Saturday, December 8, 2012

マンチェスター・ダービーの戦術プレビュー

共にいまひとつ不安定さの抜けない中で迎える、今季最初のマンチェスター・ダービー。日曜のこの頂上決戦を戦術的な切り口からプレビューしているのがマイケル・コックス氏。今回は「ガーディアン」紙への寄稿記事だけど、普段は「Zonal Marking("ゾーンマーク"の意味)」という戦術分析サイトをやっていて、数多くの試合を分析している。彼が今回指摘するキープレーヤーは、シティのヤヤ・トゥーレ。ユナイテッド側で彼を止めに行くのは誰なのか?


++(以下、要訳)++

2011年のFAカップ準決勝で彼がゴールを決めてからというもの、サー・アレックス・ファーガソンは、屈強なヤヤ・トゥーレに手を焼いてきている。

マンチェスター・シティはここのところのダービーでは素晴らしい結果を残してきている。昨季のオールド・トラフォードでの6-1での勝利には誰もが驚いたし、エティハドの1-0の勝利は、その後のシーズン残り2節を有利に進めさせることになった。それでも、2011年のFAカップ準決勝でのシティの勝利がロベルト・マンチーニにとってはサー・アレックス・ファーガソン相手の最初の重要な勝利だと言え、この試合こそが、後の成功のきっかけとなったのだ。

昔ながらの太陽の眩しい午後のウェンブリー、シティでカギを握っていた選手は中盤前目の位置からエネルギッシュに前に飛び出していたヤヤ・トゥーレだった。彼の決勝ゴールは、両チームの対照的なアプローチを浮き彫りにした。ヤヤ・トゥーレは、マイケル・キャリックからポール・スコールズへの横パスをインターセプトすると、一気にボールを持ち上がってユナイテッドの守備を破ってゴールを決めた。ユナイテッドは落ち着いた、我慢強い中盤の組み立てについては集中力を保っていたが、ヤヤ・トゥーレが見せたのは、ユナイテッドが抗するのに苦しむ、生々しいまでのフィジカルの強さだった。

昨季のヤヤ・トゥーレは中盤深目の位置でプレーしており、6-1の試合でも目立ってはいなかったが、それでもエティハドでの試合の時にはパク・チソンを中盤真ん中で3か月ぶりに先発させて彼を消しに行っていた。 パク・チソンは2010年のACミラン戦でアンドレア・ピルロを完璧に抑えてみせたが、ピルロは眩いばかりのクリエイティブさは持ちつつも、脆さもある選手だ。その点、ヤヤ・トゥーレには相手を圧倒するパワーがあり、実際パク・チソンは何度となく倒されていた。ヴァンサン・コンパニが決勝ゴールを決める頃には、ヤヤ・トゥーレはシティの他のどの選手よりもパスを成功させていた。これは、彼のコンスタントな影響力を示すものであるし、彼が前へ前へと出ていくことでパク・チソンは深く下がることを余儀なくされ、結果的にウェイン・ルーニーは前線で孤立していた。この試合がパク・チソンのマンチェスター・ユナイテッドでの最後の試合となった。

日曜のダービーでもヤヤ・トゥーレは深めの位置を取るだろう。他のギャレス・バリーにジャック・ロドウェル、ハヴィ・ガルシアというオプションが、まだそこまで確信を持てるものではないからだ。おそらくファーガソンもヤヤ・トゥーレを止めに来るだろうし、その役割はルーニーしかいない。ここのところ中盤での役割を担うことが多いし、積極的なタックルも模範となる規律も持ち合わせている。

それでも、ルーニーは過去に大舞台で守備的な役割を求められた時には、頼りない側面も見せてきている。2011年のチャンピオンズリーグ決勝のバルセロナ戦を例に挙げると、彼は素晴らしい同点弾を決めはしたが、長い時間続いた「チキ・タカ」の中で、セルヒオ・ブスケツを抑えることはできなかった。今年の夏のユーロ2012準々決勝でも、イングランド陣内に効果的なボールを送り続けるピルロを全く止めに行けず、ロイ・ホジソンやチームメイトが「もっとキツく寄せろ」と絶叫していた。

これらのシーンは、守備の仕事を完璧にこなした先週のレディング戦の彼のプレーと比べると驚きですらある。 大舞台になると、2年前のダービーでの輝かしいオーバーヘッドのように攻撃面で試合にインパクトを与えようという気持ちが強くなるのだろう。しかし、この日曜日、ファーガソンはルーニーに確固たる規律を求めるはずだ。

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ちなみに、その2011年4月のFAカップ準決勝の時の戦術レポートに興味のある方はこちらからどうぞ。毎週末2、3試合分をこのボリュームで出してるんだから大したもの。

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