Saturday, December 1, 2012

ヨルとの再会でクレイヴン・コテージで輝くベルバトフ

フィオレンティーナやユヴェントスの名前も挙がりながら、最後の土壇場で急転フラムに移籍が決まったディミタール・ベルバトフ。家族の生活環境のこともあったというが、フラム選択の背景にはスパーズ時代に師事したマルティン・ヨルの存在も影響したと思われる。この写真からも伝わってくる、そんな師弟関係の温かさも感じる、「テレグラフ」紙のジェイソン・バート記者による記事。


++(以下、要約)++

金曜の朝のフラムの練習場、モッツパー・パークではディミタール・ベルバトフが、監督のマルティン・ヨルにその前の週、3-3のドローに終わったアーセナル戦でのPKを再現して見せていた。またペナルティ・スポットに駆け出すと、ちょっとした躊躇いを挟んで、ボールはゴールネットに吸い込まれて行った。

ヨルは「アイツは俺にあのPKがまぐれじゃなかったことを見せたかったんだ。俺は、『頼むよ。次はキーパーが動くのを待ってないで普通に蹴ってくれ』って言ったよ」と説明してくれた。

「でもアイツがあれをやったのは、俺が『イングランドにはキーパーが飛ぶまで待って蹴れる奴はいねーな』って言ったからなんだ。で、それをやったんだよ。でも、アイツはそれを6万人の前でやったんだからな。全然違うレベルの話だし、アイツは本当に『違う』んだよ」

そうしてエミレーツ・スタジアムで平然とゴールを決めると、ベルバトフはフラムのベンチへと駆けて行った。


「タッチラインの俺の所までわざわざ来たのは、俺に『できただろ』っていうためだったんだ。エンターテイナーになるのが好きなタイプじゃないと思うが、アイツらしいスタイルでそうしてくれたし、ああいう一面は是非残しておいて欲しいんだよな」

ベルバトフは31歳になっても神秘的な存在で、彼への意見も分かれがちだ。マンチェスター・ユナイテッドへは、現在でもクラブ記録の3,075万ポンドで2008年にトッテナム・ホットスパーから加入した。もちろん、トッテナムで彼を獲得したのはヨルだ。 ベルバトフはユナイテッドでも無頓着な雰囲気と一匹狼的な本能、一心不乱で偏向した考え方から、一部には"Berbagod"(神)であり、他には"Berbaflop"(ハズレ) だった。

しかし、この点でヨルは明確だった。「ピッチでのアイツが不機嫌で100%を発揮していないと言う輩もいるが、気持ちの中ではすべてをチームに捧げていて、それを周りも受け入れるべきなんだ。俺はそうしてるし、アイツは素晴らしいフットボーラーだ」

8月31日の移籍市場締切日に僅か500万ポンドでベルバトフがユナイテッドからやってきたことは、ヨルにクラブの歴史の中でも最も重大と讃えられ、「俺がいたからこそクレイヴン・コテージにやってきたんだ」というヨルの話のネタにもなっている。

ヨルはまた、彼が昨年の12月以来どれだけ熱心にベルバトフを口説き、どのようにしてユヴェントスやフィオレンティーナとの競争に勝ったのかを語った。

「最初は無理だろうと思ってたんだが、話してみてからは『イケるかも』って思ったよ。アイツが空港にいる時に代理人(エミル・ダンチェフ)が電話してきてね。『彼に電話をしてくれ。イタリアに行く飛行機を待ってるところだから』って。それで電話してみたら、すぐに気持ちを変えて戻ってきたんだよ」

一体何が彼を説得したのか?

「多くを語る必要はなかったが、『まぁ、俺もいるしな』って言ったのは覚えてるよ。俺はフラムにいて、『ディアラ、シュウォーツァー、ペトリッチ、ダフ・・・、良い選手も揃ってる。俺もいるしな』って言って、『オマエもここに来りゃいいじゃねぇか』って続けたよ」

ベルバトフ口説き落としの過程は、フラムがオールド・トラフォードを訪れ、ベンチから登場したベルバトフがユナイテッドの5点目を決めた、昨年の12月に始まっていた。

「5-0になった試合にはガッカリしただろうし、もし俺がアイツの立場でもそれは同じだ。ウチが大したチームじゃないのは見ただろうし、『今は来ないだろうな』って思ったよ。で、数か月後、8月にまたウチはマン・ユナイテッドと試合をしたんだが、その時は3-2でウチも違うチームに見えたし、それで気持ちを変えたんだろう。唯一の問題は、同じ日にデンベレの移籍が決まっていたことだった」

ヨルによるフラムの印象的な再建と新たなモデルの導入は、過小評価されている。最もクリエイティブな選手だったデンベレとデンプシーを失いながら、ブライアン・ルイスとベルバトフを軸に、更にクリエイティブなチームを築き上げているのだ。

ヨルはこう語る。「いかに良いフットボーラーか、って話さ。ベルバトフやルイスみたいな選手を見れば、必ずしも最高の組み合わせじゃないと考えるかもしれないが、それが見た通りなことなんてまず無いんだよ」

それはおそらくベルバトフのことも的確に言い当てている描写だ。見た通りのままであることは、まずない。最初の6試合で5ゴールを決めてみせ、それらの試合ではフラムは無敗、ベルバトフは移籍市場での激変でヨルも懸念していたフラムのシーズンを見事に変えている。

「本当にマズいなと思ってたが、移籍市場の残り数日でウチは非常に上手くやった。アイツが来てくれて、みんな『素晴らしい補強だ』って言ってたし、俺も『そうだな。そりゃ本当だ』って思ったもんだよ。アイツもまずは自分の力を証明する必要があったけど、それはやってのけたし、今はウチもおそらく今まででも一番良いプレーをしている」

「アイツもハッピーで、笑ってるよ。奥さんも妊娠してて、もう子供も生まれるしね。また戻ってきたら、まだまだプレーも良くなるだろうしな」

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ベルバトフは大好きな選手で、ユナイテッド時代の末期にも記事をピックアップしていた(「品格と共にオールド・トラフォードを去るディミタール・ベルバトフ」)。

12月1日は、クレイヴン・コテージでスパーズ戦。スパーズ・ファンなもので、個人的にはこの対戦は楽しみ。ユナイテッドで不遇な頃も、ベルバトフには良いチームを見つけてまだまだ試合に出てほしいと思ってから嬉しいもんだし、それがヨルの下でなら尚更。

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