のシナリオ:元旦から数えてここまでホームで2勝。ローンも含めて2年間で30人の選手を獲得してきた監督としては切れ味に欠ける結果と言える。疑問符が付けられている点は、彼の戦術面での知性と選手交代策、頻繁に起こる選手との衝突、怪我の選手の復帰を急ぐ傾向、21世紀型の監督方法への適応力、そして論争を呼びがちなイングランド北東部に対する偏見とプレッシャーなど、多岐にわたる。
続投のシナリオ:ブルースは条件の良い延長契約を2月に結んだばかりであり、彼を解任するのは非常に費用がかさむ。この夏には10人の選手を補強したが、彼らが馴染むには時間も必要だ。サンダーランドのオーナーであるエリス・ショートは、ブルースがチームのミッシング・リンクと考えていた左ウィングにチャールズ・エンゾグビアを買うことを許さなかった。ダレン・ベント、ジョーダン・ヘンダーソン、ケンウィン・ジョーンズと失ってきたブルースは、移籍市場でも難しい時期を過ごしている。
最初の解任劇となるオッズ:7-2(4.5倍)
アーセン・ヴェンゲル(アーセナル)
解任のシナリオ:プレミア第7節まで終えて、2勝4敗1分け。アーセナルのようなクラブではこの数字は危機以外の何物でもなく、この15シーズンで初めてチャンピオンズリーグに出場できない恐れがでてきた。誰ひとりとして、ベンゲルであっても、代えの利かない人間などおらず、6シーズン続いた無冠にセスク・ファブレガスとサミ・ナスリの代役を見つけられなかった失態で、ヴェンゲルは長居をしているように映る。明白になったディフェンス面でのコーチング不足は若手とベテランのバランスの悪さで一層際立っている。
続投のシナリオ:チーム全体が悪い日に遭遇してしまったとみなすなら、特に、チームの倹約的なやりくりが上手く行っていることが分かった後であるだけに、ヴェンゲルにはもうひとシーズンチャンスがあるだろう。加えて言うならば、一体誰がヴェンゲルの後を継ぐのか?アーセナルは自分たちが何を望んでいるかについて、注意深くなる必要がある。
最初の解任劇となるオッズ:12-1(13倍)
オーウェン・コイル(ボルトン・ワンダラーズ)
解任のシナリオ:現在順位表の一番底。その脆い守備でイースター以来リーグ戦はここ12試合で11敗。ホーム6連敗はここ109年で最悪となる開幕での躓きを加速させ、ファンの中にはあのギャリー・メグソン時代にノスタルジアを感じ始める者もいる。昨シーズンの攻撃面での素晴らしさが守備の脆さを覆い隠していただけだったのだ、と。
続投のシナリオ:以上のことを考慮しても、コイルのここ10年のキャリアは上向きのものであった。ボルトンの幹部は、依然として人気のある元クラブの元ストライカーでもあるコイルに時間の猶予を与える余裕を持つべきだろう。ヨアン・エルマンデルやダニエル・スタルリッジのようなストライカーの代役を連れてこられなかったのはコイルの責任ではない。重要な中盤の駒であるスチュワート・ホウルデンが膝のケガで3月まで使えないことについても同様だ。
最初の解任劇となるオッズ:16-1(17倍)
ロベルト・マルチネス(ウィガン・アスレチック)
解任のシナリオ:リーグとカップ合わせて5連敗は、マルティネスが言っているほど良いフットボールが展開されていないことの証明だ。ディフェンスはしばしばナイーブであり、精神的にも脆い。明らかなのは二部のチャンピオンシップに向かって滑り落ちていっているということだ。マルティネスが非常に良い監督であったとしても、やはりウィガンにはマッチしていない。
続投のシナリオ:かつてウィガンのミッドフィルダーとしてプレーしたマルティネスの気高い忠誠心がオフのアストン・ヴィラからのオファーを断った、という話は相応に報いられるべきだろう。アストン・ヴィラに移籍したチャールズ・エンゾグビアやマンチェスター・ユナイテッドに復帰したトム・クレバリの代役はまだ十分ではない。マルティネスが追い求める哲学は魅力溢れるフットボールを生んでいるが、会長のデイブ・ウィーランはマルティネスの総合力と知性に比肩する後継者を見つけるのには苦労するだろう。
最初の解任劇となるオッズ:33-1(34倍)
++++
このインターバルの間に出てきたのは「マーティン・オニールがブルースの後任に、との打診を受けた」という記事。それに合わせて、ブルースのオッズが下がるといういかにもな展開。現実的にはもう少し様子を見ると思うけど…。
Friday, October 7, 2011
テヴェスの出場拒否 - それがどうした?
ロベルト・マンチーニの怒りのコメントも含め、一大騒動となったテヴェスの出場拒否事件。メディアは高給を受け取りながらあの振る舞いをしたテヴェスを責める論調だが、TV局「Channel 4」のインタビューに応えたサイモン・クーパーは「それがどうした」というスタンスで一石を投じている。
++(以下、要訳)++
0-2とバイエルン・ミュンヘンにリードを許した後半10分過ぎ、カルロス・テヴェスは交代出場を拒んで(ような仕草)ロベルト・マンチーニに歯ぎしりさせていた。マンチーニは後にこの振る舞いを「受け入れ難いもの」と評し、過去2度の移籍市場で退団を声高に求めてきたことも踏まえ、テヴェスは二度とシティでプレーしない、と語った。
20万ポンドを超える週給を受け取るテヴェスは、他の説明を補うことなく「プレーを拒否してはいない」と主張し、「クラブでの義務に従う」準備があるとも述べている。しかし、そんなテヴェスの主張は誰の耳にも届きはせず、彼には激しい非難の声が上がっている。
グレアム・スーネスは「私は不信感でいっぱいだ。なぜ選手がチームメイトを助けたいと思わないのか?どれだけ自分勝手なんだ?先発じゃなければもう不機嫌なのか?すぐにでもマンチェスターからできるだけ遠ざけるべき。彼は腐ったリンゴで、チームに蔓延しかねない。彼はフットボールの恥辱で、普通の人間であれば誰もが今のフットボール界の人間の振る舞いとして誤りだと考えることを全て具現化している」と声を荒げ、他の識者もテヴェスをリザーブに送るか契約の解消を図るべきと主張した。
しかし、『フットボールの敵』の著者で「ファイナンシャル・タイムス」紙でコラムニストを務めるサイモン・クーパーはこの騒動と辛辣な言葉に驚いたと述べている。
「これが何故ここまでのショックを人々に与えたのか、そして何故これがそこまで酷いことなのか、理解に苦しむ。ボスマン・ルール以降、選手たちの力はとっくに監督の力を超えている。平均的な選手でなく、ベストな選手たちの話だ。皆プライドや情熱、忠誠心について語るが、そんなものがこの世界の一部であるという意見には賛同しかねる」
「クラブは雇用主。仕事を楽しむことはあるだろうが、自分が勤める銀行を愛するだろうか?恐らく違うだろう。良いオファーをくれる銀行があったとして、それでも忠誠心を理由にその銀行に残るだろうか?これも恐らくノーだろう」
「人々はトム・フィニーやボビー・ムーアを忠実な選手の代表格に挙げる。しかし、彼らがクラブに留まったのはその必要があったから。彼らが今のフットボール界にいたなら、忠実にはならなかったはずだ」
その通りだろう。トッテナム・ホットスパーの監督であるハリー・レドナップはテヴェスの行動を「信じられない」と評し、以下のように語っている。「シティのレジェンドであるマルコム・アリソンやマイク・サマビーが、選手がチャンピオンズリーグで出場を拒むことがあると想像しただろうか、と考えてしまうね。本当に信じられない」
選手が途中出場を拒んだのは初めてだったかもしれないが、チームに従わないのは初めてのケースではない。選手がトレーニングを拒否するのは移籍の前兆だ。実際、レドナップ自身のストライカーであるエマニュエル・アデバヨルも、マンチェスター・シティからの移籍を求めてチームとのトレーニングを拒んだ。
クーパーによれば、こうしたストライキはフットボールの世界においては何もテヴェスやアデバヨルに限ったことではなく、この種の論争を呼んだ選手のリストは非常に長いものになる。世界最高の選手でさえ、浅薄な反乱と隣り合わせなのだという。
「昨シーズンのリーガの終盤、リオネル・メッシは監督が彼を休ませたいと考えたためにベンチに座っていた。すると翌日彼はトレーニングを拒否した。ただ練習場に現れないのだ。これは純然たる不服従だが、一体何ができる?トップクラスの選手は今や好きなようにできるのだ」
PFA(フットボール選手協会)のゴードン・テイラーは今後はこの傾向に益々拍車がかかると見ている。「トップクラスの選手が感情を露にするケースは増えてくるだろう。自分は下げられるべき存在ではない、もしくは現状を受け入れるよう求められるのは我慢ならない、そう考えるようになる。しかし、これはチームが肥大化していく中で避けられないことであって、プロフェッショナルに振る舞うべきなのだ」
クーパーは、レアル・マドリーでGMを務め、選手の力の強大化を嘆いていたホルヘ・バルダーノに言及してこう述べている。「彼は選手に話すだけでもいかに難しいかを教えてくれた。監督が選手を叱ろうと思っても、しまいには選手でなく代理人か弁護士、父親に言うハメになる」
まさに、マンチーニが休暇中のテヴェスに連絡を取ろうと電話をかけた際も、テヴェスは電源を切ってしまった。クーパーが言うには、時代錯誤のレンズでフットボールを見るのは止める時期に来ていて、もはや忠誠心や服従、奉仕といった考えは存在しない、という。かつてはあったとしても。
「選手たちは自分のためにプレーをする。誰にでも追い求めたい自分のキャリアがあり、できれば然るべきクラブに然るべき時期にいたいと考えるだろう。それは必ずしもエゴではなく、個人のキャリアだ。誰一人としてシティのためにはプレーしていないし、それはマンチェスター・ユナイテッドだろうが他のどのクラブでも同じだ。ゲームのルールは変わってしまっていて、それは随分前に変わってしまっているのだ」
++++
さもありなん。しかしシニカル。
++(以下、要訳)++
0-2とバイエルン・ミュンヘンにリードを許した後半10分過ぎ、カルロス・テヴェスは交代出場を拒んで(ような仕草)ロベルト・マンチーニに歯ぎしりさせていた。マンチーニは後にこの振る舞いを「受け入れ難いもの」と評し、過去2度の移籍市場で退団を声高に求めてきたことも踏まえ、テヴェスは二度とシティでプレーしない、と語った。
20万ポンドを超える週給を受け取るテヴェスは、他の説明を補うことなく「プレーを拒否してはいない」と主張し、「クラブでの義務に従う」準備があるとも述べている。しかし、そんなテヴェスの主張は誰の耳にも届きはせず、彼には激しい非難の声が上がっている。
グレアム・スーネスは「私は不信感でいっぱいだ。なぜ選手がチームメイトを助けたいと思わないのか?どれだけ自分勝手なんだ?先発じゃなければもう不機嫌なのか?すぐにでもマンチェスターからできるだけ遠ざけるべき。彼は腐ったリンゴで、チームに蔓延しかねない。彼はフットボールの恥辱で、普通の人間であれば誰もが今のフットボール界の人間の振る舞いとして誤りだと考えることを全て具現化している」と声を荒げ、他の識者もテヴェスをリザーブに送るか契約の解消を図るべきと主張した。
しかし、『フットボールの敵』の著者で「ファイナンシャル・タイムス」紙でコラムニストを務めるサイモン・クーパーはこの騒動と辛辣な言葉に驚いたと述べている。
「これが何故ここまでのショックを人々に与えたのか、そして何故これがそこまで酷いことなのか、理解に苦しむ。ボスマン・ルール以降、選手たちの力はとっくに監督の力を超えている。平均的な選手でなく、ベストな選手たちの話だ。皆プライドや情熱、忠誠心について語るが、そんなものがこの世界の一部であるという意見には賛同しかねる」
「クラブは雇用主。仕事を楽しむことはあるだろうが、自分が勤める銀行を愛するだろうか?恐らく違うだろう。良いオファーをくれる銀行があったとして、それでも忠誠心を理由にその銀行に残るだろうか?これも恐らくノーだろう」
「人々はトム・フィニーやボビー・ムーアを忠実な選手の代表格に挙げる。しかし、彼らがクラブに留まったのはその必要があったから。彼らが今のフットボール界にいたなら、忠実にはならなかったはずだ」
その通りだろう。トッテナム・ホットスパーの監督であるハリー・レドナップはテヴェスの行動を「信じられない」と評し、以下のように語っている。「シティのレジェンドであるマルコム・アリソンやマイク・サマビーが、選手がチャンピオンズリーグで出場を拒むことがあると想像しただろうか、と考えてしまうね。本当に信じられない」
選手が途中出場を拒んだのは初めてだったかもしれないが、チームに従わないのは初めてのケースではない。選手がトレーニングを拒否するのは移籍の前兆だ。実際、レドナップ自身のストライカーであるエマニュエル・アデバヨルも、マンチェスター・シティからの移籍を求めてチームとのトレーニングを拒んだ。
クーパーによれば、こうしたストライキはフットボールの世界においては何もテヴェスやアデバヨルに限ったことではなく、この種の論争を呼んだ選手のリストは非常に長いものになる。世界最高の選手でさえ、浅薄な反乱と隣り合わせなのだという。
「昨シーズンのリーガの終盤、リオネル・メッシは監督が彼を休ませたいと考えたためにベンチに座っていた。すると翌日彼はトレーニングを拒否した。ただ練習場に現れないのだ。これは純然たる不服従だが、一体何ができる?トップクラスの選手は今や好きなようにできるのだ」
PFA(フットボール選手協会)のゴードン・テイラーは今後はこの傾向に益々拍車がかかると見ている。「トップクラスの選手が感情を露にするケースは増えてくるだろう。自分は下げられるべき存在ではない、もしくは現状を受け入れるよう求められるのは我慢ならない、そう考えるようになる。しかし、これはチームが肥大化していく中で避けられないことであって、プロフェッショナルに振る舞うべきなのだ」
クーパーは、レアル・マドリーでGMを務め、選手の力の強大化を嘆いていたホルヘ・バルダーノに言及してこう述べている。「彼は選手に話すだけでもいかに難しいかを教えてくれた。監督が選手を叱ろうと思っても、しまいには選手でなく代理人か弁護士、父親に言うハメになる」
まさに、マンチーニが休暇中のテヴェスに連絡を取ろうと電話をかけた際も、テヴェスは電源を切ってしまった。クーパーが言うには、時代錯誤のレンズでフットボールを見るのは止める時期に来ていて、もはや忠誠心や服従、奉仕といった考えは存在しない、という。かつてはあったとしても。
「選手たちは自分のためにプレーをする。誰にでも追い求めたい自分のキャリアがあり、できれば然るべきクラブに然るべき時期にいたいと考えるだろう。それは必ずしもエゴではなく、個人のキャリアだ。誰一人としてシティのためにはプレーしていないし、それはマンチェスター・ユナイテッドだろうが他のどのクラブでも同じだ。ゲームのルールは変わってしまっていて、それは随分前に変わってしまっているのだ」
++++
さもありなん。しかしシニカル。
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